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[12211] 幼女は荒野を行く(fallout3)
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:87b94391
Date: 2009/11/14 01:17
fallout3を元にした2次作品です。
PC版MODをネタにすることが多いです。

2009/09/25 第1話、2話投稿、設定に類するもの投稿
2009/09/30 第3話投稿、設定に取得Perkを追加
2009/10/07 第3話追記 後編部分を投下し、一つにまとめました。
2009/10/17 第4話追加 第4話修正。読みやすくしました。
2009/11/14 第5話投稿 設定に追記



[12211] 1.まずは街に行ってみよう
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:87b94391
Date: 2009/09/25 22:00
戦争・・・戦争は変わらない
人類誕生以来、そう原始の時代に岩と骨の武器を手にした時から
ありとあらゆる名目のもと、人類は莫大な血を流してきた。
ある時は単なる宗教的正義感から、またある時は暴力的衝動にかられ戦った。

2077年、何千年にも渡って武力衝突を止めなかった人類は
とうとう全滅の淵に追い込まれた。世界中が核の炎と放射能に包まれたのだ。
だが予期されていた通りこれで世界で終わったわけでない。
世界が破壊された事によって、
血塗られた人類の歴史が新たにスタートしたのである。

だが戦争・・・戦争は変わらない

核戦争勃発初期に、死の恐怖から逃れるため
大勢の人間が"Vault"と呼ばれるシェルターに避難した。
だが避難民がシェルターから出た時、
出迎えてくれたのは地獄のような荒野だった。
ただこの光景と無縁の人々もいた。Vault 101の住民だ。

上空から火の雨が降り注いだ破滅的な状況のさなか、
Vault 101の巨大なドアは厳重に閉じられた。
ここがあなたが生まれ死んでいく場所だ。
なぜならVault 101に来る人もいなければ、
ここを出て行く人もいないからである。

~fallout3 ムービーより~

そういう建前はさておき、実際はValutの扉は何度か開かれているらしい。
地上へは何度か秘密裏に偵察班が送られている。これは監督官の端末をハックして知ったことだ。
ついでに言うのなら、私の父も地上へと出奔したらしい。
らしいと言うのは、父が出奔したときには私はおねむだったからだ。
気がついたときはラッドローチ(大型ゴキブリ)が大量発生したことによりVaultの中が大混乱に陥った時だった。

そんで私はあっという間にセキュリティにとっつかまった。

いや、抵抗の余地もなかったんですよ?
だって、目が覚めたら私の周りをセキュリティのいかついおじ様が取り囲んでいるんだもの。
というか、むしろ私は彼らに『保護』されたらしい。
なにからと言われると、これは私の幼馴染で面倒を見てくれた姉役のアマタの父親、つまりはValutの最高権力者『監督官』からだ。
いや、この時はすでに監督官は軟禁状態にあったりする。
父が出奔した以上このValutの唯一の医療従事者のジョナスを殺してしまったことで、一種のヒステリー状態になったと判断されたためだ。
しかし、それでもValutのような閉鎖空間において、騒動の種は可能な限りごめんこうむりたいと言うのは当然の判断だった。
監督官を継いだアマタは最後まで渋っていたが、それでも『異物』、即ち私をValutの外へと放逐するしかなかった。
こうして、私はValutの外へと出た。

何一つ言わずに消えた父親をぶん殴るために……。


さて、そろそろ自己紹介しよう。
私の名前はアンヘル。Valutを出奔した学者馬鹿ジェームスの娘であり、10歳の幼女だ。
……どーやってけちゅーねん……。


1.まずは街に行ってみよう

さて、監督官のターミナルをハックしたときにValutの近隣には『メガトン』なる町があると書いてあった。
まずは、そこを目指すとしよう。父も土地勘はないだろうから、近隣の町で情報を集めているはずだ。父が出て行ってまだ2日もたっていない。きっと追いつけるはず!

「ファイトだ!くじけるな!!」

必死で自分を鼓舞して空を見つめる。
期待していた青空はなく、くすんだ黄色がかった空しかなかった。ちょっと泣いた。
しかしだ。私はこの外の世界をあまりに甘く見ていたのだった。
私がそのことに気づくのにさして時間は必要ではなかった。

「……や、やっとついた」

なんとか到着した。メガトンの入り口で私は力尽きかけていた。敗因は何かといえば、たぶんメガトンの位置を知らなかったことだろう。
岩山を恐る恐ると一時間近くかけて降りた後は廃墟の合間を縫って進むこと2時間近く。
なんか音楽を垂れ流す球型のロボットがいたけど、何もしてこないから無視してさらに進む。
目の前には比較的しっかりした元学校と思しき建物があったから近づいてみたら、「新鮮な肉だー!!」の叫びと共にボロ服を着たおっさん方に襲われました。
まじでちびるかと思った。
必死で逃げつつアマタの選別の10ミリ拳銃を撃って川原へと逃げていったら、今度は川の中からでてきたナマっぽいズゴック(仮)に襲われた。猛烈なタックルを食らってごろごろ転がっているうちにズゴック(仮)とおっさん達の死闘が始まりズゴック(仮)がわらわら川の中からでてくるのに青ざめつつ、すたこらと逃げ出し、気がついたら目の前にはボロボロの金属を寄せ集めて作ったような塀があった。
門のそばに立つプロテクトロンの『メガトンにようこそ!』の声を聞きながら、私は安堵の余り地面に突っ伏した。
一体いつから、このアメリカ合衆国は世紀末じみた世界になったんだろう……って、核を落とされてからでした。本当に世紀末な世界でした。マジで笑えない。

「頼むから、火炎放射器を背負ったモヒカンはでてくれるな……」

でてきたら、笑おう。絶対にそいつはあのマンガの崇拝者に違いない。
私はふらつく足に活を入れるとメガトンの門をくぐった。
門をくぐって、目に入ってきた町並みは塀と同様にさびの混じった鉄くずを主体として構成された雑多な町並みだった。すり鉢上の大地に所狭しと林立している。どう、贔屓目に見てもスラムにしか見えない。
なんか、町の中心部には猛烈な違和感を撒き散らすものが歩けど、あえて無視しましょう。
それでも、それなりに活気はあるようで、かなりの数の人が行きかっている。しかし、服は少し古ぼけたものばかりで、薄汚れている。お世辞にも清潔には見えない。
Valutのジャンプスーツを着た私はこの集団の中で完全に浮いていた。行きかう人もじろじろと私に遠慮なく視線をぶつけてくる。
完全に目立っているが、これならば父のことも相当目立っただろう。誰かが父のことを覚えているに違いない。
さて、そうなったら誰に声をかければいいんだろうか?

「ほう、また珍しい客が来たもんだ」

考えあぐねている私に声をかけてきたものがいた。見てみると、コートにテロガンハット、更に胸には星のマークと言った西部劇に出てくる保安官のような姿をした男がいた。言うまでもなく、初対面だ。

「初めまして。えっと、あなたは?」
「俺の名はルーカス・シムズ。このメガトンの街の保安官であり、市長もかねている。この町で問題だけは起こしてくれるなよ」
「問題を起こすつもりはないです。父を探しに来たんですが、知りませんか?私と同じ服を着ているはずなんですが」

ルーカスはちょいと首をひねった。

「……すまんが、記憶にないな。だが、人が立ち寄ったならばモリアティの酒場に行ってみろ。あそこが一番人が集まる。店主のモリアティは曲者だ。気をつけるんだな。あと、何か聞きたいことはあるか?」
「……あえて言うならば、目の前に鎮座しているアレについてなんですけど」

私はあえて思考の外に追いやっていた物体についてルーカスに聞いてみることにした。
正直、一番先に見たときは引いた。まさかとは思うのだが……。

「あれか、不発弾だ。……核爆弾のな」
「……まだ、爆発します?」
「たぶんな。専門家がいないからわからんが、多分生きているんだろうな……。解除できるような専門家に心当たりはあるか?」

専門家……。真っ先に思い浮かんだのはValutの技術者だが、あいにくこちらは追放された身だ。
誰かの協力を仰げるとは思えない。一応、幼い頃から医学書や、技術書を絵本代わりに育ったから自分にもそれなりの技術はあると思う。

「一応、見てみる程度ならできます。解体できるかどうかは、わかりませんが……」
「何?お前さんにできるのか?もし、できるようだったら100キャップ、いや500キャップだそう。メガトンの永住権もつけるぞ?」

おお、至れり尽くせりの対応だ!これも幼女の魅力と言うものか!!
キャップの貨幣価値はわかんないけど、それなりに大金らしいし。

「まあ、爆弾はアトム教会の連中がご神体としてあがめているからな。必要以上に損壊するなよ?」

……核爆弾を拝むなんて奇特な人たちだなあ。
まあ、いいや。まずはValutからかっぱらった、ゲフンゲフン。餞別としていただいたジャンプスーツとかを売り払ってまとまったお金を作ろう。正直荷物がかさばって、移動しにくいんだ。

「物を売りたいんですけど、そういう場所はありますか?」
「ならば、クレータサイド雑貨店だな。……あー、店主のモイラは悪い奴じゃないんだが、いささかあれなんだ。……気をつけろよ」

ルーカスはやたら優しい笑みを浮かべると、その場を早足で後にした。
ちょ、ちょっと保安官!私は今からそこに行くんですけど!!?
最初から不安になるような話だった。

クレーターサイド雑貨店はその名の通り、すり鉢部分の上に立っていた。屋根からは飛行機の機種部分が突き出している。さっきあんなことを言われたからだろうか?心なしかまがまがしい瘴気が見える気がする。
しかし、このメガトンにはここくらいしかまとまったものを売れる場所はないらしい。

「ええい!女は度胸!!」

私は意を決して、ドアを押し開けた。
店の中ではジャンプスーツを着た女性が掃き掃除をしていた。それを壁にもたれかかった男がぼんやりと見ている。

「あら?珍しいお客さんね?それってValutの服でしょう?あなたもValutから来たの?懐かしいわねー。十数年前にもValutの人が来たのよ。ほら、あの壁にかかっている服がそう。もっとも、私が改造しちゃったんだけどね。それより、あなた一人でValutから出てきたの?親の人はどうしているの?よく無事でメガトンまでつけたわね。最近小学校の跡地がレイダーたちのキャンプになっちゃったのよ。ああ、レイダーってのはいわゆるごろつきね。言葉よりも暴力を信条としている人間の風上にも置けない人たちよ。あっ、私の名前はモイラ、モイラ・ブラウン。あなたの名前は?」

帰りたいと痛切に思った。あって早々マシンガントークを繰り広げてきたこの人が店主らしい。
なんか目が超新星のごとくきらめいている。好奇心という名の光でだ。
多分、この人は父と同類だ。自分の興味、関心を優先して周りの事を考えずに突っ走る。アクセルを踏みっぱなしの自動車よりも危険な人だ。

(助けて)
(無理だ)

助けを求めて、壁際の男の人に視線を送ってみたけど、無理だと目が語っていた。
その目には諦観が大いに含まれていた。
きっと、こんなことは日常茶飯事なのだろう。
助けは期待できそうにない、覚悟をきめてモイラの相手をすることになる。

「ちょうど良かったわ。実は私は今本を書いているんだけど、その序文にVaultの住人の言葉があったらもう最高だと思うのよね。Vaultの生活ってどんなのだったの?やっぱり快適で、このウェイストランドに比べたら天国のような場所だったんでしょうね。そうそう、その本に関してなんだけど、内容の検証をやってくれる助手を探していたのよ。もちろん報酬は払うわ。さらに、あなたの手助けがあれば誰でもウェイストランドを安全に旅できるガイドブックも完成するわ!もちろん協力してくれるわよね?」

マシンガントーク再び。
余りの速度に口を挟む余地もなかった。もうモイラの中では私は彼女のサバイバルガイドブックの検証者として内定しているらしい。
断らねば、私にはあの父をぶんなぐるという崇高な使命が!!

「モイラさん!私は「そうねえ、最初は軽く放射能でも浴びてきてもらおうかと思ったんだけど、それよりはウルトラスーパーマーケットの調査の方が安全かしら?最初から地雷原はハードルが高すぎよね。うん、じゃあウルトラスーパーマーケットで食料品とあとは医薬品があるかどうかを調べてもらえないかしら?報酬は後で支払うつもりだったけど、その格好じゃあ防御力なんて全然ないし、ちょうどいいサイズのレザーアーマーが在庫にあるから、それが前払い分の報酬ね。あとは10ミリ拳銃の弾丸もセットでつけるわ。それじゃ調査よろしく!!」

断るつもりだったのに押し切られた。モイラに押しつけられたレザーアーマーを両手で抱えながら、私はしばし呆然としていたのだった。
ルーカス保安官。あなたの忠告はとても正しかった。願わくば、もっとはっきり言っていただきたかった……。
傭兵のおっさんもとめてください。

とりあえずレザーアーマーは着た。ついでにジャンプスーツも売り払ってお金に買えた。
でもキャップって本当にキャップ(王冠)だ。しかも、ヌカ・コーラの奴。
これが地上でのお金なのか。
てれっててーん!防御力が上がった!!……空しい。


微妙にたそがれたまま、モリアティの酒場を目指す。
モリアティの酒場は酒場という大量の人数を収容する施設のためか、メガトンで一番大きい建物だった。
表にはでかでかと『モリアティの酒場』と書かれた看板が掲げられている。
父の手がかりがあるのはココぐらいらしい。私は意を決して重いドアに手をかけた。

「くそっ、なんで鳴らねえんだ?このポンコツラジオめ!」
「むだよ。ゴブ。エンクレイブの放送はちゃんと聞こえるもの、きっとGNR側の問題なのよ」
「お願いだ。な・お・って・く・れ・よ!!」

バンバンとバーカウンターの内側の男が声に合わせてラジオを叩いているのを見て女は呆れたように肩をすくめて、その場を離れた。
男は、なおもラジオに未練があるようでしきりにあちこちをバンバンと叩いている。
私の視線に気がついたのか、男はふと顔をこちらに向けた。

「おお?嬢ちゃん。ここは子供の来るところじゃないぞ?どうかしたか?」
「えーっと、その顔が……」
「ん?ってとおまえさんグールを見るのは初めてかい?」
「(こくこく)」

ケロイドで爛れ、表情筋まで見えているあまりの迫力の顔にいっぱいいっぱいだった。
人の悪口を言うのは好きじゃないけど、心構え無しに暗がりであったら絶対に泣き叫ぶと思う。

「核が降り注いだあの日、誰もが居心地のいいVaultに逃げ込めたわけじゃない。外にいた奴らが放射能にさらされて、こうなっちまったのさ。ゆっくりと歳をとるから、あの核戦争の前から生きているグールもいる。おびえるなとは言わないが気にしない振りでもしてくれると嬉しいね」

それでも怖いものは怖いです。けれど頑張ってみます。
でも放射能で不老効果なんて。本当に外の世界は不思議ワンダーランドになってしまったらしいです。

「……わかりました。すいませんが、父を捜しているんです。ジェームスという人が来ませんでしたか?」
「名前は聞いたことがないな。見たことがない男がモリアティを訪ねてきた2日前だ。かなり昔の知り合いだったらしいが、それがそうじゃないか?モリアティは裏手にいるから聞いてみな」

?父はVaultから出たことがないはずなのですが?人違いなのでしょうか?いえ、これはあってみなければわかりませんね。
指し示された、ドアから裏手に入るとそこには悪人顔のおじさまがコンソールをポチポチやっていました。
うん、悪人顔です。悪人なオーラが噴き出ています。
この人と父は知り合いだったのでしょうか?
なんか人違いの気がするのですがとりあえず話は聞いてみます。

「あの、すいません」

恐る恐るの呼びかけはきちんと届いたようです。
ターミナルを操る手をいったん止めるとおじ様はくるっと私に向き直りました。

「ん?モリアティの酒場にようこそ。何の用事だい?」
「父を捜しているんです。ジェームスという名前なんですが知りませんか?」
「ジェームスの娘?ああ!あのときの娘か、大きくなったもんだな」

え?面識がある?
これってどういうことなんですか?
ルーカス保安官の言葉を借りるなら、曲者らしいのですが、こういうことで嘘をつくメリットがわかりません。そうなると、本当にあったことがあるのでしょうか?

「どういうことですか?父も私もVault101の出身のはずですが?」
「ああ、そうか。ジェームスから何も聞いていないのか。まあ、その方が安全だったんだろうな。だが、お前もジェームスもこのウエィストランドの生まれだ。Vaultに入る前にこのメガトンに立ち寄ったのさ。あれはお前が2歳にもなっていないころのはずだから覚えてはいないだろうがな」

……どうやら、本当のようです。そうなるとVaultの扉は私が思っていたよりも頻繁に開かれていたことになります。
監督官め、一度も開かれたことがないなんて嘘をずっとついていたのですか?
ではなんでジョナスが死ななくてはいけなかったのでしょうか?
余りのことに目が潤むのを止められません。これではまるでジョナスが死んだことに何の意味もなかったということじゃないですか!?

「……わかりました。そんな昔なら覚えているわけないですよね。じゃあ父は今どこに?数日前に訪ねてきたとは聞きましたが?」
「その情報はタダじゃ教えられないな100キャップ支払ってもらおう」
「100キャップってそんな持ち合わせありませんよ!!高すぎます!!」
「じゃあ、この話はなしだな」

ひどいです。私はうーっと膨れ顔でモリアティを見つめることしかできません。
ジョナスのことや、私の生まれのこととかが頭の中でぐるぐるして眼にこんもりと涙が盛り上がっていきます。
びくっと身を引くモリアティ。

「うっ、わかった。わかった。お前の父親は首都の近くのギャラクシー・ニュース・ラジオに向かうと言っていたよ」

おお!人間誠心誠意お願いすれば通ずるものなのですね。幼女バンザイです!
ぱっと一瞬で表情がほころぶ私でしたが、モリアティは「だが……」と容赦なく爆弾を投下してくれました。

「首都周辺はスーパーミュータントが大量に出るうえに激戦区だ。今のお前さんが近づいたら、すぐに死んじまうぞ」

父よ。どうしてそんなに危ないところにほいほいと行くのですか?!







[12211] 2.買い物(?)に行こう
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:87b94391
Date: 2009/09/25 22:44
どうも、アンヘルです。
なんとかありましたけどメガトンに五体満足で到着することができました。
ですが、そこで知ったのは実は父と私がValutの生まれではないと言う事実。
ならば、父は一体何のためにValutを出奔したのでしょうか?しかも、メガトンを後にして目指したのは戦場にあるラジオ局。
……一体私はどうすればいいのでしょうか?

呆然としたのはつかの間のこと。モリアティにもらった情報はおそらく真実。
そうなれば、私の行動指針はやはり父を追うことになります。
ですが、今のままではモリアティの忠告どおりにすぐに屍をさらすことになるでしょう。
先ほど襲われたレイダーなる人々に文字通りの意味で「美味しく頂かれる」ことになりかねません。
ここは、ウェイストランドの生き方を学ぶ必要があります。
野獣の避け方、戦い方、危険な所の判別方法。
……そういう意味ではモイラの依頼である『ウェイストランドサバイバルガイド』の検証作業と言うのは渡りに船なのかもしれません。

2.買い物(?)に行こう

モイラの話ではウルトラスーパーマーケットはメガトン北東の川べりにある建物だそうです。
余分な荷物はモイラに預けて身軽になった私は最低限のスティムパックと10ミリ拳銃を持って目的地へと向かうのでした。

「はあ、さすがにここまで荒れ果てているなんて思いもしませんでした」

行けども行けども荒野の続く大地を進む私は格好の獲物だったようです。モールラットや野犬に何度襲われたことか。
幸いなのは先日のズゴック、改めミレルークみたいな非常識な硬さを持った敵と出会っていないことくらいでしょうか?
10ミリ拳銃が通用する相手ばかりが相手と言うのはとてもうれしいことです。
ですが……。

「レイダーの拠点になっているなんて話は聞いてませんよ」

ええ、スーパーウルトラマーケットはレイダーの一大拠点と化していました。
いたるところに敵対していたレイダーの死体と思しきモノがぶら下がっています。
見た瞬間胸の奥からむかむかするものがこみ上げてきました。
どうしてここまでひどいことができるのでしょうか。
吐きそうなのを堪える私の目の前ではレイダーとアイボットが打ち合いをしています。
アイボットは基本的にはエンクレイヴラジオを放送してる無害な機械ですが、ひとたび攻撃すれば即座に光学兵器で反撃してきます。
敵に回しても得することなどないのです。あ、今レイダーが打ち抜かれました。
表で動いている人たちはいませんが、彼らがあくまで歩哨ならば中にはまだ相当な数のレイダーがいるということになります。
……正直、ここで帰りたいのですが……。
せめて中くらいは確認していかないと、モイラに報告できませんね。

「ああ、一人でいることがこんなにも心細いとは思いませんでした。一緒に旅する仲間がほしいのですよ」

ぶつぶつ言いながら私はこっそりと店内に体を滑り込ませました。
光源がない店内ですが、元々の構造が外から光をとる物なのか、店内の見通しはそれなりにいいです。
奥のほうではレイダーと思しき人影がうろうろしています。
うっかり缶を蹴飛ばさないように気をつけながら、私は自分の右手側にあった。カウンターを乗り越えて身を潜めました。
……よし、気がつかれた様子はありません。あとは食料品と衣料品があったと思しき場所を探るだけです。

「ふう、なれませんね。本当にひやひやする」

ん?これは?
カウンターの上に何かありますね?これは……、レーザー銃?レイダーの置き忘れでしょうか?
近くには弾のエネルギーセルまであります。ありがたく、頂いていきましょう。大幅な火力アップです。
レーザー銃をホルスターに突っ込んで辺りを見回すと壁際には冷蔵庫がありました。
スーパーの業務用のものにしては小さい気がしますが、ひとまずあけてみることにします。
がちゃっと引きあけるとそこには戦前からの食料品がありました。
……200年前のものが食べられるかどうかは大いに疑問なのですが。
それでも一部の冷凍食材とか缶詰ならいけるかもしれません。戦前は核戦争に対する危機感で超長期間保存できる食料を研究していたと言う話も聞きましたし。ひとまずはかさばらないものをいくつか持ち帰ってみましょう。
さて、食料品は見つけました。後は医薬品ですか。ぐるっと見回した感じではここには医薬品がないようです。壁際にかかっている店内の案内図を見ると奥のほうに医薬品コーナーがあるらしいです。

「うう、奥はレイダーがうろうろしているのですが……。行って覗いて見なくちゃいけないんでしょうか?」

ええい!女は度胸!!
こっそりと息を殺して足音も立てないように進みます。片手に握るレーザー銃の重みが心強いです。
レイダーの巡回がいつこないとも限りません。背中にじっとりと嫌な汗が滴るのがわかります。
いえ、それだけじゃないですね。そもそも私は引き金を引けるのでしょうか?
野生動物ではなく人間相手に、
私は彼らを『殺す』ことができるのでしょうか?
疑問は一次棚上げです。そもそも見つからなければ、良いわけなのです。
私は曲がり角に到着すると陳列棚に背中を預けたまま向こうの様子を伺おうと顔を突き出しました。

「おっ」
「あっ」

……ばっちりレイダーと目が合いました。ははは……、人間はラヴ・アンド・ピース話し合えばわかるはず……!!

「新鮮な肉だー!!」
「話し合う余地すら無しですか!!」

私は反射的にレーザー銃の引き金を絞りました。
そこからの記憶は断片的にしかありません。
気がついたら、私の目の前には何人かのレイダーが倒れ付していました。いえ、それだけではありません。周囲には白い灰が山を作っています。これもかつてはレイダーだったものです。
レーザー銃の特性か、倒れ付しているレイダーたちは血を流していないのが逆に現実感を喪失させてしまいます。でも、確かに私が引き金を引いたのです―。
たまらず胃液が逆流してきました。覚悟はしていたつもりでした、でもあくまでつもりだったのです。
どこかでこの現実『外』を甘く見ていました。
きっと誰も殺さずにすむだろうなんていう甘い考えが今の一瞬で打ち壊されました。
げーげー胃液を吐き出した後、私の顔は涙でぐちょぐちょになっていました。
でも、いつまでもへたり込んでいるわけには行きません。他のレイダーが今にも来るかもしれないのです。急いで医薬品を確認しなくてはいけません。顔をレザーアーマーの袖でぬぐうと私は目の前のカウンターを乗り越えました。
ライトをつけて周囲を見ると、ここには医薬品がないようです。
もうすでにもっていかれた後なのでしょうか?
そのとききらりとライトの光を反射するものに気がつきました。
壁際に落ちているそれは鍵のようです。キーホルダーの部分には医薬品倉庫と刻まれています。
倉庫になら何かあるかもしれません。
案内図を見る限り、倉庫はすぐそばです。レイダーがねぐらにしていたところでしょうか?
覗いてみると、レイダーが寝床にしていたらしいマットレスや銃弾が野積みにされていました。
目指す倉庫は鍵がかかっています。鍵を差し込んでゆっくり回すとさしたる抵抗もなく開きました。
倉庫の中には金属の箱が棚に詰まれています。熱く積もった埃には足跡一つありません。これはあたりかもしれません。
もし、レイダーがやってきた場合に備えて再びドアに鍵をかけます。
さて、家捜しを開始です。
まず目に付くのはバファウトやスティムパックを初めとする医薬品の入った救急箱。無論中身はしっかりといただきます。

「これは……警備用のプロテクトロンですか?」

メンテナンスポッドの中ではプロテクトロンが休眠状態で安置されていました。戦前からここで眠っていたのでしょう。そのカメラアイ部分にはなぜか刀傷見たいな傷が走っています。
電源は生きているようですが、起動させなくてもいいでしょう。
下手に壊れていて、襲われたら洒落にもなりません。
あと、目に留まったのは青く発光している瓶。形はValutでもおなじみヌカ・コーラに見えますがヌカ・コーラは光りませんよね?
注意して取り出してラベルを見ると、ヌカ・コーラ・クアンタムと書かれています。ヌカ・コーラの派生商品でしょうか?
内容物は……?
気のせいでなければ、放射性物質と書いてありませんか?
ってことはこの青色はチェレンコフ光?!
何を考えているのですか?!ヌカ・コーラ社は?!!
見なかったことにして箱に突っ込みなおします。
こんな物騒な物を飲む人の気が知れないのですよ。
さて、医薬品もあらかた取りましたし、引き上げますか。いまからなら日暮れ前にはメガトンに戻れるでしょう。

『おい!これはどうした?!探せ!まだ近くにいるはずだ!!』

……まずいです。どうもレイダーの別働隊が来たようです。しかも、仲間の死体を見つけて警戒しています。
このままでは、袋のねずみです。
………どうすれば?
悩む私の目の前にはプロテクトロンの入ったメンテナンスポッドがありました。
これを起動させて、囮にしている間に逃げるしかないようです。
よく見ればターミナルの上にはIDカードがあります。これを使えばハッキングできるはず。
慣れ親しんだロブコ社製のターミナルを起動させました。
ええ、扱いなれています。3歳の頃から触っているんですから。



「うぎゃー!!」
「くそ!硬い!!」
「にげろ!!」

えー、皆様。アンヘルです。
起動させたプロテクトロンにIDの提示を求められましたが、それは戦前に置き忘れられたIDのおかげで無事にスルーできました。
今目の前では、プロテクトロンがレイダーを相手に無双中です。

『逃ゲル奴等ハ中国兵ダ!逃ゲナイ奴等ハ訓練サレタ中国兵ダ!』

プロテクトロンは容赦なくレーザーをぶっ放しています。
えーと確かに戦前は中国が仮想敵国だとは聞いた覚えがありましたが、それでもスーパーマーケットの警備用のプロテクトロンにこんなAIを組み込むのでしょうか?
と言うか警備用のものにしては過剰火力な気がします。
本当に戦前のアメリカ合衆国というのはどういう社会だったのでしょうか?
いまのウェイストランドに負けず劣らぬ物騒な社会だったのではないでしょうか?
当初の計画では、警備用のプロテクトロンを起動させ、レイダーがそちらに目を奪われているすきににげるといったものだったのですが、その必要もなさそうです。
あっという間にレイダーが撃ち倒されていきます。

『ドウゾ、オ買イ物ヲオ楽シミクダサイ』

ああ、はい。ありがとうございます。……商品らしい商品なんてもうありませんけど。
引き続き店内の巡回に戻ったプロテクトロンに手を振り別れを告げると、私はスーパーウルトラマーケットを後にしたのです。
けど、どうしましょうか?きっとあのスーパーマーケットは私以外にはもう入れませんよ?
入った瞬間にIDが提示できなかったら、あのプロテクトロンに消し炭にされるのですから。
……検証したけど、サバイバルガイドに載せられるんでしょうか?
疑問はつきませんが、それでも私の脚はメガトンに向けて進むのでした。
ああ、でも本当に仲間がほしいですね。一人ではいろいろと限界なのです。
何よりも、心が折れそうなんですよ。

追記
メガトンに帰還し、モイラに事の次第を伝えましたがいっこうに堪えた様子がありません。
どうも検証しているうちに、新しい食料品をいくつか仕入れられたようです。
……付き合いを考え直した方がいいのでしょうか?






[12211] 3.仲魔を探そう!!
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:41c186b6
Date: 2009/10/07 14:38
どうも、アンヘルです。
今日までは、ずっとモイラの家に荷物を預かっていてもらいましたが、さすがに父を追ってギャラクシー・ニュース・ラジオへ行こうと思ったら拠点がほしくなってきました。
メガトンは正規の住民でないと、汚染のない『綺麗な水』の配給が受けられないのですよ。
そういうわけで、以前にルーカス保安官と約束した核爆弾の解体を行いたいと思います。

核爆弾と言えば、一歩間違えばドカン!といった印象があるかもしれませんが、実際は単なる不発弾処理程度の危険性です。
いや、それでも十分に危険なんですけどね?
でも、十分に想定された威力で爆発しようとしたらこのタイプの核爆弾は、放射性物質を通常火薬で爆縮して連鎖反応を得る方式なので、かなり精密に制御しないと核分裂してくれないんですよ。
言い換えれば、そのためのコンピュータを破壊してやれば、ただの放射性物質を含んだオブジェになるんです。
だから、解体はとても簡単でした。
何せコードをニッパーで切るだけですむんですから。
ルーカス保安官にこのことを伝えたら大喜びで家を執事ロボつきで頂きました。
でも抱き上げてほお擦りするのはやめてください。
ひげが痛いんですっ!!

3.仲魔を探そう!!(前編)

前回のモイラの依頼で、スーパーウルトラマーケットに行ったら、ひどい目に会いました。
一人でウエィストランドを放浪することがどれだけ危険なのかを痛感させられたのです。
やはり、一人だけで動くのには限界があります。
でも、傭兵の方を雇うのにもお金がいるのですよ。しかも、安い人は腕がないですし。
一度モリアティの酒場で管巻いていたジェリコさんにお願いしようかなとも思いましたが、1000キャップなんて大金無理なんですよ。ノヴァさんからも「教育に悪いから」と止められました。
モリアティまでもが「やめておけ」と止める始末。
確かにいっつも下品なことを言っておられますが、それは少々ひどいのでは?
ノヴァさんに言われたときはジェリコさんの背中がちょっと煤けていたのですよ?
まあ、こんなわけでメガトンで傭兵を雇うのは没になりました。
しかし、解決策はご近所にいました。その名も、『副官ウェルド』です。
聞けば、この周囲にも野良ロボットが出現するとのこと、それを捕まえてプログラムをいじれば……!
お手軽に仲間を手に入れることができます!
プロテクトロンタイプは、いささか弱いのでできれば軍用モデルのミスター・ガッツィータイプが欲しいのですよ。
えっ?スーパーウルトラマーケットにいた奴はどうしたって?
こないだ見に行ったら、『広い世界を見てくるぜ!!』とのたまって店の外へと出て行ったのですよ。
本当にあれのプログラムはどうなっていたんでしょうか?
たぶん、もう2度と会うこともないでしょうけど。
……会わずにすんだらいいなー(棒読み)

こほん、遠くに去ったであろうプロテクトロンのことは放っておいて、『コンパニオン入手計画』発動なのです。

基本的にプロテクトロンやミスター・ガッツィーは屋内にいるような気もしますが、実際は荒野のあちこちをうろちょろしているのだそうです。
調べてみるとメガトン近辺ではプロテクトロンが比較的多数目撃されていますが、ミスター・ガッツィーにいたっては皆無です。
ちょっと足を伸ばす必要があります。
とはいっても一人でうろつくのが不安だからコンパニオンを探すのであって、そのために一人で荒野を探索するのは本末転倒なのです。
そうなるとキャラバンの皆さんに引っ付いてあたりを捜索するのが一番良いのでしょうか?
キャラバンと言うのはこのウェイストランドにおいて経済を流通させるすごく重要な存在なのです。
しかし、荒野をうろつく特性上常にレイダーや凶暴化した動物に襲われると言うリスクを背負っています。
中でも一番厄介なのはクロクマが凶暴化したトンでも動物『ヤオ・グアイ』。
この熊はただの熊なはずなのに、アサルトライフルをフルオートでぶっ放してもぴんぴんしていると言う化け物じみたタフネスを持っています。
これを聞いてますます荒野をうろつくのが怖くなりました。
Valutの動物図鑑では熊は臆病な動物で人間を見たらまずにげていくとあったのですが、いきなり襲い掛かられるほどにアクテティブな生き物とは思いませんでした。
しかも、私の武器はレーザーピストルとグレネードが少々。
こんなもので戦いたくはありません。
こうなると、やはりキャラバンの皆さんに引っ付いて目的のミスター・ガッツィーを探しつつ装備を充実させましょうか。

「……あっつーい……」

日光をさえぎる木々は無く、太陽の光が煤けた空から容赦なく降り注ぎます。
核爆弾の炸裂によって巻き上げられた塵は『核の冬』をもたらし、今なお気温は戦前より下がっているのですが、完全に気候管理されたValut出身者には拷問です。
ヌカ・コーラのキャップをこじ開けて中の液体に口をつけましたが、やはり中身もお湯になっています。
放射能汚染された泥水をすするか、放射能汚染されたヌカ・コーラを飲むかというのは間違いなくヌカ・コーラを飲むほうに軍配が上がります。泥水は口の中がじゃりじゃりしてつらいのです。無論、精製水に勝るものは無いのですが、汚染の無い精製水はそれをめぐって殺し合いが起こるほどに貴重品なのです。
しかも、メガトンの浄水施設は既にがたがたです。ウォルターさんも何とかだましだましで動かしていますが、完全に停止するのは時間の問題でしょう。そうなったらどうなるのでしょうか?
放射能は遺伝子を蝕みます。まず健康な子供が更に生まれづらくなるでしょうね。最後には人類も滅びるのでしょうか?
ああ、暑さのせいで思考が変な方向に行く。
行けども、行けども荒野な状態だと集中力ががた落ちです。
キャラバンガードの方はこんな状態でも平然としています。
商人の人もバラモンに荷物を載せていますけど、歩きです。
何なのですかこの健脚ぶりは。
やはりValutの人間は外の人と比べて体力が落ちています。

「はは、へばっているな。ほら、もう少しで目的地のテンペニータワーだ」

キャラバンの商人さんは、余裕たっぷりです。

「でも、テンペニータワーってのはどういうところなんですか?」
「んー?正直いけ好かん連中が多いな。アリス・テンペニーなんてその筆頭だ。だが、金払いはいい。そもそも、住人は高い家賃を支払えるだけの財力があるかつ、『グール』で無いことが最大の条件だ。テンペニーはグールがお嫌いらしい」
「うわー、なんですかそれ?」
「まあ、テンペニータワーは『そういうところ』だ。大きな声じゃ言えねえが、テンペニー自身後ろぐらい商売をやっている連中との付き合いが相当あるらしい。報酬次第で何でも引き受ける傭兵隊『タロン社』なんてその筆頭だ。……五体満足で生きる確立を上げるには関わらないのが一番だ」

何でしょうか。こう聞けば聞くほど極悪人の巣窟にしか思えなくなってくるのは?
正直、精神衛生のためには聞きたくもない話だったのですが。
ずんと重くなった気持ちを抱えたまま荒野を行くとやがて一際大きい建物が見えてきました。各部はボロボロですが、要所要所で補強が入っています。
……ついでに銃声も聞こえてきました。けれどキャラバンの商人の方は平然としたものです。

「見えてきたぞ。アレがテンペニータワーだ」
「はあ、ですけど銃声が聞こえません?」
「ああ、テンペニーの日課だよ。あたりかまわず狙撃銃をぶっ放すんだ」

何ですか。その危険人物?!

「この辺だけはミスター・バークの英断だな。最初はファットマンで狙いを定めていたのを取り上げたらしい」

ちょっ!それはしゃれになりません。
因みにファットマンは小型核弾頭を発射する大型ランチャーです。
顔も知らないミスター・バーグ!あなたの英断に心から感謝を!!
テンペニーの奇行にぎょっとしつつも無事に私たちはテンペニータワーのふもとに到着しました。
しかし、そのふもとにはメガトンほど出ないにしてもそれなりの数のバラックが立ち並んでいます。
これは何なのでしょうか?

「テンペニータワーには入れねえが、住人を相手に商売をやっている連中だな。スカベンジャーとか農家とか。テンペニーは『美観を損ねる』とかいって気に入ってねえらしいが、こういう連中もいないとそもそも生活が立ち行かないからな。消極的に黙認しているってわけさ」

へー。そんなことが。ちなみに、スカベンジャーというのは、廃墟を捜索して戦前の物品や武器を回収・修理して販売する承認のことです。でも聞けば聞くほどそのテンペニーと言う人には好感が持てそうにありません。
出会わないのが一番でしょう。

「さてと、俺達はここでの商用で3日ほど逗留するがそれまでに用を済ませてこいよ?3日を過ぎたら容赦なく置いていくからな」
「わかりました。ありがとうございます。集合場所はここですね?」
「おう。気をつけろよ?」

私はキャラバンの皆様に別れを告げるとテンペニータワーに背中を向けました。
妙に門の辺りが騒がしい気がしますが、気になどしません。今回はテンペニータワーに用があるわけではないのですから。
実はこの近辺にはロブコ社があるのです。プロテクトロンを初めとしたロボットやターミナルの開発の最大手。その周辺ならばミスター・ガッツィーも見つけられるのでは無いかと思った私はキャラバンに同行してここまでやってきたのでした。
それでは気合を入れて探してみましょう。
えっ?さすがに中には入りませんよ?不安ですから、チキンと呼びたかったら呼んでください。私、幼女です。
さて、目当てのミスター・ガッツィーはいるのでしょうか?
周囲の瓦礫に身を潜め、息を殺してあたりを探します。
都合よく見つかるとも思えません。今回は周囲の地形をPipBoyに入力することを目的としておきましょう。




残念です。
一日かけて周囲を歩いてみましたが、なかなかお目当てのミスター・ガッツィーに出会えません。
壊れた軍用プロテクトロンの残骸は何体か見かけたのですが、損傷がひどくてパーツをといるぐらいしかできませんでした。エネルギーセルと核分裂バッテリーはかなり美味しい戦利品なのですが、それでもお目当ての品に出会えなかったと言うのはちょっとがっくりします。
でも、気になるのはプロテクトロンの損傷です。銃で破壊されたのではなく、無理やり馬鹿力で壊したような後でした。
もしや、話に聞くヤオ・グアイに襲われたのでしょうか?
レーザーピストルはきっちりとメンテナンスしてありますが、いかんせんヤオ・グアイを相手に戦うには力不足です。反動が無いので私のような非力な幼女には大変ありがたいのですが……。
背中に背負ったリュックも核分裂バッテリーでずっしりとしてきました。
そろそろテンペニータワーのふもとのバラックで換金するべきでしょう。
私はレーザーピストルをホルスターに入れると、リュックを背負いなおしました。
このとき、私の集中力は間違いなく落ちていました。
心は既に今夜の寝床をどう確保するかと言うことに飛んでいましたから。
それは、電光石火の速さで空気を裂いて私の背後から振り下ろされました。

「?っ」

とっさに前へと身を投げ出して、それをかわしました。
この一撃を避けられたのは間違いなく奇跡です。それは一瞬節くれだった鞭に見えました。
でも、それが間違いと言うのはすぐにわかりました。
それは鞭ではなくて毒針でした。
放射能で巨大化した大サソリ。それも、大人一人よりもはるかにでかいだろう化け物でした。

「また虫ですか?!」

ホルスターに収まっていたレーザーピストルを抜き、引き金を絞ります。
レーザーは全て間違いなくあたったはずなのに、信じがたいことにサソリにはダメージが無いようです。

「なんでナマモノにレーザーが通じないのですかー?!」

また振るわれる毒針をぎりぎりかわします
全く!生物は熱に弱いのが常識なのに!何でレーザーを食らってピンシャンしていられるんですか?!
細胞を構成するたんぱく質が間違いなく機能停止しているはずの熱量なんですよ?!
大サソリのハサミにいたっては、たやすく私の細いお腹を引きちぎられるだろうサイズをしていました。
そんなものが、しゃきんしゃきんと開閉する様は恐怖心しかわきません。

「ふえーーん!!ズゴック(仮)といい今回と言い!!甲殻類はこんなのばっかしなのですかー?!」

手持ちのレーザーピストルが通じないとあったら逃げるしかありません。
必死で走ります。その後を追う大サソリ!

「私なんて食べてもまずいです!!他の獲物を追いなさい!!」
「キシャアアーーーー!!」
「今、叫びましたね?!サソリは叫びませんよ?!」
「?!…………」
「今度はだんまりですかーー?!」

本当にコイツはサソリなんでしょうかね?!
遺伝子改造された生物兵器といわれたほうがまだ納得できますよ?!
必死のおっかけっこが続きます。負ければ、私は今晩でこのサソリに「うまうま」されてしまうのですよ?!
そんな未来は断固拒否です!
何とかテンペニータワー近くまでいければ!迷惑かもしれませんが、手持ちの武器が非力なのですから、他の人の手が欲しいのです!
でも、そこまで体力が持つのでしょうか?
サソリはさっきから私を追いかけることに熱中しているようです。
いい加減あきらめてもらえないのでしょうかね?!

「あっ?!」

後ろを気にしていたら、足元が疎かになっていました。
足が滑ってしまいました。
大サソリがここぞとばかりにハサミを開いて襲ってくるのがやたらゆっくりと見えます。
頭の中をよぎるのは、今までの思い出。
身の回りのことには頓着しない父親のために部屋を掃除してきたこと。
10才の誕生日で監督官にいやみを言われたこと。
10才の誕生日でロールケーキをブッチに取られたこと。
父がValutを出奔した影響で私も追放されたこと。
……あれ?なんで幸せな思い出が頭をよぎらないのでしょうか?
しかも、どう考えても私の苦労の大半は父が原因です。
……ああ、父をぶんなぐろうという私の決意はここまでなのですか?
ゆっくりとはさみが私に迫ってきます。
次の瞬間には私は命を落とすでしょう。

『逃ゲル奴等ハ中国兵ダ!逃ゲナイ奴等ハ訓練サレタ中国兵ダ!』

「……へ?」

目の前で私の命を今にも奪おうとしていた大サソリは、間の抜けた電子音声とともに放たれたレーザー光線で吹っ飛んでいきました。
……なんか、今の台詞にはすっごく聞き覚えがあるのですが……。

『ドウゾ、オ買イ物ヲオ楽シミクダサイ』
「ここは、お店ですらないですよー!!」

私がいつぞやスーパーウルトラマーケットで再起動させたプロテクトロンが間の抜けた様子で立っていた。
……ええ、命の恩人ですよ!でもなんか納得いきません!!




あのあと、プロテクトロンは再び姿を消しました。
えっ?あれを仲間にしないのかって?
しませんよ。どうも、してはいけないってゴーストが囁くんです。
まあ、それはさておきあのプロテクトロンのおかげで私の命は助かりました。このことは素直に感謝しておきましょう。
そのおかげで、五体満足でテンペニータワーのふもとまで帰ってこれたのですから。
土埃に薄汚れたまま、核分裂バッテリーを換金できるスカベンジャーを探していたら、いきなり声をかけられました。

「よお!嬢ちゃん。無事に帰ってきたみたいじゃねえか!」
「あっ、キャラバン商人さんですか。商談の方はどうだったんです?」
「まあ、可もなく不可もなくだな。いつも通りの取引だったよ!」

それでも機嫌がよくてお酒でも飲んだのか。顔が真っ赤になっています。
手に持っているのはウィスキーの瓶。やはり、これも戦前の品なのでしょうか?

「おっと、忘れていた。嬢ちゃんは確か、ミスター・ガッツィーを探していたんだよな?軍用タイプの」
「ええ、そうなんです。けど結局見つからなくって……。危うく大サソリに食べられるところでした」
「ははは!五体満足でここにいるんだからいいじゃねえか。それでな、さっきミスター・ガッツィーを売っている奴を見たんだよ。なんでも屋のジョーという爺さんだ。いくらかは聞き忘れたが、よってみたらどうだい?」
「?!本当ですか?!さっそく見てきます!!」

なんて幸運でしょう。捨てる神あれば、拾う神ありとはこのことです。
さっそく値段を聞いてみましょう。交渉次第では安くなるかも知れません。
えーと、そのジョーって人は誰なんでしょう?ミスター・ガッツィーを連れているんだから相当目立つはず……。
って!いた!
丸っこい胴体に、蛸足。ミスター・ガッツィーの特徴です。
一緒にプロテクトロンもつれて歩いています。どうやら、あのおじいさんがジョーみたいです。

「すいませんん。そのミスター・ガッツィーは売り物ですか?」
「ああ、そうじゃよ。ただ、ちょっと癖が強くてのう。どうじゃ、軍曹?」
『司令官殿と共に戦えるのならば光栄であります!』
「ふむ、軍曹も気に入っているようじゃし。1000キャップで販売できるぞ」
「1000キャップですか?!」

高いです。いえ、ガッツィーの値段としてはむしろ安いのかもしれませんが、私自身にそこまでの手持ちがありません。こつこつ廃品を売りさばいて手に入れた500キャップにも満たない金額が今の私の全財産なのです。

「すいませんが、手持ちが無いんです。500キャップで何とかなりませんか?」
「すまんが、わしの方も商売でなあ。500キャップでは大赤字なんじゃよ」

本当にジョーさんはすまなそうです。
購入はあきらめるしかないのでしょうか?こんな場所ではローンの返済だって無理でしょうし。
ううう、悔しいけどあきらめるしかないです。
泣きませんよ?泣きなんてしませんからね?!

「そうじゃな……。嬢ちゃん手先は器用かね?」
「ふえ?それなりに器用ですけど」

ジョーさんはいいことを思いついたとばかりに顔を輝かせた。

「嬢ちゃんに、今手持ちはないんじゃな?わしも軍曹は癖が強くて自分の気に入った人間にしか従うつもりが無くて困っておったんじゃ。そこでじゃ、キャップの代わりにプロテクトロンを捕獲して欲しいんじゃよ。無論、修理不可能にならん程度に壊れていてもいい。それを修理してわしにもらえれば、それでRL-3軍曹の代金にしよう。こんなのはどうじゃ?」

一生ついていきます。神様!
私は外に出てはじめて神様に感謝した。







ジョーさんからRL-3軍曹と呼ばれるミスター・ガッツィーを手に入れるにあたり、交換条件として

出されたのが代わりのプロテクトロンの捕獲。
いわば物々交換です。テンペニータワーに残れる日程はあと2日。
それまでの間にプロテクトロンを捕獲して、見事RL-3軍曹を仲間にするとしましょう!!



さて、ではプロテクトロンはどこにいるのでしょうか?
この辺はミスター・ガッツィーよりプロテクトロンの方が多いですし、見つけるのは比較的に容易で

しょう。ヤオ・グアイに見つからないように事を運ぶ必要はありますが、それでも2日以内には何と

かなりそうです。
まず、プロテクトロンを止める手順ですが、可能な限り損傷を避けなくてはいけません。完璧に壊し

たら私の知識では修理は不可能となるからです。
しかし、真正面から組み合ったら相手はロボットです。まず勝ち目はありません。
こうなると、人間最大の武器『知恵』を絞らなくてはいけないのですよ。

ケース1.『まずは偵察』

ぎちょんぎちょんととても特徴のある駆動音が背にしていた岩山の向こうから聞こえてきました。
動態センサーを刺激しないようにこっそりと頭を岩山の向こうに突き出すと緑色に塗装された軍用プ

ロテクトロンが徘徊していました。
数は1体。その背中の装甲部分ははがれていて、簡単に制御中枢が見えています。
ですが、制御中枢は精密部品です。銃弾を撃ち込んだ日には修理不可能なスクラップの完成です。
そうなったら、ジョーさんとの交渉には何の役にも立ちはしません。
むしろ、PipBoyを経由して、中のプログラムを書き換えるほうが確実でしょうか?
む~、悩みますね。そもそも近づく手立てが無いです。
下手に近寄ったら、レーザーでローストされてしまいそうです。

『不審者発見!撃退シマス!!』
「って!気づかれた!!」
『ヒャッハー……』

うっかり考え込んでいたら、見つかってしまいました。
棒読みで奇声を上げながら、襲い掛かってくるプロテクトロン。レーザーが頭を掠めました。
このままではやばいです!死にます!!

「おぼえていろー!!」
『一昨日キヤガレー……』

戦術的撤退です!決して負けたわけではないのですからね!!

ケース2.『涙の説得作戦』
えーい。近づく手立てが無いのならSpeechの出番なのです!!
【幼女】の魅力でみっくみくにしてやんぜい!!でも、みっくみくにするってどういう意味なんです

か?以前、アマタに変な格好させられてネギを頭上で振り回したときにこういってくれって言われた

のですが……。Valutの住人の思考は結構謎です。

Speech 0% 「おとなしく、投降しなさい!田舎のお母さんは泣いているぞ!!」
 【失敗】  『排除シマス』

ふえーん!通じないよ!Valutで見た刑事ドラマなら上手くいっていたのに!!
『太陽に叫ぶ』の威光が通じないなんて!!
レーザー光線にスポットライトのように照らされながら、逃げました。
ええい!こうなれば次の策です!

ケース3.落とし穴作戦
労力が恐ろしくかかりますが、これを使いましょう。
大昔、人類の武器が石槍だった頃からの狩猟の方法です。
まずは適当な地面を捜します。できれば地盤が軟らかいところがベスト。
見つけたならば、穴掘りの時間です。
……えっ?私一人でプロテクトロンを生める穴を掘れと?
………できるかな?
ひたすら、穴を掘ること数時間。
なんで穴を掘るたびに白骨死体がでてくるんでしょうか?

「なんか慣れちゃったんでしょうね。近頃は白骨死体を見ても悲鳴一つ上げられませんよ」

着々とValut育ちの私もウエィストランドに適応しつつあるようです。
最近では巨大ゴキブリがご飯の食材にしか見えなくなってきましたよ。
これをいい事と見るべきか、悪いことと見るべきか。ちょっと悩みます。
穴の深さは別にすっぽり入らなくていいです。プロテクトロンの腰の深さまであれば十分でしょう。
さてと、適当に上には覆いをかぶせてと。
あとはこれを私が踏まずにプロテクトロンが踏むように誘導するだけです。
待っていなさいよ!プロテクトロン!!


「見つけました……!」

プロテクトロンはさっきと同じ場所を徘徊しています。
あとは、姿を見せておびき出すだけです!
勢いよく、岩場から体を引き出します。そのまま10ミリ拳銃を発砲、弾丸はプロテクトロンの丸み

を帯びたボディにはじかれたようですが、別段かまいません。
あのプロテクトロンの注意を私にひきつけることが目的なのですから。
たちまちプロテクトロンからの猛烈な反撃が始まりました。
レーザーがすごい勢いで撒き散らされます。

「うひゃああああっ?!」
『ターゲット確認。殲滅シマス』

逃げる私をプロテクトロンはぎっちょんぎっちょんと特徴的な足音と共に追いかけてきます。
レーザーが髪を掠めました。

「ああー!ここまで髪を伸ばすのは大変だったのに!!」

髪の一部が焼け焦げてちりちりになってしまいました。
くすん、アフロヘアーにならなかっただけましかもしれませんが、それでもショックなのです。
このあふれんばかりの悲しみはきっちりと精算してやるのですよ。
目標の落とし穴まで後わずか、さっきの大サソリのようにこけるわけには行きません。
ぎりぎりまで近づいて、地面を踏み切る。
落とし穴を飛び越え更にかける。
がこんと後ろから聞こえた金属のぶつかる音が私に作戦の成功を教えてくれました。



「うむ。確かに受け取ったよ。これでRL-3軍曹はお嬢ちゃんのものじゃ」
『よろしくお願いします!司令官殿!』
「よろしくですよ。軍曹!」

ちょとおどけて敬礼。
テンペニータワーのふもとまで戻った私は手に入れたプロテクトロンをジョーさんに引き渡しました


これでRL-3軍曹が私の仲間になったわけです。これでより安全にウェイストランドを放浪すること

ができます。
さて、後しばらくはモイラのお手伝いをしながら装備と情報の充実を待ちましょう。
……今度はどんな厄介ごとを請け負う羽目になるんでしょうかね?
………それなりに安全なのがいいなあ。無理だと思いますけど。







[12211] 4.英語では鉱山も地雷もまとめてMine
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:41c186b6
Date: 2009/10/22 16:07
皆様、こんにちわ。RL-3軍曹と言う仲間を手に入れた幼女です。
用が済んだ以上これ以上テンペニータワーにいるのはトラブルのにおいがぷんぷんしたので、キャラバンの皆様と一緒にメガトンまで帰ってきました。
仲間を手に入れた以上DCに行こうかなという考えが頭をよぎらなかったわけでもないのですが、もう少し装備と情報を充実させてからにしようと第一回脳内幼女会議で決定したのですよ。
ん?妙な電波が混信しましたか?

4.英語では鉱山も地雷もまとめてMine

「へー。ガードマンを手に入れたのね。とっても素敵!これなら今まで以上にもっとたくさんの検証が依頼できるわよね。以前はスーパーミュータントについての調査もやっていたのだけど、また復活させようかしら?いえ、だめね。まずは足元からこつこつと行くべきものだと思うわ。うん、そうだ。地雷原の方に言ってもらおうかしら?昔はちゃんとした住宅地だったんだけど、奴隷商人が片っ端から住人をさらっちゃったから今は無人なのよ。おまけにこれでもかと地雷をまいて行っちゃったから今じゃ誰も近寄らないのよね。お金にもなるし、一つ持って帰ってきてくれない?」

モイラのマシンガントークは相変わらずなのですよ。
でも、今なんか壮絶に物騒なことが依頼された気がするのですが?!

「えーっと。モイラ、私の幻聴だと確信しながら聞くのですが、今何と仰いましたか?」
「えーっ?ちょっと地雷原まで行って地雷を取ってきてって言うお願いよ。大丈夫、地雷原は物騒だからレイダーだって近づいてこないわ。安心して地雷を無効化できるわよ。それと地雷って言っているけど実際は圧力感知式じゃなくて動体反応感知式だったりするから気をつけてね」

ああ、モイラの微笑にすっごく殺意が沸いてくるのですよ?
きらきらと瞳は好奇心で超新星のように輝いています。
しかし、このくらいで怒っていては、モイラの相手なんてできません。
ほら、アンヘル。壁際の傭兵さんをみなさい。まるでセンニンのように達観した瞳の持ち主を……!

「モイラ。地雷の研究も有用とは思いますが、できればもう少し簡単なものはありませんか?私幼女ですよ?」
「うーん。第1章の残りの内容は放射能に対する検証ね。軽く200rad位浴びてきてくれない?600radならなおいいわ」
「……喜んで地雷原の調査をさせていただきます」

放射能と地雷を見比べれば、地雷のほうがまだとっつきやすいです。少なくとも目に見える脅威ですから。
今もPipBoyを見ると私の中に放射能が蓄積されていっているのですよ。
好き好んで放射能を大量摂取するのはどうも、拒否感が漂うのですよ。
かといって地雷原も相当危険だとは思いますが、今の私には仲間がいます。
脇を見上げれば、RL-3軍曹の勇姿がッ!

「よろしくお願いしますよ!軍曹!」
『お任せください司令官殿!』

RL-3軍曹はセンサーを大きく上下させてうなずいてくれました。

メガトンをでてPipBoyを確認すると目指す地雷原は相当離れています。
仲間としてRL-3軍曹がついていますが、無事につけるのでしょうか?

『うぎゃあああああああっ?!』
「早速どうしたのですか?軍曹!」

脇から上がった悲鳴に振り返ると軍曹がその触手を震えさせています。
そのセンサーの先には……巨大ゴキブリ?

『虫はっ!虫はっ!汚物は消毒だー!!!っ』
「……へ?」
『消毒だー!!』

火炎放射が盛大にゴッキーに襲い掛かります。
あっという間にゴッキーは消し炭となりました。

『ふーっ。申し訳ありません、司令官殿。どうも虫は、虫だけはだめなのです!!』

あー、そうですね。軍曹はロボットですもんね。虫(バグ)は天敵ですか。
……やばい、購入は早まったのかもしれないのですよ。
あー、いつ見ても空はくすんでいるんですねー。
ほらー、小鳥さんが飛んでいまーす。



とりあえず、地雷原を目指すことにします。
何回かレイダーに教われましたが、軍曹のプラズマ光線であっという間に緑色の粘液へと分解されてしまいました。まさに殺人光線!
助けられている身でいうのも妙な話ですが、この武装物騒すぎませんか?
PipBoyにも順調に地形データがたまっていきます。やはりいくつか橋が崩落していたり、高速道路が落ちていたりと通れなくなっている道もあるので、そのデータも入力されていきます。
しかし、橋に関しては板を渡して通りやすくしてある部分もありました。
きっとキャラバンの皆様が利用していたりするのでしょう。

「ん?アレは町ですか?」
ずっとゆくと目の前には小高いフェンスが見えてきました。
一体なんでしょうか?町にしては人気が全く無いですし、廃車が小高く積みあがっています。
一体何なのでしょうか?
壊れていたフェンスのゲートを押し開けましたが、誰も来ません。
戦前からの廃車場なんでしょうか?
『司令官殿。注意してください。動体反応がいくつか奥のほうであります』
「……サイズは?」
『おそらく人間です』
「レイダーでしょうか?軍曹センサーの感度を最大に」
『了解しました!』
そっとホルスターに入れていたレーザーピストルを引き抜きます。
エネルギーセルは満タン。
そっと隠れながら進んでいくと、いきなり銃声と悲鳴が上がりました。
「何事ですか?!」
あわてて物陰から覗き込んでみるとレイダーが空を飛んでいました。
もう一度言います。
レイダーが空を飛んでいました。

「……人間って空を飛べるんですね」
『私もはじめて知りました』

空を飛んだレイダーはやがて重力に敗北して地面へと墜落しました。
ごろごろ転がった挙句ピクリともしません。
……一体何事でしょうか?
飛んできたほうを見てみるとそこには一匹のわんこがいました。
えっと、このわんこがレイダーを吹っ飛ばしたのでしょうか?
今もお座りしています。

「わんこに襲われないのははじめてですね。えーっとどうかしましたか?」
「ばうっ」
『なるほど、飼い主が襲われたと』

て、わかるのですか軍曹?!
よく見るとそばにはスカベンジャーが事切れていました。

「ばう」
『ふむ、いく当ても無いと。どうでしょう司令官殿。彼もまた旅の共に加えては?』
「それは別にかまいませんけど……。彼?も望んでいるんですか?」
「ばうっ!」

ああ、今のは軍曹に訳されなくてもわかりました。肯定ですね。
いいでしょう。仲間は多いほど心強いのです。

「これからよろしくお願いしますよ。えーっと、名前は?」
「ばうっ」

首輪に書いてあるのですね。ちょっと失礼。
毛に埋もれた首輪を見てみると、えーっとこの綴りは……。

【Dogmeet】

……こんな名前でいいんですか?

アマタ。ウェイストランドは殺伐とした世界なのですよ……。
さすがにわんこに【犬肉】なんて名前をつけるとは……。

気を取り直して、進みましょう。
実際ドッグミートの加入はとてもありがたかったのです。
荒野に散らばる弾薬や医薬品を確実に見つけ出す嗅覚。そして戦闘力。どれも旅の友にするにはありがたい能力なのです。
廃車場を抜ければ、すぐそこが地雷原とかした町でした。
遠目から見ても黄色くて丸い地雷がごろごろしているのですよ。
ううっ、できれば近づきたくないのですがモイラからの依頼である以上仕方ないのです。
覚悟を決めて進みましょうか。
軍曹は……、武器しかついていない腕にホバー。どう見ても地雷の解体なんてできませんよ。

「軍曹。地雷を見つけたときの対処法は?」
『遠くから攻撃して誘爆させます』
「力押しですか?!」

ドッグミートは論外です。犬に地雷解除ができるはずはありません。
とほほ、私がやるしかないのですよ。
大丈夫。きっと大丈夫です。地雷の解除なんて爆発する前にボタンを押し込むだけなんですから!
覚悟を決して地雷に近寄ります。
ぴっと嫌な電子音。
ぴっぴっぴっとカウントダウンが始まりました。
って爆発までのカウントですよね?!
あわててボタンを押し込みます。
電子音が沈黙、続いて静寂。
うう、心臓に悪いのですよ。むしろ漏るかと思ったのです。
けど、モイラの依頼はこれでまだ終わっていないのですよ。
公園まで行かないと完了したことにならないのです。
前を見てみると、いやになるくらいに地雷が目に飛び込んできます。
地雷。地雷。地雷。地雷。地雷……。
見ているだけでげっそりしてきました。
これを前に進みながら解除しないとだめなんて……、本当につらいです。

パンっ!

……えっ?銃声?

『司令官殿!狙撃です!!』

RL-3軍曹の警告。
また、目の前でアスファルトのかけらが飛び散りました。

「ええぇぇえええええ?!」

聞いてないのですよ?!
悲鳴を上げながら、家の残骸の脇に転がり込みます。
ひっ、今体を掠めました!!
弾丸の飛んできた方向には一際高い崩れかけた廃ビルがあったはずです。
そこから狙撃されたのですか?
RL-3軍曹とドッグミートが走りよってきました。

『司令官殿!お怪我は?!』
「だ、大丈夫れす!まだ生きてましゅ!」

はう、噛んじゃった。
いまは狙撃が止まっていますけど、多分顔を出したらまた狙撃されます。
じっと隠れてチャンスを待つより他に無いです。

ぼんっ!

……なんでしょうか?今のすごく不吉な感じのする音は?
音のほうを見てみると、止まっていた車が小さく火を上げていました。
どうも流れ弾が当たったようですね。
でも、何でしょうか?この不吉な感じは?
軍曹も車が燃えていることに気がついたようです。

『……司令官殿。ひょっとしてご存じないのですか?』
「?何ですか?」
『……実は戦前はガソリンをはじめとした地下資源が枯渇しまして、それこそが世界大戦の引き金にもなったわけです。当然、車だってガソリンで動いていませんでした』
「……?何で動いていたんです?」

何でしょうか?めちゃくちゃやな予感がしてきましたよ?

『核動力です。因みに車は核爆発します』
「総員退避ぃー!!!」
『残念ながら、間に合いそうにありませんね』

冷静に言っている場合ですか?!
かっと車から白い閃光が放たれました。

「うにゃーーーーーーー?!」
『のぉおおおおおおおっ?!』
「ぎゃぃいいいいいんんっ!」

みんな揃って爆風に吹っ飛ばされました。
天高く舞う車。吹っ飛ぶ瓦礫。
誘爆する地雷。その誘爆が更に車を誘爆して続く爆発の連鎖。
体重の軽い私にいたっては爆発でころころ吹っ飛ばされました。
まさに地獄絵図。
核戦争さながらの光景が広がりました。
ころころ転がっていた私はコンクリートの壁に体を打ち付けて止まりました。
ううっ、何でこんな目に……?
よろよろと立ち上がると町は町中で車や残った木材がめらめら燃えていました。

「そうだ!狙撃犯は?!」

あわてて廃ビルを見ると、なんか違和感が。
えーっと、ビルの上層階が吹っ飛んでいませんか?
ひょっとして自爆?
炎あふれる町になぜか寒い風が吹いた気がしました。




「……一体この人はなんだったんでしょうね?」
『愉快犯でしょうか?』

軍曹と一緒に事切れた狙撃犯を見下ろします。
どうやら、車の爆発で飛んできた瓦礫でお亡くなりになってしまったようです。
大事に手に持っていた狙撃銃はありがたく頂くことにしましょう。
しかし、それ以外に身元を示すものが何一つありませんでした。鍵の束がありましたが、これはこの集落で鍵のかかっていた家のものと一致しました。この集落の住人だったのでしょうか?

「……気にしても、どうしようもありませんね。帰りましょう」
「ばうっ」
『わかりました。司令官殿!』

でも、本当にこのゴルゴ爺さんは何者だったのでしょうか?
一般人abcとは違った印象があるのですがね?
まあ、考えていても答えのでない問題ですから放っておいてモイラに地雷原のことを報告しますか。
無論ちゃんと公園に行ってからですが。……でも、妙に体が重いですね。疲れたのでしょうか?



「まあ、お帰りなさい!地雷原は同だった?ちょうどこっちも“オイモ”を手に入れたところだったの!」
「最悪な場所でした。爆発するし、スナイパーはいるしで、絶対に近寄りたくありません」
「へー住人が居たのね!それは十分貴重な発見だわ!それと地雷はもってきてくれた?!」
「途中で誘爆しないかとひやひやだったのですよ。はい、これです」
「ありがとう!うーん。この形を見ているとインスピレーションが沸いてくるわねえ。あっ、これは報酬よ!あれば便利でしょう?」

そういってモイラが渡してきたのはグレネード。ひょっとしてオイモってこれのことなんでしょうか?
……なんか、苦労と報酬がつりあっていませんね。疲れたからもう寝ましょうか?

「それと第1章の放射能の検査のことだけど、これはもうできそうね。ほら、ガイガーカウンターが」

……なんですと?

「ふんふーん。ちゃんとやってきてくれるなんてうれしいわ!サバイバルガイドにはあなたの献身的な調査協力についての賛辞も乗せておくわ!そらじゃあ、質問に答えてくれる?」

……どうやら、地雷原での車の爆発で一気に被爆したみたいです。ガイガーカウンター見たら600RADを超えていました。
……とほほ。








[12211] 5.地下鉄を歩いて
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:87b94391
Date: 2009/11/14 01:16
アンヘルです。
気がついたら、モイラに改造されていました。なんか放射能浴びたら、怪我が治るらしいです。
……ちゃくちゃくとミュータントへの道を進んでいます。……くすん。


5.地下鉄を歩いて


メガトンの自宅で今までに回収してきた武器。弾薬の整理をして見ます。
ずらりと床に並べられた無骨な武器にロボット執事のウッズワースはご機嫌斜めですが、我慢してもらいましょう。
何せ戦前から使われている武器は劣化が激しいので、メンテナンスもなしに使えばすぐに暴発か分解しかねません。そんな物騒なものに命を預けたいとはおつむの足りていないレイダーだって思いません。
こうしてずらりと並べた武器を見ると、実弾系の武器がほとんどですが、反動に私の体は対して耐えられません。その点、最近のお気に入りの武器のレーザーピストルは反動もないし、弾道がまっすぐなので私のような幼女でも扱えるから助かります。
一番大きなスナイパーライフルは先日ゴルゴじいちゃんから奪った戦利品です。
反動がつらいですけど、遠くの敵が見えるのが魅力です。なぜか無い双眼鏡の代わりに重宝しています。
後はレイダーがもっていたハンティングライフルやバット。
……金属パイプを武器としてカウントするのはどうも気が進みませんので捨てましょう。
軍曹も、火炎放射器燃料棒は十分に持っているようです。
では、そろそろギャラクシー・ニュース・ラジオに向かいましょう。
父の消息を尋ねるのです。
……モイラへの怒りを抑えられるうちにね。

『……司令官殿。目が邪悪になっています』
「くーん。くーん……」

軍曹とドッグミートがなんかおびえていますけど、無視しましょう。
ええ、モイラにこの憤りをぶつけるのを我慢するためにも。



「GNRに行くって?首都は戦場だぞ。やめた方がいいと思うがね」
「危険なのはこのウェイストランドでの生活で知っています。でも、そろそろ父を捜さないと。またひと様に迷惑をかけていたらと思うと……」
「……つくづく子供の思考じゃねえな」

モリアティは呆れた顔になっています。
ええ、でも父はそういう人なんですよ。学者馬鹿で、まるっきり空気の読めない人なんです。
Valutの監督官にそうしたように人の神経をゴリゴリとヤスリで削っているに決まっています。
絶対に監督官の性格がエキセントリックになった原因の一つは父でしょう。
断言できます。

「……しょうがねえな。いいか?まずDCに行くには地上のルートはほぼ無理だ。ビルがあちこちで倒壊していて道が埋まっているし、今も崩落が続いている。その代わり、比較的に地下は安全だ。今は使われていないメトロが交通の要になっている。そうは言っても、いまだに危険な連中がうろついているのは変わらないんだがな」
「メトロ、地下鉄ですか?」
「ああ、埋まっているところもあるがGNRまでは問題なくいけるはずだ。B.O.Sも通路に使っていると聞いたことがある。マークをたどっていけばいけるだろう」

こんなマークだといいながらモリアティは歯車と羽を組み合わせたようなマークを見せてくれました。

「あと、この近辺のメトロの入り口はスーパー・ウルトラ・マーケットの向こう岸だな」
「ありがとうなのですよ!」

モリアティは悪人顔だけど、結構いい人なのかもしれないですね。
軍曹!ドッグミート!早速お出かけなのですよ!



「そ、外なのです!!」
『いやー、暗くてじめじめしていてなかなかつらい道中でした』
「お、おまけにフェラルグールには襲われますし……、アレだけ怖いとは思いませんでした」

そう、モリアティが言いそびれていたのか、忘れていたのか知りませんが、メトロはゴッキーとモールラットとフェラルグールの巣でした。
おまけにレイダーがねぐらにしていたうえにフェラルグールと血で血を洗う抗争を繰り広げていましたよ。
何度かあのスーパーマーケットプロテクトロンを目撃したきもしますが、きっと気のせいです。
あんな図体のものが一瞬だけ現れて次の瞬間に消えているなんてありえませんもんね!
でも、一番怖かったのはフェラルグールの群れでした。
人肉を食べているところを目撃してしまいましたよ?!
あんなのをグールの皆さんと同列視したくはありませんね。
一度は地上に出るルートを間違えてスーパーミュータントの軍勢の中に突っ込んでしまいましたし、反省です。
でも、何とか無事につけましたから。ここからGNRまでの道は目と鼻の先です!

『いえ、司令官殿。もうひと悶着ありそうです』
「え?」
『敵です!』

軍曹がじゃきっとプラズマガンを構えたのと銃声が響いたのはほぼ同時でした。

「わっわわ?!」

あわてて物陰に隠れます。一瞬ですが、見えた影。スーパーミュータントに間違いありません。

『汚物は消毒だー!!』
「ばう!!」
「って!軍曹!ドッグミート突っ込まないでください!!何でそんなに突撃思考なんですか?!あなた方はっ?!」

物陰に隠れた私とは対照的に軍曹とドッグミートは二体ののスーパーミュータントに突っ込んでいきました。
ドッグミートはともかく軍曹!あなたなら物陰からの射撃だってできるでしょう!?

「ああ!もうどうにでもなれです!!」
『ふはあああ!汚物は!汚物は消毒だー!!』

軍曹の不気味な高笑いをバックに私もレーザーピストルを打ちます。
ええい!戦前のロボットのAIには致命的な欠陥があるような気がしてなりません。
またたくまにスーパーミュータントは軍曹の火炎放射器の炎に包まれました。
それでも平然と戦いを挑んでくるあたり、脅威の生命力とでも言うべきなのでしょう。
ですが、その生命力も頭を打ち抜かれてはどうしようもなかったようです。
ただし、その弾丸は私たちの放ったものではありませんでしたが。

『隠れていろ!!』
「ぐえっ?!」

物陰から伸びた腕がむんずと私の襟首をつかみました。
幼女にあるまじき悲鳴と一緒に物陰へ引きずり込まれました。
それと一緒に響く実弾の銃声と、何か重いものがひっこ抜けるような音。
次いで爆発がスーパーミュータントを吹き飛ばし、肉片に変えるのを目撃しました。
腕の持ち主が引っ張り込んでくれなかったら、私もミサイルの巻き添えを食らっていたかも知れません。
軍曹とドッグミートも間一髪で巻き込まれずに済んだようですが。

『何を考えている!こんなところを子供がうろつくなんて!』
「えーと。どちら様ですか?」

我ながら一寸間の抜けた質問をしたと思う。
機械を通して変調した声。ですが、おそらく女性でしょう。
その体は完全にパワーアーマーが覆っていて肌なんて見えませんが。

『Brotherfood Of Stealのイニシエイト・レディンだ!それと私の質問に答えてもらおう!』
「イニシエイト・レディン。そう怒鳴っていては答えられないわよ」

声を荒げるレディンさんに横手から声がかかった。
この人も女の人だ。パワーヘルメットをかぶらずに金髪を無造作に束ねている。
なんとも力強い意思にあふれた眼をしている。

「でも、レディンの言うとおり。この地区は戦場よ。なんでこんなところにいるの?」
「ギャラクシー・ニュース・ラジオに行こうとしていたんです。父がそちらに向かったと聞きまして」
「ギャラクシー・ニュース・ラジオに?今はまずいわ。スーパーミュータントが大規模攻勢をかけてきているの。私たちはそこに向かう応援よ。近づかない方がいいわ」
「手伝います!手伝わせてください!」

ようやくつかんだ父の手がかりがまた失われようとしています。そんなことを許すわけにはいきません。

「いいえ、手伝いは要らないわ。素人に手を出されるほど困窮していないもの」
「でも!」
「私たちの後を突いてくるなら、止めれないわね。但し、守って上げられないわよ」
「―感謝します!!」

事実上のOKサインです。
実際、私も真正面に立つのは火力的にきついですから、これはありがたい話です。

『パラディン・リオン!何を考えているんですか?!』
「どうせ止めたって隠れてついてくるわよ。それなら目の届く場所にいてもらったほうがまだいいわ」
『しかし!』
「急ぐわよ。これ以上の時間の浪費は更に仲間の命を奪うことになるわ」
『……了解』
レディンさんは不承不承といった感じで私の同行を認めました。
むしろ、これはリオンさんに押し切られたというべきなのでしょうか?

『……気をつけろ。後方が絶対に安全というわけじゃない』

え?
レディンさんはそのまま振り返ることなく前へと歩いていきました。
これは、心配してくれたんでしょうか?
意外にいい人なのかもしれません。

『隊長!新入りですかい?』
「いいえ、見学者よ。状況は?」
『まあ、ご覧の通りですよ。壁を盾に撃ってくる奴もいれば、焦れて突っ込んでくるノータリンもいるってね?!』

曲がり角で、陣地を構築していた兵士の最後の言葉と一緒に放たれた弾丸は見事にハンマーを振りかぶってきたスーパーミュータントの頭をふっ飛ばしていました。
なるほど、パワーアーマーを着込んでいるに値する錬度の人たちなんですね。
Brotherhood Of Steel、一体どんな組織なのかというのを聞きそびれましたね。

「いいわ。通常の演習どおり突っ込むわよ。レディンついてきなさい!ガブラス、バックアップを頼むわ!」
『了解しました!』
『まかされた』
「いいわ。Go!」

リオンさんの掛け声と一緒に突っ込んで行きます。
スーパーミュータントたちも元は学校と思しき建物の崩れかけた窓枠を盾にして打ってきていますが、大半は猟銃でパワーアーマーを相手にするにはあまりにも力不足です。
むしろ、脅威としてはその馬鹿力で思いっきりぶん殴られた方が効くのですが、ハンマーを持っていた連中は既に掃討されています。

「軍曹!スナイパーライフルを!その後は邪魔しない程度に突っ込んでください」
『了解しました!』

軍曹から戦利品のスナイパーライフルを受け取った後は手近な瓦礫を銃座にして狙撃します。
本来は長距離狙撃のための銃ですが、近距離で打てばその威力は絶大です。
腕に当たれば、ほぼ確実に武器を取り落とします。
無論、あたればという話がつきますが、距離が近い上に腕のぶれは押さえられているため確実に当たります。

『ナイスアシストだ!嬢ちゃんいい腕してるぜ!!』
「ちょっ!痛いですから!背中を叩かないで!!」

さっきの陣地を構築していた兵士の人がパワーアーマーをつけた腕で背中をバンバンと叩いていきました。
力が強化されているからとてもいたいのです。
恨みがましく見上げると『おう!わりぃわりぃ』と全然悪く思っていない様子で先へと進んでいきました。
ほのぼのしていますが、着実に戦場は傍まで迫ってきています。
その証拠に絶え間ない銃声が聞こえてきました。

『おらー!騎兵隊の到着だ!!』
『タリホー!!』

雄たけびと一緒にBOSの兵士達は突っ込んで行きます。
見える限りのスーパーミュータントの数は10にも満ちません。
それも大半はGNRを防衛していたBOSの兵士達の手で怪我を負っています。
そこに加わった増援の兵士と私たち。
決着がつくまでに数分とかかりませんでした。

「ふう。何とか終わりましたか」
『当方に致命的損傷はありません』
「ばう!」

軍曹とドッグミートも無事なようで何よりです。

『おう。嬢ちゃんたちも元気そうだな。怪我がなくて何よりだ』
「ああ、どうも。……ですが」

そう、私たちに怪我はありません。ですが、BOSの兵士達は何人も犠牲になり路上のそこかしこに倒れ付しています。

『俺達はこうなることも覚悟してBOSに入隊したんだ。……気にすることじゃないさ。このウエィストランドじゃ人の命は限りなく安い』
「……」

そう、この大地ではたった一杯の水をめぐって恐ろしいほどの血が流されます。
Valutでは飲み放題だった水もこの値では宝石以上の価値があります。
人の命なんて言わずもがなです。
なんて、殺伐とした暗い世界なんでしょうか。

ズン。

……気のせいですか?何か大地が震えたような?
目の前のBOSの兵士も何かに気づいたように口をつぐみました。

ズン。

いえ、これは気のせいなんかじゃありません。確かに地面が揺れました。

『……まさか、ベヒモスか……?』
「ベヒモス?」

その言葉を口にする兵士の声は明らかに恐怖にひび割れていました。

ズン!

爆発。
バスの残骸が炎を上げて吹き飛びました。
閃光、そして衝撃と熱。

『レディン!!』

そのとき、私は確かにバスの傍に立っていたその姿が宙へ吹き飛ばされる光景を目撃しました。

「うにゃあああああああっ?!」

軽い私の体を衝撃波が吹き飛ばしました。
2度3度、地面に激突し転がります。
鈍い音と一緒に瓦礫に打ち付けられた体はジンジンと痛みの信号を発しています。
あまりの激痛に声すら出ません。
核の炎の中から現れたのはスーパーミュータントを遥かにしのぐ巨体の化物。
その手には消火栓を武器のように握り締め、されこうべをまるで首飾りのようにまきつけています。

『よくもやってくれたな!!』

怒りの声と一緒に飛び出したBOSの兵士がアサルトライフルを放ちますがちっとも効いている様子がありません。
それどころか、まるでうるさいハエを見つけたかのような視線で見下ろしています。
逃げてと叫びたいのに声すらでません。
それは実に無造作に消火栓を横薙ぎに振るいました。
たったそれだけ。
たったそれだけでBOSの兵士は勢いよく壁に叩きつけられ絶命しました。
パワーアーマーの隙間から赤い血が飛び散り、壁に赤い人型のスタンプを残します。
ついさっきまで話していたのに。
ついさっきまで生きていたのに。

「―しょう」

ああ、これは誰の声ですか?

「―くしょう」

聞きなれた声です。ああこれは―。

「畜生!!」

私の声でしたか。

体がまるで自分のものでないかのように言うことを聞きません。瓦礫に手を突き無理やり体を起こそうとしますが、上半身を起こすのでやっとです。
ベヒモスは私のことを歯牙にもかけずに残ったBOSの兵士達を追い詰めています。
消火栓が振るわれるたびに兵士がゴムマリのように吹き飛ばされます。
どうやればいい?
どうやればアイツを殺すことができる?
思考が疾走します。
手持ちの武器では明らかに火力が足りません。
もっと威力がなければ。
いま、この場で最大の火力を持つ武器は何だ?
広場を見渡します。
どれがつかえる、どれがつかえる、どれがつかえる?!
アサルトライフル、レーザーライフル、レーザーピストル!
どれも威力が足りません。
そのときになって、私はようやく自分の傍に倒れ付した兵士が持っているものに気がつきました。

「ああ、これがありましたか」

それは間違いなく。この場にある武器で最大の威力を持っています。
言うことのない体を引きずって、転がしてその兵士の傍まで近寄ります。
決して話すまいと硬く握り締めている指を解き、グリップを握り締めます。
弾はまだ残っています。

「これで……。決めます……!」

体は重さでふらつきますが座って撃つには問題ありません。
弾を装填します。
BOSの兵士達も私の持っているものに気がついたのかベヒモスから距離をとります。
違和感に気がついたのか振り返るベヒモスの顔を私は照準器越しに睨み付けました。

「人間を舐めるな―!」

私は肩にかついだファットマンの引き金を引き絞りました。
ぼすっと間の抜けた音と一緒に太っちょの弾頭がベヒモスめがけて飛んでいきます。
綺麗な放物線を描いて―
―着弾。

襲い掛かってくる閃光と衝撃波の中で私の意識は暗転しました。






[12211] 設定に類するもの
Name: NAMELESS-ONE◆e32d1714 ID:87b94391
Date: 2009/11/14 01:17
主人公の解説

【名前】
アンヘル
【年齢】
10歳
【性別】

【解説】
学者馬鹿のジェームスの娘。父がValutを出奔した後、放逐されて地上へと出る。
話し方からわかるように、年齢からは考えられないくらいの落ち着きがある。
おそらく思い込んだら一途なジェームスのフォローをするうちにこんなんに成ってしまったのだと思われる。
容姿に関しては『エンジェルMOD』をぐぐって見るべし。

5話時点のステータス
Lv.4
Str:3
Per:5
End:2
Cha:7
Int:6
Agi:5
Luc:7

トップスキル3
サイエンス:35
エクスプロージョン:25
ロックピック:30


Perk
【幼女】
会話文に特殊な選択肢が現れるほか、Speechなどの成功率が上昇する。
【Mysterious Strager】
あなただけの守護天使がピンチのときに助けに来てくれます!


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