番外編です。
本編のイメージを壊したくない人は見ないことをお勧めします。
今回のネタは読者の方で、是非見てみたいものがある!とのことで、作者自身も書いてみたかったので、書いてみました。
いわゆるネタものなので、深く考えずに気軽に読んでくださいね。
では、どうぞ。
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これはいつかも覚えてない遠い記憶──と言うわけでもなく、またそんな昔の話でもあるわけがないので、大げさだが、
これはちょっとした、俺のなのはに対する妬みや恨み、通常嫉妬と言われる感情から起きた出来事の話である。
いつも通りに学校で、そこそこのバカ騒ぎをした後、一度家に帰り、なのはの家でかなり激しい剣術の鍛錬をして、家に帰宅。
そして、毎度おなじみの魔法の練習の時間。
「今日の竜也の目標はなのはちゃんの撃墜です」
「は?」
「は? じゃないですよー」
「いやいや、俺攻撃魔法はあまり教えてもらったことはないぞ?」
「そのための練習でしょ?」
俺にとって魔法とは一種のストレス発散方法。
良い言い方をすれば、スポーツなんかと変わらないと思っている。
相手がいない自分が満足するだけのスポーツ,。たぶん、この言い方が最もシックリ来るだろう。
そんな実用性のない魔法を習っている俺に対し、なのはは逆にスポーツなんていう甘い考えではなく、
一種の手段、または自分のやりたいことを見つける新たな可能性だと思っているようだ。
俺にもそんなことをもってる時期はあったさ。
母さんに魔法のことを教えてもらって、実際に使ってみて。
練習していくうちにだんだん上手く使えるようになって、自分はこの新たな可能性──魔法によってどんな未来が待ってるんだろうと、
わくわくして、うきうきして、楽しくてしょうがない毎日が。
いや、今だって魔法を習っていることは楽しいよ?
でもねぇ。
やはり現実と理想は遠いものだ。
残念だけどこれ現実なのよね、とはまさにこのことだろう。何? そんなセリフじゃない? 細かいことはいいんだよ!
そんなわけで今日も楽しい魔法の練習の時間です。
「先生しつもーん!」
「はい、なのはちゃんどうぞ」
「じゃあ、なのははどうすればいいんですか?」
「必死に竜也の攻撃から逃げてください、攻撃は駄目ですよ」
「わかりました……」
今日は砲撃できないとすると、シュンとなるなのは。
ざまあみろである。
なのはが魔法の練習と言うと、ゲロビもとい砲撃の嵐を受けることになる。
どこにそんな魔力があるのかと聞きたいところなのだが、
「なのはちゃん集束・圧縮がすごいから竜也ほど攻撃にかけるときの自身の魔力は使わないのよ」と母。
何とまぁ便利で羨ましい才能で、なんて思ってたら、さらに一言。
「あとはあのレイジング・ハート(以下R・H)って言うデバイスが優秀なのもかなり大きいわね」
ほぅあのデバイスか!? あのデバイスがずるいのか!?
卑怯なんだよなのはは、というかおかしいだろ!
俺はデバイスすら持っていない一般ピーポーですよ? いや、正確にはデバイスの所持を許されていない魔導師ですけど!
ずるいんだよなぁ、なのははさ。魔導師になったばっかしの癖にいっちょまえにインテリジェントデバイスなんて……
「このブルジョワめ!」
「にゃ!? な、何のこと?」
こうなったら、なのはに当らずにはいられなかった。
今日は普段俺にぼかすか砲撃撃ってくる少女に復讐してやる!
デバイスなんていう高級なものをもってるブルジョワ階級に! 貴族階級に革命を!
俺の打倒なのはへの心は決まった。後はゴングがなるのを待つのみである。
母さんの、「はじめ!」と言う言葉が練習場に広がる。
今日の俺はせーかーいーいち!
そう心に呟きながら、一気になのはに突っ込む。もちろん、俺のこの右手でだ。
俺も確かに攻撃手段として砲撃魔法もあれば、射撃、広域魔法もできないことはない。
ないのだが、まだ使いこなせると言うレベルではなく、あくまで使えないこともないと言う最低ライン程度なのだ。
もちろん、そんな攻撃でも数で押せればなのはを撃墜できるかもしれない。
しかし、だ。
そんなのは、魔力の無駄使いであり、そもそも防御も硬いなのはに通じるとは思えなかった。
ならば、である。
俺はこの生まれながらに備わっている腕を! 手を! 足を信じるしかあるまい。
せめて武器があれば、普段の剣術の鍛錬が生きると言うものだが、生憎ながらない。
それでも、剣術といえども、それを使うにはもちろん体術も磨く必要がある。
なので、俺の剣術の腕がそこそこあるなら当たり前ながら、体術のほうにもそこそこの自信がある。
ましてや、今まで母との模擬戦、魔法の練習で身一つで嵐のような攻撃を避けてきたのだ、そんな俺に死角はなかった。
「なのは歯食いしばれよ!!」
「わっ! 竜也君がもう目の前に!」
俺の動きは早かった。
今まで散々逃げ足に使っていたスピードを攻撃に方面に応用すればいいのだ、単純な話である。
俺は右手を強く握り、なのはの目で思いっきり振りかぶる。
「闇の指!」
英語訳してね。
俺の攻撃がなのはにあたり、ドーン!と言う爆発音と同時に煙が舞い上がる。
なのはは俺のスピードに追いていけず、目の前に迫ってようやく状況を理解。
しかし、目では追いつけても体は明らかに反応できていなかった。
それは練習不足というのもあるのだろうが、なのは自身が高速戦闘が苦手と言うのもあるのだろう。
そして、それは致命的ともいうべき反応だ。勝負は一撃で終わった、かのように思われた。
……おかしい、確かに直撃でなのはも反応できていなかったはずなのに、なんなんだ、この手ごたえのなさは。
そう思っていると、ようやく煙が晴れてきて、その先には無傷のなのはがいた。
「ありがとう、R・H」
デバイスにお礼を言ってるあたり、どうやらデバイスに助けられたらしい。
くっ! 忌々しいデバイスめ! これだから機械は嫌いなんだ!
俺なんて……俺なんて……ストレージすら貰えないのに、あいつは何でインテリなんだよ!
もうそのインテリって名前がむかつくよ!
お前なんか、インテリ軍団なんていわれてクイズ番組にでもでてればいいんだよ!
もしくは、雑学王とか。
あ、機械だから絶対勝つじゃん。クイズとか無敵じゃね?
ってそうじゃなくて!
「なのはは弱いくせに……なのはは弱いくせに……なのはは……」
「よ、弱くないもん! まだ倒されてないもん!」
「ふん、デバイスが優秀なだけだろ! ブルジョワめ! 一般庶民に謝れ!
本当に羨ましいよ、そのデバイス……本当に本当に……俺はそのデバイスが欲しいよ!」
<<Thank you>>
「R・H!?」
「褒めてない! いや褒めたけど!」
本当に……本気で妬ましく感じてきたよ。
マジでパルパルパル。
まぁいいさ、あの攻撃が一回封じられたぐらいで、怖気つくような俺じゃない。
俺にはまだまだ手段も魔力もある。
本当の戦いはこれからさ、ふははは!
しかし、ついにはなのはを撃墜することは叶わなかった。
いや、頑張ったんだよ?
「俺のこの手が……」とか、覇王しょう……とか、
ガード不可なはずの、竜巻を落とす投げ技とか、それはもう色々と試しては見たさ。
だけど、俺が使うには火力不足と言うのかね。
それともなのはが硬いのか、決定打にはならず倒せなかったんだよ。
最終手段として、まて、とか使えば勝てたかもしれないけど、それじゃあ模擬戦の意味がないからね。
そんなわけで、今日の模擬戦はなのはの実力というよりも、デバイスのすごさを思い知らされる結果となった。
さすがに母さんもこの結果がまずいと思ったのか、只今はなのはと模擬戦中。もちろん、なのははデバイスなし、つまりR・Hはいま俺の手元にある。
「ええっと初めましてかな」
<>
「ああ、英語はよしてくれ、面倒だから。日本語に出来る?」
<<問題ありません。初めまして、ボス>>
実は、R・Hとはしゃべったことがない。
いや、機械としゃべると言うのはどうもおかしな様に感じるが、このデバイスはAI付。
ようするに、普通の人間と同じようにしゃべるため、そんなにおかしな行為じゃないのだが、慣れないなぁ。
…………。
あれ? あれれ? 今なんて言ったのかなR・Hさん?
俺のことをボスって言ったよね?
<<はい、普段のボスの『マスターの飼い主だ』という発言から推測しそう呼ばせていただきました。
おかしかったでしょうか?>>
「いや、それはいいんだけどさ」
それはあれなのか?
俺がなのはより立場が上と言うのは、俺がなのはの飼い主だとR・Hが認めていると言うことなのか?
そうなると、いよいよ認めていないのは、なのはだけということに……。
まぁそれはいいとして。
「ボスときたか」
<<他に思い当たる言葉がなかったので>>
案外デバイスって語彙が少ない? なのはのデバイスだからかな?
なのはのやつ、国語は一時期は俺が教えたら出来るようになったけど、すぐに元に戻りやがったからな。
日々精進しろといったのに……。
と、話が逸れてしまった。
英雄、皇帝、閣下、王様、ときてボスか……。
なんかどれもこれもすごいなぁ。一時代が築けそうな名前ばっかしだよね。
ん? でも、マスターであるなのはより俺のほうが上と言うことは、まさかR・Hは俺の言うことも聞くのか?
<<ボスを第二のマスターとして登録しました>>
これはいいものだ!
こいつやりおるな、中々にして話せる奴じゃないか! なんだ、今まで忌々しいとかいったのは悪かったな。
いいデバイスだよ! 俺が間違ってたよ、R・Hよ。お前は最高のデバイスだ!
<<ありがとうございます>>
「いや、本当のことを言ったまでだよ」
本当になのはが羨ましいよな。こんなデバイスをもってるなんてさ。
俺に譲れよ。俺のほうが絶対に上手く使いこのせるって。
<<さしあたって、ボス。 一つ提案があります>>
「ん? どうしたの急に?」
<<ボスは現在第二のマスターです。この状態ならマスターのバリアジャケットを改造することが出来ます>>
「と、すると?」
話しの内容がよくつかめなかった。
このデバイスは一体何が言いたいのだろうか?
マスター──なのはのバリアジャケットを改造できる? それが俺にどういった利点、いや、提案だというのか?
<<私はかねてより、ボスのマスターを調教する姿を見てきました>>
「調教はしてないよ。餌付けしてきただけさ」
<<失礼しました。そして、そのときの……猫形態のマスターの姿がとても活き活きしている姿を見てきました>>
「……ほぅ」
<<調べたところによれば、猫と言う動物は、猫耳、尻尾、手足の肉球というのが魅力らしいと知りました>>
「そうだね、あとあのもふもふの毛とかいいよね」
リーゼ姉妹を思い出す。
あの猫姉妹は賢いだけじゃなく、とってもかわいいので最近の一番のお気に入りである。
そして、良く懐いているのでついついなでなでして抱きついてしまう。
ようするにそこまで猫は魅力的だということだ。
ああ、あのフリフリの尻尾も好きだけどね。「にゃ~」と言う鳴き声も最高だ。
<<はい。私はマスターの喜んでる姿や頑張ってる姿が好きです。しかし、最近はあまり元気な姿を見ることが出来ません。
なので、ここで一つ提案したのです>>
なんともまぁ、マスター想いなデバイスなんだろう……。
本当になんで俺にはデバイスがないんだろうな、悲しくなるよ。劣等感半端ないよ。
<<その提案とは、マスターが最も活き活きしている、猫形態をバリアジャケットに影響させればマスターも元気になるではないかと>>
「なるほど! それはいい案だ!」
これはビックリな提案、いや、美味しい話と言うべきなのか?
なのはがバリアジャケットを着ると正真正銘の猫になる、ということでいいんだよな。
しかし、猫耳、尻尾、肉球だけではいまいちインパクトが足りないな。
他にも……他にももっと何かないか……
あ! いいこと思いついたぞ。
もしこれが可能なら、さらにおもし──かわいくなるはずだ!
ふふふ、これは楽しいことになりそうだ。
俺はさっそく思いついたことをR・Hに相談した。
そして、俺とR・Hは、なのはのバリアジャケットを改造した。
あとは、なのはがバリアジャケットを着る日を待つだけである。
翌日、学校での出来事である。
さぁ今日も帰って、魔法の練習だ! と心躍らすどころか若干ブルーになっていたときに声をかけられた。
「そういえば、なのはの魔法少女の姿見たこと無かったわね」
「あ、そうだね」
そう言ったのはアリサである
確かに言われてみれば、お披露目したこと無かったな。
暇がなかったと言うか、わざわざ見せるものでもないからね。
「じゃあ、今日は魔法の練習見学してみる?」
「それはいいわね、別世界の技術を見るいい機会だし」
「私も興味あるからいいかな?」
「まぁいいんじゃないかな。魔法を知るいい機会だと思うしね」
見せるものではないが、二人には口答でしか、魔法と言うものを説明してなかったので、ちょうどいい機会だ。
そう思ったので、今日の魔法の練習に見学することになった二人である。
そうと決まれば、さっそく行動である。
バニングス家の車でそっこう家に向かい、地下にある魔法練習所に──
「ここって、思いっきり法律違反よね?」
「気にしたら負けだよ、アリサちゃん」
練習場に着くや否や、そう言ったアリサ。
まぁ気持ちは分からんでもないが、あの母のすることにいちいち気にしていたら身体もたいないのでな。
諦めてほしいところだ。
「じゃあ、さっそく、行くよ! レイジング・ハート!」
そういうとなのはの変身シーンが……あ、実は俺も見るのは初めてだったりするわけだが……。
ええっと、俺が見ても良かったのでしょうか?
かなり際どいと言うかアウトもののような……、でも、まぁいいか。
うん、いいもの見れた。そういうことにとこう。
俺がなんか得した気分でいると、どんどん変身シーンは流れていき、変身終了したその姿は!?
「にゃにゃ!?」
「「……え?」」
「ああ、そうか……」
そこには、猫耳、尻尾、手足は完全に猫でちゃんと肉球まで再現された、なのは──なのは猫の姿になっていた!
昨日、R・Hと設定したやつかぁ。
これが本当の猫モードなのはだね、分かります。
「にゃにゃにゃ! にゃん!」
「ふははは、なに言ってるかわからんよ、なのは!」
実は分かってます、はい。
日本語訳すると、『な、何で猫になってるの!? しかも言葉も変だし!』だ。
言葉はR・Hにそうだんしたところ、言語変換も出来るとのことだったので試してみたのだ。
にしても、すごいな……いや、本当に言葉で言い表せないよ。
これは……くぅ、俺の血が騒ぐぜ!
「なのは、手始めにお手だ!」
「にゃーん!」
「「か、かわいい」」
猫は陽気な声を出しながら、ポン、と。それはかなり久々の感覚、しかしいつもとは違う感覚でもあった。
猫と同じ、と言えば分かるだろか。
目の前にいるのは確かになのはだが、なのはなんだが猫なのだ!
そして、尻尾をフリフリしながら、次の指示はまだかと待つ、なのは猫。
もう俺を止められる者はいない!
「よし次は──」
「何をしているのかしら、竜也?」
……あれ? 一瞬にして場が凍ったよ?
おかしいな、今日は暖かいのに、どうして鳥肌が立つんだろう。
「なのはちゃんに、悪戯してるのね。女の子に……罰が必要ね」
いつだってこんはずじゃなかったことばかりだ。
何かいい訳を言おうとして、母さんがいるほうに振り返ろうとしたその瞬間、
四方八方に金色に輝いた剣が囲んでいた……。
うんっと、どこの英雄王ですかね?
「消えなさい」
俺はここで意識を失った。
しかし、失う直前、アリサとすずかの声が聞こえた気がする。
「ま、魔法ってすごいわね」
「そ、そうだね」
魔法……知らなければよかった。
あとがき
2話連続投稿です。
作者のタピです。
ちょっとした遊び心なので気にしないでくださいね。
まぁこれがアリサとすずかに初めて魔法を見せたことになります。そこだけは、本編とリークしています。
どうだったでしょうか?
提案の通りご期待に添えたかは分かりませんが、こんなぶっ壊れがあったっていいじゃないw