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[16185] 【無印完結】ありのままに (リリカルなのは オリ主)【ちょっとした報告】
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2012/04/25 22:41
現在、リメイク版を執筆中です。
ここでの公開は悩み中……

どうも、作者のtapi@shu
通称タピです。

この作品は、軽い気持ちで書かれた、軽いものです。
非常に軽いので、軽い気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。

誤字脱字が多いので、あれば教えてもらえると嬉しいです。

今は生存報告を兼ねて番外編を時々書かせて頂きます。


~注意・忠告~
・チート
・再構成
・独自設定
・キャラ崩壊
・都合主義

~軌跡~
・初投稿 2/4
・色々修正 2/19 ・第1話、第2話大幅修正 2/26
・チラ裏から移転 2/22
・完結 3/30
・番外編削除 5/12
・sage投稿してたりする 4/1

※この作品は、とある投稿掲示板において二重投稿させてもらっています。
利用規約
「二重投稿先が許可している場合に限って二重投稿を許可します。」
はちゃんと許可をもらっているので問題ありませんが、
それでも問題だと思うなら、また不快に思うならどちらかを削除させてもらいます。



[16185] ─第1話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/20 11:17
「今日からこの町が、私達の町よ」

「海鳴市ね。海が近くにあっていいね、母さん」

「そうね、冬は冷えるかもしれないわね」

ふふふ、と笑う母さん。
父さんが死んでしまってあまり笑うことがなかった、母さんがこの町についてすぐに笑った。
まぁ冗談交じりだったけど。

それでも、俺としては嬉しかった。
前の町にいたころは、笑いかけては何かを思い出して笑うのを止めてしまうことが多かった。

きっと、この町では再スタートできると思う。

母さんはここで新たな一歩を踏み出そうとこの町にやってきた。
その気持ちは俺も同じで、何が言いたいかというと、なんだかんだで期待するところがある。


「でも、何でこの町に来たの? 」


そういえば、この町を選んだ理由を聞いてなかった気がした。
俺としてはどんな理由でもいいんだけど、それでも一応は聞いてみるべきかな、と。


「なんでかしらね、風の赴くままって感じかしら」


それでは就職先がないじゃないか母よ。
はなはだ迷惑な話だった。


「冗談よ、母さんの古い友達がいてね、そこでアルバイトしながら探すのよ」


どっちにしろ就職先はないじゃないか。
仕事のない人が風の赴くままとか言うなよ。

しかも、就職じゃなくてアルバイトですか。


「この時代でしょ、アルバイトだって見つけにくいのよ?
それを考えたら、知り合いのところで優遇されてのんびりとバイトしながら、就職先を探せるのは天国だと思うわ」

天国は行きすぎなような気がするけど、まぁ母さんがそれで幸せを感じて笑えるのならそれでもいいかな。
それで生きていけるという前提があるけど。


「それなら大丈夫よ。住む所は確保できてるわ」


なんか引っかかる言い方だけど……
住むところはって、衣食住のうち住しかないじゃないか……
しかも、衣食住の中で一番難易度? が高い


「その通りよ、よく分かったわね。食事などはその古い友達がなんとかしてくれるって」


母さんの友達はとんだ迷惑じゃないのかな? それは。
見ず知らずではないにしろ、お人よし過ぎないかと思う。


「そうなの、お人よしなのよ。あそこは一家揃ってね。まぁおかげで私達は助かるんだけど」


一家揃って……まぁいいか。
俺が考えてもどうにもならないよね。なるようになるさ。

今はこんなにも笑顔を見せてくれるようになった、母さんに従うだけだね。

その一家には多大なる迷惑をかけるけどさ。


「じゃあ、まずはその古い友達、高町さんの家の人に挨拶に行こうね。家に行くのはそれからか」

「分かったよ。どんな家なのか気になるけど、お世話になる人たちに挨拶のほうが大切だよね」

「ホント、小学校1年生のわりにしっかりしてるわね、私の子って」

「母さんが頼りないからだよ」

「私の教育が正しかったということね」

「ああ、もう分かったから行こうよ」

「そうね、こんなところで親馬鹿してても仕方ないわね」



あれ、親馬鹿だったのか……
どこに親馬鹿の要素があったのかわからないけど。

ん? ということは俺が褒められた……のか?
そう考えると嬉しいような。


「あら、顔を真っ赤にしちゃって、そんなに嬉しかったの?かわいいわね~
まぁ行くって言っても、もう目の前なんだけどね」

「はやっ!てか、いつのまに!」


この母親はよく不思議なことをしでかすんだよね、全く。
俺が話に夢中になってただけだと思うけどさ。


「じゃあ、行くわよ~~」


そして、なぜそんなに張り切っているんだ、母よ。


「ぽちっとな♪」


そしてノリノリだね!


「はい、どなた様ですか?」


インターフォンから、軽快な声がする。
声を聞く限りでは女性のようだ。


「私よ、早くあけて」


すっかり上機嫌の母さん。
父さんが死んで暗かったころの母よ、帰ってきてくれ、元気な方がいいけどさ。

それほどまでにここの人に会うのは楽しみなのかな?


「あいちゃん?待ってたわよ」


声だけで誰か分かるってすごいね。
ん?あいちゃん?


「相沢愛子であいちゃんね。ありきたりよね~なんか悔しい」


どこに悔しがってるのか、いまいち分からないね。
普通の名前だからなのか? 普通のあだ名だからなのか?


「久しぶりね、お葬式のとき以来かしら? 元気だったって、元気なわけないか。
旦那さんは残念だったわね」


葬式……ああ、全然記憶ないからわかんないや。
でも、そうか、葬式に来てくれたってことは諸事情知ってるわけね。
だから、助けてくれるのかな。


「葬式のときはありがとうね。でも大丈夫よ。この町で何もかもリセットしようと思って来たんだから」


うん、あながち間違ってないけど、今までの思い出とかもリセットするつもりなのかな?
それは父さんとの日々も忘れると言うことじゃ……

やめよう。
母さんの言葉をいちいち気にしてたら駄目だ。


「その言葉聞いて安心したわ、大丈夫そうね」


安心しちゃまずいと思います。
突っ込みどころ満載でしたよ?


「立ち話もなんだから、中に入って頂戴」

「うん、そうさせてもらうね」

「すみません、お邪魔します」

「いらっしゃい、しっかりした子ね」

「当たり前でしょ?私の子よ」


あ、そこやっぱり威張るんだ。
俺としては嬉しいんだけど、なんていうのかな……考慮して欲しい?

発言はもうちょい慎重にね。


「そうだったわね、それにあの人とあいちゃんの子だもんね。ええっと名前は─」

「相沢竜也です。簡単なりゅうに、なりと書いてたつやです」

「そうだったわね。初めまして竜也君、これからよろしくね」

「いえ、こちらこそ。母さんと自分が世話になります」


これからお世話になる人だからね、しっかり挨拶しないとね。
それに初対面だからイメージもよくしないとな。

まぁそんなことを考える時点で無粋な気がするけど。


「母さん達だけで話してないで、私達にも紹介してよ」


そう言うのは、メガネをかけたお姉さん。
自分たちがいい加減に蚊帳の外だったので加わりたかったようだ。


「そうね、じゃあ、今度はうちの家族から紹介するわね。
あいちゃんは知ってるだろうけど、竜也君は知らないだろうから、私から挨拶するわね。
私は高町桃子よ、よろしくね。それで、私の横に座ってるのが士郎さん。私の夫よ」


母さんと古い友達なんだっけ、母さんもたいがい若作りだと思うけど、この人もまたすごいな。
そして、その旦那さんもまた……常人じゃないオーラを漂わせているし。


「じゃあ、今度は私ね。私は美由紀、高町美由紀ね。お姉ちゃんでも何でも好きなように呼んでいいよ」


さっきのメガネをかけたお姉さんだ。
陽気で明るい感じだね。なんかしゃべりやすそうな人だなぁ。


「じゃあ、次は俺だな。高町恭也だ、一応長男だな。よろしく」


ちょっと無愛想な兄ちゃんって感じだ。
それでもどこか温厚そうなかな?


「な、なのはは高町なのはって言います。よ、よろしくお願いします」


ちょっとおどおどしてる子だな~


「なのはは竜也君と同い年よ。仲良くしてあげてね」


しかも、同い年ときたか。
見た感じだと一番絡みにくいんだけどね。


「ついでにいうなら、同じ学校になるわよ」

「「え?」」

「だから、竜也も明日からなのはちゃんと同じ、私立聖祥に通うのよ」

「え、だってお金ないのに私立って、普通無理じゃない!?」

「あそこの理事長と知り合いでね、竜也の成績見せたら余裕でOKしてくれたわ。
しかも、成績が良い限りは学費はただよ!頑張ってね」


頑張ってねじゃないよ!
色々と突っ込みどころ満載だよ!
どれだけ人脈あるんですか!?母よ!

どんな知り合いだよ、全く。

前からそうだったけど、本当に謎の多い母だ。


「にゃはは、よろしくね、竜也君。私のことはなのはでいいよ」


さっきとはまるで違う雰囲気のなのは。
ちょっと陽気と言うか、元気な女の子って感じだ。
これなら親しくできるかもって、そうじゃなくて!


「あら、もう仲良しになったの?竜也君なのはのことよろしくね」


ああ、桃子さんまでか。


「じゃあ、挨拶もほどほどにして今日は帰ろうか、私達の家に!!」


なんで、この人の目はこんなにもキラキラしてるんだろう。
本当にこの間まで人生の絶望と言う雰囲気を発していた人だろうか……

でも、この町にはそれだけのものがあるということなのかな。

でも……うん。
やっぱり、母さんはこうやって無鉄砲で生き生きしているほうが、俺は嬉しいな。



「ああ、そういえば」

「どうしたの?母さん」

「うん、士郎さん」

「どうかしましたか?」

「息子の件、お願いしますね」


うん?俺のこと?


「ああ、はい、分かりました。でも、いいんですね?」

「とことん苛めてください!なに大丈夫です、この子は私と父さんの子ですから」

「そう言われると説得力がありますね。きっと立派な剣士にしますよ」


え?立派な剣士?


「あら、知らなかったかしら?貴方のお父さんは御神流の使い手の一人だったのよ?」

「は?使い手?」

「そう、歴代でも1.2位を争うほどだったのよ」


い、意味が分からない。


「だからね、貴方も剣士になるのよ!竜也!かっこよかったお父さんのように」

「は!?」

「にゃはは、頑張ってね。竜也君」

「ということだそうだ。頑張ろうな竜也君」


ということはどういうことなのだ!?

「明日は朝5時にここに集合な」


そうか、本当に今までの生活とはおさらばなんだね。

父さん、俺だけは貴方の存在を忘れないよ。
そして夜空を見上げる俺。

まだ、夕方で夕日だし、そもそも見上げたら天井だけどね……



あとがき

2/26大幅修正完了。
主に文章の若干の変更と追加。



[16185] ─第2話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/20 14:38
午前5時。一応言われたとおりに高町家へやって来た。


「おはよう、竜也君」

「おはようございます、士郎さん、美由希さん、恭也さん」

「はい、おはよう」

「おはよう」


三者三様はとはこのことを言うのかな。

「ところで、竜也君」

「はい」

「君は本当に御神流を習いたいと思ってるのかい?昨日は成り行きでああなってしまったが、やはり本人に意思が無ければ、な」


確かにその通りだろう。
やる気が無ければ意味は無いだろうし。

昨日は確かに母さんにあんなこと言われて半強制的に習うことになった。
自分の意思はほとんど無視だとしても、俺も別に嫌と言うわけでもなかった。

元より、父さんが剣術を使えたことにも驚いたが、
それ以上に今は亡き父さんの残したものの一つだと思い、興味がある。


「やります。これは自分の意思で」

「そうか。なら、教えてあげよう」

「はい、お願いします」


結局は教えを請うことになるんだな。
たぶん母さんも分かってて言ってたと思うけど。

にしても、剣術か、夢というかまさか教えてもらうことになるなんて夢にも思わなかったな。
昔はあんなに平凡な生活だったもんな。


「よし、まずは町内一周だ!頑張って付いて来い」

「え、あ……ちょっと」


この町に来てまだ一日だ。
町のことは全然知らないから、見失ったら一巻の終わりじゃないか!

それが小学1年生に対する教え方ですか!?
血も涙も無いですよ。

そもそも町内一周という時点で、かなりハードなんだけどさ。

そんな事を思いながらも、一応は頑張ってみる俺はすごいと思う。
見失わないように必死に食らいつく。


「はぁ…はぁ…」

「す、すごいな。結構本気で走ったんだが、付いて来るとは……」

「すごいね、まだなのはと同じ年なのに」

「ああ、予想以上だ」


伊達に父さんの息子じゃないですよ。
父さんと遊ぶとなぜかすごい体力使いますから。

遊んでもらってるはずなのに、遊んであげている状態になることもしばしばだったし。
なので、体力はそこそこあると思う。


「意外と基礎体力はあるみたいだな。じゃあ、次は道場で素振りだ。
まだまだ朝は長いぞ、はっはっは」


だから、それは小学1年生に対するトレーニングじゃないでしょ……
それでも、素振りってなんだか、楽しそうだよね。

ああいうのってテレビとかで見てたら、すごいかっこいいし。


「竜也君は刀……木刀を持つのは初めてか?」

「はい、初めてです」


家には木刀もあった気がするけど、振り回そうとは考えたことも無かった。
俺はどちらかというとインドアのはずだからね。


「じゃあ、まずは型からだ。こうやって……」

「こう……ですか?」

「そうだ。あとは、二人のように素振りをする」


道場の奥の方では恭也さんと美由希さんが素振りをしていた。

それを手本にか……
見ながら試行錯誤を繰り返す。
間違っていたり、改善すべきとこがあれば士郎さんが修正してくれる。


「うん、中々いい剣筋だ」


そして、良かったら褒めてくれる。
こういうのが理想の師匠というのかな。

褒められるとやる気が出るし、頑張れる。


「ハッ……ハッ……ハッ」

「よし、このくらいにしよう」

「「「はい」」」

「しばらくは今日みたいに竜也君に付きっ切りで教えるから、よろしくな」

「お願いします」

「うん、いい返事だ。じゃあ、順番にシャワーを浴びて朝ごはんにしよう」


そんなわけで、初めてのトレーニングが終わった。
素振りは思ったより、面白かった。

たぶん、初めてのことっていうのが大きいんだろうなぁ。
やってて時間が経つのがあっという間だったからね。


「じゃあ、シャワー浴びる順番が来る前にリビングにって……は?」

「おはよう、竜也。朝の鍛錬お疲れ様」

「お疲れ様、じゃないよ!!なんでここに?」

「だって、朝昼晩全部面倒見てもらうのよ?」


さも当然のように高町家に居座る母。

そうか、そうだった。
油断してたよ、この母を。

お世話になるって本当に住以外のことだったのか?


「よく考えて見なさいよ、私たちの家を……」


ああ、そうだった。
昨日帰った家には、ベッドと最低限の家具のみ。
冷蔵庫すらなかった気がするぞ。


「まぁそういうことよ。本当に世話になるわね」

「いいのよ、そっちも大変だったんでしょ?それにお店のほうもよろしくね」


ああ、例のアルバイト先ってこのことかな?


「翠屋って言ってね、高町一家が営んでる美味しい喫茶店よ。そこでアルバイトさせてもらうの」


やっぱりね。そういうことだと思ったよ。


「何から何まですみません。本当にお世話になります」

「本当出来た子よね。いいのよ、子供は気にしなくて。それよりどうだった?」

「そうですね、楽しかったです。結構夢中になっちゃって時間も忘れるぐらいでした」

「そうだな、筋も良いし、美由希以上の才能かもしれないな」

「あ、士郎さん。あんま褒めないでくださいよ。才能とか言われても困ります」


初めてやったことにいきなり才能があるといわれても困る。
俺はあくまで興味があったから、やってるだけなのに。


「あるものをあると素直に評価したんだが、そうか、すまなかった」

「あたりまえでしょ、だってこの子は私の─」

「いい加減にしてよ、母さん、いい加減しつこいよ?」

「え、ああ。ごめん」


この母、気付いたら自慢ばっかしなんだから。
息子の自慢といいながら、自分のことだし。

いや、俺は嬉しいよ?
嬉しいけど、この母には常識と限度を覚えて欲しい。


「竜也君、シャワー浴びてきたらどうだい?」

「あ、はい。じゃあ浴びてきます」

すっかりシャワーのことを忘れていたよ。
これも全てあの母のせい……

でも、本当にいい笑顔を浮かべるようになったな。


お風呂場に向かうと、先約がいた。

「あ、竜也君今からシャワー?」

「はい、そうです」

お風呂上りと言った様子の美由希さん。
ということは、さっきまで入ってたのは美由希さんかな。


「あのさぁ、一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「どうして、剣術やろうと思ったの?」


ん、意外に真面目な質問が来た。
と言ったら失礼なのかな?

この人はなんかいつも陽気って感じがするからなぁ。


「興味本意ですね。父さんがやってた、剣術と言うのに興味があって」


事実それだけの理由しかない。
別に強くなりたいとかそういうのじゃなくて、単純な興味。


「それなら、一つ忠告。まだ竜也くんには分からないと思うけど、
強くなったらその力の使い道をどうするか今のうちに決めたほうが良いよ?」


強くなったときの使い道?
まだ、強くなるとも分からないのに?

それにいきなりこういう話って……


「竜也君は才能あるよ? 見ててそれが分かるほどだからかなりね。
だからこそ、その力の使い道をちゃんと見つけなくちゃ駄目。
たぶん、私から言わなくても、そのうち恭ちゃんとかお父さんから言われると思うけどね」


使い道、ね。
どうだろうね、考えたことも無かったよ。

そもそも、今までは先のことを考える余裕もなかったし。
今を生きることが精一杯だった。


「ああ、そんなに考えなくていいよ。まだ先があるんだから。ほら先にシャワー浴びちゃいなよ」


それもそうかな。
強くなるかどうかも分からないしね。

いくら才能あると言われてもね……

まぁいいや、とりあえずシャワー浴びよう。
そういえば、メガネをかけてない美由希さんは綺麗だったなぁ。


「それじゃあ、学校行こうか、今日は職員室に挨拶も行かなくちゃいけないから、母さんも一緒に行くわ」

「うん、了解」

「明日からはなのはちゃんと一緒に行ってあげてね」

「え?どうして?」

「なのはちゃんが行きたがってたわよ」


一緒に行きたがってたね。
まぁこっちに来て友達もいないから別に良いかな。

それになのはって意外とかわいいんだよね。
というよりあの一家全体的に綺麗な人だから、将来的に考えたらなのはも有望か。
よくよく考えるとすごいよな、あの一家。

綺麗だしかっこいいし、剣術だし、めちゃくちゃお人よしだし……
まぁそのおかげで助かってるんだけどね。

それに新しい学校か……
前の学校は父さんが死んじゃったから全然いけなかったからね。

いろんな意味で楽しみだなぁ。


あとがき

2/26大幅修正。
主に文章の修正と追加。



[16185] ─第3話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/20 14:40
俺がこれから通うことになった、私立聖祥小学校は、白を基調とした制服だった。


「じゃあ、これから教室に案内するわね」


そう言って、俺が通うべき教室へ案内をしてくれる、先生。
先ほど、お互いの自己紹介は終わり、俺のクラスの担任とのことだった。

全くの新天地で、ここに友達が一人もいない俺にとっては不安と期待が込み上げる。

ここに来たのは、昨日。これからお世話になる高町家のみなさんに挨拶をして昨日は終わったが、
今日は朝早くから剣術の鍛錬をしてきたばっかしで、今はかなり眠い。

剣術の鍛錬も、自分にとっては初めてのことで、慣れないながらも楽しく出来たので自分としては満足してる。
なにより、これから先も続けていくことになりそうなのでこの気持ちを忘れずにしたい。

まぁそんなわけで、この新天地では新しいこと尽くし、まさに新しい天の地の名に恥じないほどの新環境だった。
そして、この学校もまた新しいことの始まり。


「ここが私達のクラスよ、入って」

「はい、分かりました」

「おはようございます。今日は転校生の子を紹介します」


教室が先生の転校生という言葉で若干騒がしくなった。
春先──といってもすでに6月で、つい最近に入学式も終わったばっかしの頃。
そのせいか、転校生ってだけでも騒がしくなるのに余計に注目を浴びている気がする。


「今日から、この学校で皆さんと一緒に勉強することになる、相沢竜也君です。
相沢君自己紹介お願いね」


ようやく、と言ってもそれほど待ってはいないが、自己紹介。
みんなの視線がとても痛い。
心臓がバクバクする。とてつもなく緊張しているのかな。


「ええっと、この学校に転入してきた、相沢た─」

「竜也君!?」


教室に他の生徒の声が響き渡った、というよりなのはだった。
俺としては一人知り合いがいるだけでやりやすい、もとい居心地がぐっとよくなるのだが、
この場面でその発言は、緊張感を仰ぐだけだと思う。


「高町さん」

「ごめんなさい。」


先生のお叱りの声がなのはに向かって放たれた。
その言葉でなのはは、しゅんとなり小さくなってしまった。
その上隣の女の子は友達なのだろうか、ちやほやされてる様子。


「じゃあ、相沢君もう一回お願いね」

「相沢竜也です。どうぞよろしくお願いします」

「はい、ということです。みなさん、拍手」


先生の言葉に合わせての拍手。


何とか噛まずに言えたと思って少しホッとする。
もしここで噛んでしまえば、ギャグ要員として定着するか、弄りキャラの定着に繋がってしまう。
何より、第一印象が……

そういう意味では、この無難な自己紹介はほぼ完璧だったと言えるのではないのだろうか。
なので、よし! と心の中でガッツポーズを決める。


「高町さんとは知り合いのようだから、高町さんの前に座ってもらいますね。
そうしたほうが色々と過ごしやすいと思うので」


先生の配慮はとても嬉しいものだった。
やはり、知り合いが一人もいないのと、一人いるのとではだいぶ違う。
例え知り合いが同じクラスに来て驚きの声をあげた、なのはであろうともだ。

先生の指示通りになのはの前の席に座る。


「驚いたよ、まさか竜也君が同じクラスになっちゃうだなんて」

「うん、同じ気持ちなんだが、裏で誰かが糸を引いてる気がしてならないよ」


え?と訳が分からないという表情をする、なのは。当然の反応だ、なのははあの母のことをあまり知らないのだから。
だけど、俺は知っている。謎の人脈を誇るあの母のことを。
まぁそのおかげで俺はここにいることが出来るのだが。


「じゃあ、改めてよろしくね、なのは」

「うん、よろしく。竜也君」

「二人だけでなにやってんのよ」

「ちょっと、アリサちゃん……」


なのはの隣から、口を挟んできたのは、金髪ツインテの勝気な雰囲気の女の子と、
紫に近いほど長く綺麗な黒髪の大人しそうな雰囲気を漂わせている女の子。


「なのはちゃん、この子が昨日のメールで言ってた例の?」

「うん、そうだよ。昨日引っ越してきた、竜也君」


どうやら、この二人はなのはの友達のようだった。
それにしてもなのは、昨日会ったばっかしなのにそのことを直ぐに友達に報告とか、
いや、別にいいんだよ。いいんだけどさ。

せめて、俺にも一言欲しいよ。


「ふ~ん、容姿はかっこいい系と言うよりは綺麗系ね。結構整ってるし、いいんじゃない合格」

「アリサちゃん、失礼だよ」


全くその通りである。
しかも合格って何、合格って……

ええっと名前は─


「私の名前は月村すずか。すずかって呼んでね、よろしくね、竜也君」

「私はアリサ・バニングスよ。アリサでいいわよ、私も竜也って呼ぶから」


すずかは見た目どおり温厚な感じの女の子だな。
それに比べ、アリサは……しかも、いきなり呼び捨てですかい。
まぁいいか、その方が親しみやすいしね。


「こちらこそ、なのはがお世話になってます」

「え、竜也君それは私のセリフなの!」


なのはのセリフでもないと思うが。


「なのはの使い方を心得ているわ、やるわね。なのは、ちゃんと挨拶しなさい」

「え、はい。高町なのはです、よろしくお─ってそうじゃないの!」


なるほど、アリサも心得ていると言うのか!
さすがなのはの友人であるだけはある……って俺何キャラ?


「まぁ冗談はさておき、よろしくね、アリサ、すずか、おまけになのは」

「うん、よろしくね。竜也君」

「あんたとはいい仲になれそうだわ。よろしくね、竜也」

「もう、いい加減にしてよ、竜也君……でも、よろしくね、竜也君」


こんなわけで俺の初陣は、ほぼ最高と言える結果で迎えられたと俺は思う。
やっぱり、なのはという一つのキーセンテンスが大きいんだろうな。
いなかったら、この二人とは仲良くなったかもしれないが、こんなに早くは打ち解けられないだろうから。




─なのはSIDE

昨日引っ越してきたばっかしの竜也君。

初めて見たときに素直に思ったのは、綺麗な顔だなということ。
その綺麗と言うのは男の子としてと言う意味で、女の子みたいということではないよ。

それでも、いきなりなのはの家に来たからビックリして、最初はちょっとびくびくしたけど、今は全然平気。

男の子としゃべる機会はあまりなかったのもびくびくしちゃった理由の一つ。
お兄ちゃんはいるけど、同年代の子はほとんど初めてだったから。

でも、実際に話してみたらとても話やすくて、面白い人だった。
今日はアリサちゃんと一緒になのはで遊んでたけど、それでも楽しかったから許してあげるの。

それに、すずかちゃんとアリサちゃんの二人とももう仲良くなったから、とても嬉しい。
ちょっと竜也君すごいかもって思った。

なのはでも、あの二人と仲良くなるにはあのことがあってからだったから。
それなのに、竜也君は紹介しただけでもう仲良しだもん。

あ…でも、それってなのはのおかげ? なんて思ったり。


そういえば、竜也君は他にもすごかったよ……
アリサちゃんとすずかちゃんを合わせた感じのすごさ。

勉強はアリサちゃんと全くの互角だし、運動はすずかちゃんと互角。
なのはが勝てる要素が一つもないの……

アリサちゃんが


「なんて、チートよそれ。どこのガンダム?」


とか言ってたの。意味が全く分からないけど、とりあえずアリサちゃんがかなり驚いてたのには違いないと思う。

竜也君って一体何者なの!?

竜也君のお父さんは、家の剣術の使い手だったみたいだし、その中でも1・2位を争うほどって。

お母さんのほうは……よく分からないの。
でもなんだか大物臭がする……気のせいだよね?


「なのは、帰るわよ」

「あ、うん。帰ろう、すずかちゃんも、竜也君も」

「うん」

「え、俺も?」

「当たり前だよ。友達なんだから」

「そ、そうか。友達だもんな」


うん、そうだよ。竜也君はもうなのはの大切な友達の一人だよ。
竜也君と一緒にいるとまた新鮮で楽しいな~




─SIDEOUT

なんだかんだで、学校初日はあっという間に過ぎてしまった。
最初の自己紹介の後は、たくさん人が来て色々といっぺんに話しかけられて大変だったが、
アリサとなのはのおかげでことなきをえた、と思う。

授業は簡単だったし、体育は楽しかったので文句のない学校生活かな。

あえて言うならなのはたちが驚いていたということかな。

理由は、勉強面がアリサと同じぐらいだったのと、運動面がすずかと同じぐらいだったかららしい。
むしろね、俺が驚きなんだよ?

俺の場合はいい成績取れなくちゃここに残れないから、必死だし。
運動はすずかは女の子だよ?
それが男子である、俺と一緒っておかしいでしょ。

こう見えても運動能力にそこそこの自信があったから、軽く落ち込むぐらい……

まぁそれを含め、アリサもすずかもとても優しいし、一緒にいると楽しいからいいんだけどね。


「じゃあ、今日は用事があるから私は先に帰るわね」


学校の前でそう言ったのはアリサ。
先に帰るって別に俺……まぁなのはも別に寄り道するわけじゃないだろうから一緒に帰ればいいのに。

そう思うと、学校の前に一台のリムジンが止まってそれに乗り込むアリ─


「はあ!?」

「ああそうか、竜也君知らないもんね、アリサちゃんの家はとてもお金もちなんだよ。
すずかちゃんの家もアリサちゃんの家ほどじゃないけどすごいんだよ」


いやいや、お金持ちでも限度があると思うぞ?
お出迎えがリムジンってすごすぎでしょ。

周りの人は違和感ないのかよ。

そう思い周りを見渡しても誰も首を傾けるしぐさもない。
……そうか、ここの学校はこれぐらいで普通なのか。とんでもないお嬢様学校だな。

俺は場違いなところに通ってるんじゃないかと思う。
ああ、なのはも場違いか。


「いま、失礼なこと考えたでしょ?」


きっと気のせいである。


「じゃあ、アリサちゃん私も送ってもらってもいいかな?」

「いいわよ、じゃあ、なのは、竜也また明日ね」

「なのはちゃん、竜也君また明日」

「ああ、また明日」

「またね、アリサちゃん、すずかちゃん」


本当にこの新天地は新しいことや驚きばかりだ。
そして、楽しいことばかりで、友達も出来て。

まだ、ここに来て1日しか経ってないけど、来てよかったと心の底から思う。

父さんはいないけれど、
母さんは笑顔を取り戻してくれて、本当にいいこと尽くしだ。


最後のおちと言ってはなんだが、
なのはに言われるがままになのはの家に遊びに行けば、当然のように母さんがいた。

その上、なのはの部屋に入れてもらうことになったときには、どこからか殺気を感じたのは言うまでもない。




あとがき

1話・2話とは全く違う、というより作者が最も書きやすい文体で書きました。
先の1・2話はシンプルを心がけた結果だったのですが、
あまりにも淡白すぎたので、こういう結果になりました。

どうだったでしょうか?第3話
物語は全然進んでないので判断は難しいとは思いますが……

一応ここまでは試し書きに近い状態です。
これより先に、つまりは次回を書くとすれば時間を飛ばしながらになります。


期待があれば書きます。
無ければ打ち切り…どこかの有名な週刊誌と同じですね;

次回以降を書くことになれば、打ち切りはなしです。完結させます。


未熟な作者ですが、応援の方をお願いします><


最後に
もし続くようならタイトルを変更しようと思います。
「平和の在り方?」→「ありのままに」となります。



[16185] ─第4話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/20 11:04
この町に引っ越してきて、すでに一ヶ月が過ぎていた。

相変わらず、朝の鍛錬、学校、鍛錬と言った感じだが、とても充実していると言える。

最初こそ鍛錬は士郎さんが付きっ切りで見てくれていたが、
今は恭也さんと美由希さんの二人で見てくれている。

元より、士郎さんは喫茶店翠屋の準備に朝が忙しいからだ。
そんななか最初だけでもわざわざ面倒見てくれた、士郎さんはとても面倒見がいいと言えるんじゃないか。

その翠屋で母さんも一緒に働いているわけだが、面倒をかけていなければいいな。
たぶん無理だと思うけど。

ただ、母さんは料理腕も非常に良かったりするわけだから、その面では大丈夫と言えるだろう。
問題は接客だが……

まぁまだクビになってないなところを見れば大丈夫なんだろう。

話が逸れた。
朝の鍛錬だが、美由紀さんはどちらかと言うと身内に甘いタイプだと思ってたんだが、
剣術でも多少はそういう面が見られるものの、厳しい人ではあった。

それ以上に、恭也さんは厳しく、妥協と言うものがない。

そのせいで、恭也さんに見てもらった最初の一週間は筋肉痛に……
ましてや授業に集中するのも厳しかった。

そうそう、授業といえば学校だ。
一ヶ月経った今ではすっかり馴染めている。

それもこれもあの三人娘のおかげだけど、口に出して礼を言うのは恥ずかしいので心のうちに黙っとくとする。
実際に言ったら、感謝しろとか言いそうだしね、アリサが。

そんなわけで、一ヶ月間つつがなく終了しました。


「竜也君は夏休みの予定あるの?」

「特にはないね~というより考えたこともなかった」


そして、気付いたら夏休みの直前だったんです。
今日の授業の最後に成績表が返されて、とりあえず成績はそこそこ良かったので今ホッとしてました。
ついでに言うなら、この短い一ヶ月を振り返ってた、と。


「それなら、なのはの家に泊まりに来ない?」

「泊まりに来ない? ってしょっちゅう行ってるじゃん。というより毎日」


ここに来てからというものの、なのはの家にいるのがほとんどだった。
自分の家にいるときは寝るときぐらいのもの。


「へぇ~あんた毎日なのはの家に行ってるんだ」

「アリサは知ってるだろ? ここに来るまでの経緯話したわけだし」


ここにいる三人娘には俺の過去というほど大業なものではないが、経緯を話した。
というより、聞かれたから答えただけだけどね。


「ほら、竜也君の家は特殊だから、しかたないよ。アリサちゃん」

「それでも、限度があると思うけど」

「アリサの意見には同意せざるを得ない」


俺もそう思うぞ。
あの母の図々しさといったら天下一品だ。


「じゃあ、みんなでお泊まり会しようよ」

「うん、それならいいわ。私の家とすずかの家でもやって、計三回ってとこかしら」

「アリサちゃん、勝手に私の家のまで決めないでよ。でも、いいよ」

「待て待て、女の子3人に男の子1人って問題じゃないか? だから俺は断─」

「私達に手を出すわけじゃないんだからいいじゃない。
それにもし手を出したら、各方面から焼けどじゃ済まされない怪我を負うわよ」


もちろんそんな下心があるわけじゃないが、確かに手を出したら怖いな。


「まぁその件は置いておいてだ。俺は予定も何も分かっちゃいないから、分かってからということで」

「そうね。後日改めて決めましょう」


俺の夏休みの予定は何も決まってないからね。
仮に決まっていたとしても、知らないからね。

そんなことを考えてる最中、俺のケータイが鳴る。


「どうしたの? メール?」


音に気付いたすずかが率直な疑問を口にする。


「ん、母さんからだ。ええっと『今日はちょっと大切(笑)な話があるからまっすぐ家に帰ってきて』だってさ。
そういうわけだから、先に帰るよ」


(笑)の使い道が微妙に間違っていて、本当に大切な話なのか分かりづらいが、
まぁ直接家に帰るのが珍しい俺にとっては十分に大切な話であると理解できた。


「そう、じゃあ、予定が分かったら連絡頂戴ねって竜也君ならなのはの家で会うね」


にゃはは、と笑うなのは。


「でも、私達には連絡しなさいよ」

「分かってるよ」

「うん、じゃあ連絡待ってるね、竜也君」

「ああ、じゃあね。みんな」


「またね~」というみんなを背にして、
おそらく学校から直接、家に帰るのは初めてであろう帰路をどんな話なのか考えながら帰った。





「お帰り~竜也。成績どうだった」

「一応はノルマ達成だよ」


どれどれと、成績表を覗く母さん。
そして「おみごと」の一言をいただきました。

その次の言葉は、


「さすが母さんと父さんの子ね。うん、私たちの誇りよ」


と続く。もはやお決まりのセリフとなっていた。


「それで、大切な話って何?」

「あれ、もう本題に入っちゃうの? もう少し世間話したかったんだけどな~」


世間話ならいつも聞いてるよ。


「まぁまぁそう言わずにさ。でも、そうね。竜也は今気になっていることってある?」


気になっていること?
それこそ今話そうとしてる大切な話かな。


「それもそうよね。うん、分かった。話の内容なんだけど二つあるの」

「二つ?」

「そう、一つは‘魔法’のお話。もう一つは母さんと父さんの話」


魔法? 何の前触れもなくでてきたその言葉の意味がよく分からなかった。
そして、母さんと父さんの話……なぜ急に、と思う。


「それはね、父さんと母さんが竜也が小学校に入ったら話そうと決めてたからかな。
だから、本当は入った瞬間に話そうと思ったんだけど父さん死んじゃったでしょ?
それからバタバタとして落ち着かなかったから、今に至るの」


理由はなんとなく理解は出来たが、
大切な話の意味はよく分からなかった。

そもそも、なぜ魔法と母さんと父さんの話が並列に出てくるのかも。


「それは、今から話すことで分かるわよ」

「それもそうだね」

「はい。じゃあ、問題です。魔法はこの世界に存在るでしょうか?」


魔法の話をするというのに、その質問はないじゃないのかな?
この話をするにあたって魔法があるのは大前提だ。


「ある。じゃなくちゃ話が進まない」

「仮にあったとして、竜也は魔法を認められる?そんなものありえないといって否定する?」

「愚問だよ。あるから話をするんでしょ?」

「そう、そうだね。では正解を発表します。
『魔法はこの世界には存在しなくて、それでも魔法はある』
この意味が分かるかな?」


一言言おう、分からない。
そもそも矛盾してるよ。あるのにないって。


「竜也、こんな言葉聞いたことない?
『この世には無数の世界が存在していて、この世界はその一つに過ぎない。』
という言葉。答えはこの中だよ」


この世には無数の世界がある?
それはつまり平行世界といったようなパラレルワールド言うことなのかな?
小説や夢物語、漫画にはありがちの設定だけど。


「そうね、ありがちよね。でも、平行世界は惜しいけど違う。
答えは、魔法の存在する世界があるということ。そして、母さんはそこを知っているということ」

「なんで?」


当然の疑問だと思う。なんで母さんはそんなことを知っていいるのか。
なぜ、この世界に住んでいるのに……


「それはね、私がその世界出身だからね。その世界では魔法を使う人のことを魔導師っていうんだけどね。
母さんもその一人だった。そして、研究者の一人であったのよ」


それは、母さんが魔法を使えるということだった。
魔法を使えるというのは、なんだが憧れるものがあった。
それはこの世界にないもので、ファンタジーに過ぎないと思ってたからだろうか。


「まぁ魔法については大まかに言えばそんな感じね。詳しい話しはまたあとで。
次は父さんと母さんについて話すわね」


俺はなんとなくだが、こっちのほうが本題のような気がした。
魔法の話はあくまでこれを語るために必要だった話という感じかな。


「さっき言ったとおり、母さんはこの世界の人じゃないわ。
でも、向こうの世界でちょっとやらかしちゃってね。追い出されちゃったの。
それで命かながら辿り着いたのがこの世界。魔法のない世界だった」


そこで、運命の人に出会ったの、と続ける。

確かに命かながら逃げたところに助けがあればその人は運命の人に見えるだろうなぁ。


「それが父さんよ。熱心に怪我の介護をしてくれてね。一目ぼれだったわ。
そこからは母さんがもうアタックであっという間に結婚。そのときかしらね、桃子に会ったのも」

ちょっと懐かしげに遠くを見ながら話す。

なるほど、いつごろの話か分からないが桃子さんは父さんの親類縁者だったということかな。
というよりは桃子さんと結婚した士郎さんがか。
父さんと士郎さんはおなじ流派みたいだからね。


「もちろん、父さんには私が魔法を使えるのも知ってたし、事情を全部話したわ。
でも、他の人に話はしてない。まぁ話をしても信じてくれるかどうかは怪しいけどね」


この言葉の意見するのは、魔法のこと、母さんのことは他のどんな人でも話しちゃ駄目ってことかな。

この世界には魔法がない。
だから本来は話す必要もないことなのだろう。もちろん知る必要もない。

でも、俺には話をした。
それが一体どういうことなのか……


「じゃあ、大切な友達にも話さないのに竜也に話す理由を言うわね」

「うん」

「竜也はしっかり私達の血を受け継いだ。
どういうことかというとね、父さんからは天性の剣の才能を、母さんからは魔導師としての才能をしっかり受け継いでるわ」

「剣の才能と、魔導師としての才能?」


よく分からなかった。
どうしてそんなことが分かるのだろうか?
それとも持っていたらまずいのか?

そのことが自分にとってどう影響すると言うのか……


「そう。剣の才能はこの間、士郎さんが言ってた通りよ。それは私から見るよりも確か。
それで、魔導師のほうなんだけど……」


はぁとため息交じりの深呼吸をしさらに続ける。


「たぶん、かなりの魔力を持ってるわ。これも実際に測ってみないと確信は出来ないけどね」

「だから?」

「うん、これだけじゃわからないわよね。
ようするに、私達は竜也にはありのままに生きて欲しいの。自分の思ったままに選んで、先を進んで欲しいの。
この二つの才能はあなたの力になるもの。力は選択肢を広げるわ。今までになかった未来も、可能性もでてくる。
だから私達は竜也に、この二つの力を使いこなせるようになって欲しい」


言いたいことはなんとなくだけど分かった。
ありのままに生きて欲しいことと。
せっかく持って生まれた才能を使って可能性を広げ、未来を生きて欲しい。
たぶん、そういうことなんだと思う。


「でも、私達はその選択肢。力を使うと言うことも竜也自身に決めて欲しい。
ここまではあくまで、死んじゃった父さんの意思でもある。
でも、この先は達也の意志で決めて欲しい。どうする?竜也は持って生まれた才能を背負って生きていく気はある?」



あとがき

今日は映画館に殴りこみに行ってきました。
作者です。


もうすぐチートキャラの完成です。
こういう設定ってありそうでない……みたいなギリギリを狙った、チートキャラです。

偶発的なチートとか、突然変異というよりは、
真っ当な血の影響でチート設定です。

いわゆる公式がチート(違

まぁそんなわけで第4話です。

は~や~く本編介入がしたい。
その気持ちで一杯ですよ。

そして、またまた勢いで書いてこんな感じです。
許してください。

謝らないですけどw

こんな作品ですが、見捨てずに読んでもらえると嬉しいです。

ああ、基本的にギャグをやりたいですから、シリアス少な目がいいと思ってます。
思ってるだけで作品はそうならない場合が非常に多いんですがorz

まぁそんなわけで第5話あるといいな。

※タイトル変わりました。



[16185] ─第5話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/18 22:44
母さんは実は異世界人だった。
そのことに衝撃は受けたものの、なんとなく納得させてしまうのがこの母のすごいところだと思う。

そして、運命の出会い。
あまり詳しい経緯は話してくれなかったけど、母さんの一目惚れだったそうだ。

母に目を付けられた父さんも迷惑な話だと思う。

そして、俺が生まれて。幸せに生きていたところで、父さんが死んでしまった。

実は父さんが死んだ詳しい経緯も知らないわけだが、
知ることもないかなと思う。

理由を知ったところで戻ってくるわけじゃないし、環境が変わるわけじゃない。
それに、俺には泣いたり、悲しんでる暇はなかった。

父さんが死んで母さんがずっと泣いて、悲しんでばっかしだったからだ。

そんな、母に代わり俺は大人に振舞わなければなかった。

そして、父が死んであまり時を経たずとして、この町に来た。
かつての悲しみに溢れた町から逃げるように。

でも結果的には、それが功を奏したと思う。

この町に来て、母は笑顔を取り戻して、俺は友達が出来て。
友達と一緒にいると楽しい。
時を忘れるぐらいに。


そうして今に至る、と。
以上分かりやすい回想、終わり。


「それで、どうなの。竜也は力が欲しい?」


父から受け継いだ、剣の才能。
もし、それが俺にあるとすれば、今士郎さんや恭也さん、美由紀さんに剣を教わっていることで力を手に入れるだろう。

元々は興味本意。
いや、今も興味本意で習っているに過ぎない。


そして今度は母から受け継いだ魔法の力。
全く実感の持てない話。

それでも、母さんは俺にはその力があるという。
興味はある。

自分の知らない未知の力に。
知らなかった新しい世界に。

話を聞いてる限りでは簡単に触れていい世界ではないようだった。
だけどそれでも、今は興味があると言う回答しか得られなかった。


「母さん」

「何? 決まった?」

「興味はある。力がほしいとか、そういう意味じゃなくてただ単純に魔法に興味がある。
だから、魔法を教えて欲しい」

「そう、でもその魔法は何れは力になるわよ。それでも?」

「今は分からないけど。でも、必ず答えは見つけるよ」


そう、今は分からない。
自分の魔法を使った未来像が、刀を持った未来像が。

どんな生活をしている未来なのか。

だから、答えは先延ばしにするしかなかった。


「そう、分かったわ。とりあえずは、魔法の使い方は教えてあげる」

「ありがとう」

「ううん、これぐらいは当然。でも、これだけは覚えておいて」


そういうと、真面目な顔になる母さん。
今ままでも十分に真面目だったのだが、それ以上に。

そして、そこからは圧迫感と緊張感も伝わってくる。


「使い方は教えるけど、使い道は自分で見つけないさい」


使い方は教えるけど、使い道は自分で見つけろ?
いまいちその違いが分からない。

そんなことを考えていると言葉を付け足した。


「使い方と言うのは魔法を扱うこと。いわば技術ね。使い道は魔法を使うこと。いわば精神よ。
どうやって使うかはこれから私がみっちり教えてあげるけど、何に使うかは自分で考えなさいと言うこと。
そうね、使い道が決まるまでは防御魔法と補助魔法を基本的に教えていくわ。覚悟しなさいね」


覚悟しなさいねと言ったときの目のぎらつき様が半端なかった気がするけど、
気のせいだと思いたい。


「じゃあ、早速トレーニングと魔法の勉強よ。
初めてだから今日は素質を見るために、色々やるからハードになるわよ」


今日はなんかハードな一日だな。

ああ、そうだ。聞かなくちゃいけないことが……


「母さん。夏休みの予定ある?」

「特にはないわよ。毎日修行以外には」


何気にハードスケジュールな気がする。
けど、まぁいいか。


「そっか、分かったよ」


なら、夏休みは予定通り、なのはたちとお泊り会になりそうだな。
でも、改めて考えるけど男一人でいいのかな?

まぁ深く考えてもしょうがないけど。


「じゃあ、トレーニングルームに行くわよ」

「え?トレーニングルーム?」


初耳なのですが。
てか、ここアパートですよ?


「そう、この日のために地下に勝手に作ったトレーニングルームよ。
大丈夫、結界張ってるからばれるようなへまはしないわ」


そういう問題なのだろうか。
相変わらずスケールのよく分からないは母だった。






─愛子SIDE


竜也に、剣の才能があったときは驚いたわ。
魔法の才能があるのは、生まれたときすぐにリンカーコアを確認できたから分かったけど。

剣のほうは詳しくは分からなかったからね。

今日は早速魔力値とか、魔法の特性を測ってみたんだけど、
血は争えないわね。奇しくも私と同じかそれ以上の魔力値。

魔力値はSランクはあるんじゃないかしら、この子。

魔力の最大出力を測れてないから、正確には言わないけど、
まぁ第一級の力は持ってるわね。


そして、その魔法の才能だけど。

補助魔法・防御魔法・攻撃魔法どれをとってもトップクラスの資質。
ただ、どれか一つが特化してるわけじゃなくてオールラウンダータイプね。

元々魔力はあるから、育て方次第では幾らにでも化ける。
私の子ながら恐ろしいわね。

でも、とりあえずは補助と防御を極めようかしらね。
攻撃は基礎程度にして。

デバイスは……まだ早いわね。
最初のうちはデバイス無しでも魔法を使えるように教えていきますか。

本当にこれは育てがいがありそうね。
たぶん、成長していく様子も分かりやすいだろうし。

さぁこれから忙しくなるわね、ふふふ。


「ちょっと、母さん怖いよ」


そう言って、少し怯えるかわいい私の子。
嫌だわ、ついつい素が……


「この後はどうすればいいの?」

「そうね、これからは魔法と学校を二つをまとめて勉強しなさい」

「二つの勉強を同時にって、それは無理だよ」

「そうね、普通なら難しいけど。魔法を使えばいいのよ」


まずは日常から魔法を使って慣れていくこと。
そうすれば、魔法を日常に感じることが出来るようになって使うことに繋がる。


「う~ん、よく分からないけど、まぁ頑張ってやってみるよ」


まぁ最初のうちは難しいだろうけど、
たぶんこの子ならあっという間にものにすると思う。

だから、使い方はマスターできる。
問題は使い道、よね。

竜也自身は、まだ力を興味本意だけで手に入れているに過ぎない。

確かに興味を抱いて、それを手に入れようとするのは大切なことだけど、
使い余した力ほど危険なものはない。

使い道が分からずに、危険なことに手を出すことだって、利用されることだってある。
それだけは何としても防がなければならない。

だからこそ、竜也は知らなければならないことが、
教えなくちゃならないことがたくさんある。

それに竜也は、力を持ってるがゆえに、才能があるばっかしに苦労することが多くなると思う。

それはきっと、常人には理解されないもので。

理不尽なもので。

でも、それを知ることになるのはもっと先の話。

それまではただ、ありのままに生きて欲しい。

……違うわね。

そんな現実とぶつかってもありのままに生きて欲しい。

例えどんな壁があろうとも、ありのままに……



あとがき

幼女成分足りねー
とか思いながら書いてきた、このSSも5話ですよ!
どうするんですか!?

もう止まらないですよ?

作者でありタピです。

本当にこんな感じでいいのでしょうか?
疑問ばかりが浮かびますw


そして、やっとこの作品の方向性も見えてきました。
それが前回と今回ですね。

今回はやや短めですが……

なんか重いことを母親が言ってるようですが、
この作品は超ハッピーで綺麗な物語すぎるぐらいを目指しているので、どうなることやらw

相変わらずつたない文章ですいません。

でも、言い訳をさせてください!
もう片方のSSがいいところだからそればかり考えてしまって……


自業自得ですね、分かります。

最後に
続くといいですねぇ



[16185] ─第6話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/18 22:46
あ、ありのままに起きたことを話すぜ!

昨日は初めて魔力を使ったばっかしで、めちゃくちゃ疲れたから、
トレーニングが終わったら直ぐに睡魔に襲われて、ケータイもチェックせずにそのまま睡魔に身体をゆだねて寝て、
朝起きたら、そこにはアリサがいた!


「今日は、いい天気だね。アリサ」

「そうね、今日は快晴ね」


空には雲がほとんどない。
まさに快晴、夏の青空と言うのにピッタシの風景だ。

そして、まだ初夏ということもあってなのか粘っこい暑さではなく、スカッとした暑さ。
おそらくは、初夏だけと言うだけでなく近くには海があるからというのもあるのだろう。


「アリサ、窓を開けてくれないか」

「分かったわ」


そういうと直ぐに窓を開けてくれた、アリサ。
実に素直である。普段の様子とはまったく別人だ。

窓から外の空気が入ってくる。
さっきまでの篭った空気ではなく新鮮な空気だ。

空気の入れ替えにより、少しの風が発生する。
その風は気温に比べて少し冷たくとても気持ちのいいものだった。

さて、今は一体何時なんだろう。


「今は10時よ。夏休みだからって随分遅い起床ね」

「昨日は色々あって、疲れたんだよ。だから今日は朝の鍛錬も無し」


母さんは、俺が疲れてダウンをするのを見越してあらかじめ、士郎さんに鍛錬を今日は休むことを
伝えていてくれた。


「そう、まるで普段はもっと早起きしてるような言いようね」

「実際早いんだ」


俺の起床時間は午前4時半。
5時過ぎから鍛錬が始まるので、準備の時間を含めるとかなりの早起きになっていまう。
でも、習慣になれば出来ちゃうもんで、
人間の状況対応能力というか、習慣性というのは優れていることをこの身で味わった結果だった。


よし、現実逃避はこんなもんにしてこの状況を分析するとしよう。

現時刻はさっきアリサが言ってたように10時のようだ。
アリサに言われたとおり、まぁ普段からすれば遅い起床だな。

では、現状を確認する方法としてケータイを見てみよう。


「アリサ、そこの机にあるケータイをとってくれないか?」

「いいわよ。ええっと、これね。はい」

「サンキュー」


さて、ケータイを確認、確認と。
ケータイの待ち受け画面を見る。

そこには着信とメールのお知らせがあった。

まずは着信を見てみる。
昨日の家に帰った時刻から、その日が終わるまで、つまりは夜の0時までに、
アリサからの着信が30分おきにあった。

今度はメール。
未確認のメールの数は100を超えていた。
下のほうにはすずかやなのはのメールもあるのだが、ほとんどがアリサに埋め尽くされていた。

そして、この状況を照らし合わせてみる。

起きた瞬間からそこにいるアリサ。

これらのことから結びつく答えは……


「もしもし、警察ですか。ここに、ストーカーが─」

「ちょっと、なに言ってるのよ!ストーカーじゃないわよ!」

「大量のメールと電話をしたうえに、勝手に家にいるおまえのどこがストーカーじゃないんだ!?
嫌がらせか!?これは俺に対する嫌がらせなのか!?」

「べ、別に嫌がらせじゃないわよ!夏休みの件が少し気になったから、あんたに連絡したら、
全く通じなかったから家にきただけでしょ!」

「心配してくれたと言うことか?」

「ち、違うわよ!ただ、気になっただけよ」


むきになってキーキー言っても、
顔を少し赤くしながら言ったら説得力を感じないぞ?

まぁただ単純に口論してて、熱くなっちゃっただけだと思うが。


「心配して来て見れば、これよ。心配したのが馬鹿みたい」

「ん?何か言ったか?」

「な、何も言ってないわよ! 」

「そうか、じゃあメールを確認させてもら─」

「あ!ちょっとケータイ貸しなさい!」

「え?」


そういうと、強引にケータイを奪うと勝手に色々と操作し始めるアリサ。
別に弄くるなとは言わないけど、本人の許可なしにやるのは止めてほしいな~


「これでよし、と。はい、返すわよ」

「え、ああ」


アリサは一体何をしてたんだ……
まぁいいか、とりあえずアリサからのメールを確認

……


「アリサ……」

「何?」

「何で自分の送ったメールを消した?」

「べ、別にいいじゃない。私が送ったんだから。私に消す権利があるわよ」


権利どうこうはいいとして、そんなに必死になって消さなければならない理由でもあったのか?
まぁ今となっては、知る由もないけどさ。


「あら、竜也起きたの?」


母さんが茶菓子などを持ってきて、俺の部屋に入ってきた。
そして、その母さんの顔はこれ異常ないほどににやついていた。


「今さっきね」

「お邪魔してます、おばさん」

「ごめんね、うちの子が寝坊助さんで。はい、これをどうぞ」

「いえ、お構いなく」

「いいのよ。ゆっくりしていってね♪」


そう言うとそそくさと、部屋を後にした母さん。
おそらくは、茶菓子を届けるついでに女の子と二人でいるのを茶化しに来たのだろう。


「気が利く素敵なお母さんね」

「ちょっと無鉄砲なところが有るけど、それでも自慢の母だからね」


実際、俺はこの母が好きだった。
ちょっと回りに迷惑なところとか理不尽なところとかもあるけど、
基本的には俺のことをよく考えてくれるこの母が。

昨日のことも俺の将来を考えた上での判断だったと思う。
まぁ後はその期待に俺が答えられるかどうかだけど。


「そう、本当に羨ましいわ」


どこか遠くを思うような、そんな言葉だった。
アリサの両親が忙しいのは知ってる。

アリサは精神的には大人びていいるけど、やっぱり思うところはあるんだろうな。


「寂しいのか?」

「な、何よ急に!」

「いや、寂しそうだったから」

「そんなことは……ないわよ。
私のために頑張ってくれてるのは知ってるから、私が何か言う権限はないの!」

「そうか、そうか。うん、うん」

「な、何よ。まるで悟ったかのようなその返事は」

「かわいいな、アリサは」

「ちょっと、そういうのは……」


アリサの顔が見る見る赤くなる。
アリサをからかうのはとても楽しいな。

言葉と表情がドンドン変わるもん。


「まぁ寂しかったら、いつでもメールでも電話でもすればいいさ。
家に来たっていいしな」

「ふぇ!?……そうね、そうさせてもらうわよ。
そんなに私に構って貰いたいなら、付き合ってやってもいいわ」

「まぁそういうことにしといてやる」

「ど、どういう意味よ!」


『何言ってるの、あんたがそう言ったんでしょ。』とか、『私は別にそういうつもりじゃ。』なんて何度もいいながら、
顔を赤くしてして必死に抗議をする。
相変わらずテンションの高いお嬢様なことだ。

そして、今更なんだがアリサはなにしに来たんだ?
最初は心配したから来てくれたのかと思ったが、本人曰くそうじゃないらしいし。

本人に聞けばいいか。


「アリサ」

「何よ改まって」

「何しに家に来たの?」

「……今更の質問よね、それ」

「それで、何しに? 」

「だから……心配して……」

「え、何? 小さくて聞こえなかった」

「な、何でもないわよ!理由もなくちゃ来ちゃ駄目なの!?」

「いや、別にいいんだけどさ」


理由が少し気になっただけだから別にいいんだけどさ。
なぜ答えるのをそんなに拒むのかな。

それに、理由無しで来るってどこの彼女だよ、そのセリフ。

にしても、俺とアリサだけってこの環境……


「アリサ」

「何よ?」

「いや、別に……あのう。二人きりですね」

「な……」


そういうと顔が真っ赤に。
今日はよく顔が赤くなるなぁ。リンゴでも食べたのか?
あ、それはりんご病か。

よくよく考えると俺ってあの三人娘とよく絡むけど、二人きりってなかったな。
なのは以外は。

あれは例外だからなぁ。
ご近所付き合い的な意味で、よく会ってるし。
なのはの家にいると何かと話しかけてくるし。

ああ、そうか!
なのはにピンチヒッターを!


「もしもし、なのは」

『あ、竜也くん。昨日電話とメールしたのにどうして出てくれないの?』

「ちょっと、いろいろあってな」

「なのはに電話してるの?」

「ああ、なんか二人だけだと気まずいから」

「ふ~ん、私とだと気まずいけど、なのはがいればいいのね。」


なんで、そんな棘のあるような言い方なんだ?
俺が何をしたって言うんだ……


『え? 誰か一緒にいるの?』

「おう、アリサが俺の部屋に」

『え!? アリサちゃんが竜也くんと二人っきり!? す、すぐにそっちに向かうね。』

そう言うと直ぐに電話を切った、なのは。
どうしてそんなに慌ててたんだ?

まぁ何にしてもこれ以上状況が悪くなることはないだろうな。





─アリサSIDE


まったく!なんなのよ、あいつ。
私が昨日からずっと心配して、メールとか電話とかしてあげたのに出ないだけじゃなくて気付かないなんて。

でも、そのおかげで恥ずかしいメールは見られないで済んだんだけど……

かわいいとか、そんなストレートに……
あの男に羞恥心なんて言葉はないのかしら?

そのせいで私が恥ずかしくなっちゃったじゃない

でも、う…うれしいことを言ってくれるわよね。

もしかして、竜也って私に気がある?
いや、ないわ。
あってもこっちからお断り……

でも、悪くはないかな……いやいや、やっぱり。

それに、私と二人きりで気まずいってどういうこと?
そ、そりゃあ私だってある程度は思うところあるけど、それって失礼じゃないかしら?

しかも、それでなのはを呼ぶって。
私のプライドがズタズタじゃない。

でも、悪くないかも……って悪いわよ。

これじゃあ堂々巡りじゃない!

ああもう!何であんなやつのためにこんなに悩まなくちゃならないの!?
馬鹿みたいじゃない。

まぁいいわ、保留よ、保留。


それにしても、寂しそうね。
ばれないようにしてたはずなんだけど……勘づかれたかしら?

しかも、それに対しての言葉が……
あ、案外いいところもあるじゃないの。


「どうした、アリサ。顔が赤いぞ?」

「う、うるさいわね。ほっときなさい!」


無駄なところで鋭いし優しいわね。
本当に無駄なところで。


「た、竜也くん。はぁ…はぁ…き、来たよ」


な、なんでそんなに息切らしてるのよ。


「はぁ…お、お話しようか。アリサちゃん」





あとがき


基本的にギャグですすめます
作者です。

当面のこの作品の目標が決まりました。
アリサをデレさせる!

楽しくなってきたー
なので、もう少し続けます。


さて、見てくれている人は少ないと思いますが、
アンケートです。

ヒロインについてです。

アンケートはとるものの、そのルートに行くかはわからないですけどね;

1.すずか
2.アリサ
3.なのは
4.まだ登場してないヒロイン候補
5.全員が俺の嫁
6.だれでもいい、とりあえず続けろ!
7.その他

まぁ票を入れてもらえれば嬉しいです。
暇だったらで結構です。


P.S
いい感じに幼女成分きてます。



[16185] ─第7話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/18 22:48
なのはが電話に出て、その後切ってからここに来るまでは早かった。

俺の家からなのはの家に行くには徒歩で最低でも30分かかる道のりだ。
それをあろうことか、運動の苦手なのはが20分で来た。

これはおそらく、走ってきたんだろう。
ここに来てからもしばらく、息切れが止まらなかった事からも予想して。


「ま、まぁ落ち着けよ、なのは。水でも飲んでさ」

「はぁ…ありがとうね。竜也君」


俺の言葉に甘えて、コップ一杯に入った水を一気飲み干す。
本当に相当焦ってたんだな。

服のあちこちに泥とか葉っぱも付いてるし。


「ほら、泥が付いてるから払ってあげるよ」

「え、あ…うん。ありがとう」


一瞬戸惑ったものの、すぐにお礼を言う。

服を払ってると、ところどころ汗でぬれているところが分かった。
そして、時々「にゃっ」なんて声を上げる。

何ゆえ猫?

それにしても無理したんだろうな。
こんなに汗をかくというとことは、運動が苦手なのに。


「ほれ、タオルだ。汗を拭かないと風邪を引くぞ」

「何か何までありがとうね、竜也君」

「別に気にしなくていいぞ。普段世話になってるからな、なのはにはね。
そのタオルも洗って返さなくてもいいぞ?」

「え、うん。洗って大切にするね!」


大切にするって、別に普通のタオルだぞ?
それにあげるって意味でもなかったんだけどなぁ。

なのはは洗って返さなくてもいいという言葉を、返さなくていいと誤解したみたいだけど。
でも、すごく嬉しそうな顔を見ると、返せと言う気にもなれないな。


「あんたってなのはには優しいわね。私の時とはちがくない?」

「そ、そんなことは無いと思うけど」


俺は二人に対する態度を変えたつもりはないんだけどなぁ。


「そ、そうなんだ。なのはには優しいんだ……ありがとうね。竜也君♪」


なのはよ、そこは感謝するとこなのか?

普段の俺がなのはに対する扱いを思い出してくれ……
いつもいつだって、俺はなのはをおもちゃのような扱いばっかしだったぞ?

アリサと一緒に弄ったり、アリサと一緒に煽ったりって、
アリサも共犯者じゃないか!


「まぁいいわ、許してあげる」


人に優しくすることに許可が必要なんですか?

俺はなのはが来ることでこの状況を打破できると思ったが、とんだ爆弾だったようだ。

なんか悪化してるような気がしてならない……
気のせいだよね?






─なのはSIDE


竜也君から電話が来たときは焦った。
何を焦ったかというと、昨日まで連絡が付かなかった竜也君の方から電話がきたから。

思わずワンコールででちゃったもん。
返信が来ないか確認してたときだからちょうどよかったの。

それで、話を聞いてみるとアリサちゃんと二人きりって言ってて、
余計に焦ったの。

だって、アリサちゃんだけずるいよ。
一人で竜也君と遊んで、なのはだって竜也君と遊びたいの!

だから、なのはは急いで竜也君の家に来たんだ。

自分でも驚くほど早く走れたけど、たくさん転んじゃった。
そしたら、それに気付いた竜也君が泥を払ってくれて……

くすぐったくて「にゃ」なんて声上げちゃったけど、竜也君の手は優しかったなぁ。

そのとき、ちょっと顔が熱くて真っ赤になっちゃった思うけど、
背中を向けてたから恥かしい所見られなくて済んだの。

しかも、竜也君からタオルのプレゼントなの。
初めて竜也君からプレゼントもらえて嬉しかった。

アリサちゃんが言うにはなのはだけに優しいって。
嬉しい。

でも、あれ……?

確か竜也君っていつもなのはで遊んでなかったっけ?
学校ではアリサちゃんと二人で遊ばれてたような気がするけど……

よく考えらば、なのはの家にいるときもどことなく、からかわれているような気がするの。

優しい? あれ?

う~ん、でも今日は優しいのは事実だから、いいかな。

そういえば、アリサちゃんって何時からここにいるのかな?


「アリサは何時からここにいるんだ?
俺が起きたときからすでにいたけどさ……」


あ、竜也君も同じこと考えてたの。


「7……時」

「え?」

「朝の7時からよ!何? 居ちゃ悪かったの? おかげで竜也の寝顔が見れたわよ!可愛かったじゃない!」


アリサちゃん竜也君の寝顔見たの!?
なのはも見たかったなぁ


「いやいや、おかげで見れたって、怒ってるのか、褒めてるのかハッキリしてくれよ。
それに、男に可愛かったといわれてもあまり嬉しくないぞ」

「う、うるさいわね。そこは気にしなくていいのよ」


いま、竜也君の本音が聞こえた気がする……
竜也君も朝から大変だったんだね。

でも、これがなのはのいつもの気持ちだよ?
いつも竜也君とアリサちゃんに遊ばれる。

あ、やっぱり竜也君はいつもなのはで遊んでる。

よし、今日は仕返しをしてやるの。


「竜也君はいつも可愛いと思うよ」


決まった。

竜也君はさっき、男は可愛いと褒められても嬉しくないはずだから、
この言葉は効いたと思うの!


「な、なのははいつも俺をそんな目で見ていたのか?」

「ちょ、ちょっと引くわね」

「にゃあ!?にゃにゃ!!」


あ、あれおかしいの!?
なんで、なのはが攻められてる!?

しかも、アリサちゃんにも引かれてるし。


「ち、違うよ。竜也君は寝顔じゃなくても十分に可愛いって」

「俺はなのはに対する認識を改めなくちゃいけないかも知れない」

「私もそう思うわ。竜也、今後なのはには気をつけなさい。私もいざとなったら協力するわ」

「ああ、その時は頼りにしてるよ」


そのときってなんなの!?
二人ともなんで協力関係になっちゃうの?


「アリサこれからも俺をよろしくな」

「もちろん。私たち親友じゃない」


新しい友情まで生まれちゃってるの。
な、なのはだけ置いてきぼりなの……


「そ、そんな仲間はずれみたいな顔するなよ、なのは」


な、なのははついには竜也君にまで置いていかれちゃったの。

せっかくなのはの家でも相手しくれる人が出来たのに……


「お、おい、泣くなよ。なのは」

「ああ、泣かせちゃったわね、竜也」

「いやいや、責任の一旦はアリサにもってそんな場合じゃないし」

「た、竜也君にまで置いていかれたら、な、なのはは……」

「ま、待てってほら。俺がいるから、なのは泣くなよ」

「う、うん。竜也君……」


も、もう限界なの。


「ああ、抱きつくなよ。アリサもそんな人が殺せるような目線を送らないでくれよ」

「竜也君……竜也君……」

「……そこで泣くなよ。」


竜也君の胸の中はとても温かかったの。



─SIDEOUT

急に俺の胸の中というか、寄り添って泣き出す、なのは。
一体何がどうなってこうなった?

意味が全然分からなかった。


「あんたは知らないの?」


アリサが驚いているような表情をしてた。


「なのはね、ちょっと家族内で揉めた、というほどでもないんだろうけど、問題があって、
それから孤独とか、独りということに敏感なのよ。だからいつも私たちが傍にいてあげるのよ」


俺はよくなのはの家にお邪魔することがあったが、
なるほど、確かに思い返してみれば、
家にいる時のなのは家族ではなく異様に俺に話しかけていた気もしなくはない。

俺には詳しいことは知らないが、いや、教える必要もないか。


「なのは」

「何?竜也君」


涙を流したせいで赤くなってる目を向けてくるなのは。
まだ寄り添ってるせいで非常に距離が近い。


「泣きたいときに泣けばいいじゃないか」

「うん、だから今泣いてるよ?」


さっきまでの、おどおどした雰囲気はなくなっていた。
そして逆にけろっとした表情だ。


「ここは、なのはの家でもないし俺がいるから気を遣う必要もないぞ?
アリサを見てみろ。この部屋の主よりも堂々としてるぞ?」

アリサは悪かったわね、と一言。

「うん、そうだね」

「それはさすがに聞き捨てならないわよ? なのは。」

「アリサは置いといてだ」

「放置かしら? 二人とも後で覚えておきなさいよ」

「だからな、なのは。何時でもここに来ていいぞ?何もないけどね」


実際この部屋には何もないからね。
あるのはベッドと勉強机とイスぐらい。
他にはクローゼットとか必要最低限のものしかない。


「いいの?」


今にも泣きそうな潤った目と、子猫のような小さい声で言わないでくれ。
かわいいじゃないか。


「ああ、俺がいいって言ったんだ。問題ないよ」

「うん、ありがとうね」


そう言うとまた身体を小さくして身を寄せて泣き出す、なのは。


「それ私のときにも言ったわよね?」

「気にしたら負けだ」


まったく今日はとんだ一日……ってまだ昼前かよ!
一体どれだけ長いんだ、俺の夏休み初日。




あとがき

一人ずつ攻略するのがギャルゲの基本。
作者です。

今回はなのはの巻。
あまり、重くしたくないのそこそこあっさり書き上げました。

まぁそれでも話が早いのは、先を考えてないせいですね。
書きたいことを思いついたままに書いてるだけなのでw

期待してほしんですが、
期待は禁物…なんて言うジレンマ?

さて、前回は予想以上の投票ありがとうございます。
予想の5倍です。

あの赤○彗星よりも上です。

以下結果↓(複数回答も入れました)

1.すずか
>>3
2.アリサ
>>3
3.なのは
>>2
4.まだ登場してないヒロイン候補
>>1
5.全員が俺の嫁
>>5
6.だれでもいい、とりあえず続けろ!
>>3
7.その他
>>2

突っ込みは感想欄にて……
いや、ねぇ予想外の回答が多くて驚いたんですよ;
リインはいけるけどプレシアとかリンディとか年の差問題w
あれですか、恋に年の差は関係ないと?w

でも、これはIFでも厳しいですよw

そして、まずは続きを書けこの野郎が多かったんで、書きましたよ。
ええ、楽しかったです。
作者の自己満足ですが、こんな感じですすめたいと思います。

最後に
……続け



[16185] ─第8話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/18 22:50
時刻はお昼過ぎ。
俺が起きてからまだたった2時間しか経っていないのだが、
異様に長く感じる2時間であったのは確かだ。

起きたらアリサが居て、なのはを呼んで。

なのはが泣いて、慰めて。

もうなんか夏休みってこんなにハードなの?

まぁそんなことは置いといて、もうお昼か……

ぐぅ~、と誰かのお腹の虫がなる音がした。

全く空気の読めてないやつだな、そいつは。
まだなのはが完全に立ち直りきってないのによ!

…………

まぁ俺なんだが。


「あんた、場の空気を読みなさいよね……」


「はぁ」とため息混じりに、俺への空気読めない宣言。
俺が空気を読めていないというよりは、俺のお腹がなのだが、
そんなことを言えばアリサがまたうるさくなりかねないので、ぐっと我慢だ。


「にゃはは、ごめんね。竜也君。せっかく呼んでくれたのになのはこんなんで」

「別にいいけどさ。まぁあえて言うならあまり溜め込むなよ?
俺もアリサもいるんだし相談に乗るからさ」

「そうよ、いつもでも言いなさい!」


やはり、こういうときに頼りになるのはアリサだよなぁ、と改めて認識。


「それに、すずかだってい……あ」

「「あ」」


なのはを呼ぶことばっかし考えてて、その後は慰めてたからすっかり忘れてたよ。


「どうする? すずかも呼ぶ?」


一応同意を求めてみる。

俺たちが集まってるのに、すずかだけのけ者ではかわいそうだしな。

それに仲良し三人娘だから即答でいい返事が来るだろう。


「今日はいいかな」

「そうね、すずかはまた今度ね」

「え? 」

「どうしたの? 竜也君そんなに驚いた顔をして」

「いやいや、当然の反応だと思うよ?」


いつも一緒にいる3人娘。
なのは、すずか、アリサのトリオが解散の危機である。


「当然って、別にいつだって三人でいるわけじゃないわよ。
仲がいいのは事実として、ベッタリという訳じゃないんだから」


その言葉を普段の自分たちを映した鏡に言ってみてください。
もしくは、同じクラスメイトに……

みんな俺と同じかそれ以上に驚くと思うよ?


「まぁいいか。俺も少しお腹が空いたから台所から軽く食べられるもの持ってくるよ」

「お願いね」

「まぁ特に弄るものとか遊ぶものとかないけど、ゆっくり待っててくれ」


さて、台所に何かあったかな。
お菓子とかじゃあ、お昼にはあれだけど、
まぁ最悪の手段お菓子でもいいか。

近くのパン屋でお惣菜パンでもいいかなぁ。

そう思いながら台所に行くと、母さんが料理を作っていた。


「あれ? アリサちゃんたちは?」

「部屋で待っててもらってる」


そういえば、この母は俺が寝てるにも拘らずにアリサを部屋に上げたのだろう?


「母さん─」

「それはね、アリサちゃんがあまりにも焦りながら来たから、かわいくってね」


明らかに楽しんでる、面白がってる口調だった。
そう思われた、アリサもたまったものじゃないだろうな。


「それにしても、アリサちゃんだけじゃなくてなのはちゃんまでねぇ。
さすがお父さんの血を受け継いでいるというか、やる子ね竜也。」


いまいち言葉の節々に分からないものがあるのだが……
まぁこの母の言動にいちいち気にしてたら切りがないしね。


「それで一体何を作ってるの?」


この母はまぁ料理はできる方ではある。
そのため、最初こそは冷蔵庫すらなかったが、今はちゃんとある。

それでも、必要最低限の電化製品という言葉が後に付くが。


「お昼だから、なのはちゃんたいにも食べやすいもの。
あっさりして、夏に食べ物といえばあれしかにでしょ?」


あれしかないな。

風鈴と同じぐらいの夏の風物といっても過言ではない食べ物。


「「そうめん」」


まぁ確かにそれなら、なのはたちでも食べやすいだろうし、手ごろだね。


「盛り付けの用意するから手伝って。それが終わったらなのはちゃん達呼んできてね」

「了解」


こうみてても母と二人暮らしがもう板についているので、料理の手伝いとかは普通にするようになった。
料理って意外と楽しいしね。

そういえば、今頃なのはたちどうしたんだろう……




─アリサSIDE


竜也が食べ物を持ってくるといって、この部屋に残ったのは私となのはだけになった。

今日のなのはには、私ですらも驚かされたわ。

息切れしながらここに来たと思ったら、服には泥が付いてるし、
一体どれだけ焦ってたのよ。

そして、そのなのはに対する竜也の反応と行動。

一体どういうことなのよ、あれ?
私の時には優しさのかけらもないじゃない!

あ…でも、少し優しくされたわね。
本当にあのときの竜也は優しくって私は嬉しかったのに。

それなのに、なのはにも?

そうなんだ……竜也って誰にも優しいのね。

って、何一人で納得してるのよ、私。

ああ、もう!
なんか今日ずっとこんな感じだわ。
何でかしら、ホームじゃないから?

そうね、きっと私の家じゃなくて竜也の家で、ペースをあいつに握られてるからだわ。
別に悪い気はしないけど。

もっと優しくしてほしいわねってそれも違うわよ。


なのはは竜也に抱きついちゃうし……なんで、私が取り残されてるのよ。
べ、別に羨ましくはないけど……


「竜也君居なくなったからお話しようか、アリサちゃん」


不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる、なのは。
なんか軽く背筋が凍るものがあるわよ。

普段のなのはからは想像できないわね。


「何の話かしら?」

「うん、なんで一人で勝手に竜也君と会ってるのかな?って思ったの」


一人で勝手にって、別に会うのに許可は要らないでしょ。

それに会いに来た理由は、

心配だったから……なんて言えない、口が裂けても言えないわ。


「別に、会いに来たのは暇だったからで─」

「暇だと竜也君の家に遊びに来るの?」


墓穴を掘ったかしら……
これじゃあまるで、理由もなく会いたいから会いに来たみたいに聞こえるわね。

守りじゃ不利だわ。
なら逆に攻めるてやるしかないわね、いつも通りに。


「そんななのはこそ何しに来たのよ?」

「え、なのはは竜也君が心配だったから来ただけだよ?
アリサちゃんと二人きりだったて言うのもあるけど……」


最後の方は声が小さくて聞こえなかったわ。
でも、そういうことを平然と言うのよね、この子。

これは、どう切り返しても私の分が悪いじゃない!


「それで、アリサちゃんは? なのは答えたよ?」

「う、そ…そうね」


まずいわね。
なのはに押されっぱなしだわ。

何とか話をそらさないと……


「竜也は一体どんなお昼ご飯を用意してくれるのかしらね」

「え…そうだね、楽しみだね」


よし、上手く乗ってきたわね。
後はこのまま押し切るま─


「でも、それは後でのお楽しみとして、アリサちゃんはどうなの?」


今日に限って、引き下がらないわね。
むしろ、私が押されてるわ。


「アリサちゃん、私ね。前にアリサちゃんとけんかしたときに分かったんだ」

「けんか、ね」


あの時は本当に大人気なかったというか、
恥ずかしいわね、今思い出してみると。

あれじゃあ、ただの我侭なお嬢様じゃない。


「言葉だけじゃ伝わらないこともあるって」

「そうね、確かにあるわね」

「だからね、アリサちゃん。ちゃんと教えて、その為にお話しようよ?」


なのは……なんか最後のお話の部分に迫力というか、
殺気に近いものを感じたわよ?

さすがの私でも後ずさりするぐらい……


「アリサちゃん、お話しようよ」

「ま、待ってなのは。なんか怖いわよ」

「怖い? アリサちゃんはおかしなこと言うね。
なのはこんなに笑いながらお話しようって言ってるだけなのに」


その笑みが怖いのよ、なのは。

この状況をどうすればいいのかしら……
このままじゃ私がやられるわ確実に!


「ご飯の準備が出来たぞって……なんか、やばい雰囲気だった?」

「あ、竜也君。お帰り♪別になんでもないよ? ね、アリサちゃん」

「え? そ、そうね。別に普通よ」

「ならいいけど。ちょっと台所まで来てくれ、お昼ご飯を食べるぞ」

「うん、分かった。行こう、アリサちゃん。お話はまた今度ね」


この状況を切り開いてくれたのは竜也だった。

本当に助かったわ。

これは感謝しても切れないわね。
今度お礼もしなくちゃ駄目かしら?

それにしても、なのは……化けるわね、将来的に。
何かの片鱗を垣間見た気がするわ。

その上、さっきまでの殺気が竜也が来た瞬間になくなったもの。

なんなんのよ、その切り替えの早さ。

一体なのはは私に恨みでもあるわけ?
まぁいいわ、また今度お話とか言ってたけど、二人だけにならないように気を付ければいいだけだしね。

竜也がいれば、平気みたいだから竜也の近くにいてもいいわね。

うん、それがいいわ。これは、私が自分の身を護る為だからしょうがないわね。





あとがき

息抜きって大切ですよね!?
作者のタピです。

メインが行き詰まったらこっちで息抜きして、幼女成分を蓄えていますw

だって、メイン重いんだもん……
だからここはいわゆる、休憩所ですね。

これを書いてるとストレス発散になるんですw
そのおかげでメインが書けたりと……どうしてこうなった。

そして、相変わらず勢いで書いてますww

なのはかわいいよ、なのは


最後に
すずかを登場させるつもりが……あれ?
続くといいなぁ



[16185] ─第9話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:24
そうめん。
それは日本の夏という季節において大活躍をする食べ物。

そうめん。
それは日本の夏の風物といえるほどの食べ物。

そうめん。
あまりに手ごろに作れてしまうので、夏場ではよく出てくる食べ物。


「なんで、期待したお昼がそうめんなのよ!」

「そうめんを悪く言うなあああああ!!」


偉大な食べ物なんだぞ、そうめん。


「まぁまぁ、アリサちゃん。でも、なのはも少し期待はずれだったかな?」

「家の食卓に何を期待してるんだよ……」

「だって、ねぇ? なのは」

「だよね、アリサちゃん」


二人で顔を見合わせてお互いの気持ちを確認し合っている。

というより、何を期待したんだ? この二人は。


「竜也君が腕をかけて作ってくれると思ってたから」

「その発言は俺じゃなくて、母さんに失礼だぞ?」

「いいわよ、竜也。ごめんね、なのはちゃん」

「いえ、そういうわけじゃ…」

「今度は竜也に作らせるわ」

「是非、お願いします」


作らせるって……

そして即答するな!アリサよ。

本人の意思は関係ないのでしょうか?

料理は愛情が大切なんだぞ?
無理やり作らせても駄目だぞ。


「それにな、アリサ」

「何?」

「そうめんって美味しく作るの難しいんだぞ。
そうめんってよくめんが絡み合ってて食べにくいだろ?」

「そうね、あれって結構嫌なのよね」

「うん、あれはなのはも苦手かも」

「それを解決する為の工夫がこれにはされているんだぞ?
実際にそうめんを取ってみれば分かると思うよ」


そういうと二人はテーブルの中央にある、そうめんの入ったざるに手を伸ばし、そうめんを取った。


「あ、すごい取りやすいよ」

「しかも、そうめんがある程度束になって食べやすいし」

「そうだ、そうめんを茹でる前に束になった状態で紐で結ぶことによって、絡み合うのを防いだというわけだ」

「い、意外に料理上手だわ……」

「作ったのは、母さんだけどね」


この作り方を教えたのは俺というか、
とある美味しい漫画に載ってたやり方を真似しただけだけどね。

あの漫画見ると、ついつい試したくなるから不思議だよねー


「そして、つゆには鶉の卵お好みでどうぞ」

「うん、使ってみるね」

「無駄にそうめんにこだわってるわね」


なのはは楽しそうにそうめんを食べてくれるのだが、
アリサはどこか呆れたといった感じだった。

しかも、無駄って……

し、しょうがいじゃん。
去年の時とか母さんが楽だからって、ほぼ毎日そうめんだったから、工夫して食べないと飽きるんだよ。

そういった立派な経緯があってこうなったんだから、無駄じゃない。
むしろ必死だ。


「そういうなら、アリサは食べなくていいぞ。せっかく俺も手伝って作ったのにそういうなら」

「え……た、食べないだなんて言ってないわよ!
そんなに、食べて欲しいんなら食べてあげるわよ」

「別に食べて欲しいなんて思ってないから、食べなくていいぞ?」

「う、うるさいわね。竜也の作ったそうめんが食べたいです!これで満足かしら?」


何故そのセリフを言うのに、顔が真っ赤になってるかは知らんが……

まぁいいか。
食べてくれるみたいだしね。


「ああ、満足」

「たく、何で私がこんなことを言わなくちゃ……でも、無駄に美味しいし」

「何か言った?」

「なんでもないわよ。美味しいだなんて思ってないわ」

「ふむ、その発言は母さんに失礼じゃ……」

「あんたに言ったのよ!」


いやいや、明らかに作った人に対する侮辱でしょ?
俺は手伝っただけで、ほとんど作ったのは母さんなんだし。

そして、その侮辱の言葉を言われた母さんだが、
さっきからずっとニコニコしてて、逆に怖いというか不気味だ。

まるで、俺達のおしゃべりを楽しんでるような……

そんなことを思いながら母さんを見てると、目が合った。

そうすると、少し悩む素振りをした。


「あら、私邪魔かしら?」


邪魔って何の?
まったく、相変わらず素っ頓狂なことを言う母だ。


「そうね……あ、母さん急用思い出したから、ちょっと買い物行って来るわね」


そう言うと直ぐに身支度を整え、あっという間に家を出た。
そうなると、家に残されたのは俺となのはとアリサだけになった。

急用って何だよ。
しかも去り際の、空気読んでるわ私、的な顔はなんなんだ?

非常に腹がたつ顔だった。
なんか、してやったりみたいな雰囲気だったし。

残った三人は呆然としながらも、とりあえずは目の前にあるそうめんを食べようと思い、
ズズズッというそうめんをすする音だけがしばらく部屋に響いた。






そうめんを食べ終わり、再び俺の部屋と戻ってきた、三人。
しかし、やることがない。

俺の部屋には……もういいか。
何もないから遊び道具すらも……


「あ、麻雀ならある」

「なんで4人いないと出来ないものがあるのよ!」

「いや、父さんが好きでさ~」

「あれ? 竜也君ってお父さん入れても3人だけなんじゃ」

「そうだよ。しかも、母さん出来ないから一騎打ちだったなぁ」


懐かしいな。
父さんと麻雀を打った日々。
全然役覚えられらなくて、ぼろぼろにされてたけど……

父さんは相手が弱いのに楽しそうだったなぁ。
『なんだ、竜也それじゃあ、終わってしまうぞ。』とか言ってからかいながらも、
手加減無しでやるんだもんな~

大人気ないと思うけど。


「か、悲しすぎるわ」


アリサが俺に同情して、なのはがにゃははと失笑。
まぁ仕方ないね。


「でも、本当に何もないわね。一体どんな生活してるのよ?」

「そうだよね。なのはの家に来ても剣術の練習とご飯食べて、なのはとしゃべるだけだし」


ふむ、そういえば俺はこの家で何をしてるんだろう……
少し考えてみようかな。

剣術の鍛錬のために朝早起きして、なのはの家へ。

そのまま学校行って、終わったらなのはの家で再び鍛錬。

その後は、食事とお風呂入れてもらって、なのはの部屋に行ったりする。

ある程度時間が経ったら家に帰って、勉強して、就寝。

あ、でもこれからは魔法の練習と勉強もあるから、寝る前に付け足して……


「うん、この家では寝る直前までいないね。起きたらすぐになのはの家だし」

「あ、あんたね。それじゃあ、家としての機能ほとんどないじゃない!」

「竜也君はいつもなのはの家にいるからね、竜也君専用の場所もあるくらいだし。
そう考えると、なのはといつも一緒だね。竜也君」


ちょっと嬉しそうに、そして勝気にいうなのは。

確かになのはの家にいることが多いから、なのはとは必然的に行動が一緒になるんだよな。
そのせいか、この部屋もとい家に何もないのは。


「さすがにそこまで聞くと呆れるわね。あんたにもそうだけど、あんたのお母さんにも」


今日、何度目か分からないアリサのため息交じりの口調。
ため息が妙に似合っているように感じるのは気のせいだろうか。


苦労人なんだな、アリサは。

「あんたのせいでしょ!?」

「俺がいつ苦労させた!?」


あと、心を読むのも止めてほしいかな。


「昨日から……」

「昨日から、何?」

「なんでもないわよ」


昨日からの続きが気になるけど……
まぁ無理に言わせてもしょうがないか。


「そういえば、なのははなんで慌ててきたんだ? ここに。
確かに誘おうとしたのは俺だけどさ」


なのはを使ってアリサとの気まずい雰囲気から脱出しようとしたが、
その話をする前にここに飛んできたからな。


「あ、うん。竜也君が昨日ずっと連絡がつかなかったから、心配してきたんだよ?」


そういえば、なのはからも着信あったもんなぁ。

それで、心配して家にまで飛んでくるって……

まぁ嬉しいんだけどさ。
そこまで心配してくれるのはね。

ただ、心配しすぎじゃないか?
たった一日、もないか。半日連絡がつかないだけで……


「まぁありがとうな、なのは。心配させたようで悪かった」

「うん。別にいいよ」


そういうと満面の笑みをみせてくれた。

その笑みは俺には眩しすぎて、真っ直ぐ見るのは厳しい。

で、でも、かわいいからついついちら見を……

─チラッ
──キラキラ

や、やばい。

─チラッチラッ
─キラキラキラ

まるで子猫のような、純粋な瞳とか……
……中毒になりそう。


「い、いつまで二人でいちゃついてるのよ!!」

「え…あ、うん。ごめん、アリサちゃん」

「ど、どうしてそこで謝るのよ!」


あ、終わってしまった……残念。空気読めてないな、アリサは。
ってそうじゃないだろ、俺は。


「そ、そうだぞ、なのは! 危うく……」

「え、竜也君まで!? 危うく?」

「いや、なんでもない」


危うく見惚れるところだったとは言えないよな。
でも、あのなのはかわいかったなぁ。

いつまでも、こんななのはでいて欲しいな。


「まったく、あんたたちは」


アリサがまたため息交じりの……

アリサは本当に苦労人だね!


こんな感じでずっとしゃべってたら、あっという間に時間が過ぎていった。


「じゃあ、今日はもうこんな時間だし帰るわね。また明日来るわ」

「じゃあね、竜也君。明日来るね」


うん、いつ来てもいいとは言ったけど、明日すか……
それになのはには、明日からまたなのはの家で会うと思うんだけどな。

まぁいいか。
二人も今日は楽しんでもらえたみたいだし。


「ああ、じゃあまた明日。楽しみに待ってるよ」



一応玄関までは見送った。
外にリムジンが駐車してあった気がするが、気のせいじゃなかっただろう。

時刻はすでに夕方。
さて、そろそろ魔法の練習でもしようかなと思った矢先にケータイがなった。

どうやら、電話のようだ。

電話の相手が誰かも確認せずにとりあえず通話に出た。


「もしもし、相沢達也です」

『ケータイにかけてるんだから、竜也君以外が出たらビックリするなぁ』

「うん? その声は」

『昨日メールも電話もしたのに返信がないからこっちから電話したんだよ?』

「はは、ごめん。すずか」


アリサ、なのはの次はすずかですか。
本当に忙しいなぁ、夏休み初日。



あとがき

皆さまのコメント支えられて1週間とちょっと、
貴方のコメントが作者の生きる希望です

作者のタピです


いつまでも終わらない、夏休み初日。

ああ、作者は麻雀好きですよw
ちゃんと役も分かりますw

そうめんは……orz

相変わらず勢いで書いてますが、こんな感じです。

感想・指摘などあれば是非w


最後に
メインを書けって?
すみません……しばらく書けそうに無いので、
気晴らしでもいいんでこちらの作品を見てもらえれば光栄です



[16185] ─第10話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:27
昨日にメールと電話?

そんなのが着てたかなと思い、着信履歴、メール履歴を見ると何も残っていなかった。

すずかの思い過ごしかなと思ったが、
そもそも、かけてきた張本人そんなわけがない。

とすれば……


「アリサの仕業か……」

『アリサちゃんがどうしたの?』

「いや、今日アリサがうちにきてね。
着信とかメールとかのもろもろを削除しされたから、すずかのもなくなってたって言うこと」


自分のだけを消せばいいのに、なぜすずかのまで?
そういえば、なのはのも消えてるし。

うむ、不思議だ。


『そう。アリサちゃんもずいぶん心配してたよ?』

「え?誰を?」

『誰をってたつ……あ、そっか。ううん、なんでもないよ』

「誰をだよ……」


誰を心配したんだよ。
すずかも言いかけてやめちゃうしさ。

たつ……たつのこ!?

無理があるか。
妥当に考えたら俺かな、竜也だし。
でも、どうだろうな……アリサが俺を心配、か。

もし、それが本当なら普段のアリサの様子からは思いがけない行動だよな。
というか、そう思ってのあの発言ならかわいいと思うしなぁ。

だけど、人を弄ってばっかしで、あんまり周りを気にしないタイプでお嬢様だし。

ああ、でもあれで結構友達思いだからなぁ。
ありえない可能性ではないけど。

本人に聞くのが早いんだけど……

うん、絶対に答えてくれないね。


『アリサちゃんのことはいいとして』


アリサのことはいいとしてってかなりひどい言い様だと思うよ?
今日のアリサとなのはの発言といい、この3人娘は意外と仲が悪いのか?

それとも、俺が現実以上に仲良しだと思ってるだけとか。


『私も竜也君のこと心配したのになぁ』

「え?そうなのか」

『当たり前だよ。親友だし私の対等な相手なんだから、いなくなったら困るよ』

「後ろの言葉は聞いてなかったことにして、ありがとうな」


親友という言葉はとても嬉しかった。
まだ、この町に着てから1ヶ月しか経ってないのに、こうやって交友関係を持てた証だからだ。

まぁそれもなのはのおかげでもあるんだけどね。
そこらへんはすごく感謝してるんだよね、なのはには。

それにしても……対等な相手ね。
すずかまでそのことを気にしてるのは意外だったかな。


『ううん、当然のことだよ』


すずかはどこか誇らしげにしながらも嬉しそうに言った。

俺としても当然と言い切ってくれるあたりが本当にいい。
こういうスパスパというか、丁寧でありながらもハッキリ言ってくれるのは聞いてて清々しいね。

なのはも、丁寧だけどすずかに比べると幼いイメージだし、
なにより甘えっ子という感じなんだよね。

なのはの家ではそんな雰囲気ではないんだけど、二人だと結構ベッタリというか、
まぁ甘えてくるんだろうな。

それを別に俺は嫌じゃない……むしろ、好きというかかわいいな。
うん、かわいいな。

じゃれてくる子猫みたいで、しかも癒し系だ。

今日もそんな感じだったしなぁ。


それに対してアリサは、魔逆?
物事をスパスパ言うし、ハッキリさせるしね。

何より甘えないよな。

でも、ちょっとしたことで顔赤くなるのはかわいかったな。
普段見ない姿だから余計なのかな?


そして、そのずずか。
この二人のバランサーだよな、正直。

落ち着いた雰囲気に、おしとやかで、でもその中には熱いものがある。

うん、とても熱いものがあるよね!
あの時とかすごかったよ……

まぁそのおかげもあり、アリサとなのはとは、
また違う意味で親しくなったわけだからいいんだけどさ。

だから仲いいんだろうなぁ。
この三人は。

癒し系のなのは。
リーダーのアリサ。
バランサーのすずか。

お互いがお互いをカバーしあってて。

でも、あえて言うなら他にも、天然系とかギャグ担当とかいたら素晴らしいバランスだな。
まぁありえないと思うけどね。

それに今日分かったが、三人とも心配性でお節介なんだな。

 
「にしてもだ」

『うん?』

「経った一日連絡つかない程度で、これは心配しすぎなんじゃないか?」

『ううん、そんなこと無いと思うよ?』

「そんなもんなのか?」

『そんなもんなんだよ』


目の前にいてしゃべってるわけじゃないから分からないけど、
おそらく『だよ』って言ったときに笑顔になってたんだろうなぁと思う。

うん、推測でしかないけど。
すずかって綺麗な日本人の女の子って感じだから、笑顔が似合うんだよね。
なのはとは違った意味で。

絵になるって言うのかな?


「じゃあ、お節介な三人だな」

『そうだよ? 今頃気付いたの、竜也君』

「まぁね、といってもまだ1ヶ月程度の付き合いだろ?」

『うん、でも、あんまりそんな感じしないよね』


そう言えば、そうだね。と続けた。

仲がよくなるのに時間は関係ないということかな。


『今日は何をしてたの? 竜也君は』

「いきなりだね」

『う~ん、そうかな。でも、少し気になったから』

「気になった……ね。大したことないぞ? 今日はなの─」

『なのはちゃん!?』

「そんなに驚くところか? あとアリサも来たぞ」

『アリサちゃんまで……なんで私を呼んでくれなかったのかな?』

「ああ、それはだな。二人が……ん?」

『二人が、どうしたの?』


まてまて、竜也よく考えろ!
もし、もしもだよ。
ここで、アリサとなのはが誘うのを断ったからなんて言ったら、まずいんじゃないか?

まずいっていうのは、その……あれだ。

解散の危機ってやつじゃないか?
仲良し三人娘の。

いや、そもそもすずかが二人にのけ者されたからといって二人を恨むか?
俺と遊んだだけだぞ?

だったら平気な気がする…するけど、なんか危ない気がする!
主に俺の身に何が起こりそうだ。

根拠もないただの勘だけど……

どうするべきかな……本当のことを言ってもいいけど。
嫌な予感がする。

予感を信じてみるか。
嘘をつくのは嫌だけど……


「二人がね、すずかはたぶん忙しいから呼ばない方がいいって気を遣ったからかな」


く、苦しいよ。
この嘘は苦しいよ、自分で言っといてなんだけど。

それにいてから気付いたんだが、
これってばれたときってやばいような気がするぞ。


『そう、なんだ。気を遣ってくれたのは嬉しいけど、ありがた迷惑かな』


あれ、なんかこの発言は俺にとっては予想外というか、
二人にありがた迷惑なんて言っちゃったぞ!?

聞いちゃいけない言葉を聞いたような……


『あ、今の聞かなかったことにしてね。内緒だよ、竜也君』


ああ、でも、かわいく言われたから内緒でいいかなぁ。
てか、言ったらまずいんですよね? これって。

俺の心の奥底にしまっとくとするか。


『あ、いつの間にかこんな時間だね』


時計はすでに9時を回っていた。

すずかとしゃべってると楽でいいなぁ。
あの二人に比べて落ち着いてるからかな?


『じゃあ、今度は私も誘ってね、竜也君』

「了解。おやすみね」

『うん、じゃあ、おやすみなさい』


そう言って、すずかも電話を切った。

ああ、本当に長い一日だった。
でも、今日はまだ終わってない。

俺はこの後は魔法の勉強と練習をして、学校の宿題をやらなくちゃいけないからね。
ハードもいいところだよ……




─すずかSIDE

昨日も連絡がつかなかった、竜也君にようやく連絡が取れた。

竜也君は知らない、私が昨日どれだけ大変だったかを……

お泊り会のことで連絡をしようとしたのに、連絡が取れなかったので、
どうしたもんかと思ってるときに、アリサちゃんから電話が来た。

アリサちゃんからはよく電話は来るし、別に不思議なことじゃないから大して気にせずに電話に出た。

その電話の内容としては、竜也君を心配しているような感じだった。

実際に心配してるんだと思うけど。

アリサちゃんは自分の感情を素直に言うのが、苦手だけど私には分かる。
それにしても、アリサちゃんが他の人の心配を……

アリサちゃんは身内には優しいタイプだからね、
それほどまでに、竜也君が自分達の中に馴染んでるってことなのかな?


私はあれがなければこんなにまでは親しくなってなかったと思う。

そうじゃなかったら、なのはちゃんの友達の一人ってだけだったと思うし。
親友になっていないと思うなぁ。

ぶつかり合った方が、仲良くなれるっていうジンクスみたいのが出来ちゃった感じだけど。
でも、この場合はそれで仲良く慣れたからいいのかなぁ。

アリサちゃんとなのはちゃんはあのけんかで。

竜也君とはあれで……

私って誰かとぶつかり合わないと友達になれないのかな?
あ、でもそれを言ったらアリサちゃんも同じか。


それにしても、竜也君とこんなにしゃべったの初めて……かな?

そもそも、男の子とこんなにしゃべるのが初めてかもしれない……

あっという間に時間が過ぎるほど、楽しかったなぁ。
思わずたくさん笑顔になっちゃった。

竜也君に見せられなかったのが残念、かな。

今度は電話じゃなくてあって話したいな。


『すずか、部屋に入るよ?』


あ、お姉ちゃんだ。
こんな時間になんのようだろう?


「いいよ」

「お邪魔しま~すって、なんだか嬉しそうじゃない? 何かいいことあったの?」

「そんなに嬉しそうかな?」

「少なくとも私の目にはそう見えるよ」


そうなんだ。
やっぱり竜也君とのおしゃべりが楽しかったからかな。


「うん? もしかして、すずか好きな人でも出来た!?」

「え、違うよ、お姉ちゃん」


お姉ちゃんはせっかちだなぁ。
私の周りにはまず男の子だって少ないのに。

一番近くて竜也君だよ?
顔は綺麗だし、優しいとは思うけど……

好きとかじゃないんだよね。

アリサちゃんとかなのはちゃんとかと比べると、なんか違うんだよなぁ。
親友ではあるんだけど……

大切?
ううん、二人も大切な友達だし竜也君も当てはまるけど。

まだ、よく分からないなぁ。



あとがき

毎度お馴染み、0時ごろに更新しますw
作者のタピです。

読んでくださってありがとうございます。

今回でついに10話目の大番台ですよー
あっというまでしたねー
10日で10話ですよ、1日1話ですよ?

キリがいいのでここで終わりにします……
ということが許されるなら、やめようかなw

さて、すずかの言ってる「あれ」とはなんでしょうか?
次回は少し時間を遡ります、たぶん。

そのときに、すずかとアリサのフラグの話でもしようかなぁとw


相変わらず誰がメインヒロインなのか分かりませんが、
そういえば、妹キャラがいませんね?

オリキャラ作ってもいいかどうか、皆さんに聞きたいです。
あってもよさそうなら、ありでいきます。

あと、もう一つ。
もし、まだまだ話が続くようならとらハ版に行こうかなとも思ってます。
続く上で、実力がたりてればですけどね。


P.S
メインが進まないorz



[16185] ─第11話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:29
俺もすずかが言ったように、つい1ヶ月前からの付き合いとは思えない親しさだなと思う。

例えばなのは、
なのははあの三人の中では、最も接する機会が多かった。
そういう意味でも非常になつかれているような気がする。

すずかは最初は興味本意で俺に接してきたと思う。
なのはの知り合いというのが興味をそそったんだろうな。

でも、ただそれだけだったはずだ。
俺としてもそんなに気にすることもなくといった感じだったし。

普通ならなのはの知り合いの俺となのはの友達のすずか、という関係だけで終わってたと思う。

あのきっかけがなければ……



引っ越して間もないころの、3回目の体育の時間。


「今日の体育は、ドッチボールをやります。
しかも、男子対女子です」


先生のこの一言が嵐を呼んだ。

男子勢の『ええええええええ!?』という不満の声の。

俺もそう言った男子勢の一人だけど。

俺からすれば、女子相手にボールをぶつけるなんてことは出来ない。
本気を出そうが出さなくても。

それを人は男のプライドという……と思う。

しかし、男子勢の考えはそんな男のプライドとかそういうものから出たものではなかった。
それが判明したのが次の男子の言葉。


「先生、それじゃあ、僕たち勝てませんよ」

「そうだそうだ!不平等だぞー」

「男女平等にするべきだ」


まるで、男子が女子に勝てないかの言いようだった。


「勝てないんじゃなくて、勝ったことがないんだよ」


俺の疑問に一人気付いたのか答えてくれた。


「むこうには、すずかがいるんだぞ? 勝てるわけが」


その発言を聞いた男子勢が全員、うんうんとうなずく。
つまりは、女子側にすずかがいるから勝てないということだった。

確かにすずかは運動神経はすごい。
それは俺もよく分かるけど、球技でもすごいのだろうか?

ある男子いわく、「あれは鬼神」

とある男子いわく、「あれはドッチボールの申し子」

とのことだった。

う~ん、でも実際に見てみないことには、そんなことを思っていると4人の男子が立ち上がった。


「ふふふ、今日は俺たちに任せてもらいたい」

「我らが内外4兄弟!」

「俺達のチームワークですずかを倒して見せよう」

「この日のために、鍛錬を重ねてきた!」

「「「見せてやろう!俺達の力を!!」」」

『なんか分からないけど、すごい感じがするぞ!』

『勝てる、これで俺勝てるぞ!そんな感じがする』


急に現れた…訳でもないけど、ものすごく気合の入った、4人がそこにはいた。
そして、その4人の気合に引きづられる形で男子勢の士気が上がっていった。


「あんた達バカじゃないの?」


と呟く、呆れたアリサがいたのを知ってる男子は俺しかいないと思う。
俺もそう思うし。


「先生!その勝負、引き受けましょう!」


4人組のリーダと思われる男の子が先生に宣戦布告をした。



ドッチボールがはじめって、10分程度の時間が経っただろうか。

あの4人組は序盤、非常に効率のいいテンポで相手をアウトにさせていった。
一人、また一人、残り3人といった感じで。

こちら側も一人アウトにするたびに、すずかにボールを拾われ、
地味に削られているが、それでもこちらの方が優勢だった、序盤は。

4人組は、一人を内野にして外野を3人で囲み華麗なボール捌きでアウトにしているのだが、
それに対して向こうはすずか一人。
いや、リーダのアリサを含めればこっちの半分の戦力で撃墜している。

途中から4人組の内野担当が狙われ始め、アウトになったが、
外野と交代や、チームワークを使ってアウトにして内野に戻ったりと上手くやっていた。

相手の陣地内に残ったのは、アリサ、すずか、なのはの仲良し3人組だけとなり、
肝心のすずかはおとせずじまい。

その結果、内野担当も再びアウトにされ、残ったのは俺のみとなってしまった。


「あんた、これまで一回も投げてないじゃない!」


そう、俺は目立つのは4人組に任せひたすら逃げ回っていた。
時には味方を盾にしたりして。


「逃げるが勝ちだろ?」

「それじゃあ、終わんないのよ!」

「いいよ、アリサちゃん。私が当てればいいんだから」


次は絶対に当てる!といった表情を見せるすずか。

普段とは違う雰囲気だ。
いつもはおっとりとしているのに今は燃えている。

それはもう、背景に「ゴゴゴゴゴ」なんて見えるほどに。

しかし、そのすずかの後ろにはなのはがいる。


「それで、なのは何故すずかの後ろに隠れてるの?」

「え? いつもここが安全だから」


運動音痴ななのはからすれば、確かに鉄壁の要塞だよなすずかの後ろ。
でも、すずかが避けたときはどうするつもりなんだろう?

「にゃ!」なんて言ってるなのはが目に浮かぶよ。


「それじゃあ、いくよ!」


そう言うが早いか、すずかがボールを投げてきた。
小学1年生が投げるとは思えない弾だ。

うん、誤字じゃないよ?

銃弾だもん、あれ。
初見なら確実にアウトだろう。

しかし、俺もただ見てただけではない。

飛んできたボールを胸の位置でがっちりとキャッチして見せた。


「え? 嘘……」

「すずかの弾を捕っちゃったわよ……」

「さ、さすが竜也君なの」


三人の驚きもすごかったが、他の男子勢の驚きもすさまじかった。


『うぉおおおおおおお、これで勝てるぞ!』

『ついに、俺たちが勝つときに!』

「「「「我ら4兄弟も無駄死にではなかった……」」」」

「月村さんのボールを……捕った?」


などなど、すごかった。
ちなみに先生までもが驚いている。

まぁ俺としても、女の子に負けるわけにはいかないので、
ここはしっかり意地を見せた形になった。


「よし、すずかを狙うと見せかけて、アリサ!」

「ふぇ!?」


不意を突かれた、アリサは間抜けな声と共にアウトになった。


「い、今の流れ的にすずかを狙うべきでしょ!」

「そんな流れなどないわ!」


ただでさえ不利な状況だ。
卑劣な手を使わざるを得ない。

男のプライドはどこいったって?
何それ? おいしいの?


「やるね、竜也君。今度は本気で投げるよ、覚悟してね」


今までのは本気ではなかったと申すのか!?
覚悟してねって体育の授業だよ? これ。

俺が人のこと言えた義理ではないと思うけど。

それにしても本気か。
今までの通りで捕るのは厳しいということになるだろう。

ということは、対策が必要なんだがどうやらそんな時間を与えてはくれないらしい。


「いくよ!」


そういって放たれた、ボールは見るからに速くて重たい一撃。
ただ壁になって受け止めるだけでは、はじかれてしまうだろう。

となれば……

向かってくる弾のスピードに合わせて身体をクッションのように引き込みながら、包み込む。
ボールの勢いを殺すのではなく、流れのままに受け止める。


「嘘……私の本気が……」


すずかはありえないといった感じだった。
そしてその目の中には畏怖がって酷いなぁ、俺はただの普通の男の子だよ?


「じゃあ、次は俺のターンだね」


俺はすずかに決して劣らないボールを投げ返した。
しかし、すずかはすでに自分の本気の弾が受け止められたことに絶望している。

よって、俺の投げたボールに反応できずに本気の一撃が直撃した。

ボコッ!という鈍い音が聞こえた瞬間、バタンとすずかが倒れてしまった。


「す、すずかちゃん!」


近くにいた、というより後ろにいたなのはが慌ててすずかに駆け寄る。
そして、アリサも直ぐに駆けつけた。


「ああ、気絶しちゃったわね」

「これって俺が悪いのか?」

『他にいる?』


満場一致だった。
さっきまでノリノリだったくせに!


「分かったよ、俺が負ぶって保健室に行けばいいんでしょ?」

「え、そこま─」

「いいよ、少なくとも多少の責任はあるし連れて行くよ」


俺としては、言ったように責任云々もあるが、この気まずい雰囲気を何とかしたかった。
というより逃げたかった。

なので、すぐにすずかを背負って保健室に向かった。




「あれ、ここどこ?」


ここに運んでから、約30分。
もう直ぐ体育の時間が終わる時間だった。

すずかは本当にぐっすりと眠っていた。
気絶してるはずなのに、時々嬉しそうな顔をしたり、
悔しそうな顔になったりしてたのをずっと見てたのはここだけの秘密だ。


「保健室だよ」

「あ、そうか……竜也君に負けたんだっけ?」

「負けたというか……すまん、ボール当てちゃって」

「え? う…ううん、お互い様だよ。私も本気だったんだから。それにもう大丈夫だから」


そう言うすずかのかをはまだ少し、青ざめているような気がする。
無理をして言ってるのだろう、俺に気を遣わせまいと。


「無茶はしちゃ駄目だよ。まだフラフラじゃないか」

「え、うん。でも、次の授業もあるし……」

「大丈夫だって、先生の方にも言っといたし、俺も付き添うように言われてるから」


あのあと、担任の先生がここに顔を出してきた。
そのときにすずかの容態がよくなるまでは教室に戻ってくるなと言われた。

なんて無茶苦茶なと思ったが、教室の雰囲気が悪いような気がしたから素直に指示に従った。


「ごめんね、わざわざ付き合わせちゃって」

「全くだよ」

「え?」

「ちょっと本気を言っただけだよ、気にしないで」

「ほ、本音なの!?」


事実本音である。
こんなかわいい子と、じゃなくてあんまりしゃべったことない人と一緒にいるのが気まずくてしょうがない。


「でも、変に気を遣われるよりはいいかな。意外に優しいんだね」

「え?」

「ううん、何でもないよ。なのはちゃんが言ってた通りだなと思っただけ」


一体なのははすずかに何を言ったのだろうか……


「それにね、本気で相手して負けたのは初めてなんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「そこ軽く流しちゃうんだね、ちょっとシリアスな部分だと思うんだけど」


大して興味ないことだから。

俺からすれば相手が本気であろうと無かろうが、
俺自身がやりたいようにできればいいだけだからね。

自分で思いながらなんと自己中なと思うけど。


「じゃあ、俺は先に戻るわ」

「え? 看病してくれないの?」

「だって平気そうじゃん」

「え……ああ、駄目かもしれない。フラフラするよ、竜也君」


だからって自分でベッドの上で頭をクラクラさせるなよ。自分で酔ってるだけじゃん。
それにわざとらしいぞ。


「だから、まだここにいてね」


そう言うと、素晴らしい本当にすごい綺麗な笑顔を見せてくれた。
もしこれで断ったら、男のプライドもあったもんじゃないだろう。


「しょうがない、ここにいるよ」

「ありがとう、竜也君」


素晴らしきかな、男のプライド。



今回のおちは、
この後戻った教室で男子勢に英雄と呼ばれるようになったことだ。



あとがき

相変わらず竜也よりありのままに書いてる、作者です。
ああ、そうか!このありのままにってタイトルはキャラの生き様じゃなくて、作者の陰謀か。

今年‘は’チョコ0でした……
去年彼女と別れたからねorz

まぁそんなどうでもいいことは置いといて、第11話です。
アリサとのフラグの話も書こうと思ったけど、やめました。

よってすずかのターンです。

吸血鬼の設定をどうしようか悩んでます;
ご要望があれば是非お願いします><

というわけで、竜也の長い夏休みがまだ続きます。
どんな内容書いて欲しいかアンケートをとります。

見てくれてる人は少ないと思いますが、
暇な方は是非答えてもらえると嬉しいです。

1.夏の定番のプールや海
2.いやいや、山の中でサバイバルだべ!でキャンプ。
3.君がいた夏は遠い夢です♪夏祭り
3.フラグ回収美味しいですのお泊り会
4.続きまだー?
5.その他

答えてもらえればかなり影響します…たぶん。


何だかんだで、18年間の人生でギリすらもらえないのは初めてかな?
親を含めてだけどorz



[16185] ─第12話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:30
すでに八月は初旬。

八月の初旬といえば、夏休みとしてはギリギリ序盤に入ると思う。

夏という単位においては、もっとも盛んな時期。
最も暑い時期といっても過言ではない。

実際に暑いのだから過言な訳がない。

外では元気よくミーンミーンと油蝉が鳴いている。
この鳴いている音に夏だなぁと思わせると同時に、暑さも倍増にさせれる気分だった。

そして、もうすぐお盆休みがやってくる。

お盆というのは親が休みを取れる時期という意味合いでもあると思う。

俺たちが夏中は休みでも、親はそうではない。
そのため、実際に父さん母さんと一緒に出かけたり、
遊んだり出来る時期であるという意味だ。

まぁうちの場合は父さんは死んでいないし、母さんはいつも翠屋にいて、
俺はなのはの家にいることが多いので、お盆があろうとなかろうが関係ないんだけどね。

結局俺は、初日を除いては毎朝毎夕にここに来て鍛錬をしている。

未だにランニングと素振りの基本練習がメインだけど、
たまに恭也さんや美由希さん相手に試合をすることがある。

やっても全く相手にならず、ぼろ負けだけどね。
それでも、普通より─普通のレベルがわからないが─は上達が早いらしい。

さっき言ったとおり毎日剣術の鍛錬もしているが、ほかにも毎日していることがある。

魔法の練習と鍛錬だ。

初めて魔法を使った日の次の日。
つまりは、アリサが家に怒鳴り込んできて、なのはが泣いて、すずかと電話した日だ。
その日にも魔法を練習した。

まずは魔法に慣れることといわれ、マルチタスクという複数のことを考えられるようになる魔法だっけ?
を毎日やっている。

正確には、念話というテレパシーみたいな魔法を使いながら母さんと魔法の勉強をしながら、夏休みの宿題をやりながら、魔法のイメージトレーニングをやっている。

これが最初は滅茶苦茶つらかった。

二つぐらいなら何とかできたのだ、でもそれが三つとなると頭の中がパンクして、
くらくらして来て、目が回ったり、異様に疲れたりした。

でも、毎日やっていくうちに慣れてきて今ならお手の物である。

『人間の最もすばらしい能力は適応力である』といった人がいるようないないような……
全くそのとおりだと思う。

それが出来るようになったのを見越してか、次の段階の練習になった。

とてもシンプルな練習だ。

母さんが魔法の攻撃をしまくるから、避けるか防御しろ!
もしくは、私の動きを抑えてみろ!攻撃以外でな!
と言うものである。

もちろんそんなのいきなり言われても出来るわけが無く、あっという間に怪我だらけ、ボロボロである。

そんな怪我した俺を見て、それじゃあ動けないから自分で魔法で治せや!
とのこと。

全く鬼である。
鬼以外の何も出も無かった。攻撃しててもすごく楽しそうな笑顔なんだなこれが。
余計萎えてくる。

もちろん、ただ攻撃してくるだけでなくアドバイスをしながら、また、うまく抑えたりかわせたり出来るようにしているのだから、文句が言えない。

なので、なお性質がわるいというのだろうか、
むやみやたらなら、文句のつけようがあるのになぁ。

そんな怪我の絶えない毎日だ。
もちろん、そんな非日常ともいえるような毎日ではあるがそれだけではない。

ある日は家で、ある日は翠屋で、ある日はアリサの豪邸、ある日は……

日時場所を変えて、毎日のようにアリサ・なのは・すずかに会っている。

特になのはは会っていない日は無い。
必ず朝か夕方の何れかはなのはの家にいるわけだから、逆に会わないわけが無い。

まぁおかげでなのはが俺に懐いちゃったなぁ。
子猫みたいに後ろについてくるからね。

そんな予断はここまでにして、今日もそんな日常の一つである。

今俺は朝の鍛錬を終えて、なのはの家にいる。ここまでは変わらない。

なのはの家なので、なのはもいる。
うん、いつもどおりだ。

そして、アリサやすずかもいる。
今日はなのはの家で遊ぶ日だったといえるだろう。


「みんなでお泊り会って楽しそうだよね」

「そうね、夜もずっと一緒って初めてだから私も楽しみだよ」

「今日はゆっくりしていってね。竜也のお母さんも張り切っちゃうから!」

「母さんはこの家の人じゃないだろ……」


つまりは今日がお泊り会の日である。


「ここじゃ、しゃべりにくいからなのはの部屋に行こうぜ」

「うん、そうだね」

「なんであんたが先導を切るのよ……」


実質この家、なのはの家は俺の家以上に俺の家なのでしょうがない。
なので、なのはの部屋にも気兼ねなく俺が先陣を切って入っていく。


「お邪魔するわよ」

「お邪魔します、なのはちゃん」

「どうぞ、ぞうぞ。汚い部屋ですが、ゆっくりしていってね」

「竜也君の部屋じゃないの!それに汚いって毎日掃除してるもん」


ぷんぷんといった様子だ。
俺の知らないところで意外と努力してるんだな、なのは。


「してるよ!竜也君が知らないだけで」

「そうか、そうか偉いな、なのは。はい、お手」

「にゃ!?にゃ~ん」

「よし、よく出来ました。」

「何で、飼いならされてるのよ。なのは……」


にゃはは、と笑う子猫のなのは。
この夏休み中、餌付けを怠らなかったからな。


「あんたは夏休み中に何をしてるのよ……」

「なのはとじゃれる事はよくやってたな」

「うん、よく遊んでるの!」


おかげでこの手のことはお手の物だぜ。
お手だけに。

ここまで一切出番のないすずかさんですが、そこらへんはどうなんだろう?


「なのはちゃん楽しそうだなぁ」

「え!?すずか!?」

「すずかもやってみる?」

「え、私はいいよ、別に……」

「お手」


沈黙が場を支配する。
なのははすずかに期待の目線を送り、
アリサは呆れたご様子で俺を見つめている。

俺は相変わらず右手を出したままだ。

そしてすずかは……


「…………」


お悩みのようだ。
相当悩んでいると見える。


そして、決心を固めたのか、決意の目をして。


ポンっと俺の手に手を載せた。
そして直ぐに引っ込めた。

みるみる顔が赤くなってるのが分かる。

なるほどなるほど、これはなのはとは違うかわいさが……

そして、今にもプシューという音が聞こえそうなほど真っ赤になって止まった。
思考が停止したみたいだ。

これでしばらく、すずかはダウンかな。


「すずか……」

「すずかちゃんも仲間入りだね!」


すずかに呆れ果てているアリサとは違い、なのはご満悦のようだ。
もちろん、俺もご満悦。

これはもしかしたらすずかも飼いならせるかも?

だから俺も一言。


「すずか、大切なのは慣れさ!」

「…………」


反応がないただの屍のようだ。

言葉の通り、ようは慣れだと俺は思う。
なのはも最初の頃は恥ずかしそうに……


「どうしたの? 竜也君ずっとこっちみて?」

「はぁ~」

「何でそんな深いため息するの!?」


してなかったな!
なのはは最初から恥ずかしさとか慣れと関係なくやっていたのを思い出したよ。


「どうするのよ、竜也。すずか止まっちゃったじゃない」

「さぁ、俺に言われてもね」

「あんたのせいでしょうが!」

「俺は振っただけだぞ? 後はすずかの意志じゃないか?」

「提案したのはあんたでしょ!?」

「まぁまぁアリサちゃん、竜也君も悪気があったんじゃ─」

「なのは、おかわり」

「にゃ」

「なのは…私には悪気があるようにしか見えないわ」

「アリサよ」

「何よ?」


今この状況を考えようぜ?
なのははすでに見たとおり餌付け完了してる。

そして、すずかはすでに俺の餌食に……
残ったのは誰だろうね?


「……アリサちゃん」

「お、すずかが戻ってきた」

「何?」

「私はやったよ?」

「え?」

「なのはもやったよ?」

「な、なんなのよ……」


みんな多くは語らなかった。

俺も何も言わず、静かに右手を差し出す。
すずか、なのはは今か今かとそのときが来るのをじっと見つめている。

主にアリサの手に。


「い、一体なんなのよ!!」

「アリサ……」

「「アリサちゃん」」


駄々をこねている子供をあやすかのような、そんな心境だ。
なのはとすずかはまるでその子を悟らすかのような。


「や、やればいいんでしょ!はい」


そう言うと、アリサは俺の手にただ単純にのせた。
そうのせただけ!


「……アリサ」

「な、何よ!?」

「違うんだよ……なのは見本!お手!」


俺はそういうと、『にゃん』と言いながらかわいさ百倍の笑顔と目をこちらに向けながら、
手をちょこんとのせた。

その様子、子猫以外の何者でもなかった。
者だけど者じゃない!


「アリサちゃんこれが『お手』だよ」

「威張って言うことじゃないと思うけど……」

「アリサちゃん……」

「どうしろっていうのよ!」

「手をのせる時に、にゃんと言ってみてよ」

「そ、そんなの……」

「「アリサちゃん」」

「わ、分かったわよ……」


再びなのは・すずかペアにあやされると、しぶしぶと言った表情をした。
そして……


「……にゃん」

「「「……!?」」」


ものすごく小さく、そして、照れくさそうに顔を赤くしながらそっぽを向いて、
ちょことん、と手をのせてきたアリサは……


「「「かわいすぎる」」」


その一言に尽きた。

もはや何も語るまい。
俺はこのときを一生胸に大事に抱えて、脳内に焼き付けて生きていこうとしよう……


「な、何をこのぐらいのことで人生悟ってるのよ!!」


何も言うまい、ああ、何も言わん。
今回のお泊り会はこれだけ。

いや、すずかを含めた、お手の姿を見れただけで俺は満足だ。
ん、なんかおっさんくさいぞ?
なんて思ったが気にしない、気にしない。


「っで、これで終わりじゃないわよね?」

「うん、そうだね」

「まだ一人残ってるよね、ね? 竜也君?」


あれ~いやな、おち、もといフラグが立った気がします。


「いやいや、これで全員だろ? そろそろご飯だろ? 」


気付けばすでに晩御飯時。
いや~実に楽しかったな。

うん、俺はもう家に帰ろう。そうしよう。


「そうね。そろそろ、ご飯ね」

「そうだね、普段ならその後は解散だけど……」

「今日はお泊り会なの!」


よし、察しのいい俺は分かったぞ。
今回のおち!


「じゃあ、後でゆっくりね。竜也」

「楽しみなの」

「楽しみだね、竜也君」



そして、今回のおちは予想通りにこのあと酷い目に会いました。
その上、この3人組と同じ部屋で寝かされたけど、早寝の俺には関係ないと思う、たぶん。

3人は夜中までしゃべってたみたいだけどね。






あとがき

これはタイトルに【ネタ】と書くべきなんじゃないかと最近思う、
作者のタピです。

やってしまった、後悔はしてない。
書きたいように書きまくった。

避難されてもも非難をあびてもしょうがないと思ってます。
(誤字じゃないよ? 引く的な意味出だよ!?)

でも、言うよ。
後悔はしてないと!!

面白かったらこれ幸い。
萌えたら最高の光栄。

とりあえずは、アンケートを反映してお泊り会ネタです。
お泊り会じゃなくてもよくない!?
と思われるかもしれないけど、気にしたら負けだと思ってる。


数少ない読者の皆様に度重なる質問になるのかな?
あと、もう一話ぐらい夏休みネタを用意できると思います。

逆にないと、だいぶ先に飛ぶ可能性が……
運動会ネタをやった後は。


うん、やっぱり先に謝ります。
やりたい放題ごめんなさい。


最後に
20話投稿までに感想100いったらとらハ版にいこうかなと思ってる。



[16185] ─第13話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:32
季節は夏。

夏休みらしさといえば、蝉であるが、蝉の勢いは序盤比べるとさらに増し、
それと比較するように気温も高かった。

何が言いたいかというと、とてつもなく熱い。猛暑である。
今年は例年に比べても暑いらしく、海水浴場はどこも大賑わいとのこと。

また、それと同じように某地域のサマーなランドも大繁盛のとのこと。
海鳴市は海が近い、というより名のとおり目の前には海があるのだが、海水浴場というわけでもないらしい。

泳いでみればどこも変わらないと思うのだけど……

こんな暑い中は、風鈴の音とちょっとした生暖かい風とアイスに癒される。


夏休みは中盤。

序盤もかなりのペースで鍛錬・修行・勉強・遊びと毎日繰り返していたのだが、
相変わらずその勢いは止まらず。

未だにそんな毎日を送っている。

この間なのはの家に泊まったときに、餌付けをしようと思ったすずかだが、あれ以来やってくれない。
実に悲しいものだ。

かわいかったのに……

それに対し意外と言うか、アリサは実はやってくれたりする。
10回に1回ぐらいのペースだが。

それでも、新鮮味はなくならず。
いつ見ても聞いてもかわいい、というかかわいすぎる。

そしてなのはだが……
更なる餌付けに今挑戦している。

お手やおかわりはすでにお手の物で、今はマテまで習得済み。

これは将来のなのはが楽しみでしょうがない、と言うのはここだけの話。


剣の鍛錬は相変わらずと言った感じだ。
それは進歩をしていないというわけでなく、徐々にだが伸びている……と思うということ。

あくまで、そう周り─恭也さんなど─が言ってるだけだ。

魔法の方はと言うと目に見える形で成果がでてきた。
母さんの攻撃を食らっても簡単に防御が破られることもなくなったし、
回避も出来るようになった。

また、ある程度の怪我なら自分で治せるようになったことだ。

こういった、目に見える形で自分の努力が分かるというのは、余計に力が入り、気合も入るというものだ。

気合が入ったのは俺だけじゃないようだけど……

最近では母さんと目が合うと自然に体が回避行動を取るようになった気がする。

そして、魔法の勉強だがこれもいいペースと言えると思う。
ただ、覚える量がかなり多くまだまだ終わりそうにない。

それに引き換え、学校の宿題は毎日やってたせいか、はたまたおかげかで自由研究を残して終わってしまった。

今は、自由研究を何にしようかと悩んでいるところだ。


時期はお盆。

お盆と言えば、墓参りである。

家の家庭も大黒柱であった、父さんが死んでしまったので、その例外なく墓参りに来ている。

場所はど田舎というわけでもないが、
山あり谷ありの海ありで、観光地と言うわけではないがこれぞ田舎!と魅せてくれるものがある。

たまにはこういう雰囲気も大切だ。


そして、来ている面子は、
うちの家族、つまりは、俺と母さん。

そのうえ親戚である、なのは一家と……


「なんで、私たちまで来ることになるのよ」

「まぁまぁアリサちゃん。せっかく御呼ばれしたんだから」

「そうは言っても、竜也のお父さんの墓参りよ? 私達ほとんど関わりないじゃない!」

「まぁその通りだと思うよ」


なぜか、アリサとすずかである。

理由は至極簡単。


「家の主人は賑やかな方が好きな人だったの。
だから、竜也がいつもお世話になってる、すずかちゃんとアリサちゃんもご一緒にってね。
迷惑だったかしら?」

「いえ、そんなことありません。ね? アリサちゃん」

「そう、ね。せっかくだからお参りさせてもらいます」


と、母さんが勧誘してあっさり承諾して一緒に来たと言うわけだ。
来てからもぐちぐち文句を言ってるアリサだが、もういちいち付き合うのは面倒なのですずかに任せきりだ。


「竜也?」

「なに、アリサ」

「一つ気になったけど、あんたのお父さんってどんな人だったのよ?
あんたから話をしてもらったこと一度もないから……」

「そう……だったかな」


俺の父さん、相沢真也。

死後に知った話だが、御神流の使い手の一人でかなり腕利きだった。

仕事は何をやってたかは、知らない。

聞いたことはあったがあまり理解できるような仕事ではなかったような気がするし、
記憶もあやふやなので分からない。

性格は基本的には熱い人。
何事でも本気を出し、誰が相手だろうが完膚なきまでに叩き潰す。
それが自分の息子であっても。

一緒に遊ぶのが一苦労だった。
遊んでもらうと言うよりは遊んであげたみたいな感じだった気がする。

そして、自由気ままな感じがした。
感じがしただけで、俺から見れば自由とは程遠いような気がしたけど。

自由奔放、その言葉が似合う人だったと母さんは言っていた。
きっと、昔は無茶をしたんだろうなと思う。

これが俺の知っている父さん。
ほとんどの記憶があやふやでよく覚えていないが、
母さんいわく、今の俺は父さんに似てきているとのこと。

顔がと言う事ではない。
顔はどちらかというと母さん似でよく髪を伸ばせば男の子かどうかも分からない。

よって、性格面とか生き様のことを示す。

『ありのままに』確か父さんと母さんが俺に望んだ生き方。
俺自身もそれを意識しているわけではないが本能のままに生きていると思ってる。


「わからないな」

「何よそれ……」


呆れた口調で言うアリサ。
何よそれって本当に分からないのだからしょうがない。


「あんたって意外と達観的というか客観的よね」

「そうか? 結構主観的だと思ってるよ?」


言い換えれば、自己中ということになるけど。


「私達とか一部の人間にはね。少なくとも私にはそう見えるって言いたかっただけ。
あんた興味ないことは反応示さないもんね」


確かに、興味ないことには見る気もしない。
つまらない。
その一言で終わる。

だから、興味あること・ものや興味ある人には積極的にいくっていうのかな?
まぁそんな感じだね。

自分から動くとでも言うのだろうか。


「そうだよね。学校でも竜也君って私達以外とほとんどしゃべらないもんね」

「あまりしゃべらないだけで、よく絡まれるけどね」


教室の中では英雄扱いだしね、俺。
とくにあの4人組がもう……

とんだ迷惑だ。
楽しいからいいんだけどね。


「そんな話をしている間についたぞ」


目の前は俺の父さんの墓である。


「ふぅん、普通の墓ね」

「当たり前だろ、何を期待したんだ?」

「あんたなら、とんでもないおちを作りそうじゃない? 古墳とか?」


そっちか……
俺はてっきり墓に刀が一本突き刺さってる風景を思い浮かべたぞ。


「そういう問題じゃないと思うんだけど……」


すずかはいたって冷静なようだ。


「二人はそこで見てて、と言うのもおかしいな。待っててくれすぐに掃除して綺麗ににするから」

「私も手伝うわよ?」

「いいよ、というかやらせて欲しい」

「そう…分かったわ」


せめてもの、だよ。
短い期間でしか、一緒にいられなかったけど、大した思いでもないけど。
そのぶんの……ね?

そう思いながらせっせ、せっせと母さんと雑草やら墓の掃除をした。

二人で効率やったおかげで、ものの数分で終わった。
もともと大して荒れてなかったというのもあるが。

そして、墓の前に立ち瞳を閉じ、父さんの自分の思いが届くように願う。

俺も剣術始めたよと、魔法も出来るんだ、と。
たくさんの友達にも恵まれて、今も幸せだよ。

だから、安心して見守っていて欲しい、と。

目を開ける。

さっきまで近くにいたはずのすずかとアリサがいなかった。
少し周りを見渡してみると、隣で母さんが泣いていた……

こういう時ってどうすればいいのかな?

父さんが死んだばっかしのころは好きなようにというか放っておいたのだけど……


「竜也」


涙声だった。


「何?」

「夜には予定してた宿に戻るから先に戻ってて。場所分かるよね?」

「……了解」


一人になりたい。
そういうことなのだろう。

俺はその場からゆっくり離れていった。



墓場の出口付近に、目立つ金髪発見。
どうやら、二人も空気を呼んで退散したみたいだった。


「待ってたわよ。結構長く拝んでたじゃない」

「まぁね、それなりに報告があったからさ」

「そう、じゃあこれからどうするの?」

「宿でなのはたちと合流かな。高町家は明日墓参りするみたいだから」


ここまで来るのは一緒だったが墓参りは別行動だった。
なので、なのはたちが先に宿に着いて、俺達の帰りを待っている状態だった。


「そうだね、じゃあ宿にいこっか」


三人でのんびりと宿に向かって歩き出す。
今度ここに来るときは、一回忌のときになりそうだ。



「え、じゃあ今はなのはちゃんと桃子さんだけなの?」

「うん、竜也君たちが来るの待ってたの」

「それはご苦労なことだね」


宿について待っていたのは高町家の末っ子のなのはと桃子さんだけだった。

上の兄妹は、近くにいいサバイバル環境があるから、修行に行ったという。
士郎さんはそれの付き添いだそうだ。

熱心なことだ、見習おうとは思わないけど。

そこに山があるから、サバイバルってどこの軍人なのかな?
蛇とかきのこでも食べそうだ。

カ○リーメイトも空気を読んで落ちてんるじゃないのだろうか。

でも、美由希さんは嫌がったんじゃないかな?
あの人ああ見えて普通に近いし。


「それでどうするのよ?」

「どうするって?」

「まだ、お昼過ぎよ? 暇じゃない」


そういうことか。
早朝に家を出て、まだお昼の時間。
今日が終わるにはまだまだ時間がある。

そして、ここは田舎だ。

海とか山や墓はあるけどね。


「えっとね、竜也君!」

「ん? 何なのは?」

「なのは海に行きたいの」


海、ね。
確かに今日は暑いし海水浴にはピッタシだろう。

しかし、残念ながら水着は持ち合わせてはいなかった。


「ふふふ、竜也君甘いわね」

「え?」

「そんなこともあろうかと、これを持ってきたのよ」


さぞ誇らしげに言いながら手から出したものは……


「ビーチバレーボール?」


なぜ、水着じゃないんだ!?
このタイミングは水着じゃないのか!?


「面白いわね。」

「アリサ!?」

「竜也、勝負よ!」




あとがき

久々に真面目な話?
作者ことタピです。


今回はボケを少な目のギャグ少な目ですこし真面目な話でしたね。

というより前回が激しすぎたような気がします。
でも、作者は満足したからいいのです。

基本的にああいうのは手が勝手に動くので、思うが侭に書き綴っていますw


でも今回は書いてて大変でした;
もう色々と;;


そして次回はビーチバレーボール!?
さてどうなるやらw


最後に
感想欄でも言われましたが、前書きに注意書きをしました。
目を通しておいてくださいね^^

P,S
前回は迷作だった。



[16185] ─第14話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:33
とある県のとある田舎。
という言い回しはへんだとは思うが、実際にここは田舎であるのだから仕方ない。

田舎といえば、思い出すゲームがいくつかあるね。
そのゲームからも思い浮かばせるのが、田舎ならではの雰囲気だと思う。

例えば、川があって、虫がいて、海があって、山がある。
人には温かみがあって、都会にあるはずのものがなくてなど。

いくらでも連想が出来る。

そういう意味でも、俺の父さんの墓があるここも思いっきり田舎の範囲に入る。

そして、今現在海に来ている。
ビーチバレーボールをやるためにだ。

有名どころの海水浴場と比べれば、貧相なものに見える。
だけど、俺の予想以上に活気があった。

田舎の海水浴場など地元の人しか来ないと思うのだが、
人はけっこう来ている。

どうやら、イベントがあるみたいだ。
とある人に聞いたところ「ガンダムのプラモが……」とか言ってた気がするけど、
別段興味あることでもないのでスルーをすることにした。

あくまで、目的はビーチバレーボールである。

なぜ、そうなったかというとなのはの海に行きたいという願いと、
桃子さんの微妙な気の配りようと、アリサの勝負魂に火がついたからである。


「勝負よって、具体的にどうするの?」

「何を言ってるのすずか? 竜也と勝負をするに決まってるじゃない!」

「なぜ当然のことのように言う……」

「この間の恨み……」


この間、と言われてもいわれのない恨みだと思う。
俺には何のことかサッパリだ。


「ドッチボールのことじゃないかな? かなり根に持ってたよ」

「ああ、不意打ちしたやつか」

「そうよ! 今日はその雪辱戦よ!」


雪辱って……アリサ的にはそうとう悔しかったのか?
俺、あの時に卑怯呼ばわりされてたしなぁ。


「じゃあ、やってもいいけど。ただ勝負するのじゃつまらなくないか?」

「そうね、私が勝ったら一つなんでも言うことを聞くでどうよ」

「それって普通男が女に求める要求じゃ……」

「う、うるさいわね!いいのよ! であんたは?」


俺も同じことでもいいと思った、が。
それじゃあ普通すぎる。

なので……


「アリサが今日一日猫化、ってのはどう?」

「な……」


アリサ猫はとてつもなくかわいいからなぁ。
素っ気無いところとか最高だ。

そして、そのときに赤くなる顔ときたら……


「わ、わかったわよ」

「よし、じゃあコートは……あった」


なんとも都合のいいことにそこには、
俺たちが使うのにちょうどいいくらいの大きさのネットとコートがあった。

空気の読めるビーチである。


「じゃあ、チームわけね」

「は?」

「すずかと竜也が一緒だと下手したらプロでも勝てないから合わせられないから、
私とすずかペアとなのは竜也ペアの一択で決定ね」

「一対一じゃないの!?」

「あたりまえじゃない。あんたと一対一でやったらすずかでも勝てないのよ?」


プロでも勝てないって……俺もすずかもそこまで人外じゃないよ。

それに、それはドッチボールでは、じゃないのか?
ビーチバレーボールと言うことは、バレーの実力はもちろんのこと。

地面が砂場なのでバランス力もそして体力も大切になる。

それに、二対二となるとチームワークと仲間も実力も……

そして、そもそも、アリサは運動が決して苦手と言うわけではない。
そのうえすずかとのコンビネーションはドッチボールのとからでも完璧だ。
文句のないペア。

それに対して俺となのは。
俺はバレーこそ少しやったけど、基本的には初心者。
まぁ相手もどれほどの実力かは分からないからそこは問題ないとして、ペアが……


「どうしたの竜也君、ずっとなのはを見て」

「はぁ」

「にゃ! どうしてそんなに深いため息をするの!?」


そりゃあ、ため息の一桁や二桁はしたくなるものですよ。


「多くない!?」


気のせいだ。

なのはは泣く子も黙るほどの、いや、泣く子が泣き止むほどの(同じか)
運動音痴である。

多少大げさな言い方かもしれないが、でも運動音痴ではある。

徒競走をすれば途中で転び、ドッチボールをすれば顔面強打。
バレーをすれば……アタックの標的?

そんな彼女が同じチームなら、ハンディも同然である。


「竜也君が酷いこといってる気がするの」

「なのは、気がするんじゃない。言ってるんだ」

「よけい酷いの!」

「運動音痴」

「にゃ……本当のことでも酷いの……」

「あんたたちいつまで漫才してるのよ。始めるわよ」


そう言って、サーブをする構えに入るアリサ。
そっちボールからなんだ、とか言いたいことはあるが、やるからには勝たないといけない!
罰ゲームがやだとかもあるが、それよりも負けることが嫌だ。

絶対に負けられない戦いがそこにはある!!





ビギナーズラックという言葉がる。
これは初心者の奇跡という意味だと勝手に解釈してみる。

俺はそこに賭けた。
否かけざるを得なかった。

なのはが奇跡の才能を開花するとか。
なのはが実はバレーが得意だったとか。

まぁ実際には起こらなかったわけだが……

そのせいで1セットをとられてしまった。
ルールは1セット10点の3セット先取りというかシンプルなもの。

2セット目は、スポーツにおける「スポーツは何が起こるかわからない」という名言に縋った。

すずかが砂地に足をすくわれるとか、
すずかが足を捻って事態とか、
すずかが裏切るとか……

まぁ何も起こらず2セット目もとられたわけだが。

しかし、俺もただやられていたわけではない!
2セットの間に砂地の感覚はつかんだし、ビーチバレーの感覚もつかんだ。

そして、可能性も見つけた。
そう、勝つための可能性である。


なのはは子猫である。
それは俺に対してという条件付であるが、子猫のときは基本的に俺の言うことを聞くように、
餌付けされている。

最近、この子猫に教えていることは……


「なのは」

「はぁ…はぁ…な、何?竜也君」


すでに、なのははぼろぼろな上で涙目である。

ぼろぼろな理由はかっこよく飛びついたとかではなく自滅。

涙目な理由はやられたい放題にやられたからと言うのと
自分のふがいなさが故が原因であると思う。
なんだかんだで負けず嫌いだからね。


「お手」

「にゃ~ん」


俺が出した右手にちょこんとお手をする。
相変わらずこの子猫はかわいいと思う。
素直に言うことを聞くしな。

とそんなことを考えている場合ではなかった。

「待て」

「にゃん」


そういうと待機状態に入る、子猫。
ずっと俺の顔を御視している。


「何してんのよ! 油断してんじゃ……ないわよ!!」


そういうとアリサの強烈なサーブが飛んでくる。
俺なら反応することが出来るが、なのはではまず不可能だ。

普段のなのはなら。


「右に飛んで、前にお手の体制だ!」

「にゃん!」


俺の言葉通りに動くなのは。
右に猫のようにスパッと飛び、お手のように手を前に出す。

そして、そこにボールが当たり、絶妙なレシーブとなる。

俺はそのボールを直接あいて陣地にアタック!
お互いに初心者なのでアタックされると基本的に返すことが出来ない。

そのため……


「う、嘘でしょ……」

「子猫状態のなのは無限の可能性を秘めているんだぞ」


にゃにゃんと言う俺の横の子猫。
そして、相手を威嚇するようにフシャーフシャーと言っている。

いままで餌付けしてきた甲斐があったというものだ。
最近教えてきたことは、俺の言うとおり100%動くこと、である。

もちろん、人間の能力を超越したことなどは無理だから範囲内で。

最初は俺の言うことをよく聞かせる程度のつもりでやってたが、
まさか、こんなことに役に立つなんて……

子猫なのは、恐ろしい子!


「でも、まだ私たちが有利よ!」


まったくもってその通りだ。
しかし、ここからが俺達の逆襲の始まりである!



「なのはちゃんと竜也君のペアすごかったね」

「俺も予想以上でビックリしたよ。な? なのは」

「にゃん♪」


あのあと大逆転劇が始まった。

なのはの普段の運動音痴からはそうぞうもつかない運動能力で、
ボールを拾い、俺がアタック。

ひたすらこれの繰り返しだった。

なのはのサーブのときは残念な感じだったが、相手のサーブを拾うことが出来るし、
アタックもなのはが拾えたので負けはなかった。

なのは自身も、俺の言うことどおりに動くと、思うように動けたようでビックリしたみたいだ。
そして、未だに猫モードである。

なのはは後ろからベッタリとついてくる……すっかり子猫が板についたようだ。
これは、家のペットになる日も遠くないかもしれない。


それに対しアリサ猫はと言うと


「……」

「アリサ、何かしゃべってよ」

「……アリサちゃん」


負けたときから一言もしゃべってくれない。
これじゃあ罰ゲームの意味がないじゃないか!


「大体ね!あんたが!」

「アリサ、猫語」

「う……にゃん……」


相変わらず恥ずかしそうにやるねぇ、アリサ猫は。
顔が真っ赤だし、声は小さいし。

そこが、かわいいからいいんだけどさ。


「にゃ、にゃん。にゃにゃにゃ」

「なのは通訳」

「『今度覚えておきなさいよ!』だって」

「そうかそうか。かわいいぞ、アリサ猫」

「にゃ……にゃん」


褒めてあげると顔をよりいっそう赤くなる。
でも、そっぽは向けずにこっちを真っ直ぐ見つめてくる。


「ジーーッ」


俺がむしろ顔をそらすぐらいだ。

まったく、アリサ猫もなのは猫もかわいすぎるよ。
ああ、ひさびさにすずか猫も見てみたいなぁ。


「どうしたの? 竜也君」

「いや、すずか猫も見たいなって」

「え!? それはちょっと、ね」


少し考えをする素振りをするものの断るすずか。

彼女の壁はまだ崩せないか……
何かきっかけがあればいいのになぁ。






あとがき

多少強引だったが、後悔はしていない。
作者のタピです。

なのはかわいいよなのは。
どうしよう……このままなのはルートしかない!?
作者的にですがw

新しい「お手ぽっ///」という言葉できてもおかしくないんじゃないかと思う。

さて、ビーチバレーボールはいかがでしたか?
数少ない読者の方を裏切るような(いい意味でも悪い意味でも)内容でしたか?

面白ければこれ幸い。
萌えて頂ければ最高の名誉です。

夏休み編はこれにて終了です。

この後は、運動会をやろうかどうしようか悩んでます。
何かやってほしいものはありますかね?

本編介入まであと1年半ぐらい。
まだまだ時間はありますのでw

最後に
実はちょくちょく漫画やゲームなどのネタが入ってるのに気付いている人はいるのだろうか……



[16185] ─番外編─「竜也の夏休み日誌」
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:35
第15話目記念の番外編です!
本編の内容に軽く触れながら、夏休みを竜也が振り返るもの。

軽い気持ちでお読みください^^

では、どうぞ~

────────────────────────────────────────────────────────────


夏休みは学校がないというだけで普段とはなんら変わりないと思う。

学校があったころ、つまりは夏休み前でも、
朝は鍛錬、夕方も鍛錬。

それは、夏休みにはいっても変わることはないだろう。

また、母さんから魔法の練習をしてもらうことになったが
それを入れても、そんなに変わるものではないと思う。

現に夏休み初日がそうだった。

また、この初日はアリサの突然の来訪ではじまり、なのはの涙、すずかの電話で締めくくられた。
それは、普段なら学校に行ってる時間に起きた出来事。

つまりは、学校が休みになって暇な時間に起きたことだ。
多少は特殊な出来事だったとはいえ、
こんなのは夏休み中続くとは到底思えない。

何が言いたいかというと、暇な時間が増えて、その暇な時間を何に費やすかだが、
今書いてる、日誌のネタに費やそうと思う。

いや、今ここに、この日誌に決意した。

そうと決まれば、明日は早速ネタ探しである。

どんな面白いことがあるか、今から楽しみだなぁ。

以上、夏休み最初の日誌より。





いいネタを発見した。

これは思ってもいないネタというより、案外面白いネタは身近にあるものだなと思った。

それは、いつもどおりの日常からの発見だった。

俺はいつも通りに朝からなのはの家に行き、剣術の鍛錬をしてきた。

最初の頃の初々しい心こそはないが、
なぜか、刀を振るっていて楽しい気持ちになるのは何故だろうと思う。

話が逸れた、元に戻す。

ネタは鍛錬が終わった後に見つかった。

そのネタは、鍛錬から戻ってきた俺を見るとすぐに駆け寄ってきて、タオルを渡してくれた。

「気が利いてるな」と、褒めてやると、
「にゃ~ん」とか言いながら、顔を真っ赤にした。

初日に時にも思ったが、このネタは思いがけないことが自分の身に起きた時、
もしくは自分が対象のときに猫語がでる習性があるようである。

なるほど、これはかわいいと思ったと同時に面白いなと俺は思った。

ここまで書けば分かると思う。

そのネタとは

「高町なのは」

その人である。

以後高町なのは(ネタ)を子猫と称し、観察日誌をつけることにした。

夏休みの楽しみは一つ増えた、そんな感覚だ。

以上、夏休み二度目の日誌より。





子猫とは毎日子猫の巣で会う。
子猫は自分の巣で我が物顔というわけではなかった。

どこか自分の居場所はここにはない、と言った表情をたまに見せるのだ。
しかも、その姿は誰もいないときに。

そう、特に自分の家族がいるときには見せない。

俺がそんな表情を見たのはたまたまだった。
アリサから多少の話は聞いていたものの、やっぱりと言う感情より現実は厳しいなと同感してしまった。

その、なのはの表情と言えば、
雨の中ダンボールの中においていかれた子猫そのままだ。

事実、子猫だからこの比喩表現は間違っていないと思う。

俺はそんな、なのはを見つけて黙ってるわけにはいかないと思った。
なので、後ろから驚かせてやると、

「にゃい!?」

などと腑抜けた声を出したので、俺が驚いてしまった。

そして、次のなのはの言葉が衝撃的だった。

「にゃはは、見られちゃった…かな?」

ちょっとショックを受けたような感じでつぶやき。
そして続けて

「このことは黙ってて欲しいかも。」

だ、そうだ。

なるほど誰にでも見られたくない一面はあるものと思う、が。
なのははすでに俺に俺の家で涙も見せているじゃないか、こうなったら乗りかかった船だ。

とことん付き合ってやるとしよう。
なので、俺はこのときに一言言ってやった。


「お手。」

「え?」


なのはは戸惑いを隠せない顔をしていた。
当然だろう、猫だからお手はしない。


「ええっと、これでいいのかな?」


そういいながら、俺の手の上にポン、と手を置いた。
なのはの手は……予想以上に冷たかった。

手が冷たい人は、心の暖かい人なんて言う都市伝説があるが、
なのはの場合は当てはまるのではないだろうか?

なのは心優しい子だと俺は思う。

だって、俺がこの町に来て一番最初に居場所を与えてくれたのだから。


「それだけじゃ不合格だ、なのは。」

「にゃ!?」

「そう、それだ!にゃんと言いながら、お手をしなさい。」

「う……うん。にゃん。」


何の戸惑いもなく、にゃんと言いながらなのは俺の手にお手をした。
なのはの手は相変わらず冷たかったが……

俺の手は熱かった。
否、熱くなった。

にゃんといいながら、お手をするなのははとてつもなくかわいかった。
その上さっきまで、見られたくない一面を見られたせいで、目がウルウルしてたのが、
さらにかわいさを際立てた……

俺は思った。
もうこの子猫を飼うしかないと。

以上、夏休み3度目の日誌より。





子猫を飼うことに決めた俺が、これから行うのはちょうき─餌付けである。
子猫を餌付けして懐かせる事だ。

なんだが……

あれ?おかしいな。
そんなことしなくても十分懐いてる気がしてならない。

懐いてるんじゃないかと思わせる行動を、
この日誌を書きながら今日を振り替えってみる。

その一、
朝鍛錬を終えると必ずなのはがタオルをもってきてくれる。

うん、これだけなら気が利いてるだけだな。

その二、
俺がフリーになると、なのはが自分の部屋に来るよう俺を誘う。

遊び相手が欲しいんだろうな。
なのはも暇だと見える。

その三、
アリサやすずかと遊ぶときにも必ずなのはがついてくる。

うん、友達同士だからかな。

その四、
一緒にお風呂に入ろうとする。

OK分かった。
俺は懐かれてるな。

一応弁解はしとくが、一緒にお風呂に入ったことはない。
一度もだ!

結論だが、餌付けは成功していると見えるので、芸を仕込むとする。

明日からまた楽しそうな日常が始まりそうだ。


以上、夏休み6度目の日誌より。



なのはの芸の仕込みもなかなかに上手く行ってきてる今日この頃。
なのはの家でお泊り会があった。

男一人に対して女の子3人ってどういう比率と思ったけど、
今更考えても仕方ないと思い、開き直ってノリノリでやるとした。

なのは猫の初お披露目となった。

仕込みどおりにちゃんとやるなのは猫はかわいいと思う。
家のペットになる日もそう遠くなさそうだ。

この日はそのなのは猫の勢いと乗りに任せて猫大会になった。

すずかは案外ノリノリでやってくれた。
なのはとは違い少し恥ずかしそうにやるのが壷だった。
笑いじゃないよ? かわいさのだよ?

顔を赤くしながらちょこんってどこの子猫だと思ったよ。
ああ、そうか。
すずかは家でたくさん猫を飼ってるから子猫の真似はお手の物なのか。お手だけにと駄洒落を言ってみる(自爆)
まぁ納得である。

それに対してアリサ猫。
説得するのが大変だったが、しただけの甲斐はあったと思う。

あまりのかわいさに全員が言葉を失った。
なんなんだよ!

あの素っ気無く、顔を赤くしながらそっぽを向いて小さく「にゃん」って。
アリサ……実は練習してたと見える。

俺的には犬派だったが、これは猫派にならざるを得ない。

その後俺は大変な目に遭ったが……
思い出したくもない。


以上、夏休み8度目の日誌より。





なのはへの餌付けはまだまだ終わらない。
俺は子猫への新たな可能性を導き出そうとした。

それは犬のコリーやシェパードに劣らない、忠誠心を見出すことだ。

子猫は普通自由気ままな生き物だと思う。
その猫に忠誠心のかけらなどあるはずもないのだが、

なのは猫はそんじょそこらの猫とは訳が違う。

俺の言うことは何でも聞くし、気が利く。

餌付けは簡単だった。

例えば、飲み物を取ってきてほしいというと、とって来る。
俺はそのお礼にお菓子を上げたり、遊んであげたりすればいい。

ただそれだけだ。

ね? 簡単でしょ?

しかし、その様子を見た美由希さんが俺と同じようなことをやろうとしても、
そっぽを向くのだ!

にゃん!と言って。

つまり、なのは猫は俺を飼い主だと思ってるに違いない。

ここからでる結論は、なのは猫には俺に対する忠誠心があるということ。

そして、この忠誠心がなのは猫の大きな可能性にひとつなのではないか?
と俺は問う

以上、夏休み10度目の日誌より。






なのは猫の可能性は無限大であった。

俺は実は恐ろしい一面を見たのではないかと思う。
それは、昨日のビーチバレーボールで思い知った。

アリサの外れた勝負魂のせいで、罰ゲームつきの勝負をすることになったのだが、
結果的には勝った。

大逆転劇だった。

すずか・アリサペアは強かったがそれ以上になのはがすごかった。

運動音痴のなのはは、猫モードになると俺の指示に忠実に従うように餌付けをした結果、
運動音痴が解消されたのだ!

それどころか、すずかには及ばないにしろ、かなりの反射能力を有する。

条件として、俺の指示したことじゃないと動けないが、しかし、その条件を苦にしない動きだった。

バレーボールである。
相手がサーブやスマッシュをしたのをみて、俺が指示出してからの反応では、
いくら猫モードなのはだとしても、普通は反応できない。

しかし、それをやってのけてしまった。

その動きはまさしく猫である。

俺はこの瞬間思った。
なのはは俺の最高の猫だと。

それにしても、なのは猫は見れば見るほどかわいい。
最近の俺はなのはを見ると子猫にしか見えない。

むこうもそう思ってるのか、俺に気付くと「にゃ~ん」といって、駆け寄ってくる。
気分が良いと、身体をこすり付ける。

これはもはや、子猫以外の何者でもなかった。

以上、夏休み15度目の日誌。




夏休みもいよいよ最後である。
小学校に入って初めての夏休みは忙しいと言うには大げさで、
暇だったと言うには、予定がありすぎた。

初日の騒動に始まり、毎日の鍛錬と練習と勉強。

……勉強!?

しまった、忘れてた。
夏休みの宿題の中に一つだけやってないものがあった。

それは、自由研究である。

どうするべきか……

幸いなことに自由研究の提出日は始業式の初日ではない。
なので、提出日までに手ごろな研究材料をみつけなくては……

まぁあさっても仕方ないので、今度考えよう。

剣術もそれなりに上達したし、魔法もかなりできるようになったと言える。

そして、それ以上に、なのは猫やアリサ猫、すずか猫の発見が大きかった。

その中でも一際目立つのがなのは猫とアリサ猫である。

可能性のなのは猫。
想像絶するアリサ猫。

今後もこの二匹からは目が離せないことだろう……


以上、夏休み最後の日誌。





あとがき

猫派か犬派かで言ったら、両刀使いです!
作者のタピです。

どうでしたか?
記念の番外編。

色々とボケをきかせたつもりでしたが、衝動的に書いたので、どうなったかは作者でもわかりませんw

当初は運動会編を書こうと思っいましたけど、
ふと、おもいついちゃったのだからしょうがない。

面白かったらこれ光栄。
楽しめたら最高の栄光。

さて、とらハ版に移る件ですが、
問題がなければ次回から移動するつもりです。

予定より若干早いですが、問題ないですかね?
まだ、修正点多く無理だと思われたらやめます。

むしろ、いけるならやってみろ!といって頂けると嬉しいです^^

もしくは、いやいやチラ裏に居てくれ!
と言われるようなら、残ると思います。

数少ないこの作品の読者のみなさんの、意見をお持ちしてます。

最後に
メインはまだしばらく書けそうにありません。
すみません。



[16185] ─第15話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:36
前略天国のお父さん。

俺はすこぶる元気です。

父さんはどうでしょうか?
天国はいいところですか?

俺の生きているこの世界は本当にいいところですね、最近よく思います。
この世界と言うかこの海鳴市ですが。

父さんに朗報があります。

家に新しい家族が出来ました。

なぜ生まれたのではなく出来たという言葉なのはか、理由があります。

新しい家族と言うのはペットのことだからです。
このペット、名はなのはと言うのですが、子猫です。

とてもかわいいです。

人でありながら人じゃなくてペットなのです。
不思議な生物でしょ? 父さん。

子猫とじゃれていると本当に癒されます。
今後も少しずつですが、ペットの数増やそうかなと思います。

現状で候補が二人──二匹います。
みんな個性があって、見たりじゃれたりすると幸せになれるんです。

話は変わりますが、夏休みも終わっていまい、もう新学期です。
最後まで残ってしまった、自由研究ですが。

『子猫の実態』というものを提出してみたところ、高い評価をもらって、
学校で表彰されました。

今度その表彰状もって、墓参りに行きますね。

さて、新学期と言うことで秋なんです。

スポーツの秋と言われますが、俺の学校ではその秋にちなんで、もうすぐ運動会があります。

天国から応援しててくださいね。




「では、皆さんの参加する種目を決めたいと思います」


先生の声が教室に響く。
今日は、近いうちに開かれる運動会の種目を決めをするようだ。

ようだという、他人事っぽい感じなのは、別段興味がないからだ。
普段から運動はしてるし、やれと言われればやるが、そうじゃないなら大人しくしてたいなぁという。


「我々四兄弟は騎馬戦をやらせて欲しい!先生」

「さ、さすが兄じゃ!かっこいいよ」

「騎馬戦こそ男だよね!」

「俺が一番上に決まってるけどね」


この運動会をやるにあたってもっともやる気満々なのは、
この間の内科四兄弟だっけ? あ、内科ならアウトドア系じゃないよな……

じゃあ、外科かな? うん、外っぽい!
漢字に外ってついてるし。

まぁどっちでもいいけど。


「一年生の種目に騎馬戦はないんだけど……」


なんというか殊勝な心がけだね。
でも、残念だったね。

騎馬戦ないってさ。
まぁ本人達には聞こえてないみたいだけど。


「やるからには絶対に勝つわよ!すずか!なのは!竜也!」


ああ、もう一人いたよやる気満々なのが、身近に。


「なんであんたそんなにやる気なさそうにしてるのよ!?」

「だって……ね?なのは」

「にゃ? ああ、竜也君はいいじゃん……私なんて……」

「なのはちゃんは運動苦手だもんね」


なのはが運動会を嫌がるのは当然と言ったら、なのはに失礼かもしれないが、
理解も出来るし、同情もするよ。

運動音痴だからね、なのはは。


「では、種目を発表します」


そう言うと、黒板に書目が書かれていく。

・選抜50m走 1
・障害物競走 1
・二人三脚 2
・代表リレー 4


「この他には全員が絶対に参加する、徒競走と全員リレーがあります。
また、この種目をやらない人は応援組みになります。
その時には学年で決めた演技をしてもらうことになります。では、この種目をやる人を決めましょう」


全員が強制参加するものと代表でやるものがあるのかぁ。


「先生!」

「はい、どうしましたか」

「その種目の決め方はどうするのですか?」

「立候補、もしくは推薦で決めようと思います、
なので今から順に先生が種目を読み上げていくので立候補したい人、
もしくは推薦したい人がいれば手を上げてくださいね」


うん、実に平等だね。
これなら立候補しなければ、強制参加のみになれそうだ。
そうなれば、運動会でも多少は楽になるかなぁ。


「では、まず選抜50m走ですね。
この種目は単純に足が早い人が良いと思います。
立候補のかたもしくは、推薦者はいますか?」


みんなを見渡しながら話を進行する、先生。
あとは、立候補者がでればまず第一関門突破だ。

その為には目立たないように顔を伏せとこうと思う。

…………

なんか、視線が集まってる気がする。
た、たぶん気のせいだと思うが、一応顔を上げて周りを確認してみよう。

前を向いてみる。
先生がにこやかにこっちを見てるのを確認した。
前の生徒がこちらに振り向いているのも確認をしたぞ。

もう一回伏せてみよう。

よく考えるんだ俺。
きっと俺を見ているわけじゃない。

そう、きっとみんな俺の後ろにいるスタン○を見てるに違いない。
珍しいからなスタ○ドは……

うん、この見解だとみんなスタンドもちに……細かいことはいいか。

ね、念のためだ横も確認してみよう。

横を見るとそこには当然、なのはが座っている。

そのなのははなぜか俺の方向(あくまで俺じゃない!)を向いて、
期待の眼差しを送っている。

一体誰だよ!
こんなにもなのはの情熱的な期待を受けるやつとか、もう俺嫉妬しちゃうぞ。


「先生!」

「なんですか? 高町さん」

「相沢竜也君を推薦しま─」

「い、異議あり! 人の意見を無視した推薦は駄目だと思います! 民主主義的に!」

「異議を却下します。相沢君が選抜50m走に出るのに賛成の人は手を挙げてください」


満場一致だった。
これは、もう清々しいほどに満場一致だった。

どうやら、俺に拒否権はないらしい。
民主主義万歳である。


「では、相沢君よろしくね。」


先生の素敵な笑顔だった。
これはもう、あれだ……諦めるしかなさそうだ。


「お願いね、竜也君」

「期待してるよ」

「あんたにかかってるんだから、期待してるわ」


うるさい!
そもそも、こうなったのなのはのせいじゃないか!

なのはが推薦しなければきっと俺以外の誰かがなっていたに決まってる!


「それは、無いと思うわ……」


いや、あるね。
十分にあるよ。

こうなったらせめてもなのはも道連れだ!


「先生!」

「どうしたんですか? 相沢君」

「障害物競走になのはを推薦します!」

「にゃ!?」

「はい。では、障害物競走は高町さん、お願いしますね。」

「にゃにゃ!? 竜也君それは無いと思─」

「なのは、静かに待て」

「にゃい」

「言うこと聞いちゃうんだ、なのはちゃん……」


ふん、俺に逆らおうとするからそうなるのだ!
せいぜい障害物だらけの、競争に巻き込まれて恥をかくがいい、ははは。

いや、なのはの場合は障害物に当たる前にこけるか……

ふっ、これは運動会が見ものだな。

なんか、俺の大切なものが失われた気がするけど。
気にしたら負けだね。

それにしても、なのははいい感じに餌付けされてるな。
なんか、もう俺に逆らえないんじゃないか?

すずかもさすがに少し引いてるみたいだし。

うん? この場合はすずかはどっちに引いてるんだ?

餌付けした俺か?
されたなのはか?

まぁ俺からすれば餌付けされるなのはが悪い……ってなんか悪者のセリフみたいだ。


「うん、順調に決まってますね。
次は二人三脚ですが、ある程度の運動能力と二人の抜群なコンビネーションが大切になります。
誰か立候補か推薦者はいますか?」


たぶん、どの種目よりも難易度が高いと俺は思う。

俺の種目なんかは、単純な足の速さのみ、いわゆる個人戦。
なのはの種目も、障害物こそあるが同じく個人戦。
そして、残っているリレーはチーム戦ではあるものの、やはり個人の力に頼るしかない。

それに比べて、二人三脚は自分の力を出しつつも、相方の力出さなければならない。
そして、それにはコンビネーションが絶対に必要。

こんな種目、このためだけに組まれた新生コンビなら上手く行くはずがない。
となれば、このクラスの熟練コンビとなれば……


「すずか、でるわよ!」

「あ、アリサちゃん!?」

「この種目はまさに私達のためのものだわ!
私とすずかの友情を試そうとしてるに違いないわ!」

「そ、そんなことは無いと思うけど……」

「先生!私と月村すずかが立候補します!」

「分かりました。お二人に命運を託します!」

「任せてください」

「私、出るって言ってないのに……」


すずか近くの人にしか聞こえないような声で呟いた。
その目には少し涙も浮かんでいる。

うん、それにしても予想通りだな。
実際、この二人以外に適任がいないのだから、しょうがない。


「人の意見を無視してやるのっていけないことだよね……竜也君の気持ちが分かったよ」

「そうだろ……なのはも分かったか?」

「分かったの……でも、竜也君は人のことを言えた義理じゃないと思うの」

「お前が最初だぞ?」

「うにゃぁ……ごめんなさい」

「分かればよろしい」


なのはもすずかも民主主義の偉大さが分かったようだ。
ははは、本当に民主主義万歳だな。

いや、多数決万歳と言うべきか。
平和的解決だよな、まったく!


「では、最後の代表リレーですが─」

「兄じゃこれは出るしかないんじゃないですか?」

「そ、そうですよ! ちょうど四人だし」

「え、いや…まぁ、そのだな」

「なら、俺が立候補しよう」

「はい、ではそこの四人組お願いしますね。」

「ちょ、ちょっとまってくれ!」

「煮えきらないですなぁ」

「じ、事情があって─」

「じゃあ、早速特訓だああああ」

「「おおおおおおおおおおおお」」


なんていうか、熱い四人組みだな。
クラスのみんなが軽く引いているのに気付かないのだろうか……


「あ、あのう……まだ、授業終わってないんですけど」

「ま、まて!俺にはだな!」


でも、まぁなんだかお祭り気分で楽しそうだからいっか。
なんか俺も熱くなってきたな。

となれば俺も本気を出すとするか。


「なのは、特訓だな」

「にゃ? た、竜也君!?」

「すずか、私達も負けてられないわ!」

「だ、誰に負けてられないの!?」


俺はなのはを強引に引きずって外に出る。
ふふふ、高町家伝統の特訓を俺がしてあげるとしよう。

まずはランニングからだな。


「ま、まだ授業が……」


なのはとすずかが連れて行かれる際に、ドナドナを歌ってたような気がするが、
気のせいだということにしよう。





あとがき

今日はカラオケ行って奈々さんの曲を歌いまくったw
なのはの曲もコンプリートした。

実に充実してたなぁ。

作者のタピです。

とらハ版に行こうと思いましたが、
予定変更です。
詳しい話は前書きに書いておいたので、読んでご意見がもらえれば嬉しいです。

さて、今回は運動会前夜みたいなものです。
いきなりでもいいんだけど、お祭りは準備が一番楽しいという言葉がありますからね。

ありますよね?

最近悩んでるのは無印編以降についてです。
フェイトとの絡みをどうしようかとか、闇の書はどうやって解決しようかとか。

まぁまだ先の話なのでゆっくり考えますが;

にしてもこのペースだと無印編に入るのいつになるんだろう……

最後に
さて次回は運動会!
どうなることやらw



[16185] ─第16話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/21 00:55
「ええ、本日は晴天なり、晴天なり」


本日は晴天なり。
この言葉は通常はマイクテストのときよく使われる2大言語だと思う。

もう一つは、『マイクのテスト中』だ。

両方とも行事ごとや、朝礼などでよく耳にする。

特に、本日は晴天なりなんて言葉は、外で使われるんじゃないのだろうか?

それにしても、本日は晴天なり、この言葉が合う日は今日を除いてはそうそうないのではないだろうか。

今日、つまりは運動会当日。
空は青く澄み渡っており、太陽サンサンという感じ。
雲もちょうどいいくらいに浮かんでいて、とても清々しい。

もし、近くに草原があるのなら、寝転がって昼寝すると気持ちがいいかもしれない。

気温もさほど高くもない。
だからと言って、寒いわけもなく、絶好のスポーツ日和だ。

スポーツの秋と言われる要因、はたまた起源を今実感していると言っても大げさじゃないと思う。

まぁ何にしても、今日は運動会である。


「ふふふ、ついにやってきたわね! 運動会!」

「そうだな、アリサ。この日のために血も涙も流して努力してきたもんな」

「血も涙も流したのは、なのはなの!」


この運動会のために、俺となのは。
そして、アリサすずかペア。
さらに言うならば、外科4兄弟も特訓を重ねてきた。

たぶん、俺たちほど、この日のために努力してきたクラスはないんじゃないだろうか?
それほどまでにして頑張った!

俺はタイムを縮めることとなのはの障害物競走の対策を。

俺のタイムを縮めることは俺自身の努力でどうにかなる問題だったが、
なのはの障害物競走は少し手間取った。

原因はなのはの運動音痴のせいである。

どんなに運動に慣れてもらおうとしても、素のなのはではまったくお話にならなかった。

しかし、なのはが猫モードになり、俺が指示を出すと、かのビーチのときのように驚くべき運動能力を発揮した。

ここから、俺はその状態を上手く利用できないか考えた。
しかし、さすがに、競技中になのはの横で指示を出すことは出来ない。

そこから、いくつかの方法を考えた。
ようするに俺が指示を出せればいい。

一つ目、念話。
これは最も便利な方法だと思った、が盲点があった。

魔法を教えちゃいけないんだった。

考えなくても分かることだったのに、馬鹿か俺は。

二つ目、無線。
遠くにいても確実に指示を出すことが出来る。
しかし、指示を出すにはなのはにも無線機を持ってもらわなければならない。

無線機と言えば、ケータイ電話を大きくしたようなやつ。
持ち歩けるはずがなかった。

同じ理由でケータイも駄目だ。

もはや、万事休すかと思われた。

最後の手段として、母さんに相談をしてみた。


「え? 魔法を使わずに誰にもばれない様に人に指示出す方法?」

「そ、そうなんだけどさ。なんかない?」

「あるわよ。無線が」

「無線じゃばればれじゃ……」

「ふふ、母の科学力をなめちゃいけないわよ? これでも元科学者よ?」


そう言うと、母さんは一日研究室と書かれた部屋に閉じこもり、翌日になると、
手に耳栓のようなものと小型マイクを持って出てきた。


「これって……まさか!?」

「そのまさかよ。この程度のことならおちゃのこさいさいよ!」


母さんの謎がまた一つ増えたような気がする。
てか、これってオーバーテクノロジーじゃないの?

あ、でも今の世の中これぐらいはできるのかな?


『なのは聞こえる?』

『うん、聞こえるよ。すごいね、この小型無線機』

『特注品だからね』


練習で実際使ってみたところ、見事に遠くからの指示ができた。
これで対策は完璧である。

あとは、本番で結果を残すのみとなったわけだ。


『今日最初の競技は1年生による、選抜50m走です。
代表の生徒は、集合場所まで集まってください』


学校全体にアナウンスが響き渡る。
運動会は基本的にこのアナウンスにしたがって動くように言われている。

もちろん、プログラムは生徒達に配られていて大体の予定は分かるが、
時間などの変更が例年珍しいことではないらしいので、アナウンスが重要になるとのことだった。


「頑張ってきなさいよ!」

「頑張ってね、竜也君」


アリサとすずかの声援だった。
こういうときの声援は非常に心強い。


「頑張ってなの!」


なんだかんだで、応援の声にも気合が入ってるなのは。
やっぱりこういう行事ものはみんなで楽しまないとな。


「もちろん、やるからには一等を狙うさ!」


みんなの応援の声を背にして、いざ参る!戦場へ!




選抜50m走は、その名の通り各クラスの猛者たちが集まって単純な脚力を競う競技である。
もちろん、それだけに注目度は高い。

1年生は新入生であり、これに出場する保護者の我が子の雄姿を焼き付けようとするのも注目度が高いひとつの理由でもあるが、
それ以上に、今日最初の競技という意味でも異様なほどの注目が集まってる。

俺はそんな注目を緊張の理由にはなるもの、
実力を見せ付けてやろうと思う心と、応援してるなのはたちのためにも頑張りたい。

運動会は学年ごとのクラス対抗戦である。
戦いと言うからには初戦は勢いをつけるためにもぜひとも勝ちたい。

いや、俺が勝てばいいだけのことだけど。


「竜也! 負けたら承知しないわよ!」

「怪我しないように頑張ってね」

「負けたら、私の子じゃないわよ!」


一際大きな声で声援をしてくれるのは、アリサとなのはと……母だった。

負けたら私の子じゃないって、周りの人が軽く引いてるぞ、母よ。


スタートラインに選手が一列に並び、スタートの合図を待つ。
もっとも緊張感が場を包み込み、見ている人たちもが静まり返る。

最も緊張する瞬間。
俺も心臓がバクバクしてる。

こんなに注目されるのは初めてだ。

ドン!と発砲音が静寂してた場に響き渡った。
それと同時にみんな走り出す。

また、一気に声援声が校庭に怒号のように飛び交う。

く、出遅れた。

無駄なことを考えてたせいで、スタートダッシュに失敗した。
しかし、それもつかの間、俺より前に走っていた人を追い抜く。

正確には横で走っているのだが、気分的には同じだ。

一人、二人、三人……

あと、一人!

ここまでですでに、残り半分。
十分に追いつける距離。

トップを走ってた男子のスピードが落ちた。

今だ!

俺は一気に加速して、トップに並び、そのまま追い越した!


「ゴール」


テープを切ると同時に、俺は呟いた。


『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


歓声の声が耳に聞こえる。
これで、特訓の成果は結果にて現れた。

俺の最低限の仕事を果たした瞬間である。
気持ちいいです!


「よくやったわ、竜也!」

「お疲れ様」

「竜也君すごく速かったの!」


クラスの待機場所に戻ってきたら、三人が賞賛の声と同時に、出迎えてくれた。


「ああ、駄目かと思った」


なわけないけどね、絶対に勝つ自信はあったし。
あれだけ、特訓したら負けられないしね。


「嘘つくんじゃないわよ、顔がにやけてるし」


ばればれだった。


「はい、竜也君タオル」

「ありがとう、なのは」


相変わらずなのはは気の利くやつだ。
さすが俺のペットだ。


「それにしても、練習のときより速かったんじゃないの?」

「ん? そうかな?」

「速かったみたいだよ。さっき本部に行くついでに記録を見てみたら、もしかしたら日本記録更新かもだって」


そんな、話があるのだろうか?
俺はただの小学1年生だよ?

先生達も大げさだな、まったく。


『プログラム5番の1年生による障害物競走にでる、人は所定の場所に集まってください。』

「あ、私の番だ」

「そうみたいね、期待してるわよ」

「頑張ってね、なのはちゃん」

「ありがとう、アリサちゃん、すずかちゃん。頑張るね」


そう言って気合を入れなおす、なのは。
その目には燃える炎が見える。

さすが、腐っても高町家の一人か、勝負事には熱いからな。


『なのは、予定通りに』

『うん、分かってるよ。お願いね、竜也君』


なのはは集合場所へ向かって歩いていった。

まだまだ、運動会が始まったばかりだというのに、
俺にとっては最大の山場だな。

ある意味で、一番の楽しみでもあるんだけどね。


「ところで、アリサ」

「何よ?」

「例のあの約束をだなぁ」

「え……そ、それは二人のときでって約束じゃない!」

「いや、そんなことないぞ」

「アリサちゃん、約束って?」


俺はこの運動会を本気でやるにあたって、とある約束をした。
それは……


「俺がもし50m走で圧勝したら─」

「わ、分かったわよ!な、なのはの競技が始まるまでまだ時間があるから、
体育館の裏に行くわよ!」

「え、ちょっとアリサちゃん!?」

「ほら、さっさといく!」


アリサに強引に手を引っ張られ、体育館へ引きづられていく。

アリサって意外と力があったんだなぁ。
でも、そんなこと言ったら、殺されかねないので心のうちにしまっとくことにしよう。


「さぁ、ここならいいわよ」


観衆の目はみんな競技が行われる、校庭に向かっているので、体育館に人の姿は見えなかった。

確かに、恥ずかしがるアリサ的には好都合かもしれないが、
俺的には公衆の面前でやって欲しかったな。

まぁやってくれるならいいか。


「じ、じゃあ行くぞ……」

「い、いいわよ」


お互いにごくりとつばを飲み込む。


「お、お手!」

「にゃ……にゃん!」


元気よく、しかしそれでも恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、
「にゃん!」と言い、手を出す、アリサ猫。

な……何なんだこのかわいさ!?

前にやったときとは比べ物ならない破壊力だった。

どう違うって?
それはあれだよ、前は素っ気無かったけど、今はどことなく嬉しそうな顔でこっちを向いてるんだよ!

なんか、力説してる俺がHENTAIに見えなくもないが、いいや。
この猫のためならそんな貞操捨ててしまおう。


「おかわり」

「うにゃ~ん」


うにゃ~ん……だと!?

なのはですら言わないぞ!
な、なんなんだよ、ちきしょう!


「にゃ~ん、にゃ~ん」


そう言いながら、身体をこすり付けるアリサ猫。

え? ほわぁい?
何が起きたのだろうか……
突然の行動で体が動かないんだが……そう思ってると、アリサが耳元で、


「さ、サービスよ」


小さく呟いた。

俺はもう、この世に未練はないかもしれない。

しかし、運動会は無情にもまだまだ続く。





あとがき

た、タピはなのは猫というペットがいながらも、浮気をしてしましました。
作者のタピです。

今回はしょうがない。
うん、批難中傷されてもしょうがないと思ってる。

だから、存分に言って欲しいと思う。

今回はこんな話を書けて、投稿できた、それだけで十分だ。

共感してもらえればこれ光栄
萌えて頂ければ最大の名誉


というわけで相変わらずの暴走振りです。
本当にすみません、でも、謝りません。
後悔もないです!

なのはの障害物競走を書こうと思ったのに、手が勝手に動いたんです。
作者のせいじゃないです!


さて、次回からはとらハ版に移る事にしました。
問題ないというコメントがもらえたので。

移るにあたって、数少ないこの作品を見てくれている読者のみなさんに、
アンケートです。

内容は今後の展開について。

シリアスをどうするか?

です。

とある神作品のオリ主のように、ギャグっぽい感じで済ませるか、
真剣で深刻な感じにするかです。

答えてもらえれば幸いです^^


最後に
とらハ版に移っても見捨てないで読み続けてくれたら嬉しいです。



[16185] ─第17話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/22 11:08
今回の運動会に備えていたものがいくつかある。

それは、主にはなのはの運動音痴対策についてのだが、
猫モードの時には必要はなかった。

でも、参考までに買ってみた本はある。

猫をもっと知るために、なのは猫をもっと使いこなす為に、飼った本だ。

『できる!猫の餌付け!』である。

どこかで聞いたことあるようなシリーズな気がしてならないが、気のせいである。
これはフィクションであり、この作品に出てくる団体名・個人名、作品名は、現実のそれとは無関係です!

まぁそんなことはどうでもいいとして、
その本にはいくつか項目があり、その中に『猫に芸を仕込む』というものがあったので試しに呼んでみた。

具体的な内容としては、指示を出す際は簡単な言葉がベスト!
ちゃんと言うことを聞いたら、餌を上げたり、撫でるのがいいと書いてあった。

なんとも当たり障りのない回答……

しかし、それゆえにと言うこともあるだろう。
シンプルイズベスト。

大抵こういうのはある程度のパターンがあると言うのだから、間違ってはいないのだろう。

実際に試した見たところ。

うん、効果覿面だった。

ちゃんということを聞いたら、褒め殺して、撫でると喜んだ。
でも、それ以上にそのあとのお手の方が喜んだのはどういうことなんだろう?

これが本物の猫との違いということなのだろうか。

なんにしても、餌をあげるよりは安く済むので問題はなかった。
雑種なのかな?


まぁそんな話は置いといてだ、いよいよなのはの本番である。


『竜也君、お願いなの!』

『OK。なのは猫モードだ!』

『にゃん!!』


一言で猫モードになるなのは。
見た目でもその姿が分かる、手を軽く握って軽く腰を曲げている。

四速歩行にならないのは、完全になりきることが出来ないからなのだろうか。

前々から思ってたのだが、どういう切り替えと言うかシステムになってるんだろう?

なのはの頭の中がいつも不思議でしょうがない。

やっぱお花畑なのかな? 菜の花の。


『位置について!用意……スタート!』


俺のときとは違い声による、スタートの合図。
それはなんだが間の抜けたような感じがするが、その通りなのである。

先生いわく、障害物競走は保護者の方が楽しむようなものなのだとか。
毎年、毎年、かわいいアクシデントが続出するので見てる方は癒されるとか何とか。

要するに、そんなに本気でやるような競技では普通ないらしいのだが、
本人達は真面目なので、真剣に見て欲しいなと思う反面、
その真面目さが楽しいかなとも思う。

そんなことを考えていると、なのはが最初の障害物にたどり着いた。

6段の跳び箱である。

常識的に考えて、小学1年生では跳び箱を飛ぶのも難しいはずだ。
俺やすずかは例外として。
もちろん、なのはが飛べるはずもなく、普通なら、「よいしょ」なんていいながらかわいく上ると思う。

いや、誰もがそう考えているはずだ。
逆に言えばそれに期待しているといっても過言ではない!

実際に、高町家の方々がなのはがかわいく上るのを今か今かとカメラを覗きながら見ている。

だが、非常に残念だ。
その期待には答えられそうにない。


『なのは……JUMP』

「にゃ~~ん」


なのはが猫語声に出しながら、飛び越えた。
跳び箱を飛んだのではなく、飛び越えた。

旅箱に飛ぶ直前に、身体を縮ませて、バネのように飛んだ。


『……う、うぉおおおおおおおおおおおおおお』


観客が一間を置いて、歓声の声を上げた。
一間置いたのはあまりの出来事に呆然としてたからだろう。

なんてったってこういうことができるのを知ってるのは、俺とアリサ、すずかぐらいだからな。

見ろよ、あの高町家の面々の顔。
驚きのあまりカメラを落としてるぞ。

未だにフリーズしてるしね。

しかし、まだまだ競技は無情にも進むのだよ。

なのはが次に当たった障害物はネット。
このネットはサッカーのゴールネットを応用したものだ。

うまく工夫されてると思う。
しかし、甘いな。


『なのは、CUT』

「にゃにゃにゃにゃい!」


そういうと、なのはの前のネットが無残な姿に……
どういう原理かは俺にも分からん。

練習のときに試しにやってみろと言ったら、出来たんだもん。

そして、先生方は唖然としていた。
来年はゴールネットじゃなくなるだろうね。

鋼糸とかになるんじゃないかな?


ついには、最終障害物。
ちょっと高めの平均台である。なのは体の半分ぐらいの高さだから、約60cmぐらいかな。
平均台の下に台のようなものを置くことで、この高さを作ったようだ。

もちろん、落ちたとき用に横にはマッドが敷いてある。

まぁそれでも、大した障害じゃないだろう。


『なのは、GO!』


俺は行けの指示を出す。
しかし、なのはは平均台の上から動こうとしない。

一度上ったのにそこから動けないでいるのだ。
まるで怖がってるかのように……

どういうことだ?
仕方ないのでもう一度指示を出す。


『GO!』

「にゃ、にゃにゃん」


頭を左右に振る振るさせる。
拒否と言うことなのか。

なのはが俺のほうに向いた。
なのはの競技してる場所からは結構離れているはずだが、その目は俺に向いていた。

体がこわばり、目には涙を浮かべていた。

俺の場所からでも見えるぐらいに、ハッキリした表情だった。


『にゃにゃにゃん。にゃにゃにゃ』

『なになに、高いとこが怖くて動けない、だと?』

『にゃい』


たぶん涙声だと思う。

これは、もう無理かもしれない、自然にそう思させられた。
しょうがない、これはリタイアするしかないな。

俺は決断をしてなのは猫の場所に行く。


「にゃ、にゃ~ん」


そういって俺に飛びついて来る、なのは猫。
本当に怖かったのだろう。
目には必死にこらえてた涙が浮かんでいた。

ウルウル目かわいいって俺違う。
そんなことを考えてる場合じゃない!

それにしても、大衆の前で俺の身体にスリスリするな。
見られている俺が恥ずかしいだろ。

まぁ別に悪い気持ちではないけどさ。
むしろ、スリスリ気持ちいいけどさ!


この結果なのははリタイア。
実はこの障害物競走において、リタイアは珍しいことではないと後日談。



「す、すっごい怖かったの!」

「普段は全然平気なのにか?」

「うん、なんか駄目だったの……どうしちゃったんだろう、なのは」


心底不安そうにするなのは。
俺にはちょっとその原因に心当たりがある。


「子猫だったからじゃないかな?」

「え、そうなの!すずかちゃん!」

「え、う~ん。子猫って高いところに登りたがるけど、怖くて降りられないなんてことがよくあるからね」

「なのはは完全に子猫になっちゃって言うの!? そんな話あるわけないじゃない」


俺もアリサの言いたいことはわかるんだが、
実際にあんなことがあったんじゃ、あながちすずかの理論も的外れじゃない気がする。

猫モード……まだまだ謎がありそうだ。


「そういえば、アリサちゃんたち一位おめでとう」

「遅いわよ!」

「もう、アリサちゃん。ありがとう、なのはちゃん」


アリサとすずかの二人三脚だが、実はもう終わってしまった。

俺がなのは猫をあやすのに予想以上に時間がかかってしまって、
泣き止んだのが、ついさっき、つまりは1年生の最終種目の代表リレーを残すだけとなっていた。

お昼ごはんの際も、ずっとべったりな感じだったから、周りからは変な目線で見られるし、
母さんはずっとニコニコしてるし、困り果てたよ。

挙句の果てには、最後のなのはを俺が救出するシーンが桃子さんの手によって映像に残ってしまう始末。
嬉しいのやら、悲しいのやら、なんとも複雑な映像だった。


「相変わらずと言うか、素晴らしいコンビネーションだったな」

「あたりまえじゃないの。私とすずかが本気でやってるんだから」


結果はなのはが言ってたように1位だった。
他を引き寄せない、圧倒的1位。

ビーチのときにも思ったが、本当にこの二人はいいコンビだな。

二人でシンクロしたら、金でも取れるんじゃないのだろうか?


「でも、クラス優勝決まっちゃったね」

「俺たちのクラス圧勝だったからね。」


運動会午前の時点で、100点以上の差をつけ、午後はさらに拍車をかけ、首位独走状態。
最終種目を前に、優勝が決定してしまったのだ。

嬉しいは嬉しいんだけど……う~ん。
いまいち盛り上げが足りないような。

俺的には美味しいことは多くあったけど。

まぁ何はともわれ次が最終競技。
あの四兄弟がでるリレーである。

最終競技というのもあってか、最初の競技時以来の熱烈な注目度だ。
みんなが一心に最後の競技を見届けようとしている。

もちろん、俺もそんな観客の一人だ。


『位置について!』


最後の競技が始まろうとしている。
俺も心臓がドキドキだ。

─パン、とスタートの発砲音が響き渡る。

一斉にスタートした第一走者。
現在の1位は……我がクラスのようだ。

案外速いなあいつ。
今度名前で呼んであげてもいいかなと思う。

50mを走りきり第二走者。
順位が入れ替わる。

現在我がクラスは2位。
これじゃあ、名前で呼んであげるのは厳しそうだ。

それでも、なんとかトップに食らいつき、2位で第三走者へ。

差がほとんどなかったおかげか、
はたまたバトンの渡し方が上手かったのか、1位を奪還した。

こうやってみてるとハラハラドキドキの展開だ。
保護者を含めた観客もみな、この展開に手を汗握るものがあるようで、声援の声がよりいっそう強まる。

そして、ついには最終走者。
つまり、いつも兄じゃとか呼ばれてるやつだ。

1位でバトンを渡されたが、あまりは足は速くないらしい。
これが嫌がってる理由だったのか。

それでも、差はかなりあったので、ギリギリ1位でゴールテープを切れそうだ。

しかし、そう思った矢先である。


『え……ああああああ』


ため息交じりの歓声が響き渡った。

1位がこけた……

ようするに、兄じゃと呼ばれている人物がこけてしまったのだ。


「だ、だから俺は嫌だったんだあああああああああああああ」


無情な叫びが場を支配した。
しかし、それでどうにかなるもんだいではなく、諦めがついたのか立ち上がり、最後にゴールをした。

こけても完走しきった彼に、賞賛の声援がそこかしこから聞こえる。


「よく頑張った」

「君が1位だよ」

「来年があるさ」


はたして、その声は彼にはどのように伝わったのか。

俺がその後に見た彼の目からは涙流れていて、その背中には泥がついていて、とても哀愁に満ち溢れていた。




あとがき

みんな勘違いしているようだが、この作品は「にゃのは」じゃないぞ?
なのは猫かわいいよなのは猫

作者のタピです。

チラ裏より移転してまいりました。
チラ裏からお世話になってる人はこれからもよろしくお願いします。
とらハ版で初めての方はこれからよろしくお願いします。


さて、運動会編終わりです。

色々と難しかった。
でも、頑張った。

あくまで自己満足ですが←

なのはに燃えていただければこれ光栄
兄じゃに賞賛を言ってもらえれば最高の名誉


高いところが怖くて涙のなのはかわいいよなのは。
やばい、二回も言ってしまった。

もう駄目かもしれないorz

二人三脚カットしました。
楽しみに待っていた人はすみません。

機会があれば、そちらのシーンを番外編でも……
なんて無責任なことはいえませんがw

いや、本当に面目ない。

最後に
なのは猫派かアリサ猫派かと、聞かれたら、
3猫(なのは猫・アリサ猫・すずか猫)派だと答えます。



[16185] ─第18話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:37
季節は未だに秋である。

秋の一大イベントと言えば、この間の運動会が真っ先に上がると思う。

実際ここ最近の記憶の中では最も印象的だった。

それは、ただ単に運動会のお祭り騒ぎで楽しかったからと言う意味合いもあるのだが、
その後の、翠屋での打ち上げとかもあり、楽しき一日だったということでもある。

他にも、まぁいろいろと盛りだくさんだった。

でも、多くは語らないさ。
俺の心のうちにとどめておくべきことだってある。

運動会が終わり、次に待っていたのはテストテストテストの毎日だった、ような気がする。
記憶にないというか、あんまり深く考えず受けたから印象的ではなかったということだ。

まぁそれでも、テストではいつも通りの点数を取り、上々ではあった。

アリサが「勝負よ!」と言って、なんだか知らない間に勝負になっていた気がするけど、
双方共に全教科満点で引き分けに終わった。

なのはからは軽く呆れらた上に、軽く涙目だった気がするが、なぜだろう?
なのはに泣く要点でもあったのだろうか……

それとも、点数がよっぽど酷かったとか?
うん、それならありえる。

なのはは子猫だからな。

理由になってない気もしなくはない。


運動会も終わり、テストも終わり、残すところは冬を待つだけとなった。

季節は未だに秋である。
秋……と言っても、すでに肌寒い季節ではあり、半そでで出歩くにはすでにきつい時期だ。

運動会のときはまだ温もりがあったけど、ここのところは冷たさが増した。

この町の場合は海がある分、風がよく吹くのでそれが一番寒く感じるかな。

別に寒いのが嫌いとかそういうのはない。
冬の寒さはツンと来るものがあって、それが清々しいと感じることもある。

だからと言って好き好んで寒いのが良いというわけでもないけどね。

まぁ冬は近いが、まだ秋だ。
あまり先のことを考えてもしょうがないと思うし、とりあえずは今やることを考えよう。


「なのはちゃんもアリサちゃんも今日は、遊べなくて残念だったね」

「そう、だね」


場所は月村家の豪邸である。
外にある、なんとも金持ちだなと思わせられるような庭ですずかと遊んでいる、
というか一緒にいる。


「ノエルもファリンもお姉ちゃんまで、今日はこの家にいないからなんか寂しいね」

「そうだな」


今日は本来ならアリサやなのはも一緒に遊ぶ予定だったが、
アリサは家の事情、なのはは家の手伝いというわけで、ドタキャンした。

まぁなのはの場合は、この間のテストの結果が芳しくなかったせいで遊びの許可がもらえなかったというだけの話なんだけど……

ふむ、今後このようなことがないようになのはに勉強でも教えてやるか。

また、すずかの使用人のノエルさんやファリンさんまでもがすずかのお姉さん、
忍さんの付き添いで今は家にいないらしい。
恭也さんもその付き添いとのことだった。

みなさんこんな休日にご苦労なことというか、殊勝というか、
そんな日に暇な俺とすずかがまるで暇人というか、怠け者みたいじゃないか!

いや、俺は怠け者だけどさ。
すずかは違うよね? ね?


「今日は……肌寒いね」

「そうだね」


会話が続かないなぁと思っているのは俺だけじゃないはずだ。
さっきから、こんなんばっかしだよ。

よくよく考えると、俺とすずかの二人きりっていうのも初めてな気がする。
いつもすずかにはアリサがついてたし、俺にはなのはがついてたからね。

そう考えると、ふむ。
中々に気まずいものがあると言うか、話題がないというか、間がもたないというか……

いや、ここは意を決して話しかけないと駄目だよな!


「「あ」」

「「え?」」


あ、声が被ってしまった。
なんなんだこのシチュエーション。

恋人同士じゃないんだから!

もう一回。


「「その」」

「「お先にどうぞ」」

「あ……どうぞ」

「いやいや、すずかから」

「ううん、竜也君から」

「「……」」


お互いに先を譲り合った上に、目が合っちゃって、顔が熱くなる。
すずかは顔が真っ赤に……

な、なんか妙に恥ずかしいな。

どうしてこうなったんだ。
声がさっきから被ってしまうじゃないか。

この広い庭の中で俺とすずかの二人き─
二人きり!?

ああ、駄目だ。
なんか妙なニュアンスが混じってる。

俺は最近毒されてるな……アニメとか小説のせいかな?

さて、どうやってこの均衡を破るか……


『にゃ~』


にゃ~?
不意に猫の鳴き声が聞こえ、周りを見渡してみるとそこには子猫が!

あ、なのはじゃないよ?

そうか、ここ猫屋敷だった。


「猫、集まってきちゃったね」


気付けば、周りには猫!猫!猫!そして、にゃ~、にゃ~、にゃ~の大合唱と化していた。
一体どれくらいいるんだろう……

少なく見積もっても30はいると思う。
種類もさまざまだ。
といっても俺は猫の種類が分かるわけじゃないんだけど、毛並みが違うからたぶん色々な種類だろう。


「猫って和むね、すずか」

「そうだね、こうやって眺めてるだけで結構癒されるよ」


猫が自由気ままに、ありのままに過ごしているのをみてると本当に癒される。
そして、のんきな「にゃ~」という泣き声が絶妙なんだ。

猫の中には猫同士でじゃれあったりしてるのもいれば、トンボを必死に追いかけていたりもするし、
中には俺のひざの上や頭のうえ、方に乗ってくるのもいる……って、
なんか俺の回りにいように集まってるような気がしてならないんだけど!


「竜也君の周りに不思議と猫も集まってるね」

「みたいだな。気付いたら俺の足元にも寝転んでるし、両肩に乗ってるし」

「竜也君ってそういう不思議な魅力があるのかな?」

「魅力?」

「うん、猫に懐かれるみたいな。なのはちゃんとかアリサちゃんの時もそうだったよね?」


すずかが言ってるのは猫化の話だろう。

それにしても、猫に懐かれるか。
なるほど、それがもし本当ならなのはに懐かれる理由はよく分かるな。

逆に言えば、なのはが猫であるということを証明していると言える。


「それを言ったら、すずかだってそうじゃないのか?」

「ふぇ!?」

「ふぇ、じゃなくてさ。一度だけ見せてくれたじゃん」


過去に一度だけ。
なのははしょっちゅう子猫だし、アリサはなんだかんだで猫になってくれる。
いつも条件付だとか、勝負に勝ったらとかだけど。

それに比べ、すずかはまだ一度しか、見せてくれていない。
そう、一度しか、だ!

これでは、自称猫マスターの通り名に傷がつく。


「で、でも、あの時はその場の雰囲気とかあったし」

「今も十分雰囲気あると思うよ?」


周りは猫だらけ。
むしろ、俺とすずかを残して、猫しかいない。

この月村低を含めたとしてもだ。

雰囲気、もしくは条件としては十分すぎると思う。


「そうかもしれないけど」

「すずか」

「な、何かな?」

「俺は猫がとてもとても好きなんだ」


俺はそういってニカっと笑顔をすずかに見せる。


「竜也君、どんなにいい笑顔でも私はやらないよ?」


意味がなかった。
精一杯の笑顔だったのに。

これは中々に堅い城壁だ。
どうやって切り崩すか……


「猫ってかわいいよな?」

「そうだね、癒されるし、知ってる木の上に上って降りれなくなった子猫ってすっごくかわいいんだよ?
だから、その場面見るとついつい見入っちゃうんだ」


たしかに、この間のなのはを想像すればかわいいなんて容易にわかる。
それ以上に、すずかよ。
その状況は助けてあげようよ。

気持ちは分かるけどさ。


「運動会のときのなのはちゃんもかわいかったよね。本当に子猫みたいだったよ」

「俺もあのシーンは何度も見返してるよ」


高町家『なのはの成長映像その5運動会編』はそれはそれはとても素敵な映像でした。
ついつい焼き回ししてもらっちゃったよ。
途中からしか移ってないけど……

にしても、その5って多いのか、少ないのか分からないよ。


「だからさ、すずかも、もう一回猫化してみようよ?」

「理由になってないと思うよ」

「いや、なのはがあれだけかわいいんだ。すずかがかわいくないはずがないよ!」

「そ、そんなに熱く語られても」


若干引き気味のすずか。
ちょっと強引に行き過ぎたか。

これは、すずかの猫化計画は諦めるしかなさそうだよ。


「でも、うん」


改めて決意したかのような口調。


「どうしてもって言うなら、一回だけ」

「え?」


今、なんて言った?
どうしてもっていうなら一回だけ?

え、どういう心境の変化?


「あ、あのね。別にやってみたいとかじゃなくてね。
なんか、みんなやってるのに私だけやらないみたいてちうのは、ね?」


なんとなく、疎外感と続けるすずか。

俺はそれがどうして疎外感なのかは分からない。


「疎外感?」

「うん、竜也君が来る前の話になっちゃうんだけどね」


昔は誰にも声をかけられず、一人だったと。
でも、そのあとにけんかをした果てに、なのはとアリサという親友が出来たと。

そう、少し前の話をしてくれた。
実はこの話は断片だけなら聞いていたが、実際には知らなかった。


「もちろん、竜也君もね」

「そうか」

「うん、だから、疎外感。みんながやってるならっていう」

「前にやったじゃん」

「そう、なんだけどね。この間のなのはちゃん見たら少しありかなって」


興味が湧いたと言うことかな。
この間もやった時は空気からとのことだから、今回は積極的に自分からということかな。


「そういうことだから。じゃあ……いくよ」

「ああ」


なぜか、緊張した雰囲気が漂う。
猫たちもそれを察してか、黙っている。


「にゃ……にゃ~ん」

『にゃ~~ん』


すずかが恥ずかしそうに猫の声をした後に、周りの猫たちも鳴いた。
それはまさにコーラスという言葉がピッタシだった。


「え、じゃあ。お手」

「うにゃい」


俺の手に優しくちょこんと手を置くすずか。
周りの猫たちがそれに合わせて、空中に手を置き、お手のポーズをとる。

なんというチームワーク。
すずかの仕草を真似してうごく30を超える猫たち……

とてもシュールな絵だった。

だが……それが、こう……なんていうか、胸に来るものがあった。

興味本意で、すずかの頭を撫でてみる。


「にゃにゃ~ん」


嬉し恥ずかしそうに、身体を猫みたいに縮める。

この状況……まさに、『猫パラダイス』だった。

結局この状況が俺が帰るまで続いた。
最終的には猫の数が50を超えていたと思う。

数えたわけじゃないけど、どうだろう。
飼ってる猫だけじゃなくて、野生のも来てた気がする。

なのはがいつのまにか混じっていてもおかしくないなと中から思い出したのはここだけの秘密である。


「竜也君、今日のことは内緒にね」

「え? ああ、うん。むしろ誰かに教えたら価値が下がりそうだ」

「そう?」

「ああ、今度は写真が撮りたいな」

「それはだめ……だけど」

「だけど?」

「二人きりのときなら、またやってもいいかな?」

「!?」

「ううん、とね。意外と楽しかったと言うか、なのはちゃんの気持ちが分かった感じかな?」


なのはの気持ちが分かった……だと?
全くもって謎発言である。

なのはの気持ちと言うと、子猫の気持ちと言うことなのだろうか?

なら、『猫の気持ち』でも買えばいいと思う。
あれ、そんな雑誌あったよね?


「えっとね、何が言いたいかというと、また遊びに来てねってこと」

「言い方が遠まわしなんだよ……」


俺は察しが悪いから分からなかったじゃないか。


「ごめんね。じゃあ、また明日。学校でね」

「ああ、また明日」


そういって、俺は月村邸を離れた。

今日はなのはやアリサには会えなかったけど、
これはこれで大きな収穫だったかな?

にしても……


「猫かわいい猫!!」


思わず海に向かって叫んだのはこの日の夕日が沈むころの話である。






あとがき

猫の話ばっかで飽きないんですか?読者のみなさん
いや、自分は書いてて楽しいからいいんですけどね!

作者のタピです。

なんか最近、魔法なんてどうでもよくなってきましたが、それじゃあ駄目なんですよ?
魔法少女リリカルなのはなんですから!

はてさて、第18話すずかのターンでした。
かなりお久しぶりのすずかのターン、夏休みの電話以来です、たぶんw

この猫猫状態を何とかした方が良いと思うのは作者だけでしょうか?

まぁそれはいいとして、すずか猫と、すずかの猫のコラボ

猫の大合唱が思い浮かんでもらえれば光栄
すずかの真似をする猫の姿が思い浮かべば最高の名誉


最後に
魔法どうでもいいとか言うなぁ><
別にいいけどさ←

以上、相変わらず長いあとがきでしたw



[16185] ─第19話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/24 08:13
秋がすぎ~冬が来る。

ということで、早くも季節は冬である。

秋と言う、生暖かくもすこし寒い季節とは異なり、本格的に寒い日々が始まった。

ここ、海鳴市は海の近くであるがために結構冷え込むことも多く、
また雪が降るのも珍しくはなかった。

俺的には雪と言うのは嫌いじゃない。
これは逆に言えば好きとも取れるような言い方ではあるが、好きでもない。

理由は至極簡単で、寒すぎるからだ。

ちょうどいいくらいの寒さってのはあると思う。
でも、雪ってのはやりすぎだ。

幸い、まだ大雪と言えるほどの雪は降ってないけど、まめにパラパラとは降るのだ。
その日は寒いったらありゃしない。

まぁ雪が降った日は、地面が凍って危ない為、剣術の鍛錬は室内、
つまりは道場内だけで行われる。

相変わらずトレーニングの内容は変わらないが、意外と飽きが来ないのは指導者がいいからだろうと俺は思う。

自分で言うのもなんだが、結構面倒くさがりやなので本当にすごいと思う。

それに対して、魔法の練習は結構本格派である。
本格派と言っても初期はただ母さんが暴れまわってるだけだったが、今は真面目な模擬戦や、
細かい術式の構成なども教えてくれる。

現時点では、防御魔法と治癒魔法、捕獲魔法は結構な領域にまで来てるとのこと。

俺からすると対比する相手が母さんしかいないから、
どれほどすごいのかも分からないから、回りと比べてどれくらいのレベルかは分からない。

それでも、母さんがすごいことぐらいは分かる。
室内一杯に、無数の光の刀を出現させて、四方八方から攻撃するあの魔法は、おそらく相当のものだと思う。

母さんの魔導師ランクってどれくらいなんだろう……
一回だけ尋ねたことがあるが。誤魔化されてしまったのを覚えている。

魔導師としての実力もさることながら、科学者としての方がすごいと本人談。

母は一体どこに行こうとしたのだろうか。

まぁそんな平凡な毎日を繰り返しているうちに、冬休みが来てしまった。

学校の終業式が12月の23日の出来事。
そして、現在は冬休み初日つまりは……


「「「メリークリスマース!!」」」


と言うわけであった。


「ほら、竜也君も言ってよ」

「ああ、メリークルシミマス」

「違うわよ!今日はクリスマスイブでしょ!」

「イブだろうが、エヴァだろうが面倒なのには変わりない」


本来なら今日は翠屋でクリスマスパーティ!
と行きたい所だったらしいのだが、何せクリスマス。

ケーキ屋からすればここ一番のかきいれ時で、ここ数週間は寝る間を惜しんで、商売とのことだった。

その結果、なのはたちはどこかでのんびりとクリスマスを過ごせないかと考えた末に、
我が家に突撃してきたと言うわけだ。


「来るなら来るって言ってよ……何にも用意してないんだから」

「別にいいじゃないの。こういう日はみんなで盛り上がる方が楽しいのよ」

「そうだよ!最近なのはと遊んでないんだから、今日は付き合ってよ!」


突撃に誤字はあらず、本当に唐突にやってきた。
今日は母さんも朝から翠屋にてバイト中なので、家は俺だけだ。

たぶんこの三人はそれを見越した上でここにやってきたんだろうが……


「やるならもっと広いとこがいいだろ。アリサの家とかすずかの家とか」

「私の家はお姉ちゃんと恭也さんが……ね」


ああ、そういうことか。
確かにそんな空間に放り込まれたらたまったもんじゃないよな。

そこには同情するが……ならアリサはどうなんだ?


「む、無駄に広いと寂しいじゃない。ここならちょうどよくて落ち着くわ」


声小さめに寂しい発言。
アリサ……かわいいやつめ。

そういうことなら早く言えばいいものを。

ってそれってここが狭いと暗に言われてないか!?

そういう意味合いなら、かわいくないな、うん。


「はぁ」

「な、何でそんな深くため息するの!」

「いや、いつも一人で寂しくしてるなのはさんを見てると同情して涙が」

「なのはは一人じゃないもん……一人じゃないもん」

「まぁそうだな。一人なのはアリサか」

「私だって違うわよ!」

「じゃあ─」

「私も違うよ?」


先に潰されてしまった。
さすがすずかやりおるな……

じゃあ、残ってるのは俺か……
まぁ確かに最近あまりなのは猫で遊べなかったから、寂しいと思ってたし、
アリサがいなくて賑やかじゃなかったなぁってのもあるし、
すずかがいなくて落ち着かなかったなぁ。

うん、依存してるの俺かもしれない。

絶対に誰にも言わないけどね!


「まぁ別にここに来て悪いってわけじゃないけどさ」

「ならいいじゃない」

「いや、ね。何にもないよ、ここ」

「知ってるわよ。だから持って来たんじゃない」

「え?」


そう言うと、アリサは自分が持ってきたバッグの中から取り出したのは……
猫じゃらし?


「おいおい、まさかアリサそれは!?」

「ふふふ、竜也も分かったようね」

「アリサちゃん本当にもってきたんだ」

「マタタビもあるわよ」


何とも用意周到なやつだ。
なかなかに猫の扱いが慣れているじゃないか。

家では犬しか飼ってないくせに。


「そうか、アリサ」

「そうよ」

「それで遊んで欲しいんだな?」

「え!? ち、違うわよ!」

「なんだ……ちがうのか」


俺はてっきりこれで、
「ご主人様遊んでください」とアリサが言うものだと思ったんだが……そうか違ったのか。
残念、無念極まりない。


「え、何々?アリサちゃん何かもってきたの?」

「な、なんでもないわよ!」

「ど、どうして怒ってるの? 顔真っ赤にして」

「う、うるさいわね!べ、別に怒ってないわよ」

「お、怒られたの……」


なのはは分かってないのか。
まぁ猫じゃらしとマタタビはあとでなのはに使うとして、
これから何をするかだが……


「今日はクリスマスだよ? 竜也君」

「だからどうした?」

「だ・か・ら、クリスマスと言えば!」


クリスマスと言えば?
ケーキ会社が儲かる季節とか、雪が降る季節とか、プレゼント……あ、そういうことか。


「プレゼント?」

「そう、そうなの!」

「ない」

「「「え?」」」


いやいや、そんなに驚かれてもね?
家は貧乏だし?

俺はお小遣いとかもらってないからプレゼントとか用意できないからしょうがなくない?


「そういう、お前達はもってきたのか?」

「持ってきたわよ」

「当たり前なの」

「もちろんあるけど」

「……そうか」


ははは、なんか空気読めてないね、俺。
で、でもさしょうがないじゃん!

クリスマスに気付いたのが今日だし?
さっき言ったとおりお金もないし。

にしても、この状況落ち込むね。
なんか甲斐性無しに見えるよ。


「じゃあ、プレゼントはあんたにはあげられないわね」

「え? 俺の分を用意してくれたと言うことか?」

「……そうよ」

「アリサちゃんね、すっごい悩ん─」

「なのは!余計なこと言うんじゃないわよ!」


キッとなのはをにらみつけるアリサ。
なのはシュンとなってごめんなさいと言い、すずかは苦笑してた。

しかし、残念だったなアリサ。
しっかり聞こえたぞ?

アリサは俺にプレゼントをあげようかどうか悩んでいたと。

悩んだ末にもらえるとか……嬉しいような悲しいような。
できれば悩まずにパッとあげると決断して欲しいものだ。



「プレゼントもらえないのは残念だな」

「え、別に絶対あげないとは……」

「なのははあげるよ?」

「そうか、なのはいい子だな」


にゃはは、と喜ぶなのは。
やっぱなのは見ると和むねぇ。
子猫にしか見えないもん、俺には。


「私からもちゃんとあげるよ」

「すずかもサンキューな。それに比べて……」


ジーーッとアリサを見つめてみる。
ちょっと目をウルウルさせて悲しそうにするのがコツだ。


「な、何よ!私が悪者みたいじゃない!」

「え?……ソンナコトナイヨ」

「何で片言なのよ!わ、分かったわよ。あげるわよ、ちゃんと」

「それを聞いてホッとしたよ」


なんという状況!
俺は何もあげずにみんなからはもらえるとな。

ノーリスクハイリータン。
意味がちょっと違うような気もしなくもないが、まぁいいかな。

でも、あれだよね。
なんかこのまま貰いっ放しだと、後でなんだかんだとか言われたりするかもしれないな。

それ以上に、男として駄目な気がする……

ふむ、どうするべきか……

クリスマスだろ……サンタにプレゼントにチキンにケーキ。
ケーキ?

そ、それだ!!

確か、冷蔵庫にはケーキを作る材料があった気がする。
母さんが翠屋で大量にもらってきた、ケーキの材料が!


「よし、じゃあこうしよう!」

「いきなり何よ?」

「俺はケーキを作る!それでそれを食べながらプレゼント交換タイムと行こうじゃないか!」


俺のこの発言でみんなの目が光る。


「そ、それいいかも……」

「あんたケーキ作れるの?」

「もちのろんろんだ」

「た、竜也君。私も手伝うの!」

「いや、いい。これは俺からみんなへのプレゼントだ。しばらく時間がかかるが、そこで待っててくれないか?」

「そ、それは別にいいわよ、期待してもいいのかしら?」

「さぁ? 好みのケーキとかある?」

「何でもいいよ。竜也君が得意なので」

「なのはも同じかな」

「了解した。じゃあ、ゆっくりまっててくれ」


さて、ケーキの準備に取り掛かるとしよう。
ふふふ、我が料理の腕に嫉妬させて、頬をたれさせてやるわ!



ケーキが出来上がったのは、夕方はすでに6時は回っていた。
そもそも、作り始めたのがおやつ時の時間だから生地を作る時間を含めても、妥当な時間だろう。


「ほれ、出来上がったぞ」

「遅いわよ!」

「しょうがないだろ、完全手作りなんだから」

「そうなの?」

「ああ、ちょうど材料一式揃ってたからね」


ちょうどショートケーキワンホール分の材料があったから、ショートケーキにした。
出来としては……まぁそれを判断するのは、なのはたちか。


「ほれ、早く食べちゃいな。晩飯食べれなくなっちゃうぞ?」

「うん、そうだね。じゃあ、みんなで均等に分けよう」


俺はすずかの言葉通りにワンホールを4等分……にするとあまりに多いから、8等分にした。


「残ったのはお土産にでもしてくれ、まぁ美味しかったらの話だと思うけど」

「じゃあ、食べさせてもらうよ。いただきます」

「「「いただきます」」」

「「「「…………」」」」


やはりみんな食べるときは無言になっちゃうな。
まぁ真剣に食べるという言い方はおかしいけど、味をみながら食べるとなるとそうなるか。

みんながまず一口ずつ食べる。


「「「!?」」」


見を真ん丸くして、驚くなのはたち。
う~ん、この場合はどっちの意味でとれるのかな?

俺も一口食べてみる。

うん、まずくないな。
味見は一応したけど、思ったよりまともだな。

この分ならまずいということは無いと思うけど。


「……竜也君」

「どうしたなのは?」

「うん、これ本当に手作り?」

「ああ、何から何まで手作りだぞ? といっても原料はさすがに市販だが、どうだったか?」

「もしかしたら、お母さんの作るやつよりも好きな味かも」

「え?」


いやいや、翠屋に勝っちゃまずいだろ。
あそこのケーキはかなり美味しいし、俺でもさすがに勝てる気がしないというか。


「そうね、翠屋とはタイプが違うから、比較は出来ないけど、これで十分店を出せるレベルじゃないかしら?」

「私も、そう思うよ。竜也君、なんでこんな特技があるのを教えてくれなかったの?」


そういわれてもねぇ。
俺としては予想以上の反響振りにビックリしてるんだが。


「まぁ気に入ってもらえたようで何よりだ。じゃあ、そろそろプレゼント交換タイムにしようぜ。
俺からはこのケーキでいいな?」

「異論はないわ」

「うん、十分すぎるぐらいなの」

「私もこれで十分」

「うん、そう言って貰えるとありがたいよ」

「実はあんたが来る間暇だったから私達の交換タイムは終わってしまったのよ。
だから、あとは私たちがあげるだけ。」

「そうか、ずいぶん待たせたらからね、しょうがないか」


まぁ3時間以上もこの何もない部屋に待たされたら、しょうがないよな。
少し寂しいけど、なんか疎外感だけど……

うん、負けない!


「「「メリークリスマス」」」

「あ……ああ、ありがとう」


3人が一斉にプレゼント渡してきた、これでもかと言う笑顔で。
そのせいで、一瞬見惚れちゃったけど……し、仕方ないじゃないか、この三人ってすごいかわいいんだぞ?

猫状態もさることながら、普通もかわいいから困るんだよな。
まぁ猫状態のほうが好きだけど。

3人のプレゼントは全員、箱に入っていて大中小と言った感じだった。
なのはが小、すずかが中、アリサが大である。

そして、渡し終わると、三人に後であけてねと言われた。

人に見せられないものがあるのか、それとも焦れさせてるのか。
もしくは、「あけるな、絶対にあけるなよ」と言ってるのか……

悩む、あけてしまおうかと一瞬本気で考えたけど、こういうのって雰囲気だよな?
うん、俺空気読めてる。


「分かったよ、じゃあこのあとどうする?」

「そうね、これしかないわよね?」


そう言って、バッグからまたチラつかせたのは、例のあのアイテムだ。


「そうか、分かったよ。アリサ」

「よった分かってくれたわね」

「遊んで欲しいんだな?」

「違うわよ!」


思いっきりたたかれました。
ボケたわけじゃないのに……

アリサだってちょっとやりたそうにしてたじゃん。

そんなことを考えてると、急にドアが開いた。


「たっだいまーー!!」

「母さんどうしたの!? 言ってた時間より早いじゃん!」


母さんは今日は遅くなると言っていたはずなのに、はて?
どうしたのだろうか。


「完売したから、帰ってきたのよ。それに母さんだけじゃないわよ? みんな入ってきてー」


そう言うと、ぞろぞろ入ってくる入ってくる。
この狭い家に入り切らないんじゃないかという面子。

高町家ご一家全員に、すずかの家の忍さんやメイドの人、
それに、アリサの家の執事の鮫島さんに、たぶんアリサのお父さんだろう人。


「さぁ、これからクリスマスパーティよ!」


全くこんな狭い家でやるなんてどうかしてるよ、みんな。

でも、それでも……すごく、すごく暖かいクリスマスだなぁ。
外はあんなにも雪が降っているのに、ここは人の温もりで一杯だよ。



おまけ

「では一発芸やります!」

『待ってましたー』

「なのは猫との戯れです、なのはまずはお手!」

「にゃん!」

「おかわり!」

「にゃにゃん!」

「そしてこの秘密兵器……ねこじゃらしで……」

猫じゃらしがなのは猫のまで舞う。

「にゃ、にゃにゃにゃ、にゃん!うにゃ~ん、にゃい」

なのは猫が猫じゃらしに向かってちょんちょん猫パンチを繰り広げる。

「よし、未だ一回転!」

「にゃ~~ん」

猫じゃらしなのは猫の周りを縦に円を描くとと、それと同じ軌道を回るなのは猫。

「着地!」

「にゃい!」

最後ににゃんにゃんのポーズをとり、固まる。

『か、かわいすぎる!!』




あとがき

おかしいよ……なのはの劇場版を見て熱いSSを書きたいと思ってこれを書いたのに、
イメージしてたのと違う気がする……
あ、ある意味熱いですよね!猫的な意味で←

作者のタピです。


みなさんアンケートにご協力ありがとうございました。
予想以上に多くのご協力にビックリしてます。

今回の話はその感謝をこめてのスペシャル版。
いつもより少し多めに書きました。

竜也の料理の技術に脱帽してもれえればこれ光栄
なのは猫に萌えてもれえれば最高の名誉

おまけがサービスですよ?
サービスになってればいいですけどね^^;

内容についてはみなさんに評価してもらえればいいとして、今後について。
一応無印編はやりますね。
たぶん、もうちょい先になりそうです、大体25~30話目あたりに。
こんなに介入まで長いSSもあまりないような気がしますw

無印編については今後またアンケートをとりますね。
詳しい話はそのときにします。
そのときはまたご協力してくれたら嬉しいです。

その日が来るまで、飽きずに見捨てずに読んでもらえたら光栄です。

最後に
次はようやく春がやってきます。
そろそろ物語りも進むべきですよねー



[16185] ─第20話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:40
気温は温暖。
花粉が縦横無尽に宙を舞い、新たな季節の訪れに喜びを感じる人と、絶望を味わう季節と言えば、
誰もがわかると思う。

そう、寒い季節は終わりつげ、やってくるは始まりの代名詞。

海鳴市にも春がやってきました。

1年と言う意味では12月のお正月、1月の元旦で終わっているが、
小学校に通う身としては、やはり新年度の方が終わりと始まりを感じさせる。

かくいう、俺も今、少しこの1年間を振り返ってみる。


この1年を一言で言うなら、猫な年で。
複数の言葉を使うとなる、すべての始まりの年であったのは事実だ。

この町に引っ越すことから始まった。

高町家と出会い、アリサやすずかとの出会い。

また、始まりと言う意味では、剣術もそこに含まれるであろう。

季節の変わり目に毎回思うことがあるとするならば、やはりこの剣術の鍛錬の成果と魔法の練習だと思う。

まぁ冬の時期に比べると、時間も若干短いせいか、大した差もない。
冬のように語るべきこともないしね。

思い返してみれば、この冬の季節。
また、学校の単位で言えば、3学期というのは非常に変化に乏しい時期だった。

何か特別なことが起きるわけもなく、大したイベントもなかった。
あえて語れる内容としては、バレンタインと言うものがあった。

女の子が好きな男の子にチョコを上げる、恒例のイベントだ。

そう、女の子が男の子に……なんだけど。
はて、何を取り違えたか、あの三人娘達は俺からチョコをもらう気満々だった。

なぜかと理由を聞けば、


「え? だって竜也君は料理上手だから」

「むしろあげる側に回るべきだわ」

「なのは楽しみにしてるの!」


と、見当違いもいい回答が帰ってきた。

俺はそのあまりにも理不尽な要求をされたが、
そこまで期待するとかえって引くに引けないというよりは、火がついた。

これでもかと言う、本気のチョコを作り上げて、プレゼントして見せたところ。


「これ、本命……なの?」

「や、やりすぎじゃないかしら……」

「ちょっと……ね?」


むしろ引かれてしまった。
やりすぎたのは駄目だったらしい。

要求してきたくせに、贅沢なんだよ全く。

まぁ何はともわれ、美味しかったらしく、味には満足してもらえたので俺としては頑張った甲斐があるものというものだ。

最近、自分の知らない才能が開花し始めてるような気がするが、
気のせいだと思う。

そんな出来事もあったが、今日から新学期だ。


「じゃあ、いってきま~す。ほら、竜也君も行くよ」


なのはの元気な声が高町家に響き渡る。
今日はやはり、新学期と言うこともあって、なのはも浮かれている様だ。


「はぁ、じゃあ行ってきます。なのはそんなに慌てるところ─」

「にゃ!?」


もはや、定例イベントであるのはここだけの秘密だ。
なのはは大抵こういう浮かれ気分時はよく転ぶ。

浮かれ気分という文字の通り彼女の場合は地面に足がついてないようだ。

まぁこんなの毎朝の為、簡単に予想がつくから、倒れないように手をつかんでやる。


「にゃはは、ありがとう」

「いい加減、猫モード以外のときは駄目駄目だな」

「にゃ!そ、そんなことないよ」


だんだんと声が小さくなる。
自覚があるのだろうか、自信なさ気に答えた。

立ち話だと学校に遅れかねないので、学校に向かいながらしゃべる。


「そもそも、猫モードってどんな感じなんだよ」

「なんていうのかぁ。なんか竜也君の言うこと聞かなくちゃいけない気分になると言うか。
う~ん、なんか竜也君の傍にいると落ち着くと言うか、引き寄せられると言うか」


本人にもあまり分かっていない様子だ。
もし、これが解明できるようになれば、猫モードをもっと有効活用できると思ったんだが、
思ったより難しそうだ。

傍にいると落ち着く、ね。
俺は猫に好かれる体質と言うか、最近を思うと、猫に限らない感じだった。

ボーっと突っ立っていれば、自然に鳥が肩に止まるのもそう珍しいことじゃない。
伝書鳩などもお手の物である。

将来は、動物を使った新しい運搬業なんかいいかもしれないな、なんて思ってる。


「なのはでも分からないのか」

「うん、ごめんね。でも、いうこと聞いてると気持ちがいいんだよ?」

「俺には分からない感性だ」


全く意味不明だよ。
言うこと聞いてると気持ちがいいってなのははMな……安易な発言は止めとこう。

最近分かったことなんだが、なのは猫やアリサ猫、すずか猫では微妙に違う点がある。
いや、アリサ猫やすずか猫に関しては、ほとんど同じだが、それに対しなのは猫は色々と違う。

簡単に言うならば、なのは猫は天然もの、アリサ猫とすずか猫は人工ものという感じだ。

なのは猫はあくまで天性から来るものといってもいい。
じゃなかったら、あの身体能力もありえん。

瞬発力や反射神経だけなら、俺やすずかも凌駕するかもしれない。
たぶん、ここら辺の影響は完全に血と言えるだろう。

御神の血。さすがは高町家の末っ子と言った感じなんだろうな。


それに比べ、アリサやすずかは演技じみているというと、やな言い方かもしれないが、
たぶんこの言葉が分かりやすいと思う。

まぁアリサなんかは多少は天然っぽさは感じるが、すずかは物まねの領域だろうな。

俺としては、どの猫も半端なく、それはもう半端なくかわいいんだが、
あえて言うなら、従順?ななのは猫は特にかわいがってると言っていいだろう。

面白がってると言う意味ではアリサ猫が一番だが。
すずか猫の場合はあの猫軍団とのコラボがそれはもう……キュンと来るものがあった。

いつかはそこに、なのは猫やアリサ猫も交えさせたいもんだ。


「なのはにも全然分からないの……どうしてなんだろうね」


うーん、と人差し指をあごの部分にさして、少し悩むなのは。
俺からすれば、なのはの中の猫の本能みたいなものだろうと思う。

まぁこれからもこんな感じの子猫なら愛でてやろう。
猫の飼い主として。


「なのはちゃん、竜也君おはよう」

「あ、すずかちゃん、おはよう」

「おはよう」


いつもどおりの通学路で、いつものタイミングで居合わせるすずか。
今日も清楚というイメージがあうね。

しかし、一度猫化すると……ふふふ。

このことを知ってるのは俺のみだからなんだか得した気分だ。

バスに向かい学校に行く途中も雑談は続く。


「今年も同じクラスだといいね。ね? 竜也君」

「図らずもそうなると思うよ」

「え、どういうことなの?」


去年もそうだったが、あの母のことだ、絶対に仕組んでる!

だって、昨日それっぽいことを言ってたから。


「竜也、クラス替えが楽しみね」

「え、まぁどうなろうと別にいいけど」

「安心して、竜也を一人にはしないわ」

「いやいや、意味が分からないけど?」

「学校に行けば分かるわ」


去年のことと照らし合わせれば、十分に予想がつく。
最後の学校に行けばで。

こんな他愛のない話をしていたら、いつの間にやら学校の前に……


校門の前に目立つ金髪発見。
いつどこからみてもやはり金髪ってのは目立ちすぎじゃなかろうか?


「おはよう、アリサ」

「え!? あ、なんだ竜也ね、おはよう。すずかもなのはも」


アリサの挨拶に笑顔でおはようと返す二人。
新学期とはいえ、いつもと変わらないこの雰囲気にやっぱり春でも変化しないと、
若干期待してた俺は少し悲しくなる。

男の子はいつだって変化を求めるものだよね?


「なんだとは失礼な。まぁいいや、早くクラス名簿見ようぜ」

「そうね、それを見なくちゃ始まらないわ」


俺とアリサが先頭に立ち、まずは名簿が張り出されている場所に行き、掲示板を見た。


「あ、みんな同じクラスなの」

「そうみたいだね、今年もよろしくね」

「変化なし、ね。でもいいわ、今年も付き合ってあげるわよ」


三者三様に1年よろしくと言ったことを言う。

俺は予想がついていたが、うん、母さんは本当に何者なんだよ。
魔導師であり、科学者であり、この人脈。

なんで……なんでそれなのに貧乏なんだ!


「ああ、俺からもよろしくな」


まぁ今回は感謝しとくとしよう。
案外この3人を抜いたら友達いな─


「お、我らが皇帝と再び同じクラスか」

「兄じゃ、我や5兄弟もみな同じクラスですぞ!」

「皇帝閣下と同じですか、嬉しいです!」

「僕はみんなと一緒で一安心だよ」

「今年こそは俺がメインに」


あ、他にも知り合いいた。
かの4兄弟って5兄弟になってるし!

しかも、皇帝って、ああ、ちなみに俺のことね。

あの運動会の後、ナポレオンが授業に出てきてその時に英雄の話になって、
ナポレオンに一時期なったんだけど、
そのあと、ナポレオンが皇帝になったことから皇帝に……

なんか、そのうち神様になりそうだよ。

最近は尊敬よりも崇拝の眼差しを感じるんだが、気のせいだと思いたい。

それにしても、新入りよ。
皇帝閣下って、人通り多いここで言わないでくれよ。
みんながこっちに見てるじゃないか。


「あいつ、皇帝閣下だって」

「ちょっとしっくりくるから困るよね」

「いつもなのはに命令ばっかしするから、あながち間違いじゃないと思うの」


おい、そこ三人娘聞こえてるぞ!
俺が望んだことじゃないと言うのに……


『みなのもの図が高いぞ!!皇帝閣下のお通りだ!!』


や、やめて!
新しいクラスでいきなりそんなこと言わないで。
誤解されるじゃないか。

そして、一部の男子!
「ハハ!」とか言いながら、本当にひれふくすな。
そして、拝むな! 神様じゃないんだよ!

全く、新学期早々先が思いやられるよ。




猫成分が足りないと感じた作者によるおまけ

「アリサ」

「なによ?」

「猫モード、お手」

「にゃん。って何やってるのよ私!」

今はお手と言うと条件反射的に手を出すようになった、アリサ。

「おかわり」

「にゃい。じゃなくて!竜也!」

このギャップを最近楽しんでいます。
面白いじゃん、なんかころころ表情が変わるの。

「まて」

「にゃ~ん」

しかし、まての前では無力なり。

は! そうかこれが本当のツンデレ!?

猫状態がデレで、普通状態がツンの。

となれば、これからの目標は猫モードを長く続けさせることだな。
自意識がでないように。






あとがき

魔法と日常が交差するとき物語は始まる。
どこのインなんとかさんw

「まほうしょうじょ」打つと魔砲少女に一発変換されるこのPCは末期だ

ようやく話が進みました。
小学校2年生の春。あと1年で魔法少女が始まる。
作者のタピです。


おまけは作者自身に対するサービスなので、か、勘違いしないでよね(きもw

アンケート終了後もご投票いただきありがとうございます。
参考になります。

無印編以降については、この間も行った通り
「限りなくハッピーエンドに近いハッピーエンド」です。

これをこの作品の目標として上げて行きます。


最後に、
何だかんだで記念すべき第20話です。
PVが10万になったら記念の話でもしようかな。

相も変わらず、長いあとがきでした。



[16185] ─第21話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/26 00:59
いつだって充実した日々を送っていれば、時間の流れは早く感じるものだ。

俺にとって、この学校生活というのはとても楽しく過ごしている。
楽しいと言うことと充実しているということは、必ずイコールになることはないとは思うけど、
俺自身が実感しているものとしては、充実していると言える。

ひとえに、そのことに関してはなのはたちが大きく関わっているおかげともいうべきなのかもしれない。

彼女らと一緒にいると飽きることない、楽しさがある。
よく俺に絡んでくると言う意味でもとても接しやすい。

あの4兄弟……が、なんか勝手四天王を語りだしているが、
何の四天王だって聞いてみたら、


「何を言ってるのですか、閣下!」

「我々はいつだって、貴方様と一緒ですよ!」

「ありがたやありがたや」

「僕は止めてるんだけどね」

「今度は俺が……」


間違えた、今は5人兄弟だったね。
でも、それで四天王なんだ……誰が省かれたんだ?

そんなことより、この面子でまともなのが一人しかいないじゃないか!
あ、でも、この5兄弟の一人って時点でまともじゃないか……

こういった感じで、どうやら自称俺の取り巻き、もとい四天王らしいです。
そして、一人は取り巻きって言うか、崇拝してるし。

なんだよ、ありがたやありがたやって、俺は皇帝であって神様じゃないって!
いやいや、皇帝でもないけどね!

たぶん、そういうのやりたい年頃なんだよね!

そうなんだよね!

まさか高学年になってもこの状態が続くなんてないよね?
今の状態でも十分恥ずかしいんだけど。

まぁこの5人のせいで、クラスに悪影響を、少なくとも俺のイメージに悪影響を及ぼしているのは間違い無しだった。
男子が近寄ろうとしない。
こんなことがクラスで起きている。

これだけならまだいいかもしれない。
俺は基本的に面倒なことは嫌だから、それが省略される分には。

ただね。

廊下を歩いてるとね、なぜかみんな俺に道をあけるしね。
知らない人が拝んでるなんてことがよくあるんだよ?

どう思うよ、これ?

酷いときなんて頭を下げてる人もいるからね。

これはあれなのか?
俺は、


「苦しゅうないぞ」


なんていいながら歩くべきなのか?
あ、それじゃあ皇帝というより貴族っぽいな。

どっちでもいいけどさ!

こうなった原因はあの、自称四天王だけど、先生も先生だろ。
去年の運動会のときからなんか、やけに俺を褒めるし。

そりゃあ先生からしたらさ、成績優秀で運動が出来る子って自分で言うのもなんだけど、
そんな子がクラスにいたら、褒めて伸ばしたくなるのは分かるけどさ。

授業前に拝むのは止めようよ。

俺まだ小学校2年生だよ。

あと、この流れで『皇帝ケーキ』とかいうのを売るな翠屋。
便乗しすぎだ。

たぶん母さんと桃子さんの共犯だろうけど、俺が恥ずかしいは。
しかも、最近の売れ行きNO.1ってなんなのさ。

俺は町興しのマスコットなのか?

でも、逆に考えるのなら、そういうマスコットの需要は短いから、安心できるよね。
だっていつ消えてもおかしくないでしょ?

そんなわけで違う意味で刺激に溢れた毎日を過ごしています。


「じゃあ、これで終わりにします。起立、さようなら」

『さようなら』


今日もいつもどおりの授業が終わり、時間はすでに3時ごろ。


「ふわぁ、やっと終わったわね」

「お疲れ様、アリサちゃん」

「今日の体育は頑張ったから眠くなっちゃったわよ」

「にゃはは、結局竜也君に負けちゃったけどね」

「そもそも、女子が勝つほうが無理があるだろ」

「男女差別反対よ! 絶対に次は勝つわ!」


相変わらず勝負事に熱くなるなぁアリサは。
俺からすれば負けるほうが、問題ありなんだよ。

てか、先生もいい加減女子対男子やめようよ。

実は5兄弟の新入りが中々すごいので、最近は余裕なんだよ。


「そうだよね、アリサちゃん。私も次は負けないよ、竜也君!」


すずかも、こと運動になると熱いな……というよりは俺に対してというのが正しいのか?
とことんライバル視だからなぁ。


「はいはい、じゃあ次を楽しみにしてますよ」

「何よ、その適当な対応、癇に障るわね」

「お、落ち着いてよ、アリサちゃん」


からかうとすぐにムキーっとなるアリサはなのはの次にからかいようがあると思うんだ。
すずかは基本的に落ち着いてるから、そういう意味ではからかいようがない。


「竜也君、今、私にへんな評価つけたでしょ?」


こういう思考を読む癖があるから余計に……


「じゃあ、今日はどうする? 私もすずかも習い事ないし」

「なのははいつだってフリーだよ?」

「じゃあ、竜也の家でいいわね」

「大賛成なの!」

「俺の意見は?」

「何か言ったかしら?」

「てか、昨日もきただろ!」


最近こいつらはよく家に来る。

いや、よくよく考えたら最近じゃなくて前からか。
家はたまり場じゃないんだよ。


「いいじゃないの、最近遊び道具増えたんだから」

「竜也君の家でゲームできるようになったもんね」


そう、家にはついにはテレビゲームが出来るようになった。
これは俺が買ったわけでも、母さんが買ってくれたわけでもない。

なんていうの、貢物?
実はあの5兄弟がたびたび家に来ることがある。

それはもう、ハイテンションで接待じみた感じでだ。

5兄弟は家に初めて来たときに、俺の部屋に何もないのを不便に思ってか、
自分の持ってるゲームを家に持ってきたのだ。

それはあげるというものではなく、ここに置いていくということらしいのだったのだが、
はて、今となってはもはや俺の扱いなんだが、それでいいのかな?

まぁそのおかげであの何もなかった部屋にはテレビゲームをはじめとして、
ボードゲームやカードゲームなども置かれるようになった。

ほとんどが5兄弟からの差し入れだけどね。


「なのはも貢献したの」

「お前は家だと制限が付けられるから、都合のいい場所にもってきただけだろ?」

「にゃ!?、違うの! これは竜也君のために」

「言い訳は見苦しいぞ? 気付けば最近よく俺の家に泊まってるなと思ったら、
夜更かししてゲームをやってるじゃないか、俺の部屋で」

「え……ばれてたの?」

「ゲームの光と音で気付くわ!」

「なのは……あんたそんなことを」

「なのはちゃん」


なのはがにゃーにゃー言いながら言い訳するも、すでに手遅れ。
後の祭りであった。

たぶん、いまアリサとすずかの中のなのはの株がとある飛行機会社の如く低下してることだろう。
しかし、売る人いれば、飼う人もいるのだ。

あ、誤字じゃないよ?
猫的な意味で、だよ?


「なのは、俺は気にしてないから、存分にやっていいんだぞ?」

「え、本当に?」

「ああ、俺は猫には寛容だから」


俺の一言でにゃーと言って喜ぶなのは。
うん、やっぱなのはの笑顔は最高だね。
さっきまでの泣き顔も好きだけど。


「なのは、そいつのせいで私たちが失望したことに気付きなさい。
これは罠よ。自分で下げさせた株を自分で買っただけよ」

「アリサちゃん……残念だけど、なのはちゃんに聞こえてないよ」


なのはは未だに俺にベッタリとくっついていた。


「で、どうするのよ?」

「どうするってなにが?」

「今日この後どうするかって話よ!」


二人をからかうことばかり考えてたから忘れてたよ。
今日の今後の予定はっと。

そう思いながらケータイにあるメモ帳やメールを見るためにケータイを取り出す。

そうすると、今日の占いに「駅で素敵な動物とのふれあいが」などという文字が見えた。
ケータイにある今日の占いとは最初からついてたアプリのようなもので、待ちうけ画面に出ているので自然に目がいく。


「ああ、ごめん」

「なんか今日予定あるわけ?」

「うん、占いに素敵な動物とのふれあいが駅であるみたいなんだ」

「「「はぁ?」」」

「だ・か・ら俺は駅にいってくる!」

「え、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私達より動物ゆうせ─」

「じゃ、また明日!」


俺はその言葉を最後に、なのはたちとは悲しい別れを告げる。
うん、実に感動的だ。

去り際にアリサの明日は覚えてなさいよ!と言う言葉が聞こえたが、
そんなこと言われて覚えているはずもなかろうが!



占いに言われたとおりに駅に行ったものの、特にこれと言って出会いはなかった。

やはり、ディフォをついてる占いなど信じるべきではなかったのかな。
ああいうのって大体パターンが決まってて、
一週間ぐらい経つと前にあったのが平然と出てきたりするしね。

でも、『占いは当たるもはっけ、あたらぬもはっけ』だっけ?
そんな言葉があった気がするから、占い自体に罪はない。

ああ、罪はないさ!
だが、せめて罰は当たって欲しいものだと心底思う。
そんなことをケータイの所詮おまけである占いに思ってもしょうがないけどさ!

アリサ達の好意きり素捨ててまで来たのに、取り越し苦労?
意味がやや違う気がするが、無駄足になってしまったじゃないか。

全く、はやく出会いたいがために全力疾走までして、
ちょっといい運動になったかも、と達成感に浸っていた自分が馬鹿みたいだ。

こんな感じに駅の真ん中で絶望した。


「す、すみません」


こんなことをしてると周りから見ればさぞかし変態に見えるだろう。
いや、百歩譲ってちょっと逝っちゃってる少年ぐらいか。

うん?どっちも救い難いような気がするぞ……
恒例の如く気にしたら負けだよね。


「すみません、話を」


なんかこんなこと思ってると自己嫌悪に走りそうだよ。
止めよう、考えるのを止めよう。


「……すみません」


そうだ、思考を停止しよう。
うん、それがいい。

よし何も考えないで無我の境地へいざまい─


「す、すみません!」

「え?」


自分の世界から帰ってくるとそこには、
どうすればいいのか分からずに困惑している、金髪の少女がいた。




あとがき

あえて時期の明言は避けました。
ここら辺は少しずつ原作に影響するけど、大した意味はないですよ?

作者のタピです。


さて、竜也君は誰にあったんでしょうか?


猫なしながらも奮闘する5兄弟に笑えてもらえればこれ光栄
竜也となのはの秘密の関係に面白みを感じてもらえれば最高の栄誉


今回はほぼ猫皆無ですが、お楽しみいただけたでしょうか?
それとも、やっぱり猫ながないとつまらなく感じたでしょうか?

猫がらみがないとギャグに走るのは四天王と竜也です。
そろそろ四天王に名前付けようかなと思ってますが、
ないほうが魅力を感じなくもないですw

さて、最後には金髪の少女との出会い?
さぁ誰なんでしょうかね~
まさかのオリキャラだったりしてw

ちなみに精神年齢占いではよく仙人といわれる、作者です。

最後に
みなさんのあたたかいコメには毎回涙目です。
なんかいも読ませていただいてます、最初のコメから!

アンケートしたのに、ほとんどの人が作者の好きなように
といってもらえた事が嬉しいです。

そんな皆さんの期待を裏切らぬよう精一杯頑張らせて頂きますね。

相変わらず長いあとがきですが、こんな作者もろとも改めてお願いします。
まだまだ物語は続きます。



[16185] ─第22話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/04/05 11:27
そこには金髪の少女が立っていた。

いやいや、もしそれが現実だったら驚きの新事実だよ?

ここは駅の真ん中。
正確には真ん中ではないとは思うが、改札口の近くだから真ん中と言っても差し支えはないだろう。

そんな中、一人絶望してる少年に声をかけるだろうか。
一人、駅で頭抱えて、ひざを抱えてブツブツ言ってたんだから。

その俺に普通声をかけるか?
少女が。

おかしいなと思い、もう一度自分の世界から現実に戻ってみる。

金髪の少女が、心配そうに俺を見ていた。

もう一度だ、もう一度だけ考えよう。
今度は現実的に。

まず、こんな駅に金髪の少女がいるだろうか?
答えは、否!

ここは日本である。

金髪は一人だけいるだけでも十分に驚くのに、偶然俺に駅で話しかけるはずがない。
再び現実に目を向けてみた。


やはりそこには金髪の少女がいた。

うん、もう諦めよう。
現実逃避はよくないよな。


「す、すみません」

「うん、どうしたのかな?」


金髪の少女はようやく返ってきた言葉に安堵したかのような表情だった。


「道を尋ねたいんですが?」


道を尋ねるのに、なぜわざわざ俺なんだ?
近寄りがたかったはずの俺に。

そんな疑問がすぐに思い浮かんだが、
よくよく考えれば、知らない町に一人で、大人に声をかけるのは相当度胸のいることだと思う。

それに比べれば、同年代ぐらいの変態であっても自分のほうが声をかけやすい、ということなのだろう。
なんか、自分で変態って言うのは抵抗があるような、ないような。


「分かる範囲でなら、いいよ」

「あ、ありがとうございます。ここに、行きたいの、ですが」


そういって見せてきたのは、スーパーの名前と簡易的な地図の書いたメモ。
その地図があまりにも簡易すぎていた為に分からなかったようだ。


「うん、ここなら分かるから、連れてってあげるよ」

「ありがとう、ございます」


丁寧に一礼してお礼を言う金髪少女。
ああ、そう言えばまだ名前知らなかったよ。


「俺の名前は、相沢竜也って言うんだ」

「え?」

「そっちの名前は?」

「フェイト・テスタロッサ、です」

「フェイトね、俺のことも竜也でいいから、敬語もいいよ」

「そう、で……分かった。竜也、道案内お願いね」

「了解」


道を教えるだけなら、名前を名乗る必要はないかもしれないけど、
何かと不便かもしれないしね。

それに、占いの言葉が気になるし。

にしても、フェイト・テスタロッサ、ね。
外国人なのかな? 見た目はそうにしか見えないけど。
でも、日本語が流暢だよなぁ。

まぁ外国語話されるよりはいいけどさ。


「「…………」」


お互いに無言で歩く。

沈黙が痛いです。
とても気まずい雰囲気である。
どうやら、フェイトは無口な子のようだ。

同じ金髪でもアリサとは大違いである。
あれは、うるさいくらいだけど、こっちは静か過ぎるよ……

このままだと、気まずすぎるので話をかけてみるとするか。


「フェイト」

「何? 竜也」

「フェイトは買い物でそこに行くの?」

「うん、お母さんに頼まれて」

「そっか、お母さんに、ね」

「お母さん、忙しいから」


忙しい、ね。
そういう意味だけで娘を一人買い物させるってどうなのかなとは思うものがあるけど、
家庭の事情だよね。

家もあまり人のこと言えた立場じゃないし。


「家の母さんも忙しいんだよなぁ。お互い母さんに苦労するね」

「え? うん、そうだね」


今、少し笑ったような気がした。
今まで仏頂面でどこか悲しげだったけど、共感するものがあったのか、やっと笑ってくれた。

笑った方がかわいいのにな。
なんで、無表情な顔をしちゃうんだろう。

やっぱり、家庭の事情が……やめとこう。
下手にそういうのは言うもんじゃないよな。
俺も昔は嫌だったし……


「竜也はここに住んでるの?」


ようやく話しかけてきてくれた。
さっきの話が大きかったのかな?
共感することによって、仲良くというより仲間認識ってやつなのかな?


「そうだよ、と言っても来たのは1年前だけどね」

「そう、なんだ。いい町?」

「ああ、とても、とても好きな町だよ」


俺にとっては始まるきっかけをくれた町。
温かい人の温もりにあふれる町。

たった1年、されど1年いただけだけど胸を張って言える。


「本当にいい町だよ」

「うん、竜也見てるとそう思えるよ」


そういって、こっちに顔を少し向けて、笑顔を見せてくれるフェイト。

優しい顔だねぇ。
なのはたちとはまた違うタイプだね、これは。

それに俺はそんな幸せそうだったかな?
まぁ確かにこの町に来て良かったけどさ。


「私も、いつか、ここに住みたいな」


遠いところを見ながら呟いた。
たぶん、誰に言うということでもなく独り言だと思う。

でも、その言葉の中には悲しみと言うか、切なさが感じられた。

やっぱり家庭なのかな……
今日何度目か分からない疑問を浮かべる。

俺が考えたところでどうしようもないんだろうけど、
何かしてあげたいなと言う気持ちにはなる。

というより、そうさせるものがこの子にあると思った。


「フェイトさ、あんま悲しそうにするなよ」

「悲しそう、だった?」


無自覚ですか。
それって自覚あるより重症な気がするな。


「うん……まぁね。まぁあんまり気にしないほうがいいぞ?」

「え?」

「なんでもない」


危うくプライベートに関与するところだった。
あまり、そういうのは好ましくないよな。


「お、ついたぞ」

「そう、みたいだね。ありがとう」

「ん?」

「ここまで、ありがとうね。楽しかった、よ?」


何で最後に疑問詞なんだ?
そもそも、楽しかったって、ちょっと違う気がするけど。


「ああ、どうしたしまして。俺も楽しかったよ」


俺がそう言うと、フェイトはパッと笑顔になって微笑んでくれた。
今までの無表情が嘘のように。

その顔は、金色に輝いているようだ。

というのは、なんかあれだな。
うん、きざな奴みたいじゃないか、俺が。

にしても、今日の占い的には、素敵な動物とのふれあいがあるはずなんだけどなぁ。
人間も動物って言えば、動物なんだけどさ……

まさか、フェイトがその動物なのか?

どうなんだろう……
物は試しってことなのかな。


「フェイト」

「どうしたの? 竜也」

「……お手」

「え?」



フェイトはとても戸惑っていた。
ああ、それはもう見るからに慌てている。

どうすればいいのか分からないようだ。
なので、もう一押ししてみる。


「お手」


もう一回言うと、また悩む。
そして、恐る恐るながら、


「わ……ん?」


そうか……素敵な動物とのふれあい。
フェイトは……犬なのか。

ははは、新しい動物を見つけた!

たぶんなのだが、このときの俺は他の人から見たら目が輝いていたんではないだろうか?
フェイトも若干引いてた気がするし。

うん、でも俺はもう満足だ。


「じゃあな、フェイト」

「え……あ、うん。じゃあね、竜也。……また、会える?」

「俺はこの街にいるから会いたかったらまたこの町に来てくれれば会えるさ」

「そう……うん。また会いに来るね」

「ああ、その日を楽しみにしてる」


俺はこの言葉を最後に、フェイトに別れを告げて、家に帰った。


「I'm home」 


確か、ただいまと言う意味だった気がする。
今日は母さんは帰りが遅いので、家に誰もいるはずがないが、
それでもついついただいまと言ってしまうのは日本人の癖だと思う。

よく、一人暮らしのただいまは寂しいと言うが、たぶん、俺は今それをじっ─


「お、おかえり。た、竜也君」


声が聞こえた。
俺の部屋の方から、何かをやって集中しながらなのか、声が途切れ途切れだったけど、
確かに声が聞こえた。

誰もいないはずなのに……

慌てて、自分の部屋に駆け込むとそこには……


「もしもし、警察ですか。ええ、ここに不法侵入し─」

「にゃ! にゃにゃ!! にゃのはだよ!」


前にも警察ネタはやった記憶があるが、すでに遠い記憶の中だ。

あまりにも焦っているのか猫語がでまくる上に、自分の名前を噛んだ。

そう、つまりは俺の部屋には、一生懸命RPGをやっているなのはがいた。
そして、俺は悟ったんだ。


「だめだ、こいつ早く何とかしないと……」

「にゃ! そういうことは失礼なの!」

「勝手に家に上がってるお前のセリフか!」

「ちゃんと、竜也君のお母さんに許可はもらったよ?」


ほら、合鍵もあるし、と言うなのは。

母よ、なのはに鍵を渡したら、毎日ゲームしに来るぞ。

ちなみにやっているRPGはとあるねずみ王国の王様が出てくるやつだ。
確か他にも、最後の幻想とかのキャラも出てたよな、あれ。

俺的にはⅡがお勧めだ。
黒い翼の生えた、最強の剣術を使う人もいるしね。


「なのははやっぱりⅠなの」


お前の意見は聞いてない。
たく、勝手に上がった上に、ゲームまでやるとは、お仕置きが必要だな。


「なのは、まて」

「にゃん」


そういうと、ゲームをやっているのを無視して俺の指示に従うなのは。
俺はその状態をほんの1分ぐらい続ける。


「よし」

「にゃ。って、あ!死んじゃったじゃん……竜也君の意地悪なの!」


ざまぁみやがれだ。
部屋の主に許可を得ずに勝手に遊んでるからいけないんだ。


「にゃ~、じゃあ、竜也君も一緒になんかやろうよ?」

「うん、まぁいいけどさ。じゃあ、一緒に出来るのは……」


そこそこの数あるゲームソフトの束から対戦できるものを探す。


「え……これはやったことないんだけど?」

「そんなもん知らんよ。ならできるようになれ」


それから、月の形のゲームをなのはが帰るまで続けた。
なのははプレイしながら「うにゃー!」「にゃにゃ!」とか言いながら必死にやってた。

その、必死さがまたなんというか、うん、見ててとても和んだよ。

それで、時間になると、なのはは「今度は絶対勝ってみせるの!」と三下のせりふを言って、帰っていった。

なのはが帰った後は、割とすぐに母さんが帰ってきた。


「ただいま、竜也いる?」

「いるよ~おかえり」


母さんは今日もいつも通りに帰ってすぐに、ご飯の準備を始めた。
最近は高町家でご飯を食べることよりも、こうやって帰ってきて食べることの方が多くなってる。

それは、ようやく安定したお金が手に入るようになったのと、
生命保険とかから入ってきたお金が大きかった。


「今日は、どうだった?」

「どうだったって?」

「今日一日よ」


母さんは必ず食事の時間もしくはその準備の時間に、
今日何があったか質問するのが日課になってた。


「今日は、素敵な出会いが会ったよ」

「出会い?」

「うん、犬との」

「い、犬?」


母さんは少し拍子抜けした声になった。
まぁ驚くのも無理はないかもしれないけどね。


「名前は、フェイト・テスタロッサっていうんだけどね」

「フェイト……テスタロッサ、ね。またずいぶん懐かしい名前……」


母さんが最後の方に言った言葉はよく聞こえなかったが。

その様子はどこか懐かしむような、そんな感じがした。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもないわ」


すぐに平静に戻る母。
昔に何かあったのかもしれないが、たぶん、聞いても話してくれないんだろうな。

まぁこんなことを気にしても仕方ない。
俺からすれば、今日一日も充実した、楽しい日々を送れた。
それだけで十分だ。



あとがき

悩みました。
悩んで悩んで悩みぬいた結果がこれです。

作者のタピです。


答えはフェイトでした。
みんな外れまくったですねー、難しかったかな?

まぁそんなことはどうでもいいとして(オイ

フェイトに愛らしさを感じてもらえればこれ光栄
パロネタに気付いてもらえれば最高の名誉

予想以上に、フェイとかわいすぎです。
作者的にやばいです。

最近はなのは一筋だ。ああ、俺にはなのはしかいない!
なんて思ってた鉄壁の心が揺らいでます。

アリサ猫以来です。
あれ、しょっちゅう揺らいでるw

まぁそんなわけで第22話です。
この話自体はそんなにこの先に影響はないです。
ないですが……です。

次回は何を書こうかまだ決めてません。
どうしよう、困ったな。

候補はあるんですがね^^


最後に
ネットでこのSSの名前を検索してビックリ!
この作品を紹介してくれてる人がいました。

見えないところで紹介してくれるなんて、作者としては嬉しい限りです。
思わず涙がでちゃいました。

そういう人たちのためにも期待を裏切らぬよう、
迷作といわれるように頑張ります。

毎度長いあとがき失礼しました



[16185] ─第23話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/02/28 00:48
外は未だに雨が降り続けている。
この時期と言うのは雨が多くとても、じめじめする。

中にはこのじめじめがたまらないなんていう人もいるかもしれないが、
大抵の人は忌み嫌う季節だと思う。

それに、もしじめじめが好きならカエルの星に行くことをお勧めする。
 
カエルといえば、今にもその鳴き声が聞こえそうな、そんな気分にとらわれる。
実際には、カエルの鳴き声は聞こえることはあまりないのだが、やはりそれを想像するのは、日本人独特なのかなと思う。

雨が降れば降るほど、あさがおは綺麗に見える。

そんな景色を俺は窓越しから、ぼんやりと遠くを見るように外を眺める。

どうして、こんな季節があるんだろう。
雨は嫌いではない。
正しくはこのじめじめが嫌いなのだけだが、同じようなもんなのかもしれない。


「相沢君」


ジーっと外を眺め続ける。

今日は家に帰ったら何をしよう。
ああ、今日は鍛錬だから、なのはの家か。

その上、雨だから道場で素振りと試合かな。

あんまり深く考えずに、ただ薄っすらと今日の予定を考える。
いや、確認すると言っても間違いじゃない。


「相沢君! 今は授業中です!」


先生のお叱りの声が聞こえて、ようやく現実に戻る。

授業が決してつまらないと言うわけじゃないんだけど、
こんな雨模様を見せられてはやる気もうせると言うものだ。


「ねぇねぇ、竜也君」


今年になって初めての席替えで、隣の席になったなのはが声をかけてくる。
こんな回想をしてれば分かると思うが、俺は窓際である。

窓際族とは関係ないぞ?
俺はその言葉の意味は判らないけど、でも、違うことぐらいは分かる。


「なに? なのは」

「あ、あのね。ここが分からないんだけど」


そういって自分のノートを見せてくるなのは。

そのノートにはかわいらしい絵が書いてあった。
落書きである。
それも、アリサやとすずかさらには俺のも。

なのはって勉強苦手だったっけ? と若干寝ぼけ気味の頭で考える。
理数系以外は苦手だったっけ?

少しずつ現実味の戻ってきた結果、ようやく今の時間が社会であることが分かった。
よくよく考えれば、ノートを見た時点で漢字や年号が書いてあったはずだから、分かるはずだけど、
かわいらしい落書きを見てしまって、肝心なところを見てなかった。


「今、授業中だろ? ちゃんと集中しなさい」


授業中にしゃべりかけてきたのに対して叱ってやる。
俺は猫思いだからね。


「にゃ!? 竜也君に言われたくはないの!」

「高町さん、静かにしなさい!」


なのはの声が大きかったのか、先生に注意されてしまったなのは。
それに対して、竜也君のせいなの、とブツブツ言っているが俺は気にしない。

そういえば、後3週間もすれば、夏休みになる。
小学校二回目の夏休み。

と言っても、その前には期末テストがあって、そのために勉強をしなくちゃいけないのだが、
俺はさしてそれは問題だと思ってない。

今も、魔法の勉強と一緒に学校の勉強も進めているので、今の授業の内容よりも結構先までやってるからだ。

毎日の予習復習以上のことをやってることになる。

たぶん、今、なのはが声をかけてきたのも、それが理由であるのだろう。
なのはは普段はそんなに勉強をする方ではない……と思う。
実際は知らないけどね。

そのなのはが苦手な教科を俺に教えを請うと言うことは、少なからずテストを意識してるんだろう。
まぁ頼られると言うのは悪い気はしない。


「家で教えてあげるよ」


そう言った文面を書いた手紙をなのはに渡す。

お節介かなとは思うものの、たまにはそれぐらいやってやるかと思う。

それを受け取ったなのはは、ぱあっと笑顔になり、手紙を返す。


「ありがとうね、よろしくお願いします」


まぁそんなわけで今日一日の予定は決定だね。

剣術の鍛錬の後の勉強だと、眠くなりそうだけど……
いつものことだから頑張るか。


「これで今日の授業を終わります、つづけて帰りの……」


今日最後の授業が先生の言葉で終わりを告げた。
そして、そのまま明日の連絡の時間になり、先生はみんなにさようならといい、みんなもそれに答え、
放課後になった。


「じゃあ、私とすずかは塾だから、じゃあねまた明日」

「またね、竜也君、なのはちゃん」

「うん、また明日」

「ああ、また明日」


二人に別れを告げると、俺となのははまずなのはの家に向かうべく歩き出す。


「そういえば、竜也君と二人だけ帰るのって久しぶり、かな?」

「そうだったか?」


俺は直接なのはの家に行かずに、自分の家にまず帰ってから行く事が多くなった。
そのため、ここ最近は3人でつるむか、全員ばらばらのときが多かった。


「うん、まぁ別に俺となのはが二人きりって珍しいことではなくない?」

「そうだけど、二人だけで帰るのはなんだか新鮮だよね」


言われてみればそうかもしれないけど……
あえて主張することでもないかな。

こんな、いつもどおりの会話が続けていると、バス停に着き、
気付けばなのはの家である。


「ただいま~」

「お邪魔します」


なのはの気の抜けた、声が家に響き渡るが、誰もいないので返事がない。

たぶん、恭也さんも美由希さんもまだ学校なんだろう。
士郎さんと、桃子さんは喫茶店だろうしね。


「誰もいないね」

「そう……だね、だけど、いつものことだから平気なの」


ちょっと無理した感じに答えた。

前まではよくなのはと一緒に帰ってたからしっているが、
なのはが帰る時間は大抵誰もいない。

そのため、俺がいないといつも一人ぼっちだった。

こういうところから孤独感とかでちゃってるんだろうな。


「でも、今日は竜也君がいるからいいの!」


俺に振り返って笑顔を見せるなのは。

寂しいなら家族に言えばいいのに……
恭也さんも美由希さんもこの状況を知れば、絶対に放っておくような人じゃないと思うし。

それなのに、なのは大丈夫でいようとする。
全くこの家族はお人よし過ぎると思うよ。


「じゃあ、俺は先に鍛錬始めるけど、道場に一緒にくる?」

「うん、見学させてもらうね」


観客がいる分には問題ない。
むしろ、そのほうが燃えると言うものだ。

それに……なのはを一人にさせるわけもいかないしな。


すぐに、動きやすい服に着替えて、道場に入る。
なのはも俺の後ろについて来て、道場に入る。

まずは精神集中のために座禅をとる。
なのはも真似して座禅をとる。


「「…………」」


お互いに1分ほど無言で集中する。

俺はこの静かな時間が好きだ。
まるで時間が止まっているかのような、そんな静けさが孤高感を感じさせる。


「よし!」

「はい!」


俺が鍛錬を始める前に切り替えをするために一喝したら、
なのはが元気よく答えてくれた。

その声はとても清々しい。


「じゃあ、なのははそこで見学しててくれな」

「うん、頑張ってね」


なのはの応援の声にやる気がうなぎのぼりに上がる俺。
自分で意外と単純なやつだなと思うほどだ。

人に応援されるのって嬉しいとか通り越して、その気持ちに答えなきゃって思わせられる。


「ハッ!……ハッ!……ハッ!……ハッ!」


道場に俺の気合声と、素振りをするときにでる、ビュンビュンという、空気を切る音が響く。
なのはは静かに座禅を組んだまま、じっと俺の鍛錬を見つめる。

時々目を瞑って、精神集中をしたりもしているが、決して姿勢は乱れない。

さすがは、高町家の末っ子。
武術をやってなくても、たとえ運動音痴でも心得はしっている。

それが素振りに集中している俺にも伝わる。
人に練習を見られているはずなのに、全く緊張せずにいつもどおりに出来るのは、
たぶん、なのはがそういう雰囲気を出しているからだと思う。


何分……何時間が経っただろうか、気付けば外は暗くなり始めていた。
結局この日に、恭也さんも美由希さんも道場に顔を出してこなかった。


「なのは、そろそろ疲れたし、戻るか」

「うん、竜也君お疲れ様」


そう言ったなのはの手にはいつとりに行ったのだろうか、タオルを持っており、
俺に、「はい、どうぞ」と言う掛け声とともに、渡してくれた。

軽くお礼を言って、なのはの家のリビングに戻った。


「あ、お疲れ様。竜也君」

「お疲れ、精が出るな」


リビングには夕食の準備をしている、桃子さんと母さんのほかに、
恭也さんと美由希さんもいた。

おまけで士郎さん。


「あれ、なんで二人は顔を出さなかったんですか?」

「え……二人がいい雰囲気だったから、ね? 恭ちゃん」

「そうだな、とても入れる空気じゃなかったな」


二人は俺となのは? に気を遣って入れなかったらしい。

まぁ確かにいつもの数倍は集中してやってた気はするけど。
いい雰囲気ってどういうことだ?

俺は練習してただけなんだけどな……

まぁ気にしてもしょうがないか、いい練習が出来たわけだからね。


「はい、雑談はここまでね。ご飯が出来たわよ、いただきましょ」


いつのまにやら、テーブルの上にはご飯が並んでいた。


「それじゃあ、いただきます」

『いただきます』


みんなで一斉にいただきますを言い、食事を始める。
その風景はまさに一家団欒だった。

とても、なのはが孤独には見えないような……

雑談あり、笑いありの食事が終わって、なのはの勉強を見るために、
なのはの部屋に向かった。


「ええっとね、こことここが分からないんだけど」

「そこは、1192(良い国)作れなくて、北条氏に乗っ取られた鎌倉幕府って覚えるんだ」

「わ、分かりにくいよ!しかも長いの!」

「ちなみに北条氏は執権だからな」

「執権って?」


なのははやっぱり社会などの文系がわからいようだ。
理系が得意なのは、ゲーマーだからなのかな?


「そういえばなんだけど」


なのはが勉強の手を止めて、椅子をくるりと回転させ、俺に向き合った。


「竜也君ってさ、鍛錬とかしてるときかっこいいよね」

「は?」


いきなりのかっこいい宣言で間が抜けた。
勉強中だって言うのに全く。

まか嬉しいんだけどさ。
それを口に出すとバカにされそうなので言わない。

頑張ってうれしさを隠す。


「え……い、いや。そんなこと無いと思うけど」

「あ、竜也君が珍しく慌ててるの。しかも、顔まで赤くして」

「う、うるさい!それで、それがどうしたんだよ!?」

「にゃ!? うん、普段と違うなって、いつもはやる気なさそうにしてるのに、
鍛錬のときはお兄ちゃんみたいに集中しててかっこよかったなぁって思ったの」


お兄ちゃんみたいに、ね。
なのはも別に家族が嫌いってわけじゃないんだよな。

家族といえば、あのフェイトって子がなぁ……
そういえば、あれ以来会ってないな。


「今日だって授業中は上の空だったの、それでなのはよりテストの結果が良いって許せないの!」

ああ、そうか。
かっこいいとかは前ぶりに過ぎず、最終的にはそこか。
嫉妬ですか? なのはさん。
見苦しいですね。

そんな君には


「なのは、以後猫語以外使用禁止」

「にゃにゃ!? にゃにゃにゃい、にゃんにゃー」

「『そんなの反則だって?』だって? はん! ぬか喜びさせたやつが悪いんだ!」


ちゃんと言われたとおり猫語で反抗するあたり、なのはは染まってるなぁ。
もう、何でも俺の言うとおりになるんじゃないだろうか?


「ほら、早く勉強しな。また外出禁止になるぞ?」

「にゃ!? ……にゃん」


俺の脅しが効いたのか、シュンとなりつつも手を動かし始める。
今日はなのは猫と遊びに来たわけではないからね。
ちゃんと勉強しなくちゃ意味がないというものだ。

前回、前々回は俺がなのはで遊びすぎたせいで外出禁止になったようなものだからな。
ちょっとは責任を感じてるんだぞ?

そんな事を思いつつ、なのはに勉強を教える、夜は続いた。


おまけ

翌日学校にて。

「にゃーにゃにゃ。にゃにゃんにゃん!?」

「『いつまで猫語でいればいいの!?』だって? 俺が飽きるまで」

学校でも猫語縛りが続き、なのはは羞恥プレイを味わうことになった。
と、思ったのだが、案外みんなそのなのはがかわいかったらしく、頭を撫でられそうになったりした。

でも、なのははそれを嫌がってなのか、俺の下に戻ってくる。
なので、代わりに撫でてやると

「にゃ~ん」

と言いながら、気持ちよさそうに見えた。
本当になのは猫は俺にしか懐かないな。

「にゃにゃい」

「え? 『もっと撫でてほしい』、う~んだが断る!」

「にゃ~ん」

悲しそうな声を出すなのは猫。

「というより、あんたなんで猫語が分かるのよ……」

「アリサちゃん、たぶんそこに突っ込んだら負けだと思うよ?」

この日一日中、教室に猫の鳴き声が響き渡っていたらしい。




あとがき

久々にサッカーで燃えた!
ガンバ大阪のファンなんですけど、惜しかった><

作者のタピです。


今回も少しシリアス的な雰囲気を出すものの、
やはり猫でしめてみました!

久々に猫成分補給です!
話数にして2話、日にちにして二日ぶり!


道場でのいい雰囲気を肌に感じてもらえればこれ光栄
この作品はやはり猫だったと思ってもらえれば最高の名誉


おまけはおまけです。
作者がハッ!と思いついただけなので気にしないでくださいねw

そういえば、少し補足しようと思います。
竜也は普段の生活ではリミッターをかけていて、魔力を極力もれないようにしています。
その描写をいつかは書くと思いますが、忘れかねないので補足します。
確かルーもそんな感じのリミッターをかけていたと思うので


最後に
最近の生きがいはみなさんの温かいコメントです。
本当に毎回ありがとうございます。



[16185] ─第24話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/01 15:22
長きに渡る雨模様の空。
といいつつもほんの1ヶ月にも満たない雨の季節ではあるが、それが終わりを告げた。

そのことの意味するとこは、夏の始まりである。
海鳴市の二回目の夏だ。

夏、と言ってもまだ本格的には暑くはならずに、未だにじめじめした独特の雰囲気が漂っている。

外では、夏の象徴のミーンミーンと鳴く油蝉ではなく、
ジリリリリと鳴く夏の始まりと終わりを告げる蜩がないている。

この、蝉の鳴き声に、俺は少しじんわりと来るものがある。
それはひとえに、あの5兄弟がもってきたパソコン用のゲームのせいなのだが、
明らかに小学2年生がやるような内容ではないと思った。

クリアは攻略サイトを見てやっとだった。

でも、それほどまでに苦労したことと、ゲームのないように思わず涙を流してしまった。
そして、この蜩の鳴き声は、それを思い出さした。

正確には、名前だけでも思い出せるのだが、やはり鳴き声の方が良い。

鳥肌がたつ。


まだ、夏はやってきてないな。
主観的にはそう思わせる。

季節的には夏と言っても過言ではないが。

しかし、目前ではあった。

テストは1週間ほど前に終わり、答案はすでに返却されている。
今回のテストは前回に比べて1点低かった。

たった1点だけだ。

なのに……この1点が勝負の明暗を分けた。


「ふふ、やっと……やっと勝ったわよ! 竜也約束どおり一回だけ私の言うことを聞いてもらうわよ!」


恒例の如くアリサと勝負していたが、前回は引き分けにより延長されていたため、
賭けの内容はそのままだった。

賭けの内容……俺が勝った場合は1日アリサ猫状態。
俺が負けた場合は、アリサの言うことをなんでも一回聞く。

実にシンプルで分かりやすい内容だった。

ちなみに、テストの結果だが、俺は算数以外満点、アリサは全教科満点、すずかは全体的に中の上、なのはは理数系は満点、
そして、普段なら残念な点数の文系は上の中クラスだった。
俺の指導のたわものと言っても良いだろう。

なのははそんな自分のテストの結果を見て自分で驚いていた。

なのははやれば出来ることタイプなんだな。
ただ、苦手と言う意識だけが先掛けしてしまうタイプだんだろう。

まぁ今回のテストは俺のおかげと言うこともあったので、


「俺のおかげでいい点数取れたんだから、なのはは俺のペットで完全に決定な」

「にゃ? ……感謝はしてるよ、竜也君。
それに、なのはも別に嫌じゃないけど、ただそれを認めたら駄目って本能が言ってるの!」


本能で俺の発言は危ないと気付いたと申したか、この猫め。
どっちにしろ、今の状態はほぼ俺のペットだから本人公認になるかどうか程度の違いに過ぎないけどね。

まぁそんな半分冗談、もちろん半分は本気のトークをしてアリサとの約束を誤魔化そうとしたのだが、


「ふふ、何を頼もうかしら」


不気味な笑いと共に、自分の世界に閉じこもっているアリサがすぐ傍にはいた。

俺は一体どんなこと命令されるのだろうか……
考えるだけで背中に凍るものを感じる。


「アリサちゃん、大丈夫?」

「ええ、大丈夫。私は大丈夫よ、すずか」


ふふっと未だに笑いを止めない、アリサ。
すずかも心底心配そうにしている。

俺もそんなアリサを見て心配になる。

何が心配かって、自分の身に決まってるじゃないか!

きっと残虐非道な、そう、どこかの悪役な超人たちも驚きの恐ろしい罰ゲームが待ってるに違いない。
俺はそれをただ、ここでじっと待ってるしかないんじゃないのか。

父さん、きっと俺もすぐそちらの世界に逝くことになります。
体は無残な姿かもしれませんがそんな息子を許してください。

そんなことを天に願ってみると、父さんの声が聞こえてきた気がする。

きっと、まだ生きろとか、励ましや、希望の言葉を言ってくれるのだろうと期待する。


「竜也よ……散々に殺られて来い」


死の宣告だった。

今度のお盆には墓に塩をまいてやろう。
ああ、そうしよう。
ついでにお焼香も叩き付けてやろう。

俺はそんな事を密かに決心する。

そんな時だった、アリサが決心したのか、今までの不気味な笑みを止めた。


「竜也!」

「お、なんだよ急に?」

「今日あいてるかしら?」

「ん? 今日?」


今日は週に一度の鍛錬のない日だった。
寝る前には魔法の勉強と練習と学校の勉強があるがそれ以外はない。
つまり、放課後から家に帰るまでの間は暇である。

こういうときはケータイの占いをチェックしてみる。

そこには

「今日はあなたの友人と時を過ごすが吉」

と書いてあった。
これは、なのはたちと遊べと言うことなのだろうか。

あの「動物と……」以来はあまり当ってないが、まぁたまには信じるのもいいかもしれない。
何より暇だしね。


「今日は暇だよ」

「そう、じゃあ、今日は私に付き合って頂戴!」

「え、じゃあ。なのはも一緒にい─」

「駄目よ! すずかもね。今日は遠慮して頂戴」


アリサが二人の申し出を断るとは珍しい。
なのはも、渋々ながら、諦めたようだ。

それに対し、すずかには少し思い当たる節があるみたいだ。

俺じゃなくちゃいけない理由でもあるのだろうか?
まぁ賭けだからと言ってしまえばそれまでだと思う。

結果的には暇な時間を潰せるわけだし、俺的には問題ないからいいんだけどね。


「それで、俺がアリサの家に呼ばれた理由はこいつか?」


アリサの家は、すずかの家と負けず劣らず……
むしろ、勝つぐらいの豪邸である。

ただ、タイプが違うから比較の仕様もないのだが……
お金の規模的に考えれば、バニングス家のほうが月村家よりも上だろう。

ただ、地位的なものになるとどうだろう?

お互いに得意とする分野も違えば、力を持っている国も違う。

まぁ俺たち、庶民からすれば、どちらも「お金持ち」という範囲に収まるものなので、
大して気にする必要はない。

ああ、気にする必要ないのさ。

家なんかオンボロ、でもないが所詮はマンションさ。
ローンつきの安いマンションだよ。

それに比べて全く。

いや、全然腹に立たないよ?
諦めたもん、この二人の家だけは格が違うもん。

俺が気にしてるのは高町家だよ。
一戸建てならまだ許そう。

なんで一般家庭に道場があるんだよ!
そこからして、もう普通に範疇超えてるだろ!


「ちっ、なのはの癖に」

「なんか言ったかしら?」

「いや、気にするな」

「そう、それより本題なんだけど、この犬のことね」


俺の前にはかなり大きい犬がいる。
俺には品種とかは分からないけど、たぶん大型犬だろう。
そして、全身は黒く毛はさほどない。

その体格からして、猛者という雰囲気を漂わせている。

アリサの家は、猫屋敷のすずかの家とは打って変わって、犬屋敷である。
この家にもかなりの犬がいる。

俺は猫も好きだが犬も好きだ。
なので、アリサの家に来たときは必ず犬と戯れる。

猫よりも忠実な生き物。
なぜか知らんが俺の場合は猫も言うことを聞いてくれるが。

そんな例外は置いといて、普通は、犬は飼い主には忠実である。


「この犬ね、森で彷徨ってたのを保護したのよ。
それで、首輪もしてないから野犬かなって思ったけど、どう見ても血統書付きでしょ?
飼い主も探してみたんだけど見つからなくてね、結局私が飼う事になったのよ」

「ほう、それで? そのままじゃ俺を呼ぶ必要はないよね?」

「話は最後まで聞きなさい。餌をあげようと思ったんだけど、食べてくれないのよ。
かれこれ2・3日ぐらいかしらね。そのままじゃ死んじゃうから、あんたに助けを求めたのよ」

「動物病院に助けを求めろよ……」


なんで、俺なんだよ。
動物病院で見てもらった方がいいじゃないかよ、常識的にさ。


「動物病院より、あんたの方が頼りになるわ」

「え?」

「な、なんでもないわよ! 早く何とかしなさい!」


そう言われてもね……

ようするに、この犬にご飯を食べさせなくちゃいけないってことなんだよな。
なんか、かなり面倒なことを押し付けられたような気がするけど、しょうがない。

賭けに負けた方が悪いんだし。
それに、アリサが頼むってのも珍しいし、この犬も放っておけないよな。

そんな事を思いながら、犬に近づく。


「あ、危ないわよ! 私も近づいたら噛まれかけたし……」

「大丈夫だろ、俺は動物に噛まれたことないんだよ」


俺はさらに近づく、犬との距離は1mにも満たない。

犬はじっと俺を見てくる。
俺も犬の目を見返す。

その状態が数秒続き次の瞬間、犬が俺に飛び掛った。


「え?」

「……きゃー!」


アリサが叫ぶ。
襲われたと思ったからだろう。

しかし、犬はそのアリサの考えとは裏腹に、
俺にのしかかり、ペロっと舌で顔をなめてくる。
尻尾を左右に振っていた。


「くぅ~ん」


その、でかい図体からでたとは思えない、かわいらしい鳴き声が聞こえる。


「え?」


アリサは拍子抜けした声と、驚きの顔した。


「アリサ、犬の餌ない?」

「え……分かったわ、ちょっと待ってて」


そういうと近くにあったビーフジャーキー?みたいなものを俺に渡す。

俺はそのビーフジャーキーを、犬にあげると。

パクっと一口で食べた。

そうして、もう一個と言わんばかりに、尻尾を振る犬。
それは、とても可愛かった。


「まて」

「わん!」


そういうとお座りして、待つ。
うん、とても賢いようだ。

もう一回アリサから食べ物を受け取り、犬の前に置く。
まだまては、解かない。


「よし!」

「わおん!」


その声と同時に、食べ物にがっつく。

実に嬉しそうに食べるなこいつ。
みてて、和むよ。

もう……大丈夫だろ。


「アリサ、こっちにおいで」

「う、うん。分かったわ」


そう言いながら、恐る恐る近づくアリサ。
その瞬間飛びつく、犬。

でも、その姿は。


「助けてありがとうだとよ、そして遊んで欲しいってさ」

「もう、分かったから、舐めるの止めなさいよ!」


そういわれると、アリサの前に座って、尻尾を振り続ける犬。
本当に利口な子だな。

そして、付き離すも、少し嬉しそうにいうアリサ。
やっぱり純粋に心を開いてくれたのが嬉しいんだろうな。


「それにしても、あんた。犬の言葉がわかるの?
いや、そうじゃないわね。動物の言葉が分かるのかしら?」

「いや、なんとなくだよ」

「そう……まぁそういうことにしとくわ」


そういうことも何も、そのまんままだよ。
俺は全部なんとなく、なんだって、なのは猫は分かるけどさ。


俺たちは沈むごろまで、その犬を含めた複数の犬と遊んだ。


「アリサは優しいんだな」

「な、何よ急に!」

「いやな、彷徨ってた犬を拾うだけじゃなくて、飼い主まで探してさ、
見つからなかったら自分が飼い主になるって、本当にすごいなって」

「……ふんっ! 当然のことをしただけよ! それにあんただって見つけたら同じことするでしょ?」


どうかな……
そこら辺はなんともいない。確かに動物は好きだが、実際に飼った事はない。
飼うとなると色々と大変だろうし、何よりマンションだ飼う事もできないしね。


「じゃあ、俺はもう帰るわ。そろそろ暗くなるしね」

「……そう」

「じゃあ、その犬よろしくな、また明日」

「くぅ~ん」

「うん? 寂しいのかな? まぁまた会えるさ」

「わん!」

「はは、俺も楽しみにしてるよ」


犬と会話をする。
ん? これって普通に考えたらおかしいか?


「竜也!」

「どうした? そんな大声で」

「き、今日は助かったわ」

「ああ、そんなことか。何を今更、そういう約束だろ」

「そうだけど……」

「じゃあ、また明日な」

「……あ、ありがとう」


アリサが顔を真っ赤にしながら、何かを呟いたが何を言ったのかは分からなかった。


「今日のあんたは、……かっこよかったわよ、本当にありがとう!」


今度はハッキリと聞こえた。
アリサには珍しくと言ったら、失礼なのかもしれないが、恥ずかしがらずにハッキリと言った。

そして、そのアリサの顔は……姿は。

夕日とその金色の髪の靡きからなのか、輝いて見えて、そして
……とても綺麗に見えた。




あとがき

マンネリ化の気配を絶つために少し雰囲気を変えて見ました。
たぶん、作者至上最高の締めだったです。

作者のタピです。

原作には関係しない全くの余だ話。
しかし、今までとは違う雰囲気を頑張りました(重要な事なので2回言いました)

アリサの優しさとデレに悶えてくれればこれ光栄
作風の違いにしんみりしてもらえれば最高の栄誉

裏話として、とあるラノベでツンデレがデレた姿を見て、アリサを書こうと思ったのは、全くの無駄な話。
こんな時になのはは便利です。王道の性格やキャラが大体いますからw

そのラノベのせいで(責任転嫁)アリサのデレとかなのはのデレとかすずかのデレとかしか書いていない←
番外編を密かに書こうと思ってるのはここだけの話です。
うpするかどうか分かりませんけどね。読みたかったら、教えてください。
要望が多い場合は載せるかも?

まぁそんなわけで第24話、25~30話の間に原作云々言いましたが、
うん、厳しい雰囲気を感じるぞw

もう、そこいかないで完結でよくね?

最後に
今回は猫はでませんでした、いつも出るとは思わないでよね///



[16185] ─第25話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/02 10:55
空は青空。
晴天と言っても足りないぐらいの、青一面の空だった。

ここ一番に太陽が輝き、そのおかげか、いや、そのせいか気温はとことん高い。
数字にして、36度。

真夏であった。

とてつもなく暑い。
気温にして36度だが、体感温度は40度はあるんじゃないだろうか?
それほどまでに、暑く感じる。

俺にとって暑さと言うのは、嫌だった。
冬の寒さには清々しさがあるが、夏の暑さにはそういった気持ちよさはない。

まぁこの町は他の街に比べ、風があるからまだましなのだろうが、
その風も海のせいか、塩っ気があり、若干肌触りも悪い。
そのうえで、浴びすぎるぞベタッとするものだから、性質も悪い。

風があるのがいいのか悪いのか分からないのはそのせいだ。

夏は序盤。
今年の夏はテレビのニュースによると猛暑らしい。
まぁそんなのは、こうやって外を歩いていれば十分に分かりきっているときことだ。

今年の夏も去年と同じ、
否、去年のほどの騒がしさはないにしろ、俺の日常は大差ないものだった。

あえているのが、家にいると、とても暑いので、今年は図書館にでも行って身体を冷やそうと思ったことぐらいだ。
それもこれも、暑いせいである。

ついでと言ってはなんだが、図書館には何度か行った事はある。
理由としては、読書の秋だから図書館だろ?

という、ちょっとしたお茶目な心構えから、流行? にのろうと思い行ったからだ。
それからも、たまにいったりはするけどそんなのしょっちゅう行こうとは思ったことも無い。

図書館と言えば、分厚い本や、ちょっとした単行本が置いてある場所だが、
家には勉強に必要なものも揃っているし、欲しい本は手に入る。

母さんはそういうことは惜しみなくお金を使ってくれるのでありがたい限りだ。

そんな、図書館に行く途中のちょっと長めで急な坂道。
そこに、車椅子に乗った少女がいた。

車椅子は珍しいものではないとは思う。
それと同様に少女も珍しいものじゃない。

しかし、その二つを掛け合わせれば、あら不思議!
とっても珍しいってそういうことじゃなくて!


「……あ」


車椅子を握る手が離れた。

そうすると車椅子は重力に逆らえずに坂の下へ滑り落ちる。
このままでは、彼女が怪我をしていまう。

俺はとっさの判断で、車椅子に手をかけて、滑り落ちるのを止めた。
まるでヒーローみたいに!

と、自分で言ったしまったら台無しだけどね!


「あ……ありがとうございます。助かりました」

「お礼はいいんだけど、なんで車椅子にはきついこの坂道を通ったのさ?」


この坂道は普通の人が歩くのでも少しきついぐらいの坂道。
まして、車椅子、そして俺と同じぐらいの少女には厳しすぎるものだ。


「ふ、普段は平気なんよ。でも、今日はいつも通りに図書館に行こうと思ったんやけど、この暑さのせいかいつも以上に疲れてしもうてな」

「いいわけは結構だよ。まぁ俺がいたからよかったものの」

「ほんまありがとうなぁ」


少女の顔は本当に申し訳ない、といった表情だった。
今の失敗は自分でもよく分かってるのだろう。

あんまり責め過ぎるのはよくないかな。


「それに、命の恩人や」

「大げさだよ」

「そんなことないで? 兄ちゃんのような普通の人には問題ないかもしれへんけど、私らにとってはこれで致命傷になるんや。
だから、兄ちゃんは命の恩人やで?」


どうなんだろう……
そういうものだろうか?

それでも、命の恩人はちょっと言いすぎだと思うけどな。


「まぁそういうことでもいいけどさ。図書行くんだっけ?」

「うん? そやけど」

「奇遇だね、俺もそうなんだ。ついでだから一緒に行くか」

「ほんまか? ならお言葉に甘えて」


これが、俺とこの少女の出会いだった。


「さっきから少女少女って嫌なんやけど?」

「え、ああ。そうだよな、名前なんて言うのか?」

「人に名前を聞くときは自分の名前からって言うやろ?」


少女は、ちょっと楽しそうに、そして冗談交じりに、いやらしく言った。
俺は悟った。

そうか……ニューキャラか。


「それが命の恩人に対する態度かよ?」

「そうか? そうやな、じゃあ」


そういうと少し悩むように目を瞑り、
後ろで車椅子を押している俺のほうを向いて言った。


「命の恩人様、ぜひともその名をお聞かせくださいな」


まるで、悲劇のヒロインのような立ち回り。
そして、俺はなんだ、駆けつけた王子様かこのやろう!

この少女はまさにいたずらっ子、そう言うのがしっくりくる。


「ああ、分かったよ。俺の名前は相沢竜也だ。小学2年生だよ」

「かっこいいお名前ですね! 憧れるわ」


妙にわざとらしく、芝居じみた口調で言うな。
言われる俺がはずか……しくもないがボケ!


「はいはい、分かったから。お前の名前は?」

「なんや、乗りわるいなぁ」

「うるさい! 暑さで面倒なのは嫌なんだよ」

「私の演技を面倒事って、ちょっと落ち込むわ。まぁええわ、私は八神はやてや。ひらがなではやてや」

「別に漢字聞いてないぞ?」

「そういうふうに言うのがお決まりなんや!」


何のお決まりなんだよ……
まぁいいか、細かいことは気にしないようにしよう。面倒くさいし。


「じゃあ、とっとと図書館に行くぞ。暑いのは懲り懲りだ」

「賛成や、安全運転で頼むで」


そのあとはやては「GO! GO!」と言いながら、目の前の道を指差したので、
言葉通りに、思いっきり全速力で走り抜けてやった。



「はぁ……はぁ……、や、やっとついた、はぁ…」

「ほ、ほんまに怖かったわ……でも」

「でも?」

「楽しかった、面白かったで。ありがとうな」

「はは、そりゃあどうも」


時々車輪が浮いたりしてたのだが、それでも面白かったって……
さては、はやてはMなのか!?


「なんや、今とてつもない勘違いされたような気がするで」

「き、気のせいじゃないのかな?」

「なら、何でそんなに慌ててるんや」


どうやら、はやてには読心術と言う特技があるようだ。

まぁ危険でありながらも、目的地の図書館に着いたし、はやても送り届けたから、
早速涼むとするか。


「じゃあ、はやて。またこん─」

「竜也くん!」

「何?」

「あ、あのなぁ。せっかくやから一緒に本読もうや」

「え、いや。俺はここに涼みに来ただけなんだけど……」

「そんなけち臭いこと言うなや、な?一緒に読もうな」


はやてはそういいながら、車椅子で俺を押す。
ん? 車椅子で……おい!

それはある意味に轢いてないか?

車、だぞ、一応。
名前に車がつくんだから、え?そうだよね?
車の一種だよね?


「なんや、バカみたいなこと考えてるんや? あれか、竜也君はアホの子なんか?」

「ち、違うわ! ボケ! 俺はどちらかと言うと……なんだ?」

「自分でも分かってないんか? ああ、痛い子のほうやったか」

「ち、違う。たぶん……」


アホの子ではないと思う。
漢字かけるし、読めるからね。小説だってたくさん読む。

それに、痛い子でもないと思う。
そりゃあ、ゲームだってやるし、ちょっとかっこいいことをしてやろうとか思うけど……
え? あれ? これって痛い子の条件に入ってるような……

いやいや、違うだろ。

痛い子はどちらかと言うと……なのは、じゃね?

なんか猫みたいなことしてるし、俺の言うこと聞くの嬉しがってたし……
うん、なのはは痛い子だな。

間違いない。
今度から危険だからちょっと避けるようにしようかな。


「まぁええか。それより何か本もってきてなぁ」

「は?」

「だから、本を持ってきて欲しいんや。ここは図書館だから読書するのは当たり前やろ?」

「あ、ああ。どんな本もってくればいいのか?」

「う~ん、竜也君に任せるよ」

「はいよ、了解」


まぁ図書館にきたんだから本を読むのは普通だよな。
俺は涼みにきたんだけど……まぁいいか。

はて、俺の自由でいいといわれてもな。


とりあえず、分厚い本が並んでいるコーナーに向かう。


「俺らしい本、俺らしい本」


俺がはやてにすすめられるような本を探す。
どれもこれも広辞苑並みの厚さがある。

題名を見た限りとても難しそうなばっかりだが……


「お、いいの発見」


そこには子供でも分かりそうなタイトルの本を見つけた。


「よし、これを読むか」


早速のその本を持って、はやての待つ場所へ戻る。


「ず、ずいぶん、分厚いのもってきなぁ。どれどれ中はっと。
ほう、かわいい動物がたくさんやな、ほんまかわいいな……って、読書できないやんか!
これは本は本でも図鑑やんか! なんや『犬猫動物大百科』って何でこんなに無駄に分厚いんや!」

「お、おお!」

「『おお』やないで! もっとまともなのはないんか!?」


はやてののり突込みが爆発した。
さすが、関西人、素晴らしいのりだった。

はやて的には犬猫は嫌いらしい。
ちょっと残念だ。

なので、もう一冊の本を机に置く。


「ま、また分厚んやな。どれどれ……はぁ、グリフォンとかかっこええな。
あ、それ以上にドラゴンもカッコええな。ほんまにファンタジーな世界があったらええなぁ。
魔法とかもあるんかな……ってこれも図鑑やないか!
しかも、今度はなんや!『世界の不思議な動物大紹介』ってこんな動物が本当に居たら大ニュースや!
もっと普通の本はないんか!?」


またもや、大炸裂した。
おかしいな、俺らしい本を探してきたはずなんだけどな……

悔しいので、ちょっと小説、というかエッセイっぽい本を今度ははやてに渡す。


「お、今度はまともそうやな……」


今度は逆に沈黙するはやて。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。

そんな事を思ってると、はやてが大きく、はぁ、とため息をついた。


「あのなぁ、竜也君。何でこの本なんや? 『子狸と世界と笑いについて』ってどいうつもりや?
なんや、これは私に対する嫌がらせかいな」


どうやら、はやては俺の行為を嫌がらせと、とってしまったようだ。
俺は、単純に子狸って新しいジャンルでかわいいだろうなと思って手に取っただけなのに。


「たしかになぁ、竜也君。私はこんな体格上、子狸に見えるかもしれへんよ?
でもなぁ、あえて言葉に出さずにこうやって間接的に嫌がらせされるのは結構傷つんくやで?」

「子狸かわいいじゃん」

「え!? そ……そうやな。子狸はかわいいなぁ」


少し顔を赤くしながら、答えるはやて。

はやてよ、その発言はまるで自分が子狸かのように聞こえるぞ?
それとも、子狸と言ってほしいのか?


「子狸」

「なんや」


今度は躊躇せずに返事をする、はやて。
なるほど、本人公認の子狸なのか。

猫・犬・子狸。
俺の周りには愛玩動物パラダイスだ!

うん? 子狸は愛玩動物か?

こんな感じで漫才を繰り返していると、図書館が閉館の時間になってしまった。


「そうか、そうか、はやては子狸なのか」

「い、いい加減にせえや、竜也君。ずっとそればっかしやないか」

「別にいいじゃん、子狸かわいいんだし」

「え……面と向かって言われると恥ずかしいで竜也君」


俺は別にはやてに向かって言ったつもりはないんだけどな。
本人は勘違いしてるようだけど……まぁいいか。

かわいいと言うたびに、顔を赤くして嬉しがるはやては見てて楽しいし。


「なぁ竜也君」

「ん? どうかした?」

「こ、今度な、家に来てくれへんか?」

「ああ、遊びに行くって事?」

「そうや」

「はやての家は涼しいのか?」

「え? そ、それはもうめっちゃ涼しいで! 北極並や!」


そうか、北極並に涼しいのか……涼しいと言うか寒そうだな。
でも、暑いのよりはいいかな。


「いいよ、じゃあまた今度な」

「ほ、ほんまか! 絶対やで! 約束やからな!」

「ああ、約束は破らないよ」

「そか、じゃあ、またなぁ竜也君。また会おうなぁ」

「おう、またね」


はやてと遊びに行く約束をして、俺も家に帰る。
帰ったらまた、魔法の練習だ。




あとがき

花粉症がつらいです。
全然集中できない。その結果がこれだよ!

作者のタピです。

みなさん、はやてのことを子狸、子狸いいますが、
どうやって狸を表現すればいいんでしょうか?
語尾にポンとつけますか?

「私が八神はやてぽん、中ようしてぽん!」

原型がないorz

あまり上手くかけませんでしたがそれでも面白かったといってもらえればこれ光栄。
コントが笑ってもらえれば最高の栄誉。


はやては難しいです。
はい、非常に難しかったので、今後の登場はありません(ぇ


さて、夏休み編ですが、前2話のみで構成されています。
次回は、「夏といえば、これ!」です。

さて、なんでしょうかね?
あ、先に言いますがポロはないです←

夏が過ぎると冬になるかもです……わかりませんw

最後に
今回は駄作だったかもしれません。あくまで作者的にですが……
そんな作品ですが、励ましてもらえれば嬉しいです(甘えたこと言ってんじゃない(どか))

フェイトの出番はもうちょいお待ちくださいw



[16185] ─第26話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/03 00:55
「……座のあなた、今日は街に出ましょう!きっと素敵な出会いが……」


別に、今日の占いが気になるわけではないが、
なんとなく点けたテレビでは偶然、朝の占いをやっていたのでついつい見てしまった。

たぶん、誰にもで経験のあることだと思う。
俺は占いを信じるわけではないが、どうなんだろう。

時々見る占いほど当たるものも無いと思う。

占って欲しいと思って見るよりは、なんとなく見た先でいい結果がでてたと言う方が、
気分もいいものだ。

そんなときは、ちょっと信じてみようかな、何て思う。


「では、朝8時の占いを終わります。続きましては……」


ニュースはまだ続くようだが、とりあえず占いが終わったのでテレビを消す。

俺はついさっき朝の鍛錬を終えたばっかしで、今風呂から上がったところ。
まだ、身体はぽかぽかする。

真夏の暑い時期だから、シャワーは水でもいいかなと思ったが、
恭也さんが


「疲れをとるなら、水じゃなくて温かい方がいいんだ」


と言っていたので、言われたとおりに温水シャワー浴びた。
まぁ普通はあったかいんだけどね。


にしても、今日は町に出たほうがいい、ね。

念のためにケータイの占いも見てみる。
そこには、
「駅で素敵な動物とのふれあいが」
という、いつかの懐かしいフレームがあった。

本当に使いまわしだよな。

まぁデフォでついてる占いに、満足感を求めちゃいけないとは思うけど。

ただ、この場合テレビの占いとケータイの占いの意味するところは同じである。
つまり、これの意味するところは……

フェイトとの再会?

いやいや、まさかそんな絵空模様のような、
たぶん意味違うけど……

まぁそんな運命的な出会いなんてないよな。


「竜也君何してるの?」


なのはがちょこんと顔を出して、俺を見る。

俺がケータイを弄くってるのを見て、気になったのだろう。


「ああ、占いをチェックしてるんだよ」

「占いを? 竜也君ってそういうの信じるの? 前にもそれを理由に行動したことあったでしょ?」

「ああ、まぁ面白そうならね」

「竜也君っていつもそうなの。自分が面白そうなの面白そうなのって、
なのはは竜也君のおもちゃじゃないの!」

「……え?」

「な、なんでそんなに驚いた顔をするの!?」


なのはが俺のおもちゃ……だと?
いやいや、最初からそんなこと思ってないって。
なのはは俺のペットだろ?


「いや、あまりにも予想外のことなのはが言ってくるから」

「にゃ? 何がかな?」

「なのはがおもちゃじゃないと言うところだよ。俺はなのはをおもちゃとは思ったこと無いよ」

「そ、それじゃあ」


ぱあっと急に笑顔になるなのは。
何がそんなに嬉しかったのだろう。

俺はおもちゃとはと言ったのに。


「なのはは俺のペットだろ?」

「うん。……にゃ!? ち、違うの!! お友達なの!」


慌てて否定するが、ときすでに遅し、この言葉をすでに聞いてしまった人が居る。
そう、高町家の長女である、


「え、なのはって竜也君のペットだったの? 前からそうじゃないかと思ってたけど」

「にゃにゃ!? 前からってどういうことなの! お姉ちゃん!」

「あ、竜也君の猫が私を襲おうとしてるよー、止めて竜也君」


美由希さんが実にわざとらしく、俺に助けを呼ぶ。
あきらかに小芝居なのだが、なのははそうは思わないらしくよりいっそう抵抗をする。

俺はそのなのはを止める為に言う。


「まて」

「にゃい」


もはやお手のだ。
なのはの餌付けは完璧だからね!

まさになのはは俺の忠実な猫となった。
だいぶ前からだけど。


「ほ、本当にすごいね、竜也君」


美由希さんが若干呆れている。
誰に呆れてるのかは分からないが……

言うことを聞かせられるようにした俺なのか、
それとも聞いてしまう、自分の妹になのか。

まぁどっちにしろ、俺のせいには変わりないだろうね。

自覚がある分性質が悪いんだろうな。


「にゃ!? ま、また竜也君にやられたの……」

「なんかもう反射的にできるようになってるんだな」

「た、竜也君のせいなの!!」


俺のせいだってよ、笑っちまうぜ。
前なんて、なのはに命令してくれなきゃ嫌なんて言って……ないか。

さすがにそれはないか、ははは。

俺もなんか毒されてるな。

たぶん、この間やったあのゲームのせいだろう。
確かジャンルは……うん、18禁だったのは覚えるよ?


「まぁ落ち着けって、なのは。な? お手」

「にゃい」

「なのは……手だしちゃってるよ?」

「にゃ!? ま、またなの……」


美由希さんの一言ですぐに我を取り戻しはしたが、
すこし、落ち込んでる様子のなのは。

まぁもう諦めるんだな。


「今日は、何か用事あるの? 竜也君」

「ん? 用事……ね」


今日の用事……何もないです、はい。
でも、そうだな。

あえて言うなら、占いの内容が気になるな。


「あのね、今日何もないなら一緒にあ─」

「ああ、すまんなのは。今日は用事があるんだ!」

「にゃ!? ちょ、ちょっとまって、竜也君!」

「じゃあな、なのは! アディオス!」

「……竜也君は意地悪なの」


最後は俺の悪口が聞こえた気がするが……
しょうがないな、今度この埋め合わせをしてやるとしよう。


占いの言うとおりに、駅にやってきたが、
俺はここで大きなミスを犯したことに気がついた。

それは、前のときにでも言えるのだが、


「駅で動物に会えるわけなくね?」


駅は普通パッとの持ち込み不可であることに。
よく考えれば、分かることだ。

そして、俺は再び絶望した。

そう、駅の中心で!


「あ、相変わらず、だね。竜也」


そこには、金髪の少女が……って!
これ前にもやったから中略。


「お、フェイトか。また会ったな」

「うん、待ってたよ」

「待ってた?」

「会える、気がしたから」


会える気がしたって、どんな運命ですか?
英語で言うならデスティニー!

あれなのか、あの素敵な云々がでるとフェイトに会うフラグなのか!?

占いってすげーな、おい!


「それで、今日は何の用事?」

「うん、あのね。今日も買い物、なんだけど。一緒に散歩でも、どうかなって」

「散歩?」

「竜也の、住んでる町紹介して欲しいな、って思って。迷惑、だった?」

「いや、別に暇だからいいよ。そう、良かった」


すごいホッとした表情を見せるフェイト。
よっぽど不安だったのかな。

フェイトの様子はいつもどこか儚げのような気がするし。


「じゃあ、とりあえず、海鳴市を散歩でもするか」

「うん!お願い、ね」


俺は先頭に立ち、海鳴市内を歩く。
フェイトは俺の後ろから、無言でテクテクと歩く。俺の服を少し握りながら。

俺が右端であるけば、右端に。
俺がパッとフェイトの方向に振り向けば、フェイトは、どうしたの? と言いたげな顔をする。

駅を抜け、ビルが立ち並ぶ市街を抜けた、あたりでフェイトが急に話しかけてきた。

「た、竜也は、犬がすきなの?」

「うん? どうしたの急に?」

「え、あ……この間のときに、お手とか言うから……」


どうやら、この間のことを気にしているようだった。
そういえば、フェイトは犬なんだよな。


「犬も好きだけど、猫も好きだよ。あと子狸」

「子狸って?」

「ええっと……説明しにくいから、無しで」


俺とはやての関係を説明しろと言うのは無理難題だ。
自分でもよく分からないからな。

はやて風に言うなら、命の恩人なんだろうけど。


「私にもね、アルフっていう犬を飼ってるんだけど……今度、見せてあげるね」

「そうか、よろしくな」

「うん!」


本当に嬉しそうに返事を言うフェイト。

それにしても、犬を飼ってるのか……

どうりで、俺と言ったら、わんというわけだ。
いや、たぶんそれが普通なんだろうけど。

猫にお手させてるからちょっとぶれてるんだよね、自分の中で。

でも、この間のフェイトもかわいかったな。

ん? これってフェイトも餌付けできるんじゃないか?

いやいや、待てよ、俺。
慌てるな、早計過ぎるぞ。

まだフェイトに会ったのは2回目だ。
やりすぎると逆にひかれてしまう。ここはもうちょい懐いてからだな。


「前に、私にお手って、言ったよね」

「あの時は急に悪かったね、ちょっと思いついたからさ」

「ううん、いいよ。竜也なら、嫌……じゃない」


俺ならお手をしても嫌じゃない……だと?
それは暗にお手をさせてください、と言ってるのか?

いや、それこそ暴走しすぎだ。
待て待つんだ!


「そうか……嫌じゃない、ね。じゃあ。またお手をさせてもいいの?」

「え……うん、竜也なら」


や、やばいです。
最後の「竜也なら」と言ったときに顔をすごく赤くしながら恥ずかしそうに言うフェイトがかわいいです。
ちょっと手をもじもじしながらだし。

これは……なのは猫に負けず劣らずの新しいペットの発見かもしれない。

もしかしら、近いうちに知り合いだけの動物園が開くのも夢じゃないかもしれないな。

猫・犬・猫・子狸・猫で。

あれ、ほとんど猫だぞ? まぁ気にしない方向で行こう。

名物はなのは猫の猫じゃらしショーになりそうだ。


「まぁいいや。とりあえずどこか生きたい場所はある?」

「ううん、全部竜也に任せるよ」

「そうか……」


たぶん、男にとって全部任せるよと言う発言は一番難しい問題だと思う。
ここいきたい、あれやりたい、なら好きにさせられるのだが、
任せきりだとね。なんか試されているような感じがする。

と言っても任せられたからには、なんとかエスケープだっけ?
違うな、エス……コートかな? しなくてはならない。

お勧めの場所とかでもいいのだろうか?

今もかなり歩いたから、そろそろ休憩したいんだけど……
本来なら翠屋がいいんだろうな。

お茶とか飲めるし。

でも……行っちゃいけないような気がする。

何が駄目かって、なのはを無視して遊んでるからな。
これがばれた日には……引っ掻かれるな、猫的に。

それにお金もない。

そうなると、お金を使わずに休憩できる場所になるな。
公園、かな?


「フェイト」

「なに?」

「海とか好きか?」

「嫌い、じゃないよ」


せっかく海鳴市に来たんだからね、海と言えばあそこしかない。
あそこなら休憩も出来るし、涼みにもなるだろうしね。


「OK,分かった。なら、ついておいで」

「うん」


そういうと俺の後を再びついてくる、フェイト。
それはもう、サッカー強豪国のマンマークと言ってもいいほど、ピッタシとついてくる。

周りから見たら、主人の後を追う、犬にしか見えないではないだろうかと思う。

そんな事を思いながら歩いていると思いのほかすぐについた。
思ったより俺の近所に来ていたみたいだ。


「すごい、綺麗だね」


俺的、海鳴市の名所、海鳴臨海公園である。
俺も実は夕日を見にちょくちょく来ていたのだが、人と来たのは初めてかもしれないな。


「どうだ? 本当は夕方の方が綺麗なんだけど」


ザプーンと波の音がする。
そして、僅かに吹く、潮風が夏の暑さを和らいでくれる。

海自体も綺麗であり、見ていてとても落ち着く場所でもある。


「ううん、これで十分だよ。ありがとう、竜也」


たぶん、今まで一番の笑顔を見せてくれたフェイト。


「今日は楽しかったよ、ありがとうね」

「あ……ああ、楽しかったなら俺も嬉しいよ。買い物もあるんだろう? 手伝おうか?」

「ううん、今日はここまででいいよ。じゃあ、またね」

「また、な」


そう返すと、フェイトは満足したのか、一人で歩いて行った。

今日フェイトに会ったのは、全くの偶然だけど、
また会うことは普通なら難しいけど、また会えるような気がする。

でも、その日はずいぶん先のような。
そんな感じがする。




あとがき

夏って言えば、海ですよね!
ほら、海が出てきたよ~、見に行っただけだけど……

作者のタピです。

相変わらず、海には入りません。
それはまたの機会ですよ?

まだまだ先もあるんですから^^


さて、フェイトの再登場でした。

フェイトの行動がかわいいと思ってくれたらこれ光栄
なのはの問題発言で楽しんでもらえたら最高の栄誉

ブラウザ変えたから上手く変換できないorz
あとがきはいつもアドリブですからねw

さて、内容についてですが、
竜也よ……店の空いてない時間にフェイトが待ってたと言ったんだから、
買い物なんて口向上だって分かれよ。

しかも、フェイトと別れた時点でまだお昼なのに……

まぁこれで夏休み編は終わりです。
なんとか30話までに原作に入れそうです。

でも、その前に……次回は番外かもしれません。
どんな内容かと言うと……作者の妄想の話です。

あれ? いつもと変わらないw


最後に
皆さん優しすぎ><
あんな駄文に心優しい感想コメントに感謝です。
もうすぐコメも200に行きそうです。

なのに、最近のとらハ版はレベルが高くて困ります。
こんな見衰えする作品があっていいのか……
鬱になりそうですorz



[16185] ─番外編2─「ひな祭りスペシャル」
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/04 00:11
番外編です。
本編とは全く、それは微塵も関係ないです。
もし、「本編のイメージを壊したくない」「動物は嫌い」と言う人は見ないことをお勧めします。

また、この作品はとてつもなく妄想なので、
気にしたら負けです。

では、どうぞ!

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────








夢、それは遠い夢。

こんなでだしだと、どこぞの人生と勘違いされるかもしれないが、
そういう訳ではないので、勘違いしないでくれ。

問題は、今、俺の状態でこれが夢なのか、はたまた現実なのかも分からないほどに
寝ぼけていることだ。

それでも、必死に起きようと、目を開けてみる。


「うぅ、やっぱり眠い」


無理だった。
目を開けようにも、非常に瞼が重たい。
俺の意思が弱いとも言うかもしれないが……

原因は分かってる。

寒いからだ。

ここのところ非常に冷え込む。
俺の部屋には暖房器具は完備されておらず、
また、あったとしても非常にお金がかかるので使われないだろう。

そんな俺の部屋には、こたつが配備された。

こたつ、それは日本のよき文化の一つ。
もしくは、俺の考えた三種の神器の一つだと思う。

他の二つは、パソコンとケータイだ。

こたつはこの二つと比べるとひどく見衰えするが、
庶民……つまりは俺のような貧乏人にとっては、もしかするとケータイやパソコンよりも神に近いかもしれない。

さて、問題はなぜ寒いと眠いからなのか、それはこたつの話と関係がある。

普通に寒いだけなら、眠いどころかむしろ目が覚めるであろう。
しかし、眠いのは寒い状況に投げ出されるからだ。

何が言いたいのかというと、寒いと言う現実から、こたつという暖かい幻想に逃げたいがために、
眠気が襲ってくるのだ。

人間、寒ければ行動したくない。

それは誰もが同意権という世界の真理を俺は知っている。
たまに、例外もいるようだが、そいつはきっと人間じゃないと思う。

よって寒いと眠くなるという事実になる。

しかし、このままジッとしていられない。
いや、ぐうたらしすぎると言うのは問題だと思う。

今起きなければ、確実にぐうたらしていただろうが、俺は偶然にも、いや必然だろう。
少し目が覚めた。

まぁ目が覚めた理由が、なぜか身体が重いからなのだが……

最初、意識が戻ってきたときは寝すぎでだるいのかと思ったが、
意識が回復してきている今、認識しているのは明らかに他の物体による重さだ。

目を開け、現実を確認する。
ここまでに至るまで、自分の中の時計ではだいぶ時間がかかったが、
寒さのあまり、夢心地のあまりだと、いいわけをしたい。


「……え?」


現実は時に背きたいものだと思う。
たぶんそれは、より受け入れがたい現実の時に。

俺が目を開け見たものは……


「猫が俺の脚に……乗ってる」


よく言うことわざ? で「猫はコタツで丸くなる」というものがあるが、
その光景が俺の目の前に起きているものだった。


「にゃ? にゃ~ん」


俺が動いたの気付いたのか、猫も目を覚ましたみたいだった。

どうやらこの、『白い』猫は俺によく懐いているらしい。
どこかで見たことある、顔だった。

いや、実際には猫ではないのだが、俺にとっては猫も同然の扱いをしてきた者だ。


「にゃ? どうしたの竜也君?」


たぶん、今日初めて聞く日本語だ。
安心した。

なぜだろう、それと同時にちょっと残念な気がする。


「いや、なんでもない。どうしてここにいるんだ、なのは?」


俺は未だこの状況が理解できないでいる。
一応ここは俺の部屋だ。

そして、俺の記憶ではなのはをここに呼んだと言う事実はないはず。


「それはね、竜也君」


なのはがジーッと俺の目を覗きながら、真面目な雰囲気を出しながら言う。


「竜也君がなのはの飼い主だからだよ?」


俺はまだ眠っているのか?
分からない、そのため漫画でありがちのほっぺをつねると言う行動をとってみる。


「痛っ……夢じゃない」

「何を言ってるの? あたりまえなの」

「そ、そうか。じゃあ、なのは」

「何?」


どうなんだろう、本当にこれは現実なのだろうか……

物は試しである。
ちょっとなのはに悪戯してみる。


「なのは、俺に抱きつけ」

「にゃ~ん!」


そうすると勢いよく飛びかかって、抱きついてくるなのは。
それはもう、喜びながら。


「うおっ!」


俺はあまりのことに驚いた。
いくら猫状態でもなのははここまではやらないと思ったからだ。

でも……これはいいかも。
なんというかふかふかと言うか、生暖かいと言うか……

これが本当の夢心地なのか……


「にゃ~ん、にゃ~ん」

「な、なのは、そんなに思いっきり抱きつくな」


気持ちがいいのだが、なんだかとても恥ずかしい。

そんな事を思ってると、なのはの勢いが、力が強かったので俺は倒されてしまった。


「あ!」


頭を打ったせいか、意識が……遠のく……



あの、なのはの夢。
いや、あれが夢かも現実かも分からないが、あの現象から一体どれくらい経ったのだろうか。
一体どれくらい寝ていたのだろうか。

ようやく、意識が戻ってきた。
今度ばかりは眠くてではなく強制的だったが……

さっきのなのはに抱きつかれたときの感触……未だ残っている。
どうなんだろう、これはやはり現実なのだろうか。

そんな事を思いながら目を覚ますと、そこには……


「金色の犬?」


どうなんだろう、このワンパターンな起き方。
ギャグを狙うにしても原点対象なのかもしれない。

まてまて、こんな意味の分からないことを考えるより確認することがある。


「フェイト……だよな?」

「ん? そうだよ、竜也」


あの公園以来、しばらく会うことはないだろう何て勝手に悟りながら、
こうやって会うと恥ずかしいものがあるな。


「そうか……フェイトか……」

「どうしたの、竜也。今日は可笑しいね」


フェイトに可笑しいといわれてしまった。
そうか……俺もまだ完全に目覚めてはいないようだ。


「いつもみたいに、お手、とか言わないの?」


目が覚めていたいのは、フェイトなんじゃないかな?
俺はそう激しく思う。

その言葉、フェイトにバットで打ち返したいと。


「いつも言ってたか?」

「うん! いつも、その言葉を言ってるよ。私も好きなんだ」


私も好きなんだ……お手がか?
どうなんだろう、やっぱりここは現実ではないのだろうか?

再びそう思う。
しかし、さっきもつねってみたが……

念のためにもう一回、つねる。

でも、やっぱり痛かった。

まぁいいや。
とりあえずは、フェイトのお望みのことをしてやろう。


「じゃあ、フェイト、お手」

「わん!」


フェイトの暖かい手がと俺の手が重ね合わさる。

普段、なのはにやるのとは大違い。
たぶん、それは俺の慣れの問題なのだろうが、フェイトにお手をするのは、何故か俺が恥ずかしい。

でも、これほどに新鮮にそして、気持ちいいお手もないのではないだろうか。
さすが、本家犬ということなのか。

そして、肝心のフェイトは実に楽しそうにお手をした後、
あるはずのない尻尾を振ってるかのように見える。

これを含め、やはりここは幻想なのだろうと思う。
なら、もう一回目を閉じれば、現実に戻れるのではないだろうか?

そんな根拠もないことが不意に頭をよぎる。
しかし、早く現実に戻りたいので、目を閉じる。

どうか元の世界に戻れますように……

強く願い、力いっぱい閉じた目を開けてみる。

空けた先の光景は……一面の草原だった。
いや、草原ではない。

どこかで見たことある風景。

どこかで……


「あ、やっと目が覚めたの竜也君」


長い黒髪の少女がそこにはいた。
根拠のない理屈だったが、元の世界に戻ってくれたのだろうか?

一応は今までに比べれば現実的ではあるのだが……


「すずか!」


恐る恐る、それでも確固たる意識を持って、黒髪の少女、すずかに話しかける。


「にゃに? 竜也君」


俺はもう元の世界に戻れないかもしれない……
すずかの一言で淡い幻想は消えていった。

いや、これ自体が幻想だとは思うのだが。

もうだんだんと慣れてきている自分がいるのも確かだった。
こうなったらあれです。
徹底的にぶち壊していきます。
俺の今までの世界のイメージを、すずかのイメージを!!


「猫による大合唱!はじめ!」

「にゃ~にゃ~にゃん、にゃにゃにゃ……」


すずか猫による独唱が始まった。
そう、独唱だ。

ふふふ、ここまで来れば今までのすずかのイメージはない。

なんてことを思ってると、猫が集まりだした。


『にゃ~にゃ~にゃん、にゃにゃにゃ……』


1匹や2匹じゃない。
10数匹、20数匹とどんどん集まってくる。


『『にゃ~にゃ~にゃん、にゃにゃにゃ、にゃ~にゃ……』』


いつの間にか猫による大合唱と化していた。
黒縁や、灰色の猫。また血統書つきっぽい猫から、野生の猫と思われるものまでいる。

そして、『白い』猫もいつの間にか混ざっていた。


「もう……どうにでもなれ」


俺の精神も限界に近づいてきた。
あまりの現実との違いにだ。

しかし、現実は残酷だった。
この発言と同時に、大合唱が止み、そして……


『『『にゃーーーーーー』』』


この圧倒的な数の猫に襲われた。
というより飛びついてきた……

息をすることができない……
そうか、これが噂の猫圧迫死。

俺はそのまま意識を手放した。




「はっ!」


再び目を覚ました。
どうやら悪い夢を見ていたようだった。

目を覚ました場所は自分の部屋。
そう、こたつのある部屋だ。

よくよく考えれば、おかしな話だ。
あんなことが起きるはずがないじゃないか。

俺もどうかしてたのかもしれない。

でも、あんなのはただの夢。そう思えばなんだかついさっきのことだったが、懐かしく感じる。

そして、


「残念だったなぁ」


なのは猫の抱きつき、フェイト犬のお手、すずか猫の独唱。
どれも夢に終わらすにはもったいなかったかもしれないと、冷静に考えればそう思う。



「何が残念だったのかしら?」

「ああ、夢の中でな……え?」


お、おかしいじゃないか!?
俺は夢から覚めた筈だ。

そうだ、これは現実のはずだ!
それなのに、目の前にいるのは……


「アリサ?」

「どうかしたのかしら?」


さもここにいるのが当然かの様なアリサがいた。
ここは俺の部屋だぞ。

アリサをここに呼んだ記憶はない。


「アリサ、何でここにいるんだ?」

「い、いちゃ駄目だったかしら?」


ちょっと悲しそうな目をして、その目にはすこし涙を浮かべている。

ど、どうすればいいんだ。
いつもならここで、「わ、私の勝手でしょ!? それともいたら迷惑かしら!」
と強気に出るはずなのに、このアリサはそうではなく、
本当にここが居場所であるかのように、そう見える。


「べ、別にいいけどさ。いやいいんだよ?」

「そう、ありがとう。竜也」


アリサの皮を被った偽者なんじゃないのだろうか?
それともまだ幻想の世界なのか?

そう思うほどに元のアリサの原型がない。
いや……やっぱりありえない。

素直にお礼を言うなんて。


「あのね、竜也聞いて? 今日ね……」


ちょっと恥ずかしそうに、顔を赤くしながら、今日の出来事を話すアリサ。

この様子を見てると普通に恋に焦がれた少女のようだ。

……え? いや、まさかそんなはずはない。

これは本当に現実なのか?
さらに、現実かどうかを確認する為に一つ、試してみる。


「アリサ」

「なにかしら、竜也」

「お手、やってもらえないか?」


やはり、これだろう。
例えば俺の知ってるアリサなら、怒り狂って怒るか、めっちゃ恥ずかしそうに、いやいやながらお手をするかだ。


「た、竜也のためなら」


顔を真っ赤にして、俺と目が合わないように顔をそらしながら言った。
そうか……人間死ぬときに走馬灯を見るという。

たぶん、それなのだろう。

俺は死ぬのかな?

もしそうならば、最後の記念だ。
もう、自重という枷をはずそう。

ああ、ありのままにやろう!


「お手!」

「にゃ……にゃん!」


顔を真っ赤にしながらも、ハッキリと言うアリサ猫。
これだけでも、十分にかわいい。

しかし、俺は止めない、もう俺を止められる者はいない!!


「よし、俺に抱きつけ!」


今日二度目の猫に対する命令。
俺はもう死ぬんだ、これぐらい夢を見たっていいじゃないか!


「にゃ~ん!」


アリサは勢いよく俺に抱きつく。
なのはと同じく、暖かく気持ちい。

しかし、それだけじゃなく、その金髪の髪からもとてもいい匂いがする。


「にゃーにゃー」


そう言いながら、スリスリするアリサ猫。
アリサも枷が外れたのかもしれない。

そのスリスリは少しくすぐったくそれでも……一生の思い出に残るものだった。

この時間を俺は死んでも忘れはしないだろう。

俺は、そう心に決心して目を閉じた。



そういえば、一匹何か忘れているかもしれないが、気のせいだろう。

「わ、私はおち扱いかいな!」

「…………」

「ほ、ほんまにこれで終わりかいな!? え、そんなの……なしや。
あれか、子狸が表現しにくいんか? そうなんやな!」

「…………」

「分かったわ。私も一大決心するで」

「…………」

「私を忘れないでぽん!!」




あとがき

や、やってしまったあああああああ!後悔はしてない。
作者のタピです。

今日はひな祭り。
うpしたのはひな祭り後ですが、書いたのはひな祭りの日なので問題ないです!
ということで、ひな祭りスペシャルです。

女の子がいっぱいだったでしょ?
あれ? 動物でしたか?

どっちでもいいです。

ええ、批難される覚悟はできています。
さぁどうぞいいなさい!

ただし、一瞬でもかわいいとか、萌えたら言わないでくださいよ?


作者は自分の夢、もとい幻想、あるいは妄想が書けておなか一杯です。
ごちそうさまでした。

たぶん、竜也がの動物王国作ったらこんな感じでしょうね。

次回は本編に戻ります。
この話がなかったかのように戻りますから、気をつけてくださいね。


最後に
たくさんのコメントありがとうございます。
ついには200コメですよ!?作者初ですよ、こんな快挙!

こんな作品ですが、これからも生暖かい目で見てもらえれば光栄です。



[16185] ─第27話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/05 22:55
季節は台風の季節と言われる秋。

台風と言うのは以外にも以外に、夏よりも秋のほうが多く来るのだ。
その結果、季節の中で最も降水量が多いのも秋らしい。

まぁこれらの知識は全部お天気番組の受け売りだが……


「みなさんも、運動会は終わったのですから……」


いわゆる、スポーツの秋の代表である、運動会はつい先日終わった。
競技内容などは去年とほぼ変わりはなかった。

先生いわく、1年生2年生3年生までは競技種目が一緒とのこと。
なので、俺も去年と一緒の種目に出場し、すずかやアリサも一緒だった。

ただ、なのはだけは今年は特に種目を選ばずに、全体と同じ行動をとっていた。
なのはにとって去年のことは相当ショックだったのかな?

まぁあんな公衆の面前で恥ずかしいところを見られたらしばらくは立ち直れないだろう。
実際に、今年の運動会前のなのはは何かに怯えるように、ずっと俺にピッタシだった。

一人になることを恐れるようなそんな感じだった。

トラウマならそうしたってしょうがないのにな。

まぁ俺としてはそのなのはをからかえて楽しかったので問題はない。

そして本番当日、学校の歴史上に残る大勝となった。
各種目で上位独占である。

去年もほぼ独占できていたが、今年はそれ以上のメンバーが揃ったと言うことなのだろう。

去年は失敗した代表リレーだが、今年も5兄弟が出た。
人数的に一人余るのでその一人は必然とあの「兄じゃ」と呼ばれている人物になり、
見事1位を獲得した。

そのときの「兄じゃ」の様子なんだが、嬉しいような悲しいようなそんな複雑そうな顔をしいていた。

まぁ何はともわれ、無事に終わった運動会。
俺自身も2連覇と言うことなので、この調子で連覇を続けたいね。

そう思うと……うん。
来年も頑張ろう。

来年はなのはも参加させてやろう。
そのためには今から訓練が必要かもしれないな!


「みなさん、これからは読書にも励みましょうね。なので、これから毎朝読書時間をとろうと思います。
ご自宅にある本や、図書館にある本を借りたりして、必ず明日もってきてくださいね。では、今日の……」


朝に読書の時間か。
つまりは先生は、読書の秋と言う流行にみんなにも乗ってもうじゃないか!
そのついでに、読書好きになって成績アップだぜ!

そう言いたいのかな?

俺としては、読書するのはやぶさかではないのだが、家にある本は読んじゃったからね。
また読み返すのもいいけど、どうせなら新しい本も読んでみたいな。

となれば、今日は早速図書館にでも行って─


「竜也君!」

「うぉ! どうした? なのは。そんなに慌てて」

「あ、あのね?」

「あ……ああ」

「読書って絵本でもいいのかな!?」


高町なのは8歳。
趣味読書、好きな本は、3匹の子豚です。とでも言う気なのかなこの子は?

まぁ先生も特にジャンルの指定をしてなかったら、いいとは思うけどさ。


「どうだろうな。俺はいいと思うぞ」


そうすると、なのははにぱーっと笑顔になり、
「今日は先に帰るね」と言って、またしても慌てた様子で帰っていった。


「なのはどうしたのかしら? あんなに慌てて」

「さぁな。きっと素晴らしいアイディアでも思いついたから忘れないように急いで帰ったんじゃないか?」

「なのはちゃん、いい本の思い当たりでもあるのかな?」


家にある、絵本の存在を今頃探してるんじゃないかな?


「まぁ今日は私達も塾があるから、先に帰るわね」

「ああ、そうか。じゃあ俺は今日はひとりで帰るのか……」

「ごめんね、竜也君。また、今度」

「気にしなくて結構だよ。じゃあ、また明日」


アリサたちと学校の校門の前までしゃべりながら、別れを告げる。

普段は最低でもなのはと一緒に帰るんだが、今日は先に帰られちゃったからね。
まぁ今日に限れば、一人のほうがいいかもしれない。

図書館で探し物があるときは、複数より一人のほうがやりやすいしね。
図書館までには微妙に距離があるが、今日は特に鍛錬もないので、その分の軽いランニング程度の気持ちで行けば、
30分程度でつくと思う。

あえて言うなら、制服で走るというのが気がかりだが……この際は諦めるか。

よし、そうと決まれば行動を起こすのみである。
荷物は5兄弟にうちに直接運ばせて……

よし、準備完了。


「では、ちょっくら走りますか!」



「ぜぇ……ぜぇ」


軽いランニング程度で済ますつもりが、やっていくうちにテンションも上がっきちゃって、
最終的には全速力になってしまった。


「た……タイムは……」


図書館の時計を確認する。
学校を出たのが3時ごろだったので……今は3時15分。

…………ちょっと頑張りすぎたかな?

制服の下もやや汗がにじんできていた。
今日が気温が低めで助かった。

もし、残暑でもあったら汗だくだっただろう。

まぁいいや。
本来の目的に戻ろう。

今日ここに来たのは、朝読書の時間に読む本だ。
家にないタイプのさらには、周りを圧倒できるような本がいいな。


「あ、あった! これなら読書に最適だ!」


この分厚さ!広辞苑並み!!
そして、この情報の量! 並みの本とは比べ物にならない!

『猫猫大百科~世界の猫たち~』かんぺ─


「だ・か・ら! 大百科を読むのは読書とちゃうねん!!」


バシっとハリセンで頭をたたかれた。
しかも、背後から後頭部を!

人間の大切な期間である、頭を攻撃するとは……いったい誰だ!

そう思い振り返ると、いつかの子狸がいた。


「子狸でもないわ! 相変わらず飛んだ頭してるんやなぁ」


よく見ると、それは子狸ではなく車椅子の少女だった。
べ、別に悪口言われて弱気になったんじゃないんだからね!


「それで、どうしてここに、はやてがいるんだ?」

「どうして……やって?」


急に気迫が出てくるはやて。
どうしたんだろう、はやての後ろに黒いオーラを感じる……
お、おかしいな……前に会ったときのはやてはこんな怖い子じゃないはず。


「……71回」

「え?」

「竜也君に会いたいがために、この図書館に来た回数」


俺に会いたいがために来た回数が71回……だと?
今日の日付から毎日一回だとすると……え?

いやいや、嘘だろ、はやて。


「毎日……来たのか?」

「そうやで、竜也君」


急ににこりと笑いながら、言うはやて。
しかし、目は全く笑っていなかった。

むしろ、さっきよりもオーラがあふれ出ているような気がする。

もしや……はやては暗黒面へと落ちてしまったのか!?


「あの別れた日。まるで、また明日にでも会えるさ、と言ってるかのように別れ、
私はその言葉を頼りに翌日、開館の時間から閉館の時間までずっと待ってたんよ?」


朝から夕方まで……はやてはずいぶん暇なんだな。


「竜也君、私は暇やないで?」


相変わらず微笑んでいるが、今ブチっという音が聞こえた。
確かに聞こえた。

何が切れた音かは分からないが、なんかとにかくまずい気がする。
そうなれば選択肢は……


「ああ、すまん! はやて、俺には用事があるんだ、じゃあな! また今度」


はやてに別れを告げ、そっこうで退避。
36 計逃げるに如かず、である。

はやては、車椅子。普通の人の逃げ足に敵うはずがな─


「はは……はっはっは! 甘いで竜也君! 逃げられると思うてるんか!?」


キキーっという音と共に、車椅子が綺麗な弧を描きながら、俺の逃走路をふさぐ位置に来る。
見事なドリフトとターンだった。


「今日はとことん、付き合ってもらうで!」


俺は初めて知った。
車椅子の可能性について。

そして、この八神はやてという人物の恐ろしさを。




「え……はやて様って一人暮らしだったの?」


俺ははやての家に連行された。
母さんにはすでに帰るのが遅くなると連絡はしておいた。

下手したら、生きて帰って来れないかもしれないけど、まぁそればかりははやて様頼みだ。


「その、はやて様っていうのはやめてもらえへんかなぁ?」

「何を言ってるんです、はやて様! はやて様がはやて様じゃなければ誰がはやて様なのですか!?」


若干面白くなってきているのはここだけの秘密である。


「竜也君……怒るで?」


にこっと言う擬音語出るような笑顔なのだが、どうしてなのかな?
黒オーラが常に見えるのは。

とっても怖いです。


「サー! イエッサー!」

「はぁ、分かればええんや。それで、私が一人暮らしのっ理由なんやけど……」


ちょっと暗い顔をする、はやて。
言うのを躊躇っているというか悩んでいる様子だった。


「まぁ竜也君ならええか。実はな……」


そこから、はやての昔話を聞かされた。
本当は聞かないほうがよかったんじゃないかと途中で思ったけど、
はやても悩んだ末に話しくれたのだ、それなら、その判断をはやてに後悔させたくない。

内容は、幼いころに両親が死んでしまったけど、父親の友人のおかげで、今は不自由なく過ごせていること。
もう、この生活に離れたから寂しくない、と。


「そういうわけや。満足したかぁ?」

「そうだな、はやて。嘘はいけないよ?」

「な、何が嘘なんや! どれも本当のことやで! 父さんや母さんが死んだのだって、父さんの─」

「そこじゃない! 寂しくないはずないだろ? 寂しくなかったら、毎日俺を探しに図書館なんて来ないだろ?」


寂しくなければ、友達になってくれる可能性のあるの人を探す必要がない。
不自由しないなら、家に出る必要はない。

それに……涙を我慢しながら語ってる、はやてに説得力があると思えないよ。


「あのな、はやて」

「…………」

「俺もな父さんを亡くしてるんだよ」

「え?」

「最近だけどね、だから、はやてほどじゃないにしろ、少し分かるよ。
寂しいと言うのも、自分が頑張らなくちゃと言うのもさ。」


父さんが死んで寂しかった。
これは間違いない。だけど俺にはそれを許してもらえなかった。

母さんがダウンしている間、俺が何とかしなくちゃいけなかったから。

気丈に振舞う……それは今の俺にも当てはまるかも知れないし、
それはアリサや、なのは、もしかしたらすずかにも当てはまるかもしれない……


「そう、やったんやな。なんや、気分悪いやないか。私だけが悲劇のヒロインみたいになって」

「気にするな、と言うのも無理か知れないけど、はやてに比べたら平和だよ」

「そ、それは関係ないで! 自分にとって大切な人がいなくなったんや、深刻度合いとか……
そんなのあらへんよ……なぁ竜也君」

「なんだ?」

「今は……幸せ?」


今は幸せか……また難しい問題だな、はやて。
幸せなんて昔と比べようがないけど、父さんのいたころに比べて……

いや、比べることが間違ってるのかな。

見るべきは今、か。
だからこそ、今は幸せか。

それなら、難しい問題だけど。
思うところはある。

アリサや、なのはやすずかがいて、こうやってはやてもいる。
それにフェイトだって。


「まぁ幸せなんじゃないかな?」

「そう、か。なら、ええんや。私も幸せやで、竜也君」


今日、初めてはやての純粋な笑顔を見た気がする。
黒いオーラなど纏わず、むしろ明るい、闇を照らすような……

本来はこういう表情をするのかもしれないな。


「あ、もうこんな時間かいな」


気付けば時計は6時を過ぎていた。
もう、秋も終盤なので外はもう暗くなり始めていた。


「そうやな、ご飯は食べていってや」

「え、いや、いいよ」

「駄目や、食べていかないと帰らせへんよ?」


こうなったはやては、頑固であると今日悟ったからな。
たぶん、これ以上の反抗も意味を成さないだろう。


「しょうがないな、食べていってやるよ」

「なんや、不服そうやな。よし! 絶対に美味いって言わせたるで!」


でも、何だかあれだね。
なのはたちにも知られず、母さんにも知られない、俺とはやて。
二人だけの空間って


「秘密の関係見たいやなぁ、私ら」

「奇遇だね、同じこと考えてたよ」

「ほんまか!? じゃあ……私らは秘密の関係やな。誰にも明かしたらあかんで」

「え? 友達紹介してやろうと思ったのに……」

「え……う、ううん、しばらくはこのままの関係で。だって、なんかこういうのって」


そうだね、秘密の仲って


「「ドキドキするね(なぁ)」」


俺はこの後、はやてに晩御飯をご馳走になって、家に帰った。
はやての料理の腕はかなりのものだった。

でも、俺も負けない。
今度は俺も何か作ってやるとするか。

そうしたら、料理対決できそうだな。
俺も鉄な人になれかなぁ。





あとがき

はやてはかなり好きなんですけどね、
実際に表現するとなると難しいです。

作者のタピです。

はやてのターン再びです。
難しいはやてですが、そろそろフラグをたてないと駄目ですよね?w

ヤンデレっぽいはやてが思い浮かべばこれ光栄
なのはの今後に注目してもらえれば最高の栄誉

なんか、はやてがヤンデレっぽいw
でも、こんなはやての方が好きです。
最近作者はなんかヤンデレが好きになりました。

まぁリアルヤンデレは知ってるから、二次限定ですけどね。
それでも愛は欲しいですけどね……

という訳で27話です。
次回は27.5話で本編ではありません。
でも、番外でもありませんよ?

そろそろ、なのはに着目が必要ですからね。
次はオールなのは視点になるかと。

なんだかんだで、なのはが好きです。
順位でいうならすずかとなのはが同率1位です。

やっぱりメインヒロインはなのはかなぁ……

最後に
この調子で書くとA’s編のころには50話超えてStSは100話超えますね。
そこまで続くのかなぁ……って前にも言ったようなw

以上が相変わらず長いあとがきでした。



[16185] ─第27.5話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/06 00:46
「それで、結局なのは何の本を持ってきたんだ?」


竜也君が、期待の念を抱いた眼差しでなのはを見てくるの。
なんでなんだろう。

なのはのなにに期待してるのかなぁ。

昨日は、今日の読書のために、家にある本を探してきた。
パッと思いついたから、忘れないうちにと思って急いで帰った。

頑張って探したら、出て来たのは、昔お母さんが読ませてくれた本。
それは、


「じゃーん! これなら文句は無いと思うの!」

「え? 『3匹の子豚』?」

「そうだよ? この子豚さんがとってもかわいいの!」


3匹のかわいい子豚さんが、意地悪な狼さんから頑張って家を守るお話。
涙あり感動ありの、素晴らしい本だと思うの。


「すごい……全く期待を裏切らないと言うか……うん。なのは、さすがだ」

「んにゃ? うん! ありがとう!」


なんかよく分からないけど、すっごい褒めてくれたの。
なんでかなぁ?
竜也君のことだから、絶対に変なこと言うと思ったのに。


「でもさぁ、なのは」


さっきの様子とは打って変わって、少し真面目な雰囲気を、漂わせる竜也君。
なのはの目じっと見てる。


「もっと大人になろうぜ!」

「にゃ? ど、どういうことなのかな?」

「まぁ……いいけどさ。そういうのは、なのはらしくてかわいいと思うから」


た、た、た、竜也君が、なのはのことかわいいって言った……
え? これって夢じゃないのかな?

竜也君ってなのはに会うたびに猫みたいな扱いをするから、こんな竜也君久しぶりなの!


「なに、顔を赤くしてるんだよ?」

「にゃにゃ!? べ、別ににゃんにもにゃいよ?」

「噛みすぎだよ」


うぅ、竜也君の不意打ちのせいなのに……
それに顔だって赤くしてないもん!

別に竜也君に褒められたってうれしくな……嬉しいかも。

最近の竜也君って、なのはの猫化のときにしか褒めてくれないの!
普通のときは全然ないんだもん。

もっと褒めてくれてもいいと思うの。
これだけ竜也君と一緒にいるんだから……


「どうしたんだ? なんかいつもより慌しいと言うか……」

「ううん、普通だよ。今日は一緒に帰るの」

「え? ああ、昨日の気にしてるのか。まぁいいよ。と言うかいつものことだろ。
今日は鍛錬もあるし、ちょうどいいからなのはの家に直接行くから」

「うん!」


今日は竜也君も一緒に家に来てくれるの。
いつも帰ると一人だから、とっても嬉しいの。

そういえば、竜也君ってなのはの家で二人きりのときだけは異様に優しかったような……
なんでなんだろう?

やっぱり、気にしてくれてるのかな?
去年の梅雨に竜也君に泣き付いちゃったのを、未だに……

ああ、そうなんだよね。
もう、竜也君と初めて会ってから1年半なんだ。

早かったような、遅かったような、とても不思議な感覚。

なのはにとって竜也君は、初めての男の子の友達。
あの時はまだ、アリサちゃんとすずかちゃんと仲良くなったばっかしで、まだ不安定だった。

ううん、もしかしたら今でも、竜也君から見れば不安定かもしれないけど。

でも、そんなときにやってきた、竜也君はとても優しかったの。

なのはが家に居場所がないことをしって、竜也君の家を居場所にしてくれたり。
本当に優しい。


「…………」

「ん? 読書中になんだよ?」

「にゃ!? なんでもないの」


ついつい、竜也君を見ちゃったの。
本人は優しいとか言うと否定したり、買いかぶりすぎだって言うけど、なのはは優しいと思うよ。

竜也君はよく、なのは達の、「高町家はお人よし過ぎる」って言うけど、それは自分もなんじゃないかなって思うの。


なのはにとって竜也君は──


「おい、なのは!」

「にゃにゃ!?」

「読書の時間が終わったぞ、というかその絵本ってそんなに読むのに時間かかるのか?」


あ、いつのまにか朝読書の時間が終わってるの……
た、竜也君のせいだよぅ。

竜也君がなのはの昔を振り替えさせるから。


「そもそも、絵本と言うところに突っ込むべきじゃないのかしら?」

「ほら、アリサちゃん。そこは……なのはちゃんだから、ね?」


どういう意味……かな?
なのはだから絵本でいい?

もしかして、今馬鹿にされてる?


「アリサもすずかもなのはに失礼だぞ!」

「そ、そうなの! 竜也君の言う通りなの!」

「この絵本のなのはがいいんじゃないか、みてて楽しいだろ?」

「確かに言われてみれば……」


珍しくなのはの弁護に入る竜也君。
なんかその後もアリサちゃんとしゃべってたみたいだけど、よく聞こえなかった。

でも、いつもの竜也君なら、


「はっはっは、なのは絵本かよ! はっはっは!」


とか言ってるに違いないの!


「なのはの中の俺のイメージって……」

「た、竜也君あんまり落ち込まないで」

「心中察するわ」


あれ? なんで竜也君落ち込んでるの……
しかも、アリサちゃんとすずかちゃんまで竜也君を励ましてるし!

なんだかんだで、二人を味方につけてるの!

竜也君はやっぱり油断ならないの。


「まぁいい。それで、なのは」

「なに?」

「なんで読書の時間中俺を見てたんだ?」

「にゃ!? そ、そんなことはないの」

「なのは、悪いけど私の場所からでもなのはが竜也を見つめてたのは分かったわよ」


や、やばいの!
そ、そんなに竜也君のことみてたかなぁ。
ちょっと前のことを思い出して、ついつい竜也君を少し、見てたつもりだったんだけど。

でも、これを素直に言ったら、竜也君に馬鹿にされるかも……だったら!


「ええっとね、それには理由があるの!」

「え? どんな?」

「た、竜也君のことが……」

「お、俺のことが……」

「竜也君ことが気になったから!」

「な!?」

「「え!?」」


う、上手く誤魔化せたの。
みんな驚いて開いた口がふさがって何も言ってこないの。

あ、チャイムだ。


「ほら、みんな先に戻ろう?」

「え……あ、うん」

「そ、そうね」


あれ、それにしてもみんな驚きすぎなの。
竜也君は妙に顔が赤いし、アリサちゃんはなんか慌ててるし、すずかちゃんなんて未だにフリーズしてるの。

どうしたのかな?


結局今日学校の間ずっとみんなそんな感じだった。
お昼ごはんで一緒に食べてるときも、みんな生返事しか帰ってこないし。

なのはの発言に問題があったのかな?


「じ、じゃあ。また明日な」

「え、ええ。そうね、また明日」

「また……ね、なのはちゃん、竜也君」

「うん、また明日!」


アリサちゃんとすずかちゃんは、アリサちゃん車で一緒に帰宅。
なのはは昨日ぶりに、竜也君と二人で帰宅なの。


「「…………」」


お、おかしいの!
いつもなら二人でしゃべりながら楽しく帰れるのに、すごく緊張すると言うか、
しゃべりにくいの……


「「あ、あの」」

「「先いいよ」」


だ、駄目なの。
なんか、ドキドキしてきちゃったし。
どうしたのかな、竜也君もへんだけど、なのはも変なの……

はっ!もしかしてこれが噂の……反抗期!?

竜也君は反抗期なの!?


「はぁ」


思い切り深いため息をした、竜也君。
そうすると、なのはの目を真剣に見てきた……

なんかその顔で思わず、なのはも緊張する。


「あのさ、なのは」

「なに、かな?」

「今日の朝のさ、俺が気になるってどういうこと?」

「にゃ?」

「ん? 本人でも分かってないのか?」

「何のことだかさっぱりなの」


朝の気になるっていうなのはの発言?
あれって誤魔化す為にいっただけだから、別にどういうも、何もないんだけど……


「はは、そうだよな。当たり前だよな!」

「ど、どうしたの、竜也君?」

「いや、なんでもない。というより、お前が悪い!勘違いしちまったじゃないか」

「にゃ? 勘違い?」

「まぁいいか」

「え? 意味が分からないの、竜也君!」

「ふん、自分で考えろ!」


そういうとどこか怒ってる感じにも見える、竜也君。
ううん、拗ねてる感じなのかな?

竜也君のこういう姿を初めて見るかもしれないの。

でも、どうして拗ねたんだろう。
分からないなぁ。

なんか勘違いしてたみたいだけど……

でも、こういう竜也君との何気ない会話は楽しい。
たぶん、竜也君と出会わなければ男の子とこうやって話す機会もなかったかもしれない。

実際、竜也君とその護衛って感じのあの5人組以外の人とは全然しゃべったことがない。

そういう意味では、なのはの世界を広げてくれた人。
そして、こんななのはに優しくしてくれる……


「どうやって苛めてやろうかな……」


優しくしてくれる……
あれ? 優しくない?


「やっぱり猫じゃらしかな?」

「にゃん!」


ハッ!ついつい反応しちゃったの。
わ、悪い癖なの……

な、なんでかなぁ。
どうして猫状態のときに竜也君の言うこと聞いちゃうんだろう。

あ、でも気持ちいいからいいかな。
……やっぱり駄目なの。

た、確かにお手とか言われるとよろこんでやっちゃうけど。
猫じゃらしあるとついつい遊んじゃうけど。


「そんなに嬉しいのか? じゃあ猫じゃらしは無しだな」

「にゃ~ん……」


え? 今日は猫じゃらし無しなの?
すごい残念なの……あ! ま、まずいよ、影響受けてるの!

でも、やっぱり残念……


「そ、そんなの落ち込むなよ……分かった! じゃあ今日は家でゲームの相手をしてやるよ」

「え、本当に?」

「ああ、たまには徹夜でやるか」

「うん! すごい楽しみなの!」


今日は竜也君の家でお泊りかなぁ。
うん、ゲームもすごく楽しみだけど、それ以上に竜也君と一緒に遊べるのが嬉しいな。
最近、放置されてた気がするし……気のせいだよね? 竜也君?
まさか、なのはたちの知らない女の子と遊んだりなんかしてないよね?


「なんか、今背中にぞくっと来るものが」

「どうしたの?」

「いや、何にも……じゃあ、そうと決まれば、今日の鍛錬も頑張るか」

「頑張ってね、竜也君。なのはも道場で応援するの」

「そうか、ありがとう」


竜也君の練習してる姿は実はアリサちゃんもすずかちゃんも見たことがない。
だから、なのはだけが竜也君のあの真面目な姿を見れる。

なんだかちょっとだけ優越感。
みんなの知らない、竜也君を見ることができると言う。


「竜也君」

「なんだ、なのは?」

「ううん、なんでもないの」

「意味分からん」


竜也君……本当に‘私’にとって特別で、大切な友達。
私に居場所を作ってくれて与えてくれた。

そして、名前を呼んでくれる。

とっても大切な友達。
だから私は密かに思う。

これからもずっと一緒だよ。





あとがき

なのは目線だけなので、言い回しとかそういうのに結構気を遣いました。
作者のタピです。

かなりキーになる予定の話です。
伏線と言うほどではないと思いますが、補足は下記にてさせてもらいます。

なのはっぽい文章をかけていたらこれ幸い
こんななのはがかわいいと思ってもらえれば最高の栄誉

第27.5話でした。

以下補足です↓

この回の意味は、なのはの心境変化と竜也への想いです。
好き嫌いとかではなく、大切な何かというのを目標に書きました。
上手く表現できていれば幸いです。恋愛はまだ早いですからね。

心境の変化の基準としては、しゃべり方と、一人称です。
最後の心の中での‘なのは’という一人称から‘私’への変化。
しゃべる時の一人称は次回以降もそのままですが、この変化の表すものは!?
と言う風に考えてもらえたら嬉しいです。

初めての主人公以外でのフル目線なので、おかしな点が多々あるかもしれませんが、
そういうところは指摘をくれると嬉しいです。

以上補足。

まぁこれはこれで書いてて楽しかったです。
なのはだと、ギャグをとりやすいというか、書きやすいんですよねw

書きやすさで言ったら、アリサと肩を並べます。

最後に
次回からはまた元に戻ります。
そして、やっと、やっと本編への道筋が見てきた!



[16185] ─第28話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/07 00:43
冬……冬と言うこの季節は俺にとって、どんな意味を表すのか。

冬は寒い。
これは誰もが思い当たる節があるだろう。
例外としては、南の地方。

それこそ、沖縄や小笠原諸島などに行けば暖かいかもしれないが。
しかし、それでもそこに住んでる人にとっては「冬は寒い」という感覚であると思う。

また、南半球や赤道沿いも例外としよう。
条件は日本国内においてということだ。

ここ、海鳴市にも冬は来る。
いや、むしろ他の地域に比べても寒い方に分類されると思う。

それが分かるのは、雪の量だ。

雪の量は降水量にも影響してくるが、
そもそも寒くなければ降らないため、よく雪が降る海鳴市は十分に寒い方だろう。

それこそ、真北。
北海道なんていう場所と比べれば、まだ暖かいかもしれないが、
全国的に見てという点においては、十分寒い。

まぁさっきから俺が寒い寒いって言ってるかというと。
いいわけだね、うん。

ここは寒いのだからしょうがないじゃないか!
だから、布団から出られなくたってしょうがないじゃないか!

そんな言い訳を自分にしてるんだ。

朝の鍛錬があるから、寝ているわけにもいかないし、
すでに習慣になってるから起きることが出来るから差し支えないんだけど。

そのぶん、授業中に


「ふわ~ん」

「はい、相沢君! そんなに大きなあくびを先生に見せないでください」


先生の言葉で教室のあちこちから笑い声が聞こえる。
まぁ俺が間抜けだったわけだからしょうがないけどね。

でも、実際に眠し、これぐらいは許して欲しい。


「兄じゃ、閣下が笑われてますよ?」

「ふむ、そうだな」

「これは……すべきですね」

「そうだ、今こそやつらに制裁を」

「いつかは俺が……」


どこからか、兄弟の不気味な会談が聞こえたような気がするけど気のせいだろう。
そういえば、どことなく最近のクラスが。
否、学校中が俺に対してよそよそしいような気がする。

なぜかは分からないが、みんな俺が通ると避けるというか、近づいてこない。

そういう人の目には大抵、恐怖とかの畏怖のようなものがあった。

どういうことなんだろう……
まさか、5兄弟が何らかのことをしているのだろうか……

まぁ気にしすぎてもしょうがないか。

俺は再び授業に集中……ではなく、睡眠学習をとることにした。
睡眠学習とは寝てる間に授業が終わると言う、近未来的、かつ最も効率のいい勉強方法だ。

次に起きたころには、授業はおろか学校も終わってるであろう。

お昼ごはんも食べ終わり、外とは打って変わって暖房の効く教室は絶好の睡眠学習日和なのだ。

なので、寝よう。
ああ、寝よう。

次起きるときは、学校が終わったときだ。



「──た……君」


どこかで、俺の名前を呼んでる人の声がする。
せっかく睡眠学習をしてるのに勉強の時間を邪魔しようとする、邪推なやつに違いない。

俺はそんな声には片耳の傾けず、再び夢の世界へダイブする。


「──也君!!」


今度はさっきより大きな声がする。
しかも、声と一緒に身体を揺さぶってるようだ。

正直鬱陶しい。
俺は眠いんだ。眠らせて欲しい。

なので俺は相手に俺の意思を伝える。


「5……いや、待て」

「にゃん」


これで、邪魔者は消えた。
あとは、ぐっすり眠るだけだ。

さぁ行こう……理想郷へ!


「にゃにゃー!」

「うわ!?」


顔を引っかかれた。
い、痛い。引っかかれた場所は微妙に赤くなって、水ぶくれのようになっている。


「痛いじゃないか!」

「起きない竜也君が悪いの!」

「待てといったじゃないか!」

「もう、50分待ったの!」


そういわれて、黒板の上にある時計を見返す。
時計はすでに4時を回っていた。

外は雪が降ってるせいか、雲が多いいため、すでに暗くなっていた。

どうやら、俺は授業終わった後も眠っていたらしい。
そのうえ、変な体制で寝たから非常に体中が痛い。


「もう、アリサちゃんもすずかちゃんも帰っちゃったよ?」

「あ……そうか、待たせて悪かったな、なのは」


なのはの親友達も帰ってしまったらしい。
そんな中、なのはは俺の言われたとおり起きるまで待ち続けてたのか。

なんというか……うん、ご苦労なことだな。


「ううん、なのはも竜也君の寝顔が見れたから別にいいよ」

「おまえはうちに泊まるときよく見てるだろ?」

「え……そうなんだけど、学校だと新鮮だったから」


学校と家とじゃ違うのか?
その違いはよく俺には分からないな。

あれなのかな、ランニングでもいつも同じコースを走るのと、すこし違うコースを走るのとで新鮮が違うのと同じようなもんなのか?

まぁそんなことはどうでもいいか。
そんなことより本当に暗くなってきたし、帰らないとな。

特になのは早めに帰さないと、鍛練が鬼モードになりかねない。


「じゃあ、なのは帰るか」

「うん!」


そう言い、ようやく腰の重い俺はって自分で言うようなことも出ないけど、数時間ぶりに、自分の席を立つと、ドサっという物が落ちる音がした。

そして、少し体が軽くなった気がする。


「あ、なのはがかけてくれたのか?」


音がした場所には、茶色いコートが落ちていた。
さっきまで意識がハッキリしてなく、ちょっと寝ぼけ気味だったが、体が重いと感じていた理由はこれのようだった。


「う……うん。寒そうだったから」

「そうか、ありがとうな」

「うん! どういたしまして」


なのはが飛び跳ねるように喜ぶ。
お礼を言われたのが嬉しかったのかな?

感謝してるるのは俺のほうなんだが……

なのはのこういう優しさって本当にいいよな。
たぶん、これがアリサとかが、なのはは優しいと言われる要因なんだろうな。

いや、俺から言わせればお人よしなんだけどな。
こんな時間まで待ってることも含めて。


「まぁいいか」

「にゃ?」

「ほら、帰るぞ」

「うん!」


なのはと二人で家に帰る。
今日は鍛錬もなく、なのはの家にも用事はないが、こんな時間なのでなのはを送って帰る。

自分で言うのもなんだが、俺なら大抵のことからなのはを護れるしね。


「そういえば、竜也君」

「なに?」

「もうすぐ、クリスマスだね」


クリスマス。
冬の3大イベントの一つ。

他の二つとは元旦とお正月だ。

去年のクリスマスはすっかり俺が忘れてた。
というより、プレゼントを準備していなかったせいでケーキを作る羽目になった。

なので、今年はすでに考えてある。

しかし……


「今年はアリサもすずかも家の用事なんだよな」

「そう、なの」


寂しそうな顔をするなのは。

なのはにとって友人と言うのは家族以上に大切な人なんじゃないかと最近思う。
もちろん、なのはは家族のことも大好きなのも知ってるが、
どうしてもそう感じてしまうのは、家で一人きりのなのはを知ってるからだろうか……


「まぁ俺がいるんだから、我慢しなさい」

「そう……だよね。うん、そうか! 竜也君と二人きりだもんね」


思い出したかのように元気になる、なのは。

俺は忘れられていたのか?
ちょっと俺が悲しくなるぞ……


「今年はなのはのプレゼントを用意するぞ!」

「え、本当!?」

「ああ、それの参考までになんだが」

「うん?」

「マタタビと猫じゃらしとかつお、どれがいい?」

「にゃー! 竜也君! またなのはを猫扱いして!」

「え? 猫じゃないの?」


驚きの真実だ!
なのはが猫じゃないなんてありえないよ……

俺の中ではすでにペットだと言うのに……

もしかしたら、俺の知らないうちになのはは猫じゃなくなったのかもしれない。
こうなったら……確認してみるに限る。


「お手」

「にゃん」

「おかわり」

「にゃい」

「俺の上を飛べ!」

「にゃ~~ん」


なのは猫は俺の言うとおりにすべて動いた。
どこからどう見ても、猫である。

ついでいうなら、俺の真上を飛んだときに、見ちゃいけないものを見たが……気のせいだろう。

そして、猫モードのなのはに改めて聞く。


「マタタビ欲しいか?」

「にゃにゃ!? にゃん!」


とっても嬉しそうな目をする。
その目はものすごく輝いている。まさに、純粋そのもの。

ついでに通訳するなら「マタタビ!? ぜ、ぜひとも欲しい!」だ。


「じゃあ、猫じゃらし?」

「にゃ、にゃい!」


遊んで欲しい……だと?
そういえば、最近猫じゃらしで遊んでないな。

しょうがない、今度相手してやるか。


「じゃあ、かつおは?」

「うにゃ~ん」


食べてはみたいが、欲しいほどでもない、ね。
なるほど、非常に参考になった。

なのはへのプレゼントは決まりだな。


「にゃ!? ま、また竜也君の言うとおりに……」

「別にいやじゃないんだろ?」

「え……そうだけど。でも、ううん。やっぱり駄目だと思うの。本人の許可なしにやったら」

「別にいいじゃないか。俺も楽しいし、なのはも楽しい。利害は一致してるじゃん」

「う~ん。そうなんだけど……」


やっぱり、なのはも楽しいのか。
かまかけてやったんだけど、上手く乗ってくれたよ。

さすが、なのはだ。話しやすいなぁ。


「なぁ、なのは」

「なに? 竜也君」

「一人って寂しいか?」

「にゃ!? ……うん、寂しいよ」

「そうだよな」


クリスマス、なのはは俺がいなければ一人だったからな。

そういえば、はやては!?
あいつは両親いないし、学校にも行ってないから友達が……

一人、か。

なのはに紹介してもいいけど……秘密の関係だからな、俺とはやては。
それに何より、紹介した後が怖いような……

さて、どうするか。

せめて、プレゼントぐらいは用意してやるべきかな。


「女の子ってさ、何をもらうと嬉しいの?」

「え? た、竜也君!?


なのはが驚いた顔をすると、次には希望に満ち溢れた顔になった。
勘違いしてるみたいだ。


「なのはにあげるわけじゃないぞ?」

「にゃ……がーん、なの」


言葉の通り、落ち込む様子のなのは。
まぁ期待させてっぽいからしょうがないかもしれないけど。


「なのはにはマタタビがあるって」

「え? 本当! ……って普通は喜ばないの!」


普通に喜んでたじゃん今。すごく嬉しそうにしてたじゃん。

そして、家に帰るまでこんな感じの話のループだった。
俺がなのはをから喜びさせて、落ち込ませるの。

まぁなんとも、なのはの顔の表情の変化が激しいので見てて楽しかった。
なのはとしゃべるのが一番和むかもしれないな。

それにしても、はやてか……う~ん。
まぁいいや、あいつに関しては深く考えたら負けだろ、ギャグ担当でしょ?
はやてにはケーキでも作って渡せばいいだろ。うん、そうだな・これで全部解決だね。




あとがき

アキバ行ってかなり疲れた状態で書いてたから
問題発言が多いかもしれないですが、気にしないでください。

作者の素が出てるだけですw
作者のタピです。

はやての扱い軽っ!まぁ竜也らしいかもしれないけどw
誰かのコメントでもありましたが、釣った魚にはしばらく餌はやらない。
それが竜也クオリティ!

5兄弟の暗躍を気にしていただければこれ幸い
なのはかわいいよなのはなら最高の栄誉


そんなわけで第28話です。
タイトルをつけるならクリスマス前夜です。

たぶん、本編介入前になるとほぼなのはとフェイト、たまにはやてといった感じで、
アリサやただでさえ出番の少ないすずかが空気になってしまいかねないです。
それでもいいでしょうか?
もっと書いて欲しい!というなら、たぶん書けますが……
そこらへんは、この作品を呼んでくれている、数少ない読者のみなさんにもご意見が欲しいところです。

そんなわけで次回はクリスマス。
さて、どうなることやらw

最後に
とりあえず、今日買ったギャルゲをクリアする為に今夜は徹夜ですw



[16185] ─第29話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/04/05 11:28
クリスマスイブ。

本来祝うべきはクリスマスだ。イブではなく。
そして、世間でもクリスマス、クリスマスというが、最も活気がある、つまりは最もお祭り騒ぎのような状態になるのは、
クリスマスイブのような気がする。

イブ明けの朝、もしくは夜は、本来のクリスマスの日だというのにどこと泣く寂しさを覚える。
それは、イブから次の日のクリスマスの間に、クリスマスの代名詞とも言うべきプレゼント交換が終わってしまうからだと思う。

だから、プレゼントを渡し終わった、クリスマス当日は盛り上がりがかけるのだと思う。
もっともこれは日本限定のようで、ニュースをとかを見るには海外ではイブはもちろん当日にも盛り上がっている。

いや、むしろクリスマスの当日こそ盛り上がっているのかもしれない。
国によってはクリスマスの日は休日になる。

それこそ国を上げての休日になる為からだと思う。

その点から見て、日本の行事は外国に比べて多々異端な部分があるが、まぁそんなの一般庶民。
俺たちみたいな平凡な市民には関係ないことだろう。

宗教的にも、日常的にもね。

そんなわけで、今日はクリスマスイブ。
なのはと二人でパーティ……というとなんだか悲しくなるから、
二人で乏しく貧しいながら幸せいっぱいのクリスマスを過ごそうと思ってる。

そんな事を持ってる中、ようやくピンポーンと言うインタホーンの音がする。


「はいはい、今から出ますよ」


インターホンを聞いて、ドアを開けるときの名台詞? を言いながら、ドアを開けると、そこには……


「メリークリスマス、竜也君」


そう言いながら片手にちょっと大き目の袋を持って、笑顔にこの日限定のお決まりの挨拶をする、なのは。
今日はクリスマスとあってか、テンションもやや高いようだ。

その証拠に、額には若干汗をかいている。たぶん、走ってここにきたのだろう。


「ああ、メリークリスマス。早く家に入れよ」

「うん、お邪魔します」

「お邪魔されます」


なのはを家に招き入れて、俺の部屋に行く。
俺の部屋はなんだかんだで、来客が多い─主にあの兄弟やなのはだが─ため、以外にも片付いている。
自分で以外と言う理由は、たぶんなのはたちが来ないなら、散らかっているだろうと思うからだ。


「う~ん、やっぱり竜也君の部屋は落ち着くね。なのはの部屋もいいけど、ここが一番なの」

「いつのまにか、お前の私物も増えてるしな」


なのはよくこの家に来るせいか、なのはの私物が増えていった。
おもにゲームとかだが、まぁそれ自体は俺のやるゲームも増えるから問題ない。

問題なのは、気がつくとおれが家に帰るころにこいつが部屋で遊んでいることだ。
図々しいとかを飛び越えて呆れてしまうよ。

自分の家があるだろうに……


「それでね、今日はクリスマスだよ! 竜也君!!」

「おう、だから?」

「まずは、プレゼント交換だよ?」


クリスマスの代名詞、プレゼント交換。
なのはは早速それをやろうとする。

普通はとっておきで後に残すものだと思うんだけど……

なのはがものすごくやる気なので水をさす気にはなれないね。


「じゃあ、まずはなのはから」


さっきまで片手にもっていた袋から、四角い箱に赤いリボンがつけられている、まさにTHE プレゼントとでも言うべきものが出てきた。


「はい、メリークリスマス」


今日二度目のメリークリスマス。
去年と同じような、もしくはそれ以上の笑顔で渡してきた。

去年ももらったが、やはりこういうものはもらえると嬉しいね。
今年はすずかやアリサからも、もらえないから余計にそう感じる。

母さんは当てにならないし、そう考えるとなのはのプレゼントが希望の光に見えてきたよ……
俺はもう駄目かもしれない、自分の飼ってるペットに希望を見出すとか……
いや、ペットだからこそいいのか? 癒されていいのか?

うーん、これはなんとも微妙なところだ。
まぁどちらにせよ、なのはからプレゼントをもらえたということに関しては本当に喜びだね。


「なのは、あけていいか?」

「うん! どうぞ」


あまりの感動に、中身を確認せざるを得ない。
そう思い、本人の許可をもらって、中身を取り出すと……


「これ、本当にプレゼント……なのか?」

「うん、竜也君にピッタシなの!」


なのはからもらったプレゼント……それは!


「『裸の王様」の絵本……だと?」

「うん、ぜひとも竜也君に読んでもらいたいの」

「それは、あれか! 俺はこの愚かな王様と一緒だといいたいのか!?
それとも、この本を読んで今の自分の醜態を見てみろと!」

「にゃ!? べ、別にそういうわけじゃないの……」


なのはには失望した。
なのはの中の俺ってどれだけ愚かで醜いやつに見えているんだ!?
しかも、また絵本って……まだ引き摺ってるのかよ!

ふん、まぁいいさ。
大体そんなもんだと思ったよ。

去年のプレゼント、箱の中に小石が入っててその中に手書きで「ぱわーすとーん」と書いてあった時点で、期待してなかったさ。

だから、俺はもらえたという事実のみに固執して喜んだのに。
頑張ってうれしがったのに……そうか、そうか。
なのはは俺をよっぽど怒らせたいらしいな。

ならば、見せてやる!俺の雷を!


「さぁこれが俺のプレゼントだ受け取れ!」

「にゃにゃ!? 投げないでよ」


俺もやや大きめの箱をなのはに投げつける。
もちろん、その中にはなのはへのプレゼントが入っている。

去年は忘れていてうかつだったが、今年はしっかり準備したからネタの仕込みは完璧だ。


「じゃあ、あけさせてもらうね?」

「ああ、どうぞ」


ふふふ、見て驚け、嗅いで慄け!
今回用意したものは、まさに、なのはにうってつけの物だぞ。

ぜひとも明日からはそれを‘着けて’俺に会いに来て欲しいものだ。


「にゃ! ね……猫耳と尻尾!? しかもマタタビまで! た、た、た……竜也君!」


顔を真っ赤にして怒り出す、なのは。
しかし、なのはの怒った顔など、大して怖くない。
それどころか和んでしまうので俺には効果がないようだ。

それに、そもそも俺にあのようなプレゼントするほうが悪い。
1年越しの復讐だぞ? これは。


「まぁまぁそう言わずにさ。ほれ、マタタビだぞ」

「そうやって、やってもい……みはな……いん……うにゃ~ん」


頑張って理性で抑えても本能はそうも行かないようだな。
てか、理性も抑え切れてないし。

すでに俺の手に持ってるマタタビに飛びついてるし!


「ほれほれ~」

「にゃーん、にゃにゃ!」


俺がマタタビを上下左右に動かすと必死に取ろうと動き回る、なのは猫。

実に楽しい。
ああ、何て楽しいんだろう!

分からないな、でも、うん。
とにかく、なのは猫で遊ぶのが楽しすぎる。

あ、いいこと思いついた。
今、俺すごいことを思いついちゃったよ!


「なのは、このマタタビが欲しいか?」

「にゃん!」

「じゃあ、その猫耳と尻尾つけてくれればいいぞ」

「にゃーん」


そういうとものすごい勢いで、その必殺アイテムを取りに行き装着する、なのは猫。

そこまで欲しかったのか……
というよりさっきまであったはずの理性が完全にぶっ飛んでいるなと再認識かな。

そんなことを考えているとあっという間に、着けて戻ってきたなのは猫。
そして、その姿……


「…………」

「にゃ?」


制服のようなワンピース型ではないにしろ、そこそこ短いスカートに、白を基調としたした服。
そこには、ワンポイントで赤が混じっているのだが。
そして、そこそこ短いスカートの下から尻尾が生えていて、本来大きめなリボンがついてるはずの所に、猫耳がある。
つまりは、今は完全に髪をおろした状態である。

そんななのは猫を想像してほしい。
そして、本来おもちゃであるはずの尻尾がなぜか、フリフリと動くのだ。

俺は死んでいいかもしれない……
この猫……かわいすぎる。

ああ、かわいい。
これ以上ないほどに、むしろ俺が異常になるほどそれは素晴らしかった。

もちろん条件どおりに、マタタビをあげる。


「にゃ~ん」


マタタビをあげたら、ものすごく喜んだ上に、そのお礼なのか、顔をスリスリ……
ままままままずすぎぎぎぎるうううううううううう。

やばい頭の回線が切れそうだ……。
落ち着け俺、あまり深く考えるな。

そして、なのはをみるな。
そう思いつつもチラッと見てしまう。

そこには、


「にゃ?」


?マークを頭上に出しながら、頭を横に傾ける仕草をするなのは猫。
その、なのは猫かわいすぎた。

俺のボキャブラリーでは、言葉に出来ない。
それほどまでのものだった。

俺の頭がどうにかなりそうだ。

よし、とりあえずだ。とりあえず、写真を撮ろう。

そうしよう、そうするしかない、そうしなきゃ駄目だろ、三段活用!


「なのは」

「にゃぁ?」


パシャパシャパシャと写真を撮る。右手にデジカメを、左手にケータイでだ。もちろん、ケータイは連射である。
これで完璧だ。これで一生俺は生きていける。
ああ、死ななくてすむんだ。そう思ってくるとどことなく感傷的になる。

そんなときだった、なのは猫の動きに変化が起きた。


「にゃはは、にゃにゃ~」


顔を真っ赤にして、ちょっとふらついているように見える。
その様子はまるで酔っているかのようだった。

その、なのは猫の手にはマタタビがあり。くんかくんか、したようだった。

そういえば、読んだことがある。
『猫の気持ち』に、猫はマタタビを嗅ぐと一種の陶酔状態になると。
また、その刺激は猫にとっては快楽に近いものだと。


「いや……まさかな?」

「にゃひゃ~ごろにゃー」


いやいや、ないだろ。
だって、なのはは猫と言っても、元は人間だぞ! 人間がマタタビで酔うなんて聞いたことがない。

でも、もし、本当に酔っているなら……まずいだろ。
何がまずいって、何がまずいか分からないが、とにかくまずいことになりかねない!

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、なのは猫は相変わらずふらふらしてる。
そして、


「ねぇ? 竜也君」


ようやく、猫状態から抜け出したのか、人間の言葉を話す。


「どうした、なのは。それよりも、大丈夫か?」

「にゃ? 何がかな、なのはこんな~にも、元気元気だよ~、にゃにゃー」


そういうとにゃーっと言いながら俺に飛びつき、抱きついて来た。
やはり、末期のようである。

しかし、抱きつかれたことによって、なのはの温かみが伝わる、それと同時に柔らかさも……す、すごく気持ちいのだが、
いやいや、このままでは男として問題だろと思い、なのはを振り払おうとした。


「竜也君はなのはの友達だからね。ずっとずっと、友達で一緒だからね」


なのはは酔ったせいか、俺に抱きつきながら寝ていたため、寝言のようだったが、確かに聞こえた。
ずっと友達で一緒だと。

全くこいつは……本当に寂しがりやだな。


「ふん、俺はお前の飼い主なんだから当然だろ」


俺がそういうと、寝ていて聞いてるはずないのに、少し笑ったような気がした。

本当は「二人で思い切り遊べないじゃないか、戯け!」と言おうとしたけど……
なんかいい雰囲気になっちゃったよ。

柄にもないこといったからかな?


とりあえず、なのはは当分起きそうににないので、高町家に運んでやった。

家においといてもいいのだが、俺一人だと心さびしいだろうからね。
もちろん、なのはは猫耳と尻尾をつけたまんまだけどね。

高町家に運んでいくと、美由希さんが家にいたため後を託すことにした。
この姿のなのはを見た瞬間、すっごい明るい顔になり、家族全員を呼びつけて、大写真会が始まった。

店の方はいいのかと聞くと、どうやら母さん一人で今日は切り盛りできそうなので、任せたとのこと。
まぁ母さんとしては、なのはが家族団欒出来るいい機会だと思って引き受けたんだと思う。
肝心のなのはは寝ているんだけどね。

この分だと、今日の母さんの帰りは遅いだろうなと思って店の方にいって聞くと、
今日は帰れないかもしれないと言っていた。

一人になったのは、なのはではなく俺のほうだったとは……かなりショックである。
あの、なのはに負けたとは。

若干悲しみに押しつぶされそうになりながら家に帰ると……


「あれ? 竜也君、おらへんのかなぁ」


家の玄関に不審者を見つけた。
これって青い制服の人を呼ぶべきですかね?



あとがき

作者のタピです。

何が言いたいかというと、悩み多きお年頃なんですよ!w
自分で書いてて楽しくてもそれを人様に見せられるようなものなのかと、これで本当にいいのかと思っちゃうんですよね。

まぁそんな作者のくだらない心の葛藤は置いといて(ぇ

竜也のターンです。否! 作者のターンです!


いい加減猫しつこいよ!と思ってもかわいいからいいかと思ってもらえればこれ幸い
猫耳尻尾のなのはのとてつもなくかわゆい姿を想像できたら最高の栄誉

というわけで第29話です。
本来なら、後1話で本編介入の予定でしたが、
あれま? 予想通り無理でしたね。でも、前から無理かもしれないと言っていたのでお咎め無しで

あ!ゆ、許して、投石器なんてもってこないで!孔明さんもビックリしちゃうから><
つまりは、フェイトの登場が先送りなんですよねw

まぁそんなわけで次回は……不審者のターン!
どうして彼女は竜也の家を知ってるんでしょうかねぇ?

最後に
まだ無印にも入ってないのに……
Sts編まで続けるべきなのだろうか……



[16185] ─第30話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/09 10:05
不審者、もっと大きくいえば犯罪者と言うのにはいくつかのパターンに別れていると思う。
大まかに言うならば、二つに絞られる。

一つ、それは自分の為に人様に迷惑をかけてしまう者。これは極めて単純にして明解である。
自らが喜びたいから、楽しみたいからという非常に自己願望、欲望まみれの自己中な発想だ。

この場合は悪意と言うものがあるわけではなく、たまたまその行為が他の人にとっての悪意へと繋がってしまったと考えるべきだろう。

もう一つは、人に迷惑をかける為に行為を行うもの。
これこそ、不審者や露出狂とかが当てはまるのではないだろうか?
いや、露出狂の場合は自分が良かれとやってる場合があるが……「生まれたままの姿が当然なんだ!」とかいいながら。

まぁ何が言いたいかというと、


「おい、そこの不審者」

「なんやて! 私は不審者やな─竜也君!」


自分の家の前でうろうろ、また、キョロキョロしている人物がいたらそれは確実に不審者かストーカーだろ。

まぁいい、それは置いとくとして俺には一つ疑問がある。


「なぜ、お前は俺の家を知ってる」


俺ははやてに家を教えてことはないんだけどね。
教える機会もなかったし、教える必要もないかなとも思ってたし。

何より、さすがに車椅子を家に入れられるほど大きくもないしね。


「なぜって、それは教えてもらったからに決まってるやろ?」

「は? 誰に教えてもらったんだ?」

「え? 竜也君に決まってるやないか!」


だから、俺は教えてないとあれほど……
一体どういうことなんだ?
俺が無意識に教えたとかそんなファンタジーなことはないだろうし……

それとも、警察まがいな探索能力でもあるんだろうか?


「ええっとなぁ。正確には偶然、ほんま偶然やで? たまたま竜也君が学校から帰る姿を見かけたから、
こっそりと後ろから着いて行ってな、家までご案内してもらったんよ」


捕まえる方ではなく、捕まるほうの行為だった。
しかも、不審者じゃなくてストーカーだった。


「はやて……それはす─」

「ストーカーや、言うんやろ? ほんまあっさいな、竜也君」


やれやれと言った表情したうえに、やれやれのポーズまでとる、はやて。
やれやれのポーズと言うのは、8×8のゲームのあのゴリラのアピールみたいなやつだ。

一つ間違えば、アピールと言うよりも挑発にしか見えないけどね!


「いやいや、浅いも何もこれ以上に適切な言葉ないだろ?」

「いや、竜也君は勘違いしてるで。これはなぁ、ちょっと人との付き合い方が不器用でねっちこくて根暗になってしまう乙女な心なんや!」

「それがストーカーの原型だよ!」


しかも、このはやてのセリフの雰囲気がどこかの漫画で読んだことあるような感じだよ。
あ、思い出した。タイトルで一文字間違える下ネタになってしまう、あの漫画か。

シリアスの後のギャグが最高なんだよね……ってそうじゃなくて!


「やっぱりストーカーじゃないか……」

「ええやないか、別に。それほど愛されてるってことやで」

「重い思いってことか?」

「……ああ、それでなぁ」

「俺の渾身のギャグをスルーするな!」

「いや、あれはあかんで、拾ったらこっちが火傷や」


せっかく駄洒落、もとし駄目なシャレを言ったというのに、スルーとは……
一番芸人が傷つくパターンですよ!

俺は芸人じゃないけどさ。


「いやいや、そこは拾って関西人の意地を見せてくれよ」

「あ……なるほど、そういう手があった! じゃあ、もう一回頼むわ」


滑ったギャグをもう一回やれとな?
はやては案外鬼畜なんだな……てか、もしかして怒ってるのか?


「怒ってないで、決して怒ってないよ? こんな美少女をほったらからして、ほかの女の子の友達と遊ぶような、竜也君に嫉妬もせぇへんし、
竜也君は今頃楽しんでるやろうなぁって思って少し悲しくなって涙流したり、そんなんやったら、家に直接殴りこんだろうか! なんて思ったりもしてへんよ?
ほな、続きを早くやってや、渾身の突っ込みをしたるで!」


怒りがところどころ……でもなく、思いっきりぶつけられてるし、隠す気もないようだ。
そんなはやての背中には黒いオーラが……
あれ? 俺ってはやてに会うたびにこのオーラを見ているような……気のせいですよね?

まぁいい、とりあえずはやての要望どおりもう一回同じギャグをやろう。
どんでんは漫才の基本だしね!


「はやての思いが重たいよ!」


少し変化をつけてみた。頑張ってちょっと工夫を凝らしてみた。
さっきより上手く言えたと思う。


「…………」


しかし、突っ込みが返ってこない。無言である。

あれ? 渾身の突っ込みがくるんじゃないの?
かなり期待したのに、はやては結局無言ですか?
無反応ですか? この後の収集はどうつければいいんですか!?

そんなことを思っている、はやてと目が合った。
はやては口も動かさずじっと俺の目を見て、目で語ってきた。

「で、この後はどうするんや?」と。

え、何?
俺のボケ待ちなの!? 俺が悪いんですか、そうなんですか!?
さっきの駄洒落はスルー!? というよりそのシーンすらもなかったような扱い!?


「はぁ、まぁええわ」


何でそこまで深い為息するの!
そして、どうしようもない奴といった目で俺を見ないでくれよ。
俺は普段突っ込みなんだから……いや、突っ込みでもないような気がするけど。

なんか、なのはの気持ちが分かったこの瞬間。
もっと優しくしてやるべきなのかな。


「それで、今日はクリスマスやで」

「え……そうだな、本当に今更だけどね」

「それでなぁ、竜也君が来るのが今か今かと準備した料理の数々が家にあるんやけど……」


何で俺が来るのが前提で作ったんだ、はやてよ。
誰も会う約束はしてないじゃないか。

しかも、この言い回しは明らかに、来いっと言ってるよね?


「だから、ほな早く行くで。それとも、まさか料理まで作らせといて来ない……何で言う気やあらへんよな?」


有無を言わさぬ、その気迫。
もはや言葉で来いって言ったしまったはやては、脅迫とか拉致に近いものがある気がしますよ?

俺に拒否権はないのでしょうか?


「常任理事国やないから、ないで」

「また、心読まれてるし」


それにそうなんだよね!
日本は常任理事国じゃないから拒否権ないんだよね!
ああ、いい社会の勉強になった……じゃなくてさ。

俺ってはやてに言い様に……まぁいいや。
うん、深くは考えないようにしよう。たぶん、考えたら傷つくし。自分が!


「じゃあ、家に行くで」

「ちょっと待った!」

「え?」

「家にちょっと忘れ物があるから」

「ほんまにか? そのまま家に引きこもるつもりやないんやろうな?」

「違うから安心して。本当に忘れ物だから」

「う~ん、分かった。じゃあ、待ってるで」

「ああ、悪いね」


俺はい家に置いといた、忘れ物を翠屋からもらったケーキ‘専用’の箱に入れ、それを大き目のバッグに入れて、はやての元に戻った。


「待たせたね」

「ほな、家にレッツゴーや!」


と、意気揚々に言うはやてだが、車椅子だから押していくのは俺のため、全くしまらない。
しまらないが、俺も結構ノリ気なので「よっしゃー」とか言いながら、全力全快ではやての家に向かった。



「お……思ったより……距離があった」

「だから言ったやろ? こんなに飛ばして大丈夫なんか?って」


俺の家から走って約1時間。
最初は猛ダッシュで走った為途中で燃料切れ。よって、俺は冬なのに汗を掻きまくりです。


「にしても、すごい料理だな、これ」

「そうやろ? すごい頑張ったんやで」


クリスマスと言うことで、張り切ったのか。
それとも、俺が来るから頑張ったのかは分からないが、とにかくすごい料理の数々。

七面鳥も当然の如くテーブルの中央にある。

明らかに二人で食べきれる料理の量じゃない。
これを一体誰が食べると言うのだろうか……


「そんなん決まってるやろ、竜也君や」

「ははは、食えるか!」

「え……私に作った料理が食べれへんと言うのかいなぁ、竜也君は」

「そう言う訳じゃなくてだな」

「あの日誓った、約束は嘘やったと! そう言うんか!」

「いつ誓った!? 誰と誰が何で、何を誓ったんだ!」

「私と竜也君が神父様の前で永遠の愛を誓ったんや!」

「いつだよ!?」

「前世で!」


前世かよ……前世と言う言葉でこじつけて、運命と言うつもりなのか?
そ、そんな都合のいい運命なぞ信じるか! 何より納得できない!


「まぁええわ、これは私の記憶やから」

「お前は転生者とでも言うつもりなのか!?」

「違うわ、前世持ちや! 都合のいい記憶もちとも言うかも知れへんが」


はなはだ迷惑の話だった。
しかも、都合のいい記憶もちって、それはただの捏造じゃないか。


「SSの世界ではご都合主義も転生者も捏造もあって当然の世界やで!」

「ここは現実です!」


まったくどこにこんなリリカルな発想を持つんだよ。
あ、リリカルって言うのは滅茶苦茶なって意味ね。

漢字にすると文字数が一緒だからわざわざ文字を変える必要ないね。


「もう付き合いきれない……いい加減飯食べようぜ」

「あ、そうやな。ごめんなぁ。竜也君としゃべるのが面白くてっついつい」


そういってもらえると嬉しいんだけど、しゃべって疲れたんだよね。
それにお腹も減ったきたし、ここについた時点ですでに6時回ってたからね。

高町家で少しのんびりしすぎたかも。
写真の予約に時間がかかったからなぁ。


「よし、じゃあ」

「うん、そうやな」

「「いただきます!」」


はやての手料理をご馳走になりました。
どれも、見た目に違わぬ美味しい味でした。うん、こんな豪勢なものをを食べるのもはじめてかも。

そんなことを思いながら、くだらない話をしながら食べたら、あっという間になくなってしまいました。
食べきれないと思ったんだけどな。はやての料理の腕は天晴れと言うことかな。


「「ご馳走様でした」」

「ぷはぁ、食べたで、もう何も食べられへんよ」

「そうか、じゃあ俺のとっておきも無理だな」

「え? とっておき?」


そう、とっておき。
前もってははやてにはクリスマスプレゼントを用意しようと思って作った、特性ケーキだ。
何が特性かって、ケーキの形が狸の顔の形だからね!

でも、残念だな。
はやてはもう食べられないと言う。

こうなったら、家にもって帰って一人寂しく食べるか。


「なんで、それをもっと早く言ってくれへんの!?」

「あれ? また心が?」

「もちろん、喜んで食べさせてもらうで」

「そうか? じゃあ」


俺は袋から箱を取り出し、ケーキをテーブルの上に置く。


「ほ、ほんまに狸の形やなぁ。しかも、かなり私に似てるし……これは皮肉のつもりなんか?」


はやても、俺に文句を言いながらも、喜びが隠せないようだ。
その証拠に目からは涙が……


「流してへんよ! 勝手に捏造すな!」


これだから、心を読む奴は。
せっかくいいシーンに見せようと思ったのに、俺の心の中だけでも。


「でも、嬉しいのは本当や。ありがとうな」


そんな、はやての目には涙が……
いや、今度は本当だよ?

マジで泣いてるんだって!


「あ、あのなぁ。私、ほらこんなんやん。学校は行けへんし、親には死なれるし。
だからなぁ、こういう機会はもう無いと思ってたんや、だから……だからなぁ」

「そうか、そうか、俺のやさしさにころっときたか」

「ははは、なんやそれ、せっかくの私のいいセリフが台無しや」

「いいんだよ、俺には軽いノリでさ。おまえもいつも通りの軽いノリでやろうぜ。
しんみりとか、シリアスとかもうお互いに、うんざりだろ?」

「ほんま……ほんまにその通りやな! よし、そうと決まったら泣くのはもう無しや!」


全く性格に似合わずに泣きやがって。
そんなキャラじゃないだろ? もう、一人じゃないんだしさ。


「よし、今夜は命一杯遊ぶか、はやて!」

「おう!! って、え? 今夜ってまだ平気なんか?」

「ああ、今日は泊まっていってもいいか? 家に誰もいないし寂しいんだよ」

「そ、それは別にかまへんけど……ほんまにええのか!?」

「いやいや、俺が泊まってもいいか聞いてるんだけど?」

「そ……そんなのあたりまえやんか! そうか、そうか竜也君は今日は私の家でお泊り」

「そうそう」


なんか、予想外にすんなりというより、はやてはむしろ喜んでいるみたいだが……まぁ泣かれるよりはいいか。


「ふふふ、一緒にお泊り。お風呂一緒に入って。一緒にお布団入って、一緒に寝て、一緒に……」

「ま、まて! 一緒にお風呂とか、一緒に寝るとかないぞ!」


おかしいだろ途中から発想が!
なんで、一緒にお風呂はいるんだよ……一緒に寝るとかも……


「え? 駄目やんか?」

「な、何でそれだけで泣きそうな顔になるんだよ!」

「駄目……かな?」

「うぅ……泣き落としなんて」


泣き落としなんて卑怯だ!
で、でも……くそ! お、男の子としての本能が拒否することを拒絶してる。


「わ、分かったよ。今日だけだぞ!」

「やったー! 友達とそうやって過ごすのが夢やったんよ」


どんな浅い夢ですか?
いや、はやてだからこそなのかもしれないけど……でも、それでもだよ!
俺にそんな夢を託すなよ。俺で叶えようとするなよ! いくら俺でもお風呂とか羞恥心あるわ!
まぁ布団は……たまになのはが潜り込んだりしてくるから、慣れてるけどさ。


「しょうがない、じゃあ、まずはケーキを食べよう」

「そうやな」


俺とはやてはその夜、一緒にお風呂を入り、一緒の布団で寝た。
なんやかんやで楽しい1日だったかもしれない。

去年とは違う、人の温かみと言うか、クリスマスの過ごし方と言うか、まぁそんな感じだ。
今年のクリスマスも楽しく過ごせたのでよしとしよう。


後日談。
竜也が家に帰ると、家のドアの前には5つのプレゼントとクリスマスカードが置いてあり、こう書いてあった。

「来年こそは閣下と一緒に過ごしたいです。5兄弟より」

すっかり忘れていた、彼らの存在。
ちなみにプレゼントは、新作ゲームカセット5本と言う、なんとも思いやりのある、真面目なプレゼントだった。





あとがき

ツイッター始めてみました。
暇なときに呟いてますが、反応がないと寂しいですよねorz

作者のタピです。
ちなみに、ユーザー名は作者名の @ を _ にしてくださいね。
フォローしてくれるとありがたいです。

まぁそんなことはさておきw

作品がマンネリ化してるような気がしたので、テンポよくを目標に書きました。
作者の渾身のギャグパートです。

笑ってもらえればこれ光栄
面白いと思っていただければ最高の栄誉

そんなわけで第30話です。
こんな作品ですが、もう30話ですよ。一ヶ月ぐらいですね、初投稿から。
こんな時になんですが、初投稿のときはもうそれは本当に適当と言うか、勢いだけで書いて、これでもかーと言う感じだったんです。今も近いものがありますがw
そのころから読んでくださってる人はいるのでしょうか?
もしいたら、本当に感謝感激です>< ありがとうございます。

皆さんのおかげで第30話、まだまだ続きます。今のところ全部オリジナルストーリーですけどね。
次回はようやく春が来ますよー!

最後に
皆さんに支えられて第30話。ブログで知っている方もいると思いますが、
こうやって執筆が継続できるのはひとえに読んでくれる方、感想を書いてくれる方のおかげです。ありがとうございます。

そして、これからもよろしくお願いしますね^^

相も変わらず自由奔放なあとがきでした。
P.S
次回の投稿はもかしたら明後日の可能性がありますのでご注意を



[16185] ─第31話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/11 10:17
海鳴市は今日も平和です。

忙しかったクリスマスから、はや4ヶ月ぐらい。
そうそう、クリスマスと言えば、なのははクリスマス以降、少し俺と間合いをあけていた。
理由はよく知らないが、なのはいわく、

「た、竜也君と一緒いると、危ないの……」

とのことだった。
全く何が危ないと言うんだ。俺は別に危険なことはしてないと言うのに。
むしろ危険なのは、なのはだろと言い返してやったところ、

「そ、そうかもだけど……本能が抑えられらないというか……もう! 自分でもよく分からないの!」

理性が本能を抑えられない。
それを、本能で悟ってるなのはは、色々と野生的だな。いや、猫的というか。
猫は本能で動く生き物だっけ? まぁよくは知らないけど、なのは猫を見てるとそう思えるね。

冬の間のなのはずっとそんな感じで、家に来ることも拒否って、俺は寂しかったので、そんな時ははやてと遊んだ。
はやての方も喜んで遊び相手になってくれた上に、よく家に泊めてくれた。

「竜也君ならいつでも歓迎や」

とは、はやてのセリフ。
泊まることが歓迎なのか、遊ぶことが歓迎なのか、それとも一緒にお風呂が入りたいためにとか、そんな考えがあるんじゃないかと思うと、
多々怖かったが、考えないようにした。現実逃避って便利だよね。

冬があけるころになると、なのはも普通に戻ったので、再びよく遊ぶようになった。
なんというか、今まで遠ざかってた分を取り戻すかのように、毎日遊んだ。

時にはゲームで、時には猫でという感じに。

そして、なのはは自分の家に帰らずに俺の家に泊まることが多くなった。
俺としては別にいいんだが、はて? あの高町家の一家はいいのだろうか。

自分の家のかわいい娘が、よくは知ってるもの友達の家に泊まるのだ。自分の家と同じ割合、つまりは5対5の確率で。

そう思ったので、実際に聞いたところ。

「え? 竜也君なら別にいいんじゃないかしら?」

「竜也君なら問題は無いと思うぞ」

「むしろ、なのはが羨ましいよぅ」

「なのはが望むなら……」

と、親公認、兄妹公認のようだった。
まぁそれでいいなら俺も、特に言うことはないが。それでも、なのはに一言だけ言いたい。
寝ている間に俺の布団に入り込むのだけは止めなさいと。それじゃあ、本当に猫じゃないか。

いや、ね。俺は別いいんだよ? 冬の寒い時期、布団一枚でも肌寒さを感じるから、ぽかぽかのなのはが入ってくると、俺は身も心も温かくなるから。
でも、よく考えてみようよ。朝起きて隣に見知りの女の子がいるんだよ。
しかも、「ふにゃ~」なんて言いながら目をこすりながら、「おはよう」と、さも当然のように言うんだよ。
なのはに違和感はないのかと。

何が言いたいかというとね、もしこんなのが恭也さんや士郎さんに知られたらと思うと、
夜寝付けなくなるんだよ! 恐怖で!

今のところは知られた様子はない、というよりお咎めなしだけどさ。

まぁそんな冬を送り、今はすでに春を向かえ、花粉症に苦しむ人々、上から目線で楽しく微笑む毎日。
俺は花粉症じゃなくてよかったと、心のそこから日々思う。

桜は絶頂期を向かえ、学校で、または通学路でピンク色の鮮やかな道なりが目に写る。
桜はやはり春というイメージをより強くする。そして、その桜と同じほどに張るというイメージを強くするのは、入学や進学。

そう、俺たち4人プラス5人仲良く3年生に進学した今日この頃。

なんだかんだ言っても、この9人、また同じクラスである。
毎回の如くそう思うのだが、やはり、後ろに強烈なアプローチをした人がいるのだろう。まぁさすがにもう驚いたりはしないが。いい加減慣れた。
たぶんこの調子で、来年もその数年後も一緒になるんだろうなぁ。

あ、でも、中学校からは共学じゃないな……その時はどうするんだろう。ある意味みものかもしれない。
それも、まだまだ先のこと、とりあえず俺は今をありのままに生きていくとしようかな。先のことを考えるのなんて、俺らしくないからね。



そして、今、母さんと魔法の練習中です。
母さんの四方から飛んでくる光の剣と、バインドをどうやってかわすか考えながら、またかわしながら、今日会ったことを振り替えってみる。
この、複数のことを同時に考えることを、約2年、毎日俺はやり続けてきたおかげか、今では練習中でも苦もなく、考えることができる。
それを含め、母さんのスパルタ的な練習のおかげなのだが、あえて感謝はしないでおく。
感謝すれば、この母のことだ余計に気合が入るというか、調子にのるだろう。
そして、さらに厳しい修行へと……そんなことは考えたくもない。

考えること自体はさっきも言ったとおり、苦もないが、今の現状、かわすこと自体は未だに非常に厳しい。
シールドやバリアで防いだり、一時的にバインドで動きを止めたりと工夫するのだが、結局は母のほうが力は上だ。
苦しい状況には変わりないため、今で一杯一杯だ。


「最近は剣術の方の鍛錬はどうかしら? これでどう!」

「くっ!非常に充実してるよ」


光の剣をかわしたところに、設置型のバインドが発動する。
バインドの発動をすぐに感じ、普段かわすよりも大き目の動作をすることで、バインドで動きを止めれること避ける。

最近の剣術の鍛錬。
走る、素振りなどの基礎鍛錬はいつも行うことだが、今は実践を重視した内容になっている。
どういうものかというと、簡単に言えば模擬戦だ。
御神は‘神速’という、流派の奥義? 的なものを使って戦う。
俺はまだ使えない、というよりはこの年で使うと体が壊れてしまう為に、教えてはもらえない。
しかし、俺はその‘神速’に勝てるようにしなくてはならない。模擬戦は単に経験を積むというだけでなく、結果というものも含まれているからだ。

そんな、人外とも言うべき剣術を使う恭也さんと勝負をしなくてはならないのだが、今の段階としては慣れることが何より大切だった。
自分より強い相手と戦うことになれること。‘神速’と言うスピードに慣れること。これが第一のようだ。

そして、俺はまだ第一段階。今から大体この段階を半年以上行っているのだが、難しい。
なんとか、目で捉えたりすることはできようにあった。単純な攻撃なら反応も出来ようになった。
しかし、一度フェイントや予想外のことをされてしまうと反応が出来ない。
何もかもが違うのだ、力が早さが技術が。

それでも恭也さんが言うには、この年では十分、むしろ上出来とのことだった。
自分が竜也君ぐらいのころは……と言ったふうに、自分の体験談まで話して励ましてくれるのだが、
それでも、俺からすれば悔しい。
どういう理由があろうと、やはり負けるのは性に合わない。

小学校卒業するまでには必ず勝つ!

これがいつの間にか俺の目標になっていた。

剣術とは打って変わって、魔法の練習。
大分前から、練習内容自体に変化はない。激しさや難易度こそ上がったものの、やることはかわりない。
反撃なし、防御あり、相手の動きを止めるのあり。撃墜されるまでひたすら避ける。怪我したら自分で治癒。
これの繰り返しだ。
最近はなのはが泊まることが多くなったので、練習の機会こそ減ったもの、密度は濃いものになった。
そして、今までの練習にプラスして最近やっていることがある、攻撃魔法の練習。

約2年、練習してきている防御や補助系の魔法に比べればお粗末なものだが、母曰く、この年齢では十分にやっていけるとのこと。
もともと、剣の鍛錬をしているので、運動能力は高い、よって近距離戦においては、特にやることがない。
基本的には身体強化ととっさの防御で事足りるからだ。
それこそ、ゼロ距離砲撃などを必要としなければ、これからさきもやらなくていいだろう。

なので、課題としては中距離~遠距離魔法だった。魔力による、魔法の攻撃になる為である。
この距離での攻撃といえば、メジャーなのが砲撃や射撃、広域攻撃らしい。

母さんが言うには俺の才能的には、どれもやってやれないこともない。だから、一点強化型より万能型を目指すべきだとのことだった。
俺は最初こそ、どれでもいいだろうと思っていたのだが、これが以外にも以外スッキリする。
砲撃魔法には相手をなぎ払うという爽快感。射撃魔法にはピンポイントに倒せるという達成感。広域攻撃魔法には相手を一掃する殲滅感があった。

どれも、まるでゲームの世界の攻撃みたいでやっていて楽しかった。
とはいっても、いまはこの練習場で母が一時的に出す仮想の敵しか倒せないのだが、それでも十分すぎるほどだった。
俺はこの結果、どれも手放しがたいので、万能型を目指すことにした。
実践に使えるようになるまではそこそこの時間がかかるらしいが、俺なら1年あればある程度は使えるようになるだろうと言っていた。
今から地道に練習をして、1年後が楽しみだった。

唯一、残念だと思うのが、これを実際に使うことができないことだろか。
この練習場からでて使うことはまず出来ないし、また魔法の世界に行けば使えるのだろうが、せっかくの交友関係が無くなってしまう。
何より、母が言うには魔法を使うには普通は管理局に入るらしい。
そして、管理局に入ってしまうと、優秀な魔導師ほど自由がなくなってしまうとのこと。
俺が優秀かはともかくとして、縛られるのは嫌だ。
なので、管理局にも入れないため、魔法の世界で魔法も使えない。

これらにより、俺が魔法を使う機会は失ってしまう。
母さんは前に、魔法によって将来の選択肢に幅が出ると言っていたが、これでは魔法が無意味に終わってしまいそうだ。

まぁそれでもいい。
魔法によって、厄介ごとや、面倒なことに巻き込まれるぐらいなら、いっそのこと、魔法は趣味の範囲にとどめるぐらいでも。
俺にとってはなのはたちがいる、日常のほうが大切だから。
何よりそっちのほうが数百倍楽しいしね。


そんなことを最近思っていたのだが、変化が起きた。

今日は5兄弟と遊ぶ予定があったため、なのはたちとは一緒に帰らず、兄じゃの家で遊んでいたときのことだった。


<……たす……けて>


助けを呼ぶ念話が聞こえた。
この世界、つまりは魔法のないこの世界において念話など普通は聞こえるはずもないものだ。
それが聞こえたということは、俺や母さんのほかに魔導師がいることを意味する。

他の魔導師の存在。
大抵の魔導師は管理局に入ってることから、管理局の魔導師と簡単に推測できる。
つまり、そこからでる結論は……

厄介ごとがこの町に絡んできたやがった!
厄介ごとは嫌だ。ああ、俺の日常を壊さないでくれ。心のそこからそう思うよ。

助けを呼ぶとか、いきなり危険度が高すぎだしね。
絶対に厄介ごとだよね、念話の声も今にも死にそうな虫の息だったし。

だから、俺の行動は必然と決まる。こんな念話は完全スルーに決まってる。
そして、以後魔力反応があっても関わらないようにしよう。

ああ、それがいい。
無駄な争いはよくないからね! うん!

俺は平和主義者なのだよ、ははは。


「どうしたの、竜也? 何か悩み事かしら?」

「ううん、なんでもない。大丈夫だよ、母さん」

「そう? 今日の念話のことでも気にしてるの?」

「え? やっぱり聞こえたの?」


やはり、母さんにも聞こえたらしい。
母さんもやや面倒くさそうな顔をしながら、少し遠いところみつめた。
なにか、思うところでもあるのだろうか。


「聞こえたわよ……それに見えるわよ、厄介ごとの兆しがね」


母さんは昔一悶着合ったようだから、余計なのかもしれないし、今までの人生の経験からかもしれない。
その点から見ても、
母さんにとっても今回のこの一件は非常に厄介なものに感じているのかもしれない。

だからら、たぶん、今お互いに思ってるだろう。
巻き込まないでくれ、と。

家は親子揃って事なかれ主義だから仕方ないね。
俺もよっぽどのことがない限り、巻き込まれようとも思わないしね。

必死に回避して見せるさ。

いざと言うときはあの5兄弟も利用しよう。
うん、きっと喜んで動いてくれるはずだ。





あとがき

魔法少女リリカルなのは……始まります。

作者のタピです。

本編突入です。
それにあたって、今までのおさらいとか、竜也の修行の状況のなどの確認。これからの、方向を指し示す回でした。
いわば、プロローグみたいなものですね。

ギャグ要素は皆無だった気がします。
文も説明的になって、ほのぼの感があんまりありませんね;
しかし、ここからが本番です。
色々と頑張っていくので、応援があればよろしくお願いしますね。

最後に
今日は投稿できないかもしれないといいましたが、今後の展開にパッと思いつくものがあったので、
何とか書けました。
さて、どのような展開になるかが、作者自身も楽しみです^^



[16185] ─第32話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/11 10:04
今日の朝のことだった。
それは運命的な、いや、何か必然的な神様的な出会いだったかもしれない。

朝……。
それはいつも通りに、朝の剣術の鍛錬の一環として町内ダッシュをしていた。
その、折り返し地点と休憩地点である、とある神社において俺は出会った。


「な、何これ?」

「どうかしたのか? 竜也」

「んん? どれどれ~、お! すごい綺麗な石だね」


運命なんて言い方は大げさだと思ったが、それを言うに値するほどの綺麗な石だった。
その色、見事というほどの綺麗な青。
形までもがしっかり整っていて、自然のものとは思えないものだった。


「まるでサファイアのようだね」

「サファイア?」

「うん、宝石の一種だよ」

「へぇ」


美由希さんが言ったように、もしかしたら宝石の類なのかもしれない。
いや、別に宝石じゃなくても十分に素晴らしいものではあるとは思うけど……

ただ俺がこういうのを集めるというのは、どうにも、抵抗があるというか、キャラじゃないというか、そんな感じがする。
だからといって捨てるのはもったいないし……
宝石といえば、女の人のプレゼントとか趣味だよな……
ん? プレゼント?

ああ、そうか。いいこと思いついたぞ。ふふふ、これは一石二鳥じゃないか?


「ど、どうしたの? 顔がにやけてるけど?」

「え? いや、なんでもないです」


どうやら、顔に出てしまったようだ。
あまりの、自分の妙案に笑みがというがまさにその通りに状況というところか。

しかし、ふふっ。今日の俺は冴えてるな。そして、運もいい。


「このことは、なのはとかには内緒にしててくれます?」

「え? それは別にいいけど、どうして?」

「それは……秘密です」


俺の思いついた、アイディアそれは……プレゼントだ。
はやてがこの間遊んだ帰りに誕生日がいつかを教えてもらった……というよりは、教えられたのだが。
まさに、ちょうどいいじゃないか。
拾った小石が、はやてへの誕生日プレゼント。
綺麗だから、まさか拾ったとは思わないだろうしね。
せっかくの発見を無駄にせず、なおかつ、はやてへの誕生日にもなる。
一石二鳥の最高のアイディアだね!

俺はこの後の鍛錬も、この小石の発見と自分の素晴らしいアイディアのおかげで、興奮収まらず、かなりハイなテンションで、充実した鍛錬になった。
そのせいか、かなり疲れた……いつも以上に頑張りすぎたかもしれない。


「お疲れ様。あのね、竜也君」


鍛練が終わり、高町家のリビングに戻ってくると、なのはが待ち伏せをしていた。
しかし、今の俺にはなのはに構う体力、気力がない。


「すまん、なのは」

「にゃ?」

「すこし、黙っててくれ」

「にゃん」


よし、これでひとまず、厄介なのは沈めた。
非常に疲れたので、しょうがない。
なのはの部屋で一度寝てから、学校行くとするか。
今日の学校はやばいかもしれないな、というよりこれは下手したらずっと眠いかもしれない……

まぁいいや、今はとりあえず、ね……よう。

俺はなのはの部屋につくなり、自分の身体をベッドに委ねた。

なんか、部屋に入ってから眠りにつく間際に、キャンキャンうるさかったような気がするけど、
たぶん、眠いせいで幻聴でも聞こえたのだろう。
もしくは、下の階でなのはが騒いでいたのかもしれない……。
そんなことを思うのも考えるのもなんだか面倒くさくなったので、俺は意識を手放す。

なのはのベッド、至極なり……なんか、いい香り、もするし……。





「竜也君おきてなの!」


どこか遠いところから声がしたので、聞こえたので、面倒だなぁと思いつつも、
少し起きようと試みる。


「こいつ、今日学校にきてからずっとこの調子よね」


目を開ければがらんがらんのクラスに、3人ほどが俺を囲んでいる。
囲んでいるのは、なのはとアリサ、すずかのお決まりのメンバーだった。

様子を見る限り、俺待ちのようだ。
待たせたようで、若干罪悪感があるが……その程度でへこたれる心は持ち合わせていない。


「ええっと、ここはどこ? なのはは猫だよね?」

「ここは学校なの! なのはは猫じゃないの!」

「お手」

「にゃん」

「……猫じゃん」


俺の言うことをしっかり聞き、「にゃん」といいながら、お手をする時点で誰が猫じゃないというのだ。
なのはには自覚というものが足りないようだ。
自分が飼い猫だという自覚が。


「ち、違うの!!」

「なのはちゃん、説得力ないよ?」

「す、すずかちゃんに突っ込まれたの!?」


珍しいすずかの突込みだった。
その切れ味はまさにジャックナイフ。親友を滅多切─


「竜也君、いま変なこと考えた?」

「いいえ、何も」


親友を褒め称え、神のごとき自愛……まさに、聖人君子のようだった。
すずか様ほど、素晴らしい人はいないね!この世界に。
全く、なのはも見習いたまえ。

にしても、今の一瞬の殺気はどうやって説明すればいいのだろうか。
すっごく怖かったよ。
最近すずかの出番少なかったのが原因なのだろうか?


「竜也……変なことを考えてたかしら?」


アリサに余計なこと勘付かれてしまった。
俺の素晴らしい条件反射が逆に仇となったらしい。


「違うの……なのはは猫じゃないの……。竜也君のペットじゃないの。竜也君はなのはの飼い主じゃない。
竜也君は友達、竜也君は親友。ご主人様じゃない……なのはは猫じゃない。なのはは人間!」

「ほれ、猫じゃらしだぞー」

「にゃにゃ!? にゃーん……はっ! やっちゃったの……た、竜也君のいじわるぅ」

「あんた、いい加減止めてあげなさいよ」


アリサがそんな俺となのはに呆れながら言う。
なのはは若干涙目で、俺のことをにらんで……見つめてくる。
というより、本人は睨んでいる様だけど、
だって、面白いからしょうがないじゃないか。
なのは猫見てるとすごく和むんだよ? 寝起きにはとても優しいんだよ?

そう、とっても寝起きには……あれ?

慌てて脳を起こしフル回転させる。
時間を確認する為、黒板の時計を見ると授業が終わってる時間になっていた。
いつの間にやら……全く記憶がない。

なのはの部屋で寝て、そのあと、学校行くときになのはに引きづられた、までは記憶にあるのだが、
学校にきてからのはサッパリだった。


「何慌ててるのよ?」

「いや、いつの間にやらこんな時間に……」

「今更何言ってるのかしら」


アリサは心底呆れたというような口調だった。

俺でもそう思うのは無理は無いと思う。
さすがにここまで寝たのは初めてだった。


「でも、先生に当てられたときはしっかり答えてたよね?」

「え? 本当?」

「うん……え!? 無意識だったの!?」


寝ている間に俺を当てる先生も意地汚いと思うが、
それに寝ながら答えた俺って……自分で自分が恐ろしいです。

いや、これが本当の睡眠学習?


「まぁね、俺ぐらいになるとそれぐらいできるんだよ」

「うぅ、なんか人外っぽいの……」

「猫に言われたくないな!」

「猫って言われたくないの!」


いや、もう無理でしょ? 猫以外のキャラで独立しようとするの。
なのはを猫以外で見るとしたら……いや、やっぱり猫にしか見えない。

ちなみに俺から、動物マスターというのを抜くと……皇帝?
それこそないだろ。


「ああ、そういえば、なのはの家でフェレット飼うんだってな」

「あんた、寝ながら話聞いてたのね……」

「なのはちゃんの人外っていうのも、意外と合ってるかもね」


今日のすずかはなんだか毒舌だな。
なんか、嫌な事でもあったのだろうか……それともここぞとばっかしにアピール?


「うん、ユーノ君っていうんだけど」

「猫がフェレットを……フェレット食べられるんじゃないか?」

「な、なのはは動物は食べないの!」


でも、昆虫は食べようとしたような……
この間、なのはを猫状態で散歩させてたら、獲物をみつけた目をして、蝶々を追いかけてたじゃないか。ぴょんぴょん跳ねながら。


「まぁいいけどさ、確かフェレットって飼うときは必ず予防接種が必要だったと思うぞ」

「そう……なの?」

「ああ、前に読んだ、『フェレットとねずみのイタチゴッコについて』に書いてあった」

「相変わらず、すごいの読んでるわね」

「竜也君らしいけどね」


この本が中々難しかったんだよ。
厚さ的には広辞苑並だけど、書いてあることが生態とか、飼い方とか、歴史とかそんなんばっかしで……
読んでてあまり面白くなかったけど、近い将来動物園をとなると頑張らねばと思って頑張った。


「どうなんだろう……今日家に帰って早速相談してみる、竜也君も一緒にね」

「え? ああ、俺は……」


今日の予定を思い出してみる。
この教室に5兄弟がいない、俺を待っていないことを考えると、遊ぶ約束はしてない。
そして、今日は午後の鍛錬はなし……だった気がする。
ふむ、これは早速、恭也さんに連絡を取って確認するしかないな。
そう思い、携帯電話を見ると、そこにはいつも通りに占いが出ていた。

そういつも通りに……


「ええっと、今日の占いは」

「占い……はっ! み、見ちゃ駄目なの!」


なのはの必死の呼びかけだ。
たぶん、今までの経験上俺がこうやって占いを見る日は自分たちをすっぽかしたのを思い出したからだろう。

しかし、なのは! すでに遅し、俺はもう占いを見てしまったのだ。
そして、その占いの結果は……


「なのは……」

「ど、どうしたの、改まって?」

「すまん!」

「あ、逃げた! す、すずかちゃんお願い」

「うん、分かった。」


なのはの声に一瞬で反応して、すぐさま出入り口、つまりは教室の前のドアを閉める。
しかし、教室には必ず二つドアがあるのをお忘れかな?


「甘いわよ! 後ろは確保したわ!」

「ちっ!」


さすがにここぞという場面においてこの二人の連携はすごい。
俺の切り替えの動きも決して遅くはなかったはずだが、退路をふさがれてしまった。

まさに、孤立無援。四面楚歌である。


「さぁ竜也君! 逃げ場はないの!」


確かに、この教室はこの二人によって密閉空間。
逃げ道はない。

残るは、窓のみだが……そう思い、ふと外を見ると、なにやら人影がある。
そして、その人影が……


「ふっ」

「な、何がおかしいの!」

「残念だったな、俺の勝ちだ!」

「「「え!?」」」


3人の驚きは当然のことだ。
俺はそれを言うが早いか、窓から外に飛び出したのだから。


「嘘!? ここは一階じゃないのよ!」


アリサの叫び声が上から聞こえる。
確かにその通り、こんな行動自殺行為、もとい自殺にしか見えないだろう、普通なら、しかし!


「お前達、俺を受け取れ!」

「「「「「イエス! マイロード!」」」」」


下で受け取ったのは、何を隠そう5兄弟だった。
俺がチラッと見た人影はちょうど5つあり、すぐに彼らのものだとわかった。
そのため、この行動を行った。

5人はしっかり俺を受け取る、そして、上を見上げてみれば、なのはたちの、してやられたの顔。


「ご無事ですか?」

「ああ、大丈夫。ありがとうな」

「いえいえ、我らも光栄です」


こいつらもドンドン悪化しているような気がしなくもないが、まぁ今回はそれに助けられたので、気にしないでおこう。


「また、よろしくな」

「「もちろんです!」」

「残念だったな、なのは!」

「にゃー! 今度こそは今度こそはと思ったのに!」

「やるわね、竜也」

「窓からは予想外だったかな」


「俺の勝ちだ!」と悔しがる3人を一瞥し、彼女らを背に俺は駅へ向かった。
駅へ行く理由は決まっている、例の占いであれが出たからだった。

『駅で素敵な動物とのふれあいが』

もう何度目か分からない、この占いの結果に俺は期待をしながら駅へ走る。




あとがき

よし、この暴走感が戻ってきた!
作者のタピです。

ということで第32話です。
いい感じに壊れてきましたか? どうでしょうか?

相変わらず勢いの作品ですが、はて? これでいいのだろうかw
色々と伏線張ってない気もしなくはないのですが、う~ん。
まぁなんとかなりますよね。

最後に
この作品はギャグです!
深く考えたら負けなのですよ!



[16185] ─第33話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/16 12:05
時間は放課後、いや、具体的に言えば夕方前。
俺はなのはたちの魔の手から、5兄弟との連係プレーで見事に逃げ。
占いの言った通りに、再び、否! 三度この地へ戻ってきた。

そう、ここは駅の改札口前なのである。
前回から思ってるのだが、駅で動物って普通に考えたらありえないだろ。

駅構内って普通は動物禁止なんじゃ……他の人にも迷惑かけかねないしね。俺は迷惑だとは思わないけどさ。
なんてったって動物大好きだからね。

何はともわれ、すでにこの駅に来て、5分が経過したわけだが……
一向に俺の目的の人が現れる気配がない、さすがに3度目はなかったのかな?







竜也の住んでる町に引っ越してきた。
この町に来た理由は、お母さんがジュエルシードっていう、ロストロギアを集めて来いと言ったからなんだけど、
行けって言われた日より、早く着ちゃった。

久々に達也に会える気がしたから。
う~ん、これが女の勘ってやつなのかな?


「フェイト、その竜也って奴はどんな奴なんだい?」


私の使い魔のアルフが疑問の念を持って、私に話しかけてきた。
竜也がどんな奴か?


正直に言うと私にも分からない。
初めて会ったときは、駅の真ん中だ頭を抱えながら座っていた。
その時はお母さんに頼まれて買い物しにこの町に着たんだけど、どこに行けばいいか分からなくて私は困ってた。

そんなときに、同年代くらいの子を見つけて、勇気を振り絞って声をかけてみた。

そしたら、思いのほか優しそうな子で、丁寧に道を教えてくれた。
私は、私以外の同じくらいの子と話をするのが初めてで、どうすればいいか分からなかったけど、
実際に話してみれば、とても優しかった、それに、私の名前を言ってくれた、竜也は名前を教えてくれた。


「優しい子、だよ」

「ふ~ん、まぁフェイトが言うならそうなのかもね」


2回目に会うことになったのは、それより大分先のことだった。

その間もすごくお母さんは、厳しくて怖かったけど、竜也としゃべったことを思い出せば頑張れた。
次に会う日までは、次に会うときのも笑顔で会いたい、その一心だった。

だから、買い物をまた頼まれたときはすごく嬉しかった。
買い物に行く時の日、竜也に会いたくて、家を飛び出すようにこの街に来た。

今考えれば、馬鹿なことだったと思う。
竜也の住んでる町は知ってても、住んでる場所も分からない。
かといって、連絡手段を持っているわけでもなかったから、会える可能性のほうが低かった。

だけど、会える気がしたのは本当。
今日の今だって、また竜也に会える気がしている。

でも、それ以上にに……忘れられてるんじゃないかと、恐怖でいっぱいだった。
ううん。今も怖い。前に会ったときから、またずいぶん時間が経ってしまったから。

それでも、2回目のときは覚えていてくれた。
竜也を駅でまた見つけて、勇気を振り絞って、恐々と声をかけてみた。

そうしたら、竜也は私の想いとは裏腹にすごくいい笑顔で、私の名前を呼び返してくれた。
こんなにも嬉しいことはなかったかもしれない。
昔……昔、お母さんが私に微笑んでくれていたような、そんな幸せの香りがした。

だけど……私を見て時々悲しそうな目をしてるといもあった、なんでだろう?

でも、そんな竜也にもう一度。もう二度、もう三度と私はまた会いたい。


「でもさぁ、その竜也って魔導師かも知れないんだよね?」

「うん、確かに魔力を感じたから」


そう、竜也からは魔力を感じた。
この世界の人間は普通は魔力を持っていないと調べた結果が示していたのに、竜也は魔力をもっている。
これは1回、2回と会ったことで確証がもてる。
それに……


「意図的に隠してるみたいだった」

「何か厄介ごとでも抱えてるのかねぇ」


普通、魔力があればすぐに感じることができる。でも、竜也の場合は、感じられなかった。
もし感じられていたならわざわざこんな駅に来なくても探索魔法ですぐ見つけ出せる。
しかし、それが出来ない。

なぜか? 魔力を何らかの方法で隠しているから。
さすがに竜也のすぐ近くに居たら気付いたけど……でも逆に言えば、そこまで近くに居なければ認知できないほど。
これは何を意味してるか。
ただ魔力をもっているならいい、たまにそういう人はいるらしいから。
でも、意図的に隠されているのなら意味は変わってくる。竜也が魔導師である可能性、これが浮上する。

別に竜也が魔導師でも構わない。
ううん、私としてはむしろ嬉しい。だって、そうすれば一緒に練習とかできるから。
他にも、一緒にお母さんの探し物を探してくれるかもしれない。

そういえば、この間読んだ本に
「好きな子との距離を縮めるには同じ趣味を持つのがよい」って書いてあったなぁ。
魔法をお互いに使えるんだから、あってるよね?

そうだとしたら、もっと竜也と仲良くなれるのかな……そしたら、嬉しいな。

そうしたら、竜也をお母さんにも紹介しよう。
うん、きっとお母さんも喜んでくれる……と思う。


「まぁいいさ。フェイトの友達なんだろ?」

「うん、初めての友達だよ」

「じゃあ、きっといい奴だ。あたしもそいつには感謝しないとねぇ」

「なんで、アルフが感謝するの?」

「え? それは……ほら、こ、こんなにもフェイトが笑顔を見せてくれるようになったからだよ」

「私……笑ってる?」

「なんだ、気付いてなかったのかい?」


そうなんだ。
うん、きっとそうなんだ。竜也は私にとって─
そんなことを思っていると、竜也が駅に着たみたいだった。

あ、キョロキョロしてる、なんか竜也の慌てる姿って新鮮かな。あれは、私を探してくれているのかな?
分かるようにもっと近づいてみよう。

そう思って、そろそろと竜也の後ろに回る。
竜也は一行に気付かない。

今度は竜也の顔を後ろから、じっと見つめる……

5分が経過した。


<まだやってるのかい、フェイト>


痺れを切らしたのか、アルフが呆れ口調で念話してくる。

まだやってるのって、竜也が私に気付かないんだもん。
ひどいよ……こんなにも近くに居るのに気付かないなんて……

そう思うと思わず涙が流れてしまった。

そのとき目の前の人がこちらを振り向き、目が合った。







フェイトまだかなぁ、なんてのんきに思いながら周囲を見渡すこと約5分。
今更だが、俺の後ろから熱烈な視線を感じた。

最初こそ、なんかほんわかした雰囲気の目線だったが、今となっては軽く殺気じみているような……
いや気のせいだろう、殺気を放つ人なんて早々多くない、と思いたい。

たぶん、この思いは無意味なんだろうけどね!もう諦めてるけどさ!

おおっと、こんなこと思ってる場合じゃない。
パッと後ろ、つまりは熱い視線がする方向も見る。

そこにはきんぱ─もういいか。フェイトが居た。
しかも、目が合った。

そして、フェイトの目はなぜか涙で満たされていた……って、え?
どうして!?

今会った瞬間、というか何で泣いてるの、俺に会ったのがそんなに嬉しかったのか?
あ、それはないか。

困惑した。訳の分からないこの状況と周りの雰囲気(駅に居る人がな泣いているフェイトをちらちらとみる)に
俺は更なる、困惑に陥った。

ど、どうすればいいのか!?
と……とりあえず、泣いてるフェイトを宥めなくちゃ。


「フェイト?」

「た、竜也!」


さらに涙が増量した。何ゆえ!?
本当に困った事態である。俺がそんなふうに右往左往してると、どこからともなく声がした。


<フェイトはあんたに会えて喜んでるんだよ>

<それは本当か?>

<使い魔のあたしが言うんだから間違いないよ>


そうか、使い魔が言うなら間違いなんだろうな。
俺に会えて喜びで、涙か。

くぅ、泣かせるねフェイト! 俺も嬉しいよ。

俺もあまりの感動の為、いや、感動の興奮のせいで勢いに任せて、フェイトに抱きつく。


「ありがとうな、フェイト」

「……!? うんん、竜也。私こそありがとう」


フェイトはそういうと強く抱きしめ返してきた。
なのはとは違う温かみだった……なんか、これって癖になりそうだね。

この後はお互いに無言で抱きしめあった。
駅の真ん中で!!


<ええと、非常にいいにくいんだけどさ>

<<何?>>

<あんたちいつまでそうしてるつもりだい?>


いつまでそうしてる?
ふん、確かにいわれてみれば、駅いる人々は節々に俺とフェイトをみるが、別に恥ずかしいとは思わないね。
いや、実際には恥ずかしいが、それ以上にこの温かみが捨てがたい!


<私は……別に>

<俺も同じく>

<あんたら……>


でも、そうだね……そろそろ、物事を進めないと尺が……じゃない。
時間が経っちゃうね。

残念だが、非常に残念だが、この抱き心地から開放されるとしよう。
そう思い、抱き合うのをやめる。


「あ……残念」

「何か言った?」

「ううん、なんでもないよ」


フェイトが少し残念そうな顔をした。
気持ちは一緒だったということか。

しかし、よくよく考えれば今まですごいことをしていたような……気にしたら負けか。
気のせいか、殺気も多い気がするがそれを含め気にしない。


「あ、なんか自然な流れでこんな感じだけど、何でフェイトはここにいるの?
また買い物か何か?」


ずっと放置していた問題。
いや、放置をせざるを得ない状況だったからしょうがないが、フェイトがここにいるのが不思議だ。
それ以上に、あの占いが当たるのが不思議なんだが。


「引っ越してきた」

「へぇ、この町に?」

「ううん、遠見町に」


今までどこに住んでいたかは知らないが、遠見町といえば、ここ海鳴市の隣町だ。
フェイトは、わざわざそれを伝えに会いにきてくれたんだろうか?

いや、そもそも会いにきたのか?
そこからして疑問なんだが……

フェイトがさらに、続けて話す。


「家に来る?」


この俺に断る理由があるとでも?
答えはもちろん……




「ほわぁ、すごいな」

「そう?」


フェイトの家は、マンションだった。
しかも、そこから見る夜景かなりの絶景。しかも、この部屋でしばらくは一人暮らしだという。
このブルジョアめと思ったのは当然のことなのだが……

なぜ、母親が居ない? それに学校は?

色々と疑問が思い浮かぶ……前から思っていたことだが、フェイトにはなぞが多い気がする。
あ、でも、その謎のひとつも解消された。

フェイトのとなりにいる、アルフである。
どうやら彼女はフェイトの使い魔とのことだった。

そうか、さっきの天の声も彼女だったのか。納得である。

……え? 使い魔!?

使い魔って言うと、あの異世界召還ファンタジーものの代表格の、あの使い魔か!?
使い魔の飼い主が、奇遇にもアリサの声に非常に似ているという。

って、違いますよね。
知ってますよ、使い魔。

そりゃあ、魔法の勉強をすれば、使い魔の存在は知っている。
そう、魔法ということは……


「フェイトも魔導師なのか?」

「‘も’っていうことは竜也もなんだね」

「あ、ああ。一応ね」


この反応からすると、フェイトは俺が魔導師って気付いていたみたいだった。
俺はどうも、そっちというか、探索の類が苦手なんだよね。

いや、練習をすれば出来るんだろうけど、あの特訓内容は大して意味を成さないからね。
今後はそういうのも大切になるのかな。

話は逸れたが、フェイトが魔導師……ということは、あのときの声は、フェイト?

いやいや、違うな。
あれはあくまで男のものだったし。
そもそも、フェイトなら占いで分かる。……この理屈ってすごいな。

でも、魔導師ということは……


「管理局?」

「え? 竜也は管理局なの?」

「ん?」

「え?」


なんか微妙にすれ違ってるぞ?
もう一回、もう一回聞いてみるか。


「フェイトは管理局に入ってるの?」

「ううん、それは私が聞こうと思ったんだけど」

「俺も入ってないよ」

「そっか、よかった」


何が、よかったのだろうか?
むしろ、よかったと思ったのは俺のほうなのだが。
もしフェイトが管理局だったらって考えると……いや、よそう。実際に違ったのだし、もしを考えてもしょうがない。

にしても、そうか……魔導師だったのか。
これは新しい発見というか、俺と母さん以外の魔導師は初めて会ったからな。
なんというかとても新鮮というか……


「どうしたの?」

「いや、なんでも、ところで今、何時かな」


ふと時間が気になった。
駅を出た時間から、ここにつく時間まではそうとう時間が経ったはずだ。
駅を出るころは夕日すら出てなかったのに、今はすでに暗くなり始めている。

時間を確認する意図を含め、時計を見ると、午後6時を回っていた。

ちょっと長居しすぎたかもしれないな。
今日は遅く帰る予定もないし、家に帰れば魔法の練習が待っているので、帰らなくてはな。


「じゃあ、フェイトそろそろ帰るよ」

「え? ……もう、帰っちゃうの?」


そ、そんなさびそうな目で俺を見ないでくれよ。
決心が鈍る、というより揺らぐじゃないか。なんだよ、かまってほしい子犬のようじゃないか……


「ま、また今度遊びに来るからさ」

「本当に?」

「ああ、絶対に」

「そう、分かった。じゃあ、アルフ途中まで送ってあげて」

「あいよ」


俺はフェイトに「またね」と、また会う約束をしてこの部屋を出た。

アルフに見送られる途中、ちょっと気になったから、アルフに聞いてみる。


「アルフってさ、何が素体の使い魔?」

「当ててみな?」


ふむ、そうきたか。
この動物マスターを目指す俺に挑戦状とは……

アルフを観察してみる。
尻尾に耳がある。この特徴は猫や犬などの動物に見受けられる特徴だ。
しかし、そんなに珍しい動物とは思えないので、おそらく犬であろう。
猫……というには、ちょっと強すぎる感じがする。

じゃあ、答えは犬そう思ったが。
何か引っかかるものを感じる。ありきたりすぎないかと。

もう少し、観察をしてみると、普通の犬より鋭い牙があるように見える。
ほほう、ピンときた!
犬と同じ特徴で、犬より鋭い牙があるとすれば!


「狼だ!」

「あ……あんた天才だよ!」


まぁこの俺にかかればこの程度朝飯前である。


「ところであんたには使い魔はいるのかい?」

「使い魔……ね」


考えたこともない。
しかし、どうだろう。自分に忠実な……ああ、心当たりが居るな。


「栗色の毛の猫……かな?」

「へぇ、いるんだ。一度会ってみたいねぇ」

「そのうちな」


うん、あれは一種の使い魔だろう。
間違ってない、たぶん本人に言っても問題ないと思う。

そんな平凡な会話をして、アルフとは途中で別れた。
その話の中で再三、「フェイトはあんたのおかげで」とか、「フェイトをお願い」などといわれた。
まぁ言われなくても、あんな子を見放すわけがないけどね。



あとがき

昨日のうpしたとき上下に神作品があって、もう駄目かと思った。
見劣り半端なかったww
作者のタピです。

第33話です。

相変わらずこんなんでいいのか? と思いますが、はたしてw
フェイトの回でした。そして、アルフの初登場。
犬化はなかったですが……まぁそれはまた今度にね。

魔法がばれた!
そんな内容でしたが、なんていうか相変わらず軽いですねw

最後に
もしかしら、明日明後日はうpできないかもしれません。
自分の高校の卒業式なもんでねw

あくまで、かもですが。



[16185] ─第34話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/16 11:59
駅でフェイトに再会してから数日が経過した。

フェイトとの出会いで、俺も探索魔法の大切さを知った。
いや、知ったというよりは重要性とでもいうべきか。

探索魔法は、魔法を使っているものの位置、つまりは魔導師の位置を知ったり、
魔法における出来事を感知出来るようになる。
それが何を意味するかというと、危険からの回避がよりできるようになることだ。
実際には他にも、戦闘などでこの技術を応用すれば、攻撃の探知なども出来るわけで、そうすれば予測して、攻撃をかわすことが出来るわけで、
そうすれば、より効率的に交わすことが出来た。
……今まで盲点だった。
これが今まで出来れば、その場限りのかわし方より、よっぽど戦術の広がりを見せることができるわけだ。

そんなこともあり、探索魔法の練習を続けているのだが、予想外のことがわかってしまった。

なのはが魔力もちだった。

世界は一度変われば、何度も姿を変えるというが、ここまで世界は変わらなくていいのではないだろうか?

俺はフェイトが魔導師といったときだってかなり驚いたが、まさか昔馴染みの友人、またの名をペット、そして最近の称号使い魔が、魔力もち。
本当に使い魔になれそうだ。

しかし、魔力もちというだけで魔導師かどうかはまた別の話だ。
ただ、魔力をもっているだけなら、ありえない話ではないというのは有名な話。
いわゆる突然変異という奴だ。

なのはが突然変異……確かに驚いた、うん、すごく驚いたけど……あながちありえるのではないかと思わせるあの一家がすごいよね。

俺の場合は、母親が高ランク魔導師らしいので突然変異というわけではないが、なのはの場合は確実に突然変異だろう。
あの家に魔導師は居ないのだから。まぁ実は魔導師ですって言われても不思議ではないのも事実、むしろそういってもらえたほうが納得だ。

そんなわけで、なのはが魔力もちという事実を元に、多少警戒をしてたんだが、さらに驚くべきことが分かってしまった。
なのはの飼っているペットが魔力もちだった。

いやね、なのはの魔力もちは一応人間だからありえるとして、動物はありかよと思うよ。
なのはもある意味、猫で使い魔で動物の魔力もちだが、フェレットは完全な動物でしょ?
そうな常識を覆す、いや、魔法世界の常識はどうかは知らないけど、少なくとも俺の常識を破壊するのには十分だった。

世界とは恐ろしいものである。
探索魔法の習得、なのはの魔力もち、フェレットの魔力もちと言ったことがここ数日で起きたことだが、他にもある。

あの青い宝石(小石)の発見だ。
最初は神社で見つけて、すごく珍しいからはやての誕生日プレゼントにしようと思ったんだが、思ったより珍しいものじゃないっぽかった。

あのあと、プールで一つ、学校で一つ見つかった。
なぜかというと、探索魔法の練習を兼ねて、自分の周囲に少しだけ探索をかけていたら、魔力に引っかかるものがあった。
それが、あの青い宝石だったのだ。
宝石にまで魔力を感じるって……本当にこの世界って何でもありだよね。
魔法……便利なものだね。

そのおかげで、はやてにプレゼントするものが青い宝石1個から3個になったわけだが、そうなると価値が下がるような気がする。
同じものがないただ一つものなら相当な価値があると思うがそれが2個も3個もなると……
でも、ことわざで「質より量」というものがあるからいいかなとも思ったり思わなかったり。
プレゼントのことは後々考えるとしよう。


今日は日曜日だ。
外の天気はいいし、日曜ということもありまさにお出かけ日和。
そのためか、昨日からなのはたちが今日のサッカーの試合。
士郎さんが監督をしてる、翠屋FCの試合を見に行こうと誘われたのだが、「だが断る」といって断りました。
理由としては、サッカーも好きだし、観戦というよりはむしろやりたいぐらいだけど、他の友達との約束を蹴ってしまうわけには行くまい。
他の友達……言うまでもなくはやてである。

本来ならフェイトとも会いたいのだが、フェイトがこっちに来た用事で忙しくて、ちゃんと会えないというので、会えていない。
それでも、念話でのやり取りとかはしたりしているので、会っているのと同じようなもんだけどね。
それに比べてはやては、念話も出来ないし、連絡を取っているわけでもないので完全に音信不通である。
まぁ音信不通なのは俺のほうかもしれないけどね。
なので、たまには顔を見せてやらなくちゃなと思い、今日行くことにしたのだ。

そんなわけで、八神家玄関前に俺はいる。

はやてに会うのはなんだかんだで2.3ヶ月ぶりだな。
前に会ったときは定期的にあってたせいか、黒いオーラを纏わなかったが、今日は纏ってるんだろうなぁ。
何しろ全く会おうともしなかったからね。
ついつい、なのはが遊べるとそっちを優先してしまいがちなのが理由。
今日はそんななのはのお誘いを蹴ってここに来ているわけだけどね。

ピンポーンとインターホンを鳴らしたが、返事がなかった。
急な訪問だから、はやてが留守という可能性があるが……もし、そうならとてつもなく不運なことだ。
俺は運はいいと思ってたのだけどな。

そう思った矢先に、ドアが開いた。やはり、運はだけはいいようだ。


「どなたですか?」


少々面倒くさそうに、気だるそうに出てきたはやてだった。
その表情からすごく疲れているのが分かる。
疲労困憊といった感じで、目の下には隈があるほどだった。あまり寝ていないのだろうか。


「あ……」

そんなはやてだったが、俺と目が会うと、ぱあっと顔を明るくした。
その顔に暗さなどなかった。

俺に会えたことを素直に喜んでくれているのなら、俺としてもとても嬉しいことだね。


「おかえりなさい、竜也君」


うん、その表情で喜んでくれているのは分かったよ。俺も嬉しいが……。
今なんていったんだ?

「おかえりなさい」って言ったか?
おかえりなさい、外出から戻ったもに対する挨拶だ。
外出から‘戻った’つまりは、そこに住んでいる者が帰ってきたときに言う言葉だが、俺ははやての家には泊まってないぞ?


「遅い帰りやったね、連絡してくれへんから心配したんよ?」


その顔はあくまで笑顔である。
それはもう満面の笑みなのだが、どこか棘があるような。

それ以前に、遅い帰り? そもそも帰ってきたのではなく遊びにきたんだけど? 言うならばお客さんなのだが……


「まぁええわ、帰ってきてくれたんやから。それで、ご飯にする? お風呂先に入る?」

「ええっと、じゃあお風呂で」

「分かった。お風呂はもう沸いてるから、入ってオイデ?」

「え、はい、分かりました」


その場のノリというか、他に選択肢がないような状況。
第3の選択肢を選べるような状況じゃないと判断したので、とりあえずお風呂という選択肢を……

って、まだおやつ時なんですが!




とかいいながらもお風呂に入る俺はマイペースなんだろうな。
もしくは、はやてに逆らえない……深くは考えないようにしよう。

でも、一番に不思議なのが、俺が帰──来るのを予期して、お風呂や料理の準備したのか、
それともいつも来るともって万全の状態を使ったのかというところである。

予期なら予期ですごいことだが、毎日万全の準備をしていたと言ったら……ぞっと来るものがある。


「毎日用意してたで、もちろん」


背筋がぞっとした。
さっきまで風呂場には俺しかいなかったはずである。
いくら、俺が身体を洗ってる途中で、シャワーの音で足音とが聞こえなかったとしても、さすがに風呂場に入ってくれば気付けるはずなんだけど……

気づけば、はやてが後ろにいた。たわしを片手に……


「ええっと、色々言いたいんですが?」

「奇遇やなぁ、私もや」


はやても色々といいたいらしい。本当に奇遇ですね! 純粋に怖いですが。


「じゃあ、はやてからどうぞ」

「いや、竜也君からでええよ? せめて最後の辞世の句を残しなあかんやろ?」


辞世の句……え? なに俺はここで死ぬんですか?
はやての顔を見るとどうしてもしゃれには見えない。


「いや、はやてからで……」

「そうか? まぁええわ。私も後で話すとして、今はこの時間を楽しもうや」


そう言うと相変わらずの満面の笑み(恐怖)で俺の背中を流し始める。
いや、荒い始めるはやて。

洗うのではなく荒いなのだ。


「た、たわしは危ないと思うなぁ、俺は?」

「ふうん、嫌なんか?」

「え?」

「私に洗われるのは嫌なんか?」

「そういうわけじゃ」


嫌というより恥ずかしい。
洗ってもらえる分にはいいのだが、羞恥心というものがある。
そして、何よりたわしは……つらいかなー


「なら洗うで、ほらごしごしっと」

「い、痛い」

「なんか言った?」

「い、いえなにも……」


お声を上げて叫びたいのだが、はやての雰囲気がオーラがそんなのを許してもらえそうになかった。
そのせいで、小さく、まるで独り言のように言うしかなかった。




そんな悲劇? のお風呂劇を終え、はやてと一緒に上がった俺がリビングで目にしたものは、テーブルに並べられた料理だった。
毎回のことで、いまさら驚きはしないが、かなりの量がある。

おやつの時間……はとっくのとうに過ぎていて、すでに夕方に差し掛かる時間なのだが、
作った時間の関係か、スコーンなのどのお菓子に近い食べ物が結構あった。

にしても、この時間にこれを全部食べるのは厳し過ぎる……
いつかのクリスマスほどではないにしろ、多いのは現実問題だった。


「これはさすがにた──」

「全部食べてな」


ニコッと笑顔を見せ、さらっと言われてしまった。
先手をうとうとして先手を打たれ、逃げ道がなくなってしまった。

もう、腹をくくるしかなさそうだった。


「……!?」


食事中のことだった。
いくらなんでもお昼からこの量は厳しいなと思いつつも、お箸少しずつつまみながら、
着実に量を減らしていたとき、町のほうで大きな結界が出来たのを感じた。
これは、昔なら感じられなかったかもしれない。
探索魔法を練習して魔力に敏感だったからこそ気付けた事態だ。

町で結界……やっぱりこの間の念話が関係しているのだろうか。

ふと、思い出されるはこの間の念話のこと。
無関係であれ、巻き込むなと思いながら今までも避けてきたことだが、やはり気になるものはある。


「どうしたんや、竜也君? 外なんか見て」


俺の様子に気付いたはやてが言う。
俺が窓の外のほうを見たのを気にしたみたいだった。


「いや、猫が二匹いるなと思って」

「え? あ、ほんまやな」


とっさに窓の傍にいた猫を見つけいいわけを言う。

二匹の猫、その姿は双子のようにそっくりだったが、はたしてどうなんだろう。
あらためて、猫二匹を注意深く見ると、魔力の反応が微かに……

やっぱり動物に魔力って不思議なことじゃないんだな。
もう、驚かないぞ!
フェレットなんていうマイナーな動物が魔力を持つんだ、猫や犬のようなある意味有名すぎる動物が魔力を持っていても不思議じゃない!


「こっちをジッと見とるなぁ」

「おなかが減ったのかな?」


二匹の猫はこっちをもの欲しそうな顔で見ている。

しょうがない、ちょっと餌でもやるか。

そう思い、スコーンを片手に持てるだけもって、窓に近づき、窓を開ける。
開けた瞬間猫は警戒してか、近づいてきた俺から距離をとるものの、あくまでこっちを見ながら逃げようとはしない。


「ほれ? 腹が減っただろ?」

「「ふしゃー!」」


毛並みを立たせ、まさしく警戒している様子の猫だった。
ここまで警戒されると少し悲しくなるが、俺も諦めずに説得をする。


「まぁまぁそんなに警戒すな。俺は動物が大好きなんだから」

「人よりか?」

「そうだよって変な事言わすな!」

「そうやったんか、どうりで……」


はやてがブツブツという。
「だからこの間、伝書鳩で竜也君から手紙がきたんか……」とか言ってるし。
だって、ポストに入れて手紙書くよりも、そっちのほうが早いし、安い!

ちなみに仕事した鳩には、パン屋でただでもらったパンの耳をあげました。



「食べないのか? いいのか? 美味しいぞ?」

「にゃ?」


多少は警戒心を解いてくれたようで、少し近づく猫たち。
それでも一歩一歩は慎重だった。


「ほれ? 食べな」


一匹だけ、ようやく俺の差し出した手に乗ってるスコーンを食べる。


「にゃ!?」

「驚いたか? 美味しいだろ?」

「にゃ~ん。にゃあ」

「そうかそうか、あんたの兄弟にも分けてやんな」


「確かに、すごく美味しい」といった猫に、俺はまだ警戒しているもう一匹の猫にあげるために、
近づいてきた方の猫にスコーンを持たせ渡してもらう。

そして、警戒してた猫はそのスコーンを受け取り、ぺろりと一口で食べた。


「にゃー!」

「にゃにゃ?」

「にゃん!」

「「にゃ~ん」」


二匹ともご満悦のようだった。
その餌のおかげか、警戒してた猫たちは、俺に普通に近づいてきた。


「ほう、警戒を解いてくれたのか?」

「にゃん!」

「そうか、ありがとうな」

「にゃにゃ、にゃにゃん!」

「はやて、猫たちが美味しかったありがとうて言ってるぞ」

「お粗末様や。って竜也君は何で猫語が分かるんや!」


それは、ほら。日々に積み重ねの結果という奴さ。
毎日猫と戯れたりしてればこの程度は朝飯前になるよ?

その後は、猫と戯れながらちょくちょくつまみながらはやてとの時間を過ごした。
この二匹の猫は以外や以外に甘えん坊さんという感じだった。
毛並みを褒めたり、なでなでしてやるだけで、すごく嬉しそうにしたしね。

この様子からおそらく餌付けできたかな?
また一つ、動物王国への道が開けた。

そういえば、あの結界はどうなったんだろう……



おまけ

猫姉妹

「なんかあの人に従いたくなっちゃうんだけど?」

「だ、駄目よ、ロッテ。私たちのご主人様はぐ──」

「ほら、こっちのおいで。猫じゃらしで遊んであげるよ」

「「にゃ~ん」」((しまった!))

「はは、かわいいやつめ」

「「ごろにゃ~ん」」((でも気持ちいいからいいかな))

「竜也君猫の扱い上手すぎやねん……」




あとがき

高校卒業しました。
作者のタピです。

更新が大変遅れました。お待たせしました。
昨日一昨日と大分久々に文を書いたせいか、
また、花粉症の薬のせいで意識がハッキリしない中書いたので、
いまいちかも知れませんので、あとあと修正はいるかも?

そんなこんなで第34話です。
はやて回です。
お風呂のシーンは実は修正版です。
本来はちょっとエロいシーンがあったのですが、カットしました。
読者は望んでないと思ったので……望んでないですよね?希望があれば、おまけで書くかもしれませんが……

猫姉妹の初登場。
そして、ようやくなのはがジュエルシードを封印。

着実と物語りは進みます。



[16185] ─第35話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/16 12:04
この間は久々にはやてに会った。はやては非常に危ない子だった。もっと明るい子だと思ってた。
俺が会うときはいつもダークネスな雰囲気を纏っている。以後注意を……。

そんな経験をした俺だが、その後は定期的にはやてに会うことにしようと思う。
これ以上危険な目には遭いたくないしね。

とかいいながらも、時間は無情にも過ぎていく。
はやてのための時間を少し割こうと思ったのだが、そうもいかないことになった。
それは、


「最近のなのは、おかしいわよね」

「うーん、ちょっと思い悩んでる感じかな?」

「そう! そうなのよ! 何で私たちに相談してくれないのかしら!」


アリサとすずかが、なのはの様子がおかしいと言ってきたのである。
事実、俺も最近なのはとは遊んでいない。
前までは、その時間は大抵俺の鍛錬の見学をしていた。

今もなのはと一緒に帰ったりはするのだが、その後なのはが一人で出かけたりしたり、ペットのユーノを連れて散歩に行ったりするのだ。

俺も鍛練があるので、四六時中なのはと一緒というわけにもいかないので、最近のなのはの状況は掴みきれてないのが現状だ。
朝についても同様である。
早起きをしてどこかに出かけているようだった。これらのことは今まではありえないこと。

自分で言うのもなんだが、なのははよく俺に懐いている。
だから、一緒にいることがほとんどなのに、最近は別行動……というより、なのはが別行動をとることが多くなっている。


「あんたは何か知らないの?」

「残念ながら」

「いつも一緒にいるのに?」

「最近はそんなに一緒にいない」

「ふ~ん。やっぱりおかしいわね」


今考えてたことをアリサに言うと、やはり引っかかるところがあるようだった。
余談になるかもしれないが、最近は朝に結界が張られているときがある。
そのときは偶然なのか、必ずなのはとペットのユーノがいない。そこに関係性があるのかは分からないが。
いや、あるのかもしれない。
この一人と一匹。もしくは二匹は両方とも魔力持ちなのが分かっている。
もしかして……なんてことが頭をよぎる。


「これは一度……会議をするべきよね!」

「「え?」」

「会議よ! なのはの今後について私たちが話し合うのよ!」

「いや、それはいいんだけど」

「何!? 文句があるのかしら?」

「直接本人に聞けばいいんじゃないかな?」

「あ……そうよね。じゃあ、聞いてくるわ!」


そう言って自分の席を立って、なのはの席に向かうアリサ。
そのアリサの雰囲気は明らかに好戦的なのは言うまでもないだろう。


「あ、接触した」


アリサがなのはに接触する。
二人でなにやら話し込んでいるようだ。アリサがやや顔を真っ赤にしながら、叫んでいる。
それに対し、なのははただただ苦笑するだけという感じだ。
そして、戻ってくるアリサ。


「駄目ね、話にならないわ」

「なんて言ってたの?」

「いつも通りで別に変わんないよ、だってさ。私たちが気付かないと思ってるのかしら」


どうやら無駄足に終わってしまったようだ。
アリサがもう一度言ってくるといったが、その時にチャイムがなってしまった。
今日最後の授業のチャイム。


「しょうがないわね、放課後また話してみるわ」


俺たちも一時は解散して、各自の席に戻った。
俺の席はなのはの席に近いので、授業中に手紙を渡して、ことの真意を確かめようとした。


「それで、実際のところはどうなんよ?」

「うん? 実際のところって?」

「何か隠し事してるでしょ?」

「え? なんのことかな?」

「俺が分からないとでも?」


こんな感じのやり取りが行われたのだが、なのはははぐらかすばかりで、本当のことを話してくれそうになかった。

これは予想以上に手こずりそうだ。
一番厄介なのは俺にすら話をしてくれないこと。今までの間柄俺にぐらいは話してくれそうなもんなのに、
俺にすら内緒なんて……軽く傷つくわ。
これは放課後のアリサが見ものだな。

そんなことをずっと授業中に考えてると、ようやく学校終わりのチャイムがなった。
アリサが早速なのはをというつめようと動くも、それを察したのか、なのは早々の帰宅準備を始め。
俺たちより一歩先に家に帰ってしまった。
その状況はまさに異様だった。


「ちっ! 逃げられたわ」

「あ、アリサちゃん落ち着いて」

「これで、私に落ち着けって言うの!」

「まぁまぁ」

「何よ!」

「お手でもして、落ち着けって」

「え……」


一瞬で顔が真っ赤になるアリサ。
それだけでなく、急にそわそわして、どうしたらいいのか悩んでる感じだった。

その様子がなんとも、かわいい。


「ほれ、お手」

「う……うぅ……に……」


必死に我慢しようとしている。
心の中に葛藤でもあるのだろうか。手を出そうとしたり、頑張って引っ込めたりを繰り返すアリサ。

もう一押しかな?


「お手」

「にゃ……にゃん」


ようやく、ポンとお手をしたアリサ。

その様子はすごく恥ずかしそうにしながらも、ちゃんと小さくとも「にゃん」というアリサは、
俺に餌付けされてるな。
そして、アリサのお手はとてつもなく久々で、その手はとても暖かい。


「ハッ! な、何をやらすのよ!」


しばらく膠着した後、正気に戻る、アリサ。
しかも、俺に怒鳴るとは……八つ当たりだな、全く!


「別にいいじゃないか? 落ち着いたし気持ちよかったろ?」

「確かにそうだけど……ってそうじゃないわよ! き、気持ちよくなんかなかったわよ!」

「気持ちよくなかったのか? ……そうだったのか。ご、ごめん。俺が悪かったよ」

「え……な、何でそんなに落ち込んでいるのよ!」


俺は良かれと思ってやったのに……すごくショックだ。
ああ、これでしばらくはやてぐらいの美味しい料理しか食べられなさそうだよ。
それで、無理にたくさん食べて太っちゃうんだ……。
太って、剣も振れなくなって、最終的には魔法も使えなくなって……ごめんなさい、母さん。
こんな俺を許してください。


「う、嘘よ」

「え?」

「き、気持ちよかったに決まってるじゃない」

「本当に!?」

「ほ、本当よ」

「あ、アリサちゃん!?」

「う、うるさいわよ! すずか!」

「え? 何で私に!?」


やっぱり、気持ちいいんだ、お手。
うん、やってよかったよ。
アリサも気持ちよく俺も気持ちがいい。まさに相思相愛だね。意味違うと思うけど。
これで、はやての料理を思う存分食べれるよ。


「ああ、もう! 話が逸れてるわよ! 問題なのは、なのはのことでしょ」

「そうだった」

「忘れてたの!?」


いや、久々にアリサが恋しくなってて。
前からどうにかアリサにお手させられないか考えてたんだけど、中々チャンスがなくてね。
今日はようやく出来て、満足しちゃってなのはのこと忘れてたよ。
そうだよな、なのはのことも考えないと真剣に、飼い主として、使い魔の主として。


「「竜也(君)……」」

「し、しょうがないじゃないか! アリサのお手は至極なんだぞ!」

「え……」

「竜也君!?」

「い、いい加減にしなさいよ……照れるじゃない」

「あ、アリサちゃんどうしたの?」

「なんでも……ないわよ」


再び顔を真っ赤にする、アリサ。
それに対して、なぜか、慌てるすずか。

最近見なかったけど、今日はすでに2度も見れるなんて幸せだなぁ。
なのはと戯れるのも、フェイトと話すのも、はやてと遊ぶのもいいが、アリサもいいな。
今度からまたアリサにちょっかいでもだそうかな。


「はい! この話はとりあえずここでは終わり! 時間も時間だし場所を変えましょう」


アリサの言うとおり時間はすでに4時前になっていた。
俺もすずかも、その意見に賛成し、場所を移動することとなった。
といっても、どこに移動するつもりなのかな? まさか……ね?


「うん、予想通りだったね」

「会議といえばここじゃない」

「他に人もいないしね」


やはりというか、俺の部屋になった。
それでも、最近はこの二人を入れることはあまりなかったので、少し新鮮だ。
入れることがなかったというより、遊ぶこと事態もそんなになかったような気もするけど……。


「それで、何についてだっけ?」

「なのはについてよ! また忘れてたの?」

「いや、確認って奴だよ」


なのはについて、今日もそうだが、不自然な点が多すぎる。
第一、今までの行動が友達優先だったなのはがそれ以外を優先しているのだ。
心境の変化、もしくは環境の変化があったとしかいえない。

心境の変化については、知る由はない。
これこそ本人に聞いて確認するしかないのだ。

環境の変化については俺の知ってる限りではない。
ペットを飼い始めてということ以外は。


「もう一回、聞くけど。あんたに心当たりはないの?」

「ないね、全く」

「そう……すずかは?」

「私もさっぱりかな、アリサちゃんは」

「……同じよ」


3人いれば文殊の知恵というけれど、所詮は小学校3年生ということなのか。
いや、それ以前にこの手のことは解かりっこないのだ。
いくら本人を交えずに、話し合ったところで有力な情報が手に入るわけもなく、ただ時間が過ぎていく。
話も内容も堂々巡りだ。
何度も同じこと聞いて、同じ回答をして。
やっぱりと落ち込んで、なんで教えてくれないと怒って。

俺自身としても悔しい。
あれだけなのはと一緒だったのに、あんなにも接していたのに。
所詮は他人だったのかと思ってしまう。

人には秘密の一つや二つはあるだろう。
それこそ、すずかにもアリサにも当てはまるだろうし、実際に俺にもある。

フェイトのことやはやてのことはもちろん。魔法のことだってそうだ。
それを考えれば、なのはも同じようなものだ思う。
ただ、それを知りたいと思うのは友達として親友としてあたりまえのことなんだけど……。

理不尽だよなぁ。
自分のは明かさないくせに相手のは知りたがるって。
でも、それでも知りたいというのは心からの本心だからしょうがないね。


「これじゃあキリがないわね!」

「そうだね」

「まぁしょうがないことではあるけど」

「そうかも知れない、ううん、実際そうなんだろうけど! でも駄目なのかしら? 親友のことを知ることって?」

「いや、俺も同じ意見だよ」

「私も……そうかな」


すずかも引っかかる言い方をするあたり、何か思い当たる節があるのだろうか。
アリサもその言いように不信感を抱いたようだけど、ここでそこをついてしまっては、また話が逸れると思ったのか、
それとも、聞かないほうがいいと思ったのか、どちらにしろそのことには触れなかった。


「そうよね……でも、このままじゃ答えは出ないわ」

「その通りだね」

「だから今度、近いうちに4人で集まってお話をすべきよね」


最初からそうすれば……そんなことを思ったのは俺だけじゃないはずだ。
まぁ実際のところ、本人に聞いても答えてくれなさそうだけど……。
今日失敗したしね。俺もアリサも。


「じゃあ、この話はそのときまで保留! せっかく竜也の家にいるんだから、遊びましょう!」

「え?」

「何? だめなの遊んでいっちゃ?」

「いや、別にいいよ」

「なら、まず何で遊ぼうかしらね」


なのはの話は、ここで遊ぶ為の理由に過ぎなかったように聞こえる。
いや、アリサに限ってそれはないと思うけど……。

何はともあれ、第一回なのは会議は終わった。
この会議がどう意味したのかは分からないが、こんなに心配させたなのはには、今度埋め合わせをしてもうとしよう。
ふふふ、そのときが楽しみだ。




おまけ

「なんで俺がやらなくちゃいけないんだ?」

「あんたのゲームでしょ?」

「まぁいいけどさ……」

とあるウィルスが蔓延した、ゾンビのゲームをやる。
ガシャーンと急に窓が割れてゾンビが出てくる。

「きゃー!!」

「あ、すごい」

「アリサそこまで驚くか? すずかは落ち着きすぎ!」

「だ、だって……」

「怖いのか?」

「こ、怖くなんか──」

再びゾンビ

「キャー!」と言いながら俺に抱きつくアリサ。

「うぉ、ちょ、ちょっとアリサ!」

「が、我慢しなさい!」

「アリサちゃん!?」

そのゲーム中終始抱きつくアリサだった。



あとがき

本編にはない、なのはに対する親友たちの葛藤を書いてみた。
作者のタピです。

第35話です。アリサ回です。
途中から明らかに方向性が怪しくなった件w
なんか暴走したような気がしますが、気のせいです。

久々にアリサの好感度上昇? ですかね。
にしても、無印編……長くなりそうな気配。



[16185] ─第36話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/17 12:24
第二回なのは会議が、ここ月村邸にて開かれる。
いや、正確にはこれから開かれる予定なのだ。
でも、その前に……


「一度でいいからやってみたかったんだよね」


潜入ミッション!
今回のミッションは月村邸に誰にもばれずに潜入し、すずかの元へたどり着くことである。
このミッションで大切なのは、身近なものをどう応用するかである。
そして、俺にとって身近なものと言えば……猫である。


「猫1」

「にゃ!」

「あの監視カメラの前をゆっくり通り抜けろ」

「にゃ!」


猫1が手をビシッ、とさせ俺の命令どおりに動く。
監視カメラはその猫の動きに合わせ、動き、それに合わせて俺は裏をかくように動く。
そして、見事に予想通り監視カメラに見つからずに潜入する。
監視カメラ対策にはこの方法を幾度となく使うことによってドンドン先に進める。
2個以上ある場合は二匹の猫をといった感じでだ。

もちろん、仕事をした猫には、


「ほれ、マタタビ」

「にゃ~ん」


これぞ、鎌倉から続くご恩と奉公の関係!
鎌倉はすぐに衰退しちゃったけどね……俺は大丈夫さ!
だって領土は有限だけど、餌は限りなく無限に近い! 買っておけば! あとお金があれば。

こんな感じで、猫を多用しつつ上手い具合に月村邸を潜入していくのだが……はて? ここはどこだ?
この家は異様に広いんだよなぁ。アリサの家ほどではないんだろうけど、普通の家とは比べ物にならないよ。
よくよく考えると、俺はこの家に来る度にそれを考えているような、なんか虚しくなるな。
ええい! ブルジョワめ! おまえらがいけないんだ!
うちにも少しはお金分けろよ! むしろ住まわせろ! 貧乏人を労わってくれよ!
……なんか余計に悲しくなってきちゃったな。
でも、アリサとすずかなら頼んだら住まわせてくれそうだな……今度聞いてみるか。
許可もらったらもらったで大変そうだけどなぁ。

と、そんなことを考えていると偵察第1部隊の猫3が話しかけてきた。


「にゃにゃ! にゃーにゃ、にゃにゃん」

「ふむ、そうか。ご苦労だった」


猫3によるとこの先に介護用ロボがあるらしい。
なんか、介護用のくせに無駄に戦闘面で多機能で、お腹にはでっかく8の文字でオレンジ色の丸っこいロボらしい。
しかも、防水性まであるということ。
この猫はどうやってその情報を手に入れたかは知らないが、なんというか頼りになる偵察だった。
にしても、防水性まであるくせに、戦闘できる介護用ロボって……日本の技術は世界一だね! 無駄に!
どこかの漫画でこんなのがあった気がしなくもないが、気のせいだろう。
聞くところによると、すずかのお姉さん、月村忍さんはマッドサイエンティストだとか何とか。
あくまで噂だから、真偽のほどは確かではない。 ただそういう噂もあるのであってもおかしくないということだ。


「監視カメラに警備ろ──介護用ロボって本当にすごいなこの家」


玄関に監視カメラがあったり、どこかの柔道家が守っている家はよく見るが、
家の中、それも広大な庭に監視カメラがあり、ロボットがあるって普通の家ではない。
本当に今更だけどね。自分の常識が覆ることばかりだよ。
まぁ魔法を使う人が言っても説得力はないけどね。

さて、問題はどうやってそこを突破するかだ。
単純に破壊してと言うのもいいが、戦闘面に強いらしいから、避けたほうがいいし、何より騒ぎになりかねない。
そうなると潜入どころではないだろう。
その次に思い浮かぶは隠れながらだ。
一応アイテムとして、ダンボールをもってきたが、はたして役に立つだろうか。
こんな庭にぽつんとダンボールがある。しかも、たまに動いてる感じがする。


「…………シュールだ」


あまりにも現実味がない。
これが山中なら、またはかの有名なあの爬虫類なら問題ないかもしれないが、俺では荷が重過ぎる。
何より、俺の技量でダンボールを使いこなすには、力不足だ。
こうなってくると、選択できる行動が減る。
ばれないように目標の破壊も駄目、目標から隠れるのも無理だとすると、他にも思いつくのは……


「完全に無視か」


無難な選択肢。
しかし、こちらがスルーしたからといって、向こうも見逃してくれるだろうか。
いや、むしろ向こうが気付かないなんてことあるのだろうか?
向こうは仮にも、けい──介護用ロボ。
介護してる相手、つまりはおじいちゃん、おばあちゃんが変な行動を起こさないか。
また、振込み詐欺などにあわないかを察知できるように造られたロボだ。
監督性、感知能力は高いと言えるだろう。
しかし、これらはすべて予想でしかない。
ようするに、行動を起こさなければ何も分からないし、始まらない。
このまま考えていて、策がでるとも考えられないし、状況が悪化する可能性だってある。
だが逆に、策が見つかるかもしれないし、状況が好転するかもしれないのだ。
だけど……だからと言って……

そんな、決まりようのない問答を繰り返していると、偵察第2部隊隊長の猫2が報告にやってきた。


「にゃ!」


猫2は、俺に会ってまず、ビシッと敬礼してから、報告を言う。


「にゃい、にゃにゃー」

「そうか……お疲れ隊長」

「にゃい!」


俺がご褒美のマタタビをあげると、再び敬礼をして仕事に戻った。
本当にここの猫たちはよく働いてくれる。
今まで餌付けをしてきた甲斐があったというものだ。
こういう時は本当は魔法を使いたいが、普通は禁止されているので、猫を使う。


「目に見えないものを恐れている場合じゃない、か」


猫2によれば、アリサが月村邸に到着したとのことだった。
その結果、ここにとどまってる場合ではなくなってしまった。事態は急変したのだ。
早く明確な判断をしなくてはならない……。

顔を上げ、周りを見渡すと、指示待ちの猫達がいる。
その数は十を軽く超える。
おそらく、この家の猫だけじゃなくて、野生の猫まで集まっているのだろう。
こんなにも……こんなにも、協力してくれる同士。
否! 戦友がいるとは。俺は嬉しかった。
一人じゃない。俺に仲間たちがいる。この仲間達と一緒なら、なんだってできる。
根拠のないことだ。だけど、そう思わせるには十分だった。

そうだね。
恐れちゃいけないんだ。俺はこいつらと……こいつらと戦うんだ!
そうと決まれば!
隠れるとか無視とかそんな軟弱な心持じゃな駄目だ!
もっと大きく、さらに大きく、相手を木っ端微塵にするつもりの気持ちで挑まなければ、猫たちに申し訳が立たない。


「みなのもの!」

『にゃ!』

「目に見えないものを恐れては駄目だ。相手がどんなものであろうとも。
それがたとえ、吸血鬼であろうとも魔法使いであっても幽霊であってもロボットであっても、恐れては駄目だ!」

『にゃ!』

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉおおおお」

『にゃぁぁぁぁぁああああああ』


俺と猫たちは一気に駆けた。
介護用ロボという敵がいるところに。

目前にロボが見えた。
オレンジのボディに8の文字。敵に違いない。
敵はまだこちらに気づいていないようだ。これは奇襲のチャンスである。
うまくいけば、こちらに被害はでない……いや、そんな甘いことはいえない。
被害を最小限に抑えた上で、騒ぎを大きくせずに片付けられるかもしれない。
そう思ったが瞬間。俺は猫たちに指示を出す。


「二番隊と三番隊が突っ込め! 残った一番隊と四番隊は第二波で突っ込め!」

「え?」


俺の指示通りに動く猫たち。
さすがに、向こうも気付いたようだが、時はすでに遅かった。
第一波が到達して、相手の動きを止める。
相手が急いで振り払おうとするも、第二波でさらに動きが止まる。

猫たちが一斉にオレンジボディに引っかきいやな音が出るが、俺は我慢する。
ボディは引っかかれたことにより少しずつ薄くなる。
俺はそこがチャンスだと思い、拳を握り、一気に迫る。
猫たちに退避命令を出し。
介護用ロボに、


「そげぶ!!」

「ぐっ!うわあああああ…………」


俺の攻撃は見事ボディを貫通し、ロボットは機能停止になった。
よくよく考えれば、戦隊もの様に破壊されたロボットが爆発とかしたら、俺の命はなかったかもしれない。
まさに、九死に一生を得たようなものだった。

しかし、


「や、やり遂げたぞ!」

『にゃにゃ!』

「しかし、まだまだミッションは続く! 気を引き締めてかかれよ!」

『にゃ!』


そう、まだミッションは終わっていないのだ。
クリアは敵の撃破ではなくターゲットへと辿り着くことなのだ。
この肝心な部分を忘れ、今起きた最大の危機のクリアで油断をしてしまえば、この先はない。
油断はまだ禁物。

そんなことを考えていたとき、ハト斥候がやってきた。


「ポルッポ。ポッポ」

「何!? 本当か!?」

「ポポ!」


ハトによるとなのはの到着とのことだった。
つまり……時間はもうないに等しい。
いや、もはや失敗と同じである。

なんということだ。
せっかく、せっかくここまで来たというのに……。
現実にはリセットなどと言うものはない。もう取り返しがつかない……。

ミッションの失敗。
悔しい。悔しすぎる! 後もう一歩、もう一歩だったのに。

なんて思わないけどね。
まぁ失敗したのは悔しいけど、十分に楽しめたから満足かな。
諦めてすずかたちのいるところに行くか。

そう思ったときだった。
魔力反応を感じたと同時に、広域結界が張られ、そして、目の前で猫が巨大化した。


「え?」

「にゃああごおおお」


ええっと、どういうことなのかな?
意味が分からないんですけど?
結界が張られたこともそうだし、猫の巨大化もそうだし。
でも、どっちも魔法が関わってそうだし……あれ? 魔法ってそんなにメジャーなスポーツか何かでしたっけ?
まぁとりあえず猫には変わらないからコミュニケーションでもとってみるか。


「ええっと、お手」

「にゃあごおお」


俺の指示通りにお手をしようとするのだが、その大きさがあまりにも大きいため、
踏み潰されそう……てか、本当に危ない! 頭上暗くなってきた!

その時だった。
黄色い射撃魔法が猫に当たり、猫が俺の反対側に横に倒れる。


「うわぁ危なかったって……魔法? しかも、あの魔力はフェイト、かな?」


以前にフェイトに会ったときに感じた魔力の質と非常に似ていた。
でも、さっきの広域結界はフェイトのものではなかったし。それに、なんでフェイトがここに?
たしかにこっちの方に引っ越してきたとは聞いたけど……。
ふーむ、どうも謎が多すぎるな。

これは実際に聞いたほうがよさそうだな。

そう思い、フェイトに近づこうと思ったら、今度は白い服を着た少女が……って?


「な……のは?」


白いのは、おそらくバリアジャケットだろう。
俺はデバイスをもってないので、バリアジャケットは持ってないが、基本的に魔導師は着る。
それに、よく見ると小学校の制服にも似ている。
そんななのはだが、フェイトが続けざまに猫に攻撃しようとした。
なのはがそれをバリアで護る。

なのはが魔力もちだったのは、知ってるけど、まさか魔導師になってただなんてね。
予想外もいいところだよ。

たく、どこの誰だよ。
魔導師はこの世界にはいないって言ったのは。

と、そんな悪態をついてる場合じゃないな。
二人に戦闘をとりあえず止めないと。あと、猫も助けてやらんとな。

そう思い、二人を静止しようと思ったのだが……手を出せる状況じゃない。
二人で絶賛空戦中だった。
しかし、なのはは明らかに劣勢だった。見るからに経験不足、そう言った感じだ。

でもこのままじゃ……止めなくちゃな……。


「フェイト! なのは!」

「え? 竜也?」

「竜也君!?」

「まて!!」

「にゃん」

「え?」

「なのは!?」


フェイトとなのはが俺の声に反応して止まる。
が、フェイトはすぐに切り替えて、なのはが止まってるの好機と見たのか、猫をこうげきする。
フェイトには餌付けが完全じゃなかったと悔しくて、俺は反応できなかった。

くっ!フェイトへの餌付けを怠ったか……って、今フェイトとなのは以外の声が聞こえたような……気のせいか。
そうすると、猫から青い石が……あれ? どこかでみたことあるような……これも気のせいかな。

フェイトはその石を「封印」と言い、石をデバイスの中に封印した。


「ごめんね、竜也」


フェイトはその言葉を残して、その場を去ってしまった。
俺となのは呆然と立っているしかなかった。

ごめんってなんだよ? 俺の「まて」の言うことを聞かなかったからか!?
だったら今からでも遅くないぞ、フェイト。

そして、そこの白いの!

なのはは俺の視線に気付いて、苦笑しながら、


「にゃはは、ばれちゃった」


と言って、気絶した。

どいつもこいつも好き放題やりやがって。
とりあえず、なのはに回復魔法をやってあげて……


「あのう?」


うん? なんか今フェレットがしゃべった気がするぞ?
動物がしゃべるわけないじゃないか、全く。俺も疲れてるのかな。
にしても、なのはの疲労相当だな。こりゃあもうちょいケアしてあげるべきか……。


「あなたも魔導師ですか?」


さっきからうるさいなぁ。フェレットがしゃべるわけないじゃないか。
やかましいので、とりあえず、


「猫2!」

「にゃ!」

「そこのフェレットを食べてよし!」

「にゃい!」


そういうと、キランと目を光らせてフェレットを襲い始める猫2。
人が魔法を使って、なのはを回復させているときに邪魔させる奴が悪いのだ!
せいぜい、食べられないように頑張るといい、ははは。


「た、助けてくださいーい!」

「にゃー!」





あとがき

ここからが本番みたいなもの。
作者のタピです。

第36話です。非日常パートです。
今回は頑張ってシリアスながらも、シリアスじゃなくしました。
みんな、リリカル好きでしょ?
というより、本当のシリアスは今後の為に残しておきたいんですけどね。
この回の前半はギャグパート。後半は魔法パートです。
というより、ギャグパートこれでいいのかな?

次回は、日常パート。
つまりは、この日の後半ですね。物語は少しずつだが、動き出してます。

最後に
いつの間にやら20万PV。たくさんの方々に見てもらって光栄です。
まさか、こんなに続くとは。最近のとらハ版の中では見劣りしますが、今後ともよろしくお願いします。



[16185] ─第37話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/19 09:33
なのはが魔導師だと発覚した。
元々魔力を感じていたので、そこまでは驚きはしなかったが、それでも驚愕の事実には違いない。
この世界において、魔力もちというだけでも十分に珍しいのに、その上に魔導師。
俺も人のことを言える立場ではないのだが、俺の場合は母親譲りというものがあり、それが魔力もちの理由でもあるし、魔導師の理由でもある。
そして、俺は実際に母さんから魔法の教わっている。
対してなのはは……もはや言うまでもないことだろう。

魔導師のなのはが現れたとき、そこにはフェイトの姿もあった。
フェイトが魔導師なのは事前に本人から聞いていたので、問題はなかったのだが……

問題は、この二人が対立してることなんだよね。
なのはの戦い方を見たら、素人と大して変わらないし、フェイトはフェイトで明らかに訓練した形跡があるし。
今のなのはなら、俺でも撃墜できるレベル。攻撃手段をまともに持っていない俺でもだ。
逆にフェイトは、負けはしないが勝つのも無理だろう。同じく、攻撃手段をまともに持っていないがためだ。
体術──つまりは、恭也さんにならっている剣術などを応用すれば、戦えるかもしれないが、実戦経験がなさ過ぎる。
だからといって、使えないわけでもないけどね。
話が逸れたが、この二人は対立している。そして、俺にとっては両方とも知人である。

なのはとは、小学校1年生以来の友達だし、何よりペットだ。見放すなんていう選択肢は持つわけがない。
フェイトとは、なのはよりは親しくないにしろ、友達であるし、俺の動物王国のメンバーの一人だ。
こちらも、なのは同様見放すわけには行かない。

そうなると……俺の立場がないわけだよね。
はぁ、なんという厄介ごとに巻き込まれたわけだ。関わるまいとしていたのにな。
でも、この二人が絡んでるようじゃ無視するわけにもいかないし。

しかし、相変わらず、あの時の助けを呼ぶ声の正体は掴んでもいないわけでもある。
だのに、事態はドンドン複雑化しているように思える。
ひとえに、俺が絡んだせいかもしれないけど……。

今更後悔したところでしょうがないか。
とりあえず、気絶しているなのはをベッドに寝かせてあげないとなぁ。


「よいしょっと」


なのはを背負って、豪邸のある方へ歩き出す。
背負ったなのはは意外に軽かった。




「「なのは(ちゃん(!?」」


家の前で優雅にお茶を飲んでいた、アリサとすずかが、俺がなのはを背負ってることに気付いて驚く。


「よっ!」

「『よっ!』じゃないわよ! あんたもいつまでも来ないから心配したけど、なのははどうしたのよ!?」

「そうだよ、竜也君。待ってたのに連絡もなしで……。なのはちゃんもどうかしたの?」

「いやぁ、ここに来る途中になのはがぶっ倒れてたから救出したんよ」

「来る途中って……まぁあんたのことだから今更驚かないけど」


俺のことだから今更驚かない……だと?
ふむ、よくよく考えたらアリサたちに会うのはこれが初めてじゃないか。
潜入ミッションからはじめって、まさかの……から、本当に長かったな。ここまで来るのが。


「竜也君は玄関から来ないでどうやって来たか気になるけど、とりあえずなのはちゃんをどうにかしないと」

「ああ、よろしく頼むよ。ベッドで寝かせてやるだけで平気だと思う」

「え? だって倒れてたんでしょ?」

「ああ、そうだけど。俺が回復ま──レイズしたから問題ないよ」

「レイズってあんた! できるあんたも問題かもしれないけど、出来たらできたらで、なのはが死んでるじゃない!」

「え? ああ、そうか。じゃあ不死鳥の──」

「同じ様なもんじゃない!」


うるさいなぁ、アリサは。
細かいことは気にしたら負けだよ? 生きてるんだからいいじゃないか。
人間生きてて何ぼさ。
まぁ実際のところは、ケアルラが限界も知れないな。
さすがに魔法でもレイズは出来たらやばいでしょ? 死者蘇生だし。どこぞのカードじゃないんだから。
しかも、あれは驚いたことに今じゃ禁止カードだしね。
昔はよく多用したのになぁ。時代の流れを感じるよ。


「まぁいいわ。とりあえずなのはを運ばないとね」

「うん。部屋の準備は出来たよ」

「よし、運ぶか」

「なのはちゃんはノエルに運ばせる?」

「いんや、俺が連れて行くさ」


全く世話のかかる、やつめ。
もし、あの場に俺がいなかったらもっと面倒なことになっていたんだから、感謝しろよな。
どうせ、なのはは嘘なんかつけないんだし、つけたとしてもそこに罪悪感でも感じて、先走っちゃいそうだしな。
その点、俺ならいくらでも誤魔化せるしな。
それに一応まだ嘘はついてないしね。


「じゃあ、行って来るから」

「え? 私たちも──」

「いや、一人でいいよ。起きたときはケアを頼むよ」

「……そう、分かったわ」

「じゃあ、ファリン案内してあげてね」

「分かりました」



ファリンに案内されて、なのはを寝かすベッドのある部屋に来た。
特に何の変哲のない部屋だが、こういった部屋を用意できると言う時点でブルジョワだよなぁ。
理不尽さを感じるよ。
この家とかこと在るごとに劣等感を感じるとか……ある意味俺に対する、嫌がらせ? いや庶民への挑戦状か。


「じゃあ、何かあったら呼んでくださいね」

「ああ、ありがとうな、ファリン」

「いえ、気になさらず」


気を遣ってか、部屋を出て、俺となのはだけにしてくれる。
と言っても、俺もなのはに話したいことはあるけど、なのはがまだ寝てるんじゃなぁ。
しょうがないので、一枚のメモ書きを残して、アリサたちの待つところに戻る。


「……竜也君、ありがとう」


部屋を出て行く間際に何か聞こえた気がしたが、上手く聞き取れなかった。


「どうだった?」

「気持ちよさそうに寝てたよ」

「そう……っで、何があったか説明してくれるかしら?」

「うーん、と何の話かな?」

「とぼけても無駄よ! なのはが何の理由もなし倒れるわけないじゃない」


さっきのレイズの話で上手く誤魔化せたと思ったんだけどなぁ。
誤魔化しが足りなかったか。
アリサは予想以上にしつこそうだな。まぁ根本的なところは友人思いというところからきてるんだろうから、嫌いじゃないけど。

それにしても理由ね……おそらくだが、魔力を使ったことによる疲労と、さっきの戦闘のせいだろうな。
俺も初めて魔法を使ったとき相当疲れたし、その上、同年代の子……フェイトとの戦闘だから倒れてもしょうがないかな。


「疲労じゃないか?」

「なのはちゃん最近無理してるっぽいからね」

「そんなのは、私だって分かってるわよ! そうじゃなくて、何で無理をしなくちゃいけない状況になってるか! そこが問題なんじゃない!」


アリサの言いたいことはよく分かるよ。
しかし、残念ながらそれは俺も知らないんだよな。
なんでなのはが、魔法を使えるのか。また、どうしてフェイトと対立してるのか。
あの時の二人の話の断片から、ロストロギアとか、ジュエルシードと言う単語が聞こえてきたな。
あと、フェイトが封印した、あの青い石も関係してるかもしれないな。


<そのことについては僕からお話させてもらいます>


唐突に念話が聞こえた。
しかも、この念話の声はどこかで聞いたことがある……。

ああ、そうかもしかして……。


<あの時助けを求めたのは、あんたか?>

<やっぱり貴方にも聞こえていましたか>

<やっぱりというと、あんたは俺が魔導師だと気付いてたわけか?>

<魔導師……というよりは、高い魔力にですけど>

「ちょっと、竜也聞いてるの!?」

「聞いてるよ。その理由についてこそ本人に聞くべきじゃないのか? 俺に怒鳴ったって変わらないぞ」
<ふぅん、俺の魔力に気がついたね>

「あ……そう、ね。ごめんなさい。確かにこれこそなのはに聞くべきだったわね」


アリサにしては珍しく、すぐに落ち着いた。それにやけに素直でもある。
なんか、最近のアリサが変なような気がするんだよな。
昔……と言ってもついこの間ぐらいだが、前まではこの程度じゃあ落ち着いたりはしなかったと思う。
まぁこの場合の素直は、いい意味だから別に気にする必要は無いと思うけどさ。

そして、俺の魔力に気付いていたと言う……ええっと誰だっけ?


<紹介が遅れました。僕はユーノ・スクライアと言います。魔導師です>


ユーノ……どこかで聞いたことあるような、名前だな。
どこだっけ、なのは辺りがしょっちゅう呼んでいた様な気がするけど……。


「あれ? そういえばユーノ君はどこに行ったのかな? なのはちゃんが追いかけて以来見ないけど」


そうそう、なのはが飼ってるフェレットの名前と同じなんだ。
え……そういえば、あのフェレットは確か魔力もちだったような……
こんな偶然がありえるか? 稲!じゃなくて否! いや、お米は好きだけどね。
ということは、あのフェレットが助けを求めた魔導師か……


<ああ、あのフェレットのユーノか?>

<フェレットじゃないんですけど……でも、いいです>

<さっき事情を説明してくれるって言ったけど、どういうことなのか教えてくれないかな>

<はい、実は……>


この後は延々とユーノの独白を聞かされた。
俺が頼んでおいてあれだが、話に要領が得ないんだよ。
なのはが……とか、なのはのおかげで……とか多すぎです。事柄自体をもっと明確にして欲しかったね。
それでも、大体の状況はつかめた。
ようするに、なのはユーノのお手伝いで、ジュエルシード探しと言ったところだ。
うん、単純明快でとても分かりやすいね。
そして、ユーノは管理局員ではなくて、スクライア? だっけその一族の一人で、責任感からこの世界に、とのことだった。
話を聞いた限りじゃあ、中々に波乱万丈じゃないか。と言っても、21個あるジュエルシードのうち今確保できたのは2個だけ。
しかも、そのうち1個はフェイトの手に……こりゃあ予想以上に複雑だね。
俺も手伝うのはやぶさかではないのだが……フェイトがねぇ。その一点が一番の問題かもしれないな。後は俺の立ち位置かな。

まぁどちらにしろだ。
なのは本人にもフェイト本人にも聞かなくてはならないことがあるから、行動を起こすのはそれからだろう。
ああ、本当に面倒になってきたなぁ。でも、管理局が関わってこないだけましかもしれないな。
関わったら、なのはとかフェイトとか優秀な魔導師になるだろうし、スカウトされるんだろうなぁ。
俺も別に管理局が嫌いじゃないけど、束縛されるのは嫌だな。
何よりも自由気ままにありのままに生きたい!!



夕方も過ぎ、夜になった。
結局、月村邸での会議の結論はなのはに事情を聞く、まずはそこからだ。と言うことになった。
アリサたちにとっては、前回と同じ結論に至ってしまったが、俺にとっては進歩があった。
まぁそれもこれも、このフェレットのおかげでもあり、せいでもあるんだけどね。

そんなこともあり、俺は現在自分の部屋になのはを呼びつけ、お話モードである。


「なんか、竜也君の部屋は久しぶりかな」

「そうだったかな? まぁ最近なのは忙しそうだったからね」

「うぅ、ごめんなさい」

「いちいち、謝るなよ」

「……ご──うん」


そして、すぐに黙ってしまう、なのは。
さっきからずっとこの調子である。俺が何か話そうとするたびにシュンとなって、謝る。そして黙るだ。
何を思いつめてるのか……俺は別に怒ってないと言うのに。


「ああ、もう! そんなうじうじしたなのはなぞ嫌いだ!」

「え……」

俺の一言で、膠着するなのは。
そして、すぐに何を言われたかを理解して、泣きそうになる。

俺だって好きでこんなこと言ってるわけじゃないというのに。
お前がいつまでもうじうじ泣いてるからいけないんだ。


「あのなぁ、なのは」

「……うん」

「お前は俺のペットなんだぞ?」

「にゃ!?」

「困ったことがあるなら、飼い主に相談しなさい! お話はそれからです」

「にゃにゃ!? た、竜也君!? い、意味がわからんだけど?」


どう意味が分からないのか俺には分からないぞ?
なのはは俺のペットで使い魔だ。だから、何か困ったことがあるならご主人様に相談するのは当たり前だろう。
そんなことも分からないようなら、俺のペット失格だな。
人気なんだぞ? 俺のペットの座は。今だって候補に、アリサやフェイトがいるんだから。


「お前は俺の唯一無二のペットってことは理解できたか?」

「な、なのはは竜也君のペットじゃないもん!」

「まぁ仮に使い魔だったとして、お前は一人じゃないだろ?」

「え?」

「だからさ。お前は一人じゃないだろって言ってるんだよ。
最近のなのはを見てると、どうも自分の問題だからって背負ってるように感じるんだよ」

「だ、だってそれは……」


俺の言葉が図星だったのか、反論できないで困っているなのは。

そう、図星なんだと思う。
今回の件は、自分が何とかしなくちゃいけないと思い、他の人に迷惑かけちゃ駄目だと思っての行動だろう。
さすがに2年も一緒に過ごしていればそれくらいは分かる。
ましてや、家で寂びしそうにするなのは、いい子であろうとするなのはをこの目で見てきたんだ。
だから……だから俺は、なのはとこんなにも長い時間一緒にいた。
なのはが寂しくならないように、と。
俺がこの町に来たときに俺の居場所を作ってくれたときのように、今度は俺が、と。
そして……


「もう一度言う、お前は俺のペットだ。その事実は揺ぎ無いが、それと同時に飼い主であることも揺ぎ無いわけだ。
なんで自分のかわいいペットが、なのが困っているのに無視なんて出来る?」

「…………」

「前にも言ったが、なのは」

「……うん」

「自分のご主人の前ぐらいは甘えろや」

「た……竜也君」


そう言うと、なのはが俺に抱きついてきた。

たく、ようやく甘えやがったか。世話のかかる子猫め。
せめて、子猫のときぐらいは飼い主に甘えろよ。


「あのね、竜也君。話したいことがあるんだけどね……」


その後のなのはの話は、今までの経緯と自分の心構えの話とかだった。
ユーノとの出会い、魔法との出会いなどを泣きながらに俺に抱きついたまま話す。
そして、今日の出来事。
今までのように、ジュエルシードの封印を手伝ってたら、またあのことぶつかっちゃう。
どうすればいいのか分からない、と。

話したいことと言うよりは、これは相談だよな。
まぁそれほどに信頼されてるってことなら嬉しいけど……。
その信頼を裏切るかもしれないんだよなぁ。

なぜかってそりゃあ……


「それで終わりか、なのは?」

「……うん、今話せることは全部話したよ」

「そうか……だってさ、母さん達」

「え?」


俺がそう人こと言うと、ドアが開かれて、人が入ってくる。
最初に俺の母さんが入ってきて、次には、


「お父さんにお母さん!? それにお兄ちゃんにお姉ちゃんまで!? どうして!?」

「うん、とまぁ。俺のせいかな?」


なのはが気絶している間に行ったこと。
まずは、母さんにことの経緯を相談した。もちろん、なのはが魔導師になったことや、ジュエルシードのこと。
その話を聞いた母さんが、さすがに魔法を隠してる場合じゃないと、なのはの家族に魔法の話をすることになったと言うこと。


「なのは、話は愛子さんから聞かせてもらったぞ」

「え……ごめんなさ──」

「なぜ謝るんだ? 別に父さんも母さんも怒ってないぞ?」

「私たちもだよー。ね、恭ちゃん」

「ああ、別に怒ってない」

「どう……して?」


士郎さんは言う、隠していたこと自体は問題のあることかもしれない。しかし、それは時と場合によるものだと。
今回の場合はなのはが正しいと思ってやったことに、怒る理由はない。だから、なのははこれからも自分がやりたいことをやって欲しいと。
だけど、もし、悩みがあれば自分たちに遠慮なく相談して欲しい。自分たちは家族なんだから。なのはは一人じゃない。遠慮なんか要らない、と。

その言葉に、高町家一同がうなずく。


「一人じゃない……」

「そうだ」「そうね」「そうだぞ」「そうだよ」

「うぅ……」


そう言って泣き出す、なのは。
相当嬉しかったのだろう、家族の名前を一人ひとり言って、そのたびに抱きつき、泣く。
その姿はようやく自分の親を見つけた、子猫のようだった。

今日は忙しい日だな、全く。でも、これで……これでもう大丈夫だろうな、なのはは。

そして、改めて、涙を拭ったなのは。
そのなのはの目には決心と、やる気の炎が映っているようだった。


「竜也君!」

「どうしたんだ、急に」

「なのはに……魔法を教えて!」

「いいわよ」

「母さん!?」


ようやく、と言うべきか、タイミングを見つけたかのように、母さんが出てくる。
その目は、ギランギランに輝いていた。

母さんがこの目をするときは、やる気に満ち溢れているときだからぁ。
なんか、嫌な予感がする。
いや、たぶん普通はいい予感なんだろうけど、俺的には嫌な予感だ。


「竜也だけじゃ、なのはちゃんの才能は伸ばしきれないわ。
私が竜也と一緒になのはちゃんに魔法を教えてあげる。私が教えれば、テスタロッサの子になんか引けをとらないわよ!」


この言い方だと、テスタロッサ家に何か因縁があるような、ライバル視しているような、そんなふうに聞こえるのだが、
気のせいだといいな、うん。
だけど、逆に母さんはテスタロッサの、フェイトの何かを知っていると言うことにもなるのか。


「愛ちゃん、なのはをよろしくね」

「任せて! 絶対に一流の魔導師にしてみせるわ」


こうして、俺となのはの魔法の特訓の火蓋が開かれようとしていた。
そして、なのはの問題は無事に解決と言えるだろう。

ひとまずの休憩に入るとしよう。
フェイトの問題は……明日やろう、明日。
今日は疲れたから……いいよね?





あとがき

なのは問題解決です。
作者のタピです。

書いてて気付いた、ユーノの存在意義がなくなっているような……気のせいですよね?
と言うわけで第37話です。なのは回です。

前半部分はギャグを交えながらの語り。
後半は完全にシリアスっぽくなってしまいした。
シリアスになるまい、と頑張ったんですけど、さすがになのはのあの問題は、ね?
どうだったでしょうか? 肝心の問題は未だ未解決ですが……。
この勢いで書くと、管理局が接触する前に解決も出来そうですが……そこまで行くと、原作崩壊レベルじゃなくなるw


ここだけの話、竜也がなのはに語る場面ではもっとオリ主らしい展開のもあったんですが、
それだと、なんかありのままにっぽくないので変更修正しました。

最後に、
竜也母に魔法教わるとか……魔王超えちゃうよ。しかし、それ以上に竜也があれだからいいかw。
たぶん、この話賛否両論になるんだろうなぁ。

P.S
次回からユーノが出ない可能性あり。



[16185] ─第38話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/19 21:46
なのはの問題が無事に解決した。
これで万事、上手くいくと思いきや、そうはいかないのは、まさに人生なのだろう。

うん、このセリフはどっかの小説の引用っぽいけどね。

それはともかくとして、問題なのは、アリサとすずかへのお話である。
あの二人はなのはが困っていたこと、苦悩していたことを感じていはいるものの、真意は知らない。また、話すわけにもいかないわけだ。
その理由が、魔法だった、しかもある程度の危険があると知れば、仲のいい親友としては黙っているわけがない。
それほどまでに、あの二人はなのはのことを思っているのだ。
なのはは本当に友人に恵まれてるよな、と心の底から思う。羨ましい限りだ。
そんなことを俺が言えば、アリサあたりは、「あんたも、その中に入ってるのよ!」なんて照れながら言うに決まっている。
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに……うわぁ、アリサかわええ。

言ってみようかな。その顔見たさに。
って閑話休題。話が逸れた。アリサがかわいいかどうかの話ではなく、なのはの事情説明をどうするかだ。

本来なら、なのは自身が、「解決したよ」と笑顔で、何事もなかったように言えればいいのだが、事態はそう簡単にはいかない。
もし、そんなのことをなのはが言って、「そう、それはよかったね」で終われば、いいのだが、問い詰められれば、
なのはのことだ、しゃべるに決まっている。
このことについては、士郎さんを筆頭とする高町家一同と母さんも同じ意見だった。

まぁそんなことを満場一致で言われたなのはだが、


「そん、そんなことないよ! なのはだってちゃんとできるもん!」

「アリサに迫られても?」

「へ、平気だもん」

「すずかがすごい笑顔で聞いてきても?」

「そ、それは……ごめんなさい、ごめんなさい、もう嘘をつきません、ごめんなさい。
そんな目で見ないでください、本当に申し訳ありませんでした」


と、沈んでしまい、なのは自身も同じ意見となったのだが……
はて? どうしてすずかに対してそんな低い姿勢──トラウマ的な感じに繰り替えして、すずかに謝るのだろうか。
何か過去にあったのだろうか……
最後の「なのはは猫でいいです、はい、私は猫です」と言ったのがやけに印象的に残った。

そんなこともあり、なのは本人がしゃべることが出来ないので、アリサへの状況説明は消去法で俺になるわけだが……


「っで、どうなのよ!」

「どうと言うと?」

「今日のなのはの様子よ! この間までずいぶんしょぼくれてたと思ったら、急にあれでしょ!?」

「浮かれてる感じだよね?」


すみません、俺も下手したら、魔法のことを話しかねない雰囲気です。
アリサはいつも通り、否! いつも以上の気迫を交えながら俺に今にも襲い掛かりそうな雰囲気を出しながら、脅迫。
すずかは、一見すごく、それはとてつもなく落ち着いているように見えるが、それが逆に怖いです。
なのはが、ひたすらすずかに頭を下げた気持ちも分かった気分だよ。

今の状況に至った経緯としては、
この二人は最初、なのはの様子が戻ったのにすぐ気がつき、安堵をしたと同時に、その理由を早速尋ねにいったのだ。
その時になのはが、


「詳しい話は、竜也君がしてくれるよ」


の一言で、矛先が図らずも俺に来たというわけだ。
まぁ結果的には予想通りというか、願ってもいない展開なわけで、俺が上手く誤魔化せれば、問題解決になるわけだが……
アリサも、すずかも頭はいいからなぁ。

学力的な面でというわけでなく、生きていく面でという意味での頭がいいだ。
アリサにいたっては学力も相当なものだが、まぁそこは俺とどっこいしょだからね。
こういう場面での、頭の良さというのは明らかに分が悪い。自分自身、悪いとは思わないが、この二人は別格だと思う。

そんな二人を相手に誤魔化すと言うのは至難の業というもの。


「そうよね、浮かれてる感じ……はっ! まさか!!」

「ん? どうしたんだ、アリサ?」


アリサの頭に電球が出てピコーンと出てるみたいだ。ようするに何か閃いたと言う感じだろう。
何を閃いたかは知らないが、ちょっと悪寒と言うか、いやな感じがする。
魔法がばれたと言うわけでもないだろうけど……なんだろうな、このいやな感じは。


「まさか、あんた……いや、そんなことは無いと思うけど。でも、前から……」

「ど、どうしたのアリサちゃん!?」

「そうよね、うん。そうに決まってるわ。それだったらなのはがうかれた理由も分かるし。
あんたがその理由を知ってるのにも納得がいくわ」


独り言を呟くアリサというのも、中々に面白いな。珍妙もともいえるかもしれないけど。
しかも、何を考えてる分からないが、だんだん顔が真っ赤になっていくし。
ん? そもそも、なんで考え事をして顔が真っ赤になるんだよ? 意味がわからないよ。

そんなことを思っていると、アリサの顔がさらに赤くなったが、次の瞬間深呼吸をして、一言言った。


「あんた、なのはと付き合ってるんでしょ!!」

「「え?」」

「にゃ!?」


そのアリサの一言は、このクラス中、学校中に響き渡った。

俺となのはが付き合っている?
いやいや、ありえないだろ、常識的に考えて。
だって、なのはってあのなのはだぜ? 子猫だぞ? 使い魔だぞ? 俺のペットだよ?

そう思いながら、なのはの方へ目線を向ける。


「にゃ……」


俺と偶然目があうと、急に顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
その姿はまるで、付き合い始めたばかりの初々しい男女のペアのようで──って!おい!
俺となのはは付き合ってないし、なんでそんな恥ずかしがるんだよなのは!
そんなことすると余計に──


「それは本当ですか!? 閣下!?」

「今宵はお祭りですね!」

「ついに正室が出来た、ということか……」

「さ、さすがです! 憧れるなぁ」

「いつかは俺が天下を……」


ああ、もう!鬱陶しい奴らまで出てきたじゃないか!!
誤解だっちゅうのに! 俺となのは付き合ってないし、しかも、なんだよ正室って!
仮に付き合っていても、正室だと結婚してるんじゃないか。その上、その言い方だと、まるで側室がいるように聞こえるぞ!?
うん? ということは一夫多妻制かな?
だとすれば、アリサやすずかもそこに入れて、ああ、はやても入れないと後々危なさそうだから入れて、フェイト愛人って感じで……
って、そんなことを考えてる場合じゃない!

あ、そろそろはやてにも会いに行ったほうがいいかな?


「じゃあ、側室って誰よ?」


おい、アリサよ。そこはまともに突っ込むところじゃないぞ? しかも、なんで若干真面目に聞いてるんだ?

それに、突っ込み間に合ってないけど、5人目!
お前野心あるだろ? 前々から気になってたんだよ、絶対裏切るだろお前!
裏切ったら言ってやるからな! 禿げって言ってやるからな!
どこかの秀才軍師みたいによ!
敵は本能寺にありって、敵は君の髪だよ、賢さと同時に抜けていく君の頭皮だよ!


「側室……アリサ殿かな?」

「いや、すずか様だろ」

「両方でいいんじゃない?」

「むしろ自分で!」

「ふふふ……反旗を翻す日は近い」

「え?」

「ふぇ?」


5兄弟の発言で、ついにはアリサとすずかまで真っ赤になって硬直してしまった。
すずかのその反応はなんだか久しぶりなような気がするなぁ。
うん、新鮮新鮮、かわいいね。

……はっ! 思わず二人に見惚れてしまった、不覚!
クラスのみんなが見てるのに……このままじゃあ余計に勘違いされるよ!

だって、側室扱いされて、一見照れてるように見えるアリサとすずかに見惚れてる俺だぞ?
怪しいと言うか、下手したら収拾がつかないぐらいの事態になりかねないよ……

ああ、こうやって突っ込んでると、なんだか疲れてきたな。
突っ込み忘れてたが、4番目の君。その発想危ないから。崇拝超えちゃってるから。
5番目はそろそろ何らかの処置をとったほうがよさそうだし……野望が声に出てるよ?
君はどこの門番ですか? そんなんだから、いつまでも所長になれないんだよ。あれ、署長だっけ?

にしても、3人はいつまでフリーズしてるつもりなんだろうな。
声をかけてみるか。とりあえず一番近くにいる、


「アリサ、いつまでフリーズしてるんだ?」

「え……あ、た……竜也」


俺が声をかけると、すぐに気がついて俺に向き直るアリサ。
しかし、すぐにその後に俺と目があって、また顔を真っ赤にして、押し黙る。しかも、若干恥ずかしそうにして、もじもじしながら。

あれ? いつものアリサじゃないよ。
な、なんでこんなに尖っていないと言うか、滑らかと言うか……照れてる?
いや、デレてるって感じなのかな?

場の空気がさらにおかしな感じなってるし……。
ああ、クラスメイトの目線が痛い。みんな見てるよ……。いつの間にか廊下にも人が集まり始めてるしさ。
どうするんだよ! この状況をどうやって切り抜ければいいんだよ。
どいつもこいつも正常じゃないしさ。俺だけなのか!? 普通なのは俺だけなのか!?

どちらにしろ、野次馬をなんとかしなくちゃな。
これ以上、噂が広まったらしゃれにならない。今の状況でも十分しゃれにはならないけど。


「5兄弟!」

「「「「「はい!!」」」」」

「今すぐ、廊下にいるじゃじゃおよび、噂話をこれ以上広げさせるな!」

「「「「「イエス! マイロード!」」」」」


これで、噂話もろもろは何とかなるだろう。
さり気無く、あいつらは優秀だからね。どんな手を使うかは分からないけどさ。
最近は運動能力の上昇もすさまじいしね。聞くところによると、閣下に見合う護衛になるには、訓練が必要だとか何とか言ってたっけな。
そもそも、俺は閣下──皇帝でもなければ、護衛もいらないんだけどね。でも、利用できるものは利用するよ。


5兄弟のおかげか、はたまた時間の経過のせいか、朝に起きた噂話は放課後になるとすでに、なくなっていた。
いや、なくなっていたと言う表現は正確ではない。
沈静化されたという感じだろう。
あくまで、噂の傷跡は未だに残っているのだから。それを、裏付けるものは……


「……アリサ」

「な、何かしら? た……竜也」


未だに俺に声をかけられると顔を真っ赤にするアリサ。
お昼休みのころには元に戻ったかと思ったのだが、そう簡単にはいかないようで。
下手したら、お手をするよりも恥ずかしがっているというか、照れているというか……まぁその姿が妙にかわいいので、そのままにしているんだけどね。
それに対して、すずかはというと、


「ふふふ、側室かぁ」


どこか怪しげな雰囲気をかもし出している。
その様子は、どうも近寄りがたいもので、俺はさっき──朝の出来事から話しをかけられないでいる。
一体どうしたと言うのだろうか……。
困ってはいるのだが、俺には収拾がつきそうにないので、すずかはずっと無視の状態。
そもそも、すずかにいたっては何しても、こっちに見向きもしないで自分の世界に閉じこもりっぱなしだ。

そして、なのはは……


「正室ってなんだっけ?」


意味を理解していないので、すっかり元通りである。
うん、天然と言うか……この場合はバカと言うのだろうか? でも、それじゃあ、なのはがかわいそうだから、子猫な脳とでも言っておくか。
ただ、本能のままに生きていると言う意味で。


「あ、なんか今、失礼なこと思ったでしょ!」

「なのははいつも子猫だといったんだ」

「え、そっか……いつものことかぁ」

「そうそう、いつものこと」


うん、なのはは俺のペットで使い魔だからね。
いやぁ、優秀な使い魔で本当にいいよ、ご主人様は鼻が高いな。

そう、優秀と言えば、なのはの魔法の練習が始まった。
昨日の晩、あんな出来事の後に、なのはが早速練習をしたい、と言ったためにだ。
まずはなのはの才能を見極める為ということで、得意の魔法を思いっきり見せてもらうというもの。
そして、俺はそれを受け止めろと、母が言った。

……うん、死ぬかと思った。
なんだよあれ、つい数週間前に魔導師になったばっかしの奴が、放つ魔法か!?
あ、魔砲か……って納得してる場合じゃないし!
なんだっけあの砲撃、ディバインバスターだっけ? 俺も最近は砲撃魔法の練習してるから分かるけど、案外難しいんだぞ?それを、あんな簡単に……。
まぁそれでも片手でガードしたけどね。そりゃあ、2年間努力し続けましたからね。防御はお手の物です。
受け止めたときに、なのはは驚いてたけどね。
でも、そのあとに「もっと威力を上げる必要があるかな」とか言ってたなぁ。末恐ろしいやつめ。

その砲撃を見た母さんは、それを見てなのはの才能に気がついたみたいだった。
母曰く、なのはは魔力の集束・圧縮の天才とのこと。
俺が万能型なのに対して、なのはは特化型とのこと。

その上、なのはには‘レイジング・ハート’という、インテリジェントデバイスがあり、これがまた優秀とのこと。
恵まれてていいですね! デバイスとか憧れだよ……。
前に母さんにデバイスがほしいと言ったら、まずはデバイス無しで魔法を使えるようになれ、話はそれからだといわれて、断念したからね。
母さんもデバイスはもってるらしいけど、口うるさいからスリープ状態だって言ってたし。
だったら、そのデバイスくれよ……。
まぁそんなわけで、なのはは魔法を教えてもらう環境がそろったので、今日は朝からうきうきしてと言うわけだ。

魔力量に関しては俺より少し少ないくらいらしい。でも、正確には測らないと分からないとも言ってたな。
まぁ俺に関しては、フェイトと争うつもりはないので、果たして魔法を使う日が来るのか……疑問である。

その分この使い魔が頑張ればいいか。


「……それでね、もう家に帰ろうと思うんだけど」

「え? ああ、もうそんな時間か」


最近は本当に、時間が過ぎるのが早いね。
毎日が楽しいからかな? それなら願ったり叶ったりだね。
刺激も多いしね……多すぎるくらいかもしれないけどさ。


「うん、そうなんだけど……アリサちゃんとずずかちゃんはどうする?」

「そう……だな」


未だに忙しそうだなぁ、二人は。
アリサはさっきから顔の表情がしょっちゅう変わるし、すずかは……うん、触れないでおこう。


「まぁ明日には戻ってるだろうから、今日はもう帰るか。俺も剣術の鍛錬あるし」

「う~ん……そうだね。じゃあ帰ろうか、竜也君」


俺となのはは、おかしな二人を学校に残して、家に帰った。
まぁ、あのままだと心配なので、5兄弟に家まで送るように言ってからだけどね。
いやぁ、あの5兄弟は本当にいいやつらだね。
本当に何がしたいのかはよく分からないけど……。

後日談になるが、翌日の学校では、アリサは微妙に甘えてきたり、すずかは顔を真っ赤にしたりと、一日経っても元に戻らなかった。
それでも、二日後には元には戻っていた。元に戻ってホッとした気持ちがあったが、どこか残念と思ったのは心の内に留めておくとしよう。




あとがき

シリアスの後なので、作者暴走です。
作者のタピです。

昨日のシリアスが嘘のようだw
と言うわけで第38話です。日常回です。

なのはについては上手く誤魔化したと思ってる。それ以上に内容が……気にしたら負けですよ?
フェイトの件はまた後ほどと言う感じになります。
そして、なのはのDBを軽く止める竜也です。一応チートオリ主ですからw忘れがちですが。

そんなわけで、まだ温泉の話にはまだ行きません。この感じだと、予想以上に話数がかかりそうですね。
A’s編書けるか疑惑だw

最後に
気付けばコメントが300を達成。
特に前回はたくさんのコメントありがとうございまず。皆さんのコメントにはいつも助けられてます。
これからも、こんな駄文ですが、よろしくお願いします。



[16185] ─第39話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/20 10:58
約一週間。
そう、一週間と言うと7日間のことだ。それも約というだけで、実質一週間経ったかどうかも微妙なわけだが。
はて? たったそれだけ会っていないだけなのに、怒られる要素はあるのか?
否! 絶対にない。
俺にだって都合はある。
そりゃあ、この一週間は大変だったんだ。
実質大変だったのは、ある一日だが、まぁ騒ぎを含め、大変だったのは一週間ということで。

あの騒ぎのせいでうやむやになってしまったなのはの件だが、あのあとの俺の必死の努力。
どこかの少佐並の演説によって、誤解は解けたけどね。いやぁ、みんなにもみせたかったよ、あの演説。


「だからな、はやて」

「なんや?」

「少し言い分けさせてくれよ」

「男のいいわけは見苦しいで?」


そう言われてもね。
会えなかったのには理由があるわけだし。
別にはやてを忘れてたわけじゃないんだよ。
ほら? あれだ。あまりにも忙しすぎて、はやてのことを考えてる暇がなかったんだ。それだけなんだ。


「そうなんかぁ、私のことを考える暇のうて、他の女の子のことを考える暇あるんやな」


ち、違うんだって! いや、ある意味あってるけどさ!
確かに、なのはとフェイトのことで大変だったし、この間の学校での出来事を収拾するのも大変だったけどさ。


「へぇ、学校での出来事か。何があったん?」

「ええっと、なんか正室とかそく──」


あれ? この出来事しゃべったらまずくない?
なんかこの流れてきに俺もついつい言っちゃったけど。危険が危ないと言うか……。
地雷を踏んだような気がするぞ?
で、でも平気だよね。あれは冗談の話だし、さすがにはやてだって、真面目に聞いたりしないよね?


「正室に側室かぁ? ふぅん、で正室は誰やね?」

「5兄弟いわく、なのはらしいが」

「なのはちゃんいうんかぁ、家はどこや?」

「ええっと……え? 何しにいくの?」

「お・は・な・し、やね」


いま、一瞬ハイライトがなくなったような気がするよ? 気のせいだよね?
遠くを見る感じと言うのかな。そして、口々に「ふふふ」と言うのが余計に怖く感じるよ。

それに、そうかお話か。それを聞いて安心……できないんですけど!?
いやね、なのはもお友達とお話しするのが好きらしいけど、はやてのお話ってどうも血生臭くなるような気がするな。
気のせいだよね。


「今夜は雨が降るなぁ、赤い」


小さく呟いたみたいだけど、声はやけによく聞こえたよ。
どうしてかな、不思議と身体も震えてきたな、「なのは逃げてー」って無性に叫びたくなるよ。おかしいな。

それに、赤い雨か……赤色の絵の具ならいいなぁ。
他に赤いものって……ああ、ペンキとか? 絵の具とほぼ変わんないか。


「まぁ今回は竜也君に免じて勘弁したるわ」


何をですか? もし、今日ここに来なかったらどうなってたんですか?
もしかして、なのはに明日は来ないとか……そんなわけないですよね。
俺って何を考えてるんだよな。全く、さっきから変なことばっかし考えてるよ。
おかしいよね、はやてと会った時ばっかし、こんな暗いと言うか危険なことが思い浮かぶなんて。
はやてはいい子だから、そんなはずないのにね。


「ふっ、ふふふ、今日は竜也君と二人きり~。今週はもう二回目やし、運がええなぁ」


うん、はやてはいい子……だよね? 俺に会えてそんなに喜んでくれるなんて、ウレシイナー。
はやてはかなりうかれてるよね。というか二回目って、それがで運がいいって言うのもよく分からないな。
そんなに会いたいなら、もうちょっと遊んであげるべきなのかな?
まぁどちらにしろ、最近はそんなに暇じゃないんだけどね。


「暇がないと私とは遊んでくれへんの?」

「え?」


はやてが涙目で、そして上目遣いで俺を覗き込んでくる。

そ、そんな目で見ないでくれよ。
俺だって出来るだけ遊びたいんだけど、それこそ剣術の鍛錬とか、魔法の練習とか忙しいんだから。
それこそ、都合が会う日はこうやって会いに……きてないですね。すいません。
でも、来ないからって、怖くなる理由はよく分からないんですけど?


「それはなぁ、美少女が寂しい言うてるのに、来ない王子様がいけないんやで」

「美少女って? 王子様って誰?」

「美少女は、私に決まってるやろ。王子様は竜也君や」


そうか、俺は王子様なんだ……。
巷では皇帝とか英雄とか言われたけど、ついには王子様か……今って民主主義の時代だよね?
もし、これが絶対王政のころなら、どれだけよかったことか……。
それこそ、動物王国が出来上がるよ。
あれ? そんな感じの映画なかったっけ? どこかの海賊物語あたりで。


「でもまぁ、これからは好きなときに、好きな時間に連絡取れるから、ええかな」

「なして?」


俺がそう不思議そうに、はやてに聞くと、はやてはジャジャーン、と言いながら、ポケットから出したのは。


「携帯電話?」

「そやで、これで伝書鳩の時代は終わりや!」


伝書鳩の時代終わっちゃうんだ……残念だな。
俺はあれ結構好きなんだよね、はとがかわいいのも理由の一つだけど、コストが……って前にも言ったか。
鳩はああ見えて、人懐っこいと思う。だって、俺が公園で寝てると、肩に止まるもん。
人嫌いな動物ならそんなことありえないよね。
だから、カラスは近寄ってこないし……ああ、前は鳶が肩に止まったなぁ。あの時はさすがに痛かったけど。


「じゃあ、さっそく私のメアドと電話番号を登録してな。今からメールと電話するから」

「ああ、それは別にいいけどさ」

「なんや?」

「なんで、俺のメアドと番号知ってるの? 俺は教えて記憶ないんだけど?」

「……タウンワークや」


へぇ、タウンワークって個人の携帯のメアドと電話番号まで書いてあるんだ~、すごいね!
俺は初耳だよ。俺も買おうかなぁタウンワーク……って、公衆電話のところにおいてあるか。

…………

現実逃避やめよう。さすがの俺でもぶるっと来たよ。
だって、タウンワークにメアドと電話番号載ってたらすごい数の個人情報漏洩してるし、
なによりメアドなんてしょっちゅう変わるから、更新が間に合わないでしょ、現実的に考えて。
とまぁ、御託はこんなもんにして……

何で知ってるんだよ! はやては俺のメアドと電話番号をさ!
おかしいじゃないか。本人から聞く以外に知る方法ないんだよ? 後は本人の友達とかさ。


「え? あるで」

「ほう、何か教えてもらおうか!」

「……それは企業秘密や」


こわっ!純粋に怖いよ!
やり方も手口も分からない方法でどうやって防げって言うんだよ!
人間にとって、何が起こるかわからないことが最も恐ろしく感じるというよね。
夜の廃墟とかさ。ああいう場所って幽霊とか出ないと思ってる人でも、何が起こるか分からないと言う人間心理から、
怖がっちゃうんだよね。
それと同じで、はやてにはある意味、未知で、無限の可能性を秘めてるから危ないし怖いよ。


「まぁ正直に言えば、前に竜也君が来たときに、ちょっと見せてもらったんやけどね」

「なんだ、案外ありがちな……って、浮気を調査する主婦か! はやては!」

「そうなんよ、肝心のメールとかはブロックかかってて見えへんかったわ、残念」


あ、危なかった。
お風呂はいる前にブロックかける癖が身についててよかったよ。
母さんがよく勝手にメール見ては、俺をにやけ顔で見てくるから、それで身についたんだが、怪我の功名って奴かな?
意味違うと思うけど……ある意味母さんのおかげだが、絶対に感謝はしないけどね!


「でも、ブロックかけるんいうことは、やましい事があるってことやね?」

「……そんなことないよ?」

「じゃあ、見せてくれてもええやん」

「それは……駄目だ」


なのはの命だけでなく、アリサやすずかまで命を失う危険性があるからね。
下手したら、5兄弟でさえ……いや、さすがにあいつらは男だからないか。
まぁあいつらに限っては命がなくなっても……いや、はやてを犯罪者にしちゃいけないから、殺すわけにはいかないな。
何より俺は、平和主義者だからね! 平和最高!
でも、そんなやつが魔法使って、剣術習ってるんだよね……。


「ほう……それじゃあ、力ずくでも!」

「そ、そうはいくか! 行け!猫その一!」

「にゃあ!!」

「な、なんや!?」


はやてが、車椅子とは思えないスピードで対面に座ってる俺に迫ってきたので、
俺は慌てて、窓を開け、外にいた猫に命令を出す。

実はあの猫が、さっきから気になってしょうがなかったんだが、絡む機会がなかったので、断念していたのだが、
ようやくそのチャンスが回ってきて、少し嬉しかったりする。
いきなり命令を出して言うことを聞いてくれるかは疑問だったが、聞いてくれて何よりだ。


「ね、猫は卑怯やで!」

「力ずくできた、はやてが悪い!」

「う……わかった。とりあえずお互いに落ち着こうや」


勝ち目は無いと思ったのか、はやては元いた場所に渋々ながら戻る。
俺も二匹の猫を抱きながら、部屋の中に入れて、ひざの上でなでなでしながら座る。

猫って結構ふさふさしてて気持ちいいんだよね。
抱き心地も、ちょうどいい重さだし、なにより撫でられて「ふにゃぁ」なんていってる姿がかわいい。

ここら辺は、なのはとかアリサだと代用できないんだよね。
手の温もりとかはあるけど、あの毛のふさふさ感は本物じゃないとやっぱり無理。
むしろ、人間がふさふさしてたらちょっといやだな。
あ、でも、頭でもいいのか。……今度やってみる価値はあるかな?


「竜也君は、ほんまに猫が好きやなぁ」

「動物なら何でも好きだよ?」

「狸でもかぁ?」

「何で狸がでてくるんだ?」

「ち、ちょっとなぁ」


う~ん、疑問である。
そういえば、今更だが、はやてと図書館で会った時も、狸にやけに反応してたな。
何かトラウマでもあるのだろうか……。
言われてみれば、はやては狸っぽくはあるんだけど……。
まぁ狐か狸かで言われれば狸って即答するけどね!


「電波的なもの、かなぁ」

「そうか、電波、かぁ」


電波ってなんだろうね?
この言葉って魔法という言葉と同じくらいに便利な気がするな。
なんか、これを使えば、「ああそうか、じゃあしょうがない」という気分にさせるよね。
うん、電波万歳! 魔法万歳だね!
でも、実際の魔法はとてつもなく努力が必要だけどね……ああ、思い出すだけで寒気が……。
そうか、よく考えれば今日、家に帰ってからも魔法の練習があるのか……


「どうしたんや? 顔が真っ青やで?」

「「にゃあ?」」


はやても、猫たちも俺の様子に気がついて、心配をしてくれた。
みんなええ子やなぁ。その言葉は心に染みるよ。それだけで、今日も頑張れる気がするよ。
最近は母さんの魔法攻撃だけでなく、なのはの魔法砲撃まで食らわされてるからね……。
なのはの方は、日を経つごとに威力が増してるような気がするし……感覚的なものなら俺より天才じゃないか?
俺なんか、なんだかんだで覚えるの早いとか言われながらも、身体に叩き込まれてからという感じだし。
母曰く「覚えるには、まず身体に刻んだほうが早いからね」とのこと。
刻むって言ってるし、無傷で覚えたいですよ。
いつの時代だって、楽して生きたいのにさ。それに、その練習方法って根性論に近いよね。


「はぁ……」

「ほ、ほんまにどうしたんや? 相談ならいつでものるで」

「「にゃにゃ」」


その心遣いが本当に心に……よし、決めた!
今日はこの猫を思いっきり可愛がろう。

あ、そういえばこの猫に名前がなかったなぁ。
さすがに、その一とかその二じゃかわいそうだしなぁ。どうしよう。
はやてにも相談して、名前を決めるべきなのかな?


<私はリーゼ・ロッテだよ>

<私はリーゼ・アリアよ、よろしくね>


そうか、ロッテにアリアか。
同じ苗字ってことは姉妹なのかな?

<双子だよ>


そうか、双子なのか。
猫の双子とは珍しい……と言うか俺は初めてだな。
どおりで、二人──二匹揃ってかわいいわけだよ、全く。


<えへへ>

<ありがとう>

「さっきから、何をブツブツ言ってるんや? これはほんまに重症かも知れへんな」


失礼な、猫としゃべってただけじゃないか。
何がおかしいんだよ。むしろ、おかしいのははやての方じゃないのか?

まぁいいか。
この猫姉妹を見てると、怒る気になれないんだよなぁ。すごい和むよ……心がとても落ち着くし。
できれば、明日の温泉にもつれていきた──あ!


「はやて」

「なんや?」

「明日家族もろもろで、温泉行くけど一緒に行くか?」

「え?」


俺がそういうと、少し困ったような顔をした。
でも、すぐに考えがまとまったのか、残念そうに俺に向かっていった。


「ごめんなぁ。行きたいのやまやまなんやけど、私がいると迷惑かかるやろうし」

「迷惑なんてかからないけど? むしろ、いてくれたほうが楽しいし」

「ありがとう。でも、ごめんなぁ。その代わりにお土産をお願いな。あと、楽しいお話もやで」


心底残念そうに、そして、悔しそうにしながらも最後は必死に笑いながら言う。

はやてにとっては、あの足がそこまでも枷になってるのかな?
それとも、他の理由があるのか……。

どちらにしろ、はやてがこういうのだ、無理やり連れて行くというのもありだとは思うけど、本人の意思を尊重すべきかな。
となれば、しょうがない。
温泉から帰ったら、そっこう遊んでやるか。温泉旅行中にメールとかしてもいいしな。


俺はこの後、日が沈むまで、猫とじゃれながら、はやてと楽しい話をした。

はやては、あの怖い雰囲気がなければ本当に優しくていいと思うんだけどな。そこがちょっと残念だな。
でも、あの暗さってまさか俺に原因があったりして……まさか、ね?




あとがき

そろそろフェイトの味が恋しくなる今日この頃。
作者のタピです。

第39話です。はやて回です。
感想で、はやて~~が多いですよねw みなさんの懸念はよく分かりますw
そして、期待通り書けたかな? そんなことを思いながらうpです
今回はなんか色々突っ込みどころ多いですね。気のせいだと思いますが。

個人的にはやては大好きです!中の人的な意味を含め!

最後に
次はいよいよ40話。
フェイトのフォローをしなくちゃいけないですね。

そして、最近よくある質問に答えます。

Q:なのはの猫BJはまだ?
A:一言、まだです。ネタバレになるので詳しいことは書けませんが、書くとしても、無印以降になると思われます。
その日が来るまで、首を長くして待ってもらえると光栄です。



[16185] ─第40話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/21 12:06
待ちに待った、温泉旅行……と言うほど大げさなものではないが、
せっかくの連休に、滅多にないみんなでお出かけと言うイベントを、楽しみではないと言う方が嘘になるだろう。
みんなと言っても、高町家一同プラス数名と言う感じではあるのだが。
その数名の中にはもちろん俺を含めた、アリサや月村家一同がいる。

しかし、母さんは来ていない。
こういうイベントはすごく好きなはずだが、今回は翠屋で一人お留守番とのことだった。
士郎さんや桃子さんも、母さんも一緒に来るように説得してくれたのだが、母曰く、


「ありがたい話だけど、遠慮させてもらうわね。こういう日も働かせてもらわないと、ね?」


と言い、今日も仕事をするとのことだった。
色々と不可解で謎の部分の多い母だが、金銭面においては、結構シビアだったりする。
その証拠に金銭面的なやり取りは親しい仲である高町家ともしていなかったりもする。

変なところで大人なんだよなぁ。親しき仲にも礼儀ありというか……。
でも、こういった遠慮と言うか、けじめをしっかりしてきたからこその人脈なのかもしれないけど。
もしかしたら、今までお世話になってるお礼、恩返しと言った理由もあるかもしれないが……。
どちらにしろ、この母にはいつも計り知れない何かがあるような気がする。

そんなわけで、母不在、その上、はやてにも振られて、俺の関係者が次々に辞退したので、俺は若干寂しかったりする。
なので、はやての家からあるもの、と言ってはおかしいが連れてきたものがある。


「士郎さん」

「なんだい?」

「動物を車に乗せてもいいですか?」

「まぁ、別に問題はないよ」

「そうですか……おいで」

「「にゃぁ」」


連れてきたのは猫姉妹ことロッテとアリアである。
昨日遊んで以来、すごく懐かれた上にかわいかったのでついつい連れてきてしまったと言うのが事実だ。
俺も寂しかったのでちょうどいいしね。


「ほう、‘本物’の猫か」

「はい、‘本物’の猫ですよ」


なのは猫やアリサ猫ではなく、今度は本物である。
なんか、この言い方だとなのはやアリサが偽者のように感じるが、俺は決してそうは思っていないよ。
二人──二匹は俺にとってかわいい猫そのものだが、そして俺の動物王国への道へのキーでもあるが、やはりは元は人間であることは否めない。
まぁなのはに限ってはすでにペットであり、使い魔であるからして、本当に今更と言う感じではあるけど。


「しかも、二匹もか」

「はい、二匹もです。しかも双子です」

「そうか、双子なのか……」


士郎さんはそういうと、「一体どうやったらこんなに動物に懐かれるんだ」とか、
「しかも、双子ってどうやって分かったんだ」と、さぞ不思議そうに呟いた。

俺からすれば、本人? 達から聞いたことだと言えば簡単なんだけど、それを言ってしまえば、また不思議がられるだろう。
一応、俺自身も自覚していることだから言うが、普通は動物と会話はできない。
いや、なんか俺がごく普通にしゃべるから忘れがちだが、動物は日本語を話せない。
もちろん、俺が動物の言葉をしゃべるのも無理だが、なぜかお互いに分かってしまうとでもいうのだろうか……。
まぁ、説明しにくいものだから、そういうものなんだな、と俺も納得をするしかないんだけどね。

そんなこともあり、温泉旅行が幕をあげた。


「なんで、猫を連れてきているのよ……しかも二匹も!」

「竜也君が、他の猫を連れて来てる……」

そう、文句を行ったのは言わずと知れたアリサである。
そして、なのははなんか急に暗くなってしまった。その上、同じ言葉を繰り返す、猫姉妹を睨みつけながら。

何ゆえなのはが暗くなるのか分からない。そして、何で、猫姉妹に敵意なのかな?
それを抱くのか、よく分からないな。まさかの同属嫌悪!? ……そんなわけないか。

温泉旅行に行くにあたって、車は二台用意された。
一つは、俺、アリサ、すずか、恭也さん除く高町家一同が乗る車。さらに、言うなれば動物が三匹も乗っている。
二匹は先ほど士郎さんに許可をもらって乗車している猫二匹なのだが、もう一匹は……あのフェレットだった。
名前は確か……ユーノ・スパイダーだっけ?


<スクライアです!>


そうそう、スクライアだった。
でも、このスクライアって言う名前はどこかで聞いたことがあるな。確か、魔法の歴史を勉強してるときに……。
まぁ気のせいだろう。
このフェレットこと、ユーノは、なのはが魔法に出会ったきっかけになった動物だとか何とか言っていた。
なのはの初代魔法の先生だとも言ってた気がするけど、まぁさして気にするものでもないだろう。


<あの後大変だったんですから……>


あの後とはいつのなんのことだろうか、全く覚えていない。
身に覚えのないことを恨まれるなんて……ひどいな。
そもそも、俺は動物には寛容だし、動物には優しいから、動物に恨まれるようなことはしないぞ?
もちろん、それがフェレットであっても同義だ。


<月村さんの家で、猫に襲わせたのを覚えていないのですか?>


月村邸で、猫にフェレットを襲わせた? 俺がか?
ありえない……なんてことはありえないらしいが、ありえないね。
そもそも、月村邸でフェレットとは会っていない気がするし……。

俺が月村邸で出会った動物と言えば、猫……猫……なのは……巨大猫……フェイトぐらいなものだ。
あ……アリサとすずかもそうか……。
でも、どっちにしろ猫と犬にしかあっていないわけだ。
それ以外に会ったといえば、あのロボットと言うことになる。
まさか!? あのロボットの中にユーノがいたと言うことなのか!?

……………………。

いや、さすがにそれはないか。
そういえば、あのロボットのことについて、後々すずかに聞いたら、自分じゃ分からないからお姉ちゃんに直接聞いてとのことだった。
人様の所有物を、ミッションの為とはいえ、やらざるを得なかった、どうしようもなく、仕方なかったこととはいえ、
壊してしまったのだ。
最悪弁償、最低でも説教は覚悟して謝りに行ったのだが、これが意外な結末になった。


「ロボットが庭にいて、それを壊した?」

「はい、すみません……」

「どんなロボット?」

「ええと、オレンジ色の──」

「ああ、あれね」


俺がオレンジ色と言う、たった一つの言葉だけで、すぐに何か分かったみたいだ。
まぁ確かにあのロボットはキャラが濃いというか、印象に残りやすいからすぐに分かるとは思ったけど、
製作者なら分かって当然かなとも思う。


「あれね……勝手に住み着いてたのよ」

「え?」

「まぁ私にもよく分からないんだけどね。壊してくれたのなら、むしろお礼をいうべきかな?」


勝手に住み着いていた……そんな猫じゃあるまいし……。
そもそも、あのロボットって見てくれや性能はあれだけど、よくよく考えれば中々の高性能だよね?
名のある科学者が造ったというのが、妥当な可能性だけど、それにしたって野生のロボットはありえないだろう……。


「いえ、お礼なんて」

「ふふふ、そうよね。まぁそのことについては気にしなくてもいいよ」


明るく、気さくに許してくれた。
忍さんって笑ってるときの姿とかすごく綺麗なんだよね。
この人が恭也さんの彼女さんなんだよね……というか、忍さん言うには、もはや許婚の関係だとかも言ってた気がするな。
でも、あの二人ってすごいお似合いなんだよね。
恭也さんと忍さんのツーショットなんて絵になりすぎるし……。羨ましい関係だよね。


とまぁ思い出してみたものの、やはり記憶にない。
ユーノの勘違いだろうね、これは間違いよ。


<もういいです>


ユーノも自分の勘違いだと悟ったのか、諦めたみたいだ。
無駄に言い争ってもしょうがないしね。こういう記憶の誤差と言うのは水掛け論だし。

そんなわけで、この車に人が7人と3匹、計10もの人と動物が乗っているので、結構車の中は狭かったりする。


「いいじゃないか、猫かわいいだろ?」

「そ、そうだけど……」

「でも、すごく竜也君に懐いてるよね。私も家で猫飼ってるからわかるけど、猫って意外と懐かれるまで時間がかかるんだよ?」

「え? そうなの?」


俺にはあまり実感のない話だ。
公園にいても、次々に猫は集まるは、鳩が止まるはで動物にいつの間にか囲まれてるからね。
だから、動物が懐かないとか、猫が言うことを聞かないと言うのはむしろ俺にとっては珍しいことだったりする。
最近だと、餌付けしなくても言うことを聞くからね……この猫姉妹もそうだったし。
あ、でもこの猫姉妹の場合はよく遊んであげてるな。
遊んであげないと微妙に拗ねるしね。その拗ねた様子もかわいいから、あえて遊ばないで放置したりもするけどね。


「あんたが人外なのはよく知ってるけど、そこまで行くとさすがに引くわね」

「ひどいな。アリサだって懐いてる猫の一匹の癖に」

「う、うるさいわね!! 私のことはどうでもいいのよ!」

「アリサちゃん、いい加減に諦めたほうが気が楽になるよ?」

「な、なのはまでどうしたの!?」


そうだぞ、アリサ。いい加減諦めてどこかの猫みたいにデレデレになっちまえよ?
あ、でも、恥ずかしそうにする姿もかわいいから、それはそれでいいんだけど……う~ん、難しいな。


「目的地に着いたぞ」


そんなとりとめのない話を猫姉妹を常に撫でながら、しゃべっている間にも車は進んでいたおかげで、
退屈な時間を過ごすことなく、目的地に辿り着けたようだ。

ただ、この話をしている最中に運転席あたりから、
「なのはは、どこへいこうとしているのか……」という、呆れ交じりの悲しみを感じられる言葉が聞こえたような気がする。

何はともわれ、目的地に到着である。
場所はここも一応は海鳴市らしいのだけど、海に面している住宅街と比べ、ずいぶんと山奥。いや、事実、山奥だった。
ここに来る途中、車の窓から見る景色は、まさに山のそれだったことが証拠でもある。

海鳴市は実際に‘自然溢れるいい町’と言う、フレーズがまさにピッタシの町なのだが、それが見てとれる一面だと思う。
海あり、山ありの人柄よし、雰囲気よしの人が住むにはこれ以上ないほどの町だ。
俺と母さんもこの町に来たのはつい2年前のことだが、まるでそのことが大分昔のような、
昔からこの町に住んでいたかのように感じさせるほど、この町にはすでに思い出が一杯だ。

ようするにここ、泊まりに来た温泉旅館の場所もすごく自然に溢れ、とてもいい場所ということだ。


「自然がいっぱいでいいわよね、こういう雰囲気は好きよ」

「私も、海も好きだけど、山も好きだなぁ」

「動物も多そうだな」

「あんたはそればっかしね……らしいっちゃらしいけど」


山だしね。
もしかしたら、ここで新しい動物との出会いもあるかもしれないじゃないか。
例えば、山と言えば……猿とか?
でも、海鳴市に猿がいるという話を聞いたことはないな。

なら、昆虫とか? ああ、でも俺の目的は動物王国を作りたいわけだから昆虫は範囲外かな?
動物王国の中に昆虫園とかもいいかもしれないけど……。


「よし、チェックインも済んだから、とりあえず旅館に入ろうか」


チェックインしに行っていた、士郎さんが戻ってきた。
みんなも士郎さんの言葉に従って、旅館に入り、まずは用意された部屋に入ることになった。
部屋の割り方は子供達は全員一緒なのだが、男一人に女3人か……もっと正確に言えば、あと動物3匹も一緒なのだが……

まぁ今更だよね!
前にも4人でお泊まり会とかしてるわけだし、俺もいい加減慣れた。
あと、諦めもついたので反論もせず、言われたとおりの部屋割りで納得した。

余談だが、よくこの旅館動物平気だよね。やっぱりペットブームに対応してということなのだろうか?


そんなわけで、二泊三日の一日目。
長旅、と言うほどではないにしろ、車での移動でみんな疲れているだろうとのことでさっそく温泉に入ることになった。
猫姉妹も一緒にお風呂にいれようと思ったが、拒否されたので、しょうがない、それはもう非常に残念であるが、
代わりにフェレットと一緒に入ろう。

あぁ猫と一緒にお風呂入りたかったなぁ。
でも、いいこと思いついたからいいかな。寝るときは二匹の猫を抱いて寝よう!




あとがき

いつの間にやら40話、未だに無印も終わらない。
作者のタピです。

第40話です。温泉旅行の導入部なのでそんなには暴走してません。
してないですよね?
温泉旅行の話は、結構長くなるかもしれないです。まだ分かりませんがw
やっぱり本編の話になると何回にも渡っちゃいますね。

最後に
なんだかんだでユーノがでるw
しかし、扱いはかなり酷いですね。ユーノファンの人すみません。



[16185] ─第41話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/22 10:37
お風呂に入るにはかなり早い時間帯。
しかし、温泉旅館に来たわけだし、早い時間帯に入ることも、何回もお風呂に入ることも別段問題ではない。
むしろ、お風呂に入ることに意義があるので、大いに結構と言うところであるだろう。

そんなわけで、お風呂を入りに来たわけだが、素晴らしいことに誰もいない、独占状態である。
女湯では、なのはたちが入ってるわけだが、男湯には俺しかいなかった。
もとより、男女の比率が圧倒的に女のほうが高いのだ。
男は俺を含めて、恭也さんと士郎さんだけだ。

まぁここは温泉旅館であるので、男湯に誰もいない理由にはならないが、しかし現実は誰もいないのである。

俺はみんな一緒に入ると思ったのだが、それはどうやら女子面子だけだったようだ。
士郎さんと、桃子さんはいつの間にかいなくなってるし、恭也さんは……まぁ山が目の前にあるから、サバイバルでもしてるんじゃないかな?
知らないけどさ。
でも、あの人は鍛錬好きというか、練習好きというか……そういう努力家の一面──というのかは微妙だけど、
情熱はすごい人だと俺は思っている。

なので、一緒に来た男勢は全滅。
また、時間が早いせいなのか、俺たち以外のお客さんがいないのかは分からないが、先ほども行ったとおり、
男湯には誰もいないのが現状。


「大きなお風呂を独占できる優越感はあるけど、大きな風呂を一人で使えてしまうと言う現実に、寂しさも覚えるよ」


そんなに大きな声を出して独り言を呟いたわけではないけど、他に音もなくとても静かなので、風呂場には俺の声だけが響いた。
余計に寂しく感じる光景だった。

こんなことなら、5兄弟も誘えばよかったなと思う。
本当に今更になって存在を思い出したのだが、時すでに遅し、彼らはここにはいないのだ。
もしかしたら、今から電話やら、メールやらで呼び出せば来てくれるかもしれないが、それではいくらなんでも、都合がよすぎる。
傲慢と言うものであろう。
学校では閣下などと呼ばれる身であるなら、そんな傲慢なことをすれば、民はついてこない、
傲慢な王様、はたまた傲慢な皇帝となってしまうだろう。

まぁそんなの気にしてもしょうがないけどね。
もとより勝手につけられたあだ名だし、未練も何もないけどさ。
なんと言われようとも気にするわけでもないし。


とは思うものの、慕ってくる相手に愛想を尽かれてしまう姿を想像するとちょっと悲しくなってしまうあたり、
俺も大分感染、もとい染められてるなと思う。
よくよく考えれば、あの面子ともそこそこ長い付き合いだ。


「始まりはドッチボールだったけな」


あの時はまだ4兄弟と名乗っていたなぁ。
今でこそ5兄弟だが、あの時はまだ普通だった気がするし。
逆に言えば、今が異常なのかもしれないな。俺も人のことは言えない気がするけど……。

あの後から、ドンドン力をつけて今では、俺と遜色のないほどの運動神経を誇る。
最も5人揃っての話ではある。だが、5人揃ったときの破壊力やチームワークは目を見張るものがある。
今なら言える。あいつらが宇宙人、未来人、異世界人、超能力者だったとしても驚かないと。

さすがは海鳴市の一員と言う感じなのかな。
全員が全員、人外と言うわけではないのだろうけど。

海鳴市、いや、もっと掘り下げるなら俺の周りが異常なだけかもしれない。
母を筆頭とし、高町家一同もそうなら、アリサやすずかの家だって異常なほど金持ちだと思う。
少なくとも、一貧乏庶民の俺にはそう思えるわけだ。

風呂場で独りでお風呂に入ってるせいか余計に考え深く、感傷的になってしまう。
それも全て、話し合う相手がいないということから、頭の中で考えるしかないからである。

例えば、誰もいない風呂場で独りブツブツ呟いてる人がいたとする。
そこにお風呂に入ろうと名も知らない人が来たとするなら、呟いてた人はどう考えても変人である。
少なくとも入ってきた人にはそう見えると思う。俺ならそう思う。
なので、独り言はもし誰か入ってきたら、と考えると自重せざるを得ないのだ。


「でも、考えすぎるのもよくないよな」

とか、考えたにもかかわらず独り言を呟く。

だって、寂しいじゃないか! この状況!
絵にしたら大分哀愁あると思うよ。

せっかく温泉旅行に来ているのに、一人ブルーになっている状況など空しすぎる。
そう思ったので、風呂場から見える外の景色を眺め心を落ち着かせることにした。

シンプルな造りの大きいお風呂に入りながら、外の景色を壮大に眺めることができるのがこの旅館の特色だと思う。

実際に、俺が見ているこの景色は緑豊かで、窓を通してでも小鳥のさえずりが聞こえるようだった。
夜にはライトアップできるようになっているのか、窓の外側には小さいライトがついている。

これは夜も期待できそうだな。
日中は日の光で、まさに大自然と言うのを感じさせ、夜はライトアップでシンミリさせてくれそうだね。
太陽が出ていない、雨の日でも逆にそれが風流に見えそうだし……年がら年中楽しめそうなお風呂だね。

とは言うものの、男のお風呂はせいぜい長くても30分程度だろう。
俺も入ってからすでに結構経っていると思われるので、そろそろ出ることにする。
確かに飽きない景色ではあるかもしれないけど、所詮はお風呂。
疲れが取れて癒されれば、お役ご免という考えがどこか頭の隅にある。

お風呂を出て身体を拭き、着替えながらこの後どうするかを考える。

なのはたちはまだ入ってると思うし、部屋に戻って一人でいてもしょうがないしなぁ。
そういえば、士郎さんたちはどうしたんだろう……。
桃子さんもいないことから二人でいるのは分かるけどね。
万年新婚夫婦とはまさにあの二人のことを言うんだろうな。
もし、父さんが生きてたら母さんも、そうだったと思うし……。

ああ、駄目だな。こんなこと、もしなんて考えたら、後悔とか悲しみばかりでちゃうよ。
後悔先に立たずとは言うけど、こういうことを言うんだろうな。

よし!切り替えよう。
気分転換で、外でもほっつき歩くかな。
せっかくいい自然が目の前にあるんだし、散歩しない手はないだろうな。
恭也さんじゃないけど、サバイバルしたくなる気持ちも多少は分かる。

あくまで、多少だけどね。


思い立ったら吉日とは言うけれど、俺はその後すぐに動きやすい服に着替えた。
そして、外に向かう為に玄関に向かった。
そのときだった、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。


「あれ? 竜也かい?」


声の主を確認しようと後ろを振り向くと、そこには懐かしの顔がいた。


「お、アルフじゃん。どうしたのこんなところで」

「……それはあたしのセリフだよ」


アルフ──フェイトの狼が元の使い魔だ。

どうやらこの旅館に泊まっているのは俺たちだけじゃなさそうだ。
一安心である……って、フェイトもアルフも入っても女湯じゃないか!
結局俺は……やはり、5兄弟を呼ぶべきかな。


「やっぱりあんたもジュエルシードかい?」

「ジュエルシード? ああ、関係ない関係ない。ただの温泉旅行だよ」

「ならいいんだけどさ。もし、あんたもジュエルシードを狙ってるって言ったら、戦わなくちゃいけないからね」


ジュエルシード、この間フェイトが封印してた奴だっけ?
ユーノとなのはが探してるのも一緒のものだっけ?
だから、この間二人が戦ってしまったわけだし……。

なのはがジュエルシーを集める理由は、ユーノの手伝いだって言ってたな。
とすると、フェイトは一体どんな理由で……。

まぁあまり深く聞くのはフェイトのためにも悪いと思うから、話してくれるまでは聞かないけどさ。

俺からすれば、仲のいい二人には戦って欲しくはない。例え、そこにどんな理由があろうともだ。
でも、どうしても戦わなければならない。ぶつかり合わざるを得ないと分かりあうこともあると思う。
まぁこれはなのはの受け売りだけどさ。
なのはが言うには、アリサとすずかのとの出会いがまさにそうだった、と。


「フェイトがさ」

「ん? フェイトがどうした?」

「最近ちょっと元気がないんだよねぇ。時間があるなら会ってくれるかい?」


主が元気ないのを心配する……いい使い魔じゃないか。お兄さん泣いちゃうよ。
俺もこんな使い魔が欲しいよ。

そんなこと思っていると、旅館に連れてきていた猫姉妹がいつのまにか足元に来ていて、
にゃーにゃー鳴いて慰めてくれた。

お前らは慰めてくれるのか? 猫姉妹は優しいな。おもわず抱きしめちゃうぜ。

ぎゅうっと結構強く抱きしめると、なぁ~と言って、若干苦しそうにしたが、すぐに落ち着いて、気持ちよさそうになる。

こいつらが使い魔ならなぁ。結構な魔力ももってるし、きっといい使い魔になるだろな。主思いの。


「そうか……それでどこにいる?」

「森の方に歩いていったのは見たけど……」


つまり今は分からないんだな。
なんだ? 主の場所は分からないのに、自分は温泉に入るのか、アルフよ?
もしそうなら、少し失望しちゃうぞ?
まぁフェイトのことだから、アルフが一生懸命誘ったのに、心ここにあらずと言う感じで、断られたと言うのが妥当だろうけど。


「うん、俺も少し散歩しようと思ってたから、見つけたら声かけてみるよ」

「ああ、頼むね」


アルフはそう言うと、俺に期待の眼差しを送ってから、廊下を俺とは逆方向のほうに歩き出す。
つまりは、温泉のある場所だ。

もし、このままアルフが温泉に向かえば、下手したらなのはたちに遭遇するんじゃないか?
とっさにそう考えて、アルフに一言なのはのことを言っておこうと思う。


「アルフ!」

「なんだい?」

「もし、金髪の少女と一緒にいる、栗色の髪の子で魔力を感じたら、俺の使い魔みたいなものだから、
あまり苛めないでれよ。例えそれが、敵であっても」


たぶん、フェイトからなのはの話は聞いてるだろうし、もしそうなら、主人思いのアルフのことだ。
フェイトに敵対しているなのはに、何か言いかねないからね。

そして、なのはのことだ、そんなことを言われれば余計に背負い込みかねないし、先手を売っておいて問題ないだろう。
ただでさえ、やっとこさ家族や魔法のことで一息ついたのに、今度はフェイトのことをどうすればいいか思い悩んでるなのはだ。
今でこそ、俺に多少は相談してくれるけど、自分の悩みを全部打ち明けているとは思えないしね。
何より、俺も有効なアドバイスをできていない。
俺自身がハッキリしていないのに、出来るわけがないんだ。なのはには悪いが俺が相談したいぐらいである。


「わかったよ、だからそっちも任せたよ」

「あいよ」


今度こそ、この言葉を最後に俺とアルフは別れた。

なのはもなのはでフェイトのことを考えて。
フェイトはフェイトでなのはのことを考えてくれてるのかな?
出来ればそうであって欲しい。
もし、そうなら、今は食い違っていても、いつかはきっと……とそう思える。

でも、俺は俺で二人のこと考えてるんだけどなぁ。
出来れば俺の努力も報われればいいな。

そう思いながらも、森の中を歩く。
森の中は以外に、整備されていはいたが、しょせんは獣道に多少は人も通れるようにしました、と言う程度。
逆に言えば、自然がそのままの形を保てるようにしているとも言える。
むしろ、そうなるように仕向けて作られたのかもしれない。

日もまだ高く、木々が生い茂る森の中は、葉っぱが日の光を受け緑色に光っているように見える。
そして、葉と葉の間から、道に日が射しているこの情景は、博物館の絵の中にいるような気分にさせてくれる。

そんな中、結構高い木の上に、一人金髪の少女がたぶんデバイスを抱くように眠っているのを見つけた。




あとがき

あれ? ユーノが空気だ。
作者のタピです。

ということで、第41話。竜也回です。
ほとんど思考です。途中途中のネタに気付いてもらえたら嬉しいですw
アルフと遭遇、そして次回は……



[16185] ─第42話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/23 00:58
木の上で寝ているフェイトを発見したのだが、発見したのだが……。
どう声をかければいいんだ?

本当に今更になってなのだが、アルフに会ってやってくれなんていわれても、会ってどうすればいいんだ?
元気がないらしいのだが、俺に何かできることはあるのだろうか。

……ああ、いいや。細かいことは考えない方がいいか。
俺らしくないないというか、俺が落ち込んでいたら誰が励ますんだか。

はたしてそれでいいいのかは分からないが、とりあえずフェイトと話してみようとは思う。

フェイトと最後にしゃべったのは……、いつか覚えないや。
かなり前だったような気がするけど。でも、最後に言葉聞いた言葉は最近だったかな?

そんなフェイトとの正確な記憶も定かではないなか、意を決心──なんて言い方は、大げさだと思うが、それなりの覚悟と意識を持って声をかける。
木の上で寝ている少女に対して。


「フェイト!」

「…………」


よほどぐっすり眠っているのか、起きる気配がまだない。
本当に木の上で器用なことだ。
今の声で、フェイトがもっているデバイスのほうは少し反応したような気がするけど、気にしてもしょうがないだろう。

さっきと同じ声で起きるような気がしないので、今度はもうちょい大きめな声で呼びかける。


「フェイトー!」

「……竜也の声がする……」


俺の声は聞こえたみたいだが、目がまだ完全に開いてはいない。その上、寝ぼけたように俺の名前を呼んでいる辺り、
まだまだ起きる気配が感じられない。そして、また目を瞑り寝てしまった。

一体、どれだけ眠いんだよ。
それとも相当悩みこんで寝る暇がなかった、熟睡が出来なかったのかな。

仮にそうならば、俺の大切な親友であるなのはのことを考えてくれている、という前提なら嬉しいことだ。
いや、仮にそうだったとしても、あまり喜んじゃいけないことなのかな。
そのせいで、フェイトが蝕まれているみたいだし。

寝ているフェイトを黙って見る。
その木の上で寝ている姿は、とても熟睡していて気持ちよさそうに見えるんだが、時々異様にその姿が寂しそうに見える。
そして、その姿はとても儚く感じられた。
やっぱり、何か背負い込んでいるというのが垣間見えているような気がした。

こういう面に限っては、なのはに似ているな。

とは思うものの自分が何とかしてあげられるような問題でもないかと、自分自身に悪態をつく。
相談相手こそなれても、励ますことが出来たとしても、根本的なところの問題は自分次第。
そこまで、どうにかできるとは思えない。

だから、俺にできるのは……

ここまで考えて、ようやく結論付ける。
本当に今更だが、そしてこれが俺の根本的な部分なのだろう結論に至る。

その場のノリで何とかするか。
俺があれやこれやと深く考えてもしょうがない、いつも通りだね。

なるようになるさ、なんて思いながら、もう一度フェイトに声をかける。
今度は言葉だけじゃなく、念話も一緒に。


「<フェイト!!>」

「え!? た、竜也!?」


さすがに驚いたのか、フェイトが飛び起きる、が。
そこは不安定な木の上、慌てたフェイトがバランスを取り乱し、起きた結果は、


「あ、やばいね」


フェイトの落下である。
フェイトは寝ぼけているせいか、重力に逆らわずに落ちていく、しかも頭を下にして。

やばい! あのまま落下すれば下手したら重症だよ。
普段のフェイトなら魔法を使って跳べばいいんだろうが、寝ぼけているせいか真っ逆さまだよ!

俺は慌てて、フェイトの落下地点に手を出し、フェイトを受け止めようとする。

運よく、フェイトは俺の腕に落ちてきたが、俺がフェイトを支えきれずに……、


「のわっ!」

「……あ」


俺がフェイトの下敷きとなってしまった。

あれ、こんな感じのシチュエーションを見たことがあるな。
なんかのアニメか、漫画だっけ?
いや、そんなことを考えてる場合じゃないよな。


「竜也、大丈夫?」

「伊達に鍛えてないから大丈夫。」


事実、かなり鍛えてあると思うよ。
そりゃあ、毎日恭也さんの鬼のような乱舞に、母さんとなのはの魔砲を毎日食らっていれば、嫌でも頑丈になるというものさ。
本当に……毎日が生きるか死ぬかの死線みたいなものだからね。
まぁそれでも、ちゃんと力加減はしてくれてるみたいだけどさ。

って、そんなことより、肝心なのはフェイトじゃないか。
俺のことはどうでもいいんだよ。


「フェイトは大丈夫だったか?」

「うん、竜也のおかげ、だよ」

「いやいや、実際は微妙なところだけどね」


しっかり、受け止められていれば多少は格好よかった気がするけど、
重力に負けて倒れちゃったからなぁ。
むしろ、恥ずかしいレベルかもしれない。


「ううん、ありがとう」


そう言うと、今日初めての笑顔を見せてくれたフェイト。
なんだかとっても久しぶりな見た気がする。

なのはとはまた別の純粋さ溢れる笑顔だよな。
太陽の光と、金色の髪の毛がフェイトを余計にかわいく綺麗にしている気がするな。

俺がフェイトの笑顔に見惚れていると、ふと急に悲しそうな顔をした。

あ……もうちょい笑顔見たかったな。

綺麗な笑顔を見れなくなったのとの、せっかく元気になってくれたと思っていたのに悲しそうな顔をしてしまったので、
二重の意味で、残念に思った。


「あの、ね。……この間は、ごめんね」

「え?」


フェイトのいきなりの謝罪だった。

俺はフェイトに謝るられるようなことされたっけかな。

記憶を探るものの、理由は全然見つからなかった。
俺の中にいるフェイトはいつだって、笑顔で、そしてお手をしたという記憶しかなかった。

まぁお手してくれたのは一回だけどね。


「ええっとね、覚えてない?」

「ああ、全然」

「白い魔導師の子と戦ったとき」


白い魔導師……ああ、なのはのことか。
確かにバリアジャケットは白かったよな、学校の制服と一緒で。
あの白いバリアジャケットは……思い出したくなかったな。

だって、あいつ魔法使うとき性格変わるんだもん。
なんなんだよ、何であんな笑顔で魔法をばかすかと撃つんだよ。
怖いよ! しかも、一つ一つの攻撃がなんで一撃必殺クラスなんだよ!
もし、俺が防御魔法が得意じゃなかったとしたら……。

そう思うと、背筋凍るものを感じた。
笑顔で「竜也君いくよ~~」と、魔法を撃ってくる少女が脳裏に浮かぶ。


「大丈夫、竜也? 顔が青いよ」

「え、ああ。大丈夫、たぶんまだしばらくは大丈夫」

「え?」


あんなのが経験を積んで数年後は……ああ、やばい。
一応魔法の先輩として負けてらんないから、もっと強くならないとな。防御をもっと硬くして……。
って話が逸れてしまった。

フェイトとなのはの戦ったというと、ああ巨大猫のときだっけか?
あれは失敗だったな、冷静にお手をさせたつもりになって、むしろその判断は冷静じゃなかったよね。


「うん、あのときはごめん、ね」


確かあの時もフェイトは去り際に、俺にごめんと言ってたな。
あの時は何のことか分からなかったけど、今なら分かる。

それは、たぶんその前に俺が発言したことに関係があるのだろう。
その前に発言したこと、それは……


「まて、という命令を無視したからか?」

「え?」

「まぁ気にするな、次は言うことを聞いてくれればいいんだから」

「え……あ、うん。分かった」

「なら、いいんだよ」

「あの……」

「どうした?」


まだスッキリしたという顔じゃなかった。
言いたいことがある、もしくはまだ不安なことがある、それを確認しようとしているのか、
それとも、もっと怖いことに怯えているのか……。
そんな感じの雰囲気と戸惑いを感じさせる間合いだった。
それでも、勇気を振り絞って声を出そうとする。そして、実際にその声は非常に小さいものだった。


「私のこと……嫌いになった?」


その言葉は俺に重くのしかかった。
あまりにも、あまりにも悲しすぎる発言。俺はそう思った。

何でそんなことを言うんだよフェイト。
何で俺がお前を嫌いにならなくちゃいけないんだ?
どうして…………何でこんなことを考えるんだ。

俺には到底解りっこない、その言葉の意味と経緯。
でも……この言葉は言わせちゃいけないと思った。


「フェイト!」

「うっ……ご──」

「お手だよ」

「え?」

「ほれほれ」

「う……うん」


そう言うと、とっても久しぶりにフェイトにお手をした。

もちろん、お手ということは相手の手の温もりが直接伝わってくる。
当たり前だがフェイトの手は暖かかった。
そして、俺の手もたぶん……。


「竜也の手……冷たい」


あたたかいは──しまった!
そうだよな、そうですよね! フェイトのを暖かいと感じるということは、俺の手が冷たいからであって、
俺の手が暖かかったらフェイトの手を暖かく感じられないよね!
まぁ「フェイトの手が暖かいね」と言うつもりだったから、そっちの方が都合がいいんだけどさ。

よし、では台本通り? にセリフを──


「でも……暖かい」

「え?」


あれおかしいな、俺の目から汗が……。
ああ、やばい。フェイトの気遣いに心の汗が噴出してるよ。
優しすぎるよ、フェイト……今の俺にはフェイトが金色に輝いて見えるよ。
というか、本当に輝いてるよ。主に夕日の関係とかで。

そして、金色に輝いているフェイトの目下も少し光っているような気がする。


「ど、どうして竜也も、泣いてるの?」

「き、気にするでない。それよりもだ、さっきの質問の答え」

「え? ……うん」

「だから、これが答え」

「お手、が?」

「そう! 俺は嫌いな動物にお手とか要求しないよ? それに、フェイトは大好きだよ」

「え……あ、ありがとぅ」


俺がそう言うと、さっきよりも目下が光っている。

泣いているのかな?
そんなに俺の言葉が嬉しかったのか。

でも、言ったことは虚言でも、ましてや大げさでもなかった。
俺は好きな動物たちに愛をささげる。
俺はどこかの世界最大宗教の教主でもないので、全ての動物──まぁあの人が愛すのは人だが──を愛せると言うわけではない。
だが、大抵の動物に愛は注げる自信がある。
しかし、その中にでさえ程度と言うものがある。俺にとってお手とは、最もかわいらしいもの注ぐ行為そのものだ。
だからこそ、なのはやアリサ、すずかにだって強要することはあるし、野生の猫にだってしてもらうことがある。

ようするに、フェイトだって……俺にとっては愛すべき動物の一人、一見矛盾している動物に一人と言う単語だが、
この場合はむしろ正しいと思う。
それは、一匹の動物のように愛すのと同時に一人の人間として大切だと思ってるからだ。

…………。

あれ? なんか今俺かっこいいこと言った!
あくまで俺の思考の中でだけどさ……。

まぁようするにそういうことだ。
こんなこと恥ずかしくて誰にも言えないけどな。

フェイトはようやく泣き止んで、正常な判断が出来るようになったのか、
今更になって、不思議そうな顔をしていった。


「あれ? そういえば、何で竜也はここにいるの?」


本当に今更な疑問と質問だった。
まぁ確かに今まで聞くタイミングがなかったのは分かるけどさ。
俺も言うタイミングがなかったし……。


「温泉旅行だよ」

「ただの?」

「そう、ただの」

「……よかった」


心の底から安心したと言う表情だった。
アルフも同じようなことを言ってたから理由はよく分かる。

つまりは、俺と争わなくて済んだからだ。
もとより、俺は争う気はないし、ジュエルシードなんてぶっちゃければどうでもいい。
ただ問題なのは、なのはとフェイトがそれに関与してること。

そして、その結果二人が対立せざるを得ない状況。

はぁ本当に俺はどうするべきか……。
やっぱりこのことについてはなのはにも相談するべきかな。
むしろ、なのはこそ決断すべきだよな。
このジュエルシードについては俺は結局のところは当事者ではないんだし。

こんな言い方をすると、他人事みたいだよな。
大切な親友が二人も関わっているのに。


俺はこの後も少しフェイトと森の中を散歩した。
でも、大分日が暮れてきたことから、そして暗い森は危険なので、あまり長くはいなかった。

それでも、久々のフェイトとの時間は楽しかった。
フェイトは前に会ったとき同様に終始、俺の裾を掴んで俺の斜め後ろを歩いていた。

そして……別れ際にフェイトが、小さく呟いた。


「全部が……全部が終わったら、また、遊んでね」


その言葉を放ったときのフェイトの顔には決意と覚悟の両方が混じっていたような気がする。
そして、言外に……やらなくちゃいけないことがある。
そう言われた様な気がした。




あとがき

本当はこの回で、なのはvsフェイトのに入るはずだったんだ。
作者のタピです。

話がのんびりですが、更新ペースが早いのでそこでフォローしてもらえるありがたいです。
第42話です。フェイト回でした。
若干シリアスにしながら、ありのままにっぽくを目標に頑張っております。
フェイトって予想以上にかわいいと思った今日この頃。元々なのはとはやてと猫姉妹派なので。
最後に
次回はもしかしたら番外かもしれません。
最近作者が暴走していないのでw



[16185] ─第43話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/24 22:36
フェイトと分かれた後は、まっすぐ部屋に帰ってきたときには、すでにアリサもすずかもなのはも、戻ってきており、
夕食の準備にはいるとこだった。


「今までなにやってたのよ!」

「散歩だな」


「まさか、他の女の子と散歩、なんてことはないよね?」

「いや……ない、ない!」


不覚にもなのはが怖いと感じてしまった。

嘘は言ってないよ?
俺は散歩するついでにフェイトを見つけただけであって、そしたらフェイトが後ろからついて来ただけだ。
決してアリサたちを放っておいて、フェイトといちゃいちゃしてたわけじゃない。


「こんな遅くまでどこほっつき歩いていたのよ! みんなで卓球とかしたのに、あんただけいないし」

「どうどう、アリサ。俺のことを心配してくれたのか?」

「ち、違うわよ! みんなで楽しもうとしてるのに、迷惑かけたあんたが気に入らないだけ!」


俺が迷惑かけたか?
否! 絶対に迷惑かけていない。
それに、なのはに散歩に行ってくるとメールを送ったはずだが……。


「あ、本当だ」

「なーのーはー!」

「にゃー! ごめんね、アリサちゃん」

「ははは、もっとやれー」

「竜也君、止めてあげなよ」


止める? ご冗談をすずか。
俺がアリサに無実の罪をかぶせられたのに、その原因がなのはだったんだ、怒られて当然だ。
決してさっき危ういとこを突かれたから復讐してるわけでもないよ?
それに、最近なのはは元気がなかったから、こうやって触れ合ってた方が楽しいだろ?
あ、楽しいのは俺か。
なのはは猫状態で遊ぶのも楽しいが、やはり、素は素でいいものがあるな。
アリサに苛められて、若干涙目のなのはなんて最高だ!

……あれ? なんか危ない扉を開いた気がする。
まぁ気のせいだろうな。

本当に楽しい時間……母さんもはやても来れば良かったのになぁ。
あ、そうだ、はやてにメール送ってやろ。
どんな文面にしようかな……。

『こっちは楽しいです。とてつもなく楽しいです、はやてがいないのが非常に残念です。ああ、本当に残念すぎる』

まぁこんなもんかな、ついでに涙目のなのはを……


「なのは」

「何、竜也君?」


アリサに怒られて、さっきより涙目のなのはを呼び、パシャリ。
うん、いい泣き顔──じゃなかった、笑顔が撮れた。

よし、これをメールに添付して送信っと。


「あ! た、竜也君その写真をすぐに消して! 泣き顔なんて恥ずかしいの!」

「泣き顔? そんなに嬉しそうにしてるじゃないか」

「竜也君にはこれが嬉しそうに見えるの!?」

「だってなのははえ──」

「た、竜也君!」


すずかが俺の言おうとしたことにすぐに気付き、大声で邪魔をした。
そして、小声で、


「それは、さすがに言っちゃ駄目じゃないかな?」

「自覚ないのは問題じゃないか?」

「そうかもだけど……なのはちゃんにはまだ早いと思うよ?」


確かにそう言われてみればそうかもしれない。
自覚ないのはその言葉の意味を知らないからくることかもしれないしね。
それに、なのはには……やっぱ純粋が一番だよね!

今一瞬、Mだと認めたなのはを思い浮かべ、あ、これやばいかもと思った自分を自粛したわけじゃないデスヨ?
危うくなのはに洗脳されるとこだった。


「『え』で何?」


しかし、なのはには『え』と言う言葉は通じてしまったようだ。
これはまずい、しっかり誤魔化さないと。

必死に自分の頭の中の国語辞典を検索する。
え……え……え……、


「エキサイティング、そう、なのははエキサイティングだな!」

「えきさいてぃんぐ?」


なのはは言葉の意味が判らないらしく、頭の上に疑問符を浮かべる。

どうやら、上手く誤魔化せたようだ。我ながらうまいこと言ったと思う。

エキサイティング──白熱的、情熱的。
つまりは、もしこの言葉の意味を知っててもなのはに当てはまる節はあるのだ。
さすがは俺の脳内辞書といったところだね。

それに、なのはは魔法を使ってもとってもエキサイティングだしね!
それはもう、怖いほどに……。

南米サッカーのフーリガンも真っ青なエキサイティング度だ!

まぁ下手したらエキサイティングしてる、なのはは真っ赤だけどね!
血糊的な意味で……いやぁ本当に非殺傷設定って便利だよね!どんなにやっても人死なないもん! ……たぶん。

顔に返り血を浴びているなのは。
そして、きっとこう言うんだろうな。

「竜也君、今日も一緒に遊ぼうね」と。

……こわっ!
自分で想像しておいてめっちゃ怖く感じたわ! なんか鳥肌立ってきたよ。


「竜也、どうしたの? 体が震えてるわよ」

「え? ああ、武者震いだ」

「「「何に!?」」」


お決まりのセリフを言う。
だって、返り血を浴びたエキサイティングななのはを想像して、ガクブルしてたなんて言えるわけないじゃないか!
なのは云々より、俺が異常者扱いだよ!

と、そんなくだらない妄想をしていたら、携帯が震えている。

そうか、お前も怖かったのか……。
ちょっと携帯に同情した瞬間だった。

って、そんなわけも無く、はやてからの返信だった。
なんて書いてるかと言うと、

『楽しそうで何よりや。それで、竜也君は女の子を泣かして何が楽しいんかいな?
それともこれは、私を泣かせたいちゅうことなんか? 俺はこんなに楽しんだぞと私に見せて、泣かせたいんか?』

あれ? おかしいな。
俺は、こっちは楽しいのに、来れなかったはやての為にもこの楽しさを伝わらせようと送ったのに、
なんか怒ってるような感じがするな。
気のせいだよね?

結局この後もはやての誤解は解けず、帰ったらじっくり話すと言うことで落ち着いた。
じっくり話すって俺は特に何も無いんだけど……。
まぁどちらにしろ、今回の土産話やお土産も持っていくつもりなので、都合がいいと言えば都合がいいかもしれない。

そして、なのはたちはというと。
美味しい晩御飯をいただいた後、今日は移動で疲れたのか結構早い時間に就寝したようだ。

肝心の俺はというと、実はそうとう眠い。
眠いのだが……。

眠れない状況でる。
どうしてかというと、この状況が問題なのだ。
この部屋は四人分の布団を並べてもかなりゆとりはある。
なのにもかかわらず、どうしてこう、密集して布団を敷く必要があるのだろうか?

左から、すずか、なのは、俺、アリサ、と言う感じである。

この状況を良い言葉、つまりは都合の言いように解釈するなら、両手に花。ハーレムといえるだろう。
だがしかし、これは一緒に寝るとなると状況は一変する。
それは、四面楚歌とも言えるし、絶体絶命もしくは、軽犯罪ともいえるかも知れない。
何が言いたいかというと、前にもこのような経験をしても、一回や二回で完全に慣れるなんてことは不可能だと言うことだ。

しかし、しかし、だ!
俺はここに来てようやくものすごい画期的なアイディアを思いついた。
それは──猫ディフェンス!

まさに、俺らしいというところだろうか。
まさか、こんなところで猫姉妹が役に立つとは思わなかった。
ようするに人と人との間に猫を挟むことにより他国との境界線、領土をハッキリさせようというのだ。

よし、さっそく実践しよう。
すでに布団の中で丸くなってる姉妹を持ち上げて……。

ん? 人と人との間に猫……人間──人猫間?
ああ、なのはのことか。

人猫間と書いてなのはと読む、もしくはアリサ? たまにすずか?
うわぁ、便利な言葉が出来たよ。

じゃあ、人犬間でフェイトかな?

くだらないこと(自分で言ってしまうあたり自覚している)を考えていると、魔力の反応を感じた、詳しくは分からないがたぶんジュエルシードだと思われる大きな魔力だ。
それと同時期にフェイトの魔力も感じた。

噂をすればなんとやらだね。

それにしても、さっそくジュエルシードでも見つけたのかな。
仕事? 熱心なことだと感心していたら、なのはがその反応に気付き、部屋を飛び出して行った。

このままじゃ、また二人が激突しちゃうな。
俺にできることはないとは思うが、まぁ一応見にはいってみるか。

そう思い、俺もなのはの後を追って、すぐに部屋を出た。
そうすると、俺と一緒の布団に潜り込んでいた猫姉妹まで一緒についてきた。


「心配してくれてるのかな?」

「「にゃあ」」

「そうか、ありがとう」


俺は心配してくれる猫姉妹を引き連れて、急ぎなのはとフェイトの下へ向かった。


急いで向かいようやく追いつくと、どうやら殺伐とした雰囲気だった。

こりゃあ、場違いってもんかもしれないなぁ。
でも、二人には喧嘩して欲しくないし……う~ん、どうしよう。

そんなことを暢気に考えていると、アルフがなのはに飛び掛った。


「あ、まずい!」


俺はとっさに、なのはの前に出て、なのはの盾に──


「え?」

「竜也!?」


あ、なんか蹴飛ばしちゃった。


「ゆ、ユーノ君!? それに、竜也君!?」


まぁいいや。
俺はなのはの前に飛び出したんだが、アルフは俺に気付いて攻撃を止めようとするも、勢いで止まらない。
でも、大丈夫、俺にも魔法が……。あ、リミッター解除してないから防御できないや。
まいったなぁ~ははは、やば!

リミッターをつけていて、魔法を使えないのを今更思い出す。
このリミッターは母がつけたもので、母さんにしか解除できない。
なので、このままではアルフの攻撃が直撃──


「にゃー!」

『え?』


これが本当の猫ディフェンス……。

当る直前、猫姉妹、アリアの方が俺の目の前でシールドを張って守ってくれた。
あまりのことに、自分が助かったことより、猫が魔法を使ったことに驚いてしまった。
驚いたのは俺だけでなく、なのは、フェイトまでもが驚いていた。
でも、一番驚いていたのが、


「嘘……あたしの一撃を軽々と防御するなんて」


全く揺ぎ無いシールド。
まさに鉄壁の守りと言うべきか、防御が得意な俺にはよく分かる。
これほどまでに洗練されて、綺麗な防御魔法は明らかにただの猫のものではないと。

というか、え? この猫たち魔法使えるの?
すげぇ、最近の猫ってすげぇ。
なのはも猫って言えば猫だから、もうあれだな……やっぱり動物ってすげえ。

動物の未知なる可能性に触れた瞬間だった。


「竜也、それあんたの使い魔かい?」

「いや、違うよ。懐かれたから連れてるだけ」

「本当かい?」

「極めて本当だ!」


はやての家で出会って以来の付き合いだからな。
そんなには長く一緒ではないが、それなりの関係は築いてきたつもりだった。
まさにそれが真価を発揮した瞬間でもある。

そして、アリアが防御しているうちにもう片方の猫が……


「あ、そ……それは危ないから、駄目だよ」


ロッテはフェイトがまだデバイスの中に封印処理をしてないのに気付き、ジュエルシードを奪取してきた。
そして、それを口にくわえて、俺の下に返ってくる。


「え? 俺に?」

「にゃー」

「そうか、ありがとうな」


俺はロッテにお礼を言って、ついでになでなでして褒める。とても嬉しそうだ。
アリアにも、護ってくれてありがとうとロッテと同じように褒める。そうするとロッテと同じように嬉しそうにした。
双子だけあって反応がよく似てる。
その後、アリアは左肩にロッテは右肩に上って待機した。

ちょっと重いけど、気にしない。
片方は命の恩人だし、片方はジュエルシードをとって来てくれたしね。

それにしても、フェイトも自分にとって大切なものを猫に取られたのに、猫を心配するあたり優しいよな。
まぁ普通ならそもそも奪われないと思うけど。


「竜也、ジュエルシード、返して」

「フェイトにはそれが必要なんだよ!」


フェイトと、アルフが俺にジュエルシードを返すように言う。
二人ともかなりな剣幕で迫ってきてる。

うーん、結構怖いな。そこまでして集めなくちゃいけないものなのかな?
返してあげたいのはやまやまなんだけどね。

そうすると逆になのはは、


「ええっと、竜也君それ渡してくれないかな? すっごく危ないんだよ?」


なのははジュエルシードが欲しいと言うよりは、俺の身を心配しての対応と言う感じだった。

その心配はとても嬉しいんだけどね。
だからって渡すわけにも行かないね、そうするとフェイトが、ね?

あっちを立てればこっちが立たずとはまさにこのこと。
つまり俺は板ばさみ状態。
逆に言えば、このジュエルシードに行方は俺が握っていると言うことになる。

さてどうするべき……。
喧嘩──戦闘はして欲しくない。
二人とも俺の大切な親友でありペットとペット候補だ。傷ついて欲しくもないしね。

二人の様子を見る。
フェイトたちは剣幕こそあるもの、力で奪うつもりはないようだ。
そこらへんは、今までの使いである程度信頼……信用されてると言うことなのかな?
もし、そうなら嬉しい限りである。
まぁ猫姉妹を警戒してるだけかもしれないけど。

そして、なのは。
こちらは心配そうな目をしている、今にも泣きそうな顔だ。
というか、もう我慢の限界なんじゃないかな?
それほどまで、追い詰められてると言うことかもしれないけど……。

さて、確認したわけだが。
平和的解決は何かないか、怪我をせずに文句の言いようのない解決方法。

…………あ!
あるじゃん、こういう時こそあれしかないよな!
平和的解決で、不満文句のいいようのない完全天運任せの方法が!

もう一度二人の目をしっかりみる。
そして、大きく息を吸い、宣言する!


「相沢竜也主催! 大じゃんけん大会!」

『え?』


開いた口がふさがらない、閉口。眼から目玉が飛び出す。
誰もがそういった顔をした。

よし、まさに世界平和まっしぐらだぜ!




あとがき


ふふふ、帰ってきました!この感覚!
作者のタピです。

番外編を書くつもりが、調子が出てきたのでm本編を……。
ということで第43話です。ある意味、竜也のターン!
そしてある意味、竜也無双です。この発想が中々難しかったです。



[16185] ─第44話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/25 03:01
「人が傷つくのも傷ついてるのも黙って見てるのはいやだ!」
と俺が言うには、あまりにも綺麗過ぎるセリフであり、あまりにも現実的なセリフではない。
ましてや、俺らしくないと思う。

俺らしく、ありのままに言うとなれば……


「平和って大切じゃん」

「「「え?」」」


なんで、そんな驚くような表情をするのかな? 三人は?
まるでバカを見るような……心外だなぁ。傷つくよ?

正確には二人と一匹。
もっと正確には肩に乗っている猫姉妹も驚いていたので、二人と三匹。
あれ? 人の数より動物の数の方が比率が高いね。

まぁ俺なんて得てして、いつもそんな感じはするが。

俺の発言は実に単純にして明快、楽観的にして象徴的、そんな意味合いを含めそうな言葉であるが、まさにだからこそ俺らしさと言うのがあると思う。

もっと……もっと自分の感情を掘り下げて、もしくは葛藤を言葉にするなら、

フェイトにはなのはと戦って欲しくない。
なのはにはフェイトと争って欲しくない。
フェイトがなのはを傷つけている姿は嫌だし、なのはがフェイトに傷つけられている姿も嫌だ。

つまりはそういうこと、全てはそのまんま。
別段深い考えがあるわけでもなく、特に大変な葛藤があったわけでもないのだが、
友達として、親友として当たり前のことを想い、考えただけ。
そして、その結果が争わない、平和的解決に至るわけだ。


「それでも、竜也。いくらなんでもじゃんけんは単純過ぎないかい?」

「いや、簡単で便利じゃん、じゃんけん」

「そうだけどさぁ」

「フェイトとなのはは別にそれでもいい?」


二人が了承しなければ意味が無い。
もとより、二人の為の提案であるからして却下されれば俺が傷つく。
その時は……まぁ俺がジュエルシードをもらえばいいさ。使い道無いけどさ。

なのはとフェイトは俺に聞かれて一瞬迷ったものの、すぐに答えを出した。


「「いいよ、それで」」


見事なシンクロだった。
将来この二人は仲良くできるかもしれないな。

そんな淡い希望を持ちながら、できれば淡い希望なんていう希薄なものではなく、現実になってほしいけどね。


「あんたたち……」


アルフが呆れた様子で言った。

いいじゃないか別にこんな物語があったって。
戦い? 争い? 激しいバトル?
はっ! そんなの糞食らえ! 作者は望んでないんだよ! そんな描写!
俺は平和主義者で事なかれ主義なんだよ!

それとも何か? アルフは拳で語り合うような熱いバトルをお望みかい?
ふん、それなら場所を間違えたな。ジュンピングな漫画にでも転載しな。


「では、じゃんけん大会を始めようじゃないか」

「なんであんたがそんなに偉そうなんだい……」


主催者だからね。俺が実権握ってるからね!
実際に俺がジュエルシードを持ってるわけだし、たぶん力関係的にも猫姉妹擁する俺が一番上だろうけど。
俺がじゃなくて、猫姉妹が強いだけだけどね。
本当に動物ってすごい! というか、俺の周りの動物が、か。


「じゃあ、まずは両者対戦者は名を名乗れ」

「ええっと、高町なのはです。なのはって呼んでね。竜也君とは幼馴染です」


ん? それは言う必要あるのかな?
俺は名前を言えって言っただけなんだけど?

それになのはは幼馴染じゃなくて、ペットな。ペットだぞ? 重要なことなので2……だ。

なのはの様子もおかしいな、無意味に火花が散っているような……ああ、そうかこれがライバル意識か。
同じ魔法少女同士って感じなんだろうなぁ。本当の魔法少女はどっちかって感じかな?


「私は、フェイト・テスタロッサ。フェイトでいいよ。ええっと、竜也とは……友達だよね?」


なぜに疑問系? そしてそこは答えなくていいんだぞー。フェイトよ。
俺がちょくちょく占いのおかげで、なのはをほったらかしてフェイトに会ってたなんて知ったら、怒りそうだから。


「フェイトは俺のペット候補で友達、なのはは俺のペットで親友、つまりはそういこと」

「なのはは竜也君のペットじゃないもん!」

「ペット、だなんて……」

「そうなると……フェイトはあたしのご主人様で、そのご主人様が竜也のペットで……」


なんか泥沼化しそうだったので、とりあえず俺がフォローを含めて紹介してみた。
というか半分冗談で言ったのに、真面目に聞いてるあたり、生真面目だよねー君ら。
ちなみに半部冗談と言う部分は、候補というところ。
将来ペットって言うのは確定事項なので。

なのはは頬をぷぅ~っと膨らませながら怒り、フェイトは何だか恥ずかしそうにした。
アルフは、その言葉を聞いて戸惑っているというよりは意味を理解していない? あれ? 意外とバカ?
なんていったら殴られそうだから言わないけどさ。

なのはのあの反応は正直見飽きたけど


「竜也君酷い!」


あれ、心の声が聞こえた?
それははやてだけの特権だろうに……はやてにライバル登場か!?

フェイトのその反応は斬新だな。というより新鮮か。
と言うより若干喜んでるようにも見えなくはないけど……まぁ気にしない方向で行こう。


「というか、早くじゃんけんしろよー」

「投げやりだよ、竜也君!」

「あんたが主催者じゃん……」

「……ペット」


話が逸れまくったので軌道修正をする。

投げやりって早くじゃんけんしないほうが悪い、主催者は暇じゃないんだよ。
次のじゃんけん大会が待ってるんだよ、きっと。
それに俺もいい加減眠くなってきたし……、もとより俺は早寝するタイプなんだよ。

あと、フェイト、いつまでフリーズしてるよ。
そんなに嬉しかったのか? 違うと思うけどさ。


「分かったって、なのは。じゃあ、いくよー」

「いいよ、いつでも」

「……うん」

「じゃーんけーんぽーん」


間の抜けた、もとい投げやりな(自分で言っちゃった)俺の掛け声に合わせて、フェイトとなのはがお互いに手を出す。
フェイトが、グー。なのはがチョキ。よって勝者は、


「じゃあ、フェイトの勝ちね、賞品のジュエルシードを贈呈します」

「ありがとう、竜也」

「やけにあっさりよね」

「いいんだよ、面倒だからこれで」

「うぅ、負けちゃったよ」


じゃんけんは時の運だ、諦めろなのは。
そんなに悲しそうな目をしてもしょうがないぞ……。


「うぅ……」


し、しょうがないんだぞ……。
そ、そんな子猫のような目で見ないでくれよ、なのは。
俺の決意が鈍るじゃないか……あれ? 何の決意だっけ?

決意なんかしてないな。
じゃあいいんだよな? なのはに屈していいんだよな?


「分かったよ、なのは」

「え?」

「しょうがないから、残念賞にこれをやるから許してよ」


俺は、ポケットからかつて神社で見つけた、はやての誕生日用の青い石を取り出した。
今更だが、よく見ればジュエルシードに似てるよな。これって。

まぁ一個くらいあげても、問題ないでしょ。


「あ、ありがとう。って、え?」


なのはが俺にお礼を言ってもらったものを確認した瞬間固まった。
その様子に気付いたフェイトがさらに覗き込み、


「……嘘」


フェイトまで固まってしまった。
そんなにすごったいものだったのかな? いや、美由希さんが言ったように本当にサファイアだったとか?


「竜也君、これってジュエルシードだよ?」


え? この青い石がジュエルシード……そな、あほな。
じゃあ、他のもジュエルシードと言う可能性が?

そう思い浮かんだが、すぐに否定する。

そんな奇跡? はたまた偶然が二度も三度も起きてたまるか!
現実味がなさ過ぎる。そもそも、この石には魔力を全然感じない、その時点で審査基準からずれているじゃないか。

まぁいいや。そんなことよりも早く寝たいです。


「そうなのか? ラッキーだったな」

「うん、だけどどうしてこれ──」

「さぁ、良い子は寝る時間だぞ、早く戻ろうな」

「だから、竜也君これをど──」

「フェイトも帰ろうぜ、俺はもう眠いんだ」

「竜也君!」


なのはが必死に理由を聞こうとするが、無視をする。
話すと長くなりそうだし、何より眠い。俺はそろそろ朝日を拝みたいんだよ。

フェイトはまだ呆然としているが……まぁ平気でしょ、アルフもいるし。

俺は呆然とする、フェイト。あの石の謎を聞こうとする、なのはを置いて部屋に戻った。

さて、今日は夜も遅いし、もう寝ようと思った。
やば、もう限界はよ寝なくちゃと、心の底から脱力しようと思ったのだが……。
しかし、そうもいかない状況になってしまった、いや、なっていたと言うほうが正しいだろう。

なぜかって? そりゃあ、


「おかえり、竜也」

「どこ行ってたのかな? 竜也君」


二人が起きていたからに決まってるじゃないか。
俺が部屋に入った瞬間、というより、俺となのはがいなくなったのに気付いたんだろうなぁ。
結構バタバタしてたし、起きちゃったんだろうな。


「竜也君、いい加減にジュエルシードのことを──え? アリサちゃんにすずかちゃん?」

「おかえり、なのは。ところでジュエルシードって何かしら?」

「最近なのはちゃんが思いつめてることに関係があるのかな? あと、竜也君が隠そうとしてることに」


あるぇ? この間のなのはの件については上手く誤魔化せたと思ったのにな。
あの時は、二人とも納得の表情をしてたし……。


「ああ、あれね。あの時の竜也の様子から、なのはと共犯だと思ったから」

「私たちは納得したふりをしてあげたんだよ」


相手は俺の予想をはるかに上を行く天才でした。
そうか……この二人は本当に頭がいいな。
俺じゃ手の足もでないか。


「ええっとね、今は竜也君とお散歩して──」

「いや、いいよ。なのは」

「にゃ? どういうこと?」

「本当のことを話そう。そっちの方がいい」

「うぅ……でも!」


俺はもう隠しきれる自信が無いよ。と言うか隠す意味も無いしね。
もとより、俺が──正確には俺と母さんがこの二人に魔法のことを話さなかったのは、話す必要が無いからだ。
それは前の……魔導師になる前のなのはにも言えた事だった。
なのはは魔法と深く関わったのを知った、だから教えた。
それに対し、アリサとすずかは、魔法とは関わっていない、だからそのような無駄なことは教える必要は無かった。
だけど、状況は一変した。
この二人は本気でなのはのことを、いや、俺のことも考えてくれてるのかな。
それは昔から分かってた。分かっていたが……踏ん切りはつかなかった。

そして、なのはのこの状況。
今日もずっと悩んでいたようだし、フェイトと今日もぶつかった。
俺がいたらからなんとかなったものの、いつもいるとは限らない。
俺ではすでに許容、励ませる範囲を超えているのだ。八方塞なのだ。
こうなったら、俺より付き合いの長い彼女らにしかどうにもならないだろう。


「でもも何もない。決めた。なのはの巻き込みたくないと言う考えはよく分かる。
分かるが、だ! いい加減限界なんじゃないか?」

「そ、そんなこと!」


ないよ、と小さく泣きそうな声で言う。
だから俺は、十分に間を空け「あるんだよ」と答える。

俺がそう答えると、アリサとすずかも頷いた。
彼女たちだってそうだ。俺がなのはが限界だと気付いているのに、聡明な彼女たちが気づかないはずが無い。
だから、ここらが……潮時だ。


「じゃあ、話すよ。魔法のことについて」

「ま……魔法?」


俺はアリサとすずかに魔法のことについて話す。
あくまで、魔法のことについてだけだ。
その間、二人はふざけた様子も疑う様子も見せず、真剣に俺の一言一言を聞き流さないように聞き入る。
なのははその間も終始黙ってた。
というより……もしかしたら、泣いていたかもしれない。
そして、魔法についての説明は終わる。
しかし、それだけではない。
まだ……まだ話さなければならないことがある。

促すようになのはを見る。


「…………」


そうすると、アリサとすずかも同じように、なのはを見る。
俺の意図が分かったようだ。

視線に気付いたなのはが顔を上げる。

なのはの目は……赤くなっていた。そして、潤んでいた。
なのはも意を決したのか、語った。
その語りは以前に俺や自分の家族にしたものと同じ。

俺を含め3人はなのはの話を聞いた。
時々ありさとすずかが「うんうん」と言いながら、その言葉のたびになのはは涙をこぼした。
そして、語り終わり、沈黙が訪れた。
しかし、その沈黙もすぐに破られた。破ったのは……、


「なんで……なんでもっと早く言わなかったのよ!」

「うっ」

「私たちは……親友……でしょ」


俺はその後の展開は知らない。
あまりにもその場、というかその雰囲気に場違いだと思って、俺は部屋を飛び出してしまった。

あんなところを見せられちゃね?
俺は明らかに浮いていると言うか、異分子と言うか。
でも、まぁこれでなのはは大丈夫でしょ。

これは確信だ。
事実、この後大分たってから部屋に戻ると、3人仲良く寝ている姿を見た。
それは、もう天使のような笑顔で、ホッとしたような安心しきった寝顔で寝ている3人をだ。

ああ、なんか俺空気だわ。
解決したこと自体は非常に嬉しいのだが、ここまで俺抜きで綺麗にまとめられると俺の立場が無いよなぁ。
俺が悲しくなったわ。
誰か、俺を慰めてくれないかなぁ。

あ、このこと母さんに報告しとかないとな。


<僕の気持ちが分かった?>


念話が聞こえた。
でも、なんか同類にされたようでしゃくなので、念話の主の下に刺客を送った。


<え? あ、また猫!? ちょ、ちょっとやめてよ、ぎゃああ──>


うるさくなったので、念話をきった。

まぁいいさ。ハッピーエンドなら。
俺が大して役に立たなかったのは少し悲しくて悔しいが、なぁに。
まだ温泉旅行は二日ある。
存分に楽しもうじゃないか!

俺はここに新たな決意を抱き、後悔しないことを誓った。

俺は絶対に後悔しない!正義の味方になるんだ!
って、どこかの主人公が言ってたっけな。
あれ? 正義じゃなくてヒーローだっけ?




あとがき

昨日は失敗した。最後のは無印が完結したら書こうと思って、編集したのに、間違えて載せてしまった。
作者のタピです。

いい加減この作品に飽きてきたころだと思いますが、第44話です。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
まぁこの作品は常に試行錯誤ですので、しょうがないんですけどね。

ということで、今回ですが、シリアスになりかけたので、頑張ってぶっ壊しにw
こんな感じで原作崩壊しまくりですが、気にしない方針で。

最後に
次回こそは本当に番外です。
もしかしたら、本編との2話同時投稿になるかもしれません。



[16185] ─番外編3─「とある魔法の日常」
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/26 10:49
番外編です。
本編のイメージを壊したくない人は見ないことをお勧めします。
今回のネタは読者の方で、是非見てみたいものがある!とのことで、作者自身も書いてみたかったので、書いてみました。
いわゆるネタものなので、深く考えずに気軽に読んでくださいね。

では、どうぞ。
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これはいつかも覚えてない遠い記憶──と言うわけでもなく、またそんな昔の話でもあるわけがないので、大げさだが、
これはちょっとした、俺のなのはに対する妬みや恨み、通常嫉妬と言われる感情から起きた出来事の話である。


いつも通りに学校で、そこそこのバカ騒ぎをした後、一度家に帰り、なのはの家でかなり激しい剣術の鍛錬をして、家に帰宅。
そして、毎度おなじみの魔法の練習の時間。


「今日の竜也の目標はなのはちゃんの撃墜です」

「は?」

「は? じゃないですよー」

「いやいや、俺攻撃魔法はあまり教えてもらったことはないぞ?」

「そのための練習でしょ?」


俺にとって魔法とは一種のストレス発散方法。
良い言い方をすれば、スポーツなんかと変わらないと思っている。
相手がいない自分が満足するだけのスポーツ,。たぶん、この言い方が最もシックリ来るだろう。

そんな実用性のない魔法を習っている俺に対し、なのはは逆にスポーツなんていう甘い考えではなく、
一種の手段、または自分のやりたいことを見つける新たな可能性だと思っているようだ。

俺にもそんなことをもってる時期はあったさ。
母さんに魔法のことを教えてもらって、実際に使ってみて。
練習していくうちにだんだん上手く使えるようになって、自分はこの新たな可能性──魔法によってどんな未来が待ってるんだろうと、
わくわくして、うきうきして、楽しくてしょうがない毎日が。

いや、今だって魔法を習っていることは楽しいよ?
でもねぇ。

やはり現実と理想は遠いものだ。
残念だけどこれ現実なのよね、とはまさにこのことだろう。何? そんなセリフじゃない? 細かいことはいいんだよ!

そんなわけで今日も楽しい魔法の練習の時間です。


「先生しつもーん!」

「はい、なのはちゃんどうぞ」

「じゃあ、なのははどうすればいいんですか?」

「必死に竜也の攻撃から逃げてください、攻撃は駄目ですよ」

「わかりました……」


今日は砲撃できないとすると、シュンとなるなのは。

ざまあみろである。
なのはが魔法の練習と言うと、ゲロビもとい砲撃の嵐を受けることになる。
どこにそんな魔力があるのかと聞きたいところなのだが、
「なのはちゃん集束・圧縮がすごいから竜也ほど攻撃にかけるときの自身の魔力は使わないのよ」と母。
何とまぁ便利で羨ましい才能で、なんて思ってたら、さらに一言。
「あとはあのレイジング・ハート(以下R・H)って言うデバイスが優秀なのもかなり大きいわね」

ほぅあのデバイスか!? あのデバイスがずるいのか!?
卑怯なんだよなのはは、というかおかしいだろ!
俺はデバイスすら持っていない一般ピーポーですよ? いや、正確にはデバイスの所持を許されていない魔導師ですけど!
ずるいんだよなぁ、なのははさ。魔導師になったばっかしの癖にいっちょまえにインテリジェントデバイスなんて……


「このブルジョワめ!」

「にゃ!? な、何のこと?」


こうなったら、なのはに当らずにはいられなかった。
今日は普段俺にぼかすか砲撃撃ってくる少女に復讐してやる!
デバイスなんていう高級なものをもってるブルジョワ階級に! 貴族階級に革命を!

俺の打倒なのはへの心は決まった。後はゴングがなるのを待つのみである。




母さんの、「はじめ!」と言う言葉が練習場に広がる。

今日の俺はせーかーいーいち!
そう心に呟きながら、一気になのはに突っ込む。もちろん、俺のこの右手でだ。

俺も確かに攻撃手段として砲撃魔法もあれば、射撃、広域魔法もできないことはない。
ないのだが、まだ使いこなせると言うレベルではなく、あくまで使えないこともないと言う最低ライン程度なのだ。
もちろん、そんな攻撃でも数で押せればなのはを撃墜できるかもしれない。
しかし、だ。
そんなのは、魔力の無駄使いであり、そもそも防御も硬いなのはに通じるとは思えなかった。
ならば、である。
俺はこの生まれながらに備わっている腕を! 手を! 足を信じるしかあるまい。
せめて武器があれば、普段の剣術の鍛錬が生きると言うものだが、生憎ながらない。
それでも、剣術といえども、それを使うにはもちろん体術も磨く必要がある。
なので、俺の剣術の腕がそこそこあるなら当たり前ながら、体術のほうにもそこそこの自信がある。
ましてや、今まで母との模擬戦、魔法の練習で身一つで嵐のような攻撃を避けてきたのだ、そんな俺に死角はなかった。


「なのは歯食いしばれよ!!」

「わっ! 竜也君がもう目の前に!」


俺の動きは早かった。
今まで散々逃げ足に使っていたスピードを攻撃に方面に応用すればいいのだ、単純な話である。
俺は右手を強く握り、なのはの目で思いっきり振りかぶる。


「闇の指!」


英語訳してね。
俺の攻撃がなのはにあたり、ドーン!と言う爆発音と同時に煙が舞い上がる。

なのはは俺のスピードに追いていけず、目の前に迫ってようやく状況を理解。
しかし、目では追いつけても体は明らかに反応できていなかった。
それは練習不足というのもあるのだろうが、なのは自身が高速戦闘が苦手と言うのもあるのだろう。
そして、それは致命的ともいうべき反応だ。勝負は一撃で終わった、かのように思われた。

……おかしい、確かに直撃でなのはも反応できていなかったはずなのに、なんなんだ、この手ごたえのなさは。

そう思っていると、ようやく煙が晴れてきて、その先には無傷のなのはがいた。


「ありがとう、R・H」


デバイスにお礼を言ってるあたり、どうやらデバイスに助けられたらしい。

くっ! 忌々しいデバイスめ! これだから機械は嫌いなんだ!
俺なんて……俺なんて……ストレージすら貰えないのに、あいつは何でインテリなんだよ!
もうそのインテリって名前がむかつくよ!
お前なんか、インテリ軍団なんていわれてクイズ番組にでもでてればいいんだよ!
もしくは、雑学王とか。
あ、機械だから絶対勝つじゃん。クイズとか無敵じゃね?

ってそうじゃなくて!


「なのはは弱いくせに……なのはは弱いくせに……なのはは……」

「よ、弱くないもん! まだ倒されてないもん!」

「ふん、デバイスが優秀なだけだろ! ブルジョワめ! 一般庶民に謝れ!
本当に羨ましいよ、そのデバイス……本当に本当に……俺はそのデバイスが欲しいよ!」

<<Thank you>>

「R・H!?」

「褒めてない! いや褒めたけど!」


本当に……本気で妬ましく感じてきたよ。
マジでパルパルパル。

まぁいいさ、あの攻撃が一回封じられたぐらいで、怖気つくような俺じゃない。
俺にはまだまだ手段も魔力もある。
本当の戦いはこれからさ、ふははは!


しかし、ついにはなのはを撃墜することは叶わなかった。
いや、頑張ったんだよ?
「俺のこの手が……」とか、覇王しょう……とか、
ガード不可なはずの、竜巻を落とす投げ技とか、それはもう色々と試しては見たさ。
だけど、俺が使うには火力不足と言うのかね。
それともなのはが硬いのか、決定打にはならず倒せなかったんだよ。

最終手段として、まて、とか使えば勝てたかもしれないけど、それじゃあ模擬戦の意味がないからね。

そんなわけで、今日の模擬戦はなのはの実力というよりも、デバイスのすごさを思い知らされる結果となった。
さすがに母さんもこの結果がまずいと思ったのか、只今はなのはと模擬戦中。もちろん、なのははデバイスなし、つまりR・Hはいま俺の手元にある。

「ええっと初めましてかな」

<>

「ああ、英語はよしてくれ、面倒だから。日本語に出来る?」

<<問題ありません。初めまして、ボス>>

実は、R・Hとはしゃべったことがない。
いや、機械としゃべると言うのはどうもおかしな様に感じるが、このデバイスはAI付。
ようするに、普通の人間と同じようにしゃべるため、そんなにおかしな行為じゃないのだが、慣れないなぁ。

…………。

あれ? あれれ? 今なんて言ったのかなR・Hさん?
俺のことをボスって言ったよね?


<<はい、普段のボスの『マスターの飼い主だ』という発言から推測しそう呼ばせていただきました。
おかしかったでしょうか?>>

「いや、それはいいんだけどさ」


それはあれなのか?
俺がなのはより立場が上と言うのは、俺がなのはの飼い主だとR・Hが認めていると言うことなのか?
そうなると、いよいよ認めていないのは、なのはだけということに……。

まぁそれはいいとして。


「ボスときたか」

<<他に思い当たる言葉がなかったので>>


案外デバイスって語彙が少ない? なのはのデバイスだからかな?
なのはのやつ、国語は一時期は俺が教えたら出来るようになったけど、すぐに元に戻りやがったからな。
日々精進しろといったのに……。
と、話が逸れてしまった。

英雄、皇帝、閣下、王様、ときてボスか……。
なんかどれもこれもすごいなぁ。一時代が築けそうな名前ばっかしだよね。
ん? でも、マスターであるなのはより俺のほうが上と言うことは、まさかR・Hは俺の言うことも聞くのか?

<<ボスを第二のマスターとして登録しました>>


これはいいものだ!
こいつやりおるな、中々にして話せる奴じゃないか! なんだ、今まで忌々しいとかいったのは悪かったな。
いいデバイスだよ! 俺が間違ってたよ、R・Hよ。お前は最高のデバイスだ!


<<ありがとうございます>>

「いや、本当のことを言ったまでだよ」


本当になのはが羨ましいよな。こんなデバイスをもってるなんてさ。
俺に譲れよ。俺のほうが絶対に上手く使いこのせるって。


<<さしあたって、ボス。 一つ提案があります>>

「ん? どうしたの急に?」

<<ボスは現在第二のマスターです。この状態ならマスターのバリアジャケットを改造することが出来ます>>

「と、すると?」


話しの内容がよくつかめなかった。
このデバイスは一体何が言いたいのだろうか?
マスター──なのはのバリアジャケットを改造できる? それが俺にどういった利点、いや、提案だというのか?


<<私はかねてより、ボスのマスターを調教する姿を見てきました>>

「調教はしてないよ。餌付けしてきただけさ」

<<失礼しました。そして、そのときの……猫形態のマスターの姿がとても活き活きしている姿を見てきました>>

「……ほぅ」

<<調べたところによれば、猫と言う動物は、猫耳、尻尾、手足の肉球というのが魅力らしいと知りました>>

「そうだね、あとあのもふもふの毛とかいいよね」


リーゼ姉妹を思い出す。
あの猫姉妹は賢いだけじゃなく、とってもかわいいので最近の一番のお気に入りである。
そして、良く懐いているのでついついなでなでして抱きついてしまう。
ようするにそこまで猫は魅力的だということだ。
ああ、あのフリフリの尻尾も好きだけどね。「にゃ~」と言う鳴き声も最高だ。


<<はい。私はマスターの喜んでる姿や頑張ってる姿が好きです。しかし、最近はあまり元気な姿を見ることが出来ません。
なので、ここで一つ提案したのです>>


なんともまぁ、マスター想いなデバイスなんだろう……。
本当になんで俺にはデバイスがないんだろうな、悲しくなるよ。劣等感半端ないよ。


<<その提案とは、マスターが最も活き活きしている、猫形態をバリアジャケットに影響させればマスターも元気になるではないかと>>

「なるほど! それはいい案だ!」


これはビックリな提案、いや、美味しい話と言うべきなのか?
なのはがバリアジャケットを着ると正真正銘の猫になる、ということでいいんだよな。
しかし、猫耳、尻尾、肉球だけではいまいちインパクトが足りないな。
他にも……他にももっと何かないか……

あ! いいこと思いついたぞ。
もしこれが可能なら、さらにおもし──かわいくなるはずだ!
ふふふ、これは楽しいことになりそうだ。

俺はさっそく思いついたことをR・Hに相談した。
そして、俺とR・Hは、なのはのバリアジャケットを改造した。

あとは、なのはがバリアジャケットを着る日を待つだけである。


翌日、学校での出来事である。
さぁ今日も帰って、魔法の練習だ! と心躍らすどころか若干ブルーになっていたときに声をかけられた。


「そういえば、なのはの魔法少女の姿見たこと無かったわね」

「あ、そうだね」


そう言ったのはアリサである
確かに言われてみれば、お披露目したこと無かったな。
暇がなかったと言うか、わざわざ見せるものでもないからね。


「じゃあ、今日は魔法の練習見学してみる?」

「それはいいわね、別世界の技術を見るいい機会だし」

「私も興味あるからいいかな?」

「まぁいいんじゃないかな。魔法を知るいい機会だと思うしね」


見せるものではないが、二人には口答でしか、魔法と言うものを説明してなかったので、ちょうどいい機会だ。

そう思ったので、今日の魔法の練習に見学することになった二人である。
そうと決まれば、さっそく行動である。
バニングス家の車でそっこう家に向かい、地下にある魔法練習所に──


「ここって、思いっきり法律違反よね?」

「気にしたら負けだよ、アリサちゃん」


練習場に着くや否や、そう言ったアリサ。
まぁ気持ちは分からんでもないが、あの母のすることにいちいち気にしていたら身体もたいないのでな。
諦めてほしいところだ。


「じゃあ、さっそく、行くよ! レイジング・ハート!」




そういうとなのはの変身シーンが……あ、実は俺も見るのは初めてだったりするわけだが……。
ええっと、俺が見ても良かったのでしょうか?
かなり際どいと言うかアウトもののような……、でも、まぁいいか。
うん、いいもの見れた。そういうことにとこう。

俺がなんか得した気分でいると、どんどん変身シーンは流れていき、変身終了したその姿は!?


「にゃにゃ!?」

「「……え?」」

「ああ、そうか……」


そこには、猫耳、尻尾、手足は完全に猫でちゃんと肉球まで再現された、なのは──なのは猫の姿になっていた!

昨日、R・Hと設定したやつかぁ。
これが本当の猫モードなのはだね、分かります。


「にゃにゃにゃ! にゃん!」

「ふははは、なに言ってるかわからんよ、なのは!」


実は分かってます、はい。
日本語訳すると、『な、何で猫になってるの!? しかも言葉も変だし!』だ。
言葉はR・Hにそうだんしたところ、言語変換も出来るとのことだったので試してみたのだ。
にしても、すごいな……いや、本当に言葉で言い表せないよ。

これは……くぅ、俺の血が騒ぐぜ!


「なのは、手始めにお手だ!」

「にゃーん!」

「「か、かわいい」」

猫は陽気な声を出しながら、ポン、と。それはかなり久々の感覚、しかしいつもとは違う感覚でもあった。
猫と同じ、と言えば分かるだろか。
目の前にいるのは確かになのはだが、なのはなんだが猫なのだ!

そして、尻尾をフリフリしながら、次の指示はまだかと待つ、なのは猫。

もう俺を止められる者はいない!


「よし次は──」

「何をしているのかしら、竜也?」


……あれ? 一瞬にして場が凍ったよ?
おかしいな、今日は暖かいのに、どうして鳥肌が立つんだろう。


「なのはちゃんに、悪戯してるのね。女の子に……罰が必要ね」


いつだってこんはずじゃなかったことばかりだ。

何かいい訳を言おうとして、母さんがいるほうに振り返ろうとしたその瞬間、
四方八方に金色に輝いた剣が囲んでいた……。
うんっと、どこの英雄王ですかね?


「消えなさい」


俺はここで意識を失った。
しかし、失う直前、アリサとすずかの声が聞こえた気がする。


「ま、魔法ってすごいわね」

「そ、そうだね」


魔法……知らなければよかった。




あとがき

2話連続投稿です。
作者のタピです。

ちょっとした遊び心なので気にしないでくださいね。
まぁこれがアリサとすずかに初めて魔法を見せたことになります。そこだけは、本編とリークしています。

どうだったでしょうか?
提案の通りご期待に添えたかは分かりませんが、こんなぶっ壊れがあったっていいじゃないw



[16185] ─第45話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/26 10:51
山あり谷ありの波乱万丈の温泉旅行から数日。
と言っても実際には、谷もないし山もない。波乱万丈かもしれないが、それでもあったのはおちだけだと思ってる。
温泉旅行から帰ってきて待ち受けていたのは、今までの日常だった。
あの初日の夜からはどうも考えられないが、それはもうごく普通の日常。
なのはもアリサとすずかと和解したので、むしろ魔法と出会う前より仲がよくなっているぐらいだった。
しかし、違う点もあった。


「えへへ、竜也君今日も一緒に帰ろう」

「まぁいいけどさ。どうせいつものことだし」


なぜかなのはに前以上に懐かれた。

おかしいな、こんなはずじゃなかったのに。
前回の最後で、俺の哀愁漂う背中をよそに、なのはたち3人娘は新たな友情を育み、俺は蚊帳の外。
これからはしょうがないから、はやてとフェイトにでも慰めてもらおうと思っていたのに、
このベタつきようだった。

俺がこの異常に気づいたのはその日の夜からだった。
あまりにも気まずすぎて部屋に入って寝ることは出来なかったので、夜の温泉にもう一回浸かっていた。
ここの温泉は、夜中──といっても、実際には12時を過ぎればさすがに閉まっているのだが、それ以前までは開いていると言う実に素晴らしい温泉だった。

しかし、こんな時間の利用者はまず考えて少ない。
そのため、男湯と女湯は普段は別れているのだが、夜遅いこの時間は都合上混浴となる。

普通なら混浴なんて入るのに戸惑い躊躇するのが、それが男の普通の感情だとは思うが、俺は気にせず入った。
混浴になる理由どおり、人が少ないだろうと予測した上で、こんな時間にさすがに女の人は旅館内とはいえ、うろつきはしないだろうと思ったからである。

案の定、予測どおりにお風呂には誰もいなかった。


「こんな時間に一人で入るのはさすがに優越感を感じるね」


今日の昼は、時間帯も時間帯。
人がいてもおかしくないのに一人と言うその状況に絶望し、涙し、世界を恨んだのだが、この時間帯ならむしろいないほうが好都合。
というよりは、いて欲しくなかった。
男の人はいいが、女の人がいたら気まずいと言うものだろう。

何はともわれ、本日二回目のお風呂だ。
だが、先ほどの魔法のことで体はかなり疲れている。
もっと正確には、精神的にかなり辛い、何が辛いってそりゃあ……


「俺が目の前にいるのに除け者にしないでくれよ」


仲間はずれにされたことである。
さらに言うなら、あの忌々しき……。

糞フェレットめ、俺と同類にしやがって恥を知れってんだ!

怒り心頭なのだ。
ただでさえ、一人と言う寂しさを実感しているときにあのものの言い様。

まぁそれでも、猫姉妹の餌になったからいいか。
二匹とも喜んで引き受けてたしなぁ。おなかでも減ってたのかな。

そんなわけで、猫姉妹に食ってよしの許可を出した後に、ここに向かってきたわけだが、

そもそも俺は眠いんだよな。
今更だけど結局寝るタイミングを逃したな。

本当に今更ながら自分の心情を理解する。


「ああ、なのはたちは今頃暖かいお布団の中ですやすやだったもんな」


あんな寝顔を見ちゃったらな。戻れないよ。
邪魔する気にもなれないしな。


「なのははここにいるよ?」


気のせいだろうか? はたまた幻聴だろうか?
なのはらしき声が聞こえた。

本当に非常になのはに似ている声なのだが。
そんなのはありえないことだった。

だって、あいつは、


「いやいや、なのははお布団の中でアリサとすずかに抱かれて気持ちよさそうに寝てるから」

「ううん、その後竜也君追いかけて、お風呂に一緒に入ってるよ?」

「んな、あほ……な」


ここでようやく声の主を見る。
そこには本物の高町なのはがいた。

ええっと、これはあれだよね?
幻術魔法って奴だっけ? 最近母さんに習ったなぁ。
幻術でしゃべることまで出来るんだ、魔法ってすごいな。俺も練習しようかな幻術。

それともこれは、幻覚幻聴で、俺は夢の中とか……ああ、それならありえるかも。
夢の中って基本的に何でもありの世界だしね、それだったらなのはがでてきても、おかしくないよね。


「本物だよ?」


そう言って、抱きついてくるなのは……って、え?
なんなんだこの温もり?
あれ? おかしいなここは夢だよね? なんで触覚が敏感に。
俺の頭がおかしいのかな? 感覚機能が狂ってるのかな?
妙に暖かくてぷにぷにしてすべすべして、ようするに気持ちよくて……はれ?


「にゃはー、竜也君暖かいなぁ」


暖かいのはお風呂、だよね?
そうだよね。
俺と体が密接して温かいんじゃないよね? そうだよね?
これは、夢で理想で、幻想で、幻覚で、幻聴で、錯覚で、アルバトロスで、ホールインワンで、温泉で、ちょーきもちぃで……。

ふはっ!
ふはははははははは、どうにでもなれー!


結局これは現実で、本当のことだった。
なのはは俺の横で気持ちよさそうに、俺に身体を預け、気付いたら寝てました。

その後はどうなったか覚えてない。
錯乱状態だったからね。

と言うことが、温泉初日にあり。
そのあと、俺となのはの関係はさらに親密に!?

その先は想像にお任せするよ。


そういうわけで、なのはと一緒に帰宅。本来ならその後は剣術の鍛練が待つのだが今日無いので、はやての家に予定通り訪問。


「ということなんだ、はやて」

「えらく長い回想やったな」


だってしょうがないじゃん、尺の問題があるんだよ。
本来なら前回に入れるべきだったけど、今回思いついたんだからいいじゃないか。


「っで、どこまでが本当のことや?」

「え?」

「えって、魔法とかなのはちゃんいうん子とかと一緒に入ったんとか、土産話やろ?」

「まぁそうだけど」

「なら、どこから大げさに言ったんやと言うことや」


一応はやてには包み隠さず話してみた。
もちろん、こういうふうに冗談だと思われて、まともに信用されないと思ったからだよ?
下手に嘘をつくよりも嘘のような現実は実際に言った方が真実味が薄れるからね。


「どれくらいかというと……」

「……」

「ほぼ全──」

「なんでやねん」


ハリセンで叩かれた。
パシーンと言う軽快な音とは裏腹に案外痛いぞこのやろう!


「はやて、痛い」

「嘘言う方がいけないんや! それは土産話や無いやんか! でっち上げやん!」


本当は全部本当のことで、見事な土産話なんだけどね。
本人はそうは思ってないみたいだけどさ。

まぁ信じられても困るからいいんだけどさ。


「まぁいいじゃないか、写真だって送ったし、お土産だって持ってきただろ」

「フェレットやん! しかも、動いてないし! 死にかけやん」


それはしらないよ。
猫姉妹たちが勝手に持ってきたんだから。初日襲わせた後、ずっと口にくわえてたからね。


「じゃあ、こっちの温泉饅頭とどっちがいい?」

「ちゃんとあるやん……でも、温泉饅頭ってありきたりやなぁ。なんか竜也君らしくないと言うか」

「え? じゃあ、木刀とか?」

「どこの修学旅行やねん」


いるよねー、修学旅行で木刀買う人。
5兄弟の長男のお兄さんが、自慢げに木刀を振り回してたのを思い出したよ。

「これが、日光の徳川秘蔵の……」

とかいいながら、振り回してたなぁ。
弟が無駄に白刃取りをしてみろとか言われて、必死に練習してたのをかわいそうに思ったなぁ。


「それじゃあ、温泉の素とか?」

「あるんか!?」

「まぁ一応、ね」


はやてを怒らすと怖いと言う経験上から、いくつかお土産を買ってきておいたのだ。
その中の一つがありきたりの温泉饅頭であり。温泉の素であり、木刀であり。フェレットである。
結局木刀も買ったのかよと言う突っ込みは無しの方向で。


「ふふん、じゃあ今夜はこれで竜也君と入れるなぁ」

「は?」

「は? やないで。そのなのはちゃんいうん子とは入ったんやろ? 一人も二人も変わらんって」


都合のいいところだけ利用しようとするのね、はやては。
迂闊だったな。
これならそこの話だけはしなければ良かった。

それに、この場合の一人と二人は大きく異なると思うぞ?
まぁ前にはやてと入ったから本当に今更だけどね。


「今夜は泊まっていくんやろ?」

「ん、まぁね」


今日はもとよりはやての家に泊まることになっていた。
母さんを含め、なのはたちははやてのことを知らないので、とりあえず5兄弟の家に、という嘘をついてここに来た。
母さんなんかは調べればばれそうだが、まぁそんな野暮なこともしないだろう。
そう思っての判断である。

そんなわけで、今日ははやての家でお泊まり会である。
こういうふうに定期的に会わないと何が起こるかわからないからね、明日は血の雨が……なんてこともありえそうだし。


「じゃあ、さっそくご飯の準備を始めるなぁ」

「いや、今夜は──え?」

「ん? 今夜はどないしたんか?」


魔力反応。
相も変わらずいきなりやってくる、ジュエルシードめ! 空気を読めよ!
俺がせっかくはやてに手料理を振舞おうと思ったのによ!


「すまん、はやて、少し出かけてくる」

「ってどこにや? もう結構外は暗いで?」

「うん、だけど、ちょっちね」

「そか……ちゃんと……ちゃんと帰ってきてなぁ」

「もちろん」


俺の大切な時間を妨害しやがって、どうなるか分かってるんだろうな!ジュエルシードよ!
もし、これで俺がはやての下に帰れなくなったら、明日は血の雨が降るんだぞ!
誰の血かはわからねぇよ。
もしかしたら、なのはかもしれなし、手始めに俺かもしれないんだから!

俺はまだ、まだ死にたくないんだよ!


「にゃー!」

「にゃにゃ」

「お前達もまた手伝ってくれるのか?」

「にゃ!」


うん、心強い味方だ。
なんとか、なんとか平和的解決をしなくちゃな!




ジュエルシード発生の現地に到着すると、また殺伐とした雰囲気だった。
今にもフェイトとなのはは激突しそうな空気。

そして、何か言い合ってる様子だった。

俺がいなければすぐにこれだよ。
なんで、じゃんけんで解決しようとしないかな!
でも……怪我をする前で間に合った。

心の底からホッとした。
でも、まだ終わりじゃない。

二人の喧嘩の原因は、あのジュエルシード……だもんな。
それなら、その原因を!


「ロッテ、あの石を頼む!」

「にゃー!」

「え? 竜也!?」

「竜也君!?」


猫の登場で俺に気付くってどうなのよ?
俺は悲しくなるよ? こんなにも堂々と現れたのにさ。
誰一人として気付いてなかったっていうのはよ。


「はい、没収です。ご苦労さんロッテ」


俺の指示通りに言う事を聞いたロッテを褒めて撫でてあげる。

本当に良くできた猫だよ。毎回思うけどさ。
なんで、こんな猫が使い魔じゃないんだろうね。


「お前ら学習しないな。いい加減に戦闘は止めろってい──」

「時空管理局のクロノ・ハラオウンだ! 今行っている戦闘を中止しろ!」


俺が仲裁に入ろうとしたところに、黒い男の子──たぶん俺より年上であろう魔導師がいきなり入ってきた。

誰だこいつ?
いきなり現れたかと思ったら、間に入ってきて、偉そうに。
って、え? 時空管理局だって? 何で今頃になってこんなところに?

ということは、俺は魔導師だから、管理局に束縛される!?
い、いやだ! 俺は誰よりも自由を愛するんだよ! 


「ちっ! 時空管理局か! フェイト逃げるよ!」

「え……あ、うん」

「俺も逃げるぞ!」

「竜也君!?」

「え……わかったよ!」


さっきまで管理局の登場で驚いているなのはが、俺の発言に気付き驚いている。
アルフはそういうと俺とフェイトを手に取り、転移魔法でその場から逃げようとした。
したんだけど……、


<<時空管理局はそんなところじゃないよ?>>

<<たぶん、話をすれば融通利くと思う。クロすけだし>>

<<そもそも呼んだのは私達だしね>>

という、悪魔のささやき、もとい猫のささやきが聞こえた。
クロすけとか、呼んだとかよく分からないことを言っていたが、猫たちが言う限り俺の危惧したことはないようだった。
だったら、逃げる必要ないじゃないか!


「アルフストップ!」

「え?」

「竜也?」


俺がアルフに声をかけて、止めると、俺の言ったとおりに転送をストップした。
フェイトは俺を不思議そうに見ている。

しかし、そんなことをしているとあっさり捕まりました、はい。
俺とアルフ、フェイトは逃亡未遂の疑いで、バインドをかけれてしまいました。

だって、しょうがないじゃん。
急に管理局だ! とか言って現れた逃げたくなるって。分かるよね?
家にいきなり、「警察だ! 署にきてもらおうか」なんて言われたらそりゃあ逃げるさ。
怖いもん。


「詳しい話は艦でしてもらおうか」


彼はそう言い、俺たち──なのは、フェイト、アルフ、猫姉妹そしていつの間にかいるユーノを強制転移した。
たぶん、彼の言う艦と言う場所に。

これは、やばいかもなぁ。
はやてに今日絶対に帰るって言ったのに、下手したら帰れないな……。
明日はブラッディデイになるかもなぁ。どうしよう、困ったな。死ぬかもしれない。


艦と言う場所はすごかった。
何がすごいって……俺が猫としゃべられるぐらいすごかった。
俺にとってはデフォの能力だけどね。あくまで客観的に見て、だよ。
俺たちはそんな艦の中を見て、ひたすら驚くしかなったが、その沈黙を最初に破ったのは、


「クロすけ、とりあえず竜也たちのバインドはとってあげてもいいんじゃないかな?」

「うっ……分かった。でも、僕からしてみれば何であなたたちが彼の言うことを聞いてるかを知りたいんだが?」

「いいじゃないの。気にしちゃ駄目よ? もし気にしたら……」

「分かってる。でも、後でしっかり聞くからな」


猫姉妹だった。
しかも、見た目は明らかに猫じゃなくて……人?
うん、と前々から使い魔っぽいなぁと思ってたけどまさか本当に使い魔?


「そうだよ、竜也。この姿では初めてだね」

「これからも、よろしくね」

「え……あ、はい」


改めて言われると、う~ん、今までタメ語だったけど、明らかに年上……だよね?
なんか今までの俺の行いが見られた恥ずかしさというか……若干気まずいんだけど。


「そんなに硬くならなくてもいいんだよ?」

「まだ、しばらくは竜也の下にいるからね」


そう言われても、ね。
でも、本人達がそれでいいって言ってるんだから問題はないか。
どんな事情があるにしろ、しばらくは俺のペット扱いでいいってことだよね?
となれば、俺からすれば願ってもいないことだ。


「まぁいい。着いたよ、ここが艦長室だ」


クロノ・ハラオ──

「クロノでいい」

いちいち心の声に突っ込みを入れないでくれないかな?
クロノに促され、艦長室に入る、俺たち。

その中は……

「ほぇ~」

「ええっと……」

「純和風って感じ?」


なのはが驚きの声を、フェイトは困惑を俺が突っ込みをした。
つまりは、その艦長室が異質だったということだ。俺の言葉で分かるとおり、純和風と言った感じ。


「紹介する、この艦の艦長のリンディ・ハラオウン提督だ」

「初めまして、みなさん。私がそこのクロノの母で艦長のリンディよ」

「ええっと、俺はあ──」

「あら? 楽しいことをしてるわね」


相手に見習い、俺も挨拶しようとしたところ、妨害の──いや、空気を切り裂く人物からの映像が現れた。
そして、その人物とは……、


「あ……アイコ……」

「お久しぶりね、ハラオウン」


母さんだった。

ただでさえ事態を把握し切れていないのに、状況はさらに混沌。
カオスと成り果てた瞬間だった。


「‘お話’は私の家で聞きましょうか」


だから、こう思ったのさ。
もうどうにでもなれ、と。

そんなことを思っていると、クロノから一言。


「そうか、君も……大変だな」


なぜか、クロノに同情された瞬間だった。
そして、なのはは事態に追いついていけずにぽかーんとし、
フェイトはなぜか、「竜也のお母さん、竜也のお母さん」と繰り返し、緊張している感じだった。
もしかして、フェイトって俺の母さん知ってる?



あとがき

2話連続投稿です。物語は加速します。
作者のタピです。

前半はサービス・ギャグパート。
後半は物語を加速させました。
読者の方でも急展開を分かるように書いたつもりですが、分からない人もいるかもしれないので最後に補足しますね。

ここまでは作者の最初に思い描いたシナリオどおり。
下手したら、唯一初期の形が残ってるシナリオかもしれませんけどね。
もはや、原作崩壊ですが、まぁそんなのは今更ですね。
この先もアニメとは違うシナリオと思いますので、ご理解くださいね。


──以下補足──

・竜也の状況→はやての家でのんびりから、アースラ連行。
・フェイト→竜也のせいでアースラ連行。
・なのは→訳も分からないままアースラ連行。
・猫姉妹→とある思惑、理由から一緒にアースラまで行く。その後も竜也の付き添い、ペット扱い。
ネタ明かしは、A’s編の終盤になる予定。なので、それまでは謎。
・愛子→リンディと知り合い? そして、アースラで行われるはずのお話が相沢家へ。

っとこんな感じです。



[16185] ─第46話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/27 14:23
「さて、お話しましょうか、ハラオウン?」

「何で貴女がこの世界に?」

「まぁまぁ私に関してなんかいいじゃない。とりあえず、この子たちの今の現状について、ね」


先ほどまで、艦──アースラと言う、次元航行艦だったかな? 勉強したのは大分前だったから忘れたが、
そんな艦に、連行されて、さてこれから取り調べと言うときに母さんの邪魔──と言うわけではなさそうだが、
母さんが割り込んできたことにより、アウェイで行われるはずだったものがここ、我が家で行われることになった。
そして、当然のように高町家、士郎さんと桃子さんもきている。おそらくは、先を見越した母さんが呼びつけたのだろう。
相変わらず恐ろしい母だなと認識した。


<今のうちにはやてちゃんに連絡とっておきなさい>

<え? なんではやてのことを?>

<むしろ私が息子のことを知らない方がおかしいわよ?>


俺にプライバシーは? 日ごろの行いは全てばれてる!?
本当に恐ろしい母だ。
認識を改めるどころか警戒レベルだよそれは!?
でも……この場合に限ってはありがたいことだった。明日死ぬかもしれないと言う本当に生と死の境目だった気がするから。


「じゃあ、今回のことについては、まずなのはちゃんとフェイトちゃんは当事者だから説明してもらわなくちゃいけないから、ここに残ってね。
竜也は、まぁただ巻き込まれただけ、というよりはお節介なだけだったみたいだからちょっと席をはずしてもらえるかしら」

「えっと、どうして私の名前を?」

「それもあとで、ね。でも本当に……よく似てる」

「え?」

「こっちの話よ、じゃあ、みんなこっちの部屋に来てくれるかしら」


そう言って、母を先頭にリビングに向かっていった。
俺はその中、とりあえずは自分の部屋に戻り、はやてに連絡をとることにする。

明日の朝日が迎えられるかどうかの瀬戸際だ。交渉は慎重に、対応は丁寧にやらねば……。
俺はまだ……まだ生きたいんだ! 死にたくない。死にたくないよー!

あ? このセリフ死亡フラグなような気がする。
しかも、血の雨が降ると言うよりは、血が抜かれるような……。
どっちにしろ、俺の血が、身体が大変なことになるのには変わらないか。

魔法会談が行われているであろう一方で、俺ははやてとの死線を交えた戦いが始まった。













私にとって、今回の仕事と言うのはちょっと厄介だけど、そこまで大変なものではないはずだった。
この世界には協力者である、リーゼ姉妹と言う強力なカードがあり、その二人の話からもそこまでの事件性は感じられなかった。
しかし、いざこの世界に関与し、事件性を暴こうとしたところで、まさかの人物が現れてしまった。
それが、アイコ・クライン。今はこの世界の住人と結婚して、アイコ・アイザワと言うらしいが。
もともとは時空管理局でかなり名を馳せた人物であり、その当時からオーバーSランクと言う大魔導師。
それでいて、自分で言うのもなんだが、おそらくは互角、もしくは以上に頭が切れる人物。
実は昔からの知り合いで、一時期はライバルのような人物でもあった。


「じゃあ、まずはなのはちゃんから、説明してくれるかしら?」

「どこらへんからですか?」

「そうね、魔法との出会いからでお願い」

<かあ──艦長。あのアイコとかいう、人物は何者ですか? 只者には見えないんですが>

<そうね、警戒はして損はないわ。ただ、そこまでも危険人物と言うわけでもないから>


そう、危険と言うわけではないんだけどね。
ただ警戒しといて──違うわね、警戒しても意味があるかさえも分からないわ。

かつて、管理局内ではその強大な魔力を使いこなし、数々の武勇伝も聞いた。
とある時は海で、とある日は陸で、そしていつの間にか空にも所属してた事があるという神出鬼没という言葉がまさに当てはまる人物。
その一時期のライバルと言うのは、彼女が提督になったときに関係があるのだが、それは今は関係ない。
ただいえることは、その彼女の仕事柄、人と人との繋がりが非常に広い。
その人脈こそが彼女の一番の武器で、情報源と言えるだろう。
書く言う、私自身もかなり広い自信はある。もとより、ハラオウンの名は管理局内ではかなりの名門であるのが理由だ。
独自のネットワークだって持っている。しかし、それ以上のネットワークを駆使していたのが、彼女──アイコと言う人物だった。

管理局を抜けて、科学者になったと聞いて以来、行方不明になっていたと言うけれど、まさかこんなところで会うなんてね。
噂によれば、かなり危険なところに手を出して痛い目に会った、なんていう人もいたけれど、本当にそうなのかもしれないわね。
もし、今回のことが無事に終わって、彼女が戻ってきたなら仕事が相当楽になりそうね。

あら、いけない。また余計なことを考えてしまったわね。どうもここら辺が見境がなくなってきて、自分で怖いわ。


「ありがとう。これがとりあえずこの事件に関してのなのはちゃん側の見解ってところね。
ちゃんと聞いてたかしら、そちらのお二方? ハラオウン親子?」

「ええ、聞いてたわ。なのはちゃん……でいいかしら?」

「はい」

「なのはちゃんが魔法の関わった経緯とこのジュエルシードに関しては理解したわ。では、今度はそちらの……」

「フェイトちゃんについて……そうね、彼女にとっては辛い話になるかもしれないわ」

「え? ええっと、竜也のお母さんは私のことをどこまで知ってるんですか?」

「ほとんど全てが予測だけど、たぶん、ほぼ全てを知ってるわね。テスタロッサの考えそうなことよ。
そのジュエルシードと言うロストロギアは、願いを叶える、祈願系のロストロギア。どうせ、テスタロッサがそれを願うのは……」

「願うのは?」

「その前に竜也を呼んでくるわね。フェイトちゃんは私の息子のことを信頼してるみたいだし」


おそらく、彼女がこれから話すのは事件の真髄。言うなれば全ての種明かし。
私たちが今回の事件にかかわるには遅すぎた、そう感じられるような話だと思う。
もしかしたら、今回は時空管理局がでしゃばらなくても彼女ならあるいは……。

そう思うがその考えを払拭する。

そうね、ネガティブに考えてもしょうがないわ。
今回のことをポジティブに考えるなら、ここに優秀な魔導師になれそうな人物が、複数いること。
元管理局の彼女を含め、あのなのはちゃんという子はすでにデータで分かっているが相当の魔導師になれるだろう。
そして、フェイトちゃんと言う子も多分そうでしょうね。なのはちゃんと対等以上の実力だって聞いてるから。
それに、彼女──アイコの息子の竜也君も、おそらくは……。

リンディは事件がまだ終わっていないにもかかわらず、この後のことを考え、未来の管理局員候補の将来を考える。
その結果、ここでできるだけ印象をよくしておこうという結論に至った。









死線──最近良く使う言葉……と言う現実にすでに嫌気が差しそうだが、そうも言っていられないのが現状である。
八神はやて、俺にとっては彼女は動物王国への足がかりの一人と言う認識でかかわっている人物だ。

動物王国のなのに一人……でも、それがしっくりと言うのもおかしな話だよな。今更ながら。
おっと、そんなことをのんきに言ってる場合じゃなかった。早く電話をしなくては!

時間はすでに夜と言って差し支えない時間。
彼女には今日は必ず帰るから待っててくれと言って家を飛び出した。
だから、こそのフォローの電話なんだけど。

怖いな。
はやての声を聞くのが異様に異常に怖いな。電話越しでも黒いオーラが流れ込んできそうだよ。
でも、まだ黒いオーラを放っていない可能性も!

…………。

ないよねー、そんな希望的観測が上手く行くわけないよね。
ああ、暗い未来が待ってるのが分かるから、ついつい現実逃避をしちゃうよ。
どうになかならないかなー! どうにもならないだろうなー!


「はぁ……いつまでも考えても仕方ない、電話をするか」


携帯電話のアドレス帳から八神はやてを選択。
よくよく考えれば、この時点ではやてからメールも電話も無し、お咎めがない時点で不自然に思うべきだったのかもしれない……。


『あ、ようやくきたな。こんばんわ、竜也君』

「え……ああ、こんばんわ、はやて」


電話に出たはやての口調は、いつもと変わらない優しいものだった。
って、別に優しくもないし普通ものだった。これで優しいと感じる俺ってかなりやばいな。普段どれだけはやての怖い姿を……。
思い出すだけで鳥肌もんだぜ。

さて、問題はここからである。
はやてとの約束をすっぽかしている時点で明日生きるか死ぬかも分からぬこの状況を何とかしなくてはならない。


「ええっと、な、はやて、実は」

『知っとるで』

「え?」

『話は義母さんから聞いとるから、別に怒ってへんよ』


なんと驚いた、はやてはなぜか俺のお母さんを義理の母と書いて、義母さんと呼びやがった。
おかしいんじゃないかな? はやてさん?
あなたに両親がいなくて寂しいのは重々承知ですが、俺の母を義母さんと呼ぶのは筋違いじゃないですか?


『それはなぁ、今回の件についてこう言ってったんよ』

「ん?」

『私がなぁ、「じゃあ、竜也君をすきにしていいですか」って聞いたら。
「ええ、いいわよ。煮るなり焼くなり。もしくは、焼いてから煮たっていいわよ」って言ってくれたんやで』


母さん……何勝手に悪魔と取引してるんですか?
息子を犠牲にして何が楽しいのですか?
俺はさっきまで、俺に気遣ってくれた母さんに感謝の念を持っていたのに、一瞬で吹き飛んだぞ!
何? 母さんは俺が死んでもいいのか? 
しかも、煮るか焼くかの二択なのに両方を選べるとはこれ何事か!
俺は蒸されるほうがいいんだ! ってそれも違うか。出来れば焼くはやくでも、妬くの方がいいなぁ。
男の憧れだよね、女子に妬かれるのって。焼かれるのは憧れじゃないけどさ!


『だからね、私が「じゃあ、あんなことやこんなこともしていいですか?」って聞いたらなぁ』


はやての言う、あんなことやこんなことってどんなこと?
それは、あんなこと(血が抜かれる)やこんなこと(血の雨が降る)とかそういうことなの?
怖いよ! 俺ははやてが非常に怖い!


『そしたら、こう言ったんやで。分かるか?』

「全然、見当もつかないよ」


実は想像できることもあるのだが、予想したくない。
その全ての予測がバッドエンドだからだ。今の俺には死のビジョンしか思いつかない。
ホント、いやな思考回路になってしまったものだ。俺はポジティブが一番だと言うのに。

『「うふふ、はやてちゃんはおませさんね。ええ、いいわよ。楽しんでね」やって、きゃー』


「やって、きゃー」やないで! はやて!
あ、ついつい関西弁に。なに、楽しんでとか、おませさんとか、何?
俺の身に何が起きようとしてるの!?
近い未来が非常に怖い。と言うか暗い。明日がきて欲しくないです! さっきまで明日がきてほしいと言った自分が憎い!


『まぁそういうわけやわ。だから安心してな』

「どこに安心する要素が?」

『それは……むふふ。秘密やで。楽しみにしてるで』


そう言って、はやては電話を切った。

何か俺の知らないうちに、大変なことになっているが……考えたら、ドンドンおちていきそうなので止めておこう。
俺の精神の為にも止めておこう。


ちょうどはやてと電話を終えたときに、母さんが呼びに来た。つまるところ、俺にも話さなければならない話があるらしいとのこと。
今まではジュエルシードについては蚊帳の外だったと言うことは、それ以外のこと? ってことなのかな。
色々な思惑を浮かばせながら部屋に入る。


「さて、これで全員かしら?」


その部屋には、オールメンバーが揃っていた。いろんな意味でそうそうたるメンバーでもある。
人外魔境的な意味ですよ? もちろん。
だって、この世界にいるはずのない魔導師が半分以上。
一般人だと、よく勘違いされるが御神流の剣術を扱う士郎さんはもちろん人外だし。
桃子さんは……母さんから常々、黒い話を聞く。実際のところは分からないけどね。


「じゃあ、まずは……そうね、私が関わっていた研究についてかしらね」


母は話す。
実は母さんの過去話は2年前の魔法ばらし以来だったりするわけだが、その過去は壮絶というよりは、
不思議、謎のものだった。
母さんは言う、自分がかつて管理局に抜けた後に関わっていた研究とは、プロジェクトFと言われるもので、
簡単に言えば、クローンの作成技術のことだそうだ。
母さんはその研究で唯一、クローンの作成に成功した。ただのクローンじゃない。元になった人物をほぼ100%再現することが出来たそうだ。
俺を含め、なのはもこのことが一体どれほどすごいことなのかはよく分からなかったが、リンディさんやクロノといった、
管理局の面々が驚いたことから見れば、相当すごいことなのだろう、しかし、それと同時に、


「そ……そんなの技術が完成してただなんて……。でも、そんなの!」

「許されるはずのない技術、でしょうね。死者を蘇らすに近いことだわ。しかし、ここでほぼ再現できたとは言うけれど、決してそんなことはなかった」


そんな技術にも欠陥があった。しかし、上層部の人間はこれが完全だと言い張った。言い切ってしまった、と母は続けた。
結局その後、この研究があまりにも非人道的にして、問題ありだと思った母は研究の成果と結果を全て隠滅した。
そして、その結果……この世界にくることになった。

なんとも壮大で、規模の計り知れない話だな。
さすが俺の母さんと言うべきか、相変わらずというべきか、昔からこんなんだったんだな。

俺からすれば、その話は現実味がないためにあまり実感が得られなかった。
そして、それ以上に、この話が何の関係があるのか分からない。
なぜ、母さんは今頃になってこの話をしたのか……。


「その研究の仲間にテスタロッサ、つまりはフェイトの母さんと関係があったわ。
いえ、彼女自身とはもっと昔からの付き合いはあったわ。彼女の娘が生きていたころからね」

『え?』


この発言からすると、まるで娘がもういないかのように聞こえる。
今、母さんが自身で言った『フェイトの母』と言う言葉をまるで無視するかのような、矛盾してるかのいいよう。
誰もが違和感を感じて、え、と言う言葉を放った。

知らないうちにフェイトが俺の手を握っている。それも、かなり強く。
身体も若干震えているのが伝わってくる。たぶん、今顔を見れば……。

これから話される真実に怖がっているのか……、そりゃあそうだ。
今の母さんの発言は、今のフェイトを否定し完全に裏切るものだったのだから。

そして、衝撃の話をつげる。


「さっきの発言で分かると思うけど、フェイトちゃん。貴女はテスタロッサの本当の娘。
アリシア・テスタロッサのクローンよ。悲しいけどこれが現実。何れは知らなければならない辛い現実」

「あ……ぁ……ぁ」

「「フェイト!?」」


母さんの最後の言葉で、崩れ落ちるフェイト。
俺とアルフは急いで身体を支える。なのはもすぐに気付いて駆け寄ってくる。

フェイトがクローン。
その言葉にフェイトだけでなく全員が驚愕の色を隠せなかった。

嘘のような真実だった。
しかし、嘘をつくとは思えない。こんなことで無意味な嘘をつくとは思えない。
それに……だからといって、母さんがこの状況を見逃すとも見放すとも思えない。
こうは言ったものの、母さんは、俺の母は、確かに不思議で謎でいい加減で、ハチャメチャだけど。
時には非情で、事なかれ主義で、消極的で……だけど、だけど……。

子供……特に自分の関わる子供達。それは、なのは然り、アリサやすずかたちも含め、優しく接していた。自分の子供のように。
そして、今フェイトに向ける視線は……。


「フェイトちゃん、この真実から目を背けちゃだめ。絶対に、絶対に何とかして見せるから。
貴女のお母さんである、プレシア・テスタロッサは必ず止めるから。だから……諦めちゃ駄目よ」

「は……は、い」

「そう、いい子ね。分かったかしら、ハラオウン」


母さんは俺やなのはと同じように、フェイトも自分の娘を愛すように語りかけ、励ました。

だから、俺は母さんが……。
昔から知っていた。この母がどんな人であるかを、どんな過去があろうとも、今をどう生きているかも。


「ええ、でも場所は分かってるのかしら?」

「時の庭園……場所ももちろん、抜かりがあると思う?」

「いいえ、ただの確認よ」


このリンディさんも中々の人だと見える。
今までの発言から状況を把握して、たぶん母さんの人柄までも予測してる。そして、何をしようとしてるかも。
俺には分からない。
でも、たぶん……母さんのことだ、そのプレシアっていうフェイトのお母さんに……、


「ふふふ、覚えてなさいよ、テスタロッサ。貴女の雷と私の刃どちらが上かしらね」

ああ、名しからないプレシアさん。哀れだな。俺は貴女のことを忘れない! 名前しか知らないけど!
母さんのあの振りかざすではなく、振り落ちる刀の嵐を食らうことになるなんて。
無事じゃすまないね。


「た、竜也」


フェイトが消えそうな声で俺の名前を呼んだ。手は未だに強く握ったままである。
手を離すと儚くてすぐに消えちゃいそうだから、離すことは出来ない。

フェイトがクローン。
この事実はフェイト本人だけでなく俺自身にも大きくのしかかった。

でも、クローンだからってなんだって言うんだ。
変わらないじゃないか、別に。普通に生きる人と。
この握っている手の温もりだって、なのはと変わらず暖かくて……生きている。


「竜也、フェイトちゃんを……ね。言わなくても分かるでしょ?」

「もちろん、俺は誰だと思ってるの? 俺は」


母さんの息子だよ?

いつもなら母さんのお決まりのセリフを俺が言う。
その言葉に他意はない。それが真実であり、誇りであり、嬉しくもあるのだから。

そして、母さんも言う。
そうね、さすが母さんと父さんの子だわ、と。

自信満々に、これ以上ないほどの親馬鹿振りとも言うべき言葉を。


「竜也……」

「どうした、フェイト」


今にも泣きそうな顔で、下手したら聞こえないかもしれないほど小さな声で俺の名前を呼ぶ。
だから俺は、そんなフェイトの手を改めて強く握り締め、そして……。


「あ……ぅ」

「大丈夫、大丈夫、俺の母さんが何とかするって言ってるんだ。問題なんてない。
あの母にしては珍しく本気だから何とかなる。それに俺もいるしな」

「う……うん」

「一言余計よ、お母さんはいつだって真面目よ! いろんな意味で」


フェイトを抱きしめて、その温もりを確かめて、改めて、当然のことを、当たり前のように、確認する。確認させる。
フェイトはここにいて、ここにだって居場所はあると。
もちろん、それは俺だけじゃなくて……俺だけが居場所じゃなくて……、


「フェイトちゃん、なのはもいるからね、だから」

「あたしだっている、フェイトは私のご主人様なんだよ、だから」


だから泣かないで、と。
フェイトはその言葉の一つ一つ「うん、うん」と泣きながらうなずき、しばらくうずくまる、俺の胸元で。
しかし、次に顔を上げたときには、


「私も行きます。母さんに、確かめたいことがあるから」


もう泣いていなかった。
その姿は覚悟を決め、決意を固め、自分に生きる意味を見出し、明日を将来を未来をみようとする、
希望の光を見つけた、可能性を見つけた、そんな様子だった。

はぁ、これで何とかなりそうだな。
一時期はどうなるかと、フェイトはこのまま駄目になるんじゃないかと思ったが……うん。
ようやく、ようやく、この事件自体にも終わりが見え始めた気がする。
全てを平和に、目指すは世界平和だね。
フェイトが傷つきはしたが、むしろ、この場合は仕方なかったと思う。
なら、この先にもう辛いものは、暗いものは必要ないね。
目指すのはいつだって、俺にとっての最高の、


「じゃあ、みんな行くわよ、時の庭園へ。テスタロッサ決着をつけるわよ!」


ハッピーエンドに向かって。

母さん、それは明らかに私怨だよね!?



あとがき

シリアスっぽくなるのは今回で最後だと思われます。少なくとも無印では。
作者のタピです。

前半過去ばらし。中盤ギャグ。後半シリアスと忙しい回です。
そのせいで、今までで一番長いです。
なんかクライマックスぽくなってきました。
予定ではあと2~3話で無印完結の予定です。本当に50話ですねw
まぁ合計ではこの回で50話超えるんですけどね。

最後に
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
あと、もうしばしお付き合い頂けると嬉しいです。
明日はうpできないかもしれません。

P.S
出来ることなら、今回の事件をなのは視線とフェイト視線でまとめてみたいですね。
時間があればですが;;



[16185] ─第47話─【修正版】
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/30 11:20
家での会合のあと、俺たちはすぐにアースラに乗ることになった。膳は急げということだろう。
そのアースラに乗るメンバーは、プレシアさんを止める為に必要な俺の母さん。
フェイトとアルフはもちろんのこと、事件の関係者であるなのは。そして、俺。と、つらつら言ったが、ようするに魔導師をのせたと言うことだ。

アースラ内において戦力の確認と言う名目上、俺となのは、フェイトは魔力の検査を行った。
結果が出るまでは1日かかるとのことで、結局は慌ててアースラに乗った意味はないじゃないかと思ったのは他でもない。
まぁ戦力の把握と言うのは戦いにおいては非常に大切なことだとは思うが……。

よって、その結果が出るまでに一日待つことになって、翌日。


「す……すごいわね」


リンディさんが若干呆れながら、検査結果を見ていった。

そんなにすごいことが分かったのだろうか?
もしかして、俺にレアスキルがあったとか、珍しい魔力変換資質があったとか!?

…………。

ないですよねー。母さんが昔言ってたしね。
でも、そうすると何で驚いているのかが分からないが。


「どんな結果が出たんですか?」


興味津々にエイミィさんが覗き込む。
このエイミィさんというのはクロノの許婚らしい。
まぁそれを言っていたのが本人だから信用できないなぁと思っていたが、そのクロノの母親である、リンディさんが、「その通りよ」って言ってたから、たぶん本当だ。

いやぁ、生きてて許婚なんて漫画や小説の世界だけだと思っていたけど、本当に世界って広いな。
……本当に広いよな!

でも、なんだ。
アリサとかすずかクラスのお金持ちもいるわけだから、案外俺の身近にもいるかもしれないな。


「嘘……これって正式な審査ですよね?」

「ええ、そうよ。本当に驚いたわ」


覗き込んだ、エイミィさんまで驚いている。

どれだけすごい結果が出たのだろうか、そこまで言われると逆に気なります。

そんなことを思っていると、こちらが気にしているのに気付いたのか、こちらを向き、


「じゃあ、結果を発表するわね」

「「「はい」」」

「もっと細かい結果は管理局でやらないとわからないけど、なのはちゃんとフェイトちゃんは魔力値はAAAランクは最低でも。竜也君に関してはオーバーSランクあるわね」


フェイトとなのはがそれってすごいの? と言いたそうな顔をしている。

かつて、母さんが言ってた通りの結果だと思う。
ということは、俺的にはそんなに驚くべきものではないと思うのだが……。
あ、そういえば母さん言ってたな、管理局において、


「ええ、すごいわよ。管理局内でAAA以上は全体の5%しかないの」

「ふぇ~」

「そう、なんですか」


そうなんです。母さんも言ってたけどね。
でも、リンディさん驚くべきところはそれ以外にあるんです。
なんと、俺はその魔力を防御や回避以外のものに使用したことがほとんどないんです!
それ以上に、使う機会がそもそも……。まぁここは管理外世界ですからね!


「こうなると、是が非でも管理局に欲しいわね」

「「え?」」

「ねぇ、もしこの事件が終わったら──」

「時の庭園内に、転送準備が完了しました」

「あら、もうそんな時間? じゃあ、残りは後でね」


しかし、リンディさんが何か言おうとしたときに、目的地へと到着した。

そして、ここが決戦の地となる、この事件の全ての始まりであり、最終地点となる場所である……。



時の庭園。

ここは、元は……いや、今もか。フェイトとその母であるプレシアさんが住んでいる場所。
今でこそは次元空間にあるが、本来はミッドチルダと言う場所にあったらしい。ミッドチルダと言う言葉自体は俺も知っているものの。
あくまで知識としてだけのものだ。実際にはいったこともない。というよりは、いけるはずもないのだから。


「お母さんはこの部屋の奥にいます」

「そう、ここまで何もなかったと言うのは、歓迎されてるってことなのかしら?」

「それは……」


分かりません、と言うフェイト。

まぁそりゃあ、分かるはずないわな。
母親の意図なんてわかるほうがビックリだよ。親の心子知らずとはいうけれど、納得せざるを得ないね。
にしても、ここ時の庭園は、ところどころに欠落し虚数空間が見えていた。
とはいえ、すぐに崩壊するようには見えず、ただ無法地帯と化しているだけだろうけど。

そんなことを考えながらも部屋の奥に行く。
そして、そこにはフェイトの言ったとおりプレシアさんが……。


「あ、あれが……」


プレシアさんに目がすぐにいったが、そのあとすぐに他のものに目移りしてしまった。
それも、そのはず……だってそこには。

プレシアさんが抱えるように、縋るように抱きついてるポッドが中心に一つ。
その中には……。


「アリシア、すぐに生き返らせてあげるからね。だから、もう少しだけ待ってね」


そう言って、プレシアさんが立ち上がりこちらに振り向く。その目には敵意があ──違うぞ!?
あれ? こういう場合って大抵敵意だよね?
でも、あれは敵意じゃなくて……まるで救いの手がきたような……。

どちらにしろここは、嫌な場所だな。
周りには人が入りそうなポッドだらけ。その上、中心にあるのが……いや、中に入っているのが、件のアリシア……だよな。本人が言ったんだから。
それに……とても、死んでいるようには見えない、な。フェイトにそっくりでもあるし。
プレシアさんはあの子を蘇らそうとしてるのか……。


「ありがとうね、フェイト」

「か、母さん?」

「アイコを連れてきてくれたのでしょう? 最後の最後で役に立ったわね」

「え?」


自分の母親に褒められて、予想外の言葉をかけられ驚くフェイト。

あれ? あまりにも予想と違うんですけど?
もっとこう、熱い展開とか、シリアスな展開はいると思ったけど、むしろ幸せが溢れるような……。
いや、もちろんこっちの方がいいんだけどね。当たり前だけど、悲しい話よりはいいんだけどさ。


「じゃあ、アイコ。生き返らせてくれるわよね?」

「それは無理よ。私ができるのはせいぜい、フェイトちゃんよりもアリシアちゃんに近いクローンだけ。
もちろん、その子はオリジナルのアリシアちゃんじゃない。言ってる意味分かるわよね?」

「う、嘘よ! そんなのだってアイコは! なんで、生き返らせられないのよ!」

「そりゃあ、無理ってもんでしょ」

「竜也君!?」


う~ん、だって、ね?
自分の母親が理不尽なこといわれたら息子が黙っていられるわけないじゃん。
それに生き返らすことなんてできるはずがない、赤ちゃんも知ってる……は、大げさか。


「もし、仮に母さんが生き返らすほどの力を持ってるなら、俺の父さんが生き返ってるよ」

「ふん、知ったような口を!」


常識的に考えただけなんだけど……まぁ確かに、俺はプレシアさんの都合も、母さんの能力も完全に把握できてるわけじゃないけどさ。
でも、でもだよ?
本当に、本当にそんな力があるなら……羨ましいよな。


「竜也の言う通りね。もし、そんなことが出来てるなら最愛の人を蘇らすわ」

「アイコ、貴女まで裏切ると言うの……」

「だから、言ってるじゃない。アリシアちゃんを再現したほとんど100%のクローンならって」

「そ、そんなの……」


アリシアじゃない、と呟く。

そりゃあそうだ。
こんな言い方をすれば、フェイトに悪いが、クローンはクローン。本物ではない。
だけど、しっかり生きているじゃないか。
その人がアリシアだといえば、その子はアリシアになれる。そうじゃないのかな?
だから、俺たちはフェイトをアリシアのクローンといわずに「フェイト」と呼ぶ。


「母さん……」

「くっ、黙りなさい! アリシアの偽者!」

「うっ……それでも、それでも私は!」


母さんの子です、とフェイトは自信を持っていった。

その通りだと思う。
さっきの繰り返しになるが、フェイトはアリシアでもなければアリシアのクローンでもない。
俺たちがフェイトと呼ぶ限り彼女はフェイトだ。人間は……名前以外にその存在を証明できるものなんてないというぐらいなんだから。
なら……、


「う、うるさ──」

「なら!」

『え?』

「プレシアさんにとってのアリシアって、アリシアである意味ってなんですか!?
どうすれば、どうすればアリシアなんですか!? どうすれば……フェイトは貴女の子なんですか?」

「そ……それは……」


俺は思う。
俺はたとえ自分がクローンだったとしても母さんの子だと。
これが思えるのは本当の母さんの息子だから言えるのかもしれないが、でも、だけどだからこそ、そう言いきる。
それが、俺だから。



「私にとって、私にとってアリシアは……すべて……だった。娘が全てだっ──ごほっ。
はぁ……はぁ……そう、だったのね。そうよね……あはは、ははは」

「母さん!」


プレシアさんが血を吐き倒れた。そこに慌てて、フェイトが駆け寄った。

フェイトを拒絶する。
誰もがそう思った。

しかし、プレシアさんは今までのように駆け寄ってきたフェイトを拒絶しなかった。
そして、


「ごめんね、フェイト。そうよね、貴女は間違いなく私の……」

「母さんしゃべっちゃ、駄目」

「私は……私は、いつも気づくのが遅すぎる」


フェイトを抱きしめ、一人その言葉を放ち、かみ締めているようだった。

結局は親子なんだ。
この二人は、やっぱり……似たもの親子だ。
何が似てるって、それは、お互いにお互いを思いやりすぎてるところだよ。


「アイコ……」

「何かしら?」

「この子が……この子が寂しくならないように、アリシアを……」

「それでも、クローンよ? それでも?」

「ええ、それが……私が望んだもの。それに……アリシアは妹を欲しがっていたから……」

「分かったわ……でも、その子が生まれるには時間がかかるわよ。それまでは……ちゃんと生きなさい」

「ふふ、愚問よ。娘が……新しい子が生まれるまで死ぬわけにはいかないわ」

「母さん!?」


そういい残すと、プレシアさんは血を吐きながら倒れてしまった。
周りがすぐに駆けつけようとするも、そこに通信が入ってくる。
その通信は、アースラで待っているリンディさんだった。


「動かさないで! 今すぐ転送する準備も済んでます。艦内の医療班も待機できてます!
今、本局の方にも問い合わせをして緊急の対策も出来るようになっているので、みなさんを転送し次第。本局に向かいます!」


その通信が入ると、まずは倒れていたプレシアさんと近くにいた、フェイトが転送された。
そして、今度は……、俺たちの番なのだが……母さんだけ輪からはずれる。


「母さんは行かないの?」

「約束したしね。ここには、アリシアちゃんを生まれさせるだけの機械も情報もある。だから残るわ。
しばらくは家のことをお願いね。あと、桃ちゃんと士郎さんにも」

「……分かった」


俺はこの言葉を残して、アースラへと転送された。
次に母さんに会うときは……きっと、全てが終わり、幸せになれた日だと信じて。









結論から言えば、アリシアは生き返った……ではなく、生まれ変わった。
うん、すごくシックリくる。

母さんが時の庭園に残り、プレシアさんが倒れて管理局本局の病院に入院して数日が経ったころだっら。
プレシアさんは奇跡的に意識を取り戻したが、いつ死んでもおかしくない状態になってしまった。

その時だった。
まるでタイミングを見計らってたかの様な、ずっと実は見ていたんじゃないかと思うタイミングで現れたのは、
母さんと……フェイトそっくりな子──おそらくあれがアリシアちゃんのクローン。
いや、アリシアちゃんだ……。

しかし、母さんはその後すぐに姿を消した。たぶん、あまり管理局にいられない理由があるのだろう。


「あ、アリシア……」

「ま、ママ……」

「ごめん、ごめんね。アリシア。それに……フェイトも」

「お、お母さん……」


俺たちは、その空間にいるのが邪魔だと思い、病室を出た。
しかし、病室を出た今でも中から泣き声、謝る声。そして、それを許す声が聞こえる。

数分……いや、数十分がたっただろうか。
何れはその声も音も止み、俺たちが部屋に戻ったそこには……。

泣き崩れた後のフェイトとアリシアがいた。
その様子から、ここにいるみんなが理解した。何が起きて、どうなったのかを。
どんな結末だったのかを……。

分かっていた。分かってはいたが。
やはり……。

そんな重い空気だったとき、フェイトが一人こちらを振り向いた。


「母さんは、母さんは最後は……笑って……笑顔……でした。今まで本当に」


最後の言葉を言う前に、アリシアもこちらを向き、二人揃って、深くお辞儀をしながら言った。


「「ありがとうございました」」


そのフェイトの目にも、アリシアの目にも涙もなかった。
これが本当の本当の終わりだと、そう思った。




あとがき

前回の47話は非情に申し訳ございませんでした。
作者のタピです。

感想の部分にも書きましたが、これが修正版です。
IFにしようかと迷いましたが、こちらのほうが作者的には圧倒的にいい。
また、前回よりもご都合主義が削られていると思います。
修正と言うよりは、ほぼというか全て違うと思いますが、ご了承ください。
そして、おそらく前回よりもいいはずです。
今回はこの修正版と最終回の連続投稿になりますので、残りは最終回にて。

最後に、
前の47話の感想へのコメ返をここにてまとめて返させてもらいます。

>ふと疑問に思ったのですが、このSSの主人公ってアイコという名前の下衆ババアなんですか?

そう見えてしまうのは、あまりにもそのばばあが……。
修正版にてある程度改善されたと思うのでご覧になってもらえれば嬉しいです。

>早く決着させようと急ぎ過ぎな感じもしました。(他同じようなもの多数)

修正版にて、と言う言葉に尽きますが、実際そうだったかもしれません。
というのも、展開のスピード感を出そうとして失敗した、というのが事実です。

>シリアスな回ならシリアス一色でいった方がいいと思います。(同じようなもの多数)

この作品の特長して、シリアスをシリアスと感じさせないと言うのもあるんですが、
さすがにラストスパートですからね。
修正版では、改善したつもりなので、見てもらえれば嬉しいです。

>エピローグ楽しみにしております。(同じようなもの多数)

ありがとうございます。
今日さっそくうpするので見てもらえれば光栄です。


たくさんの感想ありがとうございます。
並びに、指摘コメントありがとうございます。
おかげで、さらに良い作品となれる可能性を見つけることが出来ます。

以上を持って感想への返信とさせて頂きます。

では、続けて最終回を読んでもらえると光栄です。



[16185] ─最終話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:eb73667d
Date: 2010/03/30 11:35
「たつにぃ朝ですよー」

「こら、アリシア、竜也が困ってるよ」

「えーでもー」

「あと5……」

「「5分?」」

「5時間と5秒」

「ええっと、竜也。さすがに長すぎない?」

「う~ん、分かった。いーち、にーい」

「アリシア!?」


どうして、ギャルゲ状態になったか説明したいのはやまやまなんだが。遠慮させて欲しい。
いや、なんでそもそも、ギャルゲを知っているかと言うと──あ、俺はやってないよ?
やっていたのは5兄弟長男の兄貴だ。
その兄貴が、


「俺は分かったんだ。3次じゃモテないが2次なら!!」


とかいいながら、俺たちの前でギャルゲをやりだしたんだ。
ついついみんな興味本意で見入ってしまったのは未だに不覚だったと思ってる。

閑話休題。

この俺の状況については……まぁ夢の中の回想で説明させてもらおう。



今回の事件は、プレシアさんの死亡と言う形で幕を下ろした。
しかし、この結果は必ずしもバッドエンドと言うわけではなかった。

フェイトは自身の母にその存在を──娘と認められ、新しい妹ができた。
そして、その別れも、最後の様子を見た感じだと、決して悲しいだけのものではなかったようだ。

その後、プレシアさんは時の庭園でかつては花畑が広がっていたと言う庭に埋葬した。
さすがにそのときは、フェイトもアリシアも泣いていた。
俺もくるものがないわけではないが、しかし……なんともいえないな。

その時の一番印象に残ったものがある、それは母さんがしばらくお墓の前に立ちつくしていたことだ。
どんな感情で、気持ちで立っていたのかは知らないが、あの母なりに思うところはあったのだろう。

プレシアさん埋葬後、今度は残ったジュエルシードの回収に当たった。
今現在回収されているのが、なのは3つ、フェイト3つの計6個だけだった。
ジュエルシードは全部で21個ある。
つまりは、あと15個あるはずなのだが、13個まではなのはとフェイトの協力もあってかあっという間に集まった。
あ、一応俺も手伝ったけどね。

しかし、あと2個はどうしても見つからなかった。
そんなある日のこと、アースラ内で見つからないのに手をこまねいている時だった。
なのはが、何を思いついたのか、俺に話しかけてきた。それも神妙そうな顔で。


「ねぇ、竜也君」

「なに?」

「前になのはにジュエルシードくれたよね?」

「ああ、温泉の時のか」


まさか、俺が偶然ジュエルシード持っていたとはビックリしたな。
ん? あんまり驚いてなかったかもしれないけど。
それにしても、良くあのときのことを覚えているなぁ。俺なんて三日も過ぎれば忘れるぞ?
これが本当の三日坊主だ!

……自分で言ってて悲しくなったよ。


「よく覚えてるね」

「えへへ、あの後の夜は楽しかったね」


思い出したくもない……。
というか、赤面ものだぞ? あの後のお風呂でのやり取り。いくら混浴だからって悪のりもいいところだ。
おかげでその後の夢にヌードのなのはが……。
やっぱり、思い出したくもない。

いい思い出じゃなかったと言えば嘘になるが。


「でね、もしかしたらあの時みたいに、青い石を竜也君が持ってたりするのかなぁって」


青い石……ああ、サファイアもどきのことかな?
それなら、まだポケットの中に……。うん、確かにある。


「ポケットのなかにはビスケットがふた──」

「早く出してくれないかな?」

「……分かったよ。ほれ、これのことか」

「ありがとう、竜也君。リンディさんありましたよー」

「お、おいなのは!」


なのはは満面の笑みで俺からすばやく石を取った。

なんでリンディさん呼ぶんだよ!
これは俺がはやての誕生日の日に投げつけようと思っていたとっておきの……じゃなくて、
プレゼントにして誕生日を何とか乗り越えようともっていた石なのに!
もし、それがなかったら、それがなかったら!?
明日の朝日も拝めないんだよ! 俺が死んでもいいって言うのか!
世界が滅亡するのかもしれないんだぞ!

「これは……どうしたの、これ?」


リンディさんがさぞ不思議そうにこちらを見る。

どうしたの、これって拾っただけですよ、と答える。
そりゃあそうだ、なのはやフェイトみたいに、一生懸命探したわけでなくたまたま落ちていたのを拾っただけなんだから。


「竜也君が見つけて保護してくれたみたいなんです。さすが竜也君!」

「そうなの?」

「え……あ、はい。そうなんですよー。はは、言い出す機会がなかなかなくて」


いえない……ジュエルシードだと知らずに、はやてにあげようとしてたなんて。
サファイアだと思ってたなんて、絶対にいえない!

というか、下手したらこれ暴走してたんだよな……そう考えると……まぁ良かったのかもしれないけど。
もし、はやてに手に渡って願いをかねようものなら、きっと世界は無くなってしまうだろう。

ぽ、ポジティブに考えるんだ!
俺ははやてと言う魔の手、闇の手から世界を救ったと。延命できたと!

でも……誕生日プレゼントどうしよう……。


そんなことがあり、ジュエルシードも無事に全て回収。
一応これでジュエルシードについては終わりなのだが、管理局の人にとって大変だったのはこの後ようだった。
今回の事件はロストロギアが関わってる上に、その通報者がかの有名な猫姉妹。

俺からすればあの猫姉妹そんなに有名だったのか!?
と驚いたところなのだが、まぁそうらしい。
でも、俺のペットには変わりないがな、思い返すと。

しかし、そこはリンディさんの計らいあってか見事に沈静化し、綺麗な形で事件を終着させた。
その綺麗な形と言うのは、この事件において、犯罪者は出ないばかりか、ロストロギアの回収を手伝った民間協力者として、なのはとフェイト、そしてなぜか俺の名まで挙がり、表彰されることになった。
そして、この話が噂に上り話題になったらしい。
クロノが言うには、今ミッドでは話題の新鋭魔導師として注目の的とのことだった。

全くえらい迷惑な話である。
俺としては管理局に入る予定なんてないのに、勝手に注目されて話題に上がるなんて面倒なことこの上ない。
でも、なのはとフェイトは満更でもなさそうな顔をしてたような……。
まぁあいつらがいいなら別にいいけどさ。

お、俺も表彰されて悪気はしないしな! うん!
でも、管理局には入らないぞ? 俺は自由を愛する男だから!


こうして、この事件は終わったのだが、残った問題もあった。
それが、フェイトとアリシアの親権問題だ。
フェイトの母プレシアさんが死んでしまったので、この二人は孤児のような状態だ。
もちろん、そんな状態は見逃せるはずもなく、また子供だけで生きていくなど絶対に不可能なので親が必要だった。
孤児院などの施設に預けると言う案も出たには出たのだが、俺の母さんとリンディさんその上、桃子さんまで反対した。
まぁ理由は言わずもがなだね。

あの時の提案したときのクロノが責められたときはもう……すさまじいものがあった。

と言うわけで誰かが、親にならなくちゃいけないのだが……、


「じゃあ、私がなるわ。娘が欲しかったのよ。手のかかる息子だけじゃ寂しいもの」

「いえ、管理局員である私がに責任持って、保護させてもらうわ。いずれは優秀な魔導師に……」

「娘は何人いてもいいものよね、私が」


と言う感じに見事に三つ巴。
肝心の二人の意見を聞いてやれよ、いいたいところだったが、言おうとした瞬間ものすごい気迫に押されてしまい、言えずじまい。
その様子を見て、フェイトは苦笑するばかりだった。
アリシアは困惑した様子でよく分かっていない様子だった。
なので俺から、


「アリシア、あれはね。誰が、アリシアとフェイトの母親になるかを争ってるんだよ」

「そうなんだ、私のママ死んじゃったもんね……」

「う……そうだけど。でも、このままじゃいけないだろ?」


地雷に近いところ踏んでしまったようだが、しかし、何れは乗り越えなくてはならない壁。
よく考えれば、俺の父さんが死んだのもアリシアぐらいの年齢だった気がする。
アリシアが、泣きそうになってしまったので、しょうがなく俺の身の上話でも聞かせて慰める。
身の上話が慰めになるかって言ったら疑問だけど、それでも自分と近い境遇の人がいると安心すると思うんだ。


「そんなことがあったんだ、竜也もいろいろあったんだね」

「ああ、そうか。フェイトも知らなかったのか」

「……うん」

「まぁそんな暗い話でもないさ。人生色々だ」

「うん、人生色々だね!」

「お、アリシアは元気がいいな」

「うん! 悲しんでたら、天国のママに怒られちゃうもん」

「……そっか」


俺が思う以上にアリシアは強い子みたいだな。もしかすると、フェイトより強いんじゃないか?
まぁ、フェイトの強さって言うのがまた違うものだとは思うけどさ。

にしても……まだやってるよ。
しょうがない、ここは一つ、俺が頑張るか。


「私がなるわ!」

「いえ、私が!」

「私こそが!」

「じゃあ、俺が!」

「「どうぞ、どうぞ、どうぞ……はっ!」」

「え?」


うん、ギャグが通じてよかった。
リンディさんだけは、ぽかーんとしてるけど、地球在住の二人には通じたようだ。
でも、これで空気が入れ替わった。
まさに、計画通り!


「母さん方や、いつまでも論争しててもしょうがないでしょ。本人たちの意見を聞きなさいや」

「そ……それもそうね」

「冷静になると大人気なかったかしら」

「竜也に手玉に取られた……」


一人だけなんか悔しがってるけど無視だ無視! いちいち付き合ってられん。
付き合うと付け上がるしな!


「まぁまぁ、では、お二人さんどうかな?」

「え……うん、アリシアは?」

「う~ん、私はあまり分からないから。任せるね」

「じゃ、じゃあ、できれば竜也のところがいいな。一緒にいられるし」


フェイトが顔を赤くしながら、そう答えると、二人のママさんはうなだれ。
俺の母さんはガッツポーズをし、


「よくやったわ、竜也!」


と、なぜか俺を褒めた。

なぜ俺を褒めるし、というかむしろ、フェイトにお礼をいうべきだろう。
でも……フェイトとアリシアが家族の仲間入りか……。

まるっきり考えてなかったと言えば嘘になる。
実は二人が、うちの家族になればいいなと密かに思ってはいたが口に出すのは躊躇っていた。
だって……恥ずかしいじゃん。


「じゃあ、よろしくな。フェイト、アリシア」

「う……うん、よろしくね、竜也」

「よろしくー。竜也お兄ちゃん」

「お兄ちゃん!?」

「え……ちがうの?」


た、確かに年齢的に考えればお兄ちゃんといわれてもしょうがない。
アリシアの場合は義理の妹になるわけだし……で、でも……お兄ちゃんはちょっと、ね。
抵抗があると言うか、葛藤がと言うか……。

いや、嬉しいんだけど。嬉しいけどさ。

あ、そこのフェイト!
「じゃあ、私もお兄ちゃんって呼んだ方がいいかな?」じゃないよ!
フェイトなんて同年代なんだから、そんなふうに呼ぶ必要なし!

てか、


「フェイトもアリシアもお兄ちゃんはやめよう。フェイトはそのままでいいよ」

「……うん、分かった」

「えー。でも、お兄ちゃんって言うのに憧れていたのに」

「そう言われてもね……」

「じゃあ、たつにぃは?」

「それなら……」


お兄ちゃんといわれるよりははるかにいい気がするな。
なんか兄貴肌って感じもするしな。たつにぃ……たつにぃ……いいな!

お兄ちゃんこんなにかわいい妹が出来て幸せだー!
あ、自分でお兄ちゃんて言っちゃった。

そんな訳で、一夜もかからずに妹が二人も出来た。


という夢を見たのさ……と言えば、見事な夢おちが完成するんだが、これは残念ながら?
いや、嬉しいことに現実なんだ。


「せんきゅうじゅういーち、せん──」

「アリシアストップ! 分かったから。分かったから呪文みたいに数を数えないでくれ」

「やっと起きた! おはよう、たつにぃ」

「全く……おはよう。アリシアにフェイト」

「おはよう、竜也」

「で、何で朝から俺の部屋に来てるんだ? しかも、今はまだ」


そう言って、時計を確認すると時間はまだ午前4時。
早起きってレベルじゃねーぞおい。今日は久々に朝の鍛錬もないって言うのに。
というか、朝の鍛練がある日でもこんな早起きしないって。鍛錬があってもあと1時間は寝れるよ。


「まぁいいや。っで何しに来たの?」

「ええっとね、アリシアがね」

「うん、この間の猫さんの芸見せてよ」


この間の猫さんの芸とは、アリシアがこの家に来て間もないころに、まだ心も開いてもらえず、そればかりか若干プレシアさんのことを引きずっているみたいだったから、
猫姉妹を使って、かつてなのは猫でやったような芸を見せたのだ。
そしたら、アリシアはその芸をえらく気に入ってくたのか、それ以来心も開いてくれた。
そんな経緯もあり、今ではかなり仲がいいのだが、こうやってしょっちゅう見せてくれ頼まれるのだから、困りものだ。

見せてあげるのはいいんだけど、あいつらにだって都合があるだろうし、何よりこんな朝早くから顔を出すとは思えないしな。

猫姉妹ごとアリア、ロッテは今では八神家だけでなくこの家にも顔を出すようになった。
うちはこれでもマンションなんだが……でもまぁ、迷惑かけるような猫じゃないから大丈夫だろうけどさ。


「いやね、二匹ともきてないからできないよ」

「えー。見せてよ!」

「アリシア駄目だよ、竜也を困らせちゃ」

「うーん、でも……」


この二人が一緒に住むようになってわかったことがある。
フェイトはアリシアに対し結構姉的な存在のようだ。アリシアは妹を欲しがってたみたいだけど……。
まぁそんなのは些細な違いに過ぎないね。姉妹の間では。
それに、アリシアが思ったよりわがま──純粋なので精神的に大人なフェイトがそういう立場になるのはしょうがないことなのかもしれないけど。

それでも、やっぱり見た目は姉妹……なんだよなぁ。
この二人に挟まれると、俺が異端に感じて嫌だなぁ。比べられると言うか、一人雑魚が混じっていると言うか。
それほどに、二人がかわいくて綺麗ってことなんだけどさ。


「分かったよ」

「ほんとう!?」


ああ、止めてくれ。その潤素無垢な目を俺に近づけないでくれ。
俺が汚れて見えるからー!


「でも、学校が終わってからな」

「うん……分かった。楽しみに待ってるね」


アリシアはそういうと、笑顔でスキップしながら俺の部屋を出て行った。
まったく、かわいいやつだな。
これじゃあ、恭也さんがシスコンの理由もわか──あ、なんか危険な気がする。


「ごめんね、竜也」

「いや、別に。兄妹だしね」

「そ、そっか。兄妹、だもんね」


お互いにそういうと、なぜか目線があい。
自然と笑みがこぼれた。
兄妹っていいな! 心の底からそう思った瞬間だ。


「そういえば、フェイトは今日から学校だよね?」

「うん、竜也となのはと一緒の」


母さんの計らいあってか、フェイトは俺と同じ学校に来ることになった。
俺には嬉しいことであるが、若干恥ずかしいものものある。普段の俺を知られるし何より学校は……あいつらがいるからなぁ。
でも、アリサたちに今回のことを説明するのにも都合もいいし……。
まぁ結局のところ嬉しいんだ。

ちなみに、フェイトは同じ学年に、アリシアは1年生となる。


「じゃあ、改めて。よろしくね、竜也」

「ああ、よろしく。そして、それより……」

「それより?」

「寝かせてくれ!」

「あ、ごめん」


フェイトは顔を真っ赤にして慌てて部屋を出て行った。

全く、今何時だと思ってるんだ。
おかげで目が覚めちゃったじゃないか。

でも……。

こんな慌しい生活も悪くないな。

そう思った時だった、携帯が鳴り5通のメールが届いた。
その内容は……、


『話は聞きましたよ! 閣下今日から妹が転入してくるって!」

『妹君ですか……さぞかし美少女!』

『……女皇帝の誕生』

『僕は例えそれでも! 閣下が好きです!』

『……我が野望が遠のいた』


ああ、フェイト……学校じゃあ大変だぞ、きっと。
それよりも……。

どうやってこの情報を手に入れたんだ!?
そして、もう一つ!


「おまえら、メールで連係プレーってもはや未知の領域!」


本当に騒がしいったらありゃしないよ。
まだ、時間は4時半だって言うのに……。




最後なので少し長いあとがき。

まず最初に、感謝の言葉を。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
おかげで、無事に最終話まで書き上げることが出来ました。
実は、最後まで書き上げたのは初めてなんです。
こんな、拙い文章と文才のない作者の作品を読み、さらには感想まで書いてくれた方には感謝しても感謝しきれません。

本当にありがとうございました。


では、色々と書かせて頂きますね。
この最終話にて完結とさせて頂きます。
実はA’s編以降の構想もあったりするのですが、なにぶんリアルがこれから忙しく、
というよりは、大学入学と言う慣れない環境になる為に、書くのが難しいと思ったからです。

なので、もし続編を希望する声や、また作者が落ち着き、書けるような状態になりましたら、
今度は別スレにて書かせて頂くことになります。
その際には、この作品の感想欄にてご報告させて頂きますので、ご安心ください。

ということで、この作品ではしばしのお別れとさせていただきます。
もしかしたら、続編ではなく短編や一発ネタ等で少し書くことがあるかもしれませんが、
その時は、少しは落ち着いたのかな、と思ってもらえれば光栄です。

ぐだぐだと色々書きましたが。
皆さんの支えあって、ここまでこれました。
そして、ここでの経験は次回作へと繋がると思います。

三度ですが、本当にありがとうございました。



[16185] A's─第一話─
Name: tapi@shu◆cf8fccc7 ID:16069ab9
Date: 2011/04/01 22:48
俺は自身の身に危機を感じていた。
だからどうしても不安の為、何度も今日の日付を確認してしまう。
しかし、何度見ても日付は変わらない。
そう、時代の先──未来に行くことはおろか過去に行くことなど絶対に不可能なことだからだ。
そんなことは知っている。
むしろ、そんなことが出来るのであればプレシアさんは死ぬことはなかったし、そもそも自分だってここまでの危機は感じない。


「たつにぃどうしたの? そんなにそわそわして」

「これから身に降りかかるかもしれない天災を考えて震えてたんだよ?」

「身に降りかかる天才?」

「なんか闇に舞い降りた天才みたいな、フレーズだね?」

「たつにぃの言ってることよく分からないかも……」


アリシアが不思議そうな顔をして俺の部屋を出た。

そもそもなぜこの部屋にいるのかが疑問だが、今はそんなことに構ってる暇じゃなかった。
そうして、もう一度カレンダーを見てしまう。


「何度見ても祝日のない、梅雨時の6月だ」


祝日がないということは、学校の休みで3連休がない事を表している。
そのことが少し面倒だなとは思うものの、これから降りかかることに比べれば大したことじゃない。
否、むしろ学校を理由にして逃れられないか?

無理だ……待ち伏せされるに決まってる。
どうせ変なオーラをまとって家の前でニコニコしながらやつは待ってるに違いない。

その光景を頭に思い浮かべると……。


「や、やばい……寒気と震えが止まんない」


これは何としても、あの日までに何とかしなくてはならない。
でも、めぼしいアイディアがない。お金がない。考えがない。面白みがない。
あ、最後のが一番重要だね。

ありきたりなものを用意したら、俺がつまらない。
せっかく相手は関西人なんだから、突っ込みやすいものを選んでやりたい。

そして、はやてには思う存分自分の血と才能を生かして欲しい。
これは俺が考える最大限の優しさだ。
決して面白がってるんじゃないんだからね!


「竜也~、もうご飯の時間よ~」


母さんの暢気な声が聞こえる。
それと同時にフェイトとアリシアの声も。
今日は平日だから、当然のごとく学校もある。
学校があると言うことはアリサやすずか、なのはも居て、奥の手段としてあいつらも居る。
だとすれば……うん、可能性は無限大!

今日の学校に全ての望みを賭けることにした。
俺の身は、彼女らに託されたのであった。





「え? 女の子へのプレゼント? って誰にあげるつもりなのよ?」

「ちょっとした知り合い」

「竜也に、他の女子に知り合いいたの?」

「いや、架空の人物……?」

「何で疑問系……はっ! まさか架空って二次──ごめん、私そういう人と一緒に付き合えないわ。今までの関係はなかったこ──」

「何を想像した!? 絶対間違ってると思うよ?」

「あのね! 竜也君お手製のケーキでも良いと思うよっ」

「竜也君のケーキ美味しいもんね」


結局まともに考えてくれたのはなのはだけだった。
いや、真面目って言う意味ではフェイトも必死に考えてくれていたが、案にはなっていないだけなのだが。
その後は、なぜか俺のケーキ談義になってしまい、あれよあれよのうちに話題が逸れていき、最終的には今度うちでケーキパーティをやることになってしまった。

望みをかけた俺がバカだった。
アリサなんて何を勘違いしたのか、俺と距離を置いてるし、なぜか5兄弟は盛り上がり始めていた。
「閣下のお手製……だと?」とか「今宵は宴ですね! 閣下!」とか面倒この上ない状態だ。
だから、とりあえず釘を刺す意味でも、


「ごめん、俺のケーキ3人用なんだ」


と言っておいた。
そしたら、しゅんとなり普段からは予想もつかないくらい静かになってしまった。

ちょっと言い過ぎたかな。
しょうがないから、あいつらの分も作ってやるか。
じゃあ、どんなケーキがいいかなぁ。
王道のショートケーキは前に作ったからチョコかな。でも、チョコって飽きやすいしだったら思い切ってチーズケーキを……でも、あれって意外と難しいしなぁ……。

そんな事を思いながらいつも通りの帰宅。
面子はいつもので、家に一旦帰り、今日も恭也さんの下で剣の鍛錬を受けた。
鍛錬は徐々に激しさは増すけど、自分自身が身体も成長し始めてるせいかけっこういい線まで動けるようになってきた。
それでも、まだまだやるべきことは多いので鍛錬は欠かせない。

今日は、なのはだけじゃなくフェイトとアリシアも見ていたことからなのか、いつもより集中して一層激しく鍛錬を行ったので終わった頃には日が沈んでいた。

アリシアは竹刀とかに興味心身で、ちょこちょこ弄くっていたがフェイトはこっちの動きを真剣に見ていた。
見取り稽古のつもりだったのだろうか。

鍛錬も終わり外も暗いので、慌てて帰ろうとしたら桃子さんが今日はなのはの家でご飯を食べるように進められた。母さんも家に帰らずにこちらに残っていたので、なのはの家でご飯を食べさせてもらうことにした。

平穏無事にご飯も食べ終わりいよいよ帰ろうかと言うときに、今度は今日は泊まって行ったらとの事。
正直、かなり疲れてへとへとの状態なのでありがたい申し込みだった。
だけれども、


「いいえ、大丈夫で──」

「そういえば、たつにぃ、天才の件はどうなった?」

「だから天才じゃなくててんさ──はっ!」


お、思い出した!
ケーキと稽古のせいですっかり忘れていたけど、そうだよ。
俺の命の危機があるんだったよ!
何で自分の命が危ないのに忘れてるんだよ、バカかよ俺は……って自分をけなしてる場合じゃない。
早急に対応を考えなければ。

疲れ果てて、すでに眠気が遅い始めている頭に活を入れ考え直す。
この場でできることは何か?
現状を確認する。
相談できそうな人はいるか……母さんは論外だし。桃子さん……は面倒ごとになるような気がする。
気がするけどたぶんあってる。
とすれば、美由──ないな。


「あ、今失礼なこと考え──」


ああ、雑音が混じる。集中集中。
今は、彼氏はおろかめぼしい男友達すらも居ないらしい、美由希さんに構ってる暇はないんだ。
俺が生きるか死ぬかの瀬戸際だって言うのに!


「ひど!」


となれば、消去法で士郎さんと恭也さん、なのは、フェイトとアリシア……。
そうだ、な。
こういう時こそ、彼女を頼るしかないな。
たぶんこういう面ではすずかと同じくらい役に立ってくれるはずだ。


「なのは、会議をする。なのはの部屋にてだ、以上」

「にゃ!? え? 一体なんの……た、竜也君強引に引っ張らないでよぉ」


なのはがとろそうなので、強引にて手を引っ張ってなのはの部屋に向かう。
階段はさすがに危ないから、フェイトに手伝ってもらい二人で運んだ。
というのは建前で意外となのはが重かったからなのだが、そう言ったら、


「な、なのはは重くないもん!」


と、言いながらじたばたし始めたので待てと一言いい、大人しくなったところをフェイトと運んだ。

運び終わり、なのはの部屋に着いたらなのはも猫モードが解けたのだが、


「なのはは重くないもんっ!」


依然と拗ねたままで、それ以外に口を開こうとしなかった。
頬を膨らませ、ぷんぷんといった感じで今、なのはは怒ってますと猛アピールしているようだった。
その姿は怖いと言うか、拗ねてる子猫そのものなので可愛いぐらいだった。
しかし、フェイトはその姿を見て、


「ねぇ竜也、なのは怒ってるけど? 大丈夫かなぁ」


なのはを心配する。

なのはの怒った姿を見て本当におろおろし始めるのは、フェイトぐらいだ。
アリサはこの姿を見るとまたか、と言う感じで、すずかはむしろ愛でるかのように笑顔に。
5兄弟は……カメラはマネージャーを通してからにしてもらいたい。
あ、なのはの場合は飼い主か。
というか、学校にカメラを持ってくるなよ……しかも、ケータイじゃなくて一眼フレってどこにそんな予算があるんだろう……毎度不思議に思う。
そのお金、少しは家に分けてもらいたいものだ。

そうそう、家といえば母さんが最近は自営業の勉強をしているようだった。
翠屋二号店だなんとかと言う話を聞いた覚えがある。
もし、作ることが出来たらそれで貧困からもおさらばかもしれないと密かに願っていたりもしている。

話がかなり逸れてしまった。
問題は拗ねたなのはをどうするかだった。
少し時間が経てばすぐに治るのだが、あいにくとこちらに猶予はないのだ。
となれば、何かを餌にして……、


「ほれほれ~」

「…………」

「ふら~フリフリしてるぞ~」

「……ーーっ!」

「我慢は身体によくないぞ~」

「う……うぅ」


からだがぴくぴくし始めている。そして、どういう原理なのかツインテールがピコピコしてる……尻尾?
そんなことより、もうちょいのようだった。
今更ながらなのはって本当に猫だよなと思う。

ここは、押して駄目なら引いてみな戦法を用いる。


「じゃあ、止めた」

「え? そ、どうして!」


ふっ食いついたな、これが罠だと知らずに。
あとは、このまま釣るだけの作業だ。

にしても……なのはもずいぶんと安くなったものだ。
マタタビの一つで釣れてしまうとは、もう自家栽培せざるを得ない。


「どうした、なのは。そんなにこれが愛おしいか?」

「そ、そんなこと……ないもん」

「なら、これはいらな──」

「にゃ!?」


これだから、甘いと言うのだなのはは。
そう、まるでコーヒーにガムシロを二杯入れた上で砂糖を3杯入れるぐらいに甘い!

……ちょっと美味しそうだな。
そこにミルクを入れてみるといいかもしれない。


「しょうがないなぁ、じゃああげるよ」

「ほ、ほんとっ!?」


あげるよと言って、ほんとっ! と聞き返してくるからには相当欲しいのだろうけど。
いや、そうじゃなければ餌の意味がないのだろうけど……やめよう。
深く考えるとどつぼにはまる気がする。


「だが、条件がある」

「条件?」

「俺の相談に乗ること」

「……え? それだけ?」

「あ、ああそれだけど」

「なんだぁ、それなら言ってくれれば……」


なのはがちょっと拍子抜けしたような表情になる。

どんな条件を突き出されると思ったのだろうか?
ちょっと気になったので、聞いてみることにするとなのははちょっと恥ずかしそうにしながら、


「い、いつもの感じの……」

「いつもの感じって?」

「ね……猫とか」

「ああ、そゆこと」


理解できた。
つまりなのはは自分が弄ばれる事を望んでいたようだった。
それは悪い事をした。せっかく俺との遊べる機会がなくなってしまったのだから。

そうだったんだよな、ごめんねなのは。
俺はいつでも遊んで欲しいなら遊んであげる……ぞ?
……あ、やっぱりいつもは無理かな。
俺にだって用事がある、剣の鍛錬とか魔法の練習とか5兄弟の相手とか。
なのはの相手は2の次3の次だ。


「いま、なんか後回しにされたような」

「気のせいじゃないよ、なのは」

「そうだよね、気のせい……気のせいじゃないの!?」


なのはがかなりビックリしたみたいだった。
そのせいで、隣で俺のひざを枕にしてたフェイトとアリシアがビクッと動いたけど、起きる様子はなかった。
って、あれ? なぜ二人は俺のひざで寝てるし。
でも……あまりに気持ちよさそうに寝ているのでどかす気にもなれなかった。


「こらっなのは。二人が起きるところだったぞ」

「え? あ、ごめんなさい。ってなんで二人は寝てるの!? しかも、竜也君の膝枕で……羨ましいかも……」

「何か言った?」

「ううん、なんでもない」


この状態は以外にも辛い。
立ち上がるときには相当の覚悟が必要だな。足の痺れ的な意味で。


「ええと、竜也君は相談しにここにきたんだよね?」

「おお、そうだった」


またすっかり忘れてた。
なんで、こんなに忘れやすいのだろうか?
これってある意味の防衛本能なのか? 彼女が怖いから現実逃避しているというような。

うん、説得力がありすぎる。
それで、忘れたままになって、気付いたら取り返しのつかないことになってるんだ。
そして、きっと彼女は言うんだろうな?


「おかえりなさいや、っで今度はどこに逝くん?」


って……真面目に考えよう。
目に光の映らないあの瞳は洒落にならない。
どこに焦点を当ててるのかも分からないんだもん。


「女の子へのプレゼントなんだけど」

「学校で聞いたことなのかな?」

「そうそう、それそれ」


誰も真面目に聞いてなかったと思ったけど、なのはは聞いてたのか。
いや、案時にちゃんと返してくれたのはなのはだけだったからね。


「う~ん、なのはだったらなんでもいいかも」

「なんでも?」

「うん! 友達からプレゼントがもらえるだけでも嬉しいから」


なのは溢れんばかりの輝く笑顔でそう断言した。

自身の身になって考える。
俺もそう出来たらよかったのだが、女の子の欲しいものはいまいち分からない。
だから、なのはに聞いたのだけど……そうか、なんでもか。


「だから、竜也君の好きなものを送っても良いと思うよ?」

「俺の好きなもの……」


俺の好きなもの……頭の中で繰り返すと同時に口でも何度も繰り返し言う。

俺の好きなもの。
例えば……いや、一番はやっぱり猫とかかな。
俺の目の前には一匹の白い子猫。
白いと言っても毛並みは栗色で尻尾は二本……ってなんか妖怪みたいだけど。


「た、竜也君。そ、そんなになのはを見ないでよ……」

「いや、好きなものって思ってね。なのは」

「え? なのはがす──」

「猫がいいかなって」

「なのはは猫じゃないーっ!」


この発言でなのはに引っ掻き回されて、俺はなのはの部屋をを急遽退室。
そのまま真っ直ぐ家に帰った。

フェイトとアリシアはよほど深く眠っていたのか、全く起きる気配がしなかったので背負って帰った。
さすがに二人は重かったが……まぁたまには兄らしいこともって思って頑張った。

家に帰れば母さんが、すこし驚いた顔をしたけど、すぐに微笑んで俺と一緒に二人を部屋へと連れて行った。
二人をベッドの上に寝かしつけるも俺の服を強く握ったままだったので、離すまでそっと待った。

それにしても、プレゼントはなんでも良くて、好きなものか……。
ふっ……やっぱりあれしかないよな。

そう心に決め、いざ決戦の日に備えて俺は作戦練る。
しかし、いつのまにか睡魔に襲われそのまま寝てしまった。

運命の日まであと3日。












────────────────
あとがき
ふっ、4月馬鹿だから許される! ……はず。
続きなんてない。
しかも、sage投稿するというこの隠密力。
気づけた人がいたら作者が驚く。喜ぶ。
以上。
続かない。



[16185] 【再投稿】4月1日ネタ
Name: tapi_shu◆cf8fccc7 ID:16069ab9
Date: 2011/09/25 16:34
俺にとって八神はやてとは、ちょっと怖い姉御肌の人物である。
最初の出会いのときから、彼女とのトークは突っ走りぱなしだが、その過激なお話が実は好きだったりする。
何より、彼女との一時は平穏とは遠いものの好きな時間ではあるからだ。
しかし、そんなはやては独り、いや、正確には俺が付き添ったりはしているから独りにはさせているつもりは無いのだが、
世間体的に言えば、また現実的に客観的に見るならば、彼女は天涯孤独だった。
いかに、不自由ないお金を与えられようとも、不自由ながらも生きていようとも、その実、居心地は非常に悪いと思う。

生きているのに、死んでいるのに近い常態。

その状態を強いて表すならば、生きていること自体が無意味、と言うのかもしれない。

その理由は、先ほども言ったように、天涯孤独であるが故である。
ならば、逆に考えよう。

天涯孤独とはどんな理由に出来上がるのか。
また、なぜ天涯孤独と言うのかを。

それを単純に言うならば、家族がいない、身寄りがいない、親族がいないといった、
血縁関係からの、また親戚その他からの援助──というと、おかしな響きだが、生きるのにはお金が単純に必要なので、援助と言っても差し支えはないとは思う。
なら、お金をもらえれば天涯孤独ではないのか?
それも、また違う。
そもそも、それについてはすでに上で否定している。

…………。

いや、もうやめよう。
こんな遠まわしな言い方が、そもそも俺らしくない。
事実を単純に、ありのままに言えばいいではないか。

つまりは、


「はやてが俺の家族になる、ということだ」

「……よう聞こえんかったわ、もう一回説明してくれへん?」

「いや、もう3回目だろ。天丼でもないよ」

「うぅ……それを言われると弱いんやけど、でも、もう一回や。な? ほんまに頼む」

「だ・か・ら」


今日4回目の『はやてが俺の家族になる』と言う言葉をはやてに言い渡す。
そうすると、はやてはまた難しそうな顔をして悩み、言った、


「ええっとな、もう1──」

「はやて!!!」

「うっ、で……でもなぁ、竜也君」

「もう遅いよ、届出も出しちゃったし」


俺のその言葉に、そなあほな、と小さく呟く。でも、そうやったなと自ら確認する。
その言葉には呆れと言う感情が大多数含まれているように思えるが、どこか嬉しそうなのはどうしてだろう。
そもそも、聞き返すときも思い悩んでいるように思えたが、時折、笑顔にもなっていたところから不思議ではあった。


何を悩んで、何に喜んだんだ?
喜びたいんなら素直に喜べばいいのに……はやてのダークな部分もそれなりに惹かれる所はあるけど、
それ以上に笑顔の方が俺は好きなんだけどなぁ。


そうそう、今みたいな感じ。
はやては俺に言われた言葉繰り返し呟くと、ぱぁっと笑顔になったり、「でも……」と言った感じに悩んだりを繰り返す。


思い悩む理由はなんとなく想像できる。
この間──と言っても、大分前のような気がするけど温泉のときも、自分の足が原因で行かないと言い張ったし、
たぶん、遠慮がちな、はやてのことだ、今回もそこらへんで悩んでいるんだろうなぁ。
というか、そもそも家が引き取るのは決まってるし、すでにはやては‘八神’はやてじゃなくて、‘相沢’なんだよな。
母さんが出しにいっちゃったから。


余談ではあるが、もちろん本人の許可なしではない。
直接、本人の家に出向き(もちろん当然のことだ)本人に了承を得た。
そのときのはやては、喜びいっぱいって感じで、ずっとニコニコしてて、


「ふふふ、今度から竜也君と一緒の苗字かぁ。嬉しいなぁ。ふふふ……うふふふ」


と、あまりにも壊れていた。
ああ、傍にずっといた俺は、背筋に凍るものがあったというのは、語らぬも当然のことである。

しかし、その後すぐ……と言うほどでもないが、母さんが届出に出しに行って30分ぐらいのころだろうか。
急になにか思いついたかと言うと、ぶつぶつ言い出し、この状態だ。


全く、何が気に入らないんだよ?
さっきまではあんなに喜んでて今だって喜んだり嬉しがったりしてるのに……。
これはあれなのか? 乙女心ってやつか!?

…………。

違うか。


「そうやで」

「そうきたか!」


久々に炸裂ー!はやての読心術!!
俺には効果が抜群以上に、心を読まれると言う恐怖でここしばらく寝れなさそうだー!
だって、これから同じ家だもん……。おーあーるぜっと。


「はぁ。っで、何を悩んでたんだ」


もし、仮に今までの悩みが乙女心とかいうやつなら、俺の今までの心配はなんだったんだろう。
これが本当の気苦労? それとも思い過ごし?
どっちにしろ、俺の大切な! 大切な時間が無意味に使われたことになるけどな。


「うん、それなんやけど……兄妹で結婚ってできるんやっけ?」

「…………悪いはやて、よく聞こえなかった」


今、結婚って言った? 言ってないですよね? 言うわけないじゃないですか!
俺の耳がおかしんだよな。そうだよね、そうなんだよね。
これは一回耳鼻科かな? ああ、もしかしたら精神科も脳外科も必要かもしれないな。

でも、いいや、うん。
とりあえず病院行こうかな。はやてと一緒に。


「いや、ええんや。自分で調べるから」

「…………」


何を調べるつもりなんだろうねー。
出来れば、俺には関係ないことだといいなぁ。例えば、法律とか結婚とかいう単語も遠慮したいな。

そんな時だった、陽気な声と共に母さんが帰ってきた。





今回の‘八神はやて相沢家引取り企画’に賛成するものは一人だけだった。
というよりは、反対する者もいない状況ではやて本人の了承を得た為に通った企画であった。
この企画に対し、関係者は語る。

フェイトは、家族が増えるのは純粋に嬉しい……でも、また竜也の知り合いの女の子? と首を捻った。
そのフェイトの妹であり、最近では俺に餌付けされつつあるアリシアは、妹猫が欲しいと一言。しかし、同時に拒みもしないし、家族が増えるのは嬉しいと答えた。

竜也の直属のペットであり、竜也の一番の親友である、なのははと言うと、


「また、なの? また、竜也君に女の子の知り合い……が? ははは」

「いや、待て落ち着くんだ! なのは」

「あははは。何を言ってるのかな、竜也君。なのははこれ以上ないほどにオチツイテルヨ?」

「語尾が! 語尾が正しい日本語の発音をしてない!」


かつての闇はやてを連想される……否! それ以上の危険度を肌からひしひしと感じる。

な、なんだっていうんだよ……。
俺は何もしてないし、いや、今回の件に関しては本当に何にもしてない。
全部母さんが仕組んだことなのに!


「竜也君?」

「は、はい。なんでしょうか?」

「私の怒っている意味が分かるかな?」


い、一人称まで変わってるよ?
怒っている意味だと?
全くもって想像もつかないです。いや、まて。さっきの言葉の中にヒントがあったはずだ!
落ち着け、俺。落ち着くんだ!

さっきの言葉を思い返す……。
「また、なの?」
また、とはなんのことだろう。それは、俺がかつて犯した過ちがあると言うことだ。つまりは、これは二度目のことだからいい加減に堪忍袋の緒が切れた、ということなのか?
なるほど、確かに二度目なら怒られても仕方がないかもしれない。
しかし、だ。それは内容によるのではないのだろうか?
もし、どうしようもなく。それが必然であった場合など、逆に完全に偶然であった場合は理不尽な怒りだろう。
となれば、これだけでは判断がつかない。なら他のヒントはどうだ。
「新しい女の子」と言う言葉……ん? これには思い当たる節が……。


「なのは?」

「…………」

「もしかして、はやてに嫉妬?」

「にゃ!? そ、そんなわけないヨ? なのはは竜也君なんかには嫉妬しないヨ」


明らかに、動揺して慌てて見繕ったのがもろばれだぞ?
はぁ、そうか……猫って嫉妬しやすいんだっけ?
そういえば、猫姉妹に初めて会ったときは威嚇していたような……そうだったのか。


「悪かったな、なのは」

「にゃ、にゃんのことかにゃ?」

「最近構ってあげてなかったからなぁ」

「へ?」


そうだよな。
俺は最近家のことで忙しくて、フェイトとアリシアと定期的にはやてと絡んでばっかしで。
なのはとは登下校を一緒にするだけだったもんなぁ


「よし、今日は存分に遊んでやる! だから、嫉妬するなよ」

「だ~か~ら~! なのははし──」

「よし、お手だ!」

「にゃにゃ!? にゃん」


お手を通して、なのは猫の手の温かみを感じる。
そして、なのは猫も自然と笑顔になっていくようだ。

うん、その顔。その「にゃはぁ~」顔が大好きなんだよ!
たまらないじゃないか、そんなかわいい顔してるとついつい、


「撫で回したくなるじゃないかぁ、ははは」

「にゃ……にゃぁ~ん。にゃふぅ」


俺となのははしばらく、「ははは」「にゃははは」と言いながら市内を駆け回った。
もちろん、なのはがスリスリしながら、俺がお手をさせながらだ。自分で言うのもなんだが器用なものだと思う。
そんな、なのはと俺の姿を微笑ましそうに眺める人もたくさんいれば、後方から必死に木刀を持って追いかけてくる人もいたようだが、おそらく気のせいだっただろう。


閑話休題。
つまり、このはやて相(以下略)は、俺のなのはの懐柔により反対するものはいなかった。
しかし、問題は山済みである。
そしてこの問題の一つと言うのがこの世界に生きる、いや、ありとあらゆる次元世界における最も難しくシビアな問題が残っている。

そう、それは……お金だ。

今、世間では政治とお金の問題などと言ってるが、一庶民的にはそんな政治のお金の問題に付き合うより、家の家計の問題に付き合えって感じだろう。

もちろん、それは相沢家においても例外ではない。
むしろ、相沢家にはいつもこの問題が壁となって現れると言えるだろう。

もともと俺と母さん二人を食って生かすのにもかなり厳しいのに、母さんはフェイトとアリシアまで家に招きいれた。
もちろん、そんなのはアリシアのせいでもなければフェイトのせいでもない、母さんが何とかしなければならない問題である。
今は、幸いというかギリギリのラインで食って生きているが、未来的に将来的に考えれば決してそれは長く続くものではない。
その上にだ、はやてもとなると……家計は火の車だろ。まぁこの場合は車は車でも車椅子なのだ。
火の車椅子……というか、闇の車椅子使いがやってくると言う感じか。
そんなわけで、今すぐにでも解決が必要となったわけである。


「で、どうするの母さん。これから先」

「ふふん、実はすでに対策は考えてあるのよ!」


自信満々にそう答える母さん。

この母がこうやって高らかになっているときはろくなことにならないと言うか、いや、おそらくはいいアイディアではあるのだろうが、
そのアイディアには問題点があると言った方が正確か。


「はやてちゃんは、料理得意よね?」

「え、はい。一応一人暮らしだったので一通りは」

「固いわね、もっと柔らかくていいのよ。家族なんだから」

「か……家族」

「そうよ、家族」

「そうかぁ……家族、家族なんやなぁ」


はやては何度も『家族』と言う単語を繰り返しいい、その度に頭を頷かせる。
俺はてっきりこの場で泣いて、俺に抱きついてくる──と言えば、自意識過剰かもしれないが、泣くとは思ったのだが、
以外にも、はやては泣かなかった。

気丈に振舞っているのか、それとも強い子なのか……、それは俺には分からなかった。


「うんうん。じゃあ、デザートは出来るかしら?」

「何でも来いって感じやで」

「うん、そう。竜也も出来るのよね?」

「まぁ作ったことはあるね」


かつて、クリスマスでなのはたちに作ったのを思い出し、またはやてにも作ってあげたのを思い出す。

そう言えば、結構評判だったような。
でも、今それとどう関係あるのだろうか?

そんなことを考えていると母さんは、大きく息を吸い言った。


「翠屋に対抗して蒼屋を開きます」

「「「「え?」」」」


予想だにしない言葉でその場は凍りついた。





「それで、我々にも声がかかったと?」

「ありがたき幸せ」

「すごい働いちゃいますよ!」

「閣下と働けるのならどこへでも!」

「いつかはこの店も……」


母の突拍子もない発言と行動により開店した、蒼屋。
まず、蒼と言う店の名前の由来だが、まぁ大体の人が想像はつくと思うが、翠に対応してとのこと。
そもそも、このお店蒼屋は翠屋の姉妹店と言う公約を下に翠屋のオーナー兼店長である、士郎さん、桃子さんが許可を出した。
もとより、この二人は、愛子……つまりは、母がもし自立(と言うと幼いイメージが付きまとうが)が出来た際は積極的に協力するつもりだったらしい。
そりゃあ、いつまでも翠屋で世話を焼いてもらうわけにはいかないから仕方ないとして、それが喫茶店運営と言うのはどうかと思う。
だがしかし、かの二人は「ちょうど二号店を出そうと思ってたところ」と言い、むしろ感謝していた。

感謝はこちらがしたいところなのだけど……。

そんな、翠屋二号店兼姉妹店の蒼屋だが、場所は海鳴市ではなく、近くの遠見市に開店した。
もちろん、店長は母だが、なんとパティシエには、その母を含む俺とはやてだった。
その上、ウェイトレスにはアリシア、フェイトという相沢家がそうメンバーに、プラス5兄弟といった感じになった。
正式に働いているのは、上のメンバーなのだが、何が起こったのか本家のマスコット的存在であるなのはまでこちらに通いつめることになった。
もちろん、ボランティアである。頼んでもいないのにきたんだからな。
それを本人に言うと、


「うん、お金は要らないよ。なのはは竜也君と一緒に働けるだけで嬉しいから」


と言いながら、腕にしがみつく始末。
もうどうとでもなれと思った瞬間でもある。
いや、確かに他人を雇えばお金がかかるのでコスト削減と言う意味ではいいかもしれないが、世間体的には問題ではないのかと思った。
この問題と言うのは、なのはにお金を払わないことではなく、従業員がほぼ小学生。
さすがに、俺たちが学校に言ってる時間とかはアルバイトの人を雇ったが、基本的にこの面子だった。

しかし、問題であることは変わらない。
はてさて、この先どんな苦行が待っているのやらと思っていたのだが……。
なんというか、捨てる神あれば拾う神ありと言うのか。

この蒼屋は、地元でかなり有名だった翠屋の二号店と言うことで話題性を作り、その上従業員のほとんどが、小学生というのがさらに噂に上り、
一度は見に行ってみようとお客さんが大量に訪れたのだ。

もちろん、作っているのは翠屋で働いていた母さんだから味に問題もあるわけが無く、
その上、はやては料理がうまいからあっという間に、ケーキやらデザートやらをマスターし、なぜか俺のケーキが、蒼屋の味、ということで看板メニューになったり……。

蒼屋の姉妹店である、翠屋がさらに注目されたり……。

とにかく大繁盛だった。
翠屋は隣の町なので経理に問題も出ず、お互いに美味しい思いをすることになった。

人生は七転び八起きというか、何が起こるかわからないものだな。



そんな忙しい日中を終えた日の店。
母さんは下準備のタメに、奥のキッチンに。なので、店掃除の当番でホールに残っているのは俺となのは二人だけだった。


「えへへ、久しぶりだね。こうやって、竜也君と二人きりなの」


なのはが、しんみりとした口調で、しかし顔はこの上なく笑顔で俺の話しかける。
久しぶり……確かにこのお店を開店して以来バタバタとしていたタメに、そもそも誰かと二人と言う状況がなかった。
なのははもとより、アリシア、フェイト、はやてもだ。

この仕事、というより、半分(少なくとも俺にとって)は料理の練習のつもりでやっているこの喫茶店は楽しいものではある。
なので、忙しくても非常に充実している日々だったのには間違いない。


「まぁ楽しいからいいんじゃない? なのはも楽しいでしょ?」

「うん! 竜也君と一緒に働くのは楽しいよ。でも……」


言葉を濁す。
どこか、なのはらしくないなと思う。
なのはは意外と自分の言いたいことは言うタイプだ。少なくとも俺に対しては、という言葉がつくが。


「俺もなのはと……みんなとこうやってわいわいやりながら働くのは楽しいよ」


この町の質自体がいいのか、小学生が相手だからなのか、それでも、来るお客さんの一人一人がすごく良い人であるのは目に見えて分かる。
それは、開店から今までに問題が起きていないことでも分かるだろう。
そして、この反響振り……どちらも嬉しい限りではある。

ただ、まぁ確かに、なのはに言われて見れば、個人の時間と言うのは極端に少なくなったような気がする。
料理を担当する、俺は余計にだ。
こんな状況でもしっかり剣術の鍛錬も魔法の練習も欠かさないのが理由だろう。
しかし、この蒼屋という場所は以外にもみんな──と言っても従業員である、なのはたちだが、このメンバーとは逆に接する時間は増えたとは思う。


「それはなのはもだよ。でも……ね」

「はぁ、ハッキリしないなぁ」

「にゃはは、ごめんね。心の整理が、ね」


苦笑をする、なのは。

心の整理?
よく分からないことを言うな。
この状況で何でそんなことを考える必要があるんだ。

そう思いながらも、あれ? この状況ってっと考える。

俺となのはのふたりだけ……。
まさか、これが関係してるとも? 
ふむ、確かに最初に「二人」というのを強調してた気がするな。


「うん! たぶん、この先にいう機会はそうそう無いと思うの。だから……ね。た、竜也君に言うね」


なのはの顔は結構真っ赤だったりするんだが、それを突っ込んだら、空気が読めてない気がする。
それ以上に、この間で俺が話すこと自体が、かな?

そう思ったので、なのはの次の発言を待つ。
そして、なのは意を決して言った。


「なのはは、竜也くんのことが──」


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