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[2262] ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/20 14:03
「…ふん、そろそろ、ヘルマンがリーザスに仕掛けてくるころか。」

ランスは東の、リーザス城があるほうをみやり、面白くなさそうに呟く。

自分の知る歴史どうりなら、まもなく、魔人と組んだヘルマンの
リーザス攻めが始まるだろう。

「俺様が、介入する必要は…ねぇな。」

自分がでしゃばらずとも、この時代の俺様が解決するだろう。
今の俺様が介入すると返ってややこしくなる可能性が高い。

ヘルマンの侵攻、魔人の参入、そして先代の魔王ジル。

かつての俺様が手にした奇跡の勝利。偉大なる所業。
すなわち、
俺様の指揮の元ヘルマン帝国の侵攻を食い止め、
ヘルマンの大将軍トーマを一騎打ちにて倒し、
さらには魔人を撃退、
そして極めつけは弱りきっていたとはいえ人の身で魔王まで倒した。

「…くく、さすがは俺様。」

自らが魔王の身になってはじめてわかる、無謀さ。ありえなさ。

人と魔王の力の差。それは絶対的なもの。
それを覆し
残酷で冷徹、最凶のジルを、御伽噺にも出てくる、あの元魔王を倒したのだ。

これら一連の所業は、しかし、実に多くの偶然と奇跡に助けられたもので
ふとしたきっかけで、それらが幻のものとなってしまいかねない。


ここは、ほおって置くのが賢明だろう。
いずれは関わらねばなるまいが、今の俺様に、魔人や魔王と戦うだけの力はない。

いや、俺様が負けるわけは無いがな。
うん、今は考え付かんが実際戦うとなればきっと
俺様の脳細胞が活性化して勝利の方程式を導き出す事だろう。
だが、

「…神の目に留まる危険もあるしな。」


くく、俺様も随分用心深くなったものだ。
これが歳をとったということか。

「ダーク、どうかしたのか?」

自嘲めいて笑っていると、赤いブルマをはき、尻尾を生やした女の子モンスター『やもりん』
が風にマフラーをはためかせながら声をかけてきた。生真面目な格闘家、数少ない戦力になる部下の一人だ。

「いやなに、祭りが始まるのだが、騒ぐ歳でもないか、と思ってな。」
「言いたいことがわからないが?」
「なんでもない、気にするな。」

そういい、『やもりん』のお尻をぺんと叩く。
ひっ、意外にも可愛い声が漏れる。
思わず声を上げてしまった『やもりん』は
恥ずかしさに顔を真っ赤にさせ、ランスをにらみつける。

「がははは、いまの声はよかったぞ『やもりん』」
「くっ、…セクハラはやめていただきたい。」
「まぁ、そういうな。耐えるのも部下の大切な仕事だぞ。」

悪びれた様子も無いランス。さらには『やもりん』にもたれかかり、
ブルマの上からお尻を執拗に蹂躙する。
これ以上、怒って文句を言っても、行為がエスカレートするだけであると判断した
『やもりん』は、相手にするまいと決め、
目を瞑り、屈辱に耐え、ランスが飽きるのをまつ。

無視していればすぐやむと思っていた『やもりん』
だが世の中そんなに甘くなかった。
それもそのはず、
顔を真っ赤にし、目を瞑りながら、恥辱に耐えるその姿は、
一般的な男でも十二分に劣情を誘う。

(むふふふ、なでなで)
「……くぅっ…あっ、……。」
(もみもみ)
「ふっ、……うっ。……」
(おや?どうしたんだ?今日はいつもの抵抗が無いぞ)

首をかしげながらも
抵抗しないことをいいことに、この行為は続く。

『やもりん』はうつむき、手を払いのけようともしない。
(ううむ、もしかして、これは誘っているのか?)

勘違いをしたランス。行為はエスカレートし、
ついにはブルマの中にまで手を突っ込める。

「ひぃあ!…くっ、この」

それまで耐えに耐えてきた『やもりん』だが、我慢の限界が来た。
ここにいたり漸く、
無視という、自分の犯した選択の誤りに気づいたようだ。
涙目でにらみつけ、一気にランスを振りほどく、
と同時に蹴りを一撃お見舞いする、
が、それはすんでのところでかわされた。

「おいおい、あぶねぇな。あとちょっとで大怪我するところだったぞ。」
「はぁ、はぁ、はぁ……。」

両手で身体をかばうようにして、ランスから距離をとる『やもりん』

「…全く、らしくなく哀愁を漂わせていたから声をかけてみたが、
 いつもとかわらんではないか、」
「ほう、心配してくれていたのか。」
「バカな、心配などではない。
 仮にも、私達を束ねる身、急に弱気になられては困るだけだ。」
「『やもりん』がエッチなことしてくれれば、すぐにでも元気になるぞ。」
「くっ、全く、あきれ果てて、もはや、何もいう気になれん。」

ぷんすかと怒って、去っていく『やもりん』

ん?なんかこの態度、誰かを想い起こさせる。
はて、誰だったか…。

しばし首を傾げていたランス、そしてそれに思い至り
ぽむ、と手を叩く。

「あー、そぉか。あいつか。今もリーザスにいるんだよな。
 もう副将軍になってるのか?
 そういえば、この対戦で、ヘルマン兵に捕って、処女奪われるんだっけ。
 …それはかわいそうだな。女なら初めは俺様に奪われるべきだ。」

うんうん、となにやら自分で納得してしまう。

「ようし、次の行き先は、リーザスだ。」

懸念材料などすべて忘れ、準備を始める。
ランスは、いつまでたってもランスであった。



[2262] Re:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/19 14:12
「全員せいれ~つ。」

洞窟にランスの声が反響する。
それに反応した三人の女の子モンスターが、びしっときをつけをする。
皆が皆、異なる種、
一匹は、ウサギの耳を生やした、下着の女の子『きゃんきゃん』
一匹はアニメにでも出てきそうな、露出度の威容に高い正義のコスプレ戦士『セクシーナイト』
一匹はブルマーをはき、マフラーをはためかせる、尻尾の生えた女の子『やもりん』

三人は、ランスの部下になったモンスターだ。

「番号!」

「いち~♪」
「にぃ」
「…三」

かわいらしい声に、満足したランス、うむ、と頷き
今後について三人に説明する。

「いいか、これから、俺様達はリーザス城に行く。」

「わ~い。」
「人間のお城?なんでそんなところに…」

理解しているのかわからないが「きゃんきゃん」が喜び、
「セクシーナイト」が質問する。

「うむ、それは正義のためだ。」
「…わかりました。私、がんばります。」

『セクシーナイト』はモンスターの癖に、『正義』
という言葉に強く惹かれるらしい、大体、正義のためといえば
筋が通らなくとも納得する。

初めて会ったときは、こんなモンスターいたかな?とランスも首を傾げたが、
まぁ、いちいち、全種類のモンスターを把握しているわけでもないし、
そもそもランスは細かいことを気にする性格ではない。

グラマーなのに可愛い顔立ち。エッチで大胆な服を着ているのに、内気。
そして、どことなく、いぢめてちゃんオーラを放っている。

そんな『セクシーナイト』をランスがほおって置くはず無かった、
現在最もランスにいじめられている、もとい、気に入られている女の子モンスターである。

単純なランスに、いともたやすく操られ、弄ばれる彼女は、
現在、このなかで最も不幸な女の子モンスターなのかもしれない。

「…しかし、なぜ唐突に?今までは人里に寄り付きもしなかったというのに…」
「…ううむ。俺様の灰色の脳細胞が、城にいくべしといっているのだ。」
「…ふん、まぁ何考えていようが、我らは、特に逆らう理由はないが…。」

「やもりん」も深く追求することはない。
現在ランスの部下に頭の回る者や、積極的に意見してくるものはいない。

おバカの『きゃんきゃん』
正義に燃える内気な『セクシーナイト』
格闘以外に興味を持たない『やもりん』

今の状態は非常に楽ではあるが、これからのことを考えると、
少々不安を覚えずにはいられない。
奇抜な策略を練るのは得意なランスだが、頭脳プレーが得意かと言うと
首を横に振らざるを得ない。

(多少うるさくとも、マリスのような奴がいてくれると安心なんだがな…)

ランスは、かつて、人類統一戦争のとき、影の宰相とまで言われ、常に傍らに立ち、
自分を支えた存在に思いをはせる。

(だが、もう俺様は再びリーザス王になる気はさらさらねぇし、
 人類統一などという目標もない。リアと結婚するきもねぇし…
 あいつに、協力をとりつけることは無理か…)

「ダーク様?」
「ん、ああ。お前ら、出発の準備をしておけ。一時間後に出るぞ…」

そういい残し、去ろうとして、何かに気づき、ぽむと、手を叩き、振り合える。

「…ををっと忘れるところだった。」

ランスがいやらしい笑みを浮かべ、手をわきわきとさせる。

「久々のちぇっくた~いむ、だな。」

何事かと首を傾げてた『やもりん』と『セクシーナイト』が露骨に顔をしかめる。

「ほれほれ、どうした?さっさと四つんばいになれ。」

「は~い♪」

大人しく従ったのは、きゃんきゃんのみ、
他の二匹は抵抗を見せた。

「ダーク様、いいかげんそれは止めにしませんか?」
「私も非常に不愉快だ。いまだに納得していない。」

「ええい、うるさいうるさい。みろ。
 俺様の部下一号の従順な姿を。お前らも見習わんか。」

かんしゃくをおこし、きゃんきゃんを指差すランス
きゃんきゃんはおとなしく四つんばいになり、お尻を突き出している。

「きゃんきゃんは、遊びと思ってるからいいですけど。
 …私は恥かしくて、もういや、いやです。」
「…私もだ。お前の言う、理由は筋が通っていない。」

ランスの言うチェックタイムとは、本当にランスの部下か、確かめる
確認作業のことである。
女の子モンスターは、仲間同士では見分けがつくらしいが、
人からはどれも同じに見える。当然ランスも見分けはつかない。
いつ、自分の部下が、他の魔物とすりかわっているかわからないのである。

そこでランスが考えたのは。刻印。
部下である女の子モンスターに自分の部下だという証をつける事である。

そこでランスはエッチなことを思いつく。
即ち刻印を女の子モンスターのお尻につけ、確認作業と称して
定期的に裸に剥くという、ぐっとなアイデアを。

「やめろというが
 …じゃあ、どうやってお前らを本人だと証明するんだ?」
「…そ、それは。」

女の子モンスター同士はとてもよく似ていて、
異種族が、それも出会って、半年に満たない状態では区別できなくとも文句は言えない。
そのことに自覚ある二人は、ここで詰まってしまう。

いくら反対したところで、おばかな二匹は代案を出せない。
その為、いつも抵抗をみせるものの最終的には、従うしかないのだ。

この一連のやり取りをランスは楽しんでいる。
嫌がる女の子を無理やり、というのもランスは好きなのである。

「考えたのだが、何か、首飾りなり、指輪なりを、私達に渡してはどうだ?」
「ほう」
「それをもって、証とすればよいのではないか?」
「あ、すごい。それです、それで行きましょう。」

いつもならここでつまって終わりだったが、今日は意見がでてきた。
本当に嫌なのか、普段頭を使わない『やもりん』がどうやらない頭をふり絞ってきたようだ。

「だが、それでは、それを奪われてしまったら、
 偽者が本物となってしまうぞ。無くしても、大事だな、」
「…う、そうか。」

やもりん撃退。がっくりとひざを突く。
まだまだ反論の余地はありそうなものだが、そこまでは頭が回らない。


「はっ、閃きました。別にお尻じゃなくてもいいんです。
 もっとわかりやすい部分、手や腕などに刻印をおせばいいんじゃないですか?」

はっ、そうか。とやもりんも立ち上がる。

ランスは、まともな意見が、このばか達から出てきたことに
ほぅ、再び感心する。
しかし、一月もこの考えが浮かばなかったという事が逆にすごいなと、
別の意味でも感心した。

ランスの驚く態度に気を良くした『セクシーナイト』
どんなもんですか、胸を張る。

コスプレのようなエッチな鎧からこぼれそうな胸を、
そして自信満々な彼女を見ると、問答無用で襲いたい衝動が沸き起こってくるが
、あと少しの辛抱とランスは自分に言い聞かせ我慢する。

「え~と手や腕などに、という意見だったな。
 しかし、それでは他のものに、それが、判別の証であるということがわかってしまうだろう。
 まねされてしまったら、それこそ見分けがつかなくなるではないか。
 やはり普段隠されている部分ではないとな。」

「あ、あうう…。」

いいくるめられてしまうセクシーナイト。


「くっくっく、わかったらあきらめてお尻を出せ。可愛がってやるぞ。」
「で、でもだったら何もお尻でなくとも違う…」
「さぁ、はじめるぞ。まずは「せくしーないと」ちゃんからだ」
「きゃあああ」

正論が出てきそうだったので、ランスは問答無用で
セクシーナイトを押し倒し隠し、服をひん剥く。

「い、いやぁいやぁ。む、胸は関係ないじゃ…。」
「がははは、問答無用。
 大人しくチェックされればそれですんだが、じらしてくれた罰だ。」
「ぃぃやああああああ。」


洞窟に、悲鳴がこだました。出かけるのが一日伸びたとだけ追記しておく。



[2262] Re[2]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/19 18:22
シャー、カーテンの開く音とともに、
部屋に明かりがさしこみ、その眩しさに、ランスは目覚める。
けだるそうに身を起こし、視線をめぐらすと、『やもりん』が窓のカーテンを開けた
ということに気づく。

「おい、閉めろ閉めろ。久々の長旅でつかれてんだ。」

リーザス城の西に当たるノースの街。
そこにある宿の一室にランス一行は泊まっていた。
ランスは、ここでもう一泊し、疲れを癒し、リーザスへと向おうとしていた。
まだ起きる気のないランスはごろりと寝返りを打ち、日の光から逃れようとする。

「ダーク、何か忘れてないか?」
「ああ!?何をだ?」

「…外へ出ろ。約束の週に一度の稽古の日だ。
 場所が変わったからといってやめる道理は無いぞ。」
「バカかお前。ここはもう人の街だぞ。お前なんかが、姿をあらわせて見ろ。
 そっこう警備兵に囲まれるぞ。」

週に一度の稽古というのは『やもりん』が 部下になるときに
取り付けた条件の一つだ。
なお、これは特例で『きゃんきゃん』『セクシーナイト』は無条件で、
部下となっている。

「む、しかし、昨日は問題なかったが?
 コートを着てにフードを被ったままなら大丈夫なのではないか?」
「…ほう、確認するが稽古とは俺様との素手での模擬戦でいいんだよな。」

「ああ、そうだが?」
「そんな動きにくい状態で俺様の相手ができると?」

ぎろり、と部下である『やもりん』を見るランス。
『やもりん』は、そんな視線を軽く受け流し、ためらい無く言い放つ。

「容易い事だ。」
「……なんだと?」

ぴきりっ、ランスの額に筋が浮き出る。

「そもそも、この『稽古』とは、
 私が強くなるためにあらず、貴方に私が仕えるにふさわしいだけの
 最低限の強さを持ってもらうためのものだ。」

部屋に不穏な空気が流れる。
目が覚めた『きゃんきゃん』は長い耳を震わせ、ベットの下へ逃げ込み、
起きていた『セクシーナイト』はケンカはとめなきゃ、とは思いつつも、
怖くて近寄れないでいる。

『やもりん』の容赦ない爆弾発言は続く

「自覚はないようだからいっておく。正直、あなたは弱い。
 強くなろうという気概はあるようだが、行動がなければ
 それに付随する力は得られない。現状が全てを物語っているのではないか?」
「…ずいぶんといってくれるじゃねぇの。
 初め俺様に負けて、びーびー泣いて、忠誠を誓ったのはだれだったか?ああ?」

その言葉に過敏に反応する『やもりん』

「泣いてなどいない!
 それに私が負けたのは私が油断したためだ。」
「負けは負けだろ?」

ランスがにやけ笑いを浮かべる。
『やもりん』は痛いところをつかれ、唇を噛む。

『やもりん』はランスにまけたら部下になるという条件を飲み、敗北を喫した。
善戦していたのだが、最後の最後でランスに自分の唯一の弱点であるしっぽを握られてしまったのだ。

「くったしかにそうだ。認めよう。一度は負けた。
 だが、逆に問おう、模擬戦で私を一度でも倒せたことがあったか?」
「ぐっ」

今度はランスが言葉をつまる。

「私にあっさり敗れ、『セクシーナイト』に怪我の治療をしてもら
 っている情けない姿しか記憶にないが。」
「ぬっ、……いわせておけば。」
「確かに、剣を使わない状態では、貴方は全力を出せないだろう。
 しかし、私などより強いものはいくらでもいる。
 その程度のハンデで私に屈してしまうようなレベルで果たしてお前の目的は達せられるのか?」
「…ぐぅ、」

ランスはそれっきりだまってしまう。
『やもりん』も言葉を発さない。
暫くにらめあっていた二人だったが、ランスは、ちっ、と舌打ちすると、踵を返し
部屋から出て行ってしまった。

「うぁ~ん、怖かったよぉ。」

ベットに下に隠れていた『きゃんきゃん』が恐々這い出てくる。
事を見守ってた『セクシーナイト』は『やもりん』に問いかける。

「『やもりん』さん。なんであんなにダーク様を挑発したんですか。」
「挑発ではない。私の思いのままを、伝えただけだ。
 あいつは強くもないくせに、強くなる努力をしない。前々からそこに私は不満を持っていた。」
「ダーク様は強いですよ。あなたがもっと強いんです。」

『やもりん』は首を横に振る。

「私は確かに、同族の中では、秀でた強さを持っている。だが、やはり種族の垣根は埋められない。
 例えば、どれだけ私が鍛えようと、戦闘種族であるバルキリーにはかなわないだろう。」

いくら比較の対象とはいえ、神の血を引いているとすらいわれる、バルキリーを引き合いに出す時点で、
すでに『きゃんきゃん』や『セクシーナイト』には雲の上の話だ。
比べようと思ったことすらないだろう。ぽか~んと話を聞いている二匹おいて、
『やもりん』は続ける。

「だが、奴はどうだ?聞けばレベル限界値が無限というではないか。
 そんなものがあるのかと始め私は耳を疑った。
 修練を積めば、つむだけ、強くなれる存在でありながら、
 …それだけの可能性がありながら、なぜああも怠惰なのだ。」

そういい放ち頭を抱える。

強くなる、ということになにやらコンプレックスを持っているらしい『やもりん』
『セクシーナイト』はあまり触れるべきではないと思い、当たり障りのないことを尋ねる。

「…ええと、それで最後に行っていたダーク様の目的というのは…?」
「…いや、まったく知らん。ちょっとカマをかけてみたのだ
 だが、様子を見る限り、やはり何かでかい事をたくらんではいるようだな。」

そしてそういうところは好きだがな、と言い微笑を浮かべる。

そんな『やもりん』の様子を見て『セクシーナイト』は衝撃を受ける。
単純バカと思っていた『やもりん』が、自分と何ら変わらないと考えていた『やもりん』が
実はいろいろ考えてる?
『セクシーナイト』は『やもりん』をどこか遠くに感じ、寂しさを覚えた。

「おなかすいた~」

雰囲気の読めない、『きゃんきゃん』の一言で、話は終わる。

「…何か食べるか、とはいってもここには何もないな。」
「あっ、それなら、昨日ダーク様がこれをと…。」

100Gとかかれた袋をとりだす『セクシーナイト』

「親切だな。先ほどは少々きつく言い過ぎたか、
 私は主に森で暮らしていたため、昨日の喧騒や人ごみは少し
 堪えた。
 慣れぬ環境に少々いらだっていたようだ。
 あとで誤っておこう。ではいただくとするか。」
「はい。」
「私は人参の方がいいんだけどな~。」

旅は始まったばかり。

「む、硬いぞ。」
「飲み込むんじゃないですか?」
「人参食べたいな~」

この三匹が後に、気まぐれな悪魔と呼ばれ、
神ですら掌握できぬ存在。
ダークのしもべと恐れられる日はまだ遠い。

おまけ

金が食べ物ではないと聞き、驚愕した三匹。
三匹は仲良く腹痛を起こし、出発は三日後となった。

やはり『やもりん』もバカ(仲間)だと『セクシーナイト』はほっとしたという。



[2262] Re[3]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/20 00:21
「これが、リーザス城か。」
「ふぇぇ、近くで見るとやっぱりでっかい家だねぇ。」
「ホントですね。私も感動しています。」

見上げるはでんと佇むリーザス城。三人いや、三匹の魔物はその
大きさに少々、圧倒されていた。

「ふむ、下見をしてこいといわれたが、そもそも、
 ダークはこの城に何のようがあるのだろうか?」
「う~ん、私達には教えてくれないんだよね。気になるぅ」
「はっ、まさか、この城を襲って自分のものにする気じゃ、
 そ、それはだめです~、私の正義に反しますー。」

はうぅ、と頭を抱え、だめだめと脳をシェイクする『セクシーナイト』

それにしても、城前で、フードをかぶった素性のしれない者達が
騒いでいるというのは、怪しすぎないだろうか。

とりあえず、周りの人々は、遠巻きに見守るものと
距離を置き目線を合わせず去っていくものとに二分した。

「安心しろ。いくらなんでもそれは無い。というか無理。
 たった四人でこの城を攻め落とそう、などとあの自信に満ちた顔で
 堂々といわれたら、むしろ惚れそうだ。」

「へぇ、『やもりん』。変なところがツボなんだねぇ。
 私はそんな無茶言われたら、すぐにベットの下に逃げ込むよ~。」
「逃げ出したら、お仕置きの一回や二回ではすまないんじゃないか。」
「ひぃ、それもいや~。私、戦闘とは無縁のキャラなのに~。」

『きゃんきゃん』の中では「お仕置き」が鮮明に浮かんでいるのか、
いやいやと、こちらも脳をシェイクしだす。

そんな怪しい一行の奇行を見逃すほど、リーザスは平和ボケしているわけではなかった。

「おい、お前達、怪しいな。何者だ。」

当然というか衛兵の声がかかる。

「…達、の中には私も含まれるのか?」

二匹とは距離をおきたい気分なのだろうか。『やもりん』
は衛兵に尋ねた。

「当たり前だ。不審者は連行し取調べを行う決まりだ。
 こちらにきてもらおう。」
「む、それは困る。
 私達は、調べにはきたが、調べられる為にきたのではない」

その言葉に、衛兵は眉をひそめる。

「ますます持って怪しいな。おい!」

そう言い、手招きをすると、四人ほど、城を見張っていた衛兵達が駆けつけてくる。

「不審者を発見した。こいつらを連行しろ。」
「ははっ!」

あっというまに、三匹は囲まれてしまう。
正気に戻った『セクシーナイト』が状況が読めず尋ねる。

「何ですかあ、あなた達。」
「どうやら、不審者と勘違いされたらしい。」

勘違いでもなんでもなく、不審者であるが、
『やもりん』が説明すると『セクシーナイト』は憤慨した。

「誰が不審者ですか!!わたしの名は『セクシーナイト』
 闇にはこびる悪を討つ正義の女の子モンスターです!!」
「あっ、馬鹿!」

衛兵達に驚愕が走った。

「も、モンスターだと!」
「ほ、本当か!?」

「失礼ですね。私の言葉に偽りがあるとでも?」
「馬鹿。自分からモンスターだとばらしてどうする。」

流石は馬鹿コンビ。自ら暴露し、それを認める発言をする。
さらには、

「私は自分を偽るつもりはありません。あなたも
 しっぽなんか隠してないで、堂々としてればいいんです。」

そういい、コートをめくる。

「うわぁ、馬鹿。」

そこからぴろりっ♪、とでてくるしっぽ、
もはや疑いようは無く
衛兵達、魔物と確信、断定。

「…おい、応援を呼べ。」
「は、はい。」

あわてて、衛兵の一人が城に引き返す。

「な、なんでこんなことに…」
『やもりん』は眩暈がした。

「大丈夫です。私はモンスターですが、
 あなた達に危害を加えるつもりはありません。なぜなら
 私には『正義』と『平和を愛する』心があるからです。」

状況の飲めていない一人、いや一匹が語る。

「そうです。魔物と人はきっと分かり合えます。
 その心に正義がある限り…。」

めをつむり、胸に手を当て、言葉をつむぐ。
完全に自分に酔っている『セクシーナイト』
そんな状態はしかし3秒と続かなかった。

「殺せーーー!!」
「ええっなんでーーー!!」

あがる悲鳴!

「まて、捕まえて、何が目的か、規模はどれくらいかを吐かせてからだ。」
「幸い、いまいるのは三匹だけ。捕らえろ。どうせその後、拷問するんだ
 怪我をさせても一向にかまわん。」

襲い掛かってくる衛兵達

「えっ、えっ、ひぃ、やめてー。なんでー」

『セクシーナイト』にとってはありえない展開。
不意打ちにも近い状況、抵抗もできず、つかまってしまう。


「まったく、今日ほどお前を馬鹿と思ったことは無いぞ。」

舌打ちして、『やもりん』は一気に跳躍。
『セクシーナイト』につかみかかってきた男の首に延髄蹴りを食らわす。
そのまま地に着く前に、回し蹴りを放ち、
もう一人の衛兵の顔面にヒット。

一瞬にして二人の衛兵が沈む。

―戦慄がはしる―

「「モンスターだモンスターがせめて来たぞー!!!!」」

遠巻きに様子を疑ってた連中が、悲鳴を上げ逃げ惑う。

「くっ、おい、逃げるぞ。」
「え、あ、は、はい。」

『やもりん』はいまだにお仕置きに震える『きゃんきゃん』をこずいて正気に戻し、離脱を図る。

しかし、逃げ切れるはずも無く。数分後
数百名の兵に囲まれた三匹の女の子モンスター、という絵図が出来上がった。


ぴーんち



[2262] Re[4]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/23 12:22
百倍以上の戦力差相手に、
入念な準備もなく戦いを挑まざるを得ない状況に陥ったときに、
果たして、勝ちうるものだろうか。

どんなに一人一人が強くてもそれは不可能である。
まぁ、この世界においては例外もおおいだろうが…。

すくなくとも、
集団に効く魔法や、対多数の技能を持っていない。
職業『遊び人とコスプレイヤーと武道家』などという、
バランスの悪い、を通り越し、ふざけているとしか思えないパーティにおいて
この状況を打開する術はない。

抵抗むなしく、三匹はあっさりと捕まってしまった。
悲しきかな、三匹に待っているのは―
「よう、お目覚めかい?」

頭がいたい―。
聞いた事のない声だ。
ここは何処だ。地面がひんやりと冷たい、薄暗い、
空気も悪い。森の空気がすいたい。はて私はなぜここに―

「―まだ寝ぼけているようだな。ほらよっ」

野太い不快な声だ。
そんなことを思っていると、勢いのついた水を浴びせられる。

「ひゃ!!なっ―」

一気に覚醒する『やもりん』
起き上がろうとするが、手も足も鎖で縛られ、動けない。

自分の状況を自覚する。
そうだ、あの時、自分は手も足も出せず、無様にやられたのだった―。


圧倒的な数の違いから勝てぬと知りつつも、せめて数人でも道連れに

…そんな思いは、たった一人の赤い兵士に崩された。

不気味な笑みを貼り付け、一人、前に出てきた男。
『忠』と書かれた兜をまぶかに被った、赤い兵士。

販促的に強かった。
あっさりと、それこそ赤子を捻るように、反撃する間もなくやられた。

兵の中でも一目おかれる存在なのだろう。
薄れる意識の中で、
リック将軍万歳、と皆が歓声を上げるのを聴いた気がする。

あの男の顔を、笑みを思い出すと、
『死神』というフレーズが自然、浮かんだ。
思わず震えが来る、


「なんだぁ、まだ完全には覚めてねぇようだな。もう一杯いくか?」
「黙れ!ここはどこだ?」

『やもりん』の返事に冷水の入ったバケツを手に持ち、構えていた
特徴のない兵士はにやり、と笑みを浮かべる。

「なんだ、しっかり、覚めてんじゃねぇか。
 …にしても頑丈だな。
 すげぇ一撃頭に喰らったから、ひょっとしたら
 しんでんじゃねぇかと思ったが。」

頭、くらったのは頭か。そういえばじんじんする。
早すぎでわからなかったが。
人間というのは、軍兵というのはあんなにも強いのか―。

あの男にはこれから先どんなに修練をつんでも、
才能限界値までレベルを上げても勝てる気がしない。
格が違った。

「リック将軍にやられてショックかい?気にすんな。
 あいつはリーザス最強とすらいわれているからな。
 そんなことより
 もっと気にしなきゃならないことがあるんじゃないか?」
 
そうか、やはりあいつは別格か、にしても強かった。
力は無くとも、勝利をもぎ取るダークだったら、どう戦うだろう。
あいつに弱点などあるのだろうか?


「おいおい、無視はしてくれるなよ。
 そんなことより、さっきの質問に答えてやるぜ。ここはどこか、
 だったか?
 ここは、リーザスの地下牢、罪人を収容する場でもあれば、
 てめぇらのような、怪しい奴を尋問する場でもあるってわけだ。

そう宣言すると男は近づき、
うつ伏せになっている『やもりん』に馬乗りになる。

「…!何をする気だ!」
「決まってんだろ、尋問だよ尋問。何しに城まで来た。」
「………ただの観光だ。」

べしぃ、
「ぅあぅ!」

お尻を強く叩かれる。

「何が目的だ。」
「っ観光だといったろう。」

べしぃ、
「あぅっ。」

薄暗い中で
ブルマをはいた水の滴った女の子のお尻を叩く。
モンスターとは知りつつも、男は興奮を隠せなかった。

「おれ、首がいてぇんだわ。お前にやられたんだよ。」

べしぃっ、『やもりん』のお尻を叩き、
漏れる悲鳴を心地よく聞きながら、兵士が話しかける。

「私が…ぐっ、そんなわけないだろう。うぁ
 わ、私は、何もする前にあいつに…っ。」

『やもりん』はお尻を叩かれ、屈辱に打つ震えながらも、返事を返す。

「その前だよ、そ・の・ま・え、いきなし延髄蹴りかましてくれたよなぁ。おい!」

べしぃ、
叩く音が部屋に、反響する。

「うっ、あ、ああ…あのときの奴か。ふぅっ、
 く、弱かったな。お前。」
「!?…てめぇ!」
「う、ぐぁぁ!!」

『やもりん』の言葉にかっとなった男が、立ち上がり、寝ている彼女の腹を
おもいきし蹴る。
身体が浮くほどの衝撃をくらい、痙攣する『やもりん』

「うっ、…ぐっ…はっ…あ」
「少しは、てめぇの状況を理解したらどうだ。」
「ふ、ふふ…小物が。」
「てめぇ!……おっと、おもわずきれちまうとこだったぜ。」

そういい、兵士は、再びにやけ笑いを浮かべる。
その態度の変化にやもりんは、眉をひそめる。

「お前は、実は、死んでるかも知れねぇし
 生きてても重症でしゃべれないんじゃねぇかってことでな。
 上の奴らも期待してねぇんだ。残りの二匹から聞き出せばいいとな。
 だから、お前がどうなろうと、しったこっちゃねぇってことだ。わかるか?」

そのことばに『やもりん』は他の二人の事を思い出す。
自分は早々に気絶させられ、あの後の事はわからないが、
この男の発言から、彼女らも捕まってしまったようだ。
あの人数相手に、逃げ切れるとも思えないし当然といえば当然だが。

ここにはいない、彼女らも同じ目に合わされているのだろうか。

「本当は、二人での尋問だったが、金をつかませて、
 相棒には出てってもらった。
 はどめやくはいねぇってわけだ。」
 
「…なにがいいたい。」

「口の利き方には気をつけたほうがいいぞ。
 俺がお前に何しようと、お前がどうなろうと
 誰も文句を言わないってわけだ
 お前がどうなるかは、全て俺の気分次第ってことよ。」

『やもりん』は悔しさに歯を食いしばる。
私にあっさりやられたザコ、そんなザコに、自分が
いいようにされるのが我慢がならない。
しかし、どうすればいいのか…。

手首も足首も拘束され、
あの男に頭を一撃されたためか、体も不調を訴えている。

助けを呼ぶにも、仲間は二人とも捕まっている。
ダークがいるが

多くの兵がいる中、城の中には、
流石のダークもはいってこれないだろうし、

自分の居場所をしらせる術もない。

何より、自分が捕まっていることをダークは知らないだろう。
これでは城の中に入る以前の問題だ。

つまり、どうしようもない。

「くく、楽しませてもらうぜ。」

男は再びやもりんに近づき、顔を自分に向けさせ、
悔しげな顔を浮かべる『やもりん』を見ていやらしく笑う。

「外道が…。」

鋭い眼光で、男をにらむ。
だが、今の『やもりん』にそれ以上のことはできない。

「いいねぇ。気の強い女は好きだぜ。
 どこまで持つかな、へっ、 
 お互い自己紹介しようか、俺の名前はザラック。
 今日からお前のご主人様になる男だ。」

特徴のない兵士はそう宣言した。
『やもりん』人生最大のピンチが訪れようとしていた



[2262] Re[5]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/21 22:23
『やもりん』がザラックにより酷い目に合わされているであろうころ。

『セクシーナイト』と『きゃんきゃん』はどうしているか。
こちらも負けず劣らず酷い目に合わされているのでは…と思いきや、
意外にも人道的に扱われていた。

「あなたたちのような、悪人に話すことは何もありません。」

きっぱりと言い放ちぷいっと横を向くセクシーナイト。

「そんなことを言わずに。」
「なら、まずはこれをほどきなさい。」
「いや、すまんがそれはできない規則で…」
「それでしたら、話すことは何もありません。」

台詞は聴かず、状況だけ見れば、『セクシーナイト』の扱いは良いとはいえない。
あの、大胆な服を全員に見られ、手首を拘束され、天井から吊り下げられている。

そう、まるで、アニメのやけに露出の多い正義の女の子が悪人に捕まり、
酷い目に合わされているの図である。

しかし、兵達は何もできないでいた。それというのも
モンスターであるか人間であるか、判別がつかないからだ。

本人は自供しているが『セクシーナイト』というモンスターはいまだ確認されていない。
頭のねじの弱ったか弱い女の子、という線が捨て切れないのだ。

兵達は、口頭での説得と、セクシーナイトのグラマーな体を
生唾を飲み込んで、見まもること意外できることはないのであった。


さて『きゃんきゃん』はどうだろう。
馴染み深いモンスターであり、セクシーナイトとは違い、知らぬものは
まずいない。

しかし、ひどいことはされていない。
なぜなら、所詮『きゃんきゃん』だからだ。

脅威になることは一つとしてなし。
部屋に幽閉されているだけで体を拘束すらされていない。
いや、幽閉という言葉には誤解があるかもしれない。
他の二匹とは違い、じゅうたんも敷いてあれば、椅子もベットもある。
というのも『きゃんきゃん』は黙秘をしていない。

食べ物と、部屋を与えてくれればなんでも話す、といい。
おいしい人参を、ほおぼりながら、部屋で兵達と談笑していた。

「そうそう、そのダーク様ってのがね~。
 大きいことばっか言ってるくせに、部下の『やもりん』にすら勝てないんだぁ。」
「まじかよ。なせけねぇなぁ」
「ぼこぼこやられちゃってね。実践じゃないからだ、とか
 本当の生き死にの勝負なら負けない、とかぁ言い訳ばっかいってんのぉ。」
「ははははははは」

万が一この場にランスが登場したら間違いなく、最高級のお仕置きをされるであろう。
『やもりん』がこの光景を見ても、やるせなさがこみ上げ、拳がうなるかもしれない。

まぁ何はともあれ、長い一夜が始まろうとしていた。



[2262] Re[6]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/11/29 00:41
魔法を使えぬ者の扱いの酷いゼス王国や、貧富の差の激しいヘルマン帝国から
移り住む者も少なくないようで、現在リーザス王国の人口は爆発的に増加している。

リア=リーザス=パラパラが王女として即位して以来、
安定政権が続いているためだろう。

市場は活発化し、当然その首都であるリーザス城、城下町は人で賑わっていた。

宿の数も、増え続け、
それぞれ独自のサービスを取り入れたりなどして、宿屋同士の客の取り合いが激化している。

ランスは、数ある宿屋から、別段迷うことなく一つを選んだ。
そこは、特別でもなんでもない、二階建てのこじんまりした建物。
強いて特徴を挙げるなら、JAPAN模式であることか。

さびれている、とはいわないが、
新たに乱立する宿屋に押されたのだろう。客の入りはまばらだった。

部屋はテーブルに座布団、そして寝巻きが置かれているだけの簡素な作り。
テーブルの上には、お茶を入れるきゅうすと小さなコップが置かれ、
茶菓子が少量申し訳程度に皿に入っている。


ランスは座布団を三枚重ね、その上にあぐらをかいて瞑想をしていた。

今後の自分の行動を、考えるためである。
ランスは思考する。

当面、自分の目的は、均衡した世界情勢を保つこと。
その為に動く。求めるは中庸の世界。そうすれば、世界崩壊の危機は避けられる。

くそクジラの機嫌を伺うような吐き気のする行為だが、
必要なのは時間。究極的にはそれが、創造神ルドラサウムを倒す手立てになる。

これからのリーザスでの自分の行動は、恐ろしく危険である。
なまじ知識を持っているだけに、それがわかる。

此度の戦争はただの国と国との領土争いに納まらない。
魔人の勢力や、今後の世界情勢に大きく関わる。

故に今回、自分は静観するが正しい。

アイゼル・ノスという魔人の死により、ホーネット側が幾分弱ってしまうのが難点だが、
そこまで言うのは贅沢というもの、一歩間違えれば魔王ジルによる絶対政権が始まってしまうのだから。

史実道理が一番、均衡を保ちやすい。
未来が予測しやすいというメリットもある。


既にこちらに来て二ヶ月が過ぎようとしている。
本来ならリーザスに近寄らず、
今だ三名しかいないという
遅れをとりすぎている、何処にも属さない『俺様軍』の編成を急ぐべきである。

しかし、である。
可愛い女、しかも自分の部下であったものの不幸を見過ごすのは忍びない。
それが貞操の危機なればなおさらだ。

それにこれは、
ハウレーンという将に恩義を感じさせる最大のチャンスでもある。


ハウレーンはバレスという優れた父親にコンプレックスを抱いている。
どうしても『優秀な将軍の娘』と見られてしまうがそれを嫌っている、

今度の救出劇に加えそこをうまくつつけば本人の意思で
リーザスを出奔し自分の下にくるという事も十分にありえる。

元リーザス軍白の副将ハウレーンが部下になるのである。

ハウレーンは特別秀でた将とはいえなくとも、ネームバリューはそこそこあるし。
将軍としても兵法を全く知らぬ魔物や、
そこらの名もなきザコモンスターにまかせるよりは遥かに安心できる。
なにより、作戦が失敗したとき
責任を取らせる(お仕置き)も彼女だと一層楽しい事だろう。

後はハウレーンが自分の下に来る状況をいかに作り上げるか、
ランスの灰色の脳細胞は活性化されていく。
ヘルマン侵攻により彼女がつかまり、恐怖を体験し、
ピンチになって泣き叫ぶ所を、タイミングよく現れ、
敵をぼこぼこにし、ヒーローのように助け出す。

さすれば、あの気難しいハウレーンも自分になびくことは間違いあるまい。


まずは危機的状況に追い込まれた
ハウレーンを助けるという行為に問題はあるか?

歴史に影響を与えるか、という点には
問題ない。前回俺様はリーザス陥落時ハウレーンに会っていない。
あいつを助けたからといって、事が大きく動くとは思えん。

リーザス城への侵入は容易だ。ヘルマン侵攻時、
ヘルマン兵の鎧を着て、ヘルマン兵に混じって行けばいい。

ハウレーンを見つけ出すのも難しくはない。
あいつが個人行動さえしていなければ
白い鎧が多いところに行けばいいだけだ。
俺様は、美女を見逃さない。すぐにわかるだろう。

助け出すのもこれまた輪をかけて簡単だ。
俺様の実力で、軽々と…、軽々と…
そこまできてランスの自分に都合の良い
大味かつ楽観的思考がとまった。思い出される、数日前の部下の台詞。


『正直、あなたは弱い。』


黙れ!
ランスはすぐさま自分の頭から追い出そうとするも
呪いの言葉は頭にこびりついて離れない。


『行動がなければそれに付随する力は得られない。
       現状が全てを物語っているのではないか?』

黙れ!

『やもりん』の吐いた台詞が、鋭いナイフとなりランスを突き刺す。

自分が強いということは。
自身の一つのアイデンティティとなっている。
今の弱い自分を直視してはいけない。
すれば、ランスは今のままで、ランスでいられない。


『…果たして、それであなたの目的は達せられるのか?』

「ええい!!黙れといってるだろうが!!!」

かっと眼を見開き、座っていた布団にこぶしを叩き込む。
ランスは吠えた。

「てめぇが、たかが一モンスターのてめぇが俺の何を知る。
 人類最強、人界の統一王、最強の魔王、神とも渡り合った俺様が『弱い』!?」
 

現に俺様は、まだ負けていないではないか。
こちらにきて、俺様は敗北していない。

―当然だ。勝てそうな奴を選んで闘っているのだから。


俺様は最強だ。どんな相手だろうが、俺様は勝利してきた。、

―幻想だ、お前は神に負けた。

黙れ!俺様はまだ負けていない。倒すまでいつもより時間がかかるだけだ。

―嘘だ。お前は逃げている。明らかに恐れている。


「やめろぉおおおおおおお!」

頭を抱え込む。呼吸が荒い、汗は噴きでて、体は痙攣する。
それは精神的なとこからくる、発作。

「はぁはぁ、はぁ、……久しぶりに出やがったか。」

荒い息をつきながらランスはひざを突く。

落ち着け、俺様。神に、あのくそクジラに勝てる手段はある。
愚かにも、あのクジラは、その手段を残した。


『正直、あなたは弱い。』

知っている。
今の俺様に力が無いことくらい、だがそれがどうした。
それは第一神級や、くそクジラに、悟られず行った逆行の代償。
多くの力を失った、しかし、それゆえに神を欺けた。
神の隙をつくチャンスを得る為ならそれくらい安いものだ。


冒険者時代より弱いこの身は、しかし、実に多くの可能性を秘めている。
首を洗って待っているがいい、くそクジラ。てめぇの命も刈り取ってやる。

そのための、逆行だ。だが物には順序というものがある。
順序などいつも飛ばしてきた俺様だが、今回ばかりは、ひとつひとついかなければならない。
まずは………。そして……。

「……ふぅ、」

想像の中でルドラサウムを100度殺したころ、ようやくランスの動悸が治まった。
落ち着きは既に取り戻しており、全身を流れる汗を置いてあったタオルでぬぐう。

「恐怖からくる発作で倒れかけるなど、…情けなさすぎる。
 部下には絶対に見せられんな。」

ため息をつき窓を見る、長い間瞑想していたのか。
すでに日は暮れようとしていた。

「…ん?そういえば、昼までには帰ってこいといったのに。
 遅いな。あいつらどうしたんだ?」

なにやら途中、外が騒がしかったが、何かあったのだろうか?
ヘルマンの侵攻が始まったのなら、その程度の騒ぎではすまないだろうが…

部下がいれば、偵察に出すところだが…。
あいにく、その部下がいない。
こんなときあいつが、俺様のただ一人の奴隷がいれば…

「…そういえば、いつでも俺様のかたわらにいたなぁ。」

ランスは今はもういない、かいがいしく自分の世話をしていた一人の奴隷を思い浮かべた。

「あいつは、今なにしているんだ?」

もう一人の俺様ではないランスと共にいて、
文句の多いランスにいいように使われているのだろう。
それでも笑顔を浮かべているのだろう。

なんともいえぬ寂しさを感じていたランスは、ドアの荒々しく開かれる音で現実に戻される。
部屋に二人の衛兵が入ってきた。ランスは剣を手に取る。

「お前がダークという男か。」
「なんだ、てめぇら。」
「リーザスのものだ。女の子モンスターを飼う事は法令で禁止されている。
 その上、放し飼いにしたお前のモンスターが街で暴れた。貴様に逮捕状が出ている。
 大人しくついて来て貰おうか。」
「いやだ。」

「なんだと…ぐぁああ。」
「貴様、刃向かう気…ぐぁ」

いくら剣を持っているからといって、いきなり切りかかってくるとは思わなかったのだろう。
ランスの不意打ちにより、二人の若き男の命が失われる。

「街で暴れただと?何やってんだあいつら。殺されてねぇだろうな。」

目の前の死体には一瞥もくれず、立てかけてあった鎧を着込む。

もし。ここに神が、もしくは悪魔がいたら驚きに言葉を失うだろう。
殺された二人の魂はルドラサウムへと戻らず、ランスへと吸収されたのだから。


「さて、さて、なさけねぇ部下を助けにいってやるか。
 死体になってねぇといいが、な。
 俺様自ら動くのは、これが最後にしたいものだ。」

救出劇が始まる。



[2262] Re[7]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/02 16:11
リーザス城、地下牢。

『セクシーナイト』が、天井から吊るされ、
二人の牢屋の番兵が牢の外を見張っている。

片方は、椅子にもたれかかり、こっくりこっくりとうたた寝をし、
もう一方の番兵も壁に寄りかかり、あくびをかみ殺している。

現在、『きゃんきゃん』の自供より、大分三匹に対する警戒は薄れていた。

平時に女の子モンスター三匹が現れただけでは、軍が動く事はなかったろう。
今回軍が動いた背景には、

リーザス城お抱え忍者『かなみ』が、きな臭いものを感じ、有事に備える必要がある旨を伝えていた為である。

確たる証拠はないのだが、
『かなみ』は、これからおこるヘルマン侵攻を肌で感じていたのである。


そんな折、突如城に現れたモンスター、
モンスターの大群が、リーザス城を襲撃するのではとの噂が飛び交った為に
おきた騒動であった。

しかし『きゃんきゃん』から聞きだした話より
モンスターは今捕まった三匹のみ、主人は『ダーク』という男一人ということがわかり、

『ダーク』という変態が、放し飼いしていたモンスターが、逃げ出し、暴れた、
ということで落ち着いた。

女の子モンスターを飼う事は犯罪であたるので、
『あいすくりーむ』という宿屋にいるダークという男に逮捕状が出ている、現在その男は取調べを受けているはずだ。

ともかく、
肩透かしを食らったような状況で、一件落着、と相成った。

すでに彼女を拘束しておく必要もないのだが
わざわざ魔物を逃がしてやる道理もない。まぁ、要するに
『セクシーナイト』ら捕まえた女の子モンスターは既にどうでもいい存在となったわけだ。

どうでもいい存在、の処分をめぐって議論などされるはずもなく、
彼女らはリーザス上層部の気まぐれな、判決待ちとなった。


「こら~、いい加減ここからだすです~。」

だから、番兵も、やる気はまったくなく、しぶしぶ押し付けられた雑務を
仕方なしにこなしているにすぎない。
いちいちセクシーナイトの言葉に応対する道理もない。

「うう、おしっこ、おしっこに行きたいです~。」

もちろん、応じる義務はない。
椅子で寝ている、番兵は知らぬが、起きていた番兵は、面白いものを見つけた、
とでもいうように、にやにやと天井から吊るされ、足をもじもじしている
『セクシーナイト』を眺めていた。

「みんな、みんなひどいです~、ここにいる人達全員悪人ですぅ~。」

『セクシーナイト』の苦悩は続く。


しかし、セクシーナイトはまだましな待遇であった。
というのも、モンスターと断定されていないからである。

モンスターとみなされていたらもっと過酷な状況に陥っていただろう。
『やもりん』がそれを証明していた。
ばちぃ!
すさまじい音が牢屋に響く。

「ぐぎぃいいい。」
「くっくっく。はじめの威勢はどうした、あぁ?」

「ひっひっはっふぅ。や、やめて…」

「やめてください。ご主人様だろ。」
「ひぃ、や、やめ。っああああああああ」

牢屋の中では、ここでも書けないようなひどい事が行われていた。


「あぁ、気分いいぜ。
 お前に何しても咎めるものはいなくなった。
 こそこそ隠れてお前をいたぶる必要もねぇ。」
「あっあう、ひぃぁ。」
「いくらでも、悲鳴を上げて、いいんだ、ぜ。」
「ひくぅん。」

そう、ザラックは尋問係をしていた、だが、いまや
『やもりん』から聞き出す情報はない。
彼女はすでに重要性はぜろ。どうなってもいい存在。
何をしようが、それで、上から何か言われることはない。

以前、『やもりん』に吐いたそのせりふは多分に脅しの意味もあったのだが、
いまや、その脅しは現実のものとなった。

セックスだけは病気が移るかもしれないから控えているが
目の前で手足を縄で縛られ、荒い息を上げるブルマ姿の女を
欲情の赴くままに、自由にできる。

ザラックの劣情はとどまることはなかった。


「どうした?生意気な台詞が聞こえてこなくなったぞ。」
「…………っ」
「黙ってちゃあわからねぇだろうが!」
「あうっ…」

びしぃ、とムチのしなる音が聞こえる。

「…全く、少しは、まともな言葉使いでもしたらどうだ?
 俺も鬼ってわけじゃねぇ、少しはやさしくなるかも知れねぇぞ」
「っくずが。」
「…いいねぇ。」

最高のおもちゃを手に入れた気分で、ザラックは返事を返した。
ザラックが『やもりん』を壊れるまで楽しみ続ける事は想像に難くない。

そんな二人と、ったった数メートル離れた牢の外。

「うむむむ、許せん。俺様の部下に舐めたまねしやがって。
 ……う~む、しかしあの生意気な『やもりん』がここまで
 可愛い声を出すとは…。もう少しみていたい気も…。
 いやいや、早く助け出さねば…。いやしかし…。」

なにやらぶつぶつと煩悶する声が聞こえる。
まぁ、誰であるかは想像に難くないだろう。ダーク・ランスである。
彼は三匹の部下を救いに城の中にまで潜入し、『やもりん』を
見つけるまではよかったのだが、助けに入ることを躊躇し、今に至っている。

こうして悩んでいるときも
牢の中ではザラックの執拗な攻撃は続く。

「さてさて、次はどんなことをしてやろうか…
 たいていは、もうやっちまった気もするが…
 そうだ。その尻尾を切ってやろう、じゃまくせぇしな。」

「や、やめろ!」
「ん?ずいぶん必死じゃねぇか。人間様に近づけるんだぜ、うれしいだろ
 よっと。」
「あ、ああ、そこを、握る…な。」
「おっ、ここが弱点だったのか。へぇ。こいつは盲点。」

にやりと笑うザラック。

「あ、ああやめろっだ、だめっ、だめ~」

ザラックがついに強情な『やもりん』弱点を見つけ、弱点を生かした
次なる拷問を思案していたとき、部屋はノックされた。

「……ああ?なんだよ。いいとこなのによ。だれだ?」

ザラックの質問には応じず、再びされるノック。

「ちっ、だれだよ、いったい。」

ザラックは、いらだたしげに扉に向かう。
そう、お分かりいただけるかと思うが、ノックしているのはランス。
やっとランスが重い腰を上げ、助けに入ったのである。

「レィオスかぁ?まだ尋問は終わってねぇぞ。というか
 もうお前は寝てろ。引き続き俺一人でやるからお前は……」

ザラックがそれ以上しゃべることはなかった。
油断して牢から顔を出したところを無常にも一突き。
何が起きたかもわからなかっただろう。
ザラックという男の生涯は潰え、亡骸はそのままズルズルと牢の外に引きずられていく。


「俺様のものに手を出した奴は、普通楽には死ねねぇんだがな、
 今は時間が無いし、ほんと運が良かったな。お前」

男の亡骸を見て、お前は幸せなやつだと言うランス。
白いものが体からとびで、ランスに吸収される。

「ちっ、予想どうり、うすぎたねぇ魂だぜ。」

忌々しげに呟く。

ランスは男の顔をめったに覚えないので、知る由もないが、
この殺されたザラックと言う男、後の赤の副将となるメナドの恋人になるはずの男である。
メナドにとってはこのイレギュラーは幸となるか不幸となるか…。


「さて、さて囚われの魔物助けるヒーローのご登場といくか。」

牢屋に入ろうとするランス。
が何を思い至ったか、回れ右をし、
男の亡骸から鎧を脱がし、自分で着始めだした。

兜まで被り、うむ、と一つ頷き、牢屋に入った。


ランスの視線からは、こちらにお尻を向けてうつぶせになっている『やもりん』が見える。
手足を縄で拘束され、ブルマはずりおろされ、尻尾はへたり、力なさげに垂れている。
体のあちこちには青あざや、切り傷、やけどの跡がついていた。

(むぅ、まぁ、死んでない事を喜ぶべきか…)

「おい」

ランスの声に、びびくっ、と震えるやもりん。

近づいていくと、健気にもミノムシのように這って逃げようとする。
尻尾が弱点であることがばれてしまい、『やもりん』は怯えていた。
ランスは、そんな『やもりん』のお尻の動きを暫く眺め、その後、馬乗りになる。

「おい。」
「あ、ああ・・・」

再び声をかけるが、『やもりん』は絶望の声を漏らし震えるのみ。

(むぅ、やはり俺様とわかっていないようだ。
 しかし、よほど怖い目に合わされたか。すこし、優しくしてやるか。)

ランスは『やもりん』の優しくなでた…お尻を。

「ひぃっ」

それだけで恐怖に顔をゆがませ、悲鳴を上げる『やもりん』
いままでされてきた拷問のような行いに加え、弱点がばれたという事実、
表面上装っていた、強気の『やもりん』は消えさり
これからされるであろう、拷問の数々に想像を膨らませ、怯えていた。

(うぬぬ、さっきの男め、やはり一撃で殺してしまったのは失敗だったか。
 しかし……し、新鮮だ。)

普段は怒り、つっかかってくるはずの『やもりん』
今はがたがたとびくびくとか弱い女のように震えるのみ。

(ううむいかん。このままでは、いけない気分になりそうだ。
 こいつはけっこう重症だし。このままことに及ぶのはまずいな。)

だが言葉とは裏腹に、お尻をなでる手は止まらない。

「正直に答えろ。お前はここで何された。」
「………ひっふっ」

気になってたことを、状況を利用してたずねてみる。

「答えろ。ここでえっちはしたのか?」
「…うっ。されて、ない、」

「本当だな。セックスのことだぞ。」
「…ぐっ、なぜ、そんなことを聞く。病気が移る、といっていたのは
 貴様だろうが。…まぁ、それは私がいいたいところだがな。」

最後の気力を振り絞ったのだろう、そう強気で吐いた後の『やもりん』
の顔は怯え一色。衝撃に耐えるように、目をぎゅっと瞑っていた。

再びランスの手がお尻に触れると、叩かれると思ったのか
びびくっ、と『やもりん』が震える。

「う~む、そうまでして生意気なことをいえるとは、ある意味
 すごいぞ。強気なところは相変わらずだな『やもりん』
 しかし、なればこそ、俺様の部下。」
「………?」
「俺様が誰かわからないのか?」
「な、ダ、ダークなのか。」
「ああ、俺様だ、助けに来てやったぜ。」

赤いヘルメットをとると、
そこにはいつものにやけた、余裕ある笑みを浮かべる、『やもりん』の見知った男の顔。
信じられない、とぼーぜんとしている『やもりん』を縛る縄をきってやるランス。


「全く、なんてざまをしてやがる。それでも俺様の部下か?」
「…面目ない。…その、もう暫く、このままで。」
「あ、ああ。」

ランスが抱き上げると、『やもりん』はランスの胸に顔をうずくめる。
今まで我慢してきたのだろう。『やもりん』は静かに泣いていた。

「よく耐えたな。」

ぽりぽり、と頬をかき、困った顔をしながら『やもりん』の頭をなでるランス。
小さな嗚咽が牢屋に響いた。


・・・・・


「ええいっ、いつまで抱きついている気だ。
 女に抱きつかれるのは嬉しいが、今の痛々しいお前を見ていてても欲情せんわ!」

暫く胸をかしていたランスだったが、さすがに気恥ずかしさを感じただろう。
『やもりん』を振り払う。

「そ、そうだな。すまない。
 まさか、ここまでこれるなんて、きてくれるなんて、思わなくてな。
 その、嬉しくて……ありがとう。」

同じく気恥ずかしさを感じたのか、目線をそらしながら御礼を言う『やもりん』

「うっ」

御礼を改めて言われ、暫く、助けに入らないで、状況を楽しんでいた
ランスの良心がちくりと痛んだ。
この事件以後、罪悪感からランスは『やもりん』に対して少し優しくなったという。
「さて、まだ俺様は、助けてやらなきゃならねぇなさけねぇ部下が二人いるが
 お前、二人の居場所知っているか。」
「気絶させられて、目覚めたらここに…。力に慣れなくてすまない。」

俯いてしまう『やもりん』

「がっはっは、気にすんな。俺様に不可能はない。すぐに見つけ出せる
 問題なしだ。」

普段なら根拠も何もないその台詞に呆れ顔を見せる『やもりん』だったが、今は
その言葉がとても力強く感じられた。

「貴方は、すごいな。」
「そうだ、俺様はすごい。」

「こんなところまでこれて、私を救い出してくれた。」
「俺様にかかれば、この程度、お茶の子さいさいだ。」

だが、と言い『やもりん』を正面から見て言う。

「そんな俺様を模擬戦闘とはいえ追い詰めたのはお前だ。
 だからお前もそこそこは偉い。」
「いや、…私は。」

再びうつむいてしまう『やもりん』

「もっといつも道理にしろ。調子が狂う。普段はむかつくが。今日は許す。」

「そ、そんな事できるわけがない。
 …私はうぬぼれていた。大して強くもないのにいきがっていた。
 貴方にも自分の意見を押し付けてしまって、その、申し訳なく思っている。」

「う~む、まぁそうなんだが。」

妙にしおらしくなった『やもりん』に扱いづらさを感じているランス。

『やもりん』は精神的にひどく弱っていた。それはザラックによる
拷問のせいでもあるが、
つかまる前、自分を一撃で気絶させた男によるところが大きい


『やもりん』の脳裏に赤い兵士の死神のような笑みが焼きついて離れない。
 剣筋さえ見ることができなかった。
 格闘しか脳のない自分が、その戦闘において何もできなかった。
 あの男は、
 まだ実力の半分も出していなかっただろう、それでも児童のようにあしらわれてしまった。

やもりんは震える自分の肩を抱きしめる。それでも震えはとまりそうになかった。

「ええい、じめじめするな。なんだなんだ、お前は、
 どうすれば普段のお前に戻るんだ。
 しおらしいお前は、ベットの中でだけ出してくれれば十分だ。」

『やもりん』は俯いたまま返事も返さない。ランスはちっ、と舌打ちをする。

「現段階においては、俺様を守る最も強い盾はお前だ。
 それが自信なさそうに俯いたままってどういうことだ。
 お前は、これから作る『俺様軍』の要になる予定なんだぞ。」

「…見込み違いだ。私には、それだけの力がない。…情けないことにな。」

「バカかてめぇは、力が無ければ、つければいいんじゃねぇか。」
「そういうことを言える貴方がうらやましい。
 生き物には分相応というものがある。私という存在は既に強くなれる
 限界まできている。いくら努力しようともこれ以上は…。」

「ちっ、だからテメェは馬鹿なんだ、理屈ばっかたれやがって
 俺様の部下が、しかも俺様に認められたお前が限界なんぞに縛られてんじゃねぇ!」
「なっ何を…。あっあっ。」

『やもりん』の肩を乱暴につかむと、首筋をひと舐めし、筋に歯をあてがう。
彼女は、突然の奇行に、戸惑いを見せるが、ランスの体から放出される青白いものに魅入られた。。

(これは、『気』?)

それは、『やもりん』の良く知る『気』というものであった。
だが断言できないのは、その『気』のあまりにも強き故に、
大気すらゆがむ程の濃厚なる力の奔流。

(なぜ、ダークがこれほどの…)

ランスの歯の一部が鋭いもの『牙』へと変形し、言葉を失う『やもりん』の肌に突き刺さる。

「うぁ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・」

力が『やもりん』へと流れた。



[2262] Re[8]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/02 18:35
牢屋を一つ一つ確認しながら、薄暗い通路を歩くランス。
『やもりん』はそんなランスの後姿に隠れるようにしてついていく。

めらめらと燃える、要所要所に存在する松明の灯火は力強かったが、
それだけで通路全土を照らすことはやはり不可能で、遠くを見渡すのは難しい。

夜間のためだろう、通りに兵士の姿はなく、まれに現れる見回り兵も、
リーザスの鎧を着たランスを見分けることは難しいようだ。

侵入者ときづかずノコノコやってきた、見回り兵を
騒ぐ暇も与えずランスの一撃でノックアウトする。

倒れる兵士はそのままであるが、現状騒がれていないところを見ると、
まだ、ランスたちの侵入はばれてはいないようだ。


牢は、『やもりん』が捕まっていた部屋の牢もあれば、
檻のような牢屋もあった。同じ部屋でもJAPAN式の座敷牢もあった。

『やもりん』はランスが覗く牢を、共に見る。
空っぽの牢もあれば、冗談としか思えない、白骨死体の残った牢屋もあった。

悪臭の立ち込める牢屋も少なくない。牢のなかでは、誰も彼も力なくうな垂れている。
捕らえられている人達は、どれほどの罪を犯し、幽閉されているのか
知る由もないが、生気のない彼らを目の当たりにして、
『やもりん』は薄ら寒いものを感じた。

ダークが来てくれなかったら自分も腐った魚のような目をし
一日一日をこんな狭いところで過さなくてはならなかったのだろうか。
いや、生ぬるい。その程度では済まされなかっただろう、

あの醜き男に拷問され、陵辱の限りを尽くされ、たとえ、直接殺されなくとも
そう遠くないうちに狂気に犯され、狂い死にしていただろう。


牢屋を見るたびに、嫌悪が立ち込め、吐き気がする。

大国である牢屋を一つ一つしらみつぶしに探すのは効率がいいとはいえない。
あとどれくらいの、『終わった人達』を見なくてはならないのだろうか。

こういう人達を見慣れているのか、
別段かんがいもなく、作業的に確認を取っているランスを覗き見、
『やもりん』はランスを遠くの存在に感じてしまっていた。

「なんだ、何かいいたそうだな。」

ふいに、ランスが振り向き『やもりん』の顔を見ていった。
『やもりん』は、ためらっていたが、疑問をぶつけてみた。
今一番疑問に思っていること、すなわち…先程の…

「…ダーク、貴方は魔人なのか?」
「なぜ、そう思う。」

「私を「使徒」にしたからだ。」
「ほぅ、よくわかったじゃねぇか、さっきのが「使徒化の儀式」だと」

「ごまかさないでいただきたい。あなたは魔人なのだな…。どうして今まで黙っていた。」
「おいおい、勝手に俺様を魔人と決めてくれるなよ。」

「し。しかし、使徒を作り出せるのは、魔人だけだ。」

はっ、と馬鹿にした口調で返すランス。

「決め付けるな!才能限界?種族の違い?使徒を作り出せるのは魔人だけ?
 妙な枠組みを作るのはいいかげんやめろ。」
 
ランスははき捨てる。『決め付け』はランスの最も嫌うものである。
ルール、存在、枠組み、それらは全て神が創ったものだ。
己もそんな中の一部かと思うと虫唾が走る。

「俺様は俺様だ!そういったものは俺様が決める!」

そう宣言するランスの様子を見て、『やもりん』はこれ以上の詮索をあきらめる。

「…聞いてほしくないようだから、これ以上はやめておこう。
 今は素直に、私が助かったことに感謝し、
 私の『存在』がレベルアップし、遥かな高みを目指せるようになった事を喜ぶべきだな。」

自己を確かめるように体をさすり、『今の自分』を確認する。
そんな『やもりん』にランスが前方を指差し尋ねる。

「…あそこにいる二人を倒せるか。」 
「たやすいことだ。」

ランス達の遥か前方、二人の番兵が見張りをしていた。一人はいすの上でうたた寝をし、
もう一人もなにやら牢の中を覗いていてこちらに気づいていない。

『やもりん』は20メートルを超えようかという距離を三ステップで、つめ、
一人に回し蹴りを、地面、壁と蹴りて、椅子に座っているもう一方の番兵に
勢いを乗せた膝蹴りを叩き込む。手加減も何もなく放たれた二撃は、
二人を昇天させるに十分な一撃だったのだろう。二つの魂が宙に浮き、さまよう。


「…こりゃあ予想以上だな。」

なにも殺さなくとも…とは思いもしないランスだが、
魂を回収しながら、
万一、『やもりん』が敵に回ったら、現状対抗策がないことに気づき、
ランスの頬からは一筋の汗が流れた。

ま、まぁ万が一にも『やもりん』が俺様に逆らうことはないよな、
助けてやったし…。
とはいうものの、三匹の部下の中では、
一番自分に反抗していた『やもりん』
少々不安を感じるのもまた仕方ない話だ。

「それにしても、すごいな、『使徒』というものは。力が段違いだ。
 限界を感じることもないし。自己治癒力も普段の倍は早い。」

『儀式』の前までは、表面上は平静を装いながら、気力だけで
歩いていた『やもりん』だったが、今は、痛みこそ残るものの、
動くのになんら不自由を感じていない。

「ふん、『使徒だから』じゃねぇ「俺様」の使徒だからだ。」
「…ああ、そうかもしれないな。」

やってくるランスに笑顔を返し、…何を思ったか。殴りかかった。
衝撃でランスは吹き飛ぶ。

「ぐっ、…て、てめぇ何しやがる。血迷ったか。」

現ランスの得意とするのは不意打ち。
だが不意打ちをされることには慣れていないのか
ランスは『やもりん』の攻撃をかわしそこね、腹にくる衝撃にひざを突いた。


ランスは自分の懸念が、いきなりあたってしまったことに焦りを見せる。
鋭い目線でにらむランスの瞳には、敵愾心をあらわにした…
ではなく戸惑う『やもりん』の姿が映っていた。

「…あれ?……当たっちゃった」
「あたっちゃったじゃねぇ!!」

怒りをあらわにしつっこむランス。

『やもりん』は先程の『使徒化の儀式』の際、ランスの力の一端を垣間見た。
そう、何者をも支配せんとする『威圧感』と、ランスの発する力強い『気』を…。
それゆえ、今までは道化を演じていたのか、と思ったわけだが。

「この程度もかわせないとは、どうやら本当に弱いようだ。」
「ばかかてめぇ!いきなりの不意打ち、かわせるわけがねぇだろうが!」

「う~む謎だ。これだけのことができて、なぜあなた自身はこうも弱いのだ。」
「弱い弱いと連呼しやがって。俺様は弱くねぇだろうが。
 ちくしょうが!恩をあだで返しやがって!」

「…はっ!?しまった…。…本当にすまない。…機嫌を直してもらえないだろうか。」

しゅんとうな垂れる、『やもりん』
ちっと面白くなさそうに頭をかくランス。

「調子狂うな。テメェは。使徒化の後だから情緒が不安定なのもあるだろう、
 特別に本っ当に、特別に今回に限り許してやる。
 …だいたいだな、俺様が今弱いのはテメェのせいでもあるんだぞ。」
「私の?どういうことだ。」

「お前を使徒化したぶん俺様の力が減ってんだよ。
 この力がばれても困ることが起こるし、あんま使いたくない能力だったが、
 お前が、なんだか本当にへこんでいるようだったから特別にだな…。」
 
「…そうだったのか。本当に悪かった。助けてもらったこと、そして、
 私に可能性を与えてくれたこと、本当に感謝している。
 これからは私の命ある限り、貴方の剣となり盾となることを誓おう。」

ぶつぶつ、呟き、ふてくされてるランスに
ひざをつき、こうべを垂れる『やもりん』
その大げさな様子に、
幾分ランスも機嫌を直したようだ。立ち上がり宣言する。

「まぁ、わかればいいんだ。…じゃあ早速、俺様を『おんぶ』しろ。」
「お、おんぶ?」
「そうだ。俺様は今お前に殴られて動けなくなってしまった。
 お前のせいだ。だから俺様を運べ。」
「わ、わかった。」

ランスは全然全く問題なさそうだが、殴ってしまったてまえ
逆らうこともできずやもりんはランスをおんぶした。

 『やもりん』の攻撃力が下がった。
 『やもりん』の防御力が下がった。
 『やもりん』の機動力が下がった。

「やもりんライダーだ~がははは…。」
「ちょ、暴れないで…。」
「うるさい。こうなったのはお前のせいなんだぞ。(ぽかっ)」
「あいた。」
「ほ~れ前進するぞ~」
「あっ、お尻たたかなくても口でいえばわか」
「がはははははは。進め~。」

ランスのやりたい放題は続く。


「あの~私を助けにきてくれたんじゃないんですか~。」

二人の去った後。
死んだ番兵二人がいた、牢屋の中、
天井からつるされていた『セクシーナイト』は叫んだが、騒がしいランスに声は届かなかった。

哀れ、『セクシーナイト』

「も、もれちゃいます~。」

耐えろ『セクシーナイト』
頑張れ『セクシーナイト』

「ひ~ん。」

結局『セクシーナイト』をランスたちが発見したのは
兵士数人と遊んでいる『きゃんきゃん』にお仕置きを済ましてから
となる。
我慢できたかどうかは、彼女のプライバシーに当たるためここには記載しない。



[2262] Re[9]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/03 23:45
「ふむ、全員無事のようで何よりだ。」

『やもりん』は再起不能『きゃんきゃん』は死亡
なぜかそんな設定が頭をよぎっていたため、少々不安だったランス。

これも、女の子モンスターが好きなやつら(読み手)のおかげだろう。
よくわからないことを考えながら、全員無事であることに満足する。


「さて、俺様たちはこれより……」

ランスが作戦を告げようとした矢先、騒がしくなる。

「敵襲だ~!」
「ヘルマンが攻めてきたぞ~!!」
「魔物魔物だ~!!」
「みな起きろ~!!」

カーンカーンカーン、と緊急を知らせる鐘が鳴り響く。

はじめは、自分たちが脱走したことがばれ、追っ手が来るのかと
警戒した三人も、なにやら具合がおかしいことに気づき、首をかしげる。

ランスだけは何のことか察したらしい。口をゆがめる。

「ふん、そろそろとは思っていたが、まさか今日とはな…。」

・・・・・・


●メナド預言者に会う●


「な、どうなってるの?これ。」

青い髪をショートカットにしたボーイッシュな女の子
メナド=シセイは、驚きに目を丸くしていた。

リーザス城が燃えている。

「こ、こうしちゃいられない。」

自宅の窓から見た非現実的な一大事に、
あわてて、飾ってあった剣を手に取る。

「借りるね。」

亡き弟の形見の剣である。
子供の頃から剣士を目指していていた弟。
その弟に付き合っていたため、特別な剣の指導を受けてはいないが、
メナドも剣を扱える。

魔法の加護もかかっていない、どこにでもある無骨な剣であるが、
メナドにとってこの剣は特別だ。
腰に納めると、それだけで守られている気がする。

メナドは事態の把握に街へと繰り出す。

血を垂れ流しぴくりとも動かない人達。頭と胴体の繋がっていない人達。
やけただれ、人と判別するのも難しい黒い塊。その数のなんと多き事か。
街の中央に出るとそこは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

悲鳴と泣き声は街中いたるところで聞こえてくる。

「う、うあ…」

メナドはこの世の地獄を見たような気分だ、恐怖で声もうまく出せない。
と、一匹の魔物と目が合ってしまう。
魔物はメナドを獲物と判断したのかじりじりとにじり寄ってくる。

な、なんで魔物が…
な、なんだっけ。見たことある、あの魔物
そう強くないはずだ。大丈夫、ぼくなら倒せる。

メナドは自らを鼓舞し、剣を抜くも、
手が震え、うまく構えることができない。

大丈夫、大丈夫、大丈夫。

心の中で何度も繰り返す、しかし、
手は思うように動かない、足も動かない、のどはからからだ。

鋭い爪を新たな獲物に振り下ろさんと魔物が腕を振り上げ、駆けてくる。

そう、それは、大して強くもない雑魚モンスター。
平常時のメナドなら、例え同じモンスター二匹に囲まれたとて対処出来たろう。
しかし恐怖に飲まれた今のメナドにこの厄災を振り払うだけの気力がない。


や、やばい。だめだ-。

来るべき衝撃に、目をぎゅっと瞑る。
ザシュ、メナドは体を貫く音が確かに聞こえた。

ああ、ぼく、しんじゃうんだ。だって体を貫く音が聞こえたもん
うぅ。もっと生きたかったな、弟の分まで生きるってあの時決めたのに……
あれ?でも痛みがないのはなんでだろう…

不振に思いうっすらと目を開く。
開いた視界。映る魔物の無残な亡骸。

「う、うわぁ~。」

目と鼻の先にころがる死体に驚き。
尻餅をつき、ずるずるとあとずさる。すると背中にどん、と衝撃を受けた。
恐る恐る振り向くと、そこにはリーザスのではない鎧を着た兵士がいた。

兜をかぶっているので、顔は詳しくわからないが、
不敵な笑みと、鋭い目つき、それだけで
彼が悪人であろうことはわかってしまう。

「あなたが、人助けとは、珍しい。」
「ふん。俺様はいつでも正義の味方だ。」

男の後ろに佇むのは、魔物だ。尻尾がそれを証明している。

魔物とお友達?
でも、口ぶりからしてぼくを助けてくれたのはこの人。

メナドはそう理解すると、素直に男にお礼をいう。

「あの、ありがとうございます。」
「あぁ?気にすんな。本当に気まぐれだ。
 見殺そうと思ってたんだ、運がよかったな。」

あんまりな台詞。
興味ないとばかりに、メナドにはもはや目もくれず、
後ろの尻尾の生えたモンスターに何事かを話す。
後ろのモンスターは頷くと地を蹴り、壁を蹴って家の屋根に消えた。

「す、すごいや。」

あまりの身軽さに驚くメナド。

「ああ、あれはすごいな。思わぬ拾い物だ。」

頷く男。

男とメナドの二人しかいなくなったところで
メナドはもういちど感謝の旨を伝え、
気になっていたことを男に尋ねる。

「あの、この街で何が起こってるんですか。」
「…知ってるが、それをお前に話す道理はないな。
 面倒くさいし。そんなことしても、俺様は何の特にもならん。」

「そ、そんなことをいわずにお願いだよ。」
「がきは、帰って家の中でくそして寝てろ。街に出ると危険だぜ。」

口は悪いが、自分の身を案じてくれているのだろう。
人のいいメナドはそう解釈した。

「さて、俺様はもういくぜ。その剣は飾りじゃねぇんだろ。
 自分の身は自分で守れ、じゃぁな。」
「あ、あの。待って。助けてもらったお礼を…。」
「そんなもんいらん。」
「じゃあ、名前だけでも教えてよ。」

あまりにつれない態度に、やや、強い語調で尋ねてしまうメナド。
男は別段気分を害した風もなく、返事を返す。

「俺様はダークさまだ。」
「ダークサマ?変な名前だね。」
「な、なんだとガキ。」
「あ、ごめんなさい。変わった名前っていいたかったんだ。
 ぼくはメナドっていいます。さっきは本当に助かりました。」

お前の名前なんか知るか、といいかけた男。
だが、名前を聞き、驚くように目を見開く。

「メナド?お前メナド=シセイか。」
「えっ僕を知っているの?」

・・・・・・


「気づかなかったぜ。というか女とわからなかった。」
「うぁ、ひどいな。男みたいってよく言われるけど。」
「ああ、いや、悪い意味じゃねぇ。うん十分かわいいぜ。」
「えっ、あっ。」

がっはっは、豪快に笑い、乱暴にメナドの頭をなでる男。

「しかし、それなら、なおさらお礼を言われる筋合いはねぇな。
 俺様がいなくとも、なんとかなってたろう。」
「えっえっ、どういうこと?」

男の意味不明の言葉に首をかしげるメナド。
なんでもねぇ、男はぶっきらぼうに返す。

「ねぇ、なんでぼくを知ってたの、ぼく、おじさんの事知らないよ。」
「お、おじさん。馬鹿か。メナド。俺様のどこがおじさんだ。」

「え、あれ?違うの?結構年いっているようにみえたんだけど。」
「俺様は永遠に20歳だ。だから今後はお兄さん若しくはお兄様と呼べ。」

30くらいに、というメナドに、
頑固譲らん、と口をへの字にするランス。
そんな、姿に似合わぬ子供っぽい様子に、メナドは笑ってしまう。

「くすくす、わかったよ。お兄さん。」
「…うっやはり、結構かわいい。」

無邪気に笑うメナドに、ちょっと見とれてしまったランス。
思わず口から本音が出てしまう。

「そういうこといってくれる人初めてだよ、ありがとう。」
「う、うむ。それよりお前はもう家に帰れ。ここは危険だ。」

「何が起こっているの?」
「そうだな。特別に教えたやろう。
 これはヘルマンが仕掛けた戦争だ。
 『パットン』という馬鹿が血迷って起こした。」
「へ、ヘルマン帝国が…。お、大事じゃないか。」
「そうだな。」

他人事のように話すランス、メナドは事実を知らされ驚愕する。

「あれ、ヘルマン?でもいたのは魔物だったけど。」
「だからそのヘルマンが魔人と手を組んでおこしたんだよ。」
「魔人、魔人ってあの…?」
「そうだ。だから当然魔物もいる。」
「なおさら大事じゃないか。こうしちゃいられない。」
「どうするんだ?」
「う、そ、それは……。」

言葉に詰まってしまうメナド。
モンスター一匹対処できなかった自分に何かできるとは思えない。
思案に暮れようとしたところで、男の着ている服がなんなのか
気づく。

「あ、それって…。ヘルマンの…。」

口に手を当て男の鎧を指差す。

「ま、まさか。ヘルマン兵?えっでも助けてくれたし…
 えっえっ?」
「落ち着け。これはヘルマン兵だと思わせる
 カモフラージュだ。これを着ていれば、一々魔物や
 そこらを闊歩してるヘルマン人の相手しなくてすむだろ?」
「へぇなるほど、お兄さん頭いいんだね。
 ぼくだったら、そんなこと思いつきもしないよ」

俺様は天才だからな、と言い、馬鹿笑いを済ませたところで、
びしっと二本の指を突き出しメナドに宣言する。

「二ヶ月待て」
「え、何が?」
「正確には一ヶ月とちょっとか?お前は家でじっとしてろ。
 そうすれば全ては終わってる。」

自信満々に宣言する男。
メナドはわけもなく圧倒される。

「…全てが?」
「そう、リーザスはヘルマンの占領下に置かれるだろうが、
 それはあくまで一時的、
 二月たたずにヘルマンは撤退を余儀なくされ、
 魔人は死ぬ。まぁ。一人逃げ帰るやつもいるがな。」

メナドは男に興味を抱いた。
自分を助けてもくれたし。
それを恩に着せない気さくなところもある。
会ったこともない自分の名前も知ってるし、未来までも予言した。

強くて、やさしくて、ミステリアス。

よくよく考えれば、大して強くないモンスターを一匹倒しただけだし。
メナドと知るまでは、口も悪ければ態度も最悪、
確たる証拠もない発言はミステリアスと言うよりは、変な人といった印象のが強い。

だが少なくともメナドは目の前の男にそういう印象を描いた。

人がよく、男運のないメナドのなせる業だろう。

「その話は本当?」
「ああ、本当だ。誓ってもいい。」
「じゃあ指切りをしよう。」
「ゆ、ゆびきり?」

とっぴな発言に、さすがのランスも顔をしかめる。

結局指切りをさせられ、
メナドは逆にランスに、そのあいだこの事件にはかかわらず
家にいる、もしくは
家の裏手で剣の修行をしていることを誓った。

「気をつけてよ。ダークサマ。」
「それは俺様の台詞だ。」

ダークランスとの一度目の出会いは偶然、だが、
メナドの人生に大きな影響を与える事となる。

二月がたち、男の宣言道理になったとき、メナドは、男に
改めて強い興味を持つようになる。

リーザス開放戦争において、
ダークの名が呼ばれることはなかったが
メナドは確信していた。

「きっと、ダークサマさんが解決したんだ。
 すごいやダークサマさん、ぼくはあなたに弟子入りしたい。」

とんでもない勘違いである。
ダークはあの後用事を済まして、その日のうちにとっととリーザスから離れていた。

まぁ、昔とった杵柄(きねづか)というやつだろうか…。

ともあれ、尊敬し、目を輝かせ、ダークに少しでも近づこうと
今日も鍛えるメナドの姿があった。

騎士隊に入隊し、
リーザス第三軍、通称、赤の軍の副将に抜擢される日は近い。

…がんばれメナド。



[2262] Re[10]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/03 23:36
「あなたが、人助けとは、珍しい。」

それは、皮肉か?それとも本気で驚いているのか。

「ふん。俺様はいつでも正義の味方だ。」

面白くねぇ。
なんで助けてしまったのか。反射的だった。

汚れる前の児童の魂は、吸収したときけっこう気持ちがいい。
その気持ちよさを放棄してまで、手を出してしまった。

襲われているのがかわいい女の子ならともかく、

男、ガキ。俺様のもっとも苦手とするところである。

「あの、ありがとうございます。」

今の時代にめずらしい、礼儀のなったガキだ。
だが、だからといってどうというわけでもない。

「あぁ?気にすんな。本当に気まぐれだ。
 見殺そうと思ってたんだ、運運がよかったな。」

てきとうに、返し、とっとと行こうとすると。
後ろから『やもりん』が声を小さくして、警告を発した。

「ランス。私たちは見張られているようだ。屋根の上に、監視がいる。」
「まじか?」

神か?
…のわけはねぇよな。ちっ、一瞬びびっちまったぜ
面白くねぇ、まだこっちでは目立つことしてねぇし、
『逆行』は完璧でばれなかったはずだ、神がこの時代まで追ってくるというのはないだろう。

となると…だれだ?見当もつかん。

「捕らえて来い。さっきの番兵見たく殺すなよ。
 なぜ俺様を見張ってるのか吐かせるからな。」
「わかった。」

「ああ、それと相手が強そうだとおもったら、無理をしなくて言い。
 姿かたちだけ覚えて、俺様がいた宿屋で待機してろ。俺もそこへ向かう。」
「お言葉だが、今の私に勝てるものはそうはいないが…。」

あの赤い兵士、あれだけは例外だが、
と『やもりん』は心の中で付け加える。

「うぬぼれるなよ、この辺には『魔人』が三人もいるはずだからな。」
「ま、『魔人』だと?なんでこんなところに…」
「いいからとっとといけ、
 魔人の『使徒』も何人かいるだろうし、注意だけは怠るな。」
「承知」

頷き『やもりん』は地を蹴り、壁を蹴って家の屋根に消えた。

「す、すごいや。」

んまだいやがったか、ガキが。

うざったいそうにガキを一瞥するランス。

だがその後『ガキ』が『メナド・シセイ』である事を知り
驚愕することになる。
その後、メナドといくらか話をし、なぜか展開上
指きりげんまんまでし、ランスはメナドと別れた。


「しかし、今メナドは何歳だ?15、16ぐらいだよな。
 ううむ、胸も出てないし。」

あと一年でちゃんと成長するのだろうか。
そんな余計な心配をしながら、自分の宿へとかえる。

宿屋『あいすくりーむ』はしっかりと戸締りがなされていた。
何度も扉をたたき、ようやく開かれる。
魔物に荒らされてはいないようだ。ヘルマンも支配が目的だから
必要以上の被害は出したくないのだろう。

今街でやりたい放題している魔物も、
近いうちおとなしくさせられるはずである。

自室に入ると、『やもりん』が腕を組んで窓辺に座っていた。

「よう、はやかったじゃねぇか。」
「あなたがおそかっただけだ。」

みると、窓が割られていた。そこから入ったか。
まぁ、外の魔物がやったことにすれば弁償も免れるだろう。

苦笑いをうけべるランス。

「で、どいつだ。」

ランスが尋ねると、『やもりん』は押入れから
何かを引きずる。

何か、は人だった。ここらでは珍しい赤い服を着、
おなかを抱え苦しそうにしている。
さるわぐつをはめたのは『やもりん』だろうか、お陰でうるさくないのはいい、
が…。こいつは

「すばやかったが、それほど強くはなかった。
 己に合わぬ重い盾を持っていたせいだな。
 捕らえるのはそう難しくはなかったぞ。」

その人物の近くには、豪勢な盾があり、リーザスの紋章が入っている。
見間違いのあるはずのない、王の持つ武具『リーザスの盾』だ。

「…かなみじゃねぇか。」

そう、それは、リーザスの忍者、見当かなみであった。



[2262] Re[11]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/03 23:50
ううむ、困ったぞ。

そう、ランスは現在困った事態に陥っていた。

宿屋『あいすくりーむ』の一室。
ランスのとった部屋では、今一人の少女がベットで手足を拘束され横たわっている。

少女の名は『見当かなみ』

リーザス解放戦線において、始まりを担った少女。
彼女がリーザスの盾を持って、この時代のランスの元に助けを請いに
いかねば話はすすまない。
だが、その肝心の『かなみ』は『やもりん』に殴り飛ばされ、
肋骨を折ってしまった、重症である。

「すまない。まさか知り合いだったとは…。」

反省の態度を見せる『やもりん』

「ううむ。」

殺すなとはいったが、傷つけるなとはいわなかった。
自分に落ち度があるのだろうか。

ランスは悩んでしまう。

どうも『やもりん』は手加減ができないらしい、
それとも、拷問され、人間そのものを憎んでいるのだろうか。

どちらにしても、まずはこの事態をどうするかである。

(この時代の『俺様』抜きだと……やべぇよなやっぱ?)

簡単にシュミレートしてみるが、

ランス抜きでは魔人を倒すことはできない。
つまりは、魔人の思い道理になってしまうわけだ。

一日ぐらいならかなみが遅れても大丈夫だと思うが。
確信はもてない。
もう一度やれと言われてもできない奇跡のような勝利だっただけに、
ダークは不安になる。

(そこらは、運に任すしかねぇか。)

さるわぐつをはめ、手足を拘束され、ふごふごいっているかなみを見て思う。

(よくよく考えてみれば、ジルのやつは1000年、
 魔王をやっていたが、ルドラサウムに飽きられていねぇ。
 最悪ジルが世界を支配したとしても、俺様には関係ねぇか?)

(俺様に必要なのは時間。世界がどうなろうとしったこっちゃねぇしな。)

恐るべき、自分勝手、メナドとの約束は既に忘れていた。

うんうん、となんか自己完結させ、考えがまとまったところで、
『かなみ』のさるわぐつをはずす。

「あんた、なにしてくれんのよ!」

開口一番、かなみは、『やもりん』に怒りを爆発させた。

「すまない、隙があったからつい。」
「つい、じゃない。わたしは大事な使命おってんのよ、
 こんなとこでって、いけないこれは秘密だった。」

口の軽い忍者もいたもんである。

高額な回復アイテムを使ったため、安静が必要とはいえ、
しゃべるぶんには差し障りないのだろう。やもりんへの口激は続く。
そんな『やもりん』をかばうようにランスが割ってはいる。

「おい。お前がやられたのはお前が弱いせいだろう。」
「うっ。うるさい。」
「屋根の上から俺様を監視してなんのつもりだ。」
「な、なんのことかしら。」

とぼける『かなみ』
ほう、そういう事をいっちゃっていいのかぁなぁ~
といやらしい笑みを浮かべるランス。

お楽しみタイムがはじまろうとしていた。

・・・・


「い、いう、言うから。」
「おや、もう降参か、つまらんな。」
「というか、別に秘密にするほどのことでもないのよ。」

かなみはランスのくすぐり地獄には耐え切ったものの。
リーザス地下牢から拝借してきたのか、ろうそくやムチを取りだす
にいたり、あわてて両手を挙げ(縛られていたため滑稽な万歳であったが)
降参の態度を示した。

余談だが『やもりん』はムチと蝋燭を見たとき、
拷問の恐怖がよみがえってきて、おしっこを漏らしそうになったと言う。

呼吸を整え、かなみは自白する。

「屋根の上にいたのは、
 青い髪の女の子が魔物に襲われていたから助けようと思っただけよ。」
「なるほど、それを先に俺様がたすけっちまったってわけか。」
「ヘルマン兵も、一般人にはそれほど、ひどくしないのね。」

どこか皮肉気にいってくる。
ヘルマン兵と言うのは勘違いだが、わざわざ指摘するのも面倒で
ランスは無視する。

「で、その後も見張ってたようだが。それはなぜだ。」
「別に、たいしたことじゃないわよ。」

そっぽを向くかなみ

「なるほど、よっぽどお仕置きしてほしいようだな。」
「ひっ、やめ、やめ、あは、あはははは。」
「おらとっとと吐け」
「ひはははっ、わかっわかっ。やめっやめっ、
 やめなさい!くすぐってたらしゃべれないでしょ!!」

怒り出すかなみ。

「全く。あんたが私の知り合いにちょっとにてただけ。それだけよ。」
「ほう。」
「全く。性格までムカつく位そっくりだわ。」


なるほどな、とランスは頷く。
つまり、今回の件に関わらないよう注意はしていても、

自分があの場にいた、というだけで、
歴史が変わり、ジルの支配が始まってしまうかもしれないのである。

まさに風が吹けばなんとやらだ。

「…それで、わたしをどうする気?上官に突き出すの?」

ランスが考えにふけっているのをどう受け取ったか、
警戒色を強め、探るように問いかけてくる。

ランスは訝しんでいたが、かなみが自分をヘルマン兵と勘違いしていたのを思い出し理解する。

かなみは自分をヘルマン兵と思っている。
かなみはリーザスの忍者で、なにやら重大な任務を負っている。
(まぁその任務は既に知っているが…)
それをヘルマン兵である自分が捕まえた。

なるほど、自分がヘルマン兵だった場合、かなみは今、
絶体絶命の危機に陥っているわけか
誤解を解いてやる必要はないな…。

ランスは、ヘルマン兵という立場を利用して
拷問などの卑猥なことを考えたりもしたが、

それは、つい数刻前までひどいめにあわされた
『やもりん』に嫌がられる。
下手をすると見切りをつけられるので、ちょっとこの場では無理だ。

それにできるならば自分も非情と名高い魔王ジルの支配は避けたい。
かなみを可及的速やかにこの時代のランスの元にいかせなければ、
ならない。

以上のことを考え、ランスは決断を下す。

「よし、お前は解放してやる。」
「えっ」

予測もしない言葉だったのだろう。ぽか~んと馬鹿みたいに
口をあけ、ダークを見る。

「なんだ?不服か。」
「えっ、いや。ううんそうじゃないけど。」

返事を返ししばらく呆然としていた『かなみ』だが、
世の中はそんなに甘くないという事を経験則から感じているのだろう。

ダークの真意を探ろうという目に変わる。

「…それで、何が目的なの?」
「ん?いや別に…まてよ。そうだな。」

さすがは不幸少女かなみ。
ほおっておけばこのまま開放されたものを、わざわざ墓穴を掘ってしまった。

「一晩くらいは大丈夫だよな、ぐふふ、
 じゃあ、エッチなことをしてもらおうかな。」
「くっ、………わかったわ。」

見当かなみは、苦虫をかみ殺したような顔をするが、
内心少しだけ安堵のため息をつく。

もちろんエッチなことなどされたくない。
かなみにとっては初めてだ。こんなところで処女を散らしたくない。
そういう気持ちは強い。

だが捕まった時点で既に自分に未来はない、とある程度覚悟していた。
ヘルマン兵に連れて行かれ、どんな任務を負ったかを吐かせるため拷問され、
終われば殺される。そんな最悪かつ濃厚な可能性に比べれば、
この程度の事、我慢できなくもない。

「あ、あの私はどうしていれば…。」

かなみの上に乗ったランスに、やもりんが遠慮がちにたずねる。

「お前もこい、がはははは。」
「え、ええ~。」

こうして三人は、夜が明けるまで『仲良く』なると思われた。

…だが、

『ぼきっ♪』

「ああああああああああ。」

かなみの怪我を忘れていたランス
乱暴にかなみを動かしたときに、回復アイテムで、直りかけていた
肋骨が再び折れてしまい、それどころではなくなった。

「い、い、いたい~。」

不幸少女かなみに、わずかながらの幸があらんことを…



[2262] でーた戦闘力(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/11 14:44
ラディッツ「戦闘力5。ゴミめ。この星は雑魚ばっかりだな。」

戦闘民族であるラディッツはこの星を征服せんと企んでいた。


でーたその1(暫定)

DBスカウター測定値

LP2年?

ダークランスの部下
 きゃんきゃん   3
 セクシーナイト 15
 やもりん    30(使徒化前)

 ダーク・ランス  21(息子にあらず)

リーザス解放軍
 リーザス一般兵士 10
 
 ハウレーン 38
 レイラ   180
 リック   250
 リア    11
 マリス   不明
 ランス   30~2500くらい
 リーザスの神竜 不明

リーザス一般市民
 メナド   23
 
ヘルマン軍
 パットン 馬鹿だけど強そう
 トーマ  300
 ハンティ 420

魔人
 サテラ    600
 アイゼル  2000
 ノス   10000

(魔人は結界を含んでの数字)
注)魔人は通常攻撃を受け付けない結界が常時はってあるらしい。

魔王ジル 1000000

ラディッツ「ば、ばかな。こ、こんなことが…あ、あにきー」

 通信機を握り締め、怯えながら助けを求めるラディッツ
 
ナッパ  「ばかか、おめぇそりゃ機械の故障だ!」
ベジータ 「ひゃくまんって、ふざけるなよ。フリーザもびっくり
      じゃねぇか
      馬鹿いってると消すぞ。」

ラディッツ「くそっ、くそっ
      だめだ、このまま戻ってもベジータに殺される。
      くそっなんで俺が毎回ぱしりのように
      遠い惑星を一人で…そうだカカロットを連れ戻そう。」

ラディッツこうして地球へと旅立った。

>尚、このデータはあまり本編には役立ちません。



[2262] でーた登場人物(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/04 16:02
やもりん「えーい、わかるかぁ!」
ダーク 「なに切れてんだよ。」
やもりん「人物名の多さに私は辟易した。名前出されても
     顔や姿がほいほい浮かぶわけないだろ!」
セナイト「ほいほいでてくる詳しい人達は、
     いい加減な設定に耐えられず
     読まないでしょうしねぇ。」
やもりん「そこでだ。
     話にでてくる奴をわかりやすくここで説明してくれ」


ダーク「ちっしかたねぇな、ほらよ。」

人物名

ルドラサウム くそ鯨、こいつが何もかも悪い。腐れ創造神。
       あきたら俺たちを殺すというふざけた馬鹿
       つーか人物名にでてくんな。死ねやボケ!

ジル     元魔王。1000年にわたり、
       人間を奴隷として支配した
       素っ裸なねーちゃん。性格は非情で残忍
       ちょっと今この女を抱くだけの度胸はねぇな。

シィル    俺様の奴隷。ピンクのもこもこした髪をしている。
       シィルを知らないで、ここ読む奴ははいない思うがな。

マリス    リーザスの侍女。
       影の宰相。長い緑の髪の大人なねぇちゃん。
       万が一こいつが仲間に入れば鬼に金棒だ。

リア     リーザスの王女。青い髪に幼い顔立ち。
       むぅ、性格はともかく顔はなかなか…
       だが、わがままだから仲間には入れん!

ハウレーン  ピンク髪のポニーテール。気難しい性格。
       親が、黒の将軍バレス。
       うまくすれば仲間に入るかもしれん…

メナド    青い髪のボーイッシュな顔立ちをした女の子。
       元気はつらつ。

リック    こいつは危険だ。

ザラック   だれこいつ?メナドの将来の恋人?死ね。
       (ザラック「もう俺死んでんだけど…」)

ダーク 「でてくるのは、このくらいか。」
やもりん「ご苦労。」
セナイト「あれ?私たちは?」



[2262] Re[12]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/12 16:11
「何であんたがついてくる事になるのよ。」
「まだ怪我が痛むだろうし一人じゃ何かと心細いだろ?
 お前が心配だから、ついていってやってるんだ。ありがたく思え。」
「余計なお世話よ。」

全く、このヘルマン兵は~。
何が心配よ。私を監視してるのばればれじゃない。

かなみは、苛立っていた。

「なによ。私が拷問しても吐かないだろうからって、
 何するか見届け、上官に報告しようってはら?」
「…どうとろうが構わんがな。」

「卑怯よ。昨日、開放してくれるっていったじゃない。」
「したじゃないか。」
「してないじゃない。」
「俺様がどこ行こうとそれは俺様の勝手だ。
 それに開放するってのはエッチしたらが条件だったはずだ。
 昨日はお前の怪我のせいで何もできなかったじゃねぇか」
「ぐっ」
「なんだ、エッチもさせない。
 高い回復アイテム二つも使わせる。
 今だって重いだろうと荷物もってやってんのに感謝もしない。
 お前は何様だ?」
「そ、それは……きゃあ」

そういうとダークはかなみのお尻をモミモミする。
慌てて手をはじき、距離をとるかなみ。

「な、なにすんのよ!」
「ぐふふ、今のは、お前の態度が悪かった分だ。
 回復アイテム分、荷物もってやってる分と、近いうち、体で返してもらうから
 覚悟しろよ。」

かなみの悲鳴に気をよくしたのか、がははは、と馬鹿笑いする。

な、何よ何よ何よ~!
このヘルマン兵。むかつくむかつくむかつく~。

かなみは、じだんだを踏んで悔しがる。

リーザスの、いやリア直属の忍者『見当かなみ』は任務により
聖盾をランスの元に届け、助けを請わなくてはならない。

それだけでもひどい憂鬱なのに、その前に
この目の前の男から『聖盾』を取り返し、
何処へ行くかわからぬようにして上手くまかねばならない。
いや、そこまで面倒なことをする必要はない。
殺してしまえばそれで済む…だが、

体の完治していないかなみにとってはそれは酷く難しい。
何か、何か方法はないだろうか…

「ああ、かなみ、ここでしばし待て。」

リーザス城、城下町を出たところで、
思案に暮れるかなみを止めるダーク。

「なんで、あたしが、あんたの都合に合わせなくちゃならないのよ。」
「がはは、まぁ気にするな。」

リーザスの『聖盾』を男が持っているため
かなみはその言葉に従うよりほかない。

なにが『重いだろうから持ってやる』よ。
あたしが逃げられないように奪っただけでしょ。
それにしても癇に障る笑い声だわ。
こんなとこまであの馬鹿に似てるじゃない。

宿を出る前に、兜を脱いでる男の顔を見、
かなみは、ランスと瓜二つの顔にひどく驚かされた。

もちろんよく見ると違いはある。男のほうが若干年取って見えるし。
目つきの悪さはおなじだが、
自分の知るランスと違いその眼光に輝きがない。

髪もランスが茶髪に対し、男は黒とも形容しがたい
光を完全に遮断するかのような闇色。

だが、他人と言うには、似すぎていないだろうか?


ひょっとしたら兄弟か何かかしら。まさかね。
性格の悪い人間は、みんなあんな顔になるんだわ。
きっと、そうよ。

適当に、結論付けたかなみ。
目の前の男は草原に横たわり、リーザス城を眺めていた。

「ちょっと、ここで何する気?わたし急いでんだけど。」
「がはは、まぁ気にするな。」
「気にするわよ!急いでるって行ったでしょ。」

「まぁ、お前も座れ、今日は天気いいし。気分がよくなるぞ。」
「なるわけないでしょ!リア様が捕らえられているのよ!」

日向ぼっこなんてしてるひまないわよ!と怒鳴るが
取り合わず、自分の隣の草をぽんぽんと叩く。

「どうした。座れよ。なんならここでエッチしてやってもいいぞ。」
「結構よ。だいたいあんたねぇ…。」
「まぁまぁ、」
「ちょっと、何処触ってんのよぉ。」
「まぁまぁ」
「ひっ、やめなさ…」
「傷に響かないようやさしくやってやるぜ。」
「ふ、ふざけないで……。」

かなみの抵抗むなしく、ダークの楽しい時間が、
かなみの不幸な時間が始まろうかと言うとき、
幸か不幸か邪魔が入った。

「わー、楽しそう。ね、混ぜて混ぜて、混ぜて~。」

耳をぴくぴく、しっぽをふりふりさせた下着の女の子が割ってはいる。
そう、ご存知『きゃんきゃん』だ。

きゃんきゃん?
ずいぶん街に近いところに出たわね。

そんなことを思いながら
ダークの力が緩んだのを、これ幸いと、振りほどき、距離をとるかなみ。

ダークはあたまをぼりぼりとかき、面白くなさそうに言った。

「ちっいいところを。ずいぶん、はやかったじゃねぇか。
 本当に俺様の『きゃんきゃん』か?」
「うん、『やもりん』ちゃんが早く行ってやれって~。『印』みる?」
「いや、いい。それを知ってるってだけで十分本人だ。
 ふん、時間がないのは確かだからな。ところでどうだあっちのほうは…。」
「う~ん、『やもりん』ちゃんと『セクシーナイト』ちゃんが探してるとこ…」
「ちっまだみつからねぇのか。
 だが、まぁ『やもりん』がいれば大丈夫だろ。俺様はとっとと行くか。」

ダークが立ち上がり、支度をしているところを、
不思議そうにかなみが尋ねた。

「ねぇ、あんた。街で暴れてる魔物見た時思ったけど、
 ヘルマン兵って魔物を従えてるのね、どうやってるの?」
「ん?ぶったおすと仲間にしてほしそうな目でこちらをみてくるんだ。
 あとは、声をかけるだけだ。」

さも当然、と言うダークにかなみは食って掛かる。

「ふざけないでちゃんと答えてよ。そんなので仲間になるわけないじゃない!!」
「そうか?俺様はなったが…。なぁ、おい、そうだよな。」

ダークが、『きゃんきゃん』に話を振ると、『きゃんきゃん』は
うれしそうに答える。

「うんそうだよ~。遊んでほしくて付きまとってたら
 本気でぶん殴られたの~その時にぃ運命のようなもの感じたの~。」
「ほらな。」
「そ、そんな。」

「仲間にしてほしいなぁって思ってみてたらぁ。服脱がされて~
 強姦されちゃったの~。それで、下僕になれって脅されたの~。」
「『きゃんきゃん』その辺は俺様の心象が悪くなるから言わなくていいぞ。」
「あ、あんた最低ね。」

「でもでもでも~ちゃんと遊んでくれるし~
 毎日楽しくて充実してるから今とっても幸せなの~。
 ダーク様大好き~。」
「うんうん。幸せの形は人それぞれ。」
「ぜ、絶対間違ってるわ。」

かなみは、幸せそうな『きゃんきゃん』に
ついていてない、と頭を振り…はっと気づく。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。ってことは、あの『やもりん』
 も倒して仲間にしたの?」
「そうだぞ。」

当然のように言うダークにかなみは驚く。

かなみは目の前のヘルマン兵を、大して強くない。
男から盾を取り返すことも、
体さえ万全ならば、できると思っていた。

だが、あの『やもりん』を倒したというのであれば
考えを改めざるを得ない。

自分は、あの『やもりん』に
重い盾を持っていたためとはいえ、完全なる敗北を喫したのだから。


「どうだ。尊敬していいぞ。」

がははは、と馬鹿笑いするダークを見て。
かなみは『隙を見ての実力行使』という選択儀をはずした。

隙があるけど、それはわざと、そう見せているという可能性を捨てきれない。
任務を確実に果たすためにも、慎重にならなくては…。


結果から見れば、この会話が、ダークの命を救った事になる。
共に行動する忍びに命を狙われ、生き延びることは、
どんな達人であれ、困難なのだから。


・・・・・
「ちょっとあんた!ヘルマン兵じゃなかったの?」
「あ?俺様は一言もそんなこと言った覚えないが…。」
「だってヘルマン兵の鎧着てたじゃない。」
「それはヘルマン軍がいる時だけだ、俺様の鎧は城に置いてきてしまったから
 ヘルマン軍がいないリーザス領ではリーザス兵の鎧を着ているわけだ。
 無用な戦を避けるための常識だぞ。」
「なっ。」
「ある時はヘルマン兵、またある時はリーザス兵!しかしてその実態は…!!」
「きゃははは、どっちつかずーのこうもりぃ♪」
「『きゃんきゃん』お仕置きだ。」
「きゃん!きゃん!」


「…ちょっと待って。」
「なんだ?急に立ち止まったりして。」
「あんたへルマン兵でもないくせに。
 開放する代わりにエッチさせろなんて行ったの?」
「そうだな。」
「ダーク様はエッチするためなら勘違いでも
 なんでも利用するんだよねぇ。」
「…あきれた」
「変なことを言うな。お仕置きだ。」
「きゃん!きゃん!」


「ねぇ、今日は何処でとまるのぉ?」
「あん?夜通し歩くんだよ。かなみが重要な任務負って
 急いでるんだからな。」
「ぶぅぶぅ」
「うるさい。お前すこしはかなみの身になってみろ。」
「……ありがと。」
「がはは、気にすんな。」
(そうでもしねぇと、俺様が不安なんだよ!)
「ぶぅぶぅ」
「うるせーきゃんきゃんお仕置きだー」
「きゃん!きゃん!」


「怪我はもういいのか?」
「ええ、なんとか。支障はないわ。」
「よかったよかった。」
「ダーク様!めずらしく本当に心配してたんだよぉ。」
「そ、そうなの?」
「うん☆」
「くぉら、『きゃんきゃん』余計なことを言うなよ。お仕置きだー」
「きゃん!きゃん!」


「どうした?ため息ついて」
「リア様が心配で…。酷いことされてないといいんだけど。」
「殺すことはしないだろうよ。後はお前が
 準備を整え、首尾よく救ってやればいいんだ。」
「…そう、そうなのよね。」
「ああ、そうだそういうわけでお仕置だーきゃんきゃん!」
「きゃんきゃん!っってちょっと私今回なにもいってないぃぃぃ!」


ヘルマン兵という『誤解』が解けたというのが大きいのだろう。
道程ぎすぎすせず穏やかに道を歩めた。

のーてんきな『きゃんきゃん』がいたおかげか
かなみにも笑顔が戻ってきたようだ。

歩きながら、状況を忘れたわけではないだろうが、
時折笑いあう。
不謹慎かもしれないが、不安で張り詰めているよりはずっといい。
三人は、わずかな時間を楽しく過ごした。


だがランスのいるアイスの街が近づくにつれて、かなみは
徐々に無口になり俯く。

(おうおぅ、緊張ってのもあるだろうが…会いたくなさそうな顔してやがる。
 そんな嫌われてんのかね、昔の俺様は。)

ダークがかなみの顔を盗み見ていると。
唐突にかなみが顔を上げ、ダークと目線が合う。

偶然ではないようでかなみは目線を逸らそうともしない。
かすみの目はまさに真剣そのもの。
まじまじと、ダークの光なき闇の瞳を見る。

「な、なんだよ。」

思わずダークが一歩引いてしまった。

「あの、今までいろいろ誤解したり、迷惑かけたりしてごめんなさい。」
「なんだなんだ、改まって………。」

何をするかと思ったらダークに頭を下げてきた。
話はそこで終わらない、ぐっと何かを決意したように
かなみは本題を切り出す。

「あの、それで……。その、自分でも本当におこがましいと思うんだけど。
 …お願いします!リーザスを救うのを手伝ってください。」

ダークはちょっと困ってしまう。

(むぅ、そりゃ、ジル政権はいやだから協力してやってもいいが。
 このままで上手くいくことを、わざわざ乱す必要もないしなぁ。)

「どうか……!」
「…無理だな。俺様は忙しい。」
「そう、ですか。」

実力は未知数だが
あの『やもりん』のような強い魔物を何匹も従えていると思われる
ダークが味方になってくれれば、どれだけ心強かっただろうか。

ダークの返事に、力なくうな垂れるかなみ。

「しかし、そのまま突っぱねるのも少し気分が悪いな。」
「…………えっ?」

「そうだな、……俺様の職業って何だと思う?」
「その、冒険者とか…?」

「違うな。俺様は占い師だ。」
「う、占い~?…ですか。」
「きゃはは☆うっそだぁ~……きゃん!きゃん!」
「ええい!だまれ」

笑い飛ばす『きゃんきゃん』を組み伏せ、
お仕置きをしながらランスは答える。

「そうだ。忍者のお前なら情報に長けているだろう、
 アーシー・ジュリエッタという占い師を知っているか?」
「ア、アーシー、き、聞いたことはあります。うそか本当か100%当たる占いをするとか。」

「そうだ。そいつに占いの仕方を教えてやったのが俺様だ」
「ほ、本当ですか?」
「あは、あははははは、うっそだ~☆!大体アーシーは
 私たちと同じ魔物でバークスハムの………きゃん!きゃん!」

なぜか、かなり詳しい知識をひれかしかけた、きゃんきゃん。
ダークはお尻ぺんぺんで黙らせる。

「俺様には未来が見える。
 俺様はとってもとっても忙しい身の上だ。
 本来なら、一億Gよこさないと占ってやらないんだが
 今回は、特別にリーザスの行く末を占ってやろう。」
「お、お願いします。是非。」

かなみは真剣だ。今はわらにもすがりたいのだろう。

そう、ダークはは未来を変えない程度に未来を占いと言う形で教えてやり、
かなみに少しでも安心させてやろうと言う、やさしい腹積もりなのだ。

俺様って奴は、なんていいやつなんだ。
と一人悦に入ってうんうん、うなずいている。

「あ、あの~。」
「むっ、ああ、早速占おうか。では、横になれ。」
「えっ、」
「ねっころがれといっている。」

戸惑うかなみ。そう、共に、時間をすごし。
今やかなみはダークと言う人物を正確に把握していた。

素直に横になるとエッチなことをされるであろう事は
ゆうに想像できたのだろう。躊躇する。

「早くしろ。」
「は、はいはい。」

機嫌を損ねまいとあわてて草わらに横になるかなみ。

「目を瞑れ。」
「ええっ。それはちょっと。」
「…貴様、俺様がエッチなことを考えていると思っているな。」
「いえ、そんな。」
「もういい、そんな奴には占ってやらん。」
「す、すみません。これでいいですか?」

いやな予感を抱えながら、言われたとおり目を瞑るかなみ。
何度も言うが、今は藁にもすがりたい状況なのである。

「ふむ、ふむふむ…みえるぞ。まずは過去。お前の任務とは。
 その盾をとある人物に渡すことだな」
「は、はい。そうです。」

「その人物は、既に同様の『剣』と『鎧』を扱ったことがある」
「!ど、どうしてそれを…。」

「動くな!ふむ、その男はハンサムで強くて、かっこいい。」
「いえ、あんまり……。あいたぁ!…何するんですか。」

「ん?何を言っているんだ俺様は叩いてないぞ。くぉら!
 目を開くな!!」

占いが始まり、
うう~む、う~む、と唸り出すダーク。
なんていおうか、また何処まで言おうか考えているだけなのだが、
かなみを不安にさせるには十分だった。

「どうしたんですか。その、やっぱりリーザスは…。」
「ん、いや、……少し肌を触らせてもらうぞ。」
「な、なぜですか。」
「そのほうが、よく未来がみえるのだ!」
「うひゃあ!…な、なんで太ももなのよ。」
「そのほうが、よく未来がみえるのだ!」
「うっ…うう」

間違いなく、占いには関係ないだろうと思ったが、
そのことを告げて気分を害されても困る為かなみは
たえることにした。

少なくとも、男が言った事は当たっている。
気づかぬうちに、魔法で記憶を読まれたと言う可能性もあるが
それでも、この男に占ってもらうだけの価値はあるように思われた。

「みえてきた、みえてきたぞ~。」
「あ、あの。できるだけ早めにお願いします。」
「む、今のでみえなくなってしまったではないか、やり直しだ。」
「ひーん。」

体をまさぐられる事、数分。
この後かなみは、驚きの連発だった。

「ふむ、アイスと言う街で冒険者をやっている好青年、
 そして、ピンクの髪をした、俺様の奴…ごほっごほっ
 娘がみえる。お前が会おうとしているのは男のほうか……。」
(あ、あたってる。好青年は外れてるけど…)

「む、この青年は、既に剣を所持していないな。」
「え、どうしてですか。」
「さぁてな。その男の都合もあるだろう。」

「ふむ、……求めるは、混沌の力『カオス』か」
「ど、どうして…」
「カオス、危険な力だ。しかし、その男なら使いこなせるだろう、」
「……」

すでにかなみは、ダークの占いを信じるようになっていた。
人間、追い詰められているときは、多少胡散臭くとも信じてしまうものだ。

世の中において怪しい宗教が賑わっているのも、そのせいだろう。

「そうだな、いろいろと不安要素もあるだろうが
 おれからお前が会う男は、…此度の戦争で英雄となろう。」

「そ、それじゃあまさか。」
「うむ、リーザスは、その男の手により、開放されるであろう。」

・・・・・・

「あ、ありがとうございます。そ、その
  半信半疑だったんですけど、
 今では本当に予言が当たりそうな気がしてきました。」

「そうかそうか、そいつはなによりだ。では報酬をもらおうか。」
「え、報酬?ってまさか、」
「そういうことだ。まさか、ここまでして嫌とは言わないよな。」
「う、うう、わかったわよ。でもこんなところでは嫌よ。」
「う~む、しかたねぇな。」

(本当は、どことなくいじめてちゃんオーラ放ってるから
 強引にいきたいんだが、これから昔の俺様にいろいろひどい事される
 事を考えるとなぁ…
 今回に限りやさしくしてやるか。)

こうして、アイスの街のホテルで二人は結ばれましたとさ。

ちなみに、このときのエッチと、この時代のランスに無理やりされるエッチの
違いに、へたくそ、と思わず言葉が出、
この時代のランスに心の傷を負わせることに成功したと言う。


時は流れ、

リーザス解放戦争で見事勝利し、リーザス中が沸いた日
かなみは空を見上げて、こうつぶやいたと言う。

「ダーク、あなたの言ったとおりになったわ。
 貴方が本当にここまで未来を読めていたのかはわからない。
 けれどあなたの言葉があったから、くじけず頑張れたのだと
 そう思う。本当にありがとう。」


かなみはこのとき夢にも思わなかったろう。
『ダーク』が魔物軍と盗賊を率い
リーザスを攻め滅ぼしに来るなどとは…

LP3年、歴史が大きく変わろうとしていた。



[2262] Re[13]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/12 16:12
「ふん、気持ちよさそうに寝やがって…」

道中の疲れがでたのか、はたまた、アレの行為が激しかった為か、
すやすや裸で眠るかなみを一瞥し、

軽くシャワーを浴びたダークは、さっと体を拭くと、乱雑に脱いだ服に体を通す。


服装を整え、剣を腰に挿し、鏡に映る自分を確認。
うむ、一つ頷き、もう一度かなみを見、ダークは眉をひそめた。

「う~む、馬鹿とはいえ風邪引くかもしれねぇな?」

かなみを気遣い、投げるようにだが、毛布をかけてやる。
毛布をかぶせられても、起きる様子のない『かなみ』にダークはあきれた。

「これで、目を覚まさないなんて、忍者失格だな。」

今回の事件が無事終わり、再び会うことがあったら、自分が
かなみを鍛えてやろう、とダークは決めた。

武力では、『かなみ』とそう変わらないかもしれない。
技術では、むしろ『かなみ』の方が上だろう。

だが、心構えや、考えなど、教えるべき点はいくらでもある。

リーザスに忍者が一人しかいないというのも考えものだ。

戦争を望むのでなくとも、いや、そうであればこそ諜報部門は重要性を帯びる。
ヘルマンに多数『忍者』を潜入させていれば、今回の事件も事前に察知でき、
対抗策も練れたはずである。

リーザスはもっと忍者を増やすべきである。

JAPANの忍びを雇い寝首かかれる事を恐れるのであれば、
自国で育てるのも一つの手だ。

ともかく、今度の戦が一区切りついたら、
リーザスは他国に対して、早急な対策を打ち出すべきである。
さもないと、此度のようなことは往々にして起こるだろう。

再度の侵攻を懸念するダーク。ダークはリーザス王国に協力的である。

この世界ではないとはいえ、仮にも自分が治めた国である。
愛着があるというのもあるだろう。

だが、それだけではない。

当面、世界の中庸を求めるダークにとって、
現在の人間界三分割、リーザス、ヘルマン、ゼスの三カ国
に分かれいる状態は理想的といえる。

肥沃な土地、恵まれた環境などがある為、10年や20年すれば、
情勢も変わっていくかもしれないが、
三カ国最弱は、現状リーザスなのである。

そんなリーザスに、ダークがてこいれしようと考えるのは
至極当然のことであった。


毛布から浮き出るお尻を見
それに、くのいちの術も教えてやらねば、と生唾を飲み込むダーク。

耐え忍ぶ、かなみに、エッチな指導をしているところを
想像し、思わずにやける。

「ぐふふ、…おっといかんいかん。
 とっととこの街を出るか。俺様は偉大すぎるから、
 街に俺様がいるというだけで、
 失業者が減ったり、犯罪が減ったり、事件が解決したりと
 歴史が大きく変わってしまうからな。」

ダークは、かなみの荷物をあさり、黒い布を取り出す。

「おー、あったあった。あからさまに怪しいが。まだ夜も完全に明けてないし。
 この街にランスが二人いるよりはましだろ。」

そういい、顔を布でくるむ。

「がっはっはっは、似合ってるじゃねぇか。ダーク・ランス忍者バージョン。」

鏡に写る自分の姿を確認し、満足げに頷く、

「じゃあな、かなみ。……死ぬなよ。」

一言残し、ホテルを後にした。

………

空はしらけ始めていた。
賑わいを見せた夜の街も、今はなりを潜め、人通りもない。

ダークは少し懐かしげにあたりを見渡しながら街道を歩んでいた。

「さてさて。見慣れた景色見て感慨にふけってる場合じゃねぇな。
 とっととこの街を出て、『俺様軍』を早急に編成しなくてはな。」

『俺様軍』はどの国にも属さず、
普段何処にもその力を振るわず、均衡が崩れたときのみ、それを是正するため動く。

たとえば
この時代に『過去のランス』がいなかったら、『俺様軍』はリーザスを助けに向かっただろう。

(クジラが馬鹿やらかさないよう、俺様はこの世界を均衡に保つ)
 
ルドラサウムが嫌うのは一色に染まった世界、それを避けるべくダークは行動する。
実際のルドラサウムの趣向は少し違うかもしれない。

ジルの支配は1000年を超えたが、飽きられなかった。
その辺を煮詰めれば、新たな可能性もあろう。

だが、少なくとも、自分の統一により、起こった世界の崩壊をまのあたりにした
ダークはそう思っていた。

期限付きでダークは、ルドラサウムのご機嫌取りを買って出ようと言うのだ。
期限は、ダークがルドラサウムを越えるまで。

ルドラサウムは、いわば魂の集合体。
ならば、話は簡単だ。
ダークがルドラサウム以上の魂を集めればいいだけの事。

それだけで、ダークはルドラサウムを超え、ダークが新たな創造の神となる、


随分気の長ぇ話だが、俺様はあいつは滅すと決めている。

仕組みは既に整っている。
愚かにもルドラサウム自身がその法を己の身に行使した。

俺様の足掻く姿を見て楽しみたく、そんな『設定』を作り上げたんだろうが…、
俺様を甘く見すぎたようだな。
すでに、俺様は、テメェの目の留まるところにはいねぇ。

いなくても、まぁいいや、で済ますのだろう。
ルドラサウムにとって、遊びの一つが消えただけのこと。

テメェの敗因は、ただ一つ。
テメェの作り上げた世界を、生命を軽んじすぎたことだ。

「ちっ、むなくそわりい、またクソクジラのこと考えちまったぜ。
 いかんな。」

ダークは頭を振り、思考を戻す。

「クジラはまだまだ先のことだ。
 まずは『俺様軍』を編成。
 これから野にいる優れた人材でもスカウトしに行くか。
 このリーザス・ヘルマン戦争に関係ない人物で優れた人物、う~む。」


思い出深いアイスの街道を歩みながら、思考するダーク

よくよく考えたら、メナドを連れて来てもよかったなぁ、
などと今更ながら思う。

あの時は、偶然会っただけだし、
ハウレーンに的を絞っていたため考えもしなかったが、

鍛えれば使える、ハウレーンに勝るとも劣らない人材。
赤の副将の名は伊達ではない。

「せっかく助けてやったのだから、
 もっと恩を着せておいた方がよかったか?

『俺様が助けてやらなかったらお前は死んでいた。残りの人生は俺様の自由だ』

 とかいって強引にさらってくるべきだったか。
 女は強引さに弱いしな、う~む、これは失敗した。」

反省の色をみせるダーク。

だが、実際にそんなこと言われてもメナドは困惑するし、拒絶するだろうし。
無理やりさらわれれば、反抗もするだろう。

今回の出会いは、ダークの知る由もないが、
偶然にもメナドに好印象を持たせることに成功した。
いわばベストな出会いとなっていたのだ。

「まぁ、今更行ってもしょうがねぇか。
 あれ、そういえばキャンキャンは?ホテルの外で、待ってろっていったはずだが。
 …しかたねぇなぁ、街の中に遊びに行ったか、面倒なことにならなきゃいいが…」

さて、その件のきゃんきゃんはというと

「あそんであそんで~。」
「あ、あの。私。食事の下ごしらえをしなくちゃならないんですけど」
「いいよ、そんなことぉ、それより遊ぼう遊ぼうよぉ」
「な、なんで、女の子モンスターが家に…。」

裸にエプロンをつけたピンクのもこもこヘアー。
シィル・プラインの食事を作る邪魔をしていた。

見事に面倒なことになりそうである。



[2262] Re[14]:ダーク・ランス(いいかげん)
Name: ひから
Date: 2005/12/20 22:31
「あほかー!」
「きゃん!!」

ずかずかずか、とダークは家に押し入り、きゃんきゃんにげんこつを食らわす。

「馬鹿か!お前は。なんでよりによってここにいるんだ!」
「食べ物のいい匂いがしたから。」

頭にげんこつを食らい、涙目の癖に、Vサインを出すきゃんきゃん。
ダークはまさかの事態に重いため息をついた。

きゃんきゃんを探しがてら、ちゃんと昔の自分が存在しているか、
シィルが元気にやっているか、ちらっとだけ、家を覗いたダーク

そこに、きゃんきゃんがいたときには思わず、
盛大にずっこけてしまった。

ここで何かあったら確実に歴史が変わる。
当初の予定を変更して『かなみ』をここまで送ってやったのが
無駄になってしまう。

「とっとと出るぞ。」
「あ、あの~。」

視界に写るピンクの女の子。
戸惑いと怯えの様子を見せながら慎重に声をかけてくる。

「ひょ、ひょっとして、強盗の方ですか?」

なぜそうなる、と言いたかったが。
良く考えてみれば、勝手に家に押し入り、顔は
かなみから奪ってきた布で隠している。

確かにそう思われても仕方ない。
顔をさらしたほうが問題なのだが、強盗と勘違いされるのも問題だ。

さっさと誤解を解いて、さろうと思っていたダーク。
しかし、思わぬ伏兵がいた。
ランスの横の『きゃんきゃん』の目がキラーン、と光る。

「いや、そういう…」
「その通りだぁー!!私たちは強盗だぁ。
 動くと命がないぞぉ、死にたくなければ手を上げろぉ!!」

「や、やっぱりー、ひーん。」

『きゃんきゃん』の宣言に
涙目で、手を上げて降参ポーズをするシィル。

「あははは、動くと命はないぞぉ~それ~♪」
「あーれー。」

何処から取り出したか、手際よくロープでシィルを体中ぐるぐる巻きに縛る
きゃんきゃん。
ぐるぐる巻きにされたシィルは、バランスを崩し、
こてり、と倒れる。

「きゃは、きゃはははは。もう抵抗できないぞぉ。
 ダーク様は怖いぞぉ。強姦魔だぞぉ。性欲の権化だぞぉ。」
「…おい!」

きゃんきゃんは自分の首下に、冷たいものが当たるにあたって、冷や汗を浮かべる。
すでに首筋にはうっすら赤い線が入っている。

「あ、あは、あはは、なんか今日は、いつもより
 迫力があるよね。剣で突っ込むなんて、あは、あははは……。」
「…そうだな。」

本気だ!これ以上、何かやったら殺される。顔を青くさせ、
先程のシィルのように降参ポーズをとる『きゃんきゃん』

「あー、今のはただの冗談だ。俺たちは直ぐに…」
「ひっ、申し訳ありません。お金はないんですぅ。」

ダークのきゃんきゃんへの行為が、逆にシィルをびびらす事になる。
下手をしたら命をとられると思ったシィル
血相を変えて命乞いをする。

「いや、あのな。」
「あの、家にあるもなら何でもとっていいですから、どうか命だけは…。」
「だから話を…。」
「ほんとに、ほんとにお金ないんです~」
「ちょっと」
「信じて、信じてくださぁ~い。お願いしますぅ~。」
「話を聞……」
「ランス様が、ランス様が働かないから、私の内職だけでは…」

ぷちっ、ダークが切れた。

「おい、こらテメェ。シィル。人の話はしっかりと聞いとけよ。」
「ひぃぃぃぃ。わか、わかりま……。」
「あぁ?わかってねぇじゃねぇか!てめぇ!奴隷の癖に、」
「ごめ、ごめんなさい。ひ、ひぃ。」
「俺様が働かないだと~。」
「ちっ、違います違います、働かないのはランス様ですぅ~。」
「俺様のことじゃねぇか!お仕置きだ~。」
「ひ~ん」

縛られ、もぞもぞと動いているシィルをぐりぐりと足蹴にする。

「いたいいたいです~。」

シィルの上に馬乗りになり、お尻と胸をもみしだく。

「あ、ああん。ああん。許してくださぁい。強盗様~」

「きゃははは、性欲の権化ダーク様、御降臨~。」
「はっ、いかん、いかん。こんなことやっている場合ではない。」

楽しそうなきゃんきゃんの声でダークがわれに返る。

涙で頬をぬらし。ランス様~と、か弱い悲鳴を上げるシィル。

…本当に襲っちまおうかな、
おどおどびくびくしているシィルを見。股間がうずきだしたダーク。

偶然、その股間のふくらみをみてしまったシィル恐怖で顔をゆがませる。

「ふん別に俺様はただ、こいつがいたから連れ戻しにこの家に入っただけだ。
 別に強盗でもなければ、強姦魔でもない。」

きゃんきゃんを指差し害を与える気がないことを宣言する。

「ほれ、『きゃんきゃん』不法侵入した事を謝れ。」
「あはは、ごめんなさい、おねぇさん。どうもダーク様虫の居所が悪くって、
 ダーク様に代わって謝るよ。」
「は、はぁ。」

ロープで縛り、足蹴にし、体をまさぐるった男。
今更、他意はないと言われたとて信じられるわけがないと思うのだが…。

「なんで俺様のかわりなんだ。まぁ、いい。
 これ以上いると、なんだかやばいことになりそうだと
 俺様の灰色の脳細胞が告げているからな。
 とっととずらかるぞ。」
「あははは、まったねぇ、おねぇさん。」

ロープで縛られたシィルをおいて去る二人。
なんだったんだろう、あの人達、と思いをめぐらすまもなく
直ぐ後、シィルの後ろから声が聞こえる。

「おいシィル。なんだか騒がしいようだが、なんかあったのか~。」
「……さぁ、なんなんでしょう。」
「あっ、おい、こら飯がまだできてないじゃないか。
 今日は久々に朝早く飯が食べたいといっといたはずだぞ。」
「ご、ごめんなさい、ランス様。ですが、縄で縛られて動けないんですぅ。」
「何を一人で遊んでいるか。ええい、言い訳はいいお仕置きだ~。」
「きゃあぁああああ」

間一髪だった。

………

「ねぇ、ダーク様。」
「なんだ?」

「さっきの娘とダーク様って知り合い?」
「なぜそう思う。」

「なんとなく。」
「…どうかな。」

「ふーん。…なんかおもしろくない。」
「知るか。」

こうして、なんとか、此度のリーザスのごたごたを
避けることに成功したダーク。

「ダーク様、あのお城で何する気だったの?」
「『ハウレーン』って女の救出さ。いったろ?
 まぁごたごたのせいで、俺様がかっこよく助けるはずが、
 『やもりん』と『セクシーナイト』に任せることになっちまったがな。」

「本当?本当にそれだけ?」
「ほかに何があるってんだ?」

「別に…。」
「今日のお前、なんか変だぞ。」

首をかしげるダーク。

「それで、これから何をするの?」
「そうだな。仲間を集めるか。人間でも魔物でも俺様に忠誠を誓う奴なら
 問題はない。」

「いよいよ。だね。」
「ああ、しっかりついてこいよ。お前は俺様の使徒第一号だからな。」

「きゃはは、てれちゃうよ。楽しく楽しく世界征服しようねぇ。」
「征服じゃない。何度行ったらわかるんだ。お仕置きするぞ。」

「やめてー、あは、あははははは♪」

歴史が、変わろうとしていた。


ダ~クランス(いいかげん)~fin~

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
一応ここで話は終わりですが。まだ読んでやろうという
太っ腹な方は、『その他』でこの続き、鬼畜王編を
スタートさせてますので、よろしくお願いします。

ただ、鬼畜王編は、途中で放置になる可能性が高いです。

このいいかげんな文章を最後まで読まれた『強者』である
貴方様なら大丈夫かと思われますが、くれぐれも
過分な期待せずに読んで頂ける事を願います。

批判覚悟で、てけと~に更新していきます。いい加減万歳!

追記

…ついでに、最後まで読んでくれた稀有な方、
自分の好きなキャラを感想にちょっと記していただきたい。

登場するかもしれません、というかするでしょう、きっと
…私が知っていうキャラならですが
(ゾーン意外と狭いです。すんません)
登場のさせ方等参考程度に軽く書いていただけるともっと助かります。

話の展開詰まりそうなので、…どうぞよろしく。


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