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[25606] [ネタ]ある魔法先生の手記:(ネギま)おまけその6アップ
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/26 02:55
 これはアンチ物であり、勘違い物です。
 ネギまの設定を見てこのような事も起こりうるというIFの話です。
 できるだけ無理のない展開にするつもりですが、アンチという性質から話が会わない人が出るかもしれません。
 できるだけ不快はないよにしたいと思いますが限界はあり、不快に思う方がいるかもしれません。
 その時は失礼を。
 ではお楽しみください。



[25606] [ネタ]ある魔法先生の手記(ネギま)前編
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/24 03:06
ある魔法使いの手記:



○年×月△日

 ネギ先生が魔法世界より帰ってきた。
 それも『完全なる世界』の野望を阻止し、魔法世界を救う方法を考えたというのだから驚きだ。
 さすが、英雄ナギ・スプリングフィールドの息子だ。
 英雄の息子はまた英雄なのだ。
 ・・・・・・・その事は素晴らしいことであり、何も問題は無いはずなのだけど、魔法世界から帰ってきたネギ先生は何だかおかしい。
 いや、出かける前は子供らしい微笑ましい言動があったのだが、帰ってきてからその言動が強引というか、人の主張よりも自分の主張を強調して、相手の話を聞かないというか。
 やはり、英雄ともなればああいう風になるものなのだろうか?
 ネギ先生を称える先生や生徒を見ながら疑問に思う。




○年×月△日

 大変なことが起きた。
 ネギ先生の魔法が暴走して、闇が生徒を食らったのだ。
 実際に生徒を食べたのではなく、生命力というか魔力というか生きるのに必要な力を飲み込んでしまったのだ。
 これには学園中が大騒ぎになった。
 恐慌状態の私たちに学園長が説明した。
 ネギ君は魔法世界の『完全なる世界』に対抗するために、このよう危険な魔法を修得せねばならなかったらしい。
 それは何と痛ましく立派なことだろう。
 私はネギ君の覚悟に涙した。

 「学園長。闇の魔法を教えたのは誰なのですか?」

 ガンドルフィーニ先生が学園長に問いかけた。

 「うむ。ラカン経由でエヴァの教えらしい。」

 「なっ!? やっぱり闇の福音が!!!」

 その言葉に驚いた。
 いや、闇の福音がネギ君の師匠と言う事は知っていたが、そこまで頭が回らなかったのだ。
 ガンドルフィーニ先生が学園長に突っかかる。
 やはり、あれは危険だの。
 今回の事件でその危険性ははっきりしただの。
 しかし、学園長はネギ君を教えるのに最適な師匠がエヴァであり、実際、彼女の教えがなければ『完全なる世界』とやりあう事などできなかっただろうと。
 それでも、ガンドルフィーニ先生は反論していたが、学園長は取り合わなかった。
 私はその態度を見て疑問に思う。
 力は大切ではあるが、その力を振るう者の良識はそれ以上に大切なのではないかと。
 もやもやする気持ちを抱えながら、集会の場を後にしたのだった。





○年×月△日

 「野沢先生。ちょっといいですか?」

 物理の田村先生が話しかけてきた。
 この先生は普通の先生とは違う魔法先生だ。
 先日の集会にも一緒に出ていた。
 ちょっとした事で飲みにいく飲み友達だ。

 「何ですか?」

 「ここではちょっと。場所を移して良いですか?」

 田村先生の言葉に場所を移した。
 田村先生は一言二言呟くと、結界を張った。
 その事に驚愕する。
 一体、何事だろう?

 「先日の一件どう思います?」

 痛いところをついてきた。
 先日の一件は関係者の頭をいじくり、普通の事故として処理したのだ。
 正直、教育者として色々と思う所はあるが、魔法使いとしての自分を優先して誤魔化していた。
 あまり、話題にしたくない話だ。

 「事故として処理されたのでしょう。蒸し返すのですか?」

 「本当にそれでいいと思っているのですか?
  先生として、立派な魔法使いを目指すものとして。」

 痛いところにジャストミート。
 私は何も言い返せなかった。

 「ふう。
  確かに、あの件はどうしようもなかった。
  ネギ君のためにも、魔法の秘匿のためにも。
  しかし、それで本当にいいんですか?
  私はネギ君の問題は解決していないと思っています。
  原因がまったく解消されていないのに、問題が再度起きないはずがないと考えています。」

 「原因?」
  
 「そうです。
  今回の事件は何故起こったのでしょうか?
  私は闇の福音がネギ君の師匠であるから起こったことだと考えています。」

 田村先生は闇の福音が今回の人死にの原因だという。
 それは私も思っていた。
 大体、おかしくないだろうか?
 ここは関東の魔法使いの拠点だ。
 ネギ君を教えるのに適した人材などごまんといる。
 仮に力が足りないというならば、本国から修行のための人材を派遣してもらったらいい。
 なのに、なぜ、ネギ君の師匠は犯罪者なのだ?
 英雄ナギによって封印された邪悪な吸血鬼を師匠とする。
 それも多感な10歳の子供だ。
 どれだけ悪影響があるか想像することすらたやすい。 
 魔法を使うまでもない。
 師匠として弟子の心構えを教えるとして洗脳すれば、10歳の子供に事の善悪など分かるまい。
 容易く染まるだけだ。
 それがどうして分からない?

 「魔法使いなら子供すら恐れる最悪の魔法使いで真祖の吸血鬼。
  どうしてこんなのがネギ君の師匠なのでしょうか?
  生きるために人の生き血をすすり、退治しようとした人間を片っ端から血祭りにし、自ら悪を名乗る物。
  そんな者を師匠にしたら力こそ最上。
  常識など関係あるか。
  私に文句があるなら殺してみろ。
  となっても不思議はありません。」

 「それは私も思っていた。
  闇の福音に師事してから、ネギ君の言動に強引さが増えているように思える。
  実際、修行を優先して会議で寝不足というか疲れ手気味で聞いていないことも何度もあったし。」

 「そうでしょう。
  そうでしょう。
  闇の福音に師事してから、明かに力を偏重している姿が見られます。
  私はそれを危惧しているのです。」

 「しかし、そうならないように学園長は手を打っているのでは?」

 私の言葉に田村先生は沈黙した。
 どうしたのだろうか?
 学園長は私たちのトップだ。
 私たちの危惧くらいは察して手を打っているだろう。

 「本当に、学園長は手を打っているでしょうか?」

 「はあっ!?」

 私は耳を疑った。
 学園長が手を打っていない!?
 それはありえない。

 「私は疑問に思っているのです。
  そう、それはネギ君の初日の行動から始まっています。」

 何と!?
 ネギ君が来たときから?
 そんな昔から何を怪しいと思っていたのか。

 「覚えていますか?
  ネギ君が初日に魔法を使い、それによって少女を助けたものの。
  神楽坂君に魔法がばれた事を。」

 「ええ、ですが。
  学園長が手出し無用。
  対策は自ら取ると言われていましたが。」

 「そうです。
  初日から一般人に魔法バレ。
  本来なら、試験そのものを失敗とするもので、仮に処置がそれでは重いと加減しても、本人に厳重注意を行い。
  二度とそのような事をしないように指導します。」

 「確かに。
  おかしいとは思いましたが、英雄の息子ですから手加減したのでは?」

 「明かに手加減の枠を逸脱しております。
  聞いておられるでしょう?
  高畑先生への読心の魔法の一般人の前での行使。
  ほれ薬の作成、使用。
  オコジョの犯罪者がネギ君に近づいても手を打たない。
  そのオコジョによるネギ君の生徒を従者にするパクティオーを無視する。
  これは教育者としても魔法使いとしても人の道に外れておりませんか?」

 「それは・・・・・・・・。」

 私は絶句した。
 薄々疑問を抱いていたが、こうも並べられると明かに胡散臭い。
 学園長は一体何を考えておられるのか。

 「そこで一つ怖ろしい仮定を導き出したんです。
  考えすぎと笑ってくれてもかまいません。
  聞いていただけますか?」

 「分かりました。
  教えてください。」

 私は真剣に田村先生を見つめた。
 田村先生もそれに負けないくらい真剣に見返している。

 「学園長は・・・・・学園長は・・・・・・すでに、自我を失っているのでは?
  闇の福音によって操られる操り人形ではないのか?
  それが仮定として考えたことです。」

 「何と・・・・・それは。」

 普段ならそんな馬鹿なことと笑い飛ばすことだというのに、私は笑い飛ばすことが出来なかった。



続きますw



[25606] ある魔法先生の手記 中篇
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/24 04:00
ある魔法先生の手記:中篇


○年×月△日

 「ふう。」

 私はため息を付きながらベッドに腰掛けた。
 出てきたため息には深い憂慮がこめられていた。
 それほど、田村先生の話は悩ましい物であった。
 聞き流すことなど決して出来ないほどに。





 「大体、ナギ・スプリングフィールドによる登校地獄は闇の福音を完全に無力化できているのでしょうか?」

 田村先生が目を血走らせながらこっちを睨み付けてきた。

 「英雄であるし、その魔力量は膨大。
  闇の福音の魔力を完全に封じたとしても不思議はありませんが。」

 「英雄。
  確かに英雄です。
  しかし、彼が息子のネギ君が卒業した学校すら中退していたのをご存知か?」

 「え?」

 私は呆然となった。
 ナギ・スプリングフィールドが中退者?
 あの英雄が!!!?

 「ナギ・スプリングフィールドはサウザンドマスターと呼ばれ、魔法の達人のように思われています。
  しかし、実際に記録を調べてみたらアンチョコがなければ魔法を使えず、戦場ですらアンチョコを見ながら魔法を唱えていたそうです。
  そのような魔法の素人が唱えた登校地獄が、600年の歳月を生き、最強の魔法使いを名乗る吸血鬼を完全に封じ込めるようなことができるのでしょうか?
  私は・・・・・私は・・・・・・そう思えないのです。」

 「・・・・・・・・・・・・・・。」

 何もいえなかった。
 あまりにも衝撃的な事実。

 「・・・・・・・しかし、戦場では英雄であり、幾多の敵を倒してきたのではないのですか?
  サーガには造物主すら英雄ナギが倒したとか。」

 「貴方も知っていると思いますが、戦場で強い者が魔法の達人であるとは限らないのですよ?」

 「それは・・・・。」

 その言葉に深く納得する。
 私は学生時代を思い出していた。
 私よりも成績が悪く、実技の成績もそれほどではないのに、やたらと強く模擬戦ではいつも負かされていた友人の姿を。

 「闇の福音。
  ナギ・スプリングフィールドの魔法と学園結界が作用して、ほとんど無力になっているといいます。
  ですが、本当にそうなのでしょうか?
  600年もの間、吸血鬼として追われっぱなしの生活をしていながらこうして健在であり、600万ドルの賞金首となりながらもその首はいまだに繋がっている。
  闇の福音とは私が子供の頃から知っている魔法使いです。
  悪いことをするたびに闇の福音がやってくるぞと脅されました。
  闇の福音・不死の魔法使い・悪しき音信・禍音の使徒・童姿の闇の王・人形遣い。
  どれもこれもあの闇の福音を表す怖ろしき二つ名。
  そう、私は怖ろしいのです。
  あの魔法使いがここにいるという事実が。」

 田村先生はワナワナと震えその言葉を吐き出した。
 私はその恐れに共感した。
 当たり前だ。
 誰が御伽噺の悪い魔法使いといて、恐れないはずがあるものか。
 赴任して一番驚いたのは図書館島でもなく、世界樹でもない。
 あの闇の福音が生徒としてすぐそばに存在する事だった。
 もし、あの福音が力を取り戻したら?
 そして、封印の恨みを晴らすために学園を殲滅する事を実行したら?
 ガクガクガクブルブルブル。
 身体が自然に震えだした。
 ああ、そうだ。
 私も田村先生と一緒だ。
 怖いのだ
 力というならナギ達英雄も私たちを一瞬で滅ぼすくらいの力があるだろう。
 しかし、ナギ達が近くに居ても嬉しいと思えど、決して恐れたりはしない。
 同じ最強と呼ばれたものでも、闇の福音だから怖ろしいのだ。
 あの人外の化け物が。

 「ナギ・スプリングフィールドの登校地獄があの闇の福音を完全に封印しているのなら問題ありません。
  しかし、封印されているのが擬態なら?
  普通の者が行ったなら、闇の福音を封印したなど、笑い話にしかならないでしょう。
  しかし、英雄なら、世界を救った英雄ならどうです?
  闇の福音を封印しても誰も疑問に思わない。
  あの吸血鬼が私たちにそう思わせているのだとしたら?」

 「考えすぎではないのですか?」

 恐怖を共感しておきながらも反論する。
 そうだ。
 そんな事実はいらない。
 闇の福音が実は自由になっているなど。

 「考えすぎならいいのです。
  ですが、考えてください。
  魔法は秘匿される物。
  それは私たちの常識です。
  決して一般人に迷惑をかけない。
  魔法使いとしての基本的な心得です。
  なのに、ネギ君の状況はどうですか?
  秘匿はちゃんと出来ていますか?
  一般人に迷惑をかけない、これを彼は守っておりますか?」

 「それは・・・・・。」

 私は何もいえない。
 当たり前だろう。
 彼はあまりにも魔法使いの掟を破りすぎる。
 それは異常と言っても過言では無いほどだ。
 だが、魔法使いの村で生まれ、魔法使いの学校で育った子供だ。
 そうなるのもある意味当たり前であり、それを是正するのが年長者の義務であるはず。

 「そう、彼は魔法使いとして未熟すぎる。
  ですが、子供なのだから仕方がない。
  問題は私達魔法先生の方です。
  子供が間違ったら叱る。
  こんな簡単な事がネギ先生にできていますか?」

 「確かに・・・・・・・。」

 否定できない。
 何度も注意しようとは思った。
 だが、学園長の言葉が邪魔をする。
 ネギ君の修行なのだから、決して、魔法先生だと知られてはいけないと。
 魔法について指摘しようと考えているのに、魔法先生と知られてはいけない。
 どうやって指導しろと?
 
 「気づきませんか?
  ネギ君の状況を。
  力を求めるように明らかに誘導されている。
  3-Aの生徒達は明かに異常です。
  あまりにも戦闘能力や特殊技能の保持者が多い。
  秘匿についてまったく注意せず、ネギ君が魔法使いだと知る生徒がドンドン増えていても注意すらされません。
  そして、犯罪者であるオコジョが仮契約をしても、何も手を打たない。
  これを見ればあのクラスの目的は簡単に推測できます。
  あのクラスはネギ君の従者候補のために作られたクラスです。」

 「馬鹿な。
  貴方は学園長が。
  教育者としての長が。
  生徒をネギ君の生贄にしているとでも言うのですか?」

 それだけは認められなかった。
 教育者として、立派な魔法使いを目指すものとして。

 「あのクラスの編成は学園長が関与しています。
  私は教育者としての学園長を信じております。
  英雄を作るための生贄に生徒をする事はないと。」

 「貴方の言葉は矛盾している。
  教育者として生徒を生贄にしないと良いながら、実際にはしていると言う。
  何が言いたいのですか!?」

 「だからです。
  だから言うのです。
  学園長はクグツであると、すでに闇の福音の言いなりなのだと。」

 がーーーーんと頭を殴られたようなショックを受けた。
 今までの生涯で感じたことがないほどの衝撃だった。
 
 「今のネギ先生の周辺は明らかに力をつける事が優先されている。
  従者を作りやすいように魔法の秘匿を軽視する。
  犯罪者のオコジョが無断でパクティオーをするのを黙認する。
  そして・・・・・・そして・・・・・・ネギ君を狙ってあのような騒ぎを起こした犯罪者をとうとうネギ君の師匠としてしまった。
  これは・・・・・・これは・・・・・・・何者かの意思が介在されていないのでしょうか?
  本当に偶然だと?」

 「それは・・・・・・。」

 どう見ても何者かの思惑によってネギ君は動かされていた。
 それはただの魔法先生の私でも感じることのできるレベルの話だ。

 「狙われた被害者が自ら、加害者に弟子入りする。
  こんな不自然な話がありますか?
  貴方ならどうです?
  父親のせいで命すら狙われて戦いになった相手に、人外の化け物で犯罪者に師匠になってくれとお願いしますか?
  そのような事できますか!!!!!?」

 確かに不自然だ。
 これも誰かによる誘導があったとしか思えない。
 
 「闇の福音は学園長を操ることでまんまとネギ先生の師匠となりました。
  私はそう思っています。」

 「だが、どうしてネギ君を。」

 私を見る眼差しに呆れたような気持ちが込められた。
 正直、嬉しくはない。

 「英雄ナギ・スプリングフィールドの息子ですよ。
  その価値はとんでもない物があるでしょう。
  人質にするなり何なりできる。
  また、今回の活躍を見ればネギ先生は英雄になりうる力を持っていることが分かります。
  闇の福音からすれば始めてみた時からその才能を見出したのでしょう。
  そう、その手に入れたいと思わせるほどに。
  長話をしましたね。
  失礼しました。
  また職員会議で会いましょう。」

 「待ってください。
  何故その話を私に話したのです?
  貴方は一体何をするつもりなのです?」

 去ろうとしたその背中に話しかけた。
 田村先生は振り向くと私にぼそっと呟く。

 「私はこの学園を愛してます。
  それを汚らわしい人外によって汚されることなど許せない。
  その為にならどんな事もするつもりです。
  ではまた。」

 そう言って今度こそこちらも見ずに歩いていく。
 私はその背中をじっと見送るしかなかった。






 「ふう。」
 再びため息をついた。
 田村先生は命がけでこの学園の膿を出すつもりのようだ。
 私に話したのもその為の策の一つだろう。
 さて、私はどうするべきか。
 ベッドに寝転び、天井を見ながら考えた。



続きますw



[25606] ある魔法先生の手記:後編その1
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/24 03:46
ある魔法先生の手記:後編その1



○年×月△日


 田村先生の話を聞き、私は彼に協力することにした。
 闇の福音は恐ろしい。
 封印が解けており、私がネギ君達を守ろうと動けば、恐らく消されるであろう。
 しかし、これでも先生であり、立派な魔法使いを目指すものだ。
 恐るべき陰謀が行われているのならば、この身を犠牲にしようと阻止しなければいけない。
 田村先生がどうして協力するのかと聞いたときにこう返した。

 「ありがとうございます。」

 彼はただそういっただけであった。
 泣きそうな顔で顔中をクシャクシャにしながら。





○年×月△日

 職員会議が始まった。
 ネギ君は生徒を傷つけたことがショックだったのだろう。
 いまだに職に復帰してはいない。
 これ幸いとガンドルフィーニ先生や田村先生が、学園長に要求を突きつけている。

 「闇の福音の師としての適正に問題がある事は、この間の事件によって証明されました。
  即刻、師を解任し、新しい師匠をあてがいましょう。」

 「生徒でパクティオーを結んだ数がもはや異常です。
  本来、パクティオーはパートナーとなるべきものを決めて、その相手と結ぶ物です。
  魔法がばれたからとほいほい結んで良い物ではありません。」

 「ネギ先生に直接の指導を。
  明かに先生としても魔法先生としても未熟です。
  間違っているなら、それを正す。
  そうするためにも、魔法先生としての正体を晒してはいけないとの制限を撤回してして頂きたい。」

 それらの正論を私は黙って聞いていた。
 何も言わない。
 いや、言えないのだ。
 私もガンドルフィーニ先生や田村先生に交ざって言いたいことがあった。
 しかし、そんな私に田村先生やガンドルフィーニ先生は諭した。

 「闇の福音が完全に封印されていて、学園長が操られていないのならば問題はない。
  だけど、そうでなかったら?」

 「そうです。
  いくら言おうと学園長の態度は変わることはないでしょう。
  闇の福音のドールに正論をいくら言おうが。
  そうなるといった私たちはどうなります?
  問題が無ければ放置。
  だが、問題だと闇の福音が判断したら?」

 その言葉にはっとした。
 あの悪の魔法使いが邪魔だと判断した人間を放置する?
 馬鹿なありえない。

 「わかっていただけたようですね。
  その時は何か理由をつけて排除にかかるでしょう。
  その時の被害は少ない方がいい。
  例え、高畑先生のような例外を除いてほとんどの先生が私達と志を同じくしようが、闇の福音の危険に晒されるのは少ない方がいい。」

 ガンドルフィーニ先生と田村先生は殺される可能性すらある事を承知で要求するつもりなのか。
 その覚悟に胸が熱くなった。

 「まあ、私たちもただでやられるつもりはないがね。」

 ガンドルフィーニ先生が男前に微笑んだ。
 そうだ。
 まだ始まったばかりだ。
 例え、誰が犠牲になろうとわたし達は学園を守らないといけない。
 でなければ何のための先生か。
 私は気合を入れなおした。

 「何故です!?
  今度の事故は明かにエヴァの指導が危険な物だと証明した。
  危険だと分かっているのにネギ君や生徒達を福音に預けっぱなしにするのですか。」

 「何度も言っておるが、これは学園長としての決定じゃ。
  反論は許さん。」

 「学園長。」

 駄目だ。
 何を言っても通じない。
 二人の顔が絶望に沈む。
 いや、二人だけでないこの場にいる高畑先生以外の魔法先生の顔には全員それが浮かんでいる。

 「では魔法職員会議を終わる。
  次は一般の職員会議じゃな。
  言ったとおりネギ君はエヴァに任せたまえ、悪いようにはせん。」

 「学園長。
  私達は諦めませんよ。
  生徒の未来を守ってこその先生です。」

 「ふう。
  忠告はしたぞい。
  くれぐれもエヴァに手を出して事情を拗らせるようなことはせんようにな。
  頼んだぞ。」

 フォっフォっフォと笑っている。
 こちらが真剣に意見しているのにその態度か。
 すまし顔を殴りつけたくて仕方ない。
 そう思っているのは私だけでなく、例外を除いた全員に苛立ちが浮かんでいた。




○年×月△日

 「えっ!?
  今何と言いました?」

 「学園長に言ってもどうにもならないと判断したガンドルフィーニ先生と田村先生が直接闇の福音に交渉に向かったそうです。
  交渉は決裂し、ネギ君たちを保護しようと闇の福音の別荘を襲い、返り討ちにあったという話です。」

 「それは本当にガンドルフィーニ先生達が襲い掛かったのですか?」

 「闇の福音の言うとおりならその通りですが。
  だが、かなりの重症をおい、意識不明の状態の彼らには反論はできないから、闇の福音が言っていることが正しいかは分かりません。」

 その情報に愕然とした。
 やはり闇の福音に直接物を言うなど、無謀であったか。
 しかし、これ以上ネギ君たちを闇の福音の好きにさせるわけには・・・・・。
 あれから連日のように学園長に直訴していた二人は、焦ったのであろう。
 直接、エヴァに交渉に行くと言って、闇の福音の家に向かった。
 その結果がこれとは・・・。
 やはり、闇の福音は信用できない。
 また、学園長も闇の福音の人形だと判断するしかなさそうだ。

 「これからどするんですか?
  学園長は聞く耳を持たない。
  いえ、自分で判断ができなくなっているのかも?
  闇の福音との交渉も決裂し、ネギ先生たちは今どうなっているのか。」

 深山先生が目に涙を浮かべてネギ君たちを心配している。
 私は二人が怪我したと驚いてはいたが、意外には思っていない。
 ネギ君たちを手に入れようとしている闇の福音から見て、あの二人は邪魔者だ。
 こうなるだろうと予測していたし、二人も覚悟していた。
 そして、今回の事で私も覚悟を決めた。
 パソコンを立ち上げバチカンに連絡を入れる。
 
 「これは?」

 「バチカンの対吸血鬼の専門家。
  聖なる十字騎士団(クルセイダー)です。
  吸血鬼を倒すためなら、何でもする性質があるので躊躇っていたのですが、もはや猶予はありません。
  本来なら私たちこそが直接闇の福音に立ち向かうべきでしょう。
  ですが、力の差は歴然です。
  ですから、本当に悔しいのですが、専門家に協力を要請します。
  今のネギ君の周りの状況。
  学園長が闇の福音の操り人形になっている可能性が高いこと。
  ネギ君が闇の福音の僕として狙われていること。
  このファイルに載せた全てを知らせます。
  頼む。
  助けに来てくれ。」

 「野沢先生。」

 私は祈りを込めて転送した。
 幸いにも魔法先生のほとんどはこっちの味方だ。
 そして、全員が闇の福音相手に勝てるとは思っていない。
 玉砕では駄目なのだ。
 この学園とネギ君の将来を闇の福音に支配されるわけにはいかない。
 必勝でないと!!!

 「野沢先生!
  返事が。」

 ある意味返事が返ってくるのは当たり前なのだが、深山先生もテンパッているのだろう。
 メールが帰ってきただけで興奮に声を上げた。
 そこには・・・・・・。

 『貴君の情報はかなり重要であり、もはや一刻の猶予も無く邪悪な真祖を退治する必要があると判断した。
  とはいえ、こちらもすぐには状況に対応できず準備も必要だ。
  そちらの情報の詳細を望む。』

 「やった。やったぞ。
  はははははははは。
  来るんだ。
  助けに来てくれるんだ。」

 「うわああああああん。
  来るんですね。
  闇の魔法使いの恐怖に震える私達を助けに。」

 二人で抱き合って喜んだ。
 女性に抱きついたのは後から思えば問題だったと思ったが、今は歓喜でそれどころではない。
 
 「すぐに皆に知らせます。」

 「待った。」

 飛び出して行きそうな深山先生を制した。

 「この知らせが闇の福音に届いたら、何が起こるか分からない。
  ネギ君を守るためにも、一般人の犠牲者を出さないためにも、私達が勝利するためにもこの情報は秘密だ。
  学園長は元より、高畑先生や反対派の人間には決して漏らさないように慎重にだ。」

 「分かりました。
  慎重に伝えます。
  この情報が命綱であると。」

 そう言って彼女は部屋を出て行った。
 私はマホラの情報を伝える。
 警備の情報から、魔法先生や生徒の行動、高畑の出張や勤務、学園長のスケジュールなど、決してもらしてはならない情報の数々を流す。
 全ては闇の福音を滅ぼすために。


続きますw
 
  
    
 
  






[25606] ある魔法先生の手記:後編その2
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/24 16:36
ある魔法先生の手記:後編その2


○年×月△日

 クルセイダーとの話し合いは呆れるくらい簡単に終わった。
 英雄に封印された吸血鬼が学園と英雄の息子を狙っているという荒唐無稽な話でありながら疑う事無く、全力でその野望を砕くために力を貸してくれると言う。
 涙が出そうなくらいありがたい話だった。
 それだけネギ君の周りの状況は異常であると、誰が見ても明白な事なんだと改めて認識した。
 だからこそ誓う。
 闇の福音よ。
 この学園都市もネギ君もお前の好きにはさせない。
 命を懸けてだ。
 情報を送ったクルセイダーからの指示は、さらに詳しい情報と闇の福音を始末するために使う罠の設置だった。
 これはかなり困難を極めた。
 なにせ闇の福音の情報の収集など、命がけで行ってもまだ足りず、相手に悟られずに行わないといけないのだ。
 600年を生きて用心深いの上に慎重を重ねたような大妖怪に悟られないのはどれほどの難事か。
 それでも、魔法先生は誰もがその任務に志願した。
 それを見て胸が熱くなる。
 闇の福音よ。
 お前は確かに最強だろう。
 私たちなど塵のようにしか見えないだろう。
 だが、その塵芥にも誇りはあるのだ。
 お前の力にも恐怖にも、私達魔法先生は誰も屈しない。
 そして、必ずこの学園をお前の毒牙から開放してみせる。




○年×月△日

 この日は闇の福音の家に情報端末を設置する作業を行った。
 隠密行動に長けている魔法先生がそれを行った。
 クルセイダーはメールによる指示だけだ。
 これは仕方ない。
 彼らが動くと闇の福音に彼らの存在を教える可能性がある。
 もし、見つかっても私達だけなら、まだ誤魔化しも効く。
 私達だけで行わないといけない。
 それでも彼らは吸血鬼退治の専門家だけはあった。
 その指示は的確であり、渡された諜報道具に唸らされた。
 私達だけではこれらを設置することなど出来なかっただろう。
 だが、設置は無事に行われ、吸血鬼のさらなる詳細な情報を得ることができるようになったのだ。

 「家の中でも、尻尾は出さないんですね。」

 「ああ、それだけ用心深いのか。
  さすが、600年を生きた吸血鬼だ。
  考えたくは無いが、情報端末の存在に気が付いており、演技している可能性もある。」

 「私達のしたことを知っているのですか!?」

 「相手はあの闇の福音だ。
  クルセイダーが吸血鬼を知るように、闇の福音がクルセイダーの打つ手を熟知していて不思議はあるか?」

 「闇の福音。
  どこまで怖ろしいのでしょう。」

 「ああ。
  その怖ろしい相手に私達は挑まなければならない。
  決して負けられない戦いを。」

 震える手に力を入れながら、ささやくように呟いた。





○年×月△日

 この日はマホラにある教会に聖なる結界を張る準備をした。
 これは数日かかった。
 何せ、この教会の内部を完全なる神の空間へと繋ぎ、邪悪な魔法を一切使用できないようにしなければならない。
 まだ準備段階だと言うのに、教会は聖なる力に満たされた。
 その神々しい力に私は涙した。
 ふと、隣りの深山先生を見ると同じように、頬に流れる涙が見えた。
 
 「この神の力が私たちの希望なんですね。」

 「そうだ。
  神よ。
  私達に力を貸してください。
  邪悪な吸血鬼を倒して、学園に平和を。」

 「「アーメン。」」

 私達は祈った。
 神よ、最悪、私達魔法先生は全滅してもいい。
 だから、せめて、生徒達だけでも貴方の慈悲によってお救い下さい。





○年×月△日

 いよいよ決行の日となった。
 決行は高畑先生が出張に出た日に行われることになった。
 海外にいるクルセイダーが高畑先生の帰国の妨害(転移符など)をすることになっている。
 学園長はクルセイダーの高位者数人によって結界に閉じ込め、反対派の先生達はクルセイダーと私達で無効化。
 無関係の生徒は守りと眠りの結界で保護した後、吸血鬼が別荘から出てきた時点で教会に転移。
 洗脳を受けているだろうネギ君とその従者をクルセイダーが抑えることになった。
 私は無理を言って教会を担当させてもらった。
 クルセイダーは私が呼んだのだ。
 その結果どうなるかを見届けなければなるまい。
 戦闘で足手まといになるとクルセイダーに言われたが、見届け人に徹すると説得し受け入れられた。

 「いよいよ、作戦開始ですね。」

 「ああ。
  これで学園都市は救われ、正常に戻る。」

 「ネギ君達は大丈夫でしょうか?」

 「力こそが最上であると洗脳されている気配がある。
  だが、幸いにして魔法や薬による物ではないようだ。
  健康診断と偽った検査でそれは判明している。
  何、根気良く教育していけば元に戻るさ。
  たちの悪いカルト教会の洗脳のような物。
  ゆっくりと治せば良い。
  それこそ、何年かかっても。」

 「そうですね。
  それが先生としてのやるべき事なんだから。」

 「教育者としての先生としても、魔法使いの先生としてもな。」

 「はい。」

 私達は決意を込めて見つめあった。

 「始まるぞ。」

 クルセイダーの一人が叫んだ。
 その声に転移の魔方陣が輝き出す。
 クルセイダーが神への賛美歌を歌い出す。
 ズン。
 圧力が増し、神の力に空間が満ちる。

 「くっ。
  これが神の力か。
  これを感じれば自分がいかに小さな存在か良くわかるよ。」

 「ですね。
  でも、今は頼もしいです。
  あ!!!!!!!!!
  あそこに!!!」

 「闇の福音だ。」

 小さな子供の姿が魔方陣の中にあった。
 その姿は本当に小さな物で、見た目で判断すれば本当に闇の福音かと疑っていただろう。
 だが、私達は知っている。
 その身体には膨大な力が蓄えられており、その力を振るえばこの学園都市を氷の底に沈めることすら出来るであろう事を。

 「闇に蠢き、人を糧にし、邪悪を振りまく者よ。
  ここは神の御前にして聖なる場所。
  お前の邪悪な力は全て封じておる。
  長きに渡って行ってきた悪の清算をする時がきたのだ。
  本来ならば問答無用で滅殺すべき所だが、神の身元である。
  慈悲の心にて、懺悔を許す。」

 「ふん。
  神の犬が何を言うかと思えば、慈悲だと? 懺悔だと?
  私は誇り高い悪だ。
  この心に一片の悔いもなかろうが。
  神の犬よ。
  好きにするが良い。」

 ふてぶてしい態度だ。
 この絶体絶命の状況でその目はまだ死んでいない。
 何か手はあるのか?
 その手は一体何だ!?
 どーーーん。
 凄まじい音と共に両開きの入り口の扉が吹き飛んだ。
 慌ててそこを見ると、闇の福音と外見年齢の変わらない少年の姿が!
 これか!
 これが闇の福音の策か。
 クグツにした英雄の卵をここで使うのか。
 その為にネギ君を手に入れたのか。

 「どうして、ネギ君が。
  クルセイダーはどうしたの?」

 「恐らく、従者の機能を使ったのだろう。
  AF自体には神の御業を行うことのできる物すらある。
  つまり、神の結果内でも使用可能だ。
  だが、安心してくれ。
  魔法世界の記録を見たが、ネギ君の基本は闇の魔法。
  また、普通の魔法ですら、この神の空間内では使えない。
  クルセイダーによってすぐに取り押さえられるさ。」

 「坊や。
  遅いぞ。」

 「すいません、マスター。
  すぐに助けます。」

 闇の福音の声に答え、ネギ君はクルセイダーに突っ込んだ。

 「馬鹿な!?
  何だあの強さは!!!!?」

 「嘘!!!?」

 悪夢のような光景だった。
 ネギ君の力によってクルセイダーの人達が次々と宙を舞う。

 「少年。
  その者は邪悪な吸血鬼だ。
  神に逆らってまで助けるのか!?」

 「知ってます。
  でも、僕にとっては大事な師匠なんです。
  だから、助けます。」

 まさか、ここまで迷いなく言い切るとは、闇の福音の洗脳の力を甘く見ていた。
 それにしても、魔法の力を封じられたネギ君のこの戦闘能力はなんだ!?
 吸血鬼専門のクルセイダー達が弱く見える。
 これが闇の福音の欲しがった英雄の力か。
 これほどと知っていたなら、危険を冒してでも手に入れようとするのは十分に理解できる。
 もし、魔法を使えていたらどれほどの力を発揮するのか。

 「少年を止めろ!」

 「はっ。
  お任せををををおおおおおおおお!?」

 「ダメだ。
  止まらん。
  何をやっておる。」

 「神よ。
  お力をををををおおおおおおおお!?」

 そうこうしている内にネギ君は闇の福音の前に立った。
 もう少しで手が届きそうだ。
 闇の福音がネギ君に手を伸ばす。
 駄目だ。
 その手を取らせてはいけない。

 「ナギ・スプリングフィールドの名を汚すのかネギ君!!!!!!!!!!!!!」

 気が付いたら大声で叫んでいた。

 「えっ!?」

 呆然としたまま、こっちを向いた。

 「ナギ・スプリングフィールドが、何故、闇の福音を封印したのか。
  闇の福音が危険だからだ。
  父親がした英雄としての仕事を、君は邪魔するのか!?」

 「ち、違います。
  父さんは、そんなことのために封印したんじゃ。」

 「君がその手を取ると言う事は、ナギ・スプリングフィールドの名前に傷をつける。
  君は父親を汚すのか!?」

 「ち、ちが・・・・・僕は・・・・・・・父さん。」

 ネギ君が一瞬正気に戻った。
 そうだ。
 この間が欲しかったのだ。

 「がふ。」

 小さな呻き声が教会に起きた。
 その声に振り返りネギ君が見ると、闇の福音の胸に聖別された木の杭の先が突き抜けていた。

 「破門だ。
  馬鹿弟子。
  所詮、人間か・・・・・・・・・・・偽善者め。」

 その言葉が最後だった。
 バサッと音がして灰になる。
 しかし、神の力に満ちた聖なる場所は穢れた灰の存在を許さなかった。
 雪が解けるようにその灰は宙に解ける。

 「これでマホラは救われた。」

 私は神に感謝しながら安堵に胸を下ろしたのだった。
 ネギ君は呆然とし、力なく跪いている。
 何、洗脳の元凶は滅んだんだ。
 やがて、本当の魔法先生として正気を取り戻すだろう





○年×月△日
 
 高畑先生が出張から帰ってきた。

 「出張お疲れ様でした。」

 私はにこやかに微笑みながら出迎えの言葉を言った。

 「何を言っているんですか?
  エヴァは?
  何が起こったのです?」

 「闇の福音は滅びました。
  学園長も正気に戻り、ネギ君たちも解放されました。
  もう、福音の恐怖に怯えることもないんですよ。」

 「馬鹿な。
  何を言っているんだ!?」

 高畑先生は理解不能といった顔でこちらを睨んできた。
 はて?
 何が言いたいのかはこちらの台詞のようだが。
 分かっていないようなので、初めから説明を始めた。
 ネギ君の初日からの行動。
 それに対する学園長への不信。
 調査によって分かる闇の福音の悪事。
 話していく毎に顔が険しさを増していく。

 「話は分かりました。
  学園長はどこです?」

 「学園長室にいますよ。」

 「ありがとうございます。
  では学園長に話があるのでこれで失礼します。」

 「分かりました。
  改めて出張ご苦労様でした。」

 高畑先生は駆け足で学園長室に向かっていった。
 私はそれを見送る。

 「先生。
  さようなら。」

 生徒が笑顔を浮かべて帰路を歩いていく。
 それを見て改めて自分が闇の福音の悪事を阻止できたことが実感できた。
 本当に良かった。
 帰路に着く生徒達に、気をつけて帰るんだぞと声を掛けながら私は微笑むのだった。



これでおわりですw
後は、エヴァの手記とおまけの予定ですw
ここまでありがとうございました。



[25606] ある魔法先生の手記:ある吸血鬼の手記その1
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/24 21:08
ある吸血鬼の手記:



○年×月△日

 馬鹿弟子が魔法を暴走させた挙句、生徒の命を奪った。
 自分の守るべき生徒を逆に殺したのだ。
 坊やの落ち込みようは、底すら見えないように見える。
 しかし、何で暴走するのだ?
 坊やが行使する高位魔法は、馬鹿でかい魔力があれば誰でも出来るような物ではない。
 それこそ繊細な力の行使出なければ成功など覚束ない。
 優秀な野球選手がただ歩くだけでこけるような物か、どうなっている?。
 それが何度も繰り返されるなど、どこか欠陥があるとしか思えない。
 まあいい。
 所詮は坊やの未熟さが起こしたことだ。
 勝手に落ち込んでいろ。
 もっとも、修行に手は抜かんがな。
 いや、こんなことの無いようにもっと激しい物を用意してやる。

 「ご主人。ワルソウナカオシテルナ。」

 「ふん。未熟者の修行を考えていただけだ。」

 「面白ソウダナ。オレモヤラセロ。」

 「いいだろう。
  腑抜けに活をいれてやれ。」

 「アイアイサー。」

 茶々ゼロが嬉しそうに坊やに向かっていく。
 ふん。いつまでも落ち込んでいられると思うなよ。
 この闇の福音の弟子が。





○年×月△日

 あれから何日か経った。
 坊やの従者の慰めによって坊やは落ち込みから回復した。
 もっとも、影はあるし影響は残っているがな。
 ふと読んでいた本から顔を挙げ、別荘の庭を見た。
 そこには坊やの従者が集り、何やら会話をしていた。
 その内容に興味が沸いた。

 「だから、一番怖いのはエヴァでしょ?」

 神楽坂の馬鹿が何か言っている。
 ほほう、良い度胸だ。
 修行内容の過激度アップだ。

 「いや、姉さん。
  真祖の吸血鬼は味方でしょう。
  だったら、やっぱり、フェイトに決まってますぜ。」

 「ええ!?
  フェイトさん。
  途中から味方になってなかった?」

 「いやいや、ネギの兄貴と戦ってたし、完全な味方ではなかったでしょうに。」

 「それならフェイトさんのコピー?が一番怖かったけどなぁ。」

 「デュナミスさんが一番怖かったとか?」

 「ないない。それはない。」

 「だよねぇww」

 「面白そうな話をしているな。」

 私は会話に口を出した。

 「げっ。
  エヴァちゃん。」

 「馬鹿レッド。
  お前は倍の修行を科すからな。」

 「えええええ。
  それは無いよ。」

 泣いているが知らん。
 師匠に悪口を言うからだ。

 「今、誰が一番怖いか話し合っていたんですよ。
  貴女は誰が怖いですか?」

 「誰だと思う?」

 刹那の質問を質問で返す。

 「うーん。やっぱり神様とか?」

 「十字架を克服した真祖が神に特別な恐怖を抱くか。」

 「だったら、フェイトとか?」

 「ドールマスターが人形を怖がってどうする。」

 「これならばっちりでしょう。
  非常識の塊ラカンさん。」

 「頭まで筋肉のどこを怖がれと。」

 「造物主とか?」

 「あの辺りと戦うことなどありえんだろう。
  交通事故よりも少ない確率しか戦うことの無い相手を怖がるか。
  第一、あの馬鹿が勝っているんだぞ。」

 「あ、それならこれでしょ。
  サウザンドマスター。」

 「ナギか・・・・・・・・。」

 私はナギを思い出す。
 淡い思いを抱いた相手。
 私をここにくくり付けた憎いはずの相手。
 私は奴をどう思っているのか。
 好意と憎悪が混じりあい自分でもどう思っているのか分からん。
 私を怖がらずに受け入れながら、封印して置き去りにする。
 さて、どうなんだろうな?

 「ピンポーン。
  ナギさんで正解。
  やったね。」

 「はっ。
  残念ながら外れだ。
  今ならあいつくらい問題なく倒せるわ。
  大体油断して罠にかからなければ・・・・・・ブツブツブツブツ。」

 「おーい。
  帰ってこーい。」

 「はっ。
  何の話だったか?」

 「だから一番怖い物。
  エヴァちゃんに取ってそれってなにかなぁと。」

 「一番怖い物か。
  そうだな。
  死を覚悟した弱者の群れほど怖い物はなかったな。」

 「はあ!?
  弱者って弱いって事だよね?
  まさか一般人が怖いとか。」

 「ふん。
  これだから馬鹿は困る。
  英雄? 神? 悪魔? 
  強いし万能かもしれん。
  だがな。
  良く聞け。
  最も怖いのは一般人が敵に回ることだ。
  そして、その中でも恐怖を与えるのは死すら覚悟した奴だ。
  こいつらの恐怖に比べたら、それらなんぞ比べるのもおこがましいわ。」

 「えーーーー。
  アスナとか刹那さんとかの方が強いし、簡単に倒せるじゃない?」

 「ふん。
  それが分からんのはお前らが、ちょっと力を持った未熟者にすぎんからだ。
  もっと、精進しろ。」

 不満顔の弟子どもを置いて私はその場を去った。






○年×月△日

 「くそ。」

 起きるなり私は悪態を付いた。
 夢見が悪い。
 目覚めの気分としては最悪だ。
 先日の話の影響だろう。
 私は夢見た。
 昔の悪夢を。



 
 元々少女の姿をしているという事で、旅をしていると周りの人たちは優しかった。
 当時は日光を克服していないので、夜にしか行動できなかったが吸血鬼としての力と魔法を覚えた事で誤魔化すことが出来た。
 しかし、そのような優しい人も私が吸血鬼だと分かると、途端に態度を豹変させた。
 大丈夫かい?
 困って無いかい?
 の優しい言葉が、
 この化け物!
 汚らわしい!
 に変わる。
 何度も正体がバレ、逃げ出しながらも、私は懸命に生きてきた。
 そんな悪夢の一つは、

 「おやおや小さいのに大丈夫かい?
  これをお飲み。
  私にも孫がいてね。
  お前の世話をするって事は、孫の世話をしているようでねえ。」

 「ありがとうございます。」

 私はありがたく飲み物を頂いた。
 しばらく孫の話で盛り上がる。

 「うっ。
  何!?」

 「おやおや、やっと効いてきたのかい、」

 「お婆さん。
  何をしたの?」

 「これをお茶に混ぜたのさ。
  私の孫は教会に勤めていてね。
  その同僚が伝えてくれたのさ。
  アンタが孫を殺したってねえ。」

 お婆さんの口が裂けるかと思えるくらいに広がった。

 「幼い姿の吸血鬼が世間に紛れ込んでいる。
  俺はそれを退治するんだって。
  私は反対したよ。
  危険なことはおよし。
  危ないよって。
  案の定、孫は死んだって。
  だけどね。
  教えてくれたんだよ。
  敵の相手がもうすぐここに来るって。
  そして、この薬をくれたのさ。」

 お婆さんは得意そうに薬を振りかざした。
 それからは吸血鬼殺しの臭いがした。
 間違いない、このお婆さんはバチカンのクルセイダーに唆されている。
 クルセイダーは吸血鬼を殺すことが目的であり、その為なら過激なことも辞さない。
 孫が殺されたってあるが、それもどこまで本当か。
 ただ、分かることがある。
 身体が動くうちにこの人を殺さないと私が死ぬ。
 
 「ごめんね。
  お婆さん。」

 「ひっ!?」

 私は吸血鬼の身体能力を開放し、爪を伸ばすとその喉をかききった。
 血が辺りに散らばる。
 それを無視して自らの腹を割き、焼け爛れる喉や胃を手ぬぐいで拭いて薬を少しでも抜く。
 人間には不可能、いや、吸血鬼としてこのような事態を何度も経験していたからこそ可能な動作だ。
 応急処置をした後で喉から血を噴出すお婆さんの血を吸い、身体を回復させる。

 「ふう。
  一体何度こんな事を繰り返さないといけないんだろう。
  いつになったら終わるの?
  死ぬまで?
  うううううううううううう。」

 ただただ泣き続けた。


 

 場面は変わり、収穫祭が始まったある村に滞在していた時の光景が浮かぶ。
 村中が浮かれ、私もその熱に浮かされていた。
 笑顔に溢れ、楽しさを共有する。

 「待て。
  そこの幼子。」

 掛けられた声に振り向く。
 神の僕がそこにいた。
 
 「いかに隠そうとその邪悪な気配は隠しきれんぞ。
  正体みせい!」

 「何をいうのです。
  私はただの子供です。
  道を開けてください。
  祭を楽しんでるだけなんですから。」

 「とぼけるか。
  しかし、これでどうだ。」

 神父が皮袋を振りかざし、その中身を振りかけた。
 
 「ああああああああ。」

 あまりの痛さに絶叫した。

 「見ろ。
  溶けてるぞ。」

 「悪魔だ。
  人間じゃない。」

 「そうだ。
  敬虔なる神の僕たる村人よ。
  幼子の姿に騙されるな。
  これは悪魔。
  殺さねばならぬ。」

 それまで笑みを浮かべ祭を楽しんでいた村人の顔が怒りと恐怖に歪んだ。
 その後は村人総出のリンチだ。
 殴る蹴るの暴行。
 石の投擲。
 その挙句の張りつけと火あぶりだ。
 私は灰になり、大地にばら撒かれた。
 再び復活するまでどれだけの時間がかかったか、もし、村が盗賊に襲われその血が灰の上にばら撒かれなければ永劫の時がかかっていたかもしれない。




 それからは一般人こそがもっとも、恐怖となった。
 ばれなければ愛すべき隣人。
 なのに、吸血鬼とばれればもうおしまいだ。
 殺すか殺されるかしかない。
 だから、自分の正体を知るものを殺した。
 正体がばれそうになったら、殺した。
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した
 村一つを氷の海に沈めたことすらあった。
 あいつらは知らない。
 回り全てが敵になる怖さを。




 「ふん。
  昔のことだ。
  今は違う。
  そう、私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
  最強の魔法使いにして誇りある悪の真祖だ。
  はっはっはっはっはっは。」

 『マスター。
  聞こえますか?』

 目の前に鏡が浮かび茶々丸の姿を映す。

 「なんだ?」

 『ガンドルフィーニ先生と田村先生がお越しです。
  話があるとか。』

 「なんだと?
  何用だ?」

 『それがマスターに直接話がしたいと。』

 魔法先生が私に話しだと?
 ふん。
 愉快な話になるとは思えんな。
 
 「よかろう。
  ただし、この別荘の中でだ。」

 『了解されました。
  そちらに向かうそうです。』

 私は二人の魔法先生を迎えるにわたって茶々ゼロを呼ぶ。
 坊や達は呼ばない。
 そのまま修行を続けさせた。
 さて、私を毛嫌いする魔法先生の話か。
 ふん。
 想像は付くがな。




 「私はガンドルフィーニです。」

 「私は田村正和です。」

 二人は名乗ったが、私は名乗り返すつもりはない。
 私の名前などこの二人からしたら知りすぎてるくらいだろう。

 「で、何の用だ?」

 「ネギ君についてです。」

 「ふん。
  想像がつくわ。
  どうせ、坊やの師匠を辞めろってところだろう?」

 「そうです。
  貴女が教えることで弊害がある。
  それは今回のことで明白になったのではありませんか?」

 「はっ。
  所詮坊やの未熟さが招いたことだろうに。」

 私は鼻で笑った。
 強くするとは約束したが、道徳の先生になった覚えは無い。
 それはあのじじぃも知っている。
 三下はひっこんでろ。
 
 「なっ!?
  弟子の罪は師匠の責任が当たり前じゃないですか?」

 「貴様ら。
  闇の福音になにを期待している?
  まさか、私に魔法使いとしての道徳を教えろとも?」

 その言葉に二人の顔が憤怒に染まった。
 おお、赤い赤い、笑えるな。

 「ふざけるな!!!!!!!!!」
 
 ガンドルフィーニが怒鳴る。
 それを隣りの田村とやらが止める。

 「それではせめて修行の様子を見せてもらえませんか?
  それとも見せられないほど無様な修行をしているとか。」

 (心の声あるいは念話、エヴァには聞こえません:
  落ち着いてください。
  腹は立ちますが、まだネギ君たちの様子すら伺ってません。)


 「挑発してくるか面白い。
  お前らの温い修行とは違う、強くなるための本格的な修行を見せてやろう。」

 その挑発に乗ることにした。
 大きな鏡を二人の前に持ってくる。
 そして、その鏡が修行中の坊や達を映し出した。

 「ほほう。
  丁度良い。
  神楽坂の修行か。」

 鏡が神楽坂の修行の様子を映し出す。
 鏡の中では神楽坂が刹那・忍者娘・拳法娘の三人を相手に一人で相手をしている。

 「なっ!?
  三人相手ですか。」

 「おまえは戦場でタイマンしてくれというつもりか。」

 「それはそうですが・・・・・・。」

 (落ち着きたまえ田村君1対多はそれほどおかしなことじゃない。)

 (すいません。あまりこのような修行はした事ないもので。)

 何やらこそこそと、念話の傍受も可能だが手間を考えて止めにした。
 どうせ、内容など決まっている。
 ふん。
 偽善者どもめ。
 そうこうしている内に、忍者に後ろに回られた神楽坂。
 忍者娘の白刃が煌めき、神楽坂の手が宙を飛ぶ。

 「「なっ!!!!!!!?」」

 間抜け面が面白い。

 「どうした?
  たかが腕が飛んだだけだろう?」

 「何を言っているんですか?
  これでは修行ではなく殺し合いです。」

 「殺し合いだと?
  腕が飛んだだけで?
  だから、貴様らは甘いのだ。
  あそこにはこのかもいる。
  そのAFで一瞬に元通りだ。
  痛みや身体の欠損を抱えて戦うこと。
  戦場ではそれが出来んと死ぬぞ。」

 「やりすぎた!!!!!!」

 画面では忍者娘が神楽坂の様子を見て手を止めようとしている。
 
 (どうした?
  次はお前が修行するか。
  同じ物を)

 その念話によって忍者娘が攻撃を続ける。
 ふん、馬鹿レッドめ。
 これに懲りて師匠を敬うことを覚えるが良い。
 私は微笑んだ。

 (この状況を見て微笑むだと!?)

 「やりすぎだ。これ以上は止めろ。」

 ガンドルフィーニが突っかかってくる
 うるさい奴だ。

 「修行だぞ。どんな事をするかは私が決める。」

 「修行ではなく虐めだ。
  生徒はお前の物(道具)じゃない!!」

 「違うな。
  あいつらは私の物(弟子)だ。」

 私達は睨み合った。

 「ふん。
  私を相手にその気迫か。
  なかなか面白いではないか。
  よかろう。
  相手をしてやる。
  茶々ゼロ。」
 
 長年の相棒を呼ぶ。
 腑抜けたやつらしかいないと思ったマホラの魔法使いだが、骨のあるやつもいたらしい。

 「これ以上、生徒を好きにはさせん。
  ネギ君達は連れて帰る。」

 「修行というにはやりすぎです。
  私の信念にしたがって生徒は連れて帰ります。」

 「やってみるがいい。
  この闇の福音から奪えるというのならな。
  はっはっはっはっは。」

 久しぶりの高揚感に私は酔うのだった。




続きますw
次もエヴァの手記です



[25606] ある魔法先生の手記:ある吸血鬼の手記その2
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 01:57
ある吸血鬼の手記:その2




 「くっくっく。
  貴様ら中々良かったぞ。」

 機嫌よく倒れ伏す二人に告げた。
 ま、二人仲良くお寝んねだ。
 こちらの声は聞こえているはずもないか。
 しかし、こいつらには驚いた。
 思った以上に根性がある。
 何度倒れようと立ち上がり、こちらに向かってきた。
 その身体は私の魔法や茶々ゼロの攻撃によってボロボロだ。
 身体のいたるところは凍りつき、凍りついた部分で切り裂かれていない部位など存在しない。
 現在の状態もかなりまずい状態だ。
 一応、手当てもするし、薬も使うつもりだが。

 「茶々丸。
  こいつらを手当てしろ。
  それが済んだら病院に飛ばす。」

 「このか様のAFを使われないんですか?」

 「何でこっちに喧嘩を売った馬鹿にそこまでしなくてはならん?
  それにこのかに何て説明するつもりだ?
  喧嘩を売って命もとらず、手当てをして病院に転移すれば十分だ。
  それ以上は必要ない。」

 「分かりました。
  手当てが終わったら、転送をお願いします。」

 「ふん。
  忌々しい封印がなければ、ここでなくても魔法が使えるのにな。」

 まったく忌々しい呪いだ。
 これがなければ別荘から転移させなくても済むから、別荘から飛ばすための複数の手順や魔法を省くことができる。
 実際、別荘から飛ばすなど緊急時でもなければせんぞ。
 さて、面倒くさいがじじぃに連絡を入れるか。

 「茶々丸。
  転移がすんだら、じじぃに連絡を入れるぞ。
  面倒くさいが仕方が無い。」

 「はい。
  分かりました。」

 それから数分後、茶々丸がじじぃに電話を入れた。
 変わってからじじぃと話をする。

 「変わった。
  じじぃ、話がある。」

 「ふぉ!?
  何じゃな?
  物騒な話は抜きにしてほしいぞい。」

 「無理だな。
  交渉に来た魔法先生を病院送りにした。
  また、周りが騒ぎ出すだろうから、始末をつけろ。」

 「また無茶苦茶なことを。
  ワシ泣いちゃうよ?」

 「ふん。
  じじぃに泣きが入っても気持ち悪いだけだ。
  切るぞ。」

 「待つんじゃエヴァンジェリン。」

 泣き言にかまわず電話を切った。
 責任者が揉め事の処理をするのは当然だ。
 後は知らん。
 
 「しかし・・・・・・・。」

 私は先ほどの二人の教師のことを思い出していた。
 確かに、ここの腑抜けの魔法先生とは思えないほどの意思を感じた。
 だが、何かが引っかかった。
 あの必死な目。
 恐怖を感じていながら、勇気で持ってその恐怖を押し込めて?
 いや、それだけでない。
 あれは何だ?
 今まで何度も何度も見ていたはずだ。
 あの目は・・・・・・。

 「マスター。
  神楽坂様の修行が終わりました。
  この後の予定はどうします?」

 「うん?
  終わったのか。
  よし、すぐ行く。」

 私は立ち上がった。
 あの目の事は気になるが、先に弟子どもの世話がある。
 この私が弟子のために奮闘するか。
 随分となまった物だ。





○年×月△日

 いつものように修行が終わり、別荘から出る時間が来た。
 今日も有意義な一日であった。

 「なにが有意義よ。
  このサディスト。」

 「何か言ったか?
  神楽坂。」

 「待ってください。
  アスナさん。
  マスターは僕達のために一生懸命なんです。
  魔法世界のような事があっても、解決できるようにと。」

 「ぐっ。
  それは分かるけど、限度って物があるでしょ?
  今のこれはいじめよ。」

 「修行に限度なんぞあるか。
  ん?
  限度?」

 「どうかしたんですか? 
  マスター。」

 「いや、なんでもない。」

 そういえばあいつ等がやり過ぎとか言っていたか。
 少しは加減するか。
 そう思いつつ、一歩を踏み出す。
 別荘の光景から家の中の物へと変わる。
 いつもと同じ、いや、いつもと違う!?

 「んん!?」

 床が発光していた。
 なんだこれは!?

 「しまった。
  転移魔方陣。」

 うかつ。
 気づいた時には教会の中にいた。
 くうううううう。
 神聖結界が。
 神の力が私の力を押さえつける。
 すでに登校地獄と学園結界で押さえられているのに、さらにこれか。

 「闇に蠢き、人を糧にし、邪悪を振りまく者よ。
  ここは神の御前にして聖なる場所。
  お前の邪悪な力は全て封じておる。
  長きに渡って行ってきた悪の清算をする時がきたのだ。
  本来ならば問答無用で滅殺すべき所だが、神の身元である。
  慈悲の心にて、懺悔を許す。」

 は、お得意の神の慈悲に懺悔か。
 そんなものは吸血鬼になった当初に卒業済みだ。
 何度、神に祈ったか。
 何度、元に戻して欲しいと願ったか。
 もう祈り飽きたわ。
 ゆえに、宣言する。

 「ふん。
  神の犬が何を言うかと思えば、慈悲だと? 懺悔だと?
  私は誇り高い悪だ。
  この心に一片の悔いもなかろうが。
  神の犬よ。
  好きにするが良い。」

 そう言いながらもAFの念話機能を使い坊やに連絡を入れた。

 (坊や。そっちはどうだ?)

 (重装備の人たちに囲まれています。)

 (ふん。そっちも押さえにかかったか。
  こいつらは吸血鬼殺し専門の組織クルセイダーだ。
  抵抗しなければ吸血鬼以外殺しはせん。
  それを皆に告げてこっちにこい。)

 (吸血鬼殺しの専門組織?
  それじゃ、マスターを殺しにきたんですか?)

 (それ以外には考えられんな。
  神聖結界で雁字搦めだ。
  そっちがその程度なら間違いなく、こいつらの狙いは私だ。)

 (分かりました。
  雷天でそっちに向かいます。)

 (神聖結界のせいで魔法の力は使えない。
  教会の前で解け。
  急げ。
  待ってるぞ。)

 (分かりました。)

 AFで召還しようにもそうすれば、さすがに妨害が入るだろう。
 その点、坊やの雷天ならあっという間だ。
 不意打ちにも向いている。
 どーーーん。
 凄まじい音と共に両開きの入り口の扉が吹き飛んだ。
 そこに坊やの姿が見える。
 さすがのスピードだな坊や。
 にやりと口元を歪めた。
 坊やの成長が自分のせいと考えれば気分がいい。
 この忌々しい結界で坊やの魔法も封じられるが、この程度の輩に負けるほど柔な鍛え方をしてきたつもりはない。

 「坊や。遅いぞ。」(存分にやってやれ。)

 「すいません。
  マスター。
  すぐに助けます。」

 坊やが手足を振るたびに人が飛ぶ。
 くっくっく。
 この闇の福音が鍛えた人間だぞ。
 そこらの戦闘員が役に立つか。
 口元が歪むのを止められない。
 もっとも、止めるつもりも無いがな。

 「少年。
  その者は邪悪な吸血鬼だ。
  神に逆らってまで助けるのか!?」

 「知ってます。
  でも、僕にとっては大事な師匠なんです。
  だから、助けます。」

 中々健気な事を言うじゃないか。
 今度何かご褒美をやるか。
 何がいいかな?

 「少年を止めろ!」

 「はっ。
  お任せををををおおおおおおおお!?」

 「ダメだ。
  止まらん。
  何をやっておる。」

 「神よ。
  お力をををををおおおおおおおお!?」

 はははははは。
 無駄無駄無駄。
 お前ら如きに坊やが止められるか。
 止めようと前に立つたびに吹き飛んでいる。
 まあ、多少の足止めにはなったが、ここまでだな。
 坊やが手を伸ばす。
 レディへのエスコートとしては年が幼いが、まあ良かろう。
 特別に許す。

 「ナギ・スプリングフィールドの名を汚すのかネギ君!!!!!!!!!!!!!」

 男の叫びに手を伸ばす坊やの動きが止まり、その声の主へと振り返った。
 何をしている坊や。
 お前は何をしにきた!?

 「ナギ・スプリングフィールドが、何故、闇の福音を封印したのか。
  闇の福音が危険だからだ。
  父親がした英雄としての仕事を、君は邪魔するのか!?」

 「ち、違います。
  父さんは、そんなことのために封印したんじゃ。」

 馬鹿な、助けに来た相手を放っておいて問答か?
 それもナギの事を言われただけで。
 苛立たしげに声の主を確かめた。
 んん!?
 あの男の目!?
 そうだ。
 先日、半殺しにした魔法教師と同じじゃないか。
 あの目は何だ?
 どこで見た?
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!
 思い出した。
 私に毒薬を飲ませた老婆の目。
 私を火あぶりにかけた村人の目。
 正体がばれたたびに殺そうとしてきた人々の目、目、目。
 あああああああああ。
 どうして忘れていた!?
 どうしてその事に気づかない!?
 どうして、どうして、どうして。
 もはや一刻の余裕も無い。
 あの目は危険だ。
 自分が弱者であること知りながら、脅威をもたらす物を排除するためにどんな危険も犯す。
 私がもっとも恐れる物。
 死をも覚悟した弱者達の目。
 坊や、早くこの拘束を解け。
 早く! 早く! 早く!
 
 「君がその手を取ると言う事は、ナギ・スプリングフィールドの名前に傷をつける。
  君は父親を汚すのか!?」

 「ち、ちが・・・・・僕は・・・・・・・父さん。」

 坊やの動きが完全に止まった。
 何故だ。
 坊や。
 助けに来たんではないのか?
 今になって怖気図いたのか?

「がふ。」

 慣れ親しんだ痛みが胸を突き抜けた。
 ああ、聖別された杭か。
 これは助からんな。
 しかし、坊やには失望した。
 神の僕と対立してでも私を救おうとしたのだろう?
 何故、たかがナギの名前が出ただけで、躊躇うのだ。
 ナギも一緒か。
 私を怖がらず受け入れると宣言しておきながら、呪いをかけて閉じ込めるか。
 ああ、私は何を見ていたのか。
 ナギは私が邪魔だったのだ。
 だから、呪いをかけた。
 だから、放っておいた。
 そうで無いなら、何故迎えに来ない?
 子供を作る時間はあっただろうに。
 子供!?
 はははははははははははははは。
 何て間抜けだ。
 子供がいるということは愛する相手がいたと言う事でないか。
 なのに、私に振り向く?
 私の物になる?
 こんな女邪魔なだけでないか。
 本当に私は大間抜けの大馬鹿だ。
 坊や。
 私を好きといったな。
 だが、改めて分かった。
 こちらこそ願い下げだ。
 
 「破門だ。
  馬鹿弟子。
  所詮、人間か・・・・・・・・・・・偽善者め。」

 ああ。
 走馬灯は本当にあったのだな。
 昔の光景が脳裏に浮かんでは消えた。
 碌な過去で無いな。
 ふ。
 所詮、悪の吸血鬼などこんなものか。
 最強を詠おうと、幸薄い人生だ。

 「どうしたんだい?
  エヴァ?」

 「また、怖い夢を見たんでしょう?」

 今まで記憶に薄れていた姿がはっきりと浮かんだ。

 「パパ? ママ?」

 「「お帰り。エヴァ」」

 優しい笑顔で私に手を差し伸べてくる。
 躊躇う事無く私はその胸に飛び込んだ。

 「ただいま。パパ。ママ。
  エヴァね。
  怖い夢見たの。」

 両親に抱きしめられる夢を見ながら、600年の生涯を私は終えた。







はい、ここまでがある吸血鬼の手記です。
どうもここまで読んで頂いてありがとうございました。
さて、ここまで読んでも話がすっきりしませんよね?
実はある意味ここからが推理小説の謎解きの場面になるんです。
作者曰く、
  ここからがアンチなんじゃああああ
            ですw
今までもアンチじゃないかとの突っ込みもあるでしょうが、作者からはこれからが本番だったりします。
どんどんアンチします。
おかしなところ満載になると思うので、ここまでで十分じゃと思われる方は不快になるまえにお帰りを。
心の広い方はどうぞこの先もお楽しみください。



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその1
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 16:13
おまけ:その1


 ナギ・スプリングフィールドの故郷であり、その息子のネギ・スプリングフィールドが居る村が襲われた事件は衝撃を持って関係者に伝わった。
 多くのものがネギ君の安否や安全を叫ぶ中で、ワシは別のことに気を取られておった。
 なぜ、ネギ君の村が襲われたのじゃ?
 ナギへの復讐?
 その息子であるネギ君への八つ当たり?
 その可能性は高い。
 じゃが、そのための規模が桁違いじゃ。
 あの村はネギ君を受け入れていたこともあり、並みの魔法使いの村を越えるだけの戦力が集められておった。
 それを全滅させ治療すら拒むほどの石化を有する悪魔の使役をするなど、赤き翼クラスの有名どころでもなければ不可能じゃ。
 じゃが、そんな有名どころが動いたという話は聞かん。
 ふむ。
 ちと弱いな。
 アリカ様の生存の証であるネギ君を消そうとMM元老院が動いた?
 これも×じゃな。
 ナギと共に行方不明というのは裏の事情通ならば、誰もが知っておる。
 本人が世間に顔を出してしまえば終わりじゃろう。
 では何が・・・・・・。
 ・・・・・・・英雄の息子か。
 ふと、頭に電撃が走りおった。
 名馬の生んだ子馬が名馬になりうるのは誰もが知っておる。
 競馬などその為に莫大な金が動きよるからな。
 もしや、ネギ君は将来、ナギのような英雄になるのではないか?
 そして、それによって不利益を被る輩が存在しており、そやつらが今回の事を企んだのでは?
 ワシら魔法使いにとって占いとは得意分野じゃ。
 強者は決してそれに頼ろうとはせぬが、未来予測といえるほどの精度を誇る占い師もおり、政務にそれを利用しておる者も普通におる。
 その占いが、英雄ネギ君によって破滅させられるとMM元老院や帝国の有権者に知らされたとしたらどうじゃ?
 ふむふぬ、これが正しいかは分からぬ。
 分からぬが面白い。
 英雄の卵か。
 ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ。
 ワシも色々な若者を教育してきた。
 その中には高名な学者になった者も、国の指導者になった者も、有名なスポーツ選手になった者もおる。
 しかし、しかしじゃ。
 英雄になった者はおらん。
 英雄ネギ・スプリングフィールドを育てた教育者か。
 ふぉっふぉっふぉ、良い、実に良い。
 そうとなれば早速プランを練らねばな。
 ふぉっふぉっふぉ、この年になって血がたぎるか。
 人間長生きはするものじゃのう。



続きますw
短いですが、これが始まりです。
ネギ君をまつわる物語、それを作ろうと画策する人物の目的であり動機となります。



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその2
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 17:04
おまけ:その2


 もう10年を越える昔の話じゃったかな。
 ナギの奴がエヴァがしつこくて困ると相談してきおった。
 まあ、やつの言い分は分かるがの。
 何せ、すでに嫁さんが居る状態じゃ。
 浮気と言って家庭内問題に発展する可能性もあるじゃろう。
 そこで、ワシは力を貸すことにしたんじゃ。
 何、登校地獄の呪文を教えたのと、その対象をマホラ学園、そして学園の生徒にすると約束しただけじゃ。
 もちろん、闇の福音に呪いを掛けるのを手伝うようなことはせん。
 そんな恨みをかう、返り討ちに会うような危険な事するはずないじゃろ。
 ナギに教えた登校地獄はいくらでも変更可能じゃ。
 解くことも、永遠に解かない事も、術式に追加条項を加えることもな。
 それにエヴァを取り入れるデメリットよりも、メリットの方が大きい。

 メリットの1:
 ナギに貸しを作る。
 唯人ならともかく、英雄ナギじゃぞ。
 その借りが帰ってきたらどれほどの物となるか想像もつかんわ。

 メリットの2:
 学園の警備員として使う。
 術式で適当な力に落としてこき使ってやるかのう。

 メリットの3:
 これが大きいのじゃが、何かまずい事が起こった時の生贄じゃな。
 600万ドルの犯罪者じゃ。
 これが何を言おうと学園長のワシがエヴァのせいじゃと言えば、どちらを信用するかのう。
 もちろん、状況がエヴァが悪いという形に整えるのは当たり前じゃ。
 ふぉっふぉっふぉ。
 これで少しはおふざけもできるかのう。


 そして、そしてじゃ。
 ワシは過去の自分を褒めてやりたくてたまらん。
 このためにエヴァを囲ったのじゃと言いたくなるほど素晴らしいメリットができた。
 そう、ネギ君をエヴァに育てさせるのじゃ。
 英雄を教える者にここの教師を当てる?
 馬鹿な凡人が英雄を育てられるか。
 では英雄を招く?
 英雄にまともな者は少ないわ。
 教師として向いているとは思えん。
 ならばエヴァは?
 600年の経験。
 戦いに勝つための無数の方法を知り。
 卑劣な罠の存在も知り。
 甘さなど無用と厳しく教えるじゃろう。
 これ以上の適任者などない。
 なによりも、登校地獄でワシの思いのままじゃしのう。
 笑いが止まらんわ。
 ワシは飛び回って嬉しさを表現した。
 他人が見たら狂ったのかと思われるじゃろうが、それほど歓喜に狂っておったのじゃ。




つづきますw
エヴァの登校地獄の裏話ですw



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその3
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 17:53
ある魔法先生の手記:おまけその3


 さて、ワシの前には下着ドロで魔法を使った犯罪者がおる。
 下着ドロ自体にはそれほどの罪はない。
 しかし、この馬鹿はそれに魔法を使ったのじゃ。
 それも何度も何度も何度も繰り返した。
 そのたびに、罪を償わせておったのじゃが、もはや、それも限界じゃ。

 「軽い罪も繰り返せば重罪じゃ。
  まして、その全てに魔法を使っておる。
  もう軽い刑罰は無理じゃ。
  分かっておるな?」

 「ひぃぃぃ。
  学園町様。
  反省してます。
  これからは心を入れ替えます。
  だから、俺っちに慈悲を。」

 「ならん。
  オコジョじゃ。」

 ワシは呪文を唱えた。
 ひぃぃと言って拘束されたまま暴れるが、魔法の力は犯罪者を確実に捕らえオコジョに変身させた。

 「ああ。
  俺っちの人生が・・・・・・終わった。」

 「フォっフォっフォ。
  オコジョはなって辛いか。
  それは災難だったのう。」

 「ってあんたがそれを言いますか。
  うううううううう。」

 「そんなに辛いか。
  まあ、50年のオコジョ刑だし、これから大変そうじゃのう。」

 「50年!?
  いや、それは行き過ぎでないですかい?
  そこまで酷い罪は犯しておりませんぜ。」

 「積もり積もってということじゃ。
  残念じゃの。」

 「そんなあ・・・・。」

 オコジョがしょげ返って頭を下げておる。
 それほど厳しいか。
 ふぉっふぉっふぉ、ならこの話にも飛びつくじゃろうなあ。

 「減刑する方法もない事はないのう。」

 「本当ですかい?」

 「本当じゃ。」

 すばやく上げた顔は喜色に輝いておる。
 やれやれ単純じゃな。

 「この少年を見たまえ。」

 「ええと。
  利発そうで賢そうな坊ちゃんですが、この方が何か?」

 見え透いたお世辞じゃが、ねぎ君にはこれくらい世間ずれした相棒が必要じゃろう。

 「この子はナギ・スプリングフィールドの息子じゃ。
  名前はネギという。」

 「この子がかの英雄の息子ですかい。」

 「そうじゃ。」

 「で、この少年の写真を見せるって事は、さっきの減刑の条件にこの少年がからむって事ですしょうか?」

 「ふぉっふぉっふぉ。
  察しがよいのう。
  英雄の子と大事にされて育てられているが、ちと過保護での。
  世間のことを何も知らん。
  世間慣れした誰かが傍にいてくれんと不安でのう。」

 「分かりやした。
  俺っちにお任せを。
  世間の厳しさって奴を十分に教えやす。
  ですから、ぜひ減刑を。」

 「さて、ワシは独り言いっただけじゃ。
  ただ、英雄の息子が活躍して、その相棒なら減刑されて当然と思うがのう。」

 「へっへっへ。
  分かっておりやす。」

 二人して微笑んだ。
 もっとも、どちらも悪人顔というものじゃが。

 「旅の準備は秘書に言って整えておる。
  出来る限り、未来の英雄を手助けするのじゃな。」

 「俺っちにお任せを。
  それでは行って参ります。
  ごめん。」

 さて、ネギ君に世間を知った参謀は送った。
 次の計画を進めるかの。




 月日は流れ、ネギ君の従者候補が随分と集った。
 いやいや、さすが未来の英雄じゃのう。
 恐れるくらいの才能の塊が集りおった。
 しかも、最高峰の才能や異能の持ち主が同い年でおるなど、これを利用せぬのはただの馬鹿じゃ。
 ナギすら越える魔力の孫、黄昏の巫女姫、財閥の娘、闇の福音、凄腕の傭兵など等。
 なんの冗談じゃと思えるような娘達が集ったのう。
 これも日頃の行いが良いせいかのう。
 ふぉっふぉっふぉ。
 しかし、このままだとネギ君が卒業するのは、娘達が高校生くらいか。
 これはいかん。
 向こうの校長に働きかけて、もっと早く卒業させねば。
 中学生くらいかの。
 それ以上だと、進路が変わったり、恋人ができたり、自我の確立によって意識操作が効きにくくなったりするからのう。
 さて、定例のオコジョの報告を見るか。
 ぶっ!?
 何をやっておるのじゃ、あの馬鹿は。
 下着泥棒で捕まったじゃと!?
 また、こっちから働きかけんといかんな。
 ネギ君がこっちに来たら、従者つくりに協力してもらわんといかんしのう。
 ふむ。
 金でも出すか。
 確か、オコジョ$がオコジョの世界の通貨じゃったな。
 5万オコジョ$でも出せば、あやつのことほいほいと契約しそうじゃのう。
 ふぉっふぉっふぉ。


続きますw
今回はオコジョの話でした。

 



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその4
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 20:38
ある魔法先生の手記:おまけその4




 いよいよネギ君が赴任する日が近づいて来おった。
 うむうむ、楽しみじゃのう。
 ネギ君が教師をする間に達成すべき目的は、

 その1:
  ネギ君用に用意した従者をあてがう。

 その2:
  エヴァの弟子にして英雄としての力をつける。
 
 その3:
  英雄としての行動を起こさせる。

といった所かの?
 おお、ネギ君来おった。
 今は電車の中かの?
 ん!?
 ふぉっふぉっふぉ。
 くしゃみでスカートを捲ったか、若いのう、若い、若い。
 いや、待てよ?
 どうやって従者にしようと思っておったが、これは使えんかの?
 くしゃみのたびに魔力が暴走。
 これを利用できんか?
 とはいえ、暴走で怪我人が出ては困るのう。
 ん!?
 こちらで調整すれば良いではないか。
 ネギ君の魔力の暴走が武装解除辺りをしでかすとしたらどうじゃ?
 何故かネギ君がくしゃみをすれば服が脱げる。
 そうなれば魔法使いのために非常識を常識としたマホラでも、不思議に思うものも出てきやすくなるじゃろう。
 それに、若い娘の裸はいい。
 役得というものじゃ。
 さて、ネギ君。
 今はまだ直接干渉できないので、ワシが代わりに武装解除しておるが、残念に思う必要はないぞ。
 ネギ君に直接干渉して、魔力の暴走が武装解除に繋がるように意識下を誘導しておくからのう。
 存分に生徒の裸を楽しむんじゃ。
 裸の付き合いの男女は親密になりやすいぞい。
 年寄りへの孝行と思ってくれてもよいぞ。




 ほほう。
 新任のネギ君の歓迎会か中々心憎いことをする子達じゃ。
 心優しい子達でワシは嬉しいぞ。
 まあ、そうなり易いように意識誘導はしておるがな。
 順調にネギ君への好意も高まっておるようじゃ。
 ならばワシもサプライズを用意せねばなるまいな。
 どうするか。
 うむ。
 考え付いた。
 取りあえず、黄昏の巫女姫が従者になるように誘導しようかの。
 初日から魔法バレも早すぎるとは思うが、善は急げじゃ。
 善きサプライズというわけじゃ。
 誰を利用するかの。
 この子にしようか。
 意識に誘導を掛けて本を片付けるために、ちょっと無茶をさせる。
 うむ。
 上手くいったようじゃの。
 次はアスナ君とネギ君の意識誘導じゃな。
 おおお、これはタイミングが中々難しいの。
 しかし、このワシのように意識誘導の上級者ならこの程度。
 ふぉおおおおおお。
 上手くいきおったわい。
 さすがワシ。
 凄くね?
 っと高畑君にも見つかったか。
 これはどうするのかな?
 おうおう見過ごすか、優しいの。
 ワシからしたら甘い甘いじゃが。
 さて、歓迎会だが。
 ぶっ。
 生徒の前で読心か。
 考えられんことをするのう。
 また高畑君は注意もなしか。
 いくらなんでも甘すぎないかの。
 もっとも、ワシにしたら願ったり叶ったりじゃがのう。




 あれからもネギ君は魔法を使う使う。
 そのあまりの杜撰さに魔法先生がうるさくて堪らん。
 まったく、これも英雄を作る大切なプロセスじゃというのに。
 適当にあしらって夜になるたびに、反対派の先生の意識誘導を行う。
 ワシの寝不足って過労手当て出んじゃろうか?
 


続きますw
ネギ君の魔法バレを誰も注意しないのに強引に理由をつけましたw
かなり強引ですがお許しをw



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその5
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/25 21:52
ある魔法先生の手記:おまけその5


 ネギ君が魔法世界から帰還した。
 その勇士に感動する。
 うんうん、立派になったのう。
 ワシは目を潤ませた。
 ここまでなるまでにどれだけ苦労したか。
 オコジョを作って従者を増やし、エヴァを使ってネギ君を鍛え、うるさい周囲の人間を黙らせ、英雄的行動をとれるように誘導した。
 それが実った姿がこれじゃ。
 誰もがネギ君を英雄というじゃろう。
 じゃが、まだじゃ。
 ナギを越えた英雄と呼ばせるには、もっともっと活躍してくれんとな。
 さて、年寄りの感傷かの。
 ワシはネギ君のために行った行動を思いだす。



 エヴァがネギ君を襲った事件のこと。
 当然、把握しておった。
 何かあったときの為に、高畑君を隠れて派遣しておった。
 ふう。
 エヴァに敵意を持ってなければ、もっと多くの人材を派遣できたのにのう。
 また、停電の時の戦闘もそうじゃ。
 いつでも電源は復帰できたし、最悪、登校地獄を無理やり強めることもできた。
 ネギ君はくしゃみで魔法の撃ち合いに勝ったと思っておるようじゃが、そんなことはありえん。
 力を振り絞っている最中にくしゃみして、限界を超えるなどありえると思えるかね。
 ネギ君のくしゃみはエヴァを裸にしただけ、ワシが登校地獄でくしゃみに合わせて、力を弱めたのじゃ。



 そういえば、ネギ君の活躍を世間に知らせるために、西への大使に任命したこともあったのう。
 こうすれば、西の術者が苛立つのは分かっておった。
 案の定、新書を狙って動きよった。
 このかも狙ってきたしのう。
 狙い通りじゃ。
 婿殿も甘い。
 あれだけの莫大な魔力を持ち、肉親が東西の魔法使いの長じゃ。
 一般人として暮らす?
 頭がいかれておるとしか思えん。
 思ったとおり事件に巻き込まれ、魔法がバレおったわ。
 ワシはそれを見ていて笑ったものよ。
 そして、鬼神の復活。
 これを見てワシは歓喜したものよ。
 どうやってネギ君にエヴァに師事するのか、それに悩んでおった時にちょうど良いタイミングで出てくれたのじゃから。
 エヴァをすぐに援軍として派遣し、エヴァの力をこれでもかと見せ付けた。
 案の定、力に拘っておるネギ君はエヴァを師匠にするために動きおった。
 もう、笑いが止まらんで止まらんで。
 ん!?
 そういえば、エヴァには5秒に1回判子を押していると誤魔化したか。
 それまで旅行にいけない理由をそれにしただけで、エヴァが飛んでいったら早速止めたのう。
 600年の経験というが甘い甘い。



 そして、学園祭じゃ。
 超の計画がまさかあれほどとは思わなんだ。
 ワシらだけでは到底防ぐことなどできなんだに違いない。
 じゃが、ワシらにはネギ君がいた。
 何度も時間移動していたなど聞いたときは耳を疑ったものじゃ。
 そのワシらの度肝を抜く行動の主は、まったく考え付きもしなかった作戦を見出しおったのじゃ。
 秘匿を大事にし一般人を巻き込まないと考える魔法先生には考え付かないこと、つまり、一般人の手を借りた計画じゃ。
 これも普段から秘匿の事に気が回らないように意識誘導し、一般人を何人も従者にして巻き込もうと気にしない英雄様へと鍛え上げたおかげじゃな。
 ネギ君の教育が間違っておらんと改めて確信したわ。



 英雄となったネギ君がマホラに帰って先生をしておる。
 その姿は自信に満ち、生徒も先生もネギ君に好意的じゃ。
 まさに先生の鑑じゃな。
 じゃがな。
 ネギ君よ。
 一端の先生で収まってもらっては困るのじゃ。
 英雄として活躍してもらわんとな。
 すでに、事件がネギ君を待っておるのじゃ。
 何、先生としての仕事を放り出してそちらにいけんと悩む必要はない。
 ちょっと生徒に傷をつけてもらおうかの。
 その罪を償うためにとなれば、誰もが納得するじゃろ?
 心配せんでもいつもの魔法の暴走じゃ。
 なにせ、ナギを超える英雄の中の英雄になってもらわんといかんからのう。


続きますw
感想にあるとおり学園長は真っ黒の下種さんですw
そして、冒頭の事件にと繋がります。



[25606] ある魔法先生の手記:おまけその6
Name: tune◆dc9bdb52 ID:a634d081
Date: 2011/01/26 03:42
ある魔法先生の手記:おまけその6



 
 「闇の福音の師としての適正に問題がある事は、この間の事件によって証明されました。
  即刻、師を解任し、新しい師匠をあてがいましょう。」

 「生徒でパクティオーを結んだ数がもはや異常です。
  本来、パクティオーはパートナーとなるべきものを決めて、その相手と結ぶ物です。
  魔法がばれたからとほいほい結んで良い物ではありません。」

 「ネギ先生に直接の指導を。
  明かに先生としても魔法先生としても未熟です。
  間違っているなら、それを正す。
  そうするためにも、魔法先生としての正体を晒してはいけないとの制限を撤回してして頂きたい。」

 ガンドルフィーニ先生と田村先生の声がうるさいのう。
 まったく、そんな怒鳴らんでも聞こえておるわ。

 「何度も言っておるが、これは学園長としての決定じゃ。
  反論は許さん。」

 いつもの台詞で最後をまとめて魔法職員会議を打ち切った。
 ああ、忌々しいのう。
 まさか、こんな事になるとは思いもせなんだわい。
 何じゃ、あの闇の魔法というのは。
 いつものようにネギ君の意識に干渉しようとしたら、その闇が襲い掛かって来おったわ。
 食われるかと思ったぞい。
 闇にアストラルボディーを傷つけられたせいで、魔法がまともに唱えられんようになったし。
 そのせいでいつもなら簡単に収まるはずの、この事件の影響がまだ残っておる。
 忌々しいことじゃわい。
 
 「では魔法職員会議を終わる。
  次は一般の職員会議じゃな。
  言ったとおりネギ君はエヴァに任せたまえ、悪いようにはせん。」

 「学園長。
  私達は諦めませんよ。
  生徒の未来を守ってこその先生です。」

 「ふう。
  忠告はしたぞい。
  くれぐれもエヴァに手を出して事情を拗らせるようなことはせんようにな。
  頼んだぞ。」

 物凄く不満ありげな顔で下がっていく二人。
 まさかいらん事せんじゃろうな?
 エヴァほどネギ君の師匠として相応しい者はおらんわ。
 ネギ君英雄化教育の邪魔にならんと良いのじゃが。
 不安を感じながらもワシは普通の方の職員会議を続けた。






 それから数日後。
 電話のベルが鳴りワシは出た。

 「もしもし学園長ですか?
  絡繰茶々丸です。
  マスターが伝えたいことがあるようです。」

 「ふむ。
  分かった。
  エヴァに代わってくれんかの?」

 「はい。
  少々お待ちください。」

 しばらく待っておると電話の相手が代わった。
 果たして何の用じゃの。

 「代わった。
  じじぃ、話がある。」

 「ふぉ!?
  何じゃな?
  物騒な話は抜きにしてほしいぞい。」

 「無理だな。
  交渉に来た魔法先生を病院送りにした。
  また、周りが騒ぎ出すだろうから、始末をつけろ。」

 「また無茶苦茶なことを。
  ワシ泣いちゃうよ?」

 「ふん。
  じじぃに泣きが入っても気持ち悪いだけだ。
  切るぞ。」

 「待つんじゃエヴァンジェリン。」

 強引に電話を切られてワシは呆然とした。
 魔法先生を病院送りにした?
 エヴァが?
 ・・・・・・・・・・・・。
 くくくくく。
 ワシは肩を震わせた。
 それは徐々に大きくなり、やがて・・・・。

 「くくくくく・・・・・・・ふぉふぉふぉふぉふぉ・・・・・・・・ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!!!」

 大声の笑い声になった。
 魔法先生がネギ君への環境に疑問を持ち、不信感一杯の状況で魔法先生を病院送りにしたと!?
 な、な、な、何たるタイミングで馬鹿をするんじゃ。
 これだとワシに不信をもってしていたとしても、その矛先がエヴァに向かうのも当たり前と言えように。

 「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ。」

 いやいや、中々笑いが止まらんわい。
 エヴァよ。
 ワシが生贄にするために迎え入れた吸血鬼よ。
 おまえさんは本当に、ワシのして欲しいことをどんどんしてくれるの。
 仮にワシが全てはエヴァのせいじゃと主張しても、高畑先生は信用せんじゃろ。
 それは彼がおまえさんをよく知っておるからじゃ。
 誰かが悪口を言っても人が信用しないのは三通りある。
 聖人の悪口か、
 悪口を言う人間が嘘つきか、
 悪口を言われている人間を良く知っており、それがその知っている人に当てはまらない時じゃ。
 ワシが600万ドルの犯罪者が全て悪いと言って信じないのは、恐らくエヴァの事を知っておるネギ君達ぐらいじゃろ。
 15年もこのマホラにいながら、人と付き合うこともなく引きこもって友達を作りもしないのじゃから、それも当然じゃな。
 ネギ君達以外は何をしでかすか分からない化け物。
 そう認識しておるのじゃ。
 そこでこんな事をするか?
 笑いが止まらんわ。
 さて、魔法先生の動きがおかしくなっとる現在、ワシはどう動くべきか。
 ・・・・・・・・・・・ふむ。
 考えて何もしないことにした。
 様子見じゃな。
 魔法をまともに扱えない状況で動くなど自殺行為じゃ。
 まずは傷を癒し、魔法を使えるように静養するのが一番じゃ。
 もっとも、魔法が使えないながらも情報収集はするがの。
 情報が何も無いのが一番怖いからのう。






 「ガンドルフィーニ先生と田村先生が病院に!?」

 深山先生の顔が思い切り歪んでおる。
 せっかくの美人なのに、みっともない顔しておるぞ。

 「そうじゃ。
  話に応じないエヴァに痺れを切らして襲い掛かったらしいぞい。」

 「そんな。
  学園長は暴力を振るったものを放置しておくんですか?」

 「いやいや、勘違いしてはいかんぞい。
  エヴァは襲われたからやり返した、ただの正当防衛じゃ。
  そのまま無抵抗でいろとは言えんじゃろ?」

 「本当にガンドルフィーニ先生たちが襲い掛かったんですか?」

 「ワシはそう聞いておる。」

 「そうですか。」

 納得いかんといった顔をしておるの。
 まあ、そうじゃろうの。
 相手は邪悪な闇の福音じゃ。
 せいぜい疑ってほしいぞい。

 「では私は皆に伝えてきます。」

 「ふむ。
  授業に差し障りも出ようし、これから会議もせんといかんから、しっかり頼むぞい。」

 よほどのショックを受けたのか、フラフラと職員室に向かって歩いていきおる。
 ふむふむ。
 どうやら、上手く矛先が向かいそうじゃのう。







 「さて、学園長にはここにいてもらいましょう。」

 「お前さんがここにおるとは、一体、何があったんじゃ?」

 目の前にはクルセイダーの騎士団長がおる。
 一体何があった!?
 ここは学園長室。
 扉が開いたと思ったら、重装備の男達。
 その中に見知った顔が。

 「何。
  貴方には吸血鬼に操られている疑いがある。
  これから吸血鬼を抹消するのに、暴れられては困難だからな。
  ゆえに私がここにいる。」
 
 「ワシが操られておる?」

 「失礼ながら、ネギ・スプリングフィールドの環境は把握させて頂いた。
  その常識のない環境。
  吸血鬼に引き渡すような行動。
  まともとは思えん。」

 「何と!?」

 ほほう、魔法先生がワシの事を疑っておるとは思ったが、エヴァに操られたと思っているとはのう。
 それにしても、まさかクルセイダーを学園に引き込むとはのう。
 教師としての自覚はあるんかい。
 
 「わかった。
  抵抗はせん。」

 ここは大人しく成り行きを見守るとするか。
 魔法も使えんし痛い思いするだけじゃ。

 「・・・・・・・・・・・・団長。
  全て終わりました。
  吸血鬼は抹消できたようです。」

 「おお、神よ。
  吸血鬼はこの世から消え去りました。
  あなたのご助力に感謝します。」

 「「「「「「 アーメン。」」」」」」

 おお、エヴァよ。
 15年来の友人よ。
 長い生を今終えたのじゃな。
 ご苦労様じゃ。
 安心してよいぞい。
 ワシはその死を決して無駄にはせんからの。






 
 教会の入り口の前。
 クルセイダーに囲まれて、拘束される少年がおる。
 ワシはネギ君に近づいた。
 クルセイダーに言って少し離れた所に行き、ネギ君と会話を始めた。

 「何でこんな事に。」

 「力にはの、色々な側面があるんじゃ。」

 「色々な側面ってなんですか?」

 虚ろだったネギ君が、その瞳のままこっちを見やる。

 「弱きを守る力、困難を乗り越える力、理想を実現するための力、悪を断つ力。
  ネギ君が知っておるのはこのような力かの?」

 「はい。
  僕はその力で皆を守りたかった。
  だから、力をつけたのにどうして!?」

 ネギ君が地面を殴りつけた。
 それだけで地面に深い穴が空きおった。
 凄いのう。

 「弱きを蹂躙する力、奪う力、殺す力、恐怖を与える力。
  これらもまた力なんじゃよ。」

 「えっ!?」

 ネギ君は何を言われたのか分からないといった顔をしておる。
 ワシは話を続けた。

 「ネギ君。
  エヴァは自分をなんと言っておったかね?」

 「最強の悪の魔法使いと。」

 「そうじゃ。
  エヴァは自分で名乗るような悪を行ってきておったのじゃ。
  殺すこと、奪うこと、恐怖を与える事じゃな。」

 「・・・・・・・。」

 言葉もなく呆然としておる。
 考えたこともないのじゃろうな。
 自分の師匠がしてきた事など。

 「そして、その行ってきた悪が、エヴァを信じる人を奪ったのじゃ。」

 「マスターを信じる人を?」

 「そうじゃ。」

 ここからが大事じゃ。
 ネギ君には持った力の意味を教えねばならん。
 大きな力を持とうが、エヴァのように使ってもらっては困る。
 目に力を込め、ぐっとネギ君を見つめた。

 「600万ドルの賞金首。
  これがどれほどの価値を持つか知っておるかの?
  人の一生が買えるほどの金額じゃ。
  なぜ、それだけの賞金を受けたのか。
  それはそれだけのお金を払っても良いと思う人がでるほど、持つ力を悪いことに使ったからじゃ。」

 「それは・・・・・・・・・・。」

 「確かに、ネギ君に取っては厳しいが良き師匠であったんじゃろう。
  しかしの、ネギ君に取っては良い師匠ではあっても、周りの人間に取ってはそうではなかったのじゃ。
  知っておるかの?
  数日前に魔法先生が二人、エヴァによって病院送りにあった事を。」

 「マスターがそんなことを!?
  本当ですか?」

 「本当じゃ。
  疑うなら誰でも良い、先生に聞いてみたらどうじゃの。
  すぐに分かることじゃ。」

 「・・・・・・・。」

 「魔法先生はの。
  先日の一件でエヴァが師として相応しくないと、エヴァに師を辞めてくれと交渉したんじゃ。」

 「先日の一件って。
  それじゃ僕のせいで。」

 いかん。
 ネギ君が罪悪感に染まりそうじゃ。
 慌てて告げる。

 「きっかけにすぎん。
  問題の本質はそこではない。
  間違えるんじゃないぞネギ君や。」

 ここが肝心だと言葉に力を込めた。

 「なぜそれが起こったのか。
  それはエヴァの力の使い方によってじゃ。」

 「力の使い方。」

 「そうじゃ。
  エヴァは持つ力を他者を蹂躙するために使ったのじゃ。
  確かに色々と理由はあろう。
  しかしの。
  どんな理由があろうと殺されるものにとっては、恐ろしい力でしかないんじゃ。
  エヴァは600年間その力を振るい続け、人々の心に恐怖を刻んだのじゃ。」

 「そんな事を師匠がしてたなんて。」

 純粋なのは良いが思考停止は良く無いのう。
 いや、頭では分かっておるのか、今、実感しておるのじゃな。

 「恐怖を与え続けたエヴァに師事する。
  それは魔法先生に衝撃と心配をあたえたのじゃ。
  当たり前じゃな。
  大事な仲間の先生が、悪を名乗る魔法使いに弟子入りしたんじゃから。」

 「僕はそんな事になるなんて思いも・・・・・。」

 「そうじゃな。
  ワシも悪かったのじゃ。
  ワシはエヴァがそこまで悪い人間で無いと知っておったし、その力は最高のものであるのも知っておった。
  ネギ君が強くなるのに最高の人材と思ったのじゃ。」

 遠い目をして呟いた。
 まったくおしい人材を亡くしたものじゃ。
 この後のネギ君の師匠をどうするか考えるだけで頭が痛いわ。

 「そしての、魔法先生が病院送りになったせいで、その心配が最高潮になり暴走したのじゃ。
  じゃが、忘れてはいかんぞ。
  彼らはネギ君を心配し、助けようと行動したんじゃ。」

 「僕を助けるために・・・・・・でも、だからって!」

 「分かる。
  分かるぞ。
  ネギ君。
  じゃが、これが事実なんじゃ。
  彼らは本当にお前さんを心配したんじゃ。
  助けたかったんじゃ。」

 「そんな・・・・・助けたかったなんて。
  ・・・・・・僕は誰を恨めばいいんですか?」

 「誰も悪くなかったんじゃ。」

 「だって、誰も悪くないなら、どうして師匠は死んだんです?
  どうして!!!!?」

 感情のままにネギ君が叫んだ。
 ワシは出来るだけ真摯な声を出して説得する。

 「誰も悪くはなかった。
  じゃがの。
  一つだけ悪い所があったんじゃ。」

 「どこなんですか、それは!?」

 涙で一杯の目でワシを睨んできおった。
 凄い迫力じゃのう。
 こっちも気合を入れんと。

 「それはの。
  力の使い方が悪かったんじゃ。」

 「力の使い方!?」

 「そうじゃ。エヴァは最強の力を持っておった。
  じゃが、その力を正義のためには決して使わなんだ。
  悪のために使われたんじゃ。
  もし、エヴァがその力を誰かを助けるために、悪を断罪するために使っておったら、誰もエヴァを疑わなんだ。
  誰もが喜んでネギ君を任せたじゃろう。」

 「ちからの つ かい かた。」

 呆然とネギ君が呟く。
 ワシはさらに力を込めて叫んだ。

 「そうじゃ。
  力の使い方じゃ。
  良いか。
  ネギ君。
  今のお前さんはかの英雄と並ぶ力を持っておる。
  じゃがの、その力は諸刃の刃なのじゃ。
  他者を傷つけるために使えば、その力は自分に帰ってくる。
  力が大きければ大きいほど、リターンされる物はとんでもない物になる。
  エヴァがいなくなり、お前さんにどれほどの悲しみがあるのかは想像すらできん。
  しかし、この事を決して忘れてはいかん。
  エヴァは力の使い方を間違った。
  お前さんは決して間違ってはいかんのじゃ。」

 「間違った使い方をしない?」

 「そうじゃ。
  約束しておくれ。
  その力の使い方は決して間違えないと、弱きものを守るためにつかうのじゃと。」

 「僕は・・・・・僕は・・・・僕は・・・・。」

 俯いてネギ君が呟いておる。
 その足元には上から水滴がいくつも落ちてきては後を残す。
 どうやら、少しは説得できたようじゃのう。
 いやいや、どうなる事かと心配したが、ネギ君にとって良き試練となったようじゃ。
 これで彼は更に人として一皮向けるのは間違いなかろう。
 良かった。
 良かった。

 「ほれ。
  おまえさんを心配してくれとる者がきておるぞ。」

 「え!?」

 「「「「「「「ネギ(君。坊主)」」」」」」」」

 「ふぉっふぉっふぉ。
  お前さんにはこうして心配してくれる者がおる。
  彼女たちの為にも、力の使い方を間違ってはいかんぞ。」

 「はい。決して。」

 「良い返事じゃ。
  ではまたな。」

 「はい、また。」

 そう言ってネギ君は従者たちに向かって駆け出した。
 その姿には十分な決意と力が感じられた。
 どうやら心配はいらんようじゃな。
 さて、エヴァの後任の師匠を誰にするか。
 アルの奴にでも頼むとするかの。
 本体を人質にでもすれば、承諾もしようの。
 ならば次に考えるのは高畑君への弁解か。
 ワシは頭を悩ませながら、ネギ君達の後を追ったのじゃ。







続きますw
これがこの事件の裏の話になります。
次が最後の予定です。
よろしければ次もお楽しみください。


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