一
25年物のラガヴーリンをグラスに乱暴に注ぐと、彼女は、震える手で水も氷もなしにビート臭が鼻に付くそれを一気に煽った。きつい57%を超えるアルコールが喉を焼き、久しく冷感症と化した身体に熱をもたらしてくれる。灰色の世界に色が戻り、同時に脳細胞のシノプスの活動が混乱していくのが心地よい。
フェイト・T・ハラオウンは、義兄でもあり、直属の上司でもあるクロノ・ハラオウンとのいつも通り内実のない不毛なやりとりの末、指揮下の捜査官達の配置を独断で変更する旨、詳細な捜査項目と同時に各種の資料をまとめて関係各所にメールを送り終えて帰宅したところであった。すでに時間は午前一時を過ぎ、義理の娘のヴィヴィオは連日午前様のフェイトを待つ事もせずに寝てしまっている。いい加減食事をとるのも億劫になっていたフェイトは、居間のソファーの上に脱いだ服を投げ捨てると、下着にワイシャツ一枚の姿で、ここ数年の習慣となってしまっている睡眠薬代わりのアルコールの摂取に努めることにした。
時空管理局という、立法、行政、司法の三権を独占し、多くの平行世界を管理するという名目で支配する絶対権力機関の執務官であるフェイトは、統括執務官である義兄の指揮の下で内部監査という名目で管理局内幹部職員の私生活を監視し、内偵し、つまるところなんらかの弱みを握る仕事に従事していた。権力は腐敗し、絶対権力は絶対に腐敗する。その言葉の通り、幾多の管理世界を統括し支配する時空管理局もまた例に洩れず、数多くの美辞麗句に飾られた組織の存在理由の裏側で、金と女と利権の奪い合いに終始する権力闘争に明け暮れていた。彼女の仕事は、義兄の目となり耳となり、そして時には外套と短剣の持ち手として「敵」を「無力化」することであった。
フェイトの活躍のおかげもあってか、義兄は管理局内では最年少で統括執務官の地位に這い登り、フェイトもそのおこぼれとして佐官待遇の執務官として日々を仕事に費やしている。30前の小娘がそれだけの地位を獲得できたのは、十代の頃に挙げた赫々たる武勲と同時に、その後の十年間で人間の最も汚い薄汚れた弱みを嗅ぎ当てる才能を発揮してきたからに他ならない。
そしてその日々の積み重ねは、今ではくたびれきってアルコールに耽溺する女を一人作り出しただけであった。
「これ以上は、クロノに類が及ぶのに」
最初の一杯を胃に流し終わり、ぐらぐらと不安定な視界の中で、フェイトはそう独り言ちた。
義兄の命令で進めている男女問わず年少者を売り物にする売春組織への内偵は、同時に義兄が裏で経営している売春組織へのルートを明らかにしてしまう。まして、義兄が幼い頃の自分に似た少女を相手に行っている、陵辱というのも生温い性的暴行が捜査線上に浮かんでしまえば、いかな腐敗しきった管理局であっても表の法に則って厳重に処罰される事になる。
いつの間にか自分が、そうした唾棄すべき行為について一切心が動かなくなってしまっている事に気が付いたのはいつ頃だったろうか。フェイトは、二杯目のラガヴーリンを今度はゆっくりと舌の上で転がしつつ、自嘲の暗い笑いに喉を震わせた。
最近の義兄が妻と上手くいっていないのを、義母から聞かされているだけに、そうした裏事情を知るフェイトにとっては全てが疎ましい。独断で捜査官の配置を変えたのも、結局は義兄の保身のためと同時に、自分自身の身の安全を確保するためでもあった。自分を養女として迎え入れてくれたハラオウン家の庇護がなければ、三日とたたずに死体も残さず「捜査中の事故により行方不明」というステキな未来が待っている。そんな自分の薄汚さに胃の内容物をぶちまけたくなり、それを抑え込む為にグラスの残りを一気にあおる。
「結局、ドブ泥の中をはいずって、クソにまみれて死ぬのが私の運命(フェイト)なのね」
つまらない冗談に苦い笑みが浮かび、手荒く次ぎの一杯をグラスに注ぐ。
せめて、義理の娘のヴィヴィオだけでも明るい陽の当たる世界で生きて欲しい。なのに娘は、高等学校に進学してから管理局への入局をしきりに希望し、フェイトと言い争いにばかりなっている。
管理局に所属するという事がどういうことかはっきりと説明できないもどかしさが、最近の酒量の増加につながっているのは明確な因果関係にあろう。だが、こんな薄汚れた自分の正体を、せめて娘にだけは見せたくは無かった。
いい加減、思考がマイナスのスパイラルに入り始めたその時、突如フェイトの目前に銀色に輝く鏡の様なものが浮かび上がった。彼女は瞬時に宿舎を防護している結界の状況を確認し、目前の鏡に探知魔法をかける。その結果は、政敵による魔法行使が行われた形跡はなく、しかもこの鏡が異界へのゲートらしいということであった。ほっと安堵の溜め息をつくと同時に、ふっとこのゲートをくぐれば、もしかしたら今の希望を失い擦り切れていくしかない生と別れを告げられるかもしれない、そんな思いに駆られる。
高濃度のアルコールによって思考機能が麻痺しかけているフェイトにとってそれは、抗い難い誘惑であった。そのままふらふらと立ち上がると、グラスと酒瓶を手に銀色の鏡に身を投じる。
最後に一瞬、驚愕した表情で自分を見ている娘のヴィヴィオの姿が見えた様な気がしたが、すぐにそれもアルコールで麻痺した脳髄のどこかに意識されない記憶としてしまいこまれてしまった。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、その日十何度目にかなる使い魔召喚の呪文を唱えていた。同級生達はすでに自分の使い魔の召喚を終わらせ、契約も済ませてしまっているというのに、自分だけが何度召喚の呪文を唱えても一向に使い魔が現れない。
「次の授業もある。ミス・ヴァリエール、君の召喚は補習という事で放課後に行うということでどうかね?」
引率役の教師、ジャン・コルベールにそう諭され、ルイズは持ち前の癇癪を炸裂させそうになった。この魔法学院では数少ない、自分を蔑んだ目で見る事のない教師であるコルベールの言葉で無かったならば、ルイズはそれこそ百万言を費やしてでも召喚の儀式の続行をまくし立てたであろう。
だが、自分に対して好意を抱いてくれている数少ない味方を相手にわがままを押し通すほどには、彼女は愚かではなかった。
「判りました。あと一度だけ挑戦してみて駄目でしたら、補習ということでお願いします」
地の底から響くようなどすのきいた声で、それでも一生懸命丁寧に答え、ルイズはあらん限りの精神力を込めて杖を振りかざした。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしの僕よ。
神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!
わたしは心より求め、訴える!
我が導きに、答えなさい!」
なかばヤケクソ気味に聞こえなくもないが、ルイズにしてみれば切実な問題である。これで失敗すればそれこそ同じクラスはおろか、学年中の笑いものになるのは明らかなのだから。というより、すでにしてクラスメイトの嘲笑の声が雨霰と浴びせかけられているのだ。
ゼロのルイズ、と。
そんな彼女に神なり始祖なりなんなりが味方したのであろう、爆発とともにルイズが思わず一回転してひっくり返り、尻餅をついたまま身体を起こすと、目前のひと際大きな焦げが出来た跡に一人の女性がへたり込んでいた。
腰まである温かみのある金髪を先端で黒いリボンでまとめ、黒い下着に黒いストッキングの上からワイシャツを一枚羽織っただけの姿である。両手には酒瓶とグラスを握り締め、光を宿さない真紅の瞳がじっと地面に転がっているルイズを見つめている。
何と言うか、あまりに扇情的なその女性の姿にルイズのクラスメイトの少年らは、おおう、とも、ほう、ともつかぬ声をあげて食い入る様に見入り、女生徒らは悲鳴とも嬌声ともつかない声をあげて両手で顔を隠している。
そんな混乱状況の中で最初に我に返り動いたのは、教師のコルベールであった。
素早く彼女が何者がディティクトマジックによって確認し、その宿す膨大な魔力量に驚きつつも一切害意の感じられない様子から近づいても大丈夫と自身の過去の経験から判断し、自身の上着を脱いで半裸に近い彼女にかぶせたのだ。
「ミス・ヴァリエール、それでは契約の儀式を」
「ええっ!? そんな、だって平民の女性となんて!」
コルベールの冷静なひと言に、跳ね上がるように立ち上がったルイズは、心外といわんばかりに叫んだ。
確かに召喚の儀式は成功したとはいえ、呼び出したのが半裸で平民のよっぱらいの女性では、いくらなんでも面白おかしすぎる。
「ミスタ・コルベール! お願いです、もう一度召喚の儀式を!!」
「そういう訳にはいかない。二年生に進級する際、君達は「使い魔」を召喚する。その「使い魔」は君達の属性を決定し、今後の専門課程へと進む際の指標となるんだ。一度呼び出した「使い魔」を変更する事は許されない。何故ならば、春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好むと好まざるに関わらず、君は彼女を使い魔とするしかない」
「でも! 平民を使い魔とするなんて聞いたことがありません!」
すでに周囲のルイズをはやし立てる声は絶頂に達しているのだ。やれルイズが娼婦を召喚しただの、痴女呼びのルイズだの、百合のルイズだの。ここで妥協してしまえば、これから先どれだけ周囲に馬鹿にされることか。
だが、コルベールは穏やかに、しかしきっぱりと断固として言い切った。
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。確かに古今東西人間を使い魔にした例というのは寡聞にして聞かない。だが、春の使い魔召喚の儀式のルールは全てに優先する。君がどうしてもやり直しを要求するのであれば、留年してもらわねばならなくなる」
さすがに留年は困る。それこそ、厳格な両親や長姉に何と言って叱られることか。
「……わかりました。それでは」
ゆっくりと大きく息を吸い込むと、ルイズは意を決した声で朗々と呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
それからルイズは目を瞑って、きょとんとしている女性の唇に自分の唇を重ねた。
フェイトは、銀色の鏡に身を投じ意識を手放しかけつつも、何か巨大な力によって自分がある一点に引き寄せられる感覚に呆然としていた。確かに召喚士の知人もいるし、大規模な儀式魔法は自分の得意とするところである。だが、それにしてもこの魔法の力の規模の大きさは、そんな彼女をして呆然とさせるほどに大掛かりなものであったのだ。
呆然としたまま周囲に爆発が発生し、グラスの中のアルコールがこぼれ地面に吸い込まれていく。自分が完全に異界に召喚された事実よりも、お気に入りのラガヴーリンがこぼれてしまった方が気になってしまう。そしてそちらに酔った頭のわずかなリソースを振り向けてしまっていたため、目前の少女が自分の唇に彼女の唇を重ねてきた事に反応する事ができなかったのだ。
少女の唇が離れると同時に、額に激しい痛みと熱が走り、持っていたグラスを地面に落としてしまう。思わず悲鳴を上げそうになるのを噛み殺し、何事かと目前の少女を見上げた。全身が浸っていた心地よい酔いが一発で消え去り、いつもの、眼ではなく肌で周囲の状況を認識する捜査官としての自分が戻ってくる。
「すぐ終わるわ。「使い魔のルーン」が刻まれているだけだから」
平然と言い捨てる少女に、フェイトは半ば本気で一発ひっぱたいてやろうかと考えた。
そこで手が出なかったのは、右手に持っていたラガヴーリンの瓶をひっくり返すのが嫌だったのと、どうやら半裸に近い自分に上着をかけてくれたらしい中年男性の心遣いを無視するのはよろしくない、という判断があっての事であった。
「どうやら「コンクラクト・サーヴァント」は上手くいったようだね。……ふむ、珍しいルーンだな。しかも額とは珍しい」
中年男性は、あくまで純粋な好奇心からであろう、フェイトの額に浮かび上がったルーンを手元のノートに書き写してゆく。
「さて諸君、次の授業までもう時間がない。急いで教室に向かうように」
さっさと自分の用事を済ませたコルベールが生徒を促し、自分も宙に浮かび上がったその時であった。
「失礼、ミスタ・コルベールと仰いましたね?」
「その通り、私は当魔法学院の教師のジャン・コルベールだが、何かね?」
「いえ、実は何が起きているのか、ここがどこなのか、そもそも自分の身に何が起きたのか、さっぱり判らないのです。よろしければ納得のいく説明をお願いしたいのですが」
他の生徒らが宙を飛んで次の授業を受けるべくこの場を離れていく中、フェイトは、あくまで最後まで冷静さを失わず、ルイズと呼ばれた少女に儀式を最後まで続けさせたこの中年教師が一番まともに話が通じる相手と判断して声をかけた。
そのルイズといえば、召喚者である自分を無視して真っ先にコルベールに声をかけたのが気に入らないのか、フェイトの隣りでものすごい勢いで何かまくし立てている。そんな彼女をなだめすかしながらコルベールは、うなずいてフェイトを案内するように歩き始めた。
「確かに。突然呼び出されて使い魔にされたとあっては、確かに納得のいく説明を受けたいと思うのは当然ですな。それではミス・ヴァリエールと一緒にこちらにどうぞ」
「つまり、ここは私の居た世界とは別の世界であり、しかも元の世界に戻る事は不可能に近い、ということですか」
頭が痛い。なんというか、頭痛が痛いというレベルで偏頭痛がする。
フェイトは、手元のラガヴーリンの瓶を見つめ、一瞬その誘惑に負けそうになり、それでもなんとかぎりぎり一歩手前で踏みとどまった。それに、異世界ということはこれを飲み干したらそれで終わりな訳でもあるし。
「まことに痛ましい話ではありますが、そういう事になります。貴女には不本意でしょうが、しばらくで結構ですので、当トリステイン魔法学院の生徒であるミス・ヴァリエールの使い魔をやっては頂けないのでしょうか? 貴女が元の世界へ帰るための手段は、不肖このジャン・コルベールめが探す事をお約束いたしますので」
本当に済まなさそうな表情で、そう言って何度も頭を下げるコルベール。見事につやてかなその頭頂を見つめつつ、フェイトはハルケギニアに来て何度目になるかも判らない溜め息をついた。視線を傍らに座っているルイズに向けると、少女はむくれた表情であさっての方向を向いていたりする。
「それはまあ、こうなってしまった以上私としても異存はありませんが」
なにしろ、酔っ払っていたとはいえ召喚のゲートに自分から飛び込んでしまったのだ。責任の一旦は確実に自分にもある。
しかし薄汚い研究室だな、と、フェイトは周囲に視線を走らせる。フラスコ、ビーカーといったお約束の道具から、各種生物の標本、何かの部品と思われる金属製の加工物の山、山、山。ついでに無数の各種薬品の臭気が混じりあって、なんというか女の自分にとってはかなり居心地が悪い。
「それで、私が使い魔をするとして、雇用契約はどういう形になるのでしょうか?」
「あー、それにつきましては、召喚者であるミス・ヴァリエールとお話頂けないでしょうか?」
「こようけいやく? なんで使い魔とそんなもの結ばないといけないんです、先生!!」
あ、爆発した。
召喚の儀式からこのかた、ずっと不機嫌そうにぶすっとした表情でいたルイズが、もう我慢できない、という表情で椅子をけり倒して立ち上がる。
そんな表情をしなければ、とっても素敵な美少女なのに。残念ね。
怒りのあまりかわなわなと震えているルイズを横目で見ながら、フェイトは羽織っているローブの生地の材質や織りをのんびりと指先で確かめていた。
さすがにコルベールの上着一枚、という格好でいるわけにもいかないので、普段彼が着ない教員用のローブを貸してもらったのだ。ちなみに、フェイトとコルベールでは若干フェイトの方が背が高いせいか、着ていてほとんど違和感もない。ついでにいうと素足のままでは足裏が痛いので、サンダルも借りていたりする。
「ミス・ハラオウンは人間だよ? 例え使い魔と主人の関係であっても、人間同士であるならば互いの関係はきちんとしておくべきだ。しかも彼女は、異世界から本人の意思を無視して召喚され、こちらでは一人で生きていく事もできない身なのだからね」
「そ、それは、確かにそうですが……」
あら。
フェイトは諄々とルイズを諭すコルベールの論理に少なからず驚いていた。魔法を使う貴族が魔法を使えない平民を支配する、というこの強権的階級社会において、人間という観念と契約という概念が存在する事に。そうするとこの世界の文明は、思ったよりも高いのかもしれない。
ハルケゲニアという世界について思索をもてあそんでいるフェイトは、この何から何まで例外づくめで一杯一杯になってしまっている少女を、実はどう扱うか決めかねていた。
確かに悪い子ではなさそうだが、貴族、という単語に付きまとうイメージそのままに高慢でわがままで自己中心的な性格をしているのが判る。しかも、常識外の状況をなんとか自分の常識の範疇に押し込めようとして、ままならない現実を前にヒステリーを起こしてしまってもいる。使い魔、というからには、普通は何かファンタジーな幻獣でも呼び出すのが常識なのであろうし、そうなれば扱いはペットみたいなものなのであろう。それが人間の女性、それも自分より年上の女性を呼び出してしまっては、どう自分の中で整合性をとったら良いのか、混乱するのも仕方がない。
というより、この異常な状況において、あくまで冷静さを保っているコルベールが異常に有能なのだろうが。さすがに使い魔の召喚という、一歩間違えれば大惨事になりかねない儀式の監督を任されるだけのことはあるということか。
「ミス・ヴァリエール、よろしいでしょうか?」
あくまで穏やかに、柔らかな微笑みを浮かべてフェイトはうぐぐぐとか令嬢には相応しくない唸り声を上げている少女に声をかける。
「なによ?」
「使い魔と主人、という関係に違和感があるのでしたら、使用人と主人、という関係にとらえなおしてみてはいかがです?」
「なるほど、確かに使い魔と主人の関係は、主君と家臣の関係に近いものがあるからね。まあ、ミス・ハラオウンがミス・ヴァリエールに忠誠契約を行うわけにはいかないだろうが、使用人という立場で使い魔の役割に代えるのはありかもしれない」
ぽん、と手のひらを叩いて、コルベールが感心したようにうなずく。
「そ、そうね。まあ無理矢理呼び出してしまった責任もあるし、あくまで使用人として仕えてもらうのでも構わないわ」
「そういえば、留年云々というお話もお聞きしましたし、対外的には使い魔という事で私は構いませんから大丈夫ですよ」
うぐっ。
フェイトに軽く釘を刺され、思わず口の端が歪むルイズ。なんというか、自分を置いて状況が進んでいる現状が気に食わないらしい。
「それでは、これからについてお話をさせて頂いてよろしいでしょうか?」
あくまで穏やかさを保ちつつ、柔らかな口調で話しかけてくるフェイトに、ルイズは自分がとんでもない人間を召喚してしまったのではないかと、今更ながらに冷や汗が流れるような思いであった。