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[39928] 【習作】王直属護衛軍をやってるんだが何か質問ある?(H×H二次 オリ主) 
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/12 03:42
 はじめまして■■と申します。
 王直属護衛軍に転生したらというH×Hの二次小説です。

 なにぶんはじめての作品なので小説の書き方や基本的には原作の設定に沿いたいのですが勝手な解釈、間違った設定認識があるかもしれませんので、そのときは指摘していただければありがたいです。



[39928] 第一話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/12 03:43
第一話

 となりに猫耳美少女が眠っています。

 これだけ聞くと世の大きなお友達に爆発させられそうな状態だがチョット待ってほしい。まず場所が問題だ。なにかの繭の中にいるような状態。意識は朦朧としていて体を動かすこともできない。そしてとなりの猫耳美少女は俺の想像が正しければ猫耳至上最悪のネコ耳の予感。

 俺は確かスマホをいじくりながら街中を歩いているときに眩いライトとともにとんでもない衝撃を受けたところまでは覚えているのだが……これはやっちまったな、お約束のトラックにはねられて転生か?
 やっぱりながらスマホはダメ絶対!!




「王直属護衛軍をやってるんだが何か質問ある?」





『おまえの名は ジェトノワローだ』

 マジで直接頭に内容が伝わるんだな。
 これだけでももう俺が元いた世界では無いと実感させられる。

 結局繭みたいな中ではあまり意識が保っていられず次に目を覚ましたときには繭は破れた状態で目の前には気持ち悪いでっかい虫。んでもって隣にはネコ耳美少女。

 完全にH×Hの世界です。ありがとうございます。




 てゆーかありえねー転生するならもうチョットましな世界にしてくれよ。死亡率がマッハなH×H世界のさらに死亡率が高そうな位置づけかよ。

 しかも俺っていったい何? 王直属護衛軍てネフェルピトー・シャウアプフ・モントゥトゥユピーの3人(3匹?)じゃなかったのか? 俺自身もネコ耳はえてるし(触って確認した)手とかも肉球ついてるよ。
 4人目の護衛軍(この時点ではまだ2人だけど。)とか原作にはなかったよな。

 しっかりと確認したわけでは無いけどこの体はたぶんメスだ。ネフェルピトーよりもビックなおっ○いが体についてるし。

 繭から出た瞬間2人して素っ裸だったわけだから確認できたけどやっぱりピトーはメスだったんだな。
 ネットじゃあ男か女かでかなりの論争が巻き起こっていたわけだが俺はみんなを差し置いて一人シュレディンガーのネコの箱を開けたみたいだ。
 まー俺自身は断然メス派だったわけだからこの結果には満足なんだが、なんで俺までメスになってんの? 前世じゃバリバリの魔法使い秒読野郎だったのに、魔法使い秒読どころか一生転職不可になっちまったじゃねえか。

「んじゃあ行こうかニャ、ジェトノワロー」

 そういってネフェルピトーが先に歩いていく。
 とりあえず、こんなきもちわるい虫といっしょにいるのも嫌だし、何よりここがH×Hの世界のネフェルピトーが生まれたタイミングならポックルからの脳みそクチュクチュ念能力講座が始まるはずだ。

 あんなグロそうな場面は見たくないけどこの世界でちょっとでも生存確率を上げるには念能力の習得が必須!!

 「わかった」俺はそう返答してネフェルピトーの後ろについていった。




 他人のドヤ顔の後の落胆顔は非常に飯ウマでした。目が覚めてからようやく気分がいい状況に出会えた。

 モヅのキメラアントであるラモットのシュンとした顔は笑ったわ。ネフェルピトーも絶対わかっててラモットに声かけて頭に手を置いてるよな。不穏なこと考えている三下に身の程を教えてやったってやつ?

 念能力に目覚めて全能感に包まれている状態なら自分自身が王になるとか言う馬鹿な夢の1つや2つ見るものなのかね。

 ネフェルピトーもそうだったように俺も最初から念能力が使えるみたいだ。ただ、ラモットのように俺Tueeeeeeeeeeeとなるわけでもなく、転生した体とセットにオーラ自身も自分の一部と無意識に把握しているみたいだ。自分の腕や足のようにあるということを意識することがないのと同様に、当たり前に存在している。もちろん意識すれば、自分自身の体を包んでいるのも感覚で理解できる。もし念能力が使えなかったら死亡率がさらに伸びたんだろうな、使えてもほとんど死ぬかもしれないけど。

 その後、ネフェルピトーはあっさり食料にされた人間の骨の下にいるポックルを発見し頭蓋骨をご開帳。念能力の使い方やモロモロの情報を引き出していた。グロイ。

 ただこの時びっくりしたのがグロイで済んでる自分自身の精神状態。普通、一般人が人間の脳みそを生きたまま空けられるのを見たらゲロの1発や2発なんてスグのはずなのにそれもなく、そもそもこの場所にはキメラアントの食料にされた人間の骨がわんさかつんであるわけですよ。
 とてもじゃないけど普通の人間なら発狂しそうなぐらいスプラッタなシーンが目白押しな状況。キメラアントとして転生した体に精神が引っ張られたりしているのか?

 そんなことを思考している間にネフェルピトーはペギー(ペンギン型のキメラアント。こいつ虫っぽい部分がまったく無いよな……)と水身式で自身の系統が何かを調べようとしていた。

 ついに来たかこの時が!
 
 やっぱりH×Hを呼んだことがあるやつなら一度は自身の系統が何かとか、俺だったらこんな能力にするなーとか考えるよな。
んでもって俺はネフェルピトーと同じ繭から生まれた王直属護衛軍なわけで。

 ネフェルピトーと同じ特質系とかならこの世界で普通の人間として生きていくトンでも能力でも作って、さっさとこの状況からおさらばすることも天空闘技場とかで俺Tueeeeeeeeeeeやりながら適当に生きていくこともできそうだしな!!




 ……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

 俺が水見式を試そうと水を張りその上に葉っぱを乗っけたグラスにオーラを送り込んだ瞬間ドバ! っと水の爆発が起こったわけですよ。
 来たコレ特質系!! これで勝つる。と内心歓喜していた俺を傍目にネフェルピトーの一言。

「ニャハハ、ジェトノワローは強化系だニャ」

 え? このクソネコは何を言っとるんだ?
 爆発が起こったんだから特質系だろ?

「俺とは比べ物にならねえくらいの水の増量。さすがジェトノワロー殿」

 ラモットが言った瞬間俺も気づいた。水が瞬間的に増えて爆発したようになったということに。
 ふざけんなよラモット、てめーの時は老人のションベンみたいにちょろちょろグラスから溢れただけだったじゃねーか。
 てめーのしょぼい水見式のせいで盛大にぬか喜びをしてしまったじゃねーか!!
 てゆーかまじかよ強化系かよ……クラピカは強化系じゃなかったことを悔やんでやがったけど、俺が今ほしかったのは戦闘力じゃなくて適当に暮らす為の特殊な能力だったのに。

 そうして俺がぬか喜びからの落胆→放心状態(今ココ)になっている間に、ネフェルピトーはさっさと円(オーラの覆っている範囲を広げる。オーラに触れたモノの位置や形状を肌で感じ取ることができる。)を使って獲物(そういえばこの時点でゴンとかキルアとかカイトが近くまで来ているんだった)を見つけたらしく、いつの間にかいなくなっていた。





 気づいたときには狩りは終了。カイトが死んだらゴンさん登場フラグが立ってしまうのにも気が回らずあっさりとフラグを建築し終えたネフェルピトーだった。

 このクソネコは自分がとんでもない死亡フラグをおったてたことも気づかずボクって強いかも、とドヤ顔をする始末。
 てめーは勝手にゴンさんにでもボられてろ!!
 どうせなら俺も一緒に出てカイトだけでなくゴンとキルアも殺してしまえばゴンさん登場は阻止できたわけだし、若干主人公組み参入と2次創作によくある展開を考えなかったわけでもないが自分自身の生存確率を考えればあの二人を捕獲・殺害がベストだったか?

 いやいや、俺の今のアドバンテージは原作を知っているということ。
 ただでさえ王直属護衛軍4人目というイレギュラーが出てきたことによって原作から離れていっている状況でゴン・キルアがいなくなるのはまずいな。
 ネテロ会長が突入班の戦力が不足と判断して無理して十二支んを引っ張り出すことも考えられるし、そうでなくてもゾルディックの他の金で雇われる強いやつというのはこの世界にはいくらでも居そうだしな。
 ナックルのハコワレやメレオロンのパーフェクトプランのように格上に勝つための念能力を持っているやつが増える可能性というのはできるだけ除外したい。
 相手側の念能力が全てわかっているっていうのはそれだけで後出しじゃんけんみたいなもんだし、ひとまずは原作に沿った動きを行うのが得策か。

 とりあえず、王が生まれてくる前までがひとつの分岐点になりそうだな。王が生まれてしまえば護衛という名の完全拘束が待ちうけているわけだし、その前までに人間側に着くか虫側につくかの判断を行わなければな。

 いや待てよ、俺が転生していることによって精神状態の変化からシャウアプフに怪しまれるこry「冷蔵庫ニャ!!」


 せっかく考えをまとめようとしているのに、狩りの戦利品であるカイトの死体を保存するための冷蔵庫をあの馬鹿姉はご所望ですか……姉?

 そういや同じ繭から出てきたわけだからネフェルピトーとは姉妹になるわけか?俺自身も無意識のうちにネフェルピトーを姉だと認識していた。




姉はネコ耳美少女で語尾にニャをつけます。
誰か俺と入れ替わってくれる人募集中!!

※ただし、スプラッタ・ブラック会社(24時間拘束)・嫌な上司・嫌な同僚・部下は虫・余命数十日がセットでついてきます。






[39928] 第二話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/13 23:52
第二話



 みなさんこんにちは、王直属護衛軍のジェトノワローです。

 転生してから1週間が経った。キメラアントとしての生活にもだいぶ慣れてきたように思う。

 まず、俺自身の容姿に関してだがこれについては自分自身のことながらかなり驚いた。ネコ耳美少女である。ピトーだけでなく俺自身も。

 髪はピトーの銀髪と異なり漆黒、目も黒色だった。髪の長さはピトーと同じぐらいだが、くせ毛ではなくさらさらのストレート。顔はピトーに瓜二つ、身長は俺のほうが若干低い。そしてネフェルピトーよりもビックなおっ○いを搭載している。妹よりすぐれた姉なぞ存在しねぇ!!

 コレはあれか? キメラアントの王にとっての「余の護衛軍がこんなに可愛いわけがない」状態か? リア充爆発しろ!! ……そういえば薔薇で爆発するんだったな。

 そんなこんなでいつの間にかTSをはたして1週間、その間にやったことといえば情報収集と修行である。

 情報収集はもちろんネット。ピトーが冷蔵庫をほしがったように、俺はパソコンとネット回線を所望した。

 いま俺が居る場所はヨルビアン大陸バルサ諸島の南端に位置する島、ミテネ連邦。5つある国のうち、その西端の一国であるNGL自治国である。機械を使用しない生活を旨とするため、パソコンとかはなさそうなもんだがところがどっこい。NGLがエコ団体として持つ特徴は、あくまでも表面上のものであり、本当の目的は麻薬の製造と売買だ。

 原作ではゴンやキルアが入国時に機械や金属等の持込が無いように厳しい審査が行われていたが、キメラアントが巣にしているこの付近はまさに無法地帯。

 パソコンを俺の部屋に運び込み修行の間に情報収集を行った。情報収集といっても原作で語られていたこととの違いはないかなどの確認作業がほとんどであったが俺自身が記憶している内容と調べてわかったことはそう大差がなかった。ミニチュアローズの毒の対処法等が掲載されていないか等も世界の兵器一覧を流し読みしているフリをして探してみた。電子戦を得意とするようなハンターが存在するかもしれない状態でピンポイントで原作に出てきたキーワードを調べるのは気を使った。
 詳しいことまではわからなかったが核と同じ原理であれば毒は放射能によってDNA自体を破壊するものなのではないかと推測される。
 ピトーのドクターブライスで対処が可能かどうか怪しいところだ。

 「姉さんの能力は毒などの回復もできるの?」とピトーに聞いたことがあった。

 「ん~、やってみなければわからないって感じかニャー。肉体的な損傷なら大体修復できるようになったけど、毒はやったことがニャいからニャー」
 「王様に毒殺は付き物な気がする。毒のほかにも病気や放射能とかにさらされた王を回復できる手段は必要じゃない?」
 「確かにニャ、でもノワ。 王がそうならないように対処するのが直属護衛軍だニャ。」
 すこし露骨かもしれないがこの誘導がのちのち生きてくればいいのだが、それにしてもピトーとしゃべっているとニャが多いな。その状態で「直属護衛軍ですから(キリッ)」ってされても萌えるだけだった。

 ちなみに、なぜか俺がピトーを呼ぶときに『姉』となってしまっているがコレはピトーからの要望だ。
「僕の方が先に繭から出たから僕がノワの姉だニャ。姉を敬うのニャ。」ハイ姉さん。




 修行のほうは順調である。コレに関しては俺が習得している念能力にも関係があるのだが、後ほど解説しよう。修行と情報収集、本来であればもう1つやらなくてはいけないことがあるが俺はそれをやっていない。
  その1つとは「労働」である。 直属護衛軍とはつまり護衛が仕事なわけだが、現状ピトーしか円を広範囲に広げることができず俺ははっきり言ってやることがなかった。

「ただそれ(無職)だけの事」

 同じく無職の同僚がお決まりのセリフを吐いてくる。

 こいつはシャウアプフ。タキシードのような服を纏ったイケメン青年と言ったような外見で、頭から生えている触角とマントのような羽が無ければ人間と言っても差し支えないほど人間そのままの姿をしている。イケメン爆発しろ! 俺たち姉妹が生まれて数日後には繭から出てきた直属護衛軍の一人だ。

 「ピトーとノワローが同じ繭から生まれた姉妹といっても、オーラの性質はずいぶんと異なるのですね」

 「俺は強化系だからな。まあ王を守るため外的を排除するという任務においては一番適しているかもしれないが」

 実際のところ、ピトーとのじゃれあいでも単純な腕力や防御力、スピードでは俺の方が姉を圧倒していた。妹よりすぐれた姉ry
 そのかわりに円や陰や周といったオーラの形状を変化させたり、自身の肉体以外へのオーラへの影響というものはピトーに及ぶべくもなく。円の半径も現在では10メートルほどしかない。円というよりかはただのオーラ量に頼った範囲の広い纏といった感じなのが悲しい。

 オーラの操作は俺にとって重大な課題である。
 原作のプフの能力にはスピリチュアルメッセージといい、相手の周囲に自身の羽の麟粉を撒く事でオーラの流れを鮮明にし、相手の感情や思考を読み取るものがある。

 いまだに人間側につくべきか蟻側につくべきか揺れている俺を反逆の意思ありとプフに判断される前にオーラの操作を完璧にすることが俺には求められている。

 「プフは能力をもう決めたのか?」既にオーラから感情を読み取られている可能性に内心ドキドキしながらプフに問いかける。

 「原型はできあがりました。後は錬度と経験を積むだけです。ノワローはいかがですか?」

 「こちらも同じようなもんだよ。」

 やはり、この1週間の出来事での最大の成果は、念能力の発を習得したことである。

 能力名【俺Tueeee/アラベスク】
 ・自身を強化する。

 コレが俺の開発した能力である。

 あ、やめて馬鹿にしないで。ただの強化系じゃねえか発でも何でもねえよと言わないで。
 能力開発にあたり、俺自身に何が足りないかを考えたとき、悲しいかな自身に足りないのは賢さだと結論付けた。

 別に転生前にそこまで馬鹿だったわけでもなく、一般的な大学を出た一般的な社会人だったという自負はあるが、H×Hの世界ではそれではダメだ。
 ハンターという一種の身体的・頭脳的エリートであってもポンポン死亡するこの世界で思考力が一般レベルでしかないのは、今の人類に敵対する虫の一員という状態で死亡一直線なわけだ。

 強化系以外であれば、仮に具現化系などであれば念能力の容量全てを使用してでも今の状況を打開できる特殊な能力を持った念の具現化物を作ったりして逃げの1手を打つわけだが強化系ではそのような特殊な能力は半端なものしかできない可能性がある。

 それであれば強化系で自身の知力をアップさせ幻影旅団の団長であったりクラピカであったりと原作では危険なことをしているにもかかわらず生き残っているやつを見習うべきだと俺は考えた。
 むしろ原作では馬鹿なヤツは死に、賢いやつが生き残るを地で行っていたように思われる。馬鹿にはつらい世界だぜ……

 俺Tueeeeは自身の強化に
 ・強化する力を任意で選択する。知力であったり握力であったり、戦闘力という抽象的なものでも良いが強化対象がはっきりしている方が効果がアップする。
 ・強化する力の選択は1度行うと1時間は変更ができない。
 ・自身を強化する。(他者へのこの能力の使用は不可)
 ・この能力以外の発を習得しない。
 上記のような制約と誓約をつけた。

 正直やりすぎだと思う。しかしネテロ会長やゴンさんと万が一に戦うことになった場合にこのぐらいでないと勝利を収めることは難しいと考えた。俺の記憶では王宮への襲撃まで三ヶ月前後しか時間がなかったはずである。
 出し惜しみをして余命三ヶ月を乗り切れるとは到底思えなかったわけである。

 能力の開発を行ってからは「成長力」を発で強化しつつオーラの操作を重点的に修行をおこなった。

 ジャンプ漫画でよくある修行フェーズですよ!このフェーズが終わる暁には俺Tueeeeターンが待ってるぜ!!


 



[39928] 第三話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/17 17:48
第三話



 ドスッ!!

 俺の体にザザン(サソリのキメラアント)の尾がつき刺さっている。

 「フフ、相手をジワジワと確実に殺す特性の毒よ。」

 --ああ、確かに意識が朦朧としてきた。俺の第二の人生もここまでか・・・





 「王直属護衛軍をやってるんだが何か質問ある?」・・・・完!!























 ではなく、【俺Tueeee/アラベスク】発動!!強化「解毒力」!!

 「ありがとう。ザザン」

 「いえ、ジェトノワロー様のお役に立ったのであれば何よりです。」

 長かった、ついに師団長クラスの毒をくらっても大丈夫なぐらいの毒への耐性が身についたようだ。
 皆さんこんにちは、ジェトノワロー0.08歳です。
 転生してからそろそろ1ヶ月が経つ。未だに無職のままだが、ニートでは断じてない。ニートとは就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない状態を指した用語である(ウィキペディア参照)。
 今の俺は素晴らしき護衛軍となるため日々職業訓練に勤しんでいるのである。(ただ死にたくないだけとも言う)

 当初はこの毒への耐性訓練も苦労の連続だった。ぶっちゃけ毒の特性を把握していなかったために死にかけたこともある。
 キルアが10年以上かけて身につけた物を1ヶ月弱で身につけるのは念の力を使ったとしてもなかなかに厳しかった。

 「さすが、師団長の毒だな。まだ完全に解毒できない。」

 「この毒で殺せない生物が居ることのほうが驚きです。私自慢の毒のはずなのですが……」

 「まぁ毒持ちの奴にはほぼ全員手伝ってもらったからな。そのなかでも間違いなく1級品(悪いほうに)だよ。」

 「ありがとうございます。ところで・・・」

 サザンは若干聞きづらそうに俺を見ながら聞いてきた。

 「なぜ、ジェトノワロー様のお召し物はジャージなのですか?」

 「何か悪いか?」

 「あ、いえ そのような事は……」

 そう、ジャージである。特に何の変哲もない黒のジャージを俺は着ている。

 俺の転生前の性別は男である。男がジャージを着て何が悪い。
 確かに今の俺の容姿であればメイド服やゴスロリ等が恐ろしく似合うだろう。とんでもなく似合うこと間違いなしである。
 黒毛ネコ耳メイドとか大好きでしたよ。
 しかし漢の中の漢である俺はそんなものは着ないのである。
 かなり似合うだろうなーと自他共に思っていても着ないのである。

 サザンは原作でも幻影旅団との戦闘時にチャネールだかなんだかのお高そうな服を着ていたからな。
 俺が野暮ったいジャージを着ているのに何か思うところでもあったのだろう。




 修行の方は、順調である。 とは言いがたい。
 実際にオーラの操作や基礎能力は「成長力」を強化することによって大幅に成長していると思われる。

 しかし行き詰っているのも事実である。

 第一に十分な対戦相手がいない。
 ネフェルピトーは円での周辺警戒を行わなければいけないし、いざ戦うとなってもすでに圧倒できるだけの力は身につけてしまった。強化系と特質系では身体能力の差が如実に出てしまう。
 シャウアプフもダメだった。原作でもガチバトルで強いシーンは見かけなかったし、分裂されたら厄介だが、戦闘経験値を積むという目的では対戦相手としては不十分である。

 ネフェルピトーに操られたカイトはそもそも相手にすらならなかった。ワンパンでキリモミしながら飛んでいった。あ、腕が取れてる。
 大事なおもちゃをあっさりと壊された姉のガッカリした顔はもう見たくない。
 余談だが、カイトはしっかりと女王に食われていたようである。頭だけはピトーが確保していたが体は女王の腹の中。
 カイトもキメラアントとして転生していたことから、確かに女王に食われるという工程を踏まなければカイトの記憶を持っているキメラアントは生まれようがなかったな。
 大事なおもちゃ(下パーツ)をあっさりとボッシュートされた姉のガッカリした顔はもう見たくない。
 その後のおもちゃ修理は大分頑張っていたようだ。円での周辺警戒はどうした、周辺警戒は!ドクターブライスを使っているときは円ができないのだからあまりそっちばかりに集中するのはやめてくれ……

 修行が行き詰る第二の理由としては全力でのオーラの放出は人間側への要らぬ脅威を与える可能性があることだ。
 原作でのネテロ会長の精神統一に遠方からのキルアが感づいたように、俺がオーラを出しすぎることはこの周辺にいる討伐隊第一陣に対して予想不可能なアクションを取らせてしまう可能性があるし、未だに人間側へ着くことも考慮している身としても無用な警戒をされたくはない。
 堅の修行は陰と併用して行わなければいけないといういまいちなものになってしまった。

 第三の理由としては修行方法の不足である。
 転生前は喧嘩もあまりしたことが無い俺である。そもそも武道を嗜んでいたわけでもなく。
 【俺Tueeee/アラベスク】で「知力」を強化して何か思いつかないかを試したのだがダメだった。
 「知力」強化で団長やクラピカのようにキレッキレの頭をゲットしたと思ったのだが、ゼロに何を掛けてもゼロなのは代わりなかった。もちろん「知力」は確かに上がる。例えば能力発動時に将棋や軍儀を行えば、普段は10手先までしか読めないところを20手、30手と読むことも可能だ。
 だが、ゴンがハンター試験のトリックタワーで思いついた壁破りや、幻影旅団のノブナガから逃げるための壁破り(ゴンは壁を壊してばかりだな……)のように盤外からの1手、常識を覆す発想は俺の能力では得ることが難しいのだ。化け物の俺が言うのもなんだが主人公組みはやはり化け物集団なわけである。

 こんな出来事があった。

 【俺Tueeee/アラベスク】発動、「発想力」強化!!

 「姉さん、姉さん!○○を思いついたんだけどどう?」

 「ん~でも△△の場合はどうするニャ?」

 「(´・ω・`)」

 「ノワはじつに馬鹿だニャ~。」

 「発想力」の強化は徹夜明けの思いつきに等しいレベルの案しか出てこなかった。
 せめてネフェルピトーに言う前に「知力」強化で検討してから言えばピトエモンに馬鹿にされることもなかったのに……









 【俺Tueeee/アラベスク】発動、「決断力」強化。……

 ダメだ、未だにどちらにつくべきかの決断がつかない。王が生まれるまであまり時間がないにもかかわらず、いまだに人間と蟻の間で俺は揺れていた。

 原因はあの困った姉だ。

 毒の耐性訓練を始めたばかりの頃、俺は一度死にかけた。レベルの低いキメラアントとのコミュニケーションは時としてうまくいかない。一匹の下級兵に毒を打ち込んでもらった後、特に体の不調を感じなかったために「解毒力」から「成長力」に【俺Tueeee/アラベスク】を切り替えて修行を行っていた。
 体の変調は三十分もしない内に現れた。遅効性の毒だったのだ。どのような毒か下級兵からのテレパシーでは完全に把握しきっていないことが油断の原因でもある。
 能力の制約上、一度切り替えた強化箇所は変更から一時間経たないと切り替えることができない。意識が……薄れていく……






 「ノワ!」

 姉が俺の部屋に飛び込んできた。俺の様子がおかしいのを円での周辺警戒で察知したようだ。

 【玩具修理者/ドクターブライス】発動。

 「大丈夫?ノワ」

 姉の治療で何とか一命は取り留めた。

 「ありがとう。姉さん。」

 「ノワは……本当に馬鹿ニャんだから……」

 姉の心配した顔は、もう見たくない。


 



[39928] 第四話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/17 17:48
第四話



 モントゥトゥユピーが生まれた。

 「腹減った」

 起きて一言目がそれか。

 「おはよう、ユピー」

 「正しくはモントゥトゥユピーですけどね」

 ピトーの挨拶にシャウアプフが補足する。
 モントゥトゥユピーは王直属護衛軍の中で唯一人間とではなく魔獣との混成型のキメラアントだ。

 系統もピトー、プフが特質系なのに対して強化系のはずだ。
 つまり俺と同じ系統である。俺はこいつと脳ミソ同レベルなのか?

 これで王直属護衛軍が全員揃った事になる。プフが生まれた時もそうだったが、ユピーも双子では無いようだ。
 やはりピトーの誕生時だけが原作と異なるイレギュラーだったようだ。

 そしてユピーが生まれたということはもう間もなく王も生まれるということになる。貴重な双子枠をピトーで使ってしまって、王と一緒に生まれてくるはずのカイトの転生体が生まれなかったらどうしよう。




 「今日もノワは食べないのかニャ?」

 「グロイ、相変わらずよく他の奴らはそんなもん食えるな」

 ユピーが腹減ったとうるさいので、食事タイムとなった。
 俺はさすがに人間肉団子は食べる気にはならない。人間(前世)としての記憶が残っている身としてはどこの毛かわからないものがはみ出していたり、眼球がそのまま残っている肉団子を食す気にはとてもならない。
 プフなどはナイフとフォークを使って優雅に食べているつもりかもしれないが、お前の食っている肉団子はたぶん男の肉団子だぞ、ナニかがはみ出している。あの豚型キメラアントの料理長、肉団子はちゃんとミンチにしてくれ……

 「ユピー、俺の分も食うか?」

 そう言って出されたものをユピーに渡す。

 「もらうぞ」

 「好き嫌いは良くないですね。女王に提供する分を考えると掃いて捨てるほど増殖してる食料も貴重ですよ。最近は兵隊アリが確保してくる量も目減りしてきていますしね。」

 さすがに俺自身も1ヶ月飲まず食わずだったわけではない。NGLの麻薬工場には人間用の食料も保管されていた。
 他にそんなものを食うキメラアントもいないため食料には困っていない。ほとんどが、保存食の缶詰のため、飽きはくるが……
 俺的ランキングでは銀の○プーンが一番、モ○プチが次点か。

 「ノワのほうがよっぽの偏食ニャ……」

 若干あきれた顔でピトーがツッコんでくる。

 「ユピー、俺の分の肉団子やる代わりに後で相手してくれよ。」

 もう間もなく、王が生まれる。その前に俺自身がどのぐらい強くなったのかを確認したい。
 ユピーは単純な戦闘力で言えば王直属護衛軍の中で一番強い固体だ。
 魔獣ベースの肉体は人間ベースのプフやピトーよりも遥かに強靭なはずだ。




 「一応、条件としては巣をあまり壊さないことぐらいだな。後は相手を殺さないようにするぐらいか」

 「ああ、それでいい」

 そう言って、自身のオーラを練りこむ。【俺Tueeee/アラベスク】は1時間前から「成長力」を強化した状態のため、戦闘中に切り替えることも可能。
 この戦いが、討伐隊との戦いまでの最後の戦闘になるはずだ。しっかりと戦闘の空気を学ばなければ。王が生まれてからは恐るべき24時間労働が待っているはずだ。

 「それじゃあ、はじめるニャ」

 相対した二匹、先に動いたのは俺だ。

 10m以上離れていた二人の距離を一瞬で詰め挨拶代わりの拳を突き出す。
 ユピーは予想以上の速さに驚いているのか反応が遅れている。とっさに急所を防御されたためボディーへの一撃を繰り出す。ダメージも多少発生した実感がある。
 スピードは圧倒的に俺が有利だ、今もユピーが繰り出してくる拳を紙一重の距離で楽々避けることができている。

 戦闘開始から1分、こちらは1発ももらわず相手をサンドバッグ状態にしている。
 1発でももらうと大ダメージを受けるという状況で【俺Tueeee/アラベスク】で強化した「成長力」が活きている。もうユピーのオーラの動きを読みきり、次にどのような攻撃がくるのかがほぼ判るようになっている。

 これなら、【俺Tueeee/アラベスク】で強化箇所を戦闘寄りに切り替えるまでもなく、勝利を納められそうだ。ユピーの攻撃も当たらないことに苛立ってか闇雲に拳を振り回しているだけになってきている。

 俺自身の攻撃も致命傷となる物は与えられていないが、確実にダメージを蓄積させていっている。

 相手の左右の拳からのコンビネーションを避ける。次にどのような攻撃がくるかわかっていれば攻撃を避ける体制にも余裕ができてくる。今の左右からの拳も最低限の体重移動と、足運びのみで一発目を避け。二発目はシッポを振ることによる反動で腰から上体をずらすことにより足を動かさずに回避。二発目にあわせてカウンターの拳を突きこんでやった。
 人間のときに無かった尻尾が意外に役に立つ。生活の中で適当に物を取るとき等に意識して使っていたおかげで大分使えるようになってきた。

 オーラの流れから次のユピーの攻撃は払い足気味の蹴り。後ろに飛んで避けた俺をユピーが追撃する。
 オーラが右拳に寄っているのが見える。予想に違わず大振り気味の右ストレートが来る!?
 マズイ! その軌道の先には姉さんもいる。
 とっさに【俺Tueeee/アラベスク】を発動、「防御力」を強化してユピーの拳を受ける。

 ドゴン!!

 巣の壁まで吹っ飛ばされたが、能力のおかげでダメージはほとんどなかった。

 「ようやく一発お返しできたぜ」

 「そこまでかニャー」

 やられた!! 闇雲に攻撃していると見せかけてネフェルピトーの方に避けるように誘導されていた!?
 もしコレがナックルのハコワレのような能力者が相手だった場合、詰んでいた可能性がある。俺自身も能力の切り替えを使わされたため1時間は「防御力」を強化した状態が続いてしまう。こちらの方が相手に多くのダメージを与えているが、俺からすれば完全に敗北であった。

 「いつからこの状況を考えていた?」

 「戦闘開始からしばらくしてか?俺のスピードではお前を捕らえきれないのはすぐわかったからな」

 「戦闘が有利に進んでいるからってノワは油断しすぎニャ。まったくノワはじつに馬鹿だニャ~。」

 ぐぅ……ピトエモンめ。しかし俺に足りなかったのはそこか、相手を圧倒していたために思考が停止してしまっていたのかもしれない。攻撃が当たらない現状を打破するために策を巡らすのは至極当然のこと。あの状況のまま、何も行動を起こさずにサンドバッグにされている奴はドMぐらいしかいないだろう。

 負けはしたが収穫はあったように思う。窮鼠猫を噛むといったことを忘れないこと、相手がネズミ以下の敵だったとしても俺自身が噛まれうる猫だという事を忘れてはならない良い教訓になった。ネコ型キメラアントだけに。




 ――そしてその数日後、王が生まれた。



 



[39928] 第五話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/21 02:25
第五話



 「馳走を用意せよ。余は空腹じゃ。」

 ついにキメラアントの王が誕生した。

 確かに王に相応しい凄まじい存在感とオーラ。しかし、出てきてからの第一声がユピーと一緒って……

 予定よりもかなり早く生まれたことによる弊害か女王蟻は瀕死だ。とりあえず、カイトが転生しているかどうかを凝で見てみるか。

 パァン!

 「王の御前でどこに目を向けている。」

 殴ったね!!(今世では)親父にも打たれたこと無いのに!

 「失礼いたしました。」

 うおぉーーー超☆ワガママ!!

 初っ端殴られるとは思わなかったよ。とっさに【俺Tueeee/アラベスク】で「平常心」を強化しなきゃヤバかった。
 最初の内だけだとは思いたいがこのままの性格が続いたら、確実に世界は滅ぶぞ。

 その後、瀕死の女王の治療を求めるコルトを袖にして、巣の屋上テラスに向かった。ピトーのドクターブライズであれば瀕死の女王を治せただろうが、王を生んだ女王はもう不要だとあっさり治療を断っていた。ピトー冷てーな。

 俺が毒で死にかけたときは王にとって必要だったから治療してくれたのか? それとも、姉として心配だったから直してくれたのかどちらなのだろうか?
 原作では王が腕を自らちぎった時の治療の際にピトーの円が消え、事情を知らないゴンたち討伐軍が何を起こったのかを推測していた。そのときイカルゴ(タコのキメラアント)やメレオロン(カメレオンのキメラアント)は護衛軍の誰かを治療しているという可能性は無いと断じていた。俺としてはピトーが俺自身を心配して治療してくれたと思いたい。

 転生してからの2ヶ月弱で確かに姉妹としての絆的な何かがあると思わせることもチラホラあった。

 ――俺とユピーとの模擬戦闘で油断している俺をたしなめる為、ユピーの拳を避けるそぶりを見せなかったり。

 ――ピトーの実験が行き詰ったときに俺にちょっかい出してきたり。

 ――人間肉団子を食べない俺を見かねて、猫缶を持ってきたり。

 ――なにかにつけてピトエモンとして「ノワはじつに馬鹿だニャー」と罵ってきたり。

 ――ピトーとのじゃれあい(模擬戦闘)で俺が圧倒するようになってからはピトーの操り人形の念能力で動けなくされた後にボコられたり。



 ……あれ?俺実はピトーから嫌われてね?





 巣の屋上テラスで食事をして、その食事に薄いと文句を言いレア物を探しにさっさと王と護衛軍は旅立つことになった。
 王の食事中、コルトが女王の治療を討伐隊(モラウ、ノヴ)に求めるために飛び立っていったがさっき王に叩かれた俺は止めるつもりは毛頭無かった(原作から離れないようにというほうが大きいが)。




 結局、現時点では人間側につくという行動は起こさなかった。今、人間側についた場合、王の討伐に失敗すれば人間側についたキメラアントの立場は非常に危ういものになると思われる。
 毒をもって毒を制すということわざのようにキメラアントを使って王討伐を検討するかもしれないので、キメラアントから離反する場合は、王が討伐されていることが必須条件となる。ただ、「卑怯なコウモリ」のように両方でフラフラ揺れているせいでどちらにも付くことが出来なくなるのは警戒しないとな。

 そしてなによりも、人間側につきたい俺自身がキメラアント側についているのはピトーが原因だ。せめてこの馬鹿姉だけは何とか生き残ってほしい。ピトーが生き残るにはどうすればいいだろうか。

 護衛軍の三匹は生まれたときから王への忠誠心MAX。

 魔獣ベースのユピーはそもそも個というものが少なく、蟻の本能として王への忠誠を誓ってそうだ。もし王がマサドルディーゴのような奴だったとしても、淡々と本能に従い王を護衛しただろう。

 プフは……確かに忠誠を誓っているように見えるが、原作では偶像崇拝に近いような気がする。
 プフの中に確固たる王の理想像があり、その理想に王を重ねているように見られる。こいつは王を理想から遠ざけようとしたコムギを殺そうとしていたが、王が理想からかけ離れたとき、その牙は王自身に向かいかねない危うさがある。もし王がマサドルディーゴのような奴だったら、王を殺して自分も死にそうだ。ヤンデレだな。

 ピトーは謎だ。猫としての好奇心、おそらくベースとなった人間のサイコな部分、王・コムギを守ろうとした母性。とても一人の人間がベースだとは思えない性格の変わり具合が原作では見られた。おそらく自身の心に一定のラインが存在していて、その内側に入った者に関しては相当心を許すタイプだろうか?ツンデレだな。
 もし王がマサドルディーゴような奴だったら、従うが裏ではメチャンコ王を嫌ってそうだ。

 俺?俺はもし王がマサドルディーゴような奴だったら、顔面にグーパン食らわした後にキンニクバスターを食らわして全裸で街中引きづり回した後に、花火で打ち上げて「汚ねえ花火だ」と言いながらそれをニヤニヤ眺める……という想像を毎日しているけど実行に移す勇気は無い小心者ですけど何か?

 まぁピトーの話に戻すと、王が存命のうちは世界がひっくり返っても一緒に人間側についてくれることは無いって事だ。王が討伐されてしまうと廃人のようになってしまう可能性もあるが、人間部分が精神の復活を果たしてくれると思いたい。

 そして最大の障害はゴンさんである。

 コレばっかりはどうしようもねえ。あんなのに勝てる存在なんて覚醒後の王ぐらいじゃねえか? なんとか、王が生まれたタイミングでカイトの転生体であろうキメラアントを凝で見ることが出来たので、原作知識を武器にして「カイトはキメラアントとして生まれ変わることを強いられているんだ!!(集中線)」とか何とか言って丸め込むしかないな。ボられたくねぇな~。





 王はプフの足に尻尾を巻きつけ、俺とピトーはユピーの足にそれぞれ掴まり、空を移動している。

 しばらく飛んでいるとNGLの農村が見えてきた。
 王がプフの足を離して下に落下していく、護衛の立場からするとせめて一言ほしい。王に先行されるとどうしても護衛が後手に回ってしまう。
 見た感じ、この農村では危険なことは一切なさそうだし原作でもなにも危険は無かったので大丈夫だろうが。

 王はあっさりと、農村の人間3人を殺害後、まずいといって食わなかった。まずい(人間食ったわけじゃないよ!!)、この後原作ではピトーが王にレア物を見分ける方法を伝えようとして王が機嫌を損ねピトーが殴られる場面だ。

 とっさにピトーが言う前に俺が、

 「恐れながら申し上げます。レア物を見分ける方法がございます。それをつかえば、」

 パァン!

 「余を愚弄するか、目を凝らせば体を包むエネルギーが見えることぐらい承知しておるわ。その多寡で判断するのであろうが。」

 2回も殴ったね!!(今世では)親父にも打たれたこと無

 ドゴン!

 再度、殴られキリモミしながら俺は飛んで行った。

 「なにか不遜なことを考えている雰囲気があったため、再度処罰を加えたぞ。」

 「た、大変失礼しました。」

 うおぉーーー超☆ワガママ!!しかしなぜ考えがばれた?

 「ときにノワローよ、お主強いな。2回目はかなり本気で殴ったぞ。褒めてつかわす。」

 「もったいないお言葉」
 う、うれしくねー(ばれないようにひっそり考えています)。




 「大丈夫かニャ?ノワ?」

 ピトーが心配してくれている。おそらく今の俺はマッチョになったビスケと修行を行ったキルアみたいな顔をしているに違いない。
 【俺Tueeee/アラベスク】発動!!「回復力」強化。

 これでしばらくすれば治るだろ。ピトーも殴られずに済んだし。



 結局、その後はぶらり途中下車(プフ)の旅、で農村を見つけては殺害→食事→吐き出すを繰り返しながら東ゴルドーに向かいましたとさ。
 



[39928] 第六話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/26 22:57
第六話



 東ゴルトー共和国、バルサ諸島の東側に位置する国であり、西側の端っこNGLから東側の端っこの東ゴルトー共和国までの間、じつに日本縦断と同じくらいの距離があった。

 逆に言うと、その距離を移動している間念能力者に一人も会わなかったというのは驚きだ。原作ではポンポン出てきては死んでを繰り返していたが、実際は東ゴルトー共和国の王宮に侵入してようやく一人目に遭遇。

 その一人も、王と直属護衛軍を前にして危機感のかけらも抱いていないようなショボイ能力者だった。

 それでもレア物はレア物、目を凝らさずとも見えるオーラに王は歓喜し、念能力者を食うことで相手のオーラを取り込み自分のオーラとして蓄える能力を使いさらに強くなった王を見て、正直人間側につくのを諦めたくもなった。

 「にゃるほど。コレが王の能力、食べるほど強くなる。」

 「すさまじいな……」

 実際、自身で念を使用できるようになってわかる王のチートっぷり。俺自身も王が生まれるまでの間、【俺Tueeee/アラベスク】で「成長力」を強化して潜在オーラ量(POP)を増やす努力をした。
 その結果、ピトーの円のように広範囲に広げるような芸当までは身につかなかったが量だけで言えば護衛軍の中でも最大のオーラ量を誇るユピーに迫るレベルでオーラ量を底上げすることができた。

 原作ではナックルの勘でユピーの潜在オーラ量(POP)を七十万と想定していた、ちなみにナックルと戦ったときの覚醒前ゴンが潜在オーラ量(POP)二万程だといえばその凄まじさを解ってもらえるかもしれない。

 そして王の能力! 食った念能力者のオーラをそっくりそのままとまでは行かないまでも取り込んでいた。

 大体、さっきの男が仮に1万ほどの潜在オーラ量(POP)を持っていたとして、1日1食でもたった2日でゴン、2ヶ月でユピーに迫る潜在オーラ量(POP)を王は手に入れるわけである。

 こりゃ毒殺かハメ技の念能力でしか倒す方法がないわ……



 「なんだ貴様らは、天下の大将軍マサドル……」以下略



 その後、ピトーとプフは選別の準備、俺とユピーは無職となった。
 厳密に言えば王の護衛任務となるが、しばらくは戦闘が無いことを俺は原作の知識で知っている。

 正直、暇!

 常時ピトーが円を発動しているため、俺自身は王の側にいればいいだけだが、何もしないということがこんなに時間を長く感じさせるとは……
 かといって護衛の建前上、完全に緊張をとくわけにもいかず。
 ゲームやりたいよーゲーム。P○PやD○がほしい。もしくは漫画でも読みたいが、護衛してるときに漫画なんか読んでたら王に殺されそうだ。

 暇!暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇!

 暇がゲシュタルト崩壊しそうなその時、一人の救いの神(デブ)が現れた。

 東ゴルトー将棋チャンピオン!!

 王はルールブックを読みきり、対局を開始していた。

 俺も転生前の世界での将棋とルールが変わらないか確認するために王が読み終わったルールブックを【俺Tueeee/アラベスク】で「知力」を強化した状態で読んでみた。一応ルールは同じようだ。対局を見ていると王がとてつもない速さで上達していくのがわかる。
 東ゴルトー将棋チャンピオンよりも読みの深さは数段王のほうが勝っている。経験と有利な陣形を知識として知っているため、ギリギリ勝ち越せていたが、それも長くは続かなかった。負けた後に王の質問に即答できなかった将棋チャンピオンは逃げ出そうとして殺された。

 次の暇つぶし相手は根暗そうに見える東ゴルトー囲碁チャ……以下略

 10局で王が連勝するようになっちゃったよ。体調が悪いと言い訳して8時間の休憩がもらえることになり、代わりに軍儀のチャンピオンが呼ばれることになった。

 軍儀のチャンピオン、原作でのキメラアント編の最大のキーマンであるといっても過言でもないコムギの登場である。人間の原作キャラで初めて固有名詞で呼ばれている人物に会うわけである。漫画と現実にはどのような差があるのか。




 「え~このたびはおまぬ……お招きいただき」

 コムギ登場!!

 「プフ、あれが軍儀のチャンピオンなんだよな?」

 「ええ、そうですよ。世界大会5連覇中の軍儀チャンピオンです。信じられないかもしれませんが。」

 確かに、原作で見た特徴のままなのだが、漫画がいかにデフォルメされているかが良くわかる……

 あの~その、なんというか、ブ○○クだった。(伏字2つにしますんで、コムギファンの方勘弁してくだせぇ……)え~いま流行のブサカワイイというヤツなのだろうか? 鼻水たらたら、紙もボサボサ、眉毛が太いのは原作のとおりだが漫画だからデフォルメされているというのもあったのかもしれない。 貧乏な農村出身だからなのか、肌もカサカサでボロボロ。少女と表現されていたが、原作ではもう二十歳前後のはずだ……

 プフが彼女を認められないという気持ちが分かる気がする。

 想像してみてほしい、もし自分の兄弟や尊敬する人の彼女がブサ○○だったら。
 仮に俺の場合はピトーに彼氏ができたとして、さっきの将棋チャンピオンや囲碁チャンピオンみたいな奴を連れてきたら、ゾルディックを雇う自信がある!!

 いや、人が見た目じゃないのは重々承知の上だが、それにしても……そうこうしているうちに王がルールブックを読破し、対局が始まった。王が読み終わったルールブックを俺も読ませてもらって軍儀を楽しもうかね、冨樫先生が考えた3次元視点が必要になるボードゲームも気になるし。




 そこから行われる王との対局はそれまでのマイナス評価をあっさり覆すとてつもないものだった。

 軍儀とは原作・ハンターハンターで登場した9マス×9マスの盤上に「帥」「将」「馬」「槍」「兵」「弓」などの駒を配して対戦するボードゲームである。
 開始時、将棋と違い自陣内であれば好きに駒を配置することができ、さらに駒に駒を3段まで重ねることが出来るゲームだ。
 そのルールから選択肢は非常に多い。駒を重ねることによって駒の動きが変わったりと変則的なルールも多い。
 コムギは強かった。数回対局を行い、王の勝ち目がまったく出てこない。囲碁の時は、3、4局目から対局者の急所を脅かす一手を打っていたが、それが出てこない。

 凄い。ただその一言に尽きる。【俺Tueeee/アラベスク】で「知力」を強化しても王とコムギの対局に追いつかない。途中から「棋力(軍儀)」に変更し、ようやっと2人がどのような攻防を繰り広げているのかをギリギリ理解できるレベルだ。

 キメラアントは人間に比べてベースのポテンシャルが圧倒的に上だ。身体能力は言うに及ばず、頭脳・精神的な部分に関しても人間とキメラアントの平均はキメラアントが圧倒的に上を行くだろう。
 1点特化した存在、ネテロ会長・コムギのように一芸を極限まで極めた存在は今のように王を超える可能性を見せつけてくる。

 転生前もそうだった。一般人の俺は何をやっても絶対超えられない壁という物を感じる。

 プロという存在がいる……それこそ分野によってそのレベルは千差万別だが一体どこまでソレを突き詰めればそこまで到達できるのか想像もつかないような存在がいた。

 この世界でもそうだ、そしてそういう奴らに対抗するための【俺Tueeee/アラベスク】である。キメラアントの元々のポテンシャルと1分野にのみ限定的に特化することが出来る念能力。その二つを武器に化け物たちに対応しようと考えていたが甘かった。

 転生し、素の状態で既にあるアドバンテージに念をプラスしても届き得ない存在達。もし俺がゴンさんと相対したとき、俺の力はピトーを逃がす時間すら稼げないのではないか?

 テレプシコーラの原初となるアラベスク。その能力名を決めたときのことを思い出した。

 ――姉さんの戦闘時に使っている能力って何でテレプシコーラって名付けたの?

 ――ん~玩具を動かす能力で自分を動かした時、人形劇のお姫様みたいだな~って感じたからかニャ~

 ――それで舞姫なのか。んじゃあ俺も能力名はそれに倣ってつけよっと。

 ――パクリかニャ。オリジナリティが無いなんて、ノワは実にバ……

 ――そのさきは言わせねえ!!凄い能力にして王のついでに姉さんも助けてあげようじゃないか。

 ――期待しないでおくニャ。


 



[39928] 第七話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/05/31 21:15
第七話



 「ンニャーーーーー!!」

 ピトーのおたけびが聞こえる。
 モラウの【紫煙拳/ディープパープル】に翻弄されて、さっさとペイジンに乗り込みたいみたいだな。

 「王ーーーーーーー!!」

 プフのおたけびも聞こえる。
 コムギに王を取られて嫉妬してグニャグニャしている。

 プフはな~ほんとに残念だよな。こいつが女だったら展開的にもっとニヤニヤできたのに……
 男で長身金髪イケメンなわけだから、女だったらボンキュッボンのゴージャスな金髪美女な気がする。

 ――あなたを認めない。王は私の王よ。

 ――それでも!!!たとえっっ死罪となろうとも!!!王の為!!

 ――それだけのことですわ。

 おニャの子が言っていたらと思うと胸アツだな。


 「男のジェラシーは見苦しいぜ。」byノストラード

 「女のジェラシーは胸アツだぜ。(ハタからみてる分には)」byジェトノワロー




 王の様子も刻々と変わって行っている。軍儀でコムギに対して賭けを持ち出した王は、負けた場合は左腕をもらうとコムギに宣言。それに対して常に命を賭けているというコムギの回答、軍儀への覚悟を聞いて自身の腕をちぎったりというハプニングも起きた。
 実際その場に直面するとキメラアントの本能か、俺自身もかなり慌てた。

 この日この瞬間にピトーが王を治すために【玩具修理者/ドクターブライス】を発動している間は円が発動していないため、ノヴが王宮に潜入しており、【4次元マンション/ハイドアンドシーク】で王宮への侵入路を作ることを知っていた。
 そのことを知っていて黙っている俺の態度がプフに悟られたのかもしれない。
 最近プフの俺を見る目が厳しい気がする。元々、プフ自身は王に絶大な忠誠を誓っていはいるが、自身以外の王直属護衛軍を煙たく思っていた節もある。あまり不用意な行動は取れないな。




 大会が明日に迫った明け方、まだ太陽も昇っていない時間に王直属護衛軍が全員呼び出された。

 「余の名前は何だ?」

 王が護衛軍に問う。そういえば昨日の対局でコムギが休憩を申し出たときに王がコムギの名前を聞いたのだったな。その時、コムギも王の名前を聞いたのだが、この時点では王は自身の名前を知らないため、答えられなかったのだ。

 名前を知りたいというのも王の変化の一つだろうか?コムギがいなければそもそも自身の名前にすら興味を持たなかったのかもしれないな。
 ちなみに王直属護衛軍の名前はエジプト神話の神の名前と、とある絵本の登場人物を足して決めているらしい。原作の作成時に冨樫先生は何を思ってこんな名づけ方にしたのか。そもそもその絵本の登場人物の人数に合わせるなら王直属護衛軍は8匹も存在することになってしまう。こんな化け物が8匹もいたらそれこそ人間側があっさりと敗北してしまうかもしれないが……

 王の質問に、プフは「王」という単語がイコール王に結びつくようにすれば問題無いと言い、ユピーは答えを持ち合わせていないと回答、ピトーは王自身が決めればよいと答えた。

 「ノワローはどうだ?」

 俺も王に問われた。そもそもなんで王は護衛軍に自身の名前のことを聞いてきたのだ? 実は女王が存命時に俺たちの誰かが王の名前を聞いているかもしれないと考えたのだろうか?
 うーん、原作を知っているため俺はこの問いに対する答えを知っている。ただし正直に答えるわけにはいかない。
 逆にここで俺が「げろしゃぶ」です。とか解答してしまうと、王の名前は「げろしゃぶ」になってしまうのだろうか?

 「私もその問いに対する答えを持ち合わせておりません。」

 ひとまずユピーと同じ回答を俺は行った。

 もちろんこの時、俺は【俺Tueeee/アラベスク】で「精神力」を強化して回答を行う。「演技力」を強化しても内面を読めるプフの能力でばれてしまうかもしれないからな。
 鋼の精神で一切の波風を立てないのがこの場を切り抜ける最善手なはず。




 その後王は、コムギが覚醒し軍儀においてのみこれから飛躍的に強くなること。
 しかし、知力や棋力等、数ある力の中でも「暴力」が他の可能性を理不尽に摘み取れる最強の力であること。その頂点に立つ王自身が生物の頂点にふさわしいと自己完結してコムギのところに向かった。

 ここで、運命を変える鍵となる重要なキャラクターが出現する。そう、コムギを襲う鳥である。

 原作ではコムギが鳥に襲われることによって、コムギを殺そうとした王が逆に助けてしまう場面があった。

 実際のところ、コムギが鳥に襲われていなくても王はコムギを殺さなかったかもしれないが鳥のおかげでコムギが殺される可能性が下がったのは確かだ。

 そして、今回も王が俺たちを呼び寄せたあたりから鳥が周囲を飛んでいた。おそらくこの後、コムギを襲ってくれることだろう。

 しかしあの鳥がコムギを襲ったのは偶然か?4人目の護衛軍というイレギュラーが存在するこの状況で野生動物が原作と同じ時間、同じ状況でコムギを襲うといったことに不自然を感じる。
 そもそも、ピトーが円をしている範囲内に野生動物が入ってくるか? ネテロ会長が精神統一をしているときに鳥がビビッて逃げた描写があったがなぜ今回の鳥にはその現象が発生していないのか。

 「なあプフ、あの少女がスパイだったりする可能性は無いのか?」

 「……私の能力で見ましたが、王に害を成そうであったり、この状況を利用しようという精神状態は確認できませんでした。」

 「姉さんに聞くけど、無意識のうちに操れるような操作系の能力の可能性って無い?」

 「ん~今はわからないけど、将棋や囲碁のチャンピオンも王に謁見させる前に僕の能力で1回操れているのは確認してるからニャー。今度もう一度確認してみるけど、あの少女が操作されていることは無いと思うニャ。」

 それじゃあ、コムギ自身は潔白。後はあの鳥が何者かの念で操られている可能性か。

 「王はあの少女のところに行ったけど。殺したの?」

 俺の質問にピトーは首を振った。

 「そのつもりだったかも知れニャいけど、鳥に襲われている少女を見て王がとっさに助けたニャ。」

 おおぅ、その解答を聞いた瞬間プフから【俺Tueeee/アラベスク】に匹敵する「嫉妬力」の強化を感じる。

 「スパイでもないし、操られている可能性もほとんど無いならどうでもいいんじゃない? そもそも王直属護衛軍は王がどう変わろうとも付き従えばいいんだし。」

 【俺Tueeee/アラベスク】で「精神力」を強化しているせいかもしれないが、良くもまあ王へ付き従う等と嘘八百を並べられるもんだ。誰が鳥を操っているのかは気になるがここでコムギが殺されて原作からずれるのが回避されるのであれば後はどうでもいいや。

 太陽が昇ってきた、今日は王宮前に東ゴルトーの国民が集まる日であり、討伐隊が王宮に攻撃を仕掛けてくる日でもある。

 俺にとってターニングポイント。4人目の俺がいることが原作にどのような影響を与えているかわからないが、【俺Tueeee/アラベスク】の応用力が俺と姉さんをうまいこと助けてくれることを願おう。

 



[39928] 第八話
Name: ■■◆8f9153ac ID:424b2099
Date: 2014/06/01 19:10
第八話




 キメラアント討伐隊が突入してくるまで後、1時間。

 ついに王は護衛軍が近寄るのを嫌がりピトーは王宮の一番高いところに、プフは人民大会に集まってきた人間の洗脳のため人民の上空に、ユピーは王の間につながる大階段の前に陣取った。

 俺は【俺Tueeee/アラベスク】で「総合力」を強化して人民の監視ができる王宮肉樹園の前方の門の上に居ることにした。

 月明かりに照らされるピトーを仰ぎ見る。王宮のてっぺんで胡坐を組みながら暇そうにしているピトーを見ると不意に涙がでそうになってきた。姉さんは俺が死なせない。

 そしてついにその時が訪れる。




 最初に気づいたのはピトーだった。

 上空からの気配に気付き円を上空に向けたピトー。ゼノ・ゾルディックの【龍頭戯画/ドラゴンヘッド】が上空に姿を現す。
 ここは原作通り、【龍頭戯画/ドラゴンランス】に乗っているのはネテロ会長とゼノ・ゾルディックだけだった。

 ピトーの円と【龍頭戯画/ドラゴンヘッド】が接触する。ピトーが円を解除し、自身の強化にオーラを回した。俺自身も戦闘体制を取りどのようにも動けるようにオーラを纏う。

 その瞬間に【龍頭戯画/ドラゴンヘッド】を【龍星群/ドラゴンダイヴ】に移行させ王宮全体にオーラの雨を降らせてきた。

 俺はその瞬間に、王宮へ向けて跳躍を開始する。その一瞬後にピトーがジャンプするのが見えた。空中に居るネテロ会長を発見したのだろう。

 ネテロ会長はこのピトーの行動を悪手と言っていたが確かにそのように思う。護衛軍であるならば迎撃も大事かもしれないが、この場合は護衛対象の確認、すなわち王の安否が第一だと思われる。仮にネテロ会長を迎撃できたとしてもゼノ・ゾルディックが王手を指す可能性もあるわけだし。

 ただし、俺自身のこの行動は原作を知っているのであれば背信行為にも等しい。そもそもこの瞬間王は王の間に居らず別の場所でコムギと軍儀を行っているはずだ。

 プフも同じく、王の間に向かっている。こいつも王がそこにいないと内心では解っていながら向かっている。

 護衛軍は一体どうなっているんだ? この緊急事態にまともに機能している奴が一人も居ないとは……そもそもが護衛軍が近くに居るのをうざがった王のせいかもしれないが。




 プフより一足早く王の間に着き王が居ないことを確認すると俺は屋根をぶち破って外に出た。ピトーがネテロ会長の【百式観音】で吹っ飛ばされた後、【玩具修理者/ドクターブライス】の制約(念人形から20メートル以上離れることができない)で遠くまで吹き飛ばされるのを阻止して落下しているのが見える。
 ピトーと目が合う。視線で王がどこにいるのか誘導される。ネテロ会長とゼノ・ゾルディックも視認。もう王が居る東の塔に入る寸前だ。

 すぐさまそちらに向かって跳躍を行う。その先で見るものがついに俺の天秤のバランスを崩した。



 ネテロ会長とゼノ・ゾルディックの向こうに王が見える。血にまみれたコムギの体を抱きしめ、とてつもなく不吉なオーラを身に纏っている。

 ゼノ・ゾルディックの【龍星群/ドラゴンダイヴ】がコムギに当たったのだろう。

 ピトーも到着した、しかしネテロ会長・ゼノ・ゾルディックはおろか、俺やピトーでさえも誰も動くことが出来なかった。

 不吉なオーラが収まっても動くことが出来たのは王のみ。王はコムギを労わりながら地面に寝かすと、

「ピトー」

「はっ!」

「コムギを治せ。たのんだぞピトー」

 ピトーが涙を流しながらコムギの側に駆け寄る。

 俺はこの時まで、思い違いをしていた。ピトーにとって王は必要な存在だ。王が死んでしまえばピトーも死ぬ。そう思わせるだけの何かがこの場にはあった。そして俺自身にも。
 涙を流していたのはピトーだけではない。俺もあふれ出る涙を止めることが出来なかった。王のカリスマとでも言えばいいのだろうか。全てを投げ出してもこの方に遣えなければならないという思い。蟻としての本能かもしれない。しかしそれでもいい。この方に全てを捧げなければいけない。

 コムギを床に寝かせた王の所作全てに生物への敬意と慈愛が感じられる。いままで王は自身以外の生物等、全て塵に等しいという態度だったのに。
 塔に入るときに感じた王の不吉なオーラ、確かに恐ろしかった。しかし、今思うとあれは王が自身に向けた怒りの表れではないのか? オーラは進入したネテロ会長やゼノ・ゾルディックが王の眼前に来たときにもそちらに向く事は無かった。
 コムギを守れなかったという思いとそのことに対する怒り。しかし、その感情を全て殺し最善の判断を下す王としての器。

 ピトーへの命令も、臣下への信頼が感じられる。以前の王であれば、「たのんだぞ。」等という言葉が口から出るなど夢にも思わなかった。しかし、今さっきの王の言葉は全てを投げ出しても使命を果たそうと思わせる何かがあった。

 ピトーと俺の涙は悲しみでも苦しみでもなく、感動と喜びによるものだ。自身が遣えている方が、どれほど素晴らしいか。そして、この方の側近として遣えることができる喜び。

 原作でピトーがゴンさんに殺される瞬間に、ゴンさんの力を向けられるのが王で無くピトー自身でよかったという思いが語られた場面があった。いまならその気持ちが分かるかもしれない。


 原作を読んでこの状況があることも知っていた。しかし、実際にその場に立ち会うと全てが異なる。こんな土壇場でそんな大事なことに気づくなんて。

 王に付き従い塔の外に出る。王を分断させるわけにはいかない。戦闘体制をとる俺にネテロ会長が言う。

「ワシと王は場所を移すぞ。」

「認められない。王、罠です。移動先で王を殺すための準備があるかもしれない。」

 その俺の言葉にゼノ・ゾルディックが言う。

「分断はさせてもらう。お主の相手はワシじゃ。ワシはそこのジジイから王直属護衛軍の分断だけではなく、暗殺も依頼されておるが、誰とまでは指定されていない。対象は先ほどの少女を治している者でも良いのじゃがな。」

 なんだと!? ここにきて原作とは違う流れ? 4人目の王直属護衛軍が居ることによってネテロ会長が暗殺まで依頼していたとは。

「よいノワロー、お前はそやつを倒した後に無防備であろうコムギとピトーを守れ。」

 俺がミニチュアローズのことを言ってどうにかなるか? しかし信憑性が無い。原作のことを言ってもいたずらにネテロ会長を追い込むだけだ。ピトーとコムギはまだ【百式観音】の射程内にいる。そして何よりも、原作のことを王に知られ俺自身に信を置かれなくなるのが怖かった。

「王、前半は承諾できますが後半は出来ませぬ。ピトーとコムギ様の安全が確保できた後、直ちに王の下へ向かう許可をいただきたい。」

 これが俺に出来る最大限の譲歩。絶対に譲らぬという意思をこめて王を見る。

「好きにしろ。ただし必ずピトーとコムギの安全は確保しろ。」

「はっ!」

 【龍頭戯画/ドラゴンヘッド】で王とネテロ会長を送り出したゼノ・ゾルディック。

 おそらく原作でも最強クラスの実力を持つ人物を前にして、それでも俺の思いは揺るがない。
 早く倒してピトーとコムギの安全を確保しなければ、ゴンとキルアが塔の中に向かうのも見えたがまだ問題ない。直ぐにピトーとコムギが害を成されることは無いことを原作で知っている。

 目の前の敵を迅速に倒さなければならない。

 ピトーを助けたい。そのためには王も助けなければならない。自身の意思でも王を助けなければと思う。
 王のためにはコムギの生存は絶対に必要だ。そしてキメラアントについた今、プフ・ユピーの存在も必要である。

 原作では全員死んでしまう面子だ。しかし、もう既に原作からはずれている。4人目の直属護衛軍としての俺が、王とピトーだけではなく全ての未来を変えてやる。




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