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[7384] 戦国ランス 現実→転生 オリ主、オリ有り 【習作】 第6話うp
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/04/01 19:54
現実から死ぬはずだった人物に転生させます。

オリ主の能力
・Lv制限なし(ランスと同じ)

というかぶっちゃけ最強物にしたい

あとオリジナル武器とかも出したい
JAPANが度々魔人によって窮地に立たされてるのに
魔人を切る武器がないのはおかしい
エターナルヒーロー以外にも方法を求めた人や鍛冶師がいてもいいんじゃ?
というわけで劣化版カオス、日光のような物を出したいと思ってます

流れとしては
・転生~ここどこ
・死亡フラグどうすれば・・・足利家に勝てば良いんじゃね?
・武者修行 迷宮めぐり
・旅の途中で茶屋のぶに
・ランスと出会う
・割りをもてる顔だったのでランスにいちゃもん付けられてバトル
・原作開始 尾張の内乱に援軍として駆けつける
・山本家足利に攻められる
・ランス五十六の話を聞いて介入(エロ目的
・あとは正史の流れを~とエンディングは五十六ルートっぽくやりたいなと


3月15日変更
主人公を山本太郎からその兄山本二十一ハタカズへ変更
これのお陰で↑の流れも楽に修正できそう
太郎君生まれたら適当に出奔させようかな・・・
そこで武者修行→織田に仕官も面白いかと

もう↑に書いた流れなんて関係ねぇ!ってことで書いていきます

2009年3月26日にテスト版からチラシの裏へ移動 
2009年3月27日にURL追加 修正のみ
2009年3月28日に第5話うp
2009年4月1日に閑話1を加筆修正
2009年4月1日に第6話をうp


文章量が少ないのは仕様ですのでご容赦を
時間が取れ次第加筆して少しずつ修正していく心算です



[7384] 第1話「え?戦国時代の日本じゃなくてJAPAN?」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/03/15 23:53
俺は死んだ




理由は分からないけど死んだんだろう
なぜだかは知らないけど死んだ時の嫌な感覚だけは覚えている
思い出そうとするとその感覚がひどくなって
とても考えることができなくなってしまっていた

死因は分からないがそれ以前の記憶だけなら思い出せる
家族の名前、住んでた地域、通ってた学校、やっていたエロゲ等etc・・・

こんなくだらない事は思い出せるのに、なんで重要な部分(死因)が思い出せないのかは謎だ・・・



え?死んでるのに何でこんな事が考えれるかって?
なんだか知らないけど転生しちゃったみたいなんだよねミ☆


・・・何を言ってるのか分からないと思うが俺にも何を言っているのかわからn(ry

とりあえず気づいたら赤ん坊になってましたって訳ですよ・・・


たしかに前世の記憶(これって邪気眼っぽいよね)では二次創作の小説大好きっ子だったけどさ・・・
死んで実際に転生したとなると俺どこまで執着してたんだよwwwって話だよね



まぁそれは置いておくとして
とりあえず転生した場所つーか時代が問題なんだよな

昔の日本っぽくはあるんだが・・・
何か違和感があるんだよなぁ・・・

とりあえずだらだら無意味に生活してる中でも
どっかで聞いたことあるような地名やら話題やらが出てくるし・・・



あ、ちなみに俺の名前はどうも山本二十一ハタカズらしい
武家のちょっと良いところみたいなんだけど
さすがにこの名前はないよなー


・・・え?
天志教テンシキョウ?魔人ザビエル?どっかで聞いたような・・・



戦国ランスですね わかります
本当にありがとうございました!!!


ルドラサウムの仕業なのかな・・・orz



[7384] 第2話「まさか死亡フラグが建ったキャラに転生するなんて・・・」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/03/16 14:53
どうやらついてないらしい


この転生した世界、ルドラサウム大陸のJAPANって場所なんだけど
戦国ランスっていうエロゲーの世界なんだよね

それでね この転生先の山本二十一ハタカズ君殺されちゃうの
俺のほかにまだ子供もいないから一番上のお兄さんみたいなんだよね
本編で名前も出ないまま死んでたお兄さんなんだよね 

「どうみても絶望的です 本当にありがとうございまs(ry」


縁側で叫んだら侍女がまたかみたいな目でこっちを見てくる
(うぅっ、僕だって好きでこんな大声で叫びたいわけじゃないぞ)

涙が出てきてしまったので袖で拭いながら空を見上げる
青い空には何一つ目障りな物はない
空も澄み切っていてとても綺麗だ

(綺麗な空においしい空気・・・これで平和なら言うことはないのに・・・)

あと何年後には魔人ザビエルが復活して各地で地獄絵図のような光景が広がる
・・・魔人にはある種の加護が備わっているらしく、人類では傷ひとつつけられない
そんな存在があと10年後には確実にこのJAPANを恐怖の底に突き落とすのだ

(戦国ランスでは主人公のランスがザビエル殺してくれるから気にする必要もないかもな)


実際この後のJAPANは異国から来た異人によって救われることが分かっている


(問題は俺がそんなイベントの前に殺されちゃうって事なんだよね・・・)


はぁと溜息をついて縁側から腰を上げる
この後のストーリーが順当に進むとすれば山本家は足利家に利用され
山本二十一ハタカズ君は殺されてしまうのだ

ここをどうにかして乗り切らないことにはどうしようもない

(幸い自分という異分子がいるわけだから・・・なんとかなるかな?)

とりあえずの目標は自分が生き残ることが第一である
いくら史実を知っているといっても自分が死んでしまっては元も子もない

(そのための力を付けないことには始まらないよな・・・!)

異世界に来てからの第一目標は生き残るための力をつける事だった

「兄上?今度は何を考えてらっしゃるんですか?」

不思議そうな顔で五十六イソロクがたずねる
まだ幼さを残した少女だがあと数年も経てば美しく成長するだろう。
身内びいきをひいたとしても間違いない。
ただ・・・最近武芸に興味を持ったようだから男勝りになるのは間違いないようだ。

また空を見上げて自分の心を奮い立たせる。
前の世界にはいなかった妹と弟ができることまでわかってるんだ
頑張らないわけにはいかないだろう?














あとがき
文章を付けながら色々とタグテスト
やっぱ文章書きながらじゃないとどう反映されるかどうか分からないよね

3月16日修正



[7384] 第3話「まずは死亡フラグの回避が先決です」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/03/16 14:52
5歳年下の可愛い妹を泣かせないためにも死亡フラグの回避は外せません。
自分だって死にたくないし・・・。

この世界には娯楽がないのも手伝って、今俺は修行と兵法の勉強に明け暮れている。
確実に戦乱に巻き込まれるのが分かりきっているし、自分が身につけた力は自分自身を助けるからだ。
・・・というか生き残れたとしてもこのJAPANには多くの魔物や妖怪が住んでいる。
そんな中で生活するにはある程度の力がなければ生きていくことすら難しいのだ。

「・・・ふぅ。今日はこれくらいにしておくか。」

昼を越した辺りで朝から行っている鍛錬を終了する。
そのまま井戸まで歩いていき汲み上げた水を飲み干す。

「あ~生き返る~」

汲み上げた水でついでに顔も洗う。鍛錬で汗だくになった体を手ぬぐいで拭いていく。
鍛錬を始めた頃は貧弱だった体も、今では年の割には引き締まっておりがっしりとした体つきになっている。
始めたばかりの頃はきつかった。父上は俺が鍛錬をしたいと言い出すと大喜びして稽古を付けてくれた。


(だけどありゃー稽古というよりしごきだったなぁ・・・。)


考えながら苦笑する。始めは手も足も出なかった。
5年もすると互角に打ち合えるようになり、それから2年後には領地で行われる武芸大会で1番になることができるようになった。
今では練習相手になるものがいなくなったため1人で稽古しているが、このままではダメだろうと思う。
戦国ランスで言えばちょっと強いかな?レベルの汎用武将で終わってしまう。

(このままじゃだめだ・・・JAPANを救うどころか山本家を救うことすらできない)

ここに来て限界を感じていた。このままでは強くなることができないとわかってしまうのだ。今年で22になる。
基礎は体を苛め抜いてできる限りのことを行った。領地に出た盗賊等を退治して実戦経験も積んだ。
だが足りない・・・自分より強者との死闘と呼べる物を未だに経験していないのだ。

このままでは自分より強い存在と出会ったときに恐れてしまうかもしれない。
五十六の年齢から考えて原作開始まであと4、5年といったところだろう。
なんとかしなければ間に合わなくなってしまう。
(やはり外にでるしかないか・・・)

それしかない。外の世界に出て強者も求めての武者修行の旅。
自分の領地で並ぶ物がいなくなった時からそれは考えてはいた。
しかし山本家の跡取りの自分がそう易々と国外へ旅に出ることなど許されるはずがなかった。
領主の息子として領地のことを常に考えておかねばならなかった。
現代の知識を充分に活用し、領地で色々なことを行った。
農地について色々農民と相談しながらより多くの作物が取れるようにした。
川の氾濫によって悩まされている地域には堤を作らせこれを防いだ。
経済の活性のために税をゆるくして市場形成を促した。
治安維持のために村々に兵士を配置し盗賊や魔物から身を守らせてきた。
それらの功績から領地では神童と呼ばれ領民達から慕われている。村を見回れば皆が嬉しそうに集まってくる。
二十一様がいれば山本家は安泰だ、これからも領地を守ってくれと。

そんなにも慕ってくれている領民達を置いていくことができようか?
あと数年もすれば確実に足利家が何らかの行動を起こすだろう。そうすれば一番に被害を受けるのは領民達だ。
これから起こる出来事をしっていながら彼らを見捨てることができようか?
・・・それは俺には無理だ。

そして俺にはもっとも大切な物がある。それは家族だ。
厳格だがやさしい父上、何もかも包み込んでくれそうな母上、初めての妹の五十六、初めての弟の太郎。
五十六はとても綺麗になった・・・領地内でも評判の女子として有名である。
弓に関してもすばらしい腕を持っており領地内では自分に次ぐ実力を持つことになるだろう。
そして太郎。兄上と慕ってくれる可愛い弟、聡明で武芸にも明るいこの弟があと数年後には殺されるというのだ。

そんなことはさせない、させるものか。

そんな葛藤を胸にしまう。自分には失えない物があるのだ。
気づけば濡れていた手ぬぐいは綺麗に乾いていた。
そんなに長い時間考え事をしていたことに失笑しながら俺は自室へ急いだ。



[7384] 閑話1 ~妹から見た兄~
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/04/01 15:48

私の兄上は昔から変わっていた。
5歳しか違わないが身にまとう空気がより年上のそれであった。

昔から自分の事を気にかけてくれており、勉学や武芸について良き師でもあった。
子供の頃から父上に領地のことについて進言をしたり、農民に対しどうすれば作物が多く取れるか等の助言を行ったり等、
普通の子供であればできないような事を多く行ってきた。
神童等と周りの者から慕われる兄上であったが、その度に苦笑いをしていたのを覚えている。

そんな人とはすこし違った兄上の様子が最近おかしかった。
というより兄上がおかしいのはいつも通りであったが、ふとした拍子に考え事をすることが多くなっていた。
兄上は気づいていないようだが、その様子が屋敷の侍女たちの間で評判になっている。
兄上の表情は同い年の女から年上まで幅広い層のハートをつかんでいるらしい。

・・・話がそれたが元に戻す。
私が不思議に思って何で悩んでいるのかについて尋ねると、キョトンとした顔をして頭を撫でながら苦笑いをするのだ。
兄上はいつも私からの質問に答えたくないときには私の頭を撫でながら困ったような顔をするのだ。
そんな顔をされたら聞きたいことがあってもそれ以上聞くことができなくなってしまう。
・・・兄上はずるいと思う。

でも兄上を困らせるの嫌だから私はそれ以上は聞かないようにしている。
そうすれば兄上が自分の頭を撫でてくれるからだ。

私は兄上を困らせないように勉学と武芸に励む。
兄上の役に立てるように自分を鍛える。
いつか兄上に認めてもらうために・・・。



兄の様子がおかしくなってから少し経ったある日の晩。
私は兄上の様子が不安になり、その事について相談しようと父の部屋に向かっていた。
暗い廊下を蝋燭の火を頼りに進んでいく。
私の影は、まるで私の心を映しているかのようにゆらゆらと絶え間なくゆれていた。
影は生き物のように蠢く。これが私の心だというのならどれだけ醜いのだろう。
その影の様子を見て私は更に不安をかきたてられながらも、父の部屋へと急いだ。


すこし早足になりながらたどり着いた父の部屋はフスマが少し空いており、中から光が漏れ出していた。
どうやら中に父以外の者がいるようで、話の最中だということが伺えた。

( こんな時間に誰でしょうか?この時間は執務も終わっている時間でしょうけど・・・)

こんな時間に父を尋ねる人がいないと知っていたからこそ、兄の事を相談しようと思っていた五十六イソロクはすこし不思議に思いながらもフスマの隙間から部屋の中をのぞきこんだ。


部屋の中には男が2人座りながら向かい合っていた。
1人は五十六が相談をしようとしていた父であり五十六イソロクも驚かなかったが、もう1人の存在が五十六の心を揺さぶった。
もう一人の人物は見間違えようのない彼女の兄二十一ハタカズであった。


(なぜ兄上がこんな時間に?・・・!もしや最近の兄上の様子がおかしいのは父上が原因・・・?)


もしそうであれば納得がいく。
父上のことだ。どうせこんな時間に呼び出して兄上が困るようなことを頼んだのだろうと五十六は思ったが、その内容を知りたかったのでこのまま隠れて2人の様子を見ることに決めたのであった。


五十六が覗きだしてからしばらく経った後、酒を酌み交わしていた男2人であったが突然父が尋ねるように聞いた。
「今回急に酒に付き合えと誘ったが・・・なぜだかわかるか?」

優しく、しかし嘘は許さないといった目で兄をまっすぐ見据えていた。
兄はその視線に気づき、頭を下げて視線をそらしてしまった。
長いようで短いような静寂の後、兄上はポツリと答えた。

「・・・なんでもない。」

それは明らかな嘘。
目を背けながら口にされた言葉はとても真実ではないと理解できた。

しばしの静寂の後、父上が苦々しそうに続けた。

「父にも答えれぬほどの事なのか・・・?まぁ・・・今日呼び出したのは心配だったからだ。
ここ最近顔色が優れぬようだがどうした?鍛錬にもあまり集中できてないそうじゃないか。」

優しく父上が問いかけるが、兄上は黙ったままだった。
父上はその様子を見て溜息を吐きながら続けた。

「ワシとしては気にするほどの事ではないと思っていたのだがな・・・。最近のお前の様子がおかしいと家臣達から何度も告げられてな。あまりに言う者が多かったからこの場を設けて聞こうとしたわけだ。」


どうやら他の者の間でも結構問題になっていたようだった。
・・・しかし父上。
先程の言葉前半部分で左の眉がしきりに動いていましたよ?確実に嘘でしょうね・・・。
大方心配だったけど聞くか聞かないか悩んでたところに、他の者からも兄上の事を尋ねられたのでそこを利用したんですね・・・。

( まったく素直じゃないんですから・・・。そこは兄上にも遺伝してるようですが・・・。)

心の中で溜息を吐きながら呟く。
父上からそこまで言われても兄上は視線を落としたままだった。
父上はじっと兄上を見つめて言葉を待っている。
長いような短いような静寂の後、兄上が静かに口を開いた。

「これからの事について悩んでおりました。」

父上はその言葉を聞いて少し驚いたような表情をしていた。

「これからの事とはいったいどのようなことをだ?」

父上に尋ねられた兄上は言い辛いのか顔をゆがめていたが、父上のまっすぐな視線を見て観念したのかその内容を語りだした。

「馬鹿馬鹿しい話なのですが・・・。実は・・・武者修行の旅にでるかどうかということで悩んでいました。
最近、自分の限界という物が見えてきてしまい・・・。それを超えるためには武者修行をして諸国をめぐるしかないだろうと・・・・。」

兄上の言葉は途切れ途切れで何かを搾り出しているようにも見えた。
そんな兄上の言葉を聞いて、父上はすこしの間何かを考え込んでいるようだった。
なにやら重苦しい空気の中沈黙が続いたが、それを破ったのは父上だった。

「・・・・・・それだけの事でなぜそこまで思いつめる必要がある?」

それもそうだった。私にも何が兄上をそこまで悩ましているか気になっていたが、こんな理由だとは思っていなかったのだ。
父上はまだまだ殺しても死なないくらい元気だし、領地も今のところ兄が行った事業は成功して問題はない。
旅の安全に関しても、兄ほどの腕があれば余程の無茶をしない限り死ぬことはない。
一体どこに問題があるのかと不思議に思っていると、兄上がその理由を語りだした。

兄上曰く、JAPANはあと数年で危ない状態になるということだった。現時点でも各地で様々な小競り合いが起きており、いつ誰が天下を取るための戦を始めるかは時間の問題だと。現在各地で人ではないものの活動が活発で、何か災厄が起きることの前触れであるということだった。
私は兄上の喋った内容自体も驚きだったが、なぜ兄上がそこまでJAPANの事を深く見ていた事に最も驚かされた。
なんでそこまでJAPAN全土で起こっていることを知っているのか、何故知る必要があったのかという疑問が私を不安にした。
そんな事を考える兄が、どこか自分の届かない所に行ってしまうのではないかと不安になってしまった。

父上はその話を何もいわずに黙って聞いていた。
話が終わり、静寂が訪れると今まで目を閉じていた父上が突然目を見開いて立ち上がった。

「っ・・・このたわけがぁぁ!」

突然立ち上がっての一喝。兄上を見ると予想外の出来事に驚いているのが見えた。

「さっきから黙って聞いておれば・・・!お前の言っている事はすべて自分中心ではないか!
確かにJAPANがそのような状況になっている事など、ワシでもなんとなくならわかっとるわ!
・・・しかし何故お前がそのような事でなやむ必要がある?
お前は昔からどこか落ち着いた子供であったことは周知の事実。
子供ながらに稽古をつけてくれだのせがんだり、領地運営に口をだしたりと普通の子供がしないような事もしておった。
しかし・・・それもすべては自分のためでなく人のためになる事ばかりであろう?
・・・・・・おおかた今回の事もどうせ守るための力が欲しいとかそんな理由であろう・・・。
お前の考えそうなことぐらいすぐ分かる・・・。」

父上は心底呆れたような表情をしながら溜息を吐いて座りなおした。

「お前が何のためにそこまでしたいのかはワシにはわからんし、知る必要もないと思っておる。・・・・・・お前はワシら自慢の息子じゃ。そのお前がしたいと思ったからにはそれなりの理由があるであろうて・・・。」

「家のことは心配せんでもワシがなんとかしてみせる。お前が生まれる前まではそうじゃったから大丈夫じゃ。たまには親を頼れ。」

父上はそう言ってやれやれと言いながら溜息を吐いていた。
兄上の方を見るとじっとしたまま小刻みに震えていた。
頬に光る物が見えて気づく。
兄上は何も言わないまま黙って声を押し殺しながら泣いているようだった。

話はどうやら終わりのようで、あとは父と兄が酒を酌み交わしているだけだった。
聞き耳を立てていた私は、ここにいる意味はもうなくなったと静かに自分の部屋に帰る。
兄上は旅にでるのだろう。
妹である私はそれを止めることができない。止めてはいけない。
だから一度1人になろう。
今のままじゃきっと旅立つ兄上を引き止めてしまうだろうから。
絶対に泣いてしまうから。
できるなら今迄で一番の笑顔で送りたい。



心からの言葉と一緒に兄を送り出そう。















あとがき
今更ながらに閑話1加筆
ちょっと文章のつながりがおかしいけど勘弁してください・・・orz



[7384] 第4話「あと少しで原作開始」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/03/26 12:54
人通りの多くない街道をゆったりと歩く1人の男。
一風変わった格好と腰に差した刀がすれ違う人々の視線を集めている。

「意外と長くかかったなぁ」

そんな事を呟きながら男は街道を進む。
自分を待ってくれている家族の下へと。

なんだかんだで父上が俺の武者修行を認めてくれてから5年が経つ。
瞼を閉じれば旅の道中が思い起こされる。
この旅で多くの強者と出会うことができ、友人となることができた。

(まさかあんなに出会えるとはね・・・正直驚いたよ)

とまぁ旅の内容は置いておくとして、旅の始まりが思い出された。
正直一国の跡継ぎが5年もの間、国を空けて放浪の旅に出る事が許されるとは思っていなかったので驚いたのが記憶に新しい。

(にしてもあの時の五十六は可愛かったなぁ)











全国をめぐる武者修行の出発の日を思い出す。

旅立ちの日の朝、昨夜は遅くまで父上を杯を交わしていたので非常に眠く瞼が重かった。
家族や臣下の者たちから見送られての出発。
家族や臣下の者に挨拶しながら意気揚々と出発しようとすると、突然五十六が突然飛びついてきて俺にしがみつき泣き出してしまったのだ。
普段はめったに泣かない五十六が感情を泣き出してしまい、周りの者と一緒にオロオロしてしまったのを思いだす。
あの時は本当に焦った。
もし五十六があの時「いかないで兄上・・・」とか言ってたら出発をやめてさえいたかもしれない。・・・シスコンではないぞ断じて。
まぁそのくらい泣いていた五十六は可愛かったのだ。



しかし、実際は違った。
俺がどうすれば泣き止んでくれるだろうかと頭をひねっていると五十六が泣き止んだのだ。
行き成り泣き出して行き成り泣き止んだものだからどう反応して良いか迷ったのを覚えている。
対応に困っていると、ゆっくりと五十六が顔を上げて俺をまっすぐ見つめていた。
長い間泣いていた所為で目は赤くなっており、その姿にドキリとしてしまった。

皆の注目が集まる中、五十六は頬に残った涙を袖を使って拭いながら俺にこう言った。

「どうしてもいかれるのですか?」


俺に対する質問。瞳はまっすぐに俺を見つめていた。
そのあまりに真剣な様子に、下手に回りくどく言うよりも自分の思っている事をそのまま言うべきだと思い、改めて自分の気持ちを伝えることを決めた。


「あぁ・・・そうだ。このJAPANは近いうちに戦乱の世を迎えることとなる。
そのような事が起こった際、我らのような小さな武家は自分の思いとは関係なく巻き込まれてしまう。
もしそのような事態が起これば我らに良い未来はないだろう・・・。
そして今の俺は弱い・・・。領地の武芸大会では一番にもなったがJAPANにはもっと上がいる。
もしそのような者達と刃を交えることになればひとたまりもないだろう。
力がいる。
俺はこの山本を、そして父上や母上、お前や太郎を守りたい。その力を付けるためにJAPANを回り見聞を広めたいんだ。
・・・もちろん旅に出ても強くなれないかもしれないし、無事にもどってこれないかもしれない。だが可能性があるものは試したい。だから・・・すまない。」

包み隠さず本当のことを言う。その言葉は間違いなく俺の本心だった。

転生して、ここが何処なのか分かると同時に俺は自らを鍛えぬくことにした。
鍛えて、鍛え抜いて領地では並ぶ物はいなくなった。
しかし同時にわかってしまう。このままでは足りないことに。
この先に起こる出来事に抗える力ではないのだ。
もっと、もっと。力が必要だった。
どんな方法でもいい。自分の大切な物を守れる力が必要だった。
自分自身を守るということだけに置けば、俺はこの先も生き残る自信があった。
・・・しかし俺には守るべきものがあった。

家族だ。
異世界に来て現状を把握した日から俺は夜こっそりと泣いていた。
いきなりふとした拍子に死んでしまう世界に来てしまっていたのだ。
誰がこんな事態を喜べるというのだ。
俺は自身の殻に閉じこもるようにして生活していた。

そんな俺にも優しく、時には厳しく接してくれたものがいた。
父上と母上だ。
最初は前の記憶がある所為で甘えるのが気恥ずかしい気がしていた。
今思えば我ながら不気味な子供だったと思う。
それでも父上と母上は私を可愛がってくれた。

私は次第に心を開くようになり、笑顔で笑えるようになっていった。

確実に変わったのは俺が5歳になった時。
俺に妹ができた時だ。

前の人生では妹や弟、結婚もしていなかったから実際に近くで赤ん坊を見る機会がなかった。
生まれたばかりで母上に抱かれている赤ん坊を見て、触れて俺はそれの尊さを知った。
精神的に成熟していた所為かもしれない。
俺は初めて守るべき物を見つけたのだ。



時は流れ、今では立派に成長して評判の美人になっている大切な妹。
その妹が今、俺の身を案じてくれている。
それだけで俺がこの旅にでる価値があるのだろう。


五十六は俺の言葉を聞いてしばらく俯いていたが、急に顔を上げると泣いてしまったために赤くなっている目をこすりながら満面の笑みを浮かべてこう言ったのだ。

「必ず帰ってくると約束してください。私も兄上のお役に立てるように勉学も武芸も頑張ります。
ですから一人で背負わないでください。私たちは家族なのですから。」


目は真っ赤にして涙をためながら、花が開くような満面の笑みで五十六が言った。

正直な話面食らってしまった。
自分より5歳も年下の妹がそこまで自分の事を考えてくれていたことに。

ふと他の家族の方にも目を向けると皆同じような顔をしてこちらを見つめてくれていた。

(あ~やべー・・・。なんか涙がでそうだわ)

自分のことをそこまで考えてくれる家族がいる。それを再認識することができ目頭が熱くなるのを感じた。

ここで完璧に腹は決まった。この家族を絶対に守る。
異世界に来てはじめて守りたいと思ったもの。
命をかけても守る価値がある、守って見せると俺の心の中で深く誓った。












その後男は諸国を旅し、様々な冒険を経験した。
この出来事が、後のJAPANに大きな影響を与えていたのだが・・・それはまた別のお話。
5年もの長い旅路は男に望郷の念を思い起こさせていた。


(まぁ今は少しでも早く家族に会いたいな。)

5年ぶりに会う家族に早く会いたい気持ちがつのる。
鼻歌交じりに街道を進む。
帰りを待っているであろう家族の下へ


・・・なにが家族の身に起こっているのかも知らずに。



[7384] 第5話「意外なところで出会うもんだ」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/03/28 18:42






こんばんは
いやぁ夜の街道っていうのは寒いし暗い!(当たり前
オッス俺山本二十一ハタカズ
元は現代人だったが・・・今はルドラサウムが作ったというトンデモ世界に来てしまっているのだ!
とりあえずピンチ・・・誰かボスケテ。




転生して27年たったわけだが・・・未だにこれが夢なんじゃないかって思えてくる。
昔の記憶はほとんど思い出せなくなってしまったが・・・原作知識だけはなんとか記憶に残すことが出来ている。自分の命綱はさすがに手放せない。
昔はよく泣きながら生き残るために鍛錬した記憶があるが・・・今じゃこうやってネタにすることで自分自身の笑いをとるくらいには諦めてしまえている。
・・・なんか自分で自分を笑うとか寂しい人、もしくは危ない人なんじゃ?と一瞬思ってしまったが深くは考えないでおこう。主に俺の心のために。


・・・とりあえず5年間もの長い旅を終えた俺は前とは比べ物にならないくらいのパワーアップをすることができた。旅に出る前は領地内の迷宮探索や盗賊狩り等を行っていたが、いかんせん魔物やよせあつめ相手ではある程度の位置で強くなれなくなってしまっていた。
というより物足りなくなってしまっていた。
魔物や盗賊相手に剣や弓を鍛えたところでたかがしれていた。
魔物相手では体力が上がるなど肉体のポテンシャルは増加するが、剣の腕ばかりはある程度自分より強い武士もののふと戦わねば磨かれなかった。

その点において今回の旅では嫌でも鍛えることが出来た。
もし魔人や使徒と戦うことになっても善戦することが出来るだろう。

とりあえず俺がなんとかして瓢箪が割れるのを阻止すれば良いだけの事であるから問題はない。
今回の修行はこれから起こる戦いで生き残る事が目的だ。
魔人と戦うことが前提じゃない・・・もっともある程度は戦うことが出来るだろうと考えてはいるが。
俺には決定打がないからそこまで深く考える必要もないだろう。


考えが変な方向に行ってしまっていた。とりあえずそんな事今はどうでもいい。今は早く家に帰って家族の顔が見たい・・・。








なんて考えながら歩いていると
突然絹を裂くような女の悲鳴が聞こえてきた。

「くそっ、鬼か盗賊でも出たのかっ!?」
内心で舌を打ちながら駆け出す。
実はJAPANは治安が悪い。
少し前に大きな戦で国をまとめていた者が死んでしまい、群雄割拠の時代になってしまっていた。
まとめる者がいなくなれば覇権を狙っての争いも増える。
戦が増えれば割を食うのは民草であった。
当然それによって治安も悪くなり、国主の威光の届きにくい辺境では盗賊まがいの事をする輩が多かったのである。
その他にもJAPANには妖怪やら鬼やらが度々人里を襲うこともあり、一般的な民には住みにくい土地であった。

声が聞こえたのは森の中、街道から森へ突っ込む。
木々の枝がこすれ、体中を叩き痛みが走るがかまわず突っ切る。
あの声からして相当やばい状況だろう。急がなければ間に合わない!


森の中を全力疾走しながら目を凝らす。
視線の先には開けた空間があるようだ。男の怒鳴り声等も聞こえてくる。
それを確認すると同時に更に力を入れて大地を蹴る。
一気に残りの森を駆け抜けて広場へと躍り出る。

・・・そこには20人程の集団に囲まれた緑の男とピンクの女がいた。




「ランスさまー さすがにこの人数は無理ですよー ここは逃げましょうよ~ ひゃん」
もこもこしたピンク髪を結い上げた女が、大陸鎧を着た男をつかんで引っ張って泣きながら懇願している。
「うるさぁぁぁい!ここで盗賊を倒さねば宿場のかわいいこちゃんとウハウハできんではないかー!奴隷は黙って俺様の後ろに隠れておけ!」
大陸鎧を着た男はピンク髪の女を捕まえようとしていた盗賊を切り倒しながら叫んでいる。
周りには既に10近い塊が転がっている。圧倒的に不利な状況にありながらも男は諦めていないようだ。むしろ余裕すら感じられる。

(なんだかピンチそうだけど余裕に見えるから不思議だよな・・・流石!)
俺はとりあえず右手で獲物を確認しつつ盗賊へ向かって地を蹴った。


























Side:ランス

(チッ・・・聞いていたより数が多いじゃねーか。流石にこれ以上はやばい・・・ランスアタックで一気に突破して逃げるか?)

顔には内心を出さないように気をつけながら漆黒の剣を構えなおす。

(10人倒して・・・あと残り20・・・しかも囲まれてるって状況がマズイな)

最初は盗賊共が宴会している所の不意を打ったのだが、しだいに落ち着いた盗賊達は距離をとりながらランス達を囲むように陣取ったのだ。
流石のランスといえど前後左右からの同時攻撃には対応できない。
盗賊たちもランスに下手に近づけば切り殺されることが分かっているので、飛び掛る機会をうかがっている。
そこに両者の膠着状態が生まれてしまったのだ。
この状況を動かすには何かが必要だった。例えば第三者の乱入とか。





































事態が切迫している事に気づいた瞬間、今までにない踏み込みで大地を蹴っていた。
彼らはここで死ぬべき人ではない、死ぬはずがない。
わかっているが既に自分というイレギュラーが存在してしまっている以上、どこで物語に影響が出るか分からなかった。
獲物を両手で握りなおし、腰から水平に構え一足で飛び出す。

その様子に何人かの盗賊が気づき声を上げそうになったが、それは永遠に不可能となった。
すべての盗賊がただの肉塊になるのに、さして時間はかからなかった。


盗賊をすべて肉塊に変えた後、助けた2人の男女に向き直る。
2人の男女と自分の間にあり得ないほど変な方向に折れ曲がった人の形をしたものが転がっているが気にしない。
最初は吐き気を覚えるような光景だったが慣れてしまった。
JAPANでは良くあることなのだ。

ふと視線を感じて男女のほうに向けると、男が黒い剣を真正面に構えながら女を庇うようにして立っている。
無理もない。いきなり現れて盗賊20人を殴り殺す男がいれば誰だろうと警戒してしまう。
そんな存在が敵か味方かわからないのなら当然だ。
女を庇いながらこちらに視線を向けてくる男には隙がない。
それだけで歴戦の戦士だということが伺える。
後ろに立っている女の方も男に守られるだけの存在ではないようで、こちらの反応をうかがいながらすぐに動ける体制をとっている。


自分にしては助けたつもりだったけど、なんだか警戒されていることに軽い頭痛を覚えて溜息を吐く。
その様子に男女が怪訝な視線を向けてきていたので説明することにした。

「お二人さんをどうこうするつもりはないよ。ただ悲鳴が聞こえてきたから様子を見に来ただけ。さすがに分が悪いようだったから助太刀しちゃったけど・・・なんかまずかったかな?」

ちょっと申し訳なさそうにして尋ねる。
2人の方に視線をやると呆気にとられたような顔をしてこっちを見ていた。
その顔があんまり面白かったから噴出して笑ってしまった。
すんごい睨まれた・・・。


「とりあえず助けなんていらなかったが・・・手間が省けた。俺様を助けようとした心意気に免じて許してやろう。がはははは!」
大陸鎧を身に着けた戦士風の男が口を大きく開けて笑いながらそんなことを言った。
「ラ、ランス様~。ここは助けてもらったからお礼を言うべきですよ~。」
ひんひんと半泣きになりながら男に対する突っ込みをピンク髪をした女が言ったが
「うるさぁぁぁい!あの状況を抜け出すパーフェクトな作戦を実行しようとした所であの男が勝手に乱入してきたんだ!俺様の見せ場を奪ったんだから逆に謝るべきなのだー!」
と男は女をポカリと叩きながらそんなことを言い放った。

俺は呆気にとられてその光景を見ていたが、なんだかその光景が微笑ましくて笑い出してしまった。
男と女もいきなり笑い出した俺を見て不思議そうな顔をしていたが、男がお前の所為だと女をポカリと叩いていた。


ひとしきり笑った後、笑いすぎで出てしまっていた涙を指でこすりながら自己紹介することにした。
「す、すまん。二人の掛け合いが面白くてつい笑っちまった。俺は山本二十一ハタカズ。訳あってJAPANを放浪している侍さ。ここで会ったのも何かの縁だ。出来れば君達の名前も教えてくれないかな。」
腹筋がひきつっていたので息も絶え絶えになりながら言ったのは内緒だ。
男はそんな俺の態度が気に食わなかったのか、少しムスっとした表情をしながらもしぶしぶといった感じで答えてくれた。
「俺様は世界の勇者ランス様だ。JAPANには温泉めぐりにきている。こっちは俺の荷物持ちのシィルだ。」
そっぽを向きながら答えるその姿を見てまた笑いそうになったが、さすがに睨まれそうだったのでやめておいた。
シィルという女の方をみるとペコリをお辞儀をしてくれた。


そんなやり取りがあった後、尾張に行く途中だということを聞いたので一緒に行動をすることになった。
ランスの方はなんで俺様が男を連れて旅をせなあかんのだと呟いていたが、シィルさんがこの前みたいなことがあると大変ですよ?といった事を伝えると、しぶしぶといった感じで一緒についていくことを許してくれた。


俺の方はそんなやり取りが微笑ましくて暖かい視線を送り続けていた。
早く家に帰りたい気持ちもあったけど・・・寄り道をするわけじゃないから少しぐらいいいかなと思っていたことは内緒だ。








自分の修行の成功と主人公との遭遇、上手く行き過ぎているが故の油断だった。


























あとがき

主人公の武器
長くて硬い棒にしようと思うんだけど・・・どうしよう

ぶっちゃけると素材が使用者のテンションで硬度が変わる
肩たたき棒・・・とかどうよ



[7384] 第6話 「あれ?なんでこんな事になってるんだっけ・・・」
Name: てすと◆851f9a6e ID:e1742470
Date: 2009/04/01 20:07
まだ日も昇りきっていない時刻。
濃い霧が立ち込める中、大勢の人の気配がする陣。

緊張感が徐々に高まる陣の中でそんなことを呟いてみる。
周りは皆忙しげに走りまわったり、じっと精神を集中させている物もいる。

ふと視線をあげると存在そのものが陣の中で間違っているようなものが見える。
どこかのんびりしたような様子の男が陣の中央の椅子に腰掛けている。
その横では忙しそうにわたわたしている高価そうな着物を着た小柄な女の子。

ここがイクサが始まる前の陣の中でなければ、そこまで違和感はなかったのかもしれない。
しかし、ここは陣の中であり戦が始まろうとしている真っ最中である。
なんというか雰囲気ぶちこわしだった色々と。

「あぁ・・・本当に戦が始まるんだねぇ。」

男がまるで他人事のように呟く。
陣の真ん中にいるということは、男は常識でいくと総大将。
その身にまとう雰囲気と優しげな表情からは、今から殺し合いしようとしているものの顔には見えない。
隠しているのか、本当になにも考えていないのか。

端から見ればよくわからない風である。

「兄上、なにを暢気な・・・」

男の言葉を聞いて立ち止まりながら、綺麗な着物を着た小柄な少女が突っ込みをいれる。
その愛らしい顔立ちから、あと数年もすれば美人になるだろうとわかる。

「それに、そのような普段着で。せめて鎖帷子ぐらいお召しください。」

半ば諦めながらの言葉であったが、それは少女が兄の身を案じていることが伝わる。

「うんうん。わかったよ、コウ。」

妹の優しい心遣いに顔を綻ばせながら答える兄。
そっと少女の頭に手をのせ、慈しむように優しく撫でる。

<ぽんぽん なでなで>

兄の横でかわいらしく頬を膨らませながら怒っていた少女の顔がほころぶ。

「も、もう!緊張感がありません、兄上!」

急にハッとした表情になり、慌てて突っ込みをいれる少女。
どうやら兄の撫でスキルはかなり高いレベルのようだ。

「うんうん。よしよし。」

そんな妹の様子をほほえましげに見つめながら兄が応える。
どうやらこの兄、妹で遊ぶ・・・もとい弄るのが趣味のようである。

「人の話を聞いてください!」

妹はそんな兄の様子に気づいたのか、可愛らしい声で注意する。
しかし、ちょうど陣の中に人が入ってきたためスルーされてしまう。
陣の中に入ってきたのは、JAPANの軽鎧を着込んだ右肩に刀をかけた若い少し大柄な女武者だった。髪は紫色で凛々しい顔立ち。男勝りであるのがうかがえた。

「信長様。よろしいですか?」

「うん。なんだいお乱。」

妹をいじっていた時とは打って変わって真剣な表情で聞く信長と呼ばれた男。
その眼差しは、今までの調子がまるで嘘だったかのように感じられるほど力に満ちていた。

「偵察兵が戻って参りました。」

淡々と説明する女武者。その様子は冷徹というわけではなく、その報告をうける信長という男を信頼しているからこその態度であるということがうかがえる。
お乱と呼ばれた女武者乱丸は、そのまま報告を続ける。

「久保田法眼の陣が、全面に展開。総数は約800。
正面に久保田亜月、平沼元の軍が、配置済みとの事です。」

淡々と報告が告げられる。
報告を聞いていた男は少し悲しげな表情をしていた。

「そっか・・・本気なんだな・・・」

男は軽く返すが、本気で残念がっていることが表情と口調からにじみ出ていた。

「本気でなければここまでしません。」

「うん・・・それもそうだね。」

どこか遠くを見るように呟く信長。
そこに今まで信長の横に控えていた、ひょろりとした男が前に進み出る。

「信長様、この光秀にもう一度、久保田法眼の説得をさせて下さい。」

光秀と名乗ったこの男こそ、この信長率いる織田軍の軍師である明智光秀その人であった。
信長、香、乱丸の前に進み出る光秀。

「今は、織田家内部で内乱なんぞしている時ではありませぬ。
この戦、他国を喜ばすだけで我が方に利はありませぬ。」

こんこんと信長に理由を説明する光秀。
その時光秀の背後から、大きな影がぬっと現れた。

「そんな事はわかっている。
だけど売られた喧嘩は買わなくちゃ、男がすたるだろう。」

そう言い放つ影の正体。大きな槍を担いだ大男であり、その風貌はどこか熊を思わせた。
この人こそが織田家の忠臣の1人柴田勝家である。

「そんな単純なことではない。」

嗜めるように言葉を放つ乱丸。

「光秀殿もご存知だろう?
久保田の背後についている者の事を。」

そう言葉を続けて光秀を見る乱丸。
光秀は心当たりがあるのか言葉に詰まってしまった。

「足利・・・か・・・」

信長がポツリと呟く。

「むう、久保田のめ。男らしくない。」

そそのかされたことが面白くないのか、鼻息を荒くしながら勝家が言い放つ。

「まあ・・・なんでも利用しようという積極性と合理性は、誉めたいところかなぁ。」

どこか他人事のように呟く信長。

「またそのような事を。」

乱丸が間髪いれずに注意する。

「いや・・・本気でそう思うから・・・。」

どこ吹く風といった風に応える信長。
その言葉を聞いて勝家は泣きながら情けないと嘆いていた。

「裏切り者さえ悪く言う事のないJAPAN一寛大なお館様に、楯突くなど・・・」

心底くやしそうな様子で勝家が呟く。

「しかし、信長様。
奴とて裏切りたくて裏切ったのではないかもしれません。
ですから、いきなり戦わず、まずは話し合いを・・・」
「ええい!女々しいぞ、光秀!」

それでも尚話し合いを提案する光秀に対し勝家が言い放った。

「久保田に足利が近づいていたのは、
前々から分かっていたことだ。
どちらがどちらを利用するつもりでいるのか知らぬが、
織田転覆を謀っているのは、紛う方なき事実。
庇い立ては無用だ、光秀。」

さりげなく光秀に止めを刺す乱丸。
光秀はまだ唸っていたがさすがにもう話し合いを提案するつもりはないようだった。

「まあ・・・このような事、機会がなければ
起こりえぬものではあったがな・・・。」

どこか諦めたような表情をしながら乱丸が呟く。
陣の中に気まずい空気が立ち込めていると、
そこに霧の向こうから陣の中央に近づいてくる者が2人。

周囲の者がまとっている甲冑とは違う種類の甲冑の金具の音。

信長に「おう」と言いながら入ってくる緑の服の上に大陸鎧を着込んだ男が陣の中央にやってくる。

「おかえり、ランス。」

信長が声をかけると、ちょうどその時ランスの後ろからもう一人の人物が顔を出した。
ピンクのもこもこヘアーを結い上げて着物を着たランスの付き人、シィルだった。
息も絶え絶えでどこかバテたような様子である。

「シィルさんもおかえりなさい。山道は大変だったでしょ?」

へとへとになっているシィルに香は気遣いながら、水の入った竹のコップを差し出した。

「あ、ありがとうございます。香姫様。」

シィルは礼を言いながらそれを受け取る。

「はい、ランスさんも。」

「うむ、ご苦労。」

ランスは大仰にうなずきながら水を受け取り、それを飲む。
水を飲み終えたランスの様子を見て信長が口を開く。

「で、どう?俺の軍隊は。」

「うむ、グッドだ。思ったより訓練されているではないか。」

上機嫌にランスは応える。

「まあ、JAPANは戦の時代だからね。一応、備えはしてあるよ。」

ハハハと笑いながらそういう信長。
ランスはその様子をみて気になったことを口にしてみた。

「しかし、軽装だな。強度は大丈夫なのか?」

少し疑うようにランスが尋ねる。

「俺からすれば、橋の向こうの人たちは重装備すぎるなぁ。」

「ふん。これぐらいがちょうどいいのだ。」

信長の言葉に胸を張りながら答えるランス。
橋の向こうの大陸の東にあるリーザスでは、JAPANで使用されている鎧よりも重装備なのだ。
大陸の北の方にあるヘルマンには重歩兵もおり、その装甲の厚さはリーザスよりも厚い。
そんな鎧を見たことがあるランスにとってJAPANの甲冑は少し頼りなさげに見えてしまったのだ。

「さて、どうするかな。」

ランスが考え込むように言う。

「君の好きに。尾張は君に任せたんだから。」

かなりすごいことをあっさりという信長。

「うむ、そうだな。
俺様がこの国の影番様だからな。
では好きにさせてもらうとするか。

というか、いいのか?
あいつ、元はお前の部下だろ?」

「うん・・・そうだけどね。
こーいう時に謀反を起こすという事は、
別の理由でもいつかやっちゃうんじゃないかなぁと思うんだ。
だから、しかたないかな。」

どこか抜けているようで、的を得た事を言う信長。
その信長の言葉にうんうんと頷くランス。

「わかった。ではやるぞ!」

ランスは大きく声を上げ陣から出て行く。
勝家は応!と掛け声をあげてその後ろから続く、
その後ろでは光秀がまだぶつぶつ呟いていたが、勝家に両頬をつぶされタコのような顔にされていた。
その傍では無言の乱丸。
勝家がそのことについて尋ねると、やはり昔の仲間と戦うのはあまり嬉しくなさそうだった。

「がははははは!!お天道さんが昇ったら総攻撃だ!
いくぞ、者ども!とーーーー!!!」

がはははと大きな笑い声をあげながら上機嫌で陣を出ようとするランス。

「気をつけてねー。」

「あっ・・・ご武運を!!」

信長と香の言葉を聞いて更に機嫌を良くしながら、陣を出ようとするランス。
そこに今まで陣の隅で座り込んでいた男から声がかかった。

「夕飯までには帰ってくるのよー!ママ待ってますからねー!」

どうみても20を完璧にすぎたお兄さん、というかもう少しでおっさんの仲間入りといった風貌の男が手を振りながらランスを見送る。

その言葉を聞いてピクリと反応したランスは急に陣に向き直り、早足でその男の下へ向かった。

「アホかー!貴様もついてこんかー!!!」

手に魔剣カオスを構え、その剣の腹の部分でしたたかに男の頭をひっぱたく。
気持ちが良くなる程の快音を響かせるとひっぱたかれた男は涙目になりながら訴えてきた。

「いてぇじゃねぇか!ちょっとしたお茶目だろ!!ここまでするかフツー!?」

あまりの音に駆け寄ってきた香姫に痛いの痛いのとんでいけーとか言われながら頭を撫でられているこの男は山本二十一という男であった。
ひょんなことからランスと一緒になり、成り行きで尾張の反乱軍鎮圧にまでひっぱりまわされていた。

「だいたい俺は手伝うとはいってねーぞ・・・。なんで反乱軍鎮圧なんか・・・」

ぶつぶつ呟きながらふてくされる男。まだ頭が痛いのだろう。
涙目になりながら頭をさすっている。ぶっちゃけかっこわるい。
それを慰める香姫との構図にいれると、どっちが大人なのかわからなくなるぐらい子供ガキっぽい男だった。

「お前つよいから俺様が楽するためだ。」

涙目の二十一ハタカズを当然とばかりに見つめながら応えるランス。
こんな調子でここまで引っ張りまわされているようで二十一という男は「またかよ・・・」といいながらいじけて地面に「の」の字を書いていた。
その横では必死に香姫が励ましている。


ぶつぶつとまるで危ない人のように呟きながら二十一ハタカズは心の中で溜息を吐いた。

(なんでこういう事になっちゃうかなー・・・。はやく俺は帰りたいのにいつの間にかずるずると道ずれにされてね?なんでこんな事になっちゃったんだろ・・・?)

思い返されるこれまでの道中の旅、彼はランスに引っ張りまわされた。
ランスがやりたい放題したい放題だったので、彼の付き人であるシィルと一緒に様々な後始末をさせられた記憶が蘇る。

(うぅっ。そういえばこうなった事の発端はあの茶屋にいったことが原因だよな・・・)

この事態を引き起こす事になった茶屋での出来事を思い出しながら、二十一は心の中でさめざめと泣いた。


実はその時陣の中央では、

「・・・とはいうものの・・・ランスは本当に強いのかな?」

「さあ・・・知りません。」

「負けた時はどうしようかねぇ。」

「もう、兄上!」

なんてやり取りがあってたりするが、それは誰にも聞かれることはなかったという。











あとがき

導入部分がおわらない・・・
ほとんどオリジナル要素がかけなかった(´・ω・`)
とりあえずキャラの性質とか分かりやすいようにわざと入れたんだけど
これでよかったものか・・・?

とりあえずこれでキャラのイメージが固まってくれればなぁ・・・と思います。


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