- ニアサードインパクトより1週間後 -
???「…さん…すず…さん!鈴原さん!」
サクラ(8歳)「!?」
???「気が付いたね!よかった…本当に…」
サクラ「私…どうして?ここはどこ?」
薬のような匂い、どこなんここ?
???「ここは救護施設だよ。第3新東京市で怪獣が暴れてシェルターが壊れたんだ…あれから鈴原さんは一週間ずっと気を失っててね…とにかく気が付いてよかったよ。」
サクラ「ウチ…また怪我したんや…おっちゃんはお医者さん?」
???「私はネルフの人だよ。鈴原さんの怪我は小さいみたいだから安心して、何か痛いところとかは無いかい?」
サクラ「別に…あらへんけど…とーちゃんは?あとにーちゃんとじーちゃんは?」
ネルフ職員「……」
サクラ「なあ、どうしたん!?大怪我でもしたん?大丈夫なん!?」
ネルフ職員「今全力で探しているところだから大丈夫だよ。それと私はお父さんやおじいちゃんと知り合いだからね!鈴原さんは安心して休んで居たらいいよ、必ず見つけるからね!」ニコッ
サクラ「うん…分かった…約束やで!ネルフのおっちゃん!」
ネルフ職員は踵を返してその場を離れた。今は希望を持つしか無い…そう言い聞かせながら…
彼女の兄トウジ君の避難していたシェルターを含め
様々なシェルターが先の戦いで崩壊し多数の犠牲者が出た。
皮肉にも唯一ネルフの運営する病院のシェルターのみ
被害が軽微に済み…といっても犠牲者は出ているが、生存者が確認された。
ネルフ職員「(生き残った方が不運なのかもしれない)」
ネルフ職員からも多数の犠牲者が出ており
その中に鈴原さんの父や祖父も含まれていた。
やはり子供に嘘をつくのは辛い。
あの時エヴァンゲリオン初号機は使徒を撃破したものの
あのパイロット…碇シンジ君は世界を滅茶苦茶にしてしまった。
世界各地で異変が起き犠牲者が出た。
生き残った人々の多くは絶望し、涙を流し、叫び、各々の感情を露わにしていた。
自らの命を絶つものもいた、他者の命を奪う者もいた…
混沌とした世界が幕を開けたのは明白だ。
ネルフ職員「(私に出来るのは…とにかく生きる希望を与えるだけ…嘘をついてでも…)」
彼はニアサードインパクトが起きてからまともに食事をとってもいなければ睡眠もしていない。
ただひたすら生存者を探し、励ましていた。
幸いネルフ本部のMAGIはさほどダメージを受けていないようだったが
機械が示す答えなど残酷だ。希望を持てば持つほど残酷なのだ…
大切な人を失った者、これまで築いた地位をなくした者、生きる希望をなくした者…
彼らになんと言って希望を持たせればいいのか…
嘘をつくのも慣れたものだが、そんな自分が怖くなる…。
ネルフ職員「(情報網が断たれたので真実はほとんど知られていないが、恐らく復旧が始まればいずれ分かる。この騒動はネルフの仕業だと…そしてみんな恨むのだろうな…)」
今はただ…明日生きることを考えよう。
そして考えさせよう。
サクラ「はよ帰ってこんかなー?退屈やわー」
退屈な日々はいつしか鬱屈な日々に変貌することをまだ知らない。