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[43002] 鈴原サクラ「生きとったら28歳かぁ…」
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/25 21:15
鈴原サクラ「生きとったら28歳かぁ…」

新劇の鈴原サクラにフォーカスを当てたストーリーです。


Qで旧ネルフ職員から冷たくされ、希望を失ったシンジですが
唯一笑顔で接してくれた人物がいたと思います。

シンジの親友鈴原トウジの妹、鈴原サクラはただ一人笑顔で接してくれた人物です。

そんな彼女のニアサードインパクトからの心の変化と恨みの物語を描きます。

理解の足らない点や事実とは異なる点、自己解釈がありますがご了承ください。



[43002] プロローグ
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/25 21:32
- ニアサードインパクトより1週間後 -


???「…さん…すず…さん!鈴原さん!」

サクラ(8歳)「!?」

???「気が付いたね!よかった…本当に…」

サクラ「私…どうして?ここはどこ?」


薬のような匂い、どこなんここ?


???「ここは救護施設だよ。第3新東京市で怪獣が暴れてシェルターが壊れたんだ…あれから鈴原さんは一週間ずっと気を失っててね…とにかく気が付いてよかったよ。」

サクラ「ウチ…また怪我したんや…おっちゃんはお医者さん?」

???「私はネルフの人だよ。鈴原さんの怪我は小さいみたいだから安心して、何か痛いところとかは無いかい?」

サクラ「別に…あらへんけど…とーちゃんは?あとにーちゃんとじーちゃんは?」

ネルフ職員「……」

サクラ「なあ、どうしたん!?大怪我でもしたん?大丈夫なん!?」

ネルフ職員「今全力で探しているところだから大丈夫だよ。それと私はお父さんやおじいちゃんと知り合いだからね!鈴原さんは安心して休んで居たらいいよ、必ず見つけるからね!」ニコッ

サクラ「うん…分かった…約束やで!ネルフのおっちゃん!」


ネルフ職員は踵を返してその場を離れた。今は希望を持つしか無い…そう言い聞かせながら…


彼女の兄トウジ君の避難していたシェルターを含め
様々なシェルターが先の戦いで崩壊し多数の犠牲者が出た。

皮肉にも唯一ネルフの運営する病院のシェルターのみ
被害が軽微に済み…といっても犠牲者は出ているが、生存者が確認された。


ネルフ職員「(生き残った方が不運なのかもしれない)」


ネルフ職員からも多数の犠牲者が出ており
その中に鈴原さんの父や祖父も含まれていた。
やはり子供に嘘をつくのは辛い。


あの時エヴァンゲリオン初号機は使徒を撃破したものの
あのパイロット…碇シンジ君は世界を滅茶苦茶にしてしまった。
世界各地で異変が起き犠牲者が出た。


生き残った人々の多くは絶望し、涙を流し、叫び、各々の感情を露わにしていた。
自らの命を絶つものもいた、他者の命を奪う者もいた…
混沌とした世界が幕を開けたのは明白だ。


ネルフ職員「(私に出来るのは…とにかく生きる希望を与えるだけ…嘘をついてでも…)」


彼はニアサードインパクトが起きてからまともに食事をとってもいなければ睡眠もしていない。
ただひたすら生存者を探し、励ましていた。


幸いネルフ本部のMAGIはさほどダメージを受けていないようだったが
機械が示す答えなど残酷だ。希望を持てば持つほど残酷なのだ…
大切な人を失った者、これまで築いた地位をなくした者、生きる希望をなくした者…

彼らになんと言って希望を持たせればいいのか…
嘘をつくのも慣れたものだが、そんな自分が怖くなる…。


ネルフ職員「(情報網が断たれたので真実はほとんど知られていないが、恐らく復旧が始まればいずれ分かる。この騒動はネルフの仕業だと…そしてみんな恨むのだろうな…)」



今はただ…明日生きることを考えよう。
そして考えさせよう。


サクラ「はよ帰ってこんかなー?退屈やわー」


退屈な日々はいつしか鬱屈な日々に変貌することをまだ知らない。





[43002] 知の恐怖と無知の恐怖
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/25 21:32
数ヶ月後 朝


救護施設


サクラ「……」

看護師「サクラちゃんご飯よー!食べないと早く元気に慣れないわよ?」

サクラ「ええわ…元気なりたないし…」


彼女の痩せ細った体には点滴が注入されている。彼女はここ数週間何も口にしてはくれない。


看護師「またそんなこと言って!ねえ聞いて、この間たくさん食料が見つかったのよ?ほら!ひさしぶりに美味しいご飯なんだから!」

サクラ「おいしんやったらおばちゃんにあげる、たべてええよ…」

看護師「サクラちゃん…。おばちゃん他の人のとこにも行かなくちゃいけないから今日こそちゃんと食べるのよ…またここ置いとくわね…」

サクラ「(とーちゃんもにーちゃんもじーちゃんも…友達もみんな死んだんや…死んだんや…なんでウチだけ…)」ポロポロ

サクラ「早よ天国に行って会いたい…苦しいよ…しんどいよ…」



6年後

サクラ(14歳)「あんときのお兄ちゃんと同じ歳になってもうたなぁ…もし生きとったらハタチくらいやな…」


あれから時が経ち、人々は少しづつ立ち直り始めていた。


数年前にウチはネルフから離反した職員さんに引き取られ世話見てもらっとる。
辛いこともあったけど新しい友達もできたし…新しい目標もできたんや…。


それはこの世界を滅茶苦茶にした張本人
碇シンジを呼び戻すことや


ウチの家族を奪ったアイツが許せへん…
家族の幸せを奪ったアイツが憎い…。

だからようさん勉強してどないしてでも罪の償い…
いや、罰を与えたい…。


アスカねーちゃんが言っとった。碇シンジは生きて帰ってくると…


ねーちゃんもアイツを恨んどる。
聞く話やったらねーちゃんの身体の傷は碇シンジが付けたモンで
不可抗力やったみたいやけどエヴァでねーちゃんのコックピットを握りつぶしたそうやわ…
ホンマに許せへん…。


学校ではニアサードインパクトの張本人が碇シンジで
ネルフはそれを支えた組織やと教わった。

ネルフと碇シンジは家族の敵、いや、世界の敵なんや。


サクラ「お父さんやおじいちゃんはそんな奴らのために…。」


思い出すだけで胸が痛くなる。利用された上に命まで奪われた!
私は奴らを許さない!




[43002] 気付きと困惑
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/25 21:32
6年後

鈴原サクラ(20歳)「あぁ、ウチも知らん間にハタチかぁ…」


あれから時が経ち、ウチの引き取られた組織の名前はヴィレと名乗るようになり
ネルフの敵対組織として対立するようになった。


サクラ「(これまで色々あったわ…ただ子供の私は大人に甘えるしかなかったんや、今やヴィレの一員、世界のヒーローの一員みたいなもんなんかなー?)」


サクラは物思いに耽る…これまであったこと…
そして…最も憎むべき相手のことを…


数年前までは彼のことが憎くて仕方なかった。
今ではネルフが世界を不幸に陥れた存在として知られているけど
ニアサードインパクト前当時の認識は世界を守る組織であり、職員は皆世界を守る為に必死やった。

救おうとした結果不幸を招いたけど
その結果から世界は救われたし、ウチは生きとる。


今なら分かる。ミサトさんやリツコさん…
それとアスカさんは碇シンジさんを憎んでなんていないんや…
ちゃう、旧ネルフ職員の何人かは憎んでなんていないと思うわ。


あれこれ悩んだ結果17歳くらいで勉強を辞めてしまったウチやし
もともと頭は良くないけどこれだけは分かる。

あの行きすぎた教育
ネルフと碇シンジさんを憎むように仕向ける教育は希望を持たせるためやったのかも知れない。

誰かが悪になるしかなく、世界を救うには彼を悪にするしかなかったんや。
だからこそヴィレも設立する事ができたのだと思うわ。


サクラ「(一番辛かったのは旧ネルフ職員さんやったんやろうね…)」



特にアスカさん…




[43002] 追想
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/25 21:32
回想

ニアサードインパクトより一年後のこと


旧ネルフ職員より保護されたサクラはろくに食事を摂らず病室で寝ているばかりだった


コンコン…ガチャ…


アスカ「鈴原…の妹ね…?」

サクラ「お姉ちゃんは誰なん?」

アスカ「お兄さんのクラスメート…トウジの…友達よ…」

サクラ「…」


アスカ「……!!」ギュッ


おもむろにサクラを抱きしめるアスカ
その痩せ細った体はアスカの心を更に傷付けてきたのだろう。


アスカ「ごめんね…ごめんね…お兄さんやお父さんを守れないで…辛かったよね?もう独りぼっちじゃないから…私が一緒に居てあげるから…」




回想終わり


…痛々しい包帯だらけだったアスカさん。
自失していた私を救ったのは彼女だった。

今思えばアスカさんらしくなかったとは思うけど
辛いのはアスカさんも同じやったんや…。

世界を守れなかった事と碇シンジさんを失った事…。
そして悔しかったと思う…。


どうしてあの時わざわざ私のところに来てくれたのだろう?
自分でも恥ずかしいし、考え過ぎかもしれないけど、私の答えはこうだ。


碇シンジさんが戻ってきたときの希望となる存在を見つけたかったのだと思う。


当時は碇シンジさんの生存の有無は確認されていなかったけど
アスカさんは生きていると信じていた。


そう、もし帰ってきた時に彼を安心させてあげたかったのかもしれない。
私にそんな器があるかどうかは知らないが、帰ってきた時に一人でも大切な人を守った事を伝えかったのだと思う。

もっとも皮肉な事に数年前まで私は腑が煮えくりかえる程碇シンジさんを憎んでたのだが…。
とにかく当時の彼女はとにかく必死だったのだろう。



それともう一つ…あの日のことを思い出す…



回想

アスカ「おら~!サクラ~!相手しなさいよ~!」

サクラ(16歳)「アスカねーちゃん!?うっっっっわ!酒くっっさ!!」

アスカ「レディに向かって臭いとはらんらのよー!あんたの方こそ勉強ばっかやってるとリツコみたいにつまんない女になるワヨーーー!」

サクラ「余計なお世話ですーー、ウチにゃリツコさんみたいになって数年後の碇シンジ奪還作戦に参加するっちゅーー大きな夢があるんや!何としても世界中の人の苦しみを分からせたらなアカンのや!」

アスカ「……」


アスカの表情が一瞬曇る


アスカ「……いーい夢じゃないのー!碇シンジを取り戻したら二番目に殴らせたげるわーー!」

サクラ「アカーーン!一発目はウチなんやーー!」


あぁ、あの時もアスカさんは無理をして私に合わせてくれてたんだ…
悲しかったに違いない…それとあの後…。



ベッドの上


アスカ「スーースーーー、ムニャ」

サクラ「なんでウチがフロアで寝なあかんのや…?明日もガッコあんのに…」

アスカ「シン……」

サクラ「ん、どしたんねーちゃん?」

アスカ「シン…ジ…シンジぃ……」ポロポロ

サクラ「(何や碇シンジの夢でも見とるんか?夢の中でもねーちゃんを傷つけて…!許さへん…許さへんからな)」




[43002] 憎悪は関心か
Name: ブイ◆ce863cfe ID:086878b0
Date: 2018/02/26 19:59
回想終わり

あれは碇シンジさんが憎かったんとちゃう。
寂しかったんかもしれへん。

そんな事も気付かずにアスカさんが恨んでいるとばっかり…
知らず知らずのうちにアスカさんを傷付けとった…


思い返せば青葉さんも日向さんも…伊吹さんも…
悪口言いつつもみんな辛そうな顔しとった…

建前上碇シンジさんを悪く言わなアカンの…
でないとヴィレは機能せんのや…


サクラ「(確かに今でも碇シンジさんの事は少し憎いのかも知れへん、でもなあ)」

サクラ「トウジ兄ちゃんやったらどうしてたんやろ?」

サクラ「(ウチは碇シンジさんの親友でもなければ知り合いでも無い、けどあの純粋熱血バカ兄貴ならどうしてたんやろな?)」

サクラ「(きっと応援してたに違いないわ、建前なんて捨てて彼を庇い続けてたやろうね)」


聞いた話によると、旧ネルフ職員が集まり始めて組織化する前までは
ミサトさんやリツコさんは碇シンジさんの身の潔白を証明し続けてたみたいや

しかしネルフと敵対しさしてからは彼を敵視し
悪人呼ばわりしたそうや。それは仕方ないことや…


サクラ「(けどな…トウジ兄ちゃんはそうなっても庇い続けたんとちゃうかな?)」

サクラ「(ウチは碇シンジさんの事はよう知らんし、トウジ兄ちゃんの考えとったこともよう分からん。けどトウジ兄ちゃんは碇シンジさんの事を死ぬまで信頼していたと思う。)」

サクラ「(ましてや恨むなんて絶対せぇへん。もしあの時ウチが死んどっだとしても多分一発殴るだけで許しとったと思うわ。)」


誰よりもウチを可愛がってくれた兄や
例え世界を破滅寸前に導いても私が生きていたのなら兄は満足しっとたやろうね…


サクラ「これまでのウチの行いはトウジ兄ちゃんの意思を踏みにじっとったんかも知れへん…」


これまで碇シンジさんが憎くて仕方なかった。けど兄のこと思うと恨むことができへん。頭の中で考えがグルグル回ってしまう。


サクラ「(ウチはトウジ兄ちゃんみたいに強ない…だから今さら碇シンジさんを庇えれへん…というより一番悪ゥ言うとったのはウチやったんや。)」


今でも憎い…けどトウジ兄ちゃんなら彼を信じたはず…
後2年でUS作戦決行や…ウチはどうしたらええんや?




[43002] たった一人の冴えたやり方
Name: ブイ◆ce863cfe ID:99fddfa6
Date: 2018/02/27 15:36
2年後


US作戦後


サクラ「(あれが…シンジさん…なんかナヨナヨしてて話とちゃうなぁ)

シンジを奪還したのちに自室に戻ってきたサクラだが…

サクラ「(ホンモン見たら何か変わるおもてたけど調子狂ったわぁ…)」


モヤモヤが晴れない、分かっていたが…

クルーの対応は非常に冷たく、彼の救いとなる葛城艦長や赤木副長は彼を突き放し
頼みの綱の式波二尉に至っては何を血迷ったか殴ろうとする始末…
素直じゃないので仕方ないといえば仕方ない…


サクラ「(でもなぁ、せめて裏では優しくしたってや…)」


何も知らない彼にとってあんまりではないか?サクラはそう思う。


かつて彼を殺したいほど憎んでいた彼女だが
時が経つにつれて心が変わり、式波二尉や葛城艦長のように彼を助けたいと思い始めていたところだ。


だがさっきの対応は何だ?
建前があるのはわかるが酷いとまで感じた。


サクラ「(トウジ兄ちゃんが信頼してくれた人が…私を生かしてくれた人があんなに苦しんどるんや…トウジ兄ちゃんの思いは生き残ったウチが受け継がなあかんのとちゃうんかな?なあ、アスカさん…)」


葛城艦長と赤木副長は何を思ったか
(表面上)一番彼を憎んでいると思われている私をシンジさんの担当にした。


サクラ「(今じゃあんたらとおんなじようにシンジさんを憎んでるのは建前だけや。いや、建前なんかいらんわ!)」


もう全力で庇ったる。トウジ兄ちゃん…ウチに任せといてな!




シンジ「鈴原?え!?トウジの?」

サクラ「はい、妹です…フフッ」ニコ



アニキの次は今度は妹がシンジさんの世話焼いたるで…




[43002] 勘弁してほしいわ
Name: ブイ◆ce863cfe ID:99fddfa6
Date: 2018/02/27 15:37
サクラ「(と思ったんやけど何やシンジさん心開いてくれへん…)」

サクラ「(そりゃそうや、14年も寝とった言われるし何が起きとるか分からんし救ったはずのガールフレンドが居らへんし…エヴァ乗るな言われとるし…流石に葛城艦長…不器用を通り越してアホとちゃうんか…?)」



これ以上シンジさん苦しめんとってほしいわ…。




~ ネルフの襲来…突然鳴り響く轟音… ~


シンジ「ミサトさんの分からず屋!もういいよ!」


咄嗟にDSSチョーカーのコントローラーを構えるミサト
しかし…


ミサト「……!!クッ…!!」


葛城艦長はチョーカーのスイッチを押さない…
押せないのだ、かつての家族にそんなことはできない筈だ。



サクラ「碇さん!!」



碇さん!頼むから行かんでください!

ネルフ行ってもええ事なんてない!

エヴァに乗せられて死ぬかも知れんのや!

ウチの兄ちゃんが悲しむんや!

シンジさん自身悲しむことになるんや!!



サクラ「碇さん!エヴァにだけは乗らんでくださいよ!」


これ以上…シンジさんに辛い思いして欲しないんや…

エヴァに乗っても辛い思いすんのは目に見えとるんや。



サクラ「ホンマ…勘弁してほしいわ…」





おまけあります。



[43002] おまけその1 トウジは何思う? Part1
Name: ブイ◆ce863cfe ID:99fddfa6
Date: 2018/02/28 22:28
おまけ

対第10使徒

ニアサードインパクト


トウジ「(あのバケモンとシンジが戦っとる。あいつは世界を守ってくれた。せやけどワシらは助からんみたいやな)」


破損したシェルター、空へ浮かぶ無数の瓦礫、使徒を倒したはずなのに、世界が守られたはずなのに…
確信した。揺れる大地と紅く染まる空を感じて…ここまでだと。


トウジ「なんやワシえらい冷静やな…」


その呟きに反応して彼の側にいる少女が応える。


ヒカリ「諦めっていうのかな?それとも絶望なのかな?」


洞木ヒカリ…彼を想う少女であり、先程彼に守られた存在だ。


トウジ「せやな…それもある。複雑な気持ちやけど腹は括れとる。」


トウジ達と同じシェルターに居合わせた者は学校の生徒やその関係者
さらには近隣の住民などが含まれていた。


冷静な二人をよそに泣き叫ぶ者、嘆く者、必死で大丈夫と言い聞かせるものなど様々だ
彼ら以外は正気を保っていられないようだ。


普段偉そうに説教している大人は狂ったように錯乱し
仲の良いクラスメートは放心している。


トウジ「(どうしてワシはこんなに冷静でおられるんやろな…サクラの事も不安やのに…)」

トウジ「サクラ、大丈夫やろうか…?」

ヒカリ「きっと大丈夫、私たちの碇君達よ?私たちが信じなきゃ誰が信じてあげるって言うの?」

トウジ「センセかぁ…イインチョ、ワシ…シンジの親友でホンマ良かったと思うわ。」

ヒカリ「私も、アスカや碇君の親友で良かったと思う」

ヒカリ「二人が今生きているのかどうかわからない、けど分かる。二人は生きていてこの世界の希望になるんじゃないかって」

トウジ「せやろな、辛い思いもするやろけどワシらの分まで強く生きて、幸せを掴める」

トウジ「何かワシは誇りに思える。あんな強い男の友達だったことにな。」

ヒカリ「碇君…きっと恨まれるんだろうね。たくさんの人から…世界中の人から…」

トウジ「そんな奴おったらワシがどつき回…せたらええんやけどなぁ…」

ヒカリ「そんなのって…あんまりだよね…世界を守ったのに…恨まれるなんて…」グスッ、ポロポロ

トウジ「大切な人を失って許せる人なんてそうそうおらへん、ワシかてこの前シンジに八つ当たりしてしもうた…思い出しただけで自分を殴りたなる…。」

トウジ「けどな、分かってくれる人は必ずおる筈や。」

トウジ「ミサトさんや式波、綾波、あとはよう知らんけどネルフの職員さん、分かってくれる人が側にいてくれるはずや!」

ヒカリ「うん…うん!そうね!私達が信じてあげなきゃいけないもんね!」ニコ

ヒカリ「けど、私達が側で碇君やアスカの力になれないのは悔しいね。」


トウジ「そうやな、悔しいけどもうええ、悩んでもあかんのや。あいつら信じるのがワシらの役目や、もう満足やわ。それとな…最後に言っておかな後悔する事があるんや…。」


ヒカリ「?」



[43002] おまけその1 トウジは何思う? Part2
Name: ブイ◆ce863cfe ID:99fddfa6
Date: 2018/03/01 22:47

トウジ「ワシ、イインチョと会えてよかった思っとる…」

ヒカリ「……!!」

トウジ「今まで色々世話焼いてくれてありがとうな、こんな性格のワシにいつでも突っかかってきたのはイインチョだけやったな」

ヒカリ「そんな、私何もしてないし…委員としt…」
トウジ「何言っとんねん…とっくに気付いとったわ…」

トウジ「もっと早よ言うときゃ良かった…今更後悔してもアカンけどな、イインチョが何考えとったか分かっとる。」

トウジ「ビビリなワシはその関係に妥協して中々思いを言われんかった…。」


トウジ「ヒ、ヒカリ…さ、最後まで一緒やからな…」カミカミ


ヒカリ「プッ…フフフ…アハハ!」クスクス

トウジ「何やねん!笑うことないやろ!」

ヒカリ「クスッ…ごめんね、鈴原らしい、やっぱり素直じゃないわね!そんなとこも好き…かな?」

トウジ「なっ!!やめんかい!!こそばゆいわ!!」

ヒカリ「どうしてもっと早く言えなかったのかな?何だかスッキリしちゃった!」

トウジ「何やねん一人で盛り上がって…調子狂うなぁ…。」タジタジ


ヒカリ「きっかけが欲しかったのよ、お互いにね」

トウジ「そ、そうやな…これがきっかけになるとは思わんかったわ…」


辺りは暴風が吹き轟音が鳴り響いているが二人には関係ない
この時間を噛み締めたい、ただそれだけ。



こんな気持ちははじめてだ

今までの自分であれば妹のことしか頭になかった。

しかし今では親友に全てを託せる。

自分がどうなっても構わない

彼と妹が互いの希望となると信じている。


こんな気持ちははじめてだ
自分がどうなってもいい
この時間を1秒でも多く噛み締めたい。
親友が世界を救う姿を見届けたい。
世界一贅沢な時間を感じたいと…。



恋人同士であれば別れの言葉や臭いセリフが浮かんでくるだろう
同シェルター内でもクラスメートのカップルが抱き合って最後の言葉を紡いでいる。


そんな風景を他所に、鈴原トウジと洞木ヒカリは静かに空を眺める。
親友の事を気に掛けながら、最後の時間を過ごしながら…



[43002] おまけその2 もう一人の親友
Name: ブイ◆ce863cfe ID:99fddfa6
Date: 2018/03/01 22:47

壊れたシェルターの中にはもう一人碇シンジの親友がいた。


クラスの中でもトップクラスの変わり者で
カメラマニアの少年、相田ケンスケだ。


目の前に浮かぶエヴァンゲリオン初号機と紅の空
以前の彼であれば鼻息荒く興奮してカメラを向けていただろう。


しかし彼はその風景から目を離すことができなかった。
それは絶望でも哀しみでもない、ただただ惹かれていたのだ。


カメラで撮影しても意味のない状況でもあるが
彼の頭の中にはそんなことはどうでもいい
その目に焼き付けたかった。


ケンスケ「(撮影があんなに好きだったのに、私利私欲の為に撮影してたのに…。自分がしていたのは何だったんだ?オモチャを振り回すだけだったってこと?)」


俺は悲劇のヒーローの誕生の瞬間を目にしているのだ

あの中には親友の碇シンジがいる
世界を守ろうとしたものの世界を滅ぼしてしまった存在
ああ、なんと儚い、なんと尊いのだろう。


ケンスケ「(事実は小説より奇なりと言うもんだな…)」

ケンスケ「これで終わりなのかな?どう思う?トウジ…?あれ?」



鈴原トウジの姿が見当たらない、よく探すと委員長と一緒に居る。


ケンスケ「(ようやくくっ付いたか、やれやれ遅いっての)」



彼らは彼らの時間を過ごしたいのだろう
茶々をいれるつもりもないし憤りもない。
むしろ嬉しい。


気が逸れたが
また先程の思考に戻る
彼の頭には親友の心配しかないのだ。


ケンスケ「(碇の活躍で世界は守られるのか?それとも地球は滅ぶのか?)」


シンジの活躍で世界が助かると思いたいのだが
いかんせんこの状況だ、世界が滅びてしまうという思考にもなる。



ケンスケ「(まあどうでもいいか、碇の笑顔を見れて悩みをたくさん聞いてやれてよかったよ)」


親友の写真を平気で売り飛ばしたりする彼だが
性根は腐ってないようだ。
自分の心配ではなく親友の心配しかしていない。


だが皮肉なことに彼の思いは碇シンジには届かない
彼は親友や多くの人を殺してしまった事を深く後悔するのだから…


ケンスケ「(もう俺が助からなくてい、あいつの救済さえあれば何もいらないね。せめてもの、生きてもっとあいつとバカやりたかったなぁ)」



当然同シェルターからは誰一人として生存者は見つからなかった。


終劇


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