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[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2006/01/03 00:23
プロローグ

―空港―
少年が一人佇んでいる。
少年の前方には少年の両親”だった者”の死体がある
少年の周りには人は人っ子一人いない,いや,空港には少年以外誰も居ないと言っても過言ではないだろう。
ある,一人の男を除いては・・・・・。

少年は泣いて居なかった,だが,少年のその瞳には生気という物がなかった。

「力が欲しいか?」
と,いつ現れたのか,男が訪ねる。
男は全身黒ずくめで,正直お付き合いになりたくないような格好をしていた。
「・・・・・・ち,か,ら・・・?」
少年は言葉をうまく発せ無い。
だが,それが当然である,自分の両親が眼の前で人に撃たれ,血を流して死んでいるのだから。
「力が欲しいのなら着いてこい」
男はその少年の状態を気にせずに,そう言い歩き出していった。
「・・・・・・・」
少年は動けない。
無力感からか,体から力が抜けている。
少年は格闘技を習っていた,ある少女を護るためなのであろう・・・・確かに少年は強かった,しかし,それは同世代間だけである。
少年はそれを解っていた,伊達に研究者の息子ではないのだろう,しかし,ここまで自分が無力だとは思ってい無かったのであろう。
少年は思う,自分が費やして来た時間は何だったのだろう?と。思考はどんどんまどろみにはまっていく・・・・
ふと,男の足が止まり
「守りたい者が居るのだろう?」
男の発したその言葉により少年の体から気怠さが抜け,脳にここ数年の思い出がよぎっていった。


「アキト,ホシノ・ルリちゃんだ仲良くするんだぞ」
「ホシノ・ルリです,よろしくお願いします」
「ぁっ。えっとテンカワ・アキトよろしくね」
「よろしくお願いします,テンカワさん」
「アキトで良いよ,歳もそんなに変わらないしね」
「・・・よろしくお願いします,アキトさん」
「よろしくね,ルリちゃん」

2人はこのあと,楽しい時間を過ごした。
ルリにしては自分のことを普通の人間として見てくれるアキトは好きになれた(人間として),アキトは周りに居ない様な性格のルリに,少しは戸惑いもしたが(アキトの周りにいる元気が有り余る幼なじみのせいである)すぐに慣れ仲が良くなっていった。
しかし・・・・・

「・・・・地球の会社?」
「・・はい,ここでは十分なデータが取れないとかで,送還されるらしいです・・・。」
「地球・・・・・・・」
「また・・・・会えますよね?」
「絶対に会いに行くよ。約束する!」

しかし,2人の思いとは裏腹にテンカワ夫婦は火星を離れることができず,当然ながらアキトはルリに会うことができなかった。

そして,現在に至る・・・・・・・・。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・



少年・・・アキトと男はまだそこに佇んでいた。
アキトの瞳は生気を取り戻し,決意をした目をしていた。
男はそれを確認すると再び歩き出した。
アキトは男の後ろに着いていった。
「名前は?」
と,忘れていたのだろうか?それとも知っているのだろうか?男が訪ねる。
「アキ,ト。テンカワ・アキト・・・・。」
ショックが抜け切れていないのだろう,あまり上手く言葉を発せないらしい。
「あなた・・は?」
「俺か・・・・?」
男は一瞬ハッとし,少し考え呟くように
「俺は・・・・イケシ・・・」
「イケ・・シ・・・?」
「そう,俺はイケシ・カイトだ」
まるで自分に言い聞かせるように自分の名前を発した。

そして,空港には誰一人いなくなった・・・・・。

ここからテンカワ・アキトの,イケシ・カイトの戦いが始まる・・・。

―研究所―
「おい?聞いたかよ,火星にいたテンカワ夫婦死んだらしいぜ?」
「マジカよ?そりゃまた何で?」
「どうも,テロに巻き込まれたらしいぞ,夫婦の死体は発見されたらしいけど,息子の死体は発見されなかったらしい」
「死体も残らないほどの爆発でもあったのか?」
「さぁ,でも空港は全壊だからあり得るんじゃないのか?」
その言葉を聞いた蒼銀の髪の少女は一瞬反応を見せ,そして,倒れた・・・・・・。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/27 12:43
―火星,あるシェルター―

「はい,これあげるよ」
と,人の良さそうな青年が7~8歳の少女にみかんをあげている。
青年の名をテンカワ・アキトと云う。
「わぁ!お兄ちゃん,ありがとう,」
「どうも,すいません」
「いえいえ,どうせ出前の途中でしたから」
と,アキトは笑う。
「あー!お兄ちゃんいけないんだぁ。ちゃんとお届けしないと駄目なんだよぁ?」
「んー,じゃあこのみかんは要らないのかな?」
アキトがニヤリと笑う。
「うっ」
「じゃあ,お兄ちゃん,ちゃんとお届けしないといけないから,みかん返してくれるかな~?」
「うぅぅぅ」
「どうしたのかなぁ?」
「一緒にアイが謝りに行ってあげる!」
と,云うと少女はみかんを食べていった。
少女はアイと云うらしい。
それを見て少女の母親済まなそうに微笑んでいた。

みかんを食べ終わったのだろうか,いきなりアイが
「お兄ちゃん!アイとデートしよう!」
「いぃっ!?」
アキトは当然ながら狼狽えている
「お兄ちゃん,駄目?」
と,少女,アイが追い打ちをかけてくる。
アキトは頼るように母親を見たが,母親は苦笑いをしているだけだった
「ごめんね,お兄ちゃんもう好きな人が居るんだ」
「えぇ,やっぱりそうなんだぁ」
とがっかりしたように云う。
そのがっかりようが少し心を痛めたのか
(?やっぱりってどういう意味だ?)
「じゃ,じゃあ,また今度会えたら買い物に付き合ってあげるよ」
アキトは疑問を持ちつつと云うと,アイは嬉しそうに
「うん!約束だよ!そのときにお兄ちゃんの好きな人つれてきてね!」
アイは嬉しそうにしていた。
その言葉少しアキトは表情を暗くしたが表情をすぐに戻した,一瞬の事のなのでアイは元よりアイの母親も気づかなかった。
そして,刻は加速していく・・・・・・。

三人が世間話をしていると・・・・・
ドオォォォォォン!!!
凄まじい音がシェルター内を駆けていった。
破壊された壁。
そこには無数の昆虫型のロボットが居た。

「今扉を手動で開けています!落ち着いてください!」
と,一人の軍人が人の波に飲み込まれながら発する。

(あの人の言う通り・・・・始まったか・・・)
「私がこの場を抑えます!その間に2人は逃げてください!」
と,云うが速いかアキトが懐から拳銃を取り出す。
バァン!バァン!バァン!バァン!
と拳銃の発砲音がシェルター内に木霊した。
アキトはバッタの手足の関節部に,合計4発打ち込み一機は戦闘不能にした。
「お兄ちゃんすごい!」
アイは嬉しそうに云う。
だが,戦況がそんなことで変わることはない。

他に無数のバッタが居るが,アキトは一機一機地道に戦闘不能にして行く。
軍人は何とか民間人を守ろうと頑張るが如何ともしがたい,相手は機械で間接部を狙うなど,この状況では難しい,アキトの腕が違いすぎるのである。
注意は引きつけられるが,戦闘不能に持って行くには到底叶いはしなかった。

と・・・・
「扉が開いたぞぉ!!」
誰かが発する・・・
誰もが(助かる!)そう思った,だが,扉の向こうには無数のバッタが居た・・・・・。
瞬間――爆発。

「アイちゃん!」
アキトは走り出す。
そこには無数の機械の残骸と人の,否,人であった手や足が散らばり,血だまりがあちらこちらにできていた。

アキトはアイを発見するとすぐに抱き起こす・・・・
少し意識が朦朧としているようだが何度も呼びかけ意識を喚び戻す。

「おにい・ちゃん・・・・・?」
アイが意識を取り戻す・・・しかし・・・
(これは!ナノマシンの紋様!これじゃあ!何も,何一つ変わらないじゃないか!!)
「ごめん,ごめんな・・・・・」
アキトは謝る,罪悪感からか,それとも無力感からか・・・。
それは本人にも解らなかった・・・。
「どうしてお兄ちゃんが謝るの・・・・?」
「それにお兄ちゃん泣いてる・・・?」
アキトの頬には知らず知らずの内に泪が伝っていた・・・。
「お兄ちゃん絶対お買い物行こうね!」
と,アイがアキトに気を遣ってか,それともこれから自分に起こることを,本能が予期したからなのか,明るく云う。
「!・・そうだね,絶対行こうね!」
「うん!」
とアイが頷く。
刹那,アイは光に包まれこの場から居なくなった・・・・。

その後黒衣の男がその場に現れ,アキトと共に死んでいった人を弔っていく・・・・。
アキトと黒衣の男は何回か言葉を交わしアキトは,先程のアイの様に光に包まれて消えた。
そして,黒衣の男はいつの間にか居なくなりシェルターには機械の残骸と血だまりだけが残っていた・・・



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/27 12:20
―佐世保―
光の粒子が拡散しその中から,青年が現れた。
青年の名はテンカワ・アキトと云う。

アキトは街を歩いていた,何か捜し物をしているだろう少しキョロキョロしていた。
と,アキトの眼にあるチラシが止まった。
アキトはチラシの内容を確認すると一人頷き,何処かへ駆けていった。
チラシには「機動兵器のテストパイロット募集中!!・経歴問わず・IFS必需・その他etc・・・応募の際はネルガルまで!」と,書いてあった。

―数ヶ月後 ネルガル機動兵器試験場―
アキトは現在ネルガルの機動兵器,エステバリス(通称エステ)のテストパイロットに成っていた。
ネルガルはアキトが火星出身者と云うこともあり(火星ではIFSが多用されている),すぐにテストパイロットにした。

当初,アキトは云われたとおりに機動実験や報告などをやっていただけなのだが,そのテストパイロットの中でも一番腕が良かったせいなのだろうか,改良点などを一度聞かれたことがあった。
そこでアキトが提案したのが,PDFSystemである(名付けは技術者だが)
内容は,手足の部位にディストーションフィールド(以下DF)を発生させられるようにする,と云う物である。

このシステムはすぐに実行に移され,良い結果を出すと,思われていた。

それはそうであろう,エステバリスの最大の武器は,現在エステバリスの一番,敵機動兵器に有効な武器だと思われているラピッドライフルでもなく,脚部に収納されているイミディエットナイフでもない。
DFを前方に纏い高速攻撃をするDFアタックである。
だが,これには欠点が有った,タイミングを合わせ,前方にしかDFを張れないので,アタック中に背後から攻撃されては無防備なのである。
そして,消費エネルギーも大きい。
そこら辺のタイミングを解っていて,IFSを付けている熟年パイロットは居ない。
なので,現在一番使われているのは,ラピッドライフルである。
話を戻そう・・・。

だが,このPDFSystemにも欠点が有った,手足にDFを発生させる事には成功したが,維持し続けられないのである。エステバリスはIFS,つまりパイロットのイメージにより動く機動兵器である,当然発生させるのはプログラムであるがDFを維持するのは,パイロットである(防御の際にでるDFとはまた違う)。
確かに維持し続けられる者は居た,だがそのまま戦闘行為にうつれるパイロットは少なかった,いや,通常の戦果を上げられるものは皆無であると云っても,過言ではなかった。
フィールド維持と戦闘行為をイメージし続けられなかったのである・・・発案者アキトを除いては。

アキトは,支部長室に喚ばれた(アキトの居る会社は本社ではなく,支部である)。
アキトは何故喚ばれたのかを向かいながら考えていた,職務態度は悪くなかった寧ろ良い方であった。
(まさかボーナスか?)
と考えたがすぐさま考えを辞めた,正社員でもないテストパイロットにボーナスが出るわけがない,と。
他にも2,3考えたが
(やはりアレだろうなぁ・・・・ハァ)
と,考えため息をついたとき,アキトは支部長室に着いていた。
コンコンッと,ノックし
「テンカワ・アキトです」
と,云う
返事が返ってきたので「失礼します」
ガチャッっと扉を開け中に入っていった。
そこには,有る意味予想内,ある意味では予想外な人物がアキトを待っていた・・・・・。

     ―後書き―
ボーナス云々は自分の考えです,バイトみたいな物かなと考えています・・・・。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2006/01/03 00:31
―ネルガル 支部長室―
そこには予想内そして予想外の人物が青年を待っていた。
廊下,支部長室の間で固まっている青年,名をテンカワ・アキトと云う。

そこには,大関スケコマシ,アカツキ・ナガレ。ネルガルシークレットサービス長,プロスペクター。そして,会長秘書エリナ・キンジョウ・ウォンが居た。
※アカツキだけ,紹介の仕方が違うのは仕様である。

数秒経った頃だろうか?ロン毛の男アカツキ・ナガレが
「どうかしたのかい?」
と,聞いてきた。
「い,いえ,支部長室に喚ばれたので,てっきり支部長が私に用が有ると思って来たら,支部長が居ないもですから・・・」
アキトは,内心少し動揺しながら扉を閉め室内に入っていった。

(さて,多少怪しまれているだろうし,注意しないとな・・・。)
と,考えつつ
「ところであなた方は?」
聞かないとまずいので,知っているが一応聞いておく。
すると
「あぁ,申し遅れました私プロスペクターと申します。まぁ所謂,人選ですかな?をしています」
「プロスペクター?」
「はい」
「失礼ですが,本名?じゃないですよね?」
「えぇ,まぁ。ニックネームだと考えて頂ければ」
そういうとプロスは営業スマイルを浮かべていた。

「はぁ・・知っているとは思いますが,私はテンカワ・アキトです。テストパイロットをしています」
「後ろのお二人は?」
「僕はアカツキ・ナガレ「私はエリナ・キンジョウ・ウォン,会長秘書をしているわ」さ・・・」
と,エリナが間髪入れずに自己紹介してきた。
「はぁ,会長秘書さんですか・・・・・,すると,そこにいる人,アカツキ・ナガレさんでしたか?はネルガルの会長さんですか?」
「っ」「ほぅ」「・・・っ」
アキトの問いに三人は三者三様の驚きを浮かべていた。
エリナはそのまま,驚いていた。アカツキは大した物だ,という風な驚きである,プロスもアカツキと同じように見えるが,少し違うようだった。

「な,何で解るのかしら?」
と,動揺を隠しながら聞いてくる。
まぁ,声からして,バレバレで有るが・・・・
「えぇっと,会長秘書さんが一緒にいると云う事はそう云うことではないのかなぁ,と思っただけですが・・」
(す,少しみすったかもしれない・・・しかし,そこで肯定するのはどうかと思うぞ)
と,アキトもアキトで少し焦っていた。

「ハハハ,テンカワ君ご名答僕はネルガル会長さ,よろしく頼むよ。ククク・・・」
どうもエリナの反応がツボにはまったらしく,アカツキは笑いを噛みしめながら自己紹介をしてくる。
「はぁ,こちらこそよろしくお願いします・・・」

「それで,私にどのような用があるのでしょうか?」
アカツキの笑いが収まったのを見計らって,アキトは会話を進めようと促す。
「うんまぁ,それなんだけどね,君にはあるプロジェクトに参加して貰いたいんだよ」
「プロジェクト?」
「そう,噂で聞いたことが有るだろう?」
「えぇと確か火星に残してきたネルガルの貴重資料や研究員などを回収する,と,云う物だった気がします・・・」
「あとは,その戦艦が変形するとか,しないとか・・・」
「いえいえ,変形はしませんよ。前者は正解ですがね」
と,,プロスがアカツキの後を引き継ぐ。
「それで,テストパイロットの私に何をしろと?」
「あなたには,機動兵器部隊の隊長をやって貰うわ!」
「はぁ,隊長ですか・・・・ん?・・隊長!?」
アキトもまさか隊長を任されるとは思わなかったので,盛大に驚く。

「まぁ,当然でしょう,あなたは状況判断,パイロットとしての腕前,どれをとっても一流ですから」
「はぁですが・・・・」
(まぁ,一応渋っておくか・・即決即断なんて疑われるし・・・)
「お給料これだけ出しますがどうでしょう?」
と,プロスが向ける電卓には信じられない額が有った。
「いぃ!?マジですか!?」
「はい,それにこんな物も着いてきます」
プロスが,やはり営業スマイルを浮かべながら,書類を見せた。

暫くアキトは書類を見ていたが。
「専用機・・・ですか?」
「えぇ,あなたが提案したPDFSystem,残念ながら使いこなせる者は少数ですが,なたはその中でも,一番使いこなしています」
「だから,専用機ですか?」
「えぇ,やはり,エースには専用機を,と云うのが定説でしょう?」
と,営業スマイルを浮かべている。その笑みの裏に有るのかは読み取れない。恐らくエステバリスの実用性,序でにPDFSystemがどのような物か,実戦で確かめてみたいのだろう。

「解りました,引き受けます・・・」
「おぉ,そうですか,ではこれにサインを」
このあと,重要事項,伝達事項などを数個アキトに伝えて三人は退室していった。

そこには,数年前・・・そう,空港で黒衣の男,イケシ・カイトに着いていった刻の,決意の表情を浮かべたアキトだけが,支部長室に残っていた・・・・。

そして・・・・

―ネルガルの一室―
「スキャパレリプロジェクト?」
「そう,我が社でも軍属経験のある君を推薦する声が多くてね~」
「それで私に何をしろと?」

―ある会社の会長室―
「やっぱりやめちゃうの?」
「えぇ」
「そりゃまたどうして?」
「やっぱり充実感かな~♪」

―アニメ制作現場―
「はいOK」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
「メグちゃーん」
「はい?」
「ネルガルの人だって」

―違法改造店―
「何ぃ!?俺をメカニックに?!」
「あぁ,違法改造屋だが良い腕をしている」
「行く!行く!!あいつから離れられるんならどこへでも!」
「では,書類にサインを」

―遺伝子研究所―
そこには,かつてテンカワ・アキトと共に居た少女が居た。
だが,その眼はテンカワ・アキトと共に居たときの様な眼ではなく,テンカワ・アキトと会う前の無気力な否,絶望している様な眼だった。

―ミスマル邸―
「ユゥリカァー!」
「おじさんも怒ってるよ?」
「だってこの服ださださで着られないんだもん」
「コラァ!ユリカ!学生気分もいい加減にせ「キャアアアア!」
一波乱有った後・・・

「ユリカ,立派にお勤め果たせよ」


青年と少女はまた再会する,ナデシコで・・・・
―火星何処か―
「始まったな」
「大丈夫かな?」
「さぁな,この先どうなるかはあいつ次第だ」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・

「ダッシュ?」
「何か?マスター?」
「例の機体アキトが来るまで仕上げておいてくれ」
「イエス,マスター」



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/26 14:54
―佐世保ドック―
「これが我が社,ネルガルの新造戦艦ナデシコです!」
「・・・・・変な形をしてますね・・・・」
「お厳しいですなぁ~」
プロスの隣で間抜けな返事をしている青年
名をテンカワ・アキトと,云う。

「さて艦内を案内します,着いてきてください」
「プロスさんがですか?」
「えぇ,出航するまでやることがないので私が案内役をさせて頂きます」
「はぁ,ではよろしくお願いします」
「では,参りましょうか」

―ナデシコ内 ハンガー―
アキトは物珍しそうに,ハンガー内を見渡している。
さすがに戦艦だけあってハンガーは全体的に大きくネルガルの試験場とは訳が違う・・・・。
そこには2機のエステバリスが,有った・・・・が・・・。
アキトは何かに気づいたようで,プロスに尋ねる。(まだ,ヤマダ・ジロウは搭乗していない)

「プロスさん,ちょっと良いですか?」
「はい?何でしょう?」
「俺のエステって何処っすか?」
「えぇっと確か・・・・」

と,プロスがハンガー全体を見渡すがやはり・・・・無い。

「おかしいですなぁ,確かに届けるようにと云っておいたはずなのですが・・・・」

プロスがそう云いつつ考えていると
pipi,pipi
と,コミュニケの音が鳴る。
プロスがアキトから少し離れ,それに応え何かを話している。

話が終わったのだろう,プロスがアキトの所に戻ってきた,すると
「申し訳ありません,テンカワさん,一度支部に戻って頂けますかな?」
「はぁ,それは構いませんがどうかしたんですか?」
「えぇ,どうやら,IFSがおかしいらしく,テンカワさんに来ていただきたい,と云うことらしいのですよ」
「解りました」
「車をまわしますので,それに乗ってください」

それに返事をし,アキトはナデシコから出て行った。
ドックのすぐ近くにそれほど経っていないにも関わらず,ネルガルの車があった,プロスが回したのだろう。
(相変わらず良い仕事してるよ,プロスさん)
と,思いつつ車に乗った。

―ナデシコ ブリッジ―
「ちょっと!私が要らないってどういう事よ!?」
と,キノコ頭の軍人がオカマ口調でプロスに怒鳴っていた。
中間管理職は大変である。
「ですから,我々がお呼びしたのはフクベ提督だけで,あなたはお喚びしていないのですよ・・」
プロスは云うがキノコ頭の軍人,ムネタケ・サダアキはその言葉が頭に来たのか,顔を真っ赤にして居る。
ちなみに数十分前からこの二人は同じような会話をしている。
会話中に出てきたフクベ・ジン提督は二人の後ろでお茶を飲んでいた・・・。

「あの人達ですよね?火星にチューリップ落としたのって」
「まぁ,煩くなるのは解るけど,もう少し音量小さくして欲しいものよねぇ~」
「バカバッカ」
上の二人の会話を聞いていた三人は三者三様のコメントをしていた。
上から,メグミ・レイナード。ハルカ・ミナト。ホシノ・ルリである。

「彼らは各分野のエキスパートです,艦長は連合の大学在学中に無敗を誇っている,逸材です」
いつの間にか,ゴートもその会話に加わっていた,フクベ・ジンは我関せずを貫いている・・・。
「それでその逸材は何処にいるのかしら?」
「そ,それは・・・」

「えぇっとここかな?」
プシュッ
ゴートが言葉に詰まると見計らった様なタイミングで,この艦の艦長ミスマル・ユリカと,息が途切れ途切れのナデシコの副艦長,アオイ・ジュンが入ってきた。
すると・・・
「みなさぁ,私がナデシコの艦長ミスマル・ユリカです!!V!!」
「「「「「ブイィ!?」」」」
「またばかぁ?」
この会話を聞いているプロスは胃が痛くなる思いだった・・・・。

―ネルガル支部 試験場―
「やっと終わったぁ~」
アキトが疲れたように嘆く。
まぁ実際に疲れているのだろう,途中車が渋滞に巻き込まれ全力疾走でここまで来て,休憩をせずに,IFSの調整をしていたのだから・・・。

アキトがそろそろ,ナデシコに向かうか,と思ったところで技術者が駆け込んできた。
「大変ですテンカワさん!ナデシコが木星蜥蜴に襲撃されているそうです!!」
(来たか!)
「急いで予備バッテリーをこいつに,付けられるだけ付けてください!!
「解りました!」

数分後,バッテリーの取り付けが終わり・・
「テンカワ・アキト,プロトエステ!でるぞ!!」
黒い機体は試験場から飛び出していった・・・。

―少し戻ってナデシコ―
ドカーン!!
と轟音があたりに鳴り響く。
「これは,敵襲?!」

―ハンガー―
『現在敵機動兵器と地球軍が戦闘中!!』
轟音とともに聞こえてきた,その放送。
その放送は整備士と暑苦しそうな青年が聞いていた・・・。

―所戻ってブリッジ―
そこでは作戦会議をしていた。
「敵の目標はナデシコですか・・・」
「だったらすぐさま反撃よ!」
「どうやって?」
「この艦の主砲を地上に向けて敵機動兵器ごと焼き払うのよ!」
「地上の軍人さん達はどうするの?」
「もう,とっくに死んでるわよ・・・・」
「それって非人道的って云いません?」
話が平行線を辿っていると・・・フクベ・ジン提督が口を開いた。

「艦長の何か意見がないのかね?」
「はい,海底ゲート抜けて海上に浮上,敵の背後からグラビティブラストで一掃します!」
「でも,敵も一点に集まってないよ?ユリカ」
「うん,だからね囮を・・・」
と,ユリカが言葉を発した時・・・

「そこで俺の出番さぁ!!」
暑苦しい男,ヤマダ・ジロウが現れた。

「俺様のゲキガンガー(※エステバリスの事です)が地上に出て囮をし,研究所(※ナデシコの事です)の特殊攻撃(※グラビティブラストです)で敵を殲滅する!クゥゥ!燃えるシュチュエーションだぁ!!

ヤマダの通信により少し放心していたブリッジだが,意外にもフクベ・ジンがいち早く意識を取り戻した。
「パイロットが何を云っているのか解らず,少し不安だが,やってみた前艦長」
「あ,はい!」
ユリカも意識を取り戻したらしい。

「では,えぇと・・・」
「俺の名前はダイゴウジ・ガイ!」
「ヤマダ・ジロウに成ってますけど?」
「ちがぁう!ヤマダ・ジロウとは偽りの名,ダイゴウジ・ガイは魂の名前さぁ!!」
「では,ヤマ「ダイゴウジ・ガイ!」ダさん,至急エステバリスに搭乗,出撃してください!」

「エレベーター移動中・・・・」
「「「「「へ?」」」」」
「私たちと会話をしながら搭乗していたようです」
「ハッハッハァッ!待ってろよ!!キョアック星人!!(※恐らく木星蜥蜴です)」
(人選を間違えましたかなぁ)と思いつつ胃が痛くなるプロスで有った・・・。

「ダメージ率60%を突破!」
「フィールド出力30%を切りました!」
(まずいですなぁ・・・テンカワさん速く来てください・・・)

しかし,やはりと云うべきか,何というか,ダイゴウジ・ガイことヤマダ・ジロウはすぐに窮地に追い込まれていった・・・・。
プロスがスカウトして来たのである,腕は悪くはないのだろう。
だが,その直線的な攻撃とラピッドライフルを使わない,多勢に無勢,色々あり,ヤマダ・ジロウ人生最大級のピンチに陥っていた・・・,まぁ,最初の二つは自分のせいなのだが。
そのとき・・・・プロスの思いが通じたのだろうか?

「レーダーに感・・・」
「それってやばくない?」
と,ルリの声にミナトが応える。
確かに,この状況で敵の増援だったならば,ミナトの言葉通りである。だが・・「いえ,これは・・・」
「ネルガル実験部隊所属のエステバリスです」

黒い機体がナデシコのモニターに姿を現した。

―エステバリス内―
「一応,間に合った・・と言えるのかな?これは・・」
アキトが眼にしたのは,バッタとジョロに袋だたきにされている,藍色のエステバリスだった。

「ナデシコ?聞こえているな?こちらネルガル出向社員テンカワ・アキトだ!これより援護する!」
その言葉に,ブリッジで二人の人物が反応した・・・・。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/27 23:39
―佐世保ドック―
藍色のエステバリスの周りに居た,バッタを掃討した漆黒のエステバリス。
漆黒のエステバリスに搭乗している青年,青年の名をテンカワ・アキトと云う。

「そこのエステのパイロット大丈夫か?」
「お,おう」

アキトは藍色のエステバリスのパイロットヤマダ・ジロウに問い掛ける。
ヤマダ・ジロウのエステバリスは満身創痍も良いところだったが,どうやらパイロットにはダメージは行っていないようである。

「これより俺は戦闘に入る,あんたは安全な場所に隠れていろ!」
「お前,この数を一人でやるのか!?無茶だぞ!」

ヤマダ・ジロウが心配するのも無理もない,バッタ,ジョロの数は先程より増えて,合わせて500,連合軍でエースパイロットと喚ばれる者でも絶望的な数である。
だが・・

「心配するな,速く行ってくれ。この程度の数何とかなる!」
「な!?正気か!?」
「あぁ,それにあんたが居ても足手まといになるだけだ,だから速くいけ!」
「っ!解った!絶対に死ぬなよ!!」
自分でも解っていたのだろう,ヤマダ・ジロウは意外にもすぐに納得した。
「あぁ・・・」
(そうさ,俺はこんな所で死ぬわけにはいけないんだ・・・)
「ナデシコ!これより戦闘に入る,作戦内容を教えてくれ!」
と,再度アキトはナデシコに通信を入れた。

―時は少し戻りナデシコブリッジ―
(テンカワ・アキト・・・?)
「テンカワ・アキト・・・・?」

アキトの通信に反応した人物,上からルリ,ユリカで有る。
ルリは死んだと報告された(厳密には聴いた),自分の事を家族同然に扱ってくれた,笑顔が似合う少年の事を思い出していた。
ルリの後ろでは,ユリカが「テンカワ・・?」と「テンカワ・アキト・・?」と同じような言葉を呟くように繰り返し声に出していた。

「・・・・ミスター,彼が?」
と,背広の顔が厳つい男,ゴート・ホーリが驚愕の表情を浮かべプロスに問い掛けた。プロスは
「えぇ,恐らく地球軍のエースと云われているパイロットよりも強く,PDFSystemの発案者である,テンカワ・アキトさんです」
と,何故か誇らしげに問いに応えた。

ちなみに,ゴートが驚愕した内容とはヤマダが搭乗して居るエステバリスを囲んでいた,バッタ,ジョロ,数機を遠距離からラピッドライフルで狙撃,撃破したからである。

当然,ブリッジの面々は
「ほう・・・」
など
「凄いわねぇ~」
など驚嘆していた。

そこに,
「ナデシコ!これより戦闘に入る,作戦内容を教えてくれ!」
アキトの通信が入ってきた・・・・。

―時は元に戻りエステバリス内―
通信を開いたそこには昔,見慣れた・・・そしてある約束をした蒼銀の髪の少女が居た。
アキトは少女がナデシコに乗るのを知っていた。
だが,やはりずっと会いたい,護りたいと思っていた少女との再会はアキトは固まってしまった。
少女は眼の前の事が信じられないのだろう,やはり固まっている。

「アキトさんなんですか・・?」
と,眼を潤ませながらルリが問い掛ける
「うん,やっと会えたね,ルリちゃん・・・」
アキトはルリに優しく応える。しかし,否,やはりと云うべきか・・
ルリがアキトに話しかけ様としたが・・・

「アキトさ「アァアアアアアアアアア!!アキトだ,アキトだ!!」ん」
拡張マイクを使った様な馬鹿でかい声がエステバリス内に響き渡った。

「「「ぁぅ!?」」」
ブリッジクルーもあまりの大声で驚いている。

(くぅ,何だ?この馬鹿でかい声は?!)
「あ,あんた,誰だ・・・?」
(まさか・・・・)
と,アキト。ルリとの感動の再会を邪魔されてご立腹である。
それと共に少し,いやなイメージが脳裏を過ぎる。
まぁ,戦闘中に感動の再会をやるのはどうかと思うのだが・・・。(お前が書いたんだろ!って云うつっこみは無しでお願いします。)
「えぇ!?ユリカの事忘れちゃったのぉ!?火星でお隣だったじゃない!」
アキトは本当は知っているのだが,10数年会っていないので,こう云う対応が普通だろう,と考えた。
「火星・・・隣・・・ユリカ・・・?」
と少し考えた振りをする。

「アキトって誰なの?ユリカ~」
隣に控えていた頼りなさそうな青年,アオイ・ジュンが尋ねる。
「うんとね!アキトはユリカの王子様なの!!」
と,20歳とは思えない応えを返してきた。

「「「「王子様ぁ!?」」」

ブリッジクルーさっきから驚いてばかりである。

「わかった!お前,ミスマル・ユリカか!」
「やっぱり思い出してくれた!アキトは私の王子様!」
「ちょっと待て!誰がそんなことを云った!?」
「云わなくても解ってる,アキトは私が大好き!」

アキトが来て戦闘に変化が訪れたが,ブリッジにも厭な変化が現れた。この雰囲気に胃が痛くなるプロスであった・・・。

アキトとユリカが同じような会話を繰り返していたが,さすがにアキトはまずく感じたので
「だぁぁ!もうその話は良い!速く作戦の内容を説明してくれ!」
何とか話を元に戻そうとする。
しかし,ユリカはごねる。
「えぇ~,良くないよぉ~」
「ユリカ,今は作戦を説明した方が良いと思うよ?」
「艦長戦闘が終わってからでも良かろう」
と,ジュンとフクベ・ジンの助言を受けてやっと落ち着く。

「では,説明しますね,アキトさん」
タイミングよく,ルリがアキトに話しかけてくる。
心なしかルリの眼には怒りが隠っている。
本人も気づいては居ないだろうが・・・。
「解った」
鈍感アキトも気づかない。

そして,オモイカネの協力を得,映像とルリの説明により,作戦内容を移すアキト。

(つまり,囮をしろ,と云うことか,あの人に聴いた物と変わりは無いな・・・)

「これより戦闘行為に入る!」
とアキトが云うと
「頑張ってねぇ」
とミナト
「頑張ってくださいね!」
とメグミ
「ちゃんと戻ってきてくださいね」
と,ルリ。

(さてどうした物かな・・・・)
と,考えるアキト,先程の会話中にもバッタやジョロを落としていったが,まだ400強は居る・・・・。
(アレを使ってみるかな・・・慣れなければ成らないし・・・)
アキトはそう思い至ると集中し始めた・・・。

―ブリッジ―
「テンカワ機右前腕部に高密度のDFが発生」
ルリが報告する。
「ミスターアレがそうですか?」
「えぇ,アレがPDFSystem・・・」
ナデシコのモニターには円形のDFを右前腕部に纏った漆黒の機動兵器が映っていた・・・。

―エステバリス内―
「さぁ,行くぞ!」
と,アキトが言葉を発する。
すると右前腕部が外れバッタ。ジョロに向かっていく。
ワイヤードフィストと喚ばれる攻撃である。
通常は前腕部を飛ばすだけであるが,アキト機のワイヤードフィストは他のエステバリスのそれと違っていた。
右前腕部はバッタ,ジョロには当たらず,間をすり抜けていく。
しかし,右前腕部が通り過ぎて行った,ある一定の空間に居るバッタ,ジョロは次々と爆発していく!
(予想以上の威力だな・・・)

これがPDFSystemの威力(効果?)である。
両手足に設置してあるDF発生補助装置によって,各任意の部位にDFを発生させ,パイロットの腕によってはナデシコのDFよりも強固なDFを纏うことができるのである。(やはりできるのは一部であるが)
もちろん,ナデシコ級のDFアタックにバッタやジョロのDFが耐えられるはずもなく,突破され,破壊されていく。
しかも,発生するのは一部だけなので,前方全体にDFを張る一般のDFアタックとは威力もエネルギー消費も違う。

話を戻そう。
先程の攻撃でアキト機が危険と認識したのだろうか,バッタ,ジョロの攻撃が一斉にアキト機が居るであろう方向に向く。
しかし,アキト機は既にそこには居ない。
先程の爆発の内にバッタ,ジョロの後ろに回り込んでいたのである。
爆発したのは約40機,熱感レーダーが使えなくなるには十分な熱量である。
この後,アキトはラピッドライフルを使い,次々と撃墜していく。

三回目のワイヤードフィストを打ち込んだ頃には,バッタ,ジョロの数は戦闘開始時の約半分に成っていた。
そのとき・・・
ナデシコが海上より浮上した!

「アキトさんナデシコに向かってジャンプしてください!」
「了解!」
ルリの呼びかけにアキトが応える。
「目標,射程に全部入ってます」
「グラビティブラスト,テェェェ!!」
ユリカの号令でナデシコからグラビティブラストが発射される。
バッタやジョロはその威力に耐えきれずに爆発していく。

「地球軍は全滅,重軽傷者多数でていますが,奇跡的に死傷者なしです」
「やったぁ!すごいすご~い!」
「クゥ!燃えるゼェ!!」
「嘘よ・・・こんなの・・・」
「認めざるを得まい!よくやった艦長」
「まさに逸材!!」

ここから,本格的なアキト達の戦いが始まる。
テンカワ・アキトの瞳に映るのは明るい未来か,それとも・・・・

―後書き―
何か,あまりルリが目立ちませんでした・・・・
バッタのレーダー云々も自分の考えです!他の作家さん達のを見ると,どうもバッタとかのAIの機能は低いそうなのでそうじゃないのかなぁ,と勝手に思いこみました。
えぇと,こんな長文駄文ですが,「しょうがないから感想をくれてやるぜぇ!」
と云う方,感想ください(泣

因みにルリは14歳です



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/29 00:51
―ナデシコ ハンガー―
傷だらけの藍色のエステバリスの横に佇む漆黒のエステバリス。
ハッチを開け,降下ワイヤーを使わず見事に飛び降りる青年。
青年の名をテンカワ・アキトと云う・

「いやぁ,すげえな兄ちゃん!」
「いえ,給料分の仕事をしただけですよ」
と,作業服の男,ウリバタケ・セイヤに云われ,照れ笑いしながら応えるアキト。

「謙遜することねえよ,兄ちゃんの御陰で俺達が生きてるようなモンだからな!しかも,見たところ被弾なんてほとんどねえじゃねえか!整備班としては大助かりだ」
ヤマダのエステバリスはほぼ大破,整備班は徹夜であろう。アキトのエステバリスは多少の損傷はあるが,そのままでも問題がない傷である。
アキト機まで,損傷していたら整備班は何日徹夜したのであうう・・・。
まぁ,損傷と云っても爆発の際バッタやジョロの部品が少し掠った,と云う程度であるが。

「どうも,えぇっと・・」
「ウリバタケ・セイヤだ,整備班班長をしてる。セイヤでも,ウリバタケでもどっちでも良いぜ」
「俺はテンカワ・アキト,見た通りパイロットやってます。俺もテンカワでもアキトでもどっちでも良いですよ。それより,藍色のエステのパイロットどうなりましたか?」
「あぁ,ヤマダの事か?エステの損傷は酷いがパイロットは右足が折れただけだ。不幸中の幸いって奴か?それに,本人は至って元気で右足補強したら,すぐにブリッジに歩いていったぞ」
(そう云えば,作戦終了の時に彼奴の声が聞こえてた様な・・・・)
「そうですか,安心しましたよ」

「それよりよぉ」
「はい?」
ウリバタケが話しを続けようとしたとき
「コホンッ,もう良いですかな?」
プロスがいつの間にか傍にいた。
「あぁ,プロスの旦那か・・・・」
(チッ,良いところに来やがって・・・」
なにやら良からぬ事を考えて居たようである。主にエステバリスの改造や,「こんな事も有ろうかとぉ!」な装備についてであろう。

「ウリバタケさん,声に出てますよ・・・」
「ぇ!?」
「ウリバタケさん,ヤマダさんのエステバリス速く修理して欲しいのですが・・・?時は金なり,と云いますし・・・・」
まぁ要は,速く仕事せいや!と云うことだろう。心なしか額に青筋が浮き出ている。ウリバタケの本音が癪に障ったのだろうか?
これには,さしものウリバタケもまずい物を感じる。
「や,野郎共ぉ!修理に掛かるぞぉ!」
「「「「「おぉ!!」」」」
ウリバタケは掛け声共に駆けていった・・・。

「それにしてもテンカワさんお見事でした」
「いえ,それほどでもないですよ」
「いえいえ,ご謙遜を。あなた程の腕,地球全土で何人居るか・・・」
「それよりも,何故プロスさんがここに?」
何となく話の雲行きが怪しくなって来たのを感じたので,さり気なく話を逸らすアキト。

「おぉ,そうでしたな」
「ブリッジで自己紹介をして貰おうと思いまして。テンカワさんはパイロットですし,顔を合わせることが何かと多いでしょうから今の内にしておいた方が良いでしょう」
「そうですね,解りました」
アキトの返事に,プロスは歩き出し,アキトはプロスに着いて歩き始める。

―ブリッジ―
「ねぇねぇ,ルリルリ♪」
「ルリルリ・・・・ですか?」
「わぁ,それって可愛いですね~」
戦闘が終わり暇なのだろう,ミナトがルリに話しかけメグミが混じってきた。
「あれ,駄目ぇ?」
少し眼が潤んでいる。いくらルリでもこれは対抗できない。
「いえ,別に構いませんが・・・・」
「そう?良かった。私のことはミナトで良いからね♪」
しかし・・・断られたら泣く気だったのだろうか?
「あ,私もメグミ良いよルリちゃん」
「はぁ,解りました」

「それより,何でしょうか?」
「そうだった!本題を忘れる所だったわ」
呼び名を承諾されたのが余程嬉しかったのであろう,本気で忘れて居たようである。
「本題・・・ですか?」
「本題って何ですか?ミナトさん」
「そう!本題よ!ルリルリ,あのパイロットの人とどう云う関係なの?」
「あ,それ私も聞きたいなぁ,何か感動の再会!って感じだったし」
「そうそう,艦長は王子様,とか云ってたしね」
やはり女性は色恋沙汰が好きなようである。

「私とアキトさん関係,ですか・・・」
「そうそう」
少し考えた後
「家族,でしょうか・・・」
とアキト位にしか,解らない程度に嬉しそうに応えた。
「家族?」
「はい,一度アキトさんの家に引き取って貰った事が有って,一緒に暮らしていたんです」
との応えにミナトとメグミが(気軽に聞いちゃいけない事だったかな?)と思考が暗くなった瞬間。
「気にしないでください,私もあまり気にしてませんし。それにアキトさん達にはよくして貰いましたし」
と,ルリが途中から小さい笑顔でフォローを入れた,顔に出ていたのであろう。
ルリが言葉を発し終わった後

―プシュッ

空気が抜ける音がし,扉が開きプロスとアキトが入ってきた。

「皆さん,先程の黒いエステバリスのパイロット,テンカワ・アキトさんです,では,テンカワさんどうぞ」
「えぇと,テンカワ・アキトです,知っての通りパイロットをしています」
「それだけぇ?」
ミナトが不満そうに返す。
「他に何を云えと?」
苦笑いでアキトが返す。自分を話すことは苦手なのだろう。
「趣味とか,得意な物とか♪」
「はぁ,趣味は・・・特にないです。強いて言えば身体を動かす事ですかね,得意な物は料理です」
その後,やはりミナトにユリカとの関係を根掘り葉掘り聞かれた。因みに,アキトに唯の幼馴染み発言をされユリカは真っ白になり,ジュンはほっとしていた。

「まぁ,テンカワさんの事はこの位にして,皆さん自己紹介してください」
何となく会話に区切りがついた所でプロスが声を掛ける。

やはりこう云う場面の第一声は,奴である。
「俺の名前はダイゴウジ・ガイ!今回は助けられたが次は俺の腕前も見せてやる!期待しときな!」
(ヤマダ・ジロウって名前そんなに厭なんだろうか・・?)
「ゴート・ホーリーだ戦闘アドバイザーをしている」
(・・・何でフクベ提督とか居るのに戦闘アドバイザー何だろ?)
「フクベ・ジンじゃ,お飾りの提督と覚えて貰えば十分じゃ」
(フクベ・ジン提督,か・・・・)
「私はムネタケ・サダアキよ,よく覚えて置きなさい!」
(・・・・・とりあえず,スルーしよ)
「僕はアオイ・ジュン,呼ぶときジュンで結構だよ。この艦の副艦長をさせて貰っている。因みに僕の隣で白くなってるのが,この艦の艦長ミスマル・ユリカだよ」
(とりあえずユリカが絡まなければ優秀らしいからな,頼りにさせて貰おう,主にユリカのお守りに・・・。しかし,やっぱり艦長なのか・・・まぁ,戦術眼は凄いらしいから大丈夫・・・だよな?)

「やっと順番ね。私はハルカ・ミナト,ミナトで構わないわ,操舵手をしてます。因みに前の職業は社長秘書よん♪」
(ミナトさん・・・か,ルリちゃんの良い理解者に成って貰いたいな)
「私,メグミ・レイナードって言います,メグミって呼んでくださいね。えっと,艦内放送を任されてます,前は声優やってました」
(メグミちゃん・・・・か,一時期恋仲に成ったらしいけど,あの料理はなぁ・・・)

そして・・・
「・・・・・・」
「ルリちゃん・・・」
俯いているルリに声を掛けるアキト,すると・・・。

―ダッ

アキトに華奢な身体が飛び込んできた。
曲がりなりにも鍛えているアキト,この程度では蹌踉けはしない。

尚,周りでは
「ほぅ・・・」
など,
「むぅ・・・契約違反ではないのか?」
とか
「ルリルリって大胆♪」
などなど,多種多様な反応を戴いている。ジュンに至ってはものすごく暖かい&心底安心した視線を向けている。
普段ならこの様な行動を取らない二人は,二人だけの世界に入っているので気づきはしない。
普段注意するプロスに至っても,二人の世界には入れない。

「アキトさんの馬鹿・・・ずっと心細くて・・・心配で・・・」
眼に泪を溜めて,今にも泣きそうなルリ。
「ごめんね,ルリちゃん・・・連絡を取ろうと何度も思ったんだけどね,ルリちゃんの居場所は解らないし,親父達は死んじゃったし,忙しくて連絡取れなかったんだ」
優しく語りかけるアキト。

「でも,良かったです約束,護ってくれましたね」
「言ったろ?絶対に行くってさ。まぁかなり遅く成っちゃったけどね」
と,はにかむアキト
「許しあげます,また会えましたから・・・・。お帰りなさいアキトさん・・・」
「ただいま,ルリちゃん」
微笑み合う,二人。ものすごく良い雰囲気である。
だが,そうは問屋が卸さない!

「アアァァァァァァ!!アキト!何してるの!?」
そう,ミスマル・ユリカ嬢である。
「・・・何って別に何もして,ない・・ぞ・・・・?」
「・・・・・・」
自分の今の状況に気づき,少し押され気味なアキト,何故か疑問系。そして,感動の再会をまたもや邪魔されてユリカを睨んでいるルリ,ルリを睨むユリカ。
だが・・・・

「おぉ,艦長,お目覚めに成りましたか。では,行きましょうか?」
「ぇ,行くって何処へですか?」
と,いきなりなプロスの言葉を少し理解できないユリカ。
「決まっているでしょう?遅刻の原因の追及,そして,艦長としての心構えを艦長に教えるのですよ。あぁ,副長も同罪ですので着いてきてください」
「アハハハハハ・・・」
乾いた笑いで誤魔化そうとするユリカ。
「さて艦長,副長行きますよ」
「エェン,ジュン君助けてぇ~」
「無理だよ,ユリカ。僕たちに非が有るんだから大人しく着いていこうよ」
ユリカとは対照的に何故か嬉しそうなジュン。
「ふえぇぇぇぇぇぇん。あきとぉぉ~」

ふと,プロスが思い出したように
「ルリさん」
ルリに呼びかける。
「はい?」
「テンカワさんを各部署の案内,頼めますかな?私は見ての通りお二人を連れて行かねば成りませんので」
「解りました」
「では,よろしくお願いします。ほら,行きますよ艦長」

「行きましょう,アキトさん」
プロス達が出て行ってすぐ,ルリがアキトの手を取り引っ張っていく。
「あ,あぁ」
アキトは手の感触が懐かしくて暖かくて,生返事しかできなかった。

機動戦艦ナデシコの慌ただしい出航がこうして終わった・・・・。
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


各部署の案内が終わった後二人は,アキトの部屋で別れてからの思い出話を夜中までしていたらしく,翌日は寝不足であったと云う・・・・。

―後書き―
どうでしょうか?
何となく,アキトとルリの再会シーンが短かった気もしますが,自分の腕じゃこんなモンなんですよ!(泣
では,ここおかしいんじゃないか?とか意見や感想有ったら是非ともください。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2005/12/30 23:55
―ナデシコ バーチャルルーム―

映像内で藍色のエステバリスが漆黒のエステバリスに撃墜される。
【作戦終了!】【Winner!】の文字が出る。
漆黒の機体を操る青年,青年の名をテンカワ・アキトと云う。

「チェ,やっぱり強えぇなぁアキトは!」
悔しそうにヤマダは云うがアキトは
「そうか?俺も,まだまだだと思うんだけどな」
真面目な顔でそう答える。
「何だそりゃ?嫌みか?」
「いや,俺の知り合いにさ,居るんだよ滅茶苦茶強い人がさ。
俺の攻撃なんて全然当たらないんだぜ?」
と,羨ましそうな,それで居て悲しそうな複雑な顔をするアキト。
まぁ,全然とは云わないが,火星に居た頃のアキトの攻撃は例の黒衣の男には殆ど当たらない。
多少は腕を上げてるアキトだが,生憎地球に来てから会っていないので実感が沸かない。

「化け物かそいつは・・・・。お前の兄弟か何かか?」
驚愕の表情を浮かべ鋭い言葉を放つヤマダ。
「はは,当たらずとも遠からずかなぁ」
ヤマダの意外な言葉に冷や汗を流すアキト・・・。


「そう言えば,重大発表があるってプロスの旦那が云ってたからブリッジ行こうぜ」
「ん?解った」
シュミレートシステムの電源を落とし,二人はブリッジに向かう。
因みにヤマダの骨折はもう治っている。
ヒビが入った程度だったので,ナノマシン治療ですぐに完治した。

―ブリッジ―
所変わってブリッジでは,フクベ・ジンはお茶を飲み,ゴートは報告書らしき物を書いている。
その下ではミナトとメグミが世間話をし,ルリはオモイカネと周辺の索敵をしている。
と,ルリはチューリップを見つけたが,活動が停止しているので危険は無いと思ったが一応オモイカネに監視をして貰い,また索敵を開始する。
ジュンとユリカ,プロスとムネタケは居ない。
ユリカは書類の整理,ジュンはその手伝いをしている。
ムネタケは,ある準備をしている(まぁ読者の皆様にはバレバレだろうが・・・)
プロスはユリカ,ジュンを呼びに行っている。

―プシュッ

ブリッジの扉が開きウィンドウに『テンカワ・アキト,ヤマダ・ジロウブリッジ,イン』と出る。
ルリとの会話(?)が一通り終わり暇だったのだろう。
ヤマダはウィンドウの表示が気に入らなかったらしく「俺はダイゴウジ・ガイだぁ!」と
ウィンドウに怒鳴っていた。

そんなヤマダの奇行をスルーし
「ルリちゃん,プロスさん知らない?」
アキトがルリに話しかける。
「プロスさんですか?確か,艦長と副長を呼びに行くと言って結構前に出て行ったので
もうそろそろ戻ってくると思いますよ」
「そっか,ありがとルリちゃん」
笑顔で返すアキト,至近距離でその笑顔を見たルリは頬が赤く染まっている。
その横でミナトはニヤリと笑う。
からかう材料ができて嬉しいのだろう。メグミはミナトと同じような笑みを浮かべていた。

因みにヤマダは自分の名前の話から何故かゲキガンガー3の話に変わり,
「いいかぁ!?ゲキガンガーはなぁ!」とプロスが来るまでオモイカネに熱く語っていた。

アキトとルリを混ぜ,四人で世間話をしていると

―プシュッ

と扉が開きユリカ,ジュン。プロスが入ってきた。
ウィンドウはオモイカネがヤマダの話を聞いていたせいか表示されない。
まぁ,全員三人を見ているので支障はないが。

「メグミさん,艦内放送してくれますかな?」
「ぁ,はい」

「さてみなさん,今までナデシコの目的を云わなかったのは,妨害者の眼を欺くためです!」
この放送に全クルーの眼は,一部を除いてコミュニケの表示されているウィンドウに注目する。

「我々の目的,それは・・・・」
「火星じゃ!」
と,フクベ・ジンがプロスのあとに続く。

「火星?では,現在の地球の状況を見過ごすと云うのですか!?」
「そうは云いません,ですが,火星に残された人々はどうなったのでしょうか?確かめる価値はあると思うのですよ」
その言葉にフクベ・ジンは苦虫を食いつぶしたような顔をする。
皆,プロスに集中していて気づく者は居ないが・・・。

一通り話し終えた後
「つまり,火星に残してきたネルガルの人材,資料の回収。序でに火星移民者の人々の救出,と云うことですか?」
ユリカが笑顔で痛いところをつく。
「いやはや痛いところをつきますな艦長,人は思いやりが肝心ですよ?」
「まぁ,理由はどうあれ人助けだし,良いんじゃない?」
「そうですよね~」
と,気楽な二人に
「クゥ!燃える展開だゼェ!」
暑苦しい馬鹿一人。
(火星・・・・か・・・・・)
(まぁ,今更云ってもどうしようもないでしょ・・)
と心の中で考えている,アキト,ルリ。

「では!火星に向かって発「する必要はないわ!!」進!・・・って,へ?」
掛け声と共にムネタケと他軍人数名がブリッジと他主要部署に流れ込んでくる。
「艦長はまず,マスターキーを抜いて貰おうかしら?出ないと,他の連中が痛い眼に会うわよ?」
「ムネタケ!血迷ったか!?」
厭らしい顔をしながら云うムネタケ。
フクベ・ジンが云うが,止まるような奴ではない。
「それにほら,来たわよ」
と,掛け声と共に三つの戦艦が現れる。
「ユウウウウウリカアアアアアアアアアアアアア」
「お,お父様?」
「おぉ,ユリカ久しぶりだね」
「嫌ですわ,お父様先週会ったばかりではないですか」
((アルツハイマー?))とダブルで失礼な事を考えるアキト,ルリ。

「コホン,私は地球連合東方司令ミスマルである!戦艦ナデシコは武装を放棄し投降したまえ」
「はて,地球軍とは話が付いているはずですが?」
「我々が必要としているのは,今すぐ木星蜥蜴と戦える兵器なのだよ」
「それでは話が早い!早速交渉と行きましょう」
「では,艦長とマスターキーはこちらで預かろう」

ユリカは云う通りにマスターキーを抜く,と同時にナデシコのシステムが落ちる。
「さて,艦長と副長,フクベ提督を残して後は食堂に行って貰おうかしら?」
(チッ!この場にはルリちゃんも居るし,大人しく従っておくか・・・)

―食堂―
「あ~あ,戦艦に乗ればかっこいい人一杯居ると思ってたのになぁ」
と,出た言葉は諦めからか,それとも場を和ませるためなのか・・・。
「でも,アキト君とか副長とか結構イイ線何じゃない?」
その言葉に乗るミナト
「えぇ~でも~テンカワさんも,副長もそれぞれ売約済みっぽいじゃないですか」
「考えてみればそれもそうね・・・。」

「オモイカネ,ちょっと良いか?」
『何々?』『用事?』『急用?』
「実はやって欲しい事が有るんだ」
『任せなさい』『やってやれないことはない』
「そうか,実はな・・・・・」

「どうだ?」
『了解』『OK』『No progrem!』
「ありがとう」
ふと,目線を配るとそこには俯いているルリが居た。

「どうかしたのかい?ルリちゃん」
浮かない顔をしているルリに問い掛けるアキト。
アキトとルリの後ろでは,ヤマダが「どうした,どうしたぁ!?暗いぞみんなぁ!」とか
「元気が出る秘蔵の画像を見せてやるゼェ!」とか云っていた。

「アキトさん・・・・恐いんです」
「何がだい?」
「・・・・自分自身やアキトさん,ミナトさん達が居なくなると考えると・・・」
そう,どうだって良いはずだった。
自分自身は元より,他人がどうなろうと・・・。
他人は他人,自分は自分,どうなろうと知ったこっちゃ無い。そう思って居たはずである。
だが,眼の前の青年に会って,ナデシコに乗り,ミナトに出会い,メグミ達とふれあいそれは少しずつ変わっていった・・・。
だが,同時にある感覚が出来てきた。
この人が,あの人が居なくなったら・・・・。
考えただけで足下が崩れていく,そんな感覚。
つい考えがどんどん暗くなっていく・・・・たが・・・

「大丈夫だよ,ルリちゃん」
と,アキトが震えているルリを抱きしめる。
何故か心の真が暖かくなって行き,震えが治まっていく。
「大丈夫だ,ルリちゃん。約束をしよう」
「約束・・・ですか?」
ルリが顔を上げる。
「そう,約束だ」
「どんな,ですか?」
「もぅ,ルリちゃんの前から,居なく成らない。そしてルリちゃん,君を一生護る」
「・・・一生ですか?
「そう!絶対に護る!」
ルリはアキトの言葉の意味を理解して耳まで真っ赤になる。
アキトはそう言う意味で言ったのではないのだが,ルリが赤くなったのにつられて赤くなる。
そして,ぐぅ~とお腹の虫が成る。
二人はさらに真っ赤になった・・・。

「お前さん達腹減ってるのかい?」
と,この食堂のシェフ,リュウ・ホウメイが話しかけてきた。
「あ,あぁ,そう言えば昼飯食ってないかも・・・」
「・・・・私もです」
「ちょっと待ってな,何か作ってやるよ!」
―数分後
「はい,チキンライスお待ち!」
「ぁ,どうもありがとうございます」
「別にいいさね,暇だしね」
「そういえば,そうっすね・・・」
ナデシコの機能が殆ど停止しているので,しょうがないと言えばしょうがないが。

「まぁ,冷めないうちに食べておくれ,冷めちゃおいしくないからね。わたしは仕込みするから自分の食べた分は片づけてくれるかい?」
「解りました」

「さて頂きますっと」
「頂きます」
口に含む,と
「ぁ,おいしいな」(流石だなぁ~)
「美味しいですね,こんな美味しい料理久しぶりです」
その後アキトとルリは雑談をまじえ,美味しそうにチキンライスを食べていった,

アキトとルリがチキンライスを食べ終わり,少し経った頃だろうか
「オモイカネ」
とアキトがオモイカネを呼び出す。
『はいはい?』『何々?』『また,用事?』
「ちゃんとやってくれたか?」
『勿論』『当然』『モウマンタイ!』
「そうか?じゃあ,俺が合図したら,扉を開けて欲しいんだ,頼めるか?」
『了解!』『任せて!』

「さてゴートさん見ていましたね?」
「あぁ,だが,大丈夫なのか?」
「えぇ,まぁ一応格闘技は習っていますから。でも,肝心な所はゴートさんにお任せしますよ。死にたくないんで」
「そうか・・・・」
と少し考えると「では,やってくれ」
Goの合図が出る。
「オモイカネ!頼む!」
『Open the door!』『作戦開始!』『敵は本能寺に有り!』

アキトの指示によりオモイカネが,集まっている部屋,空間の空気を抜かれていた軍人達は抵抗らしい抵抗も出来ず制圧されていく。
勿論ブリッジに居たムネタケも例外ではない。
因みに,ユリカ,ジュンはプロスと共にトビウメへ,フクベは少し経った後食堂に来ていた。

―ハンガー―
「おぉい,お前等!無事に帰って来いよ!特にヤマダァ!!」
「了解です。さて,ユリカを連れ戻しに行きますか!」
「おう!それと俺はダイゴウジ・ガイだぁ!」

「テンカワ・アキト!出る!」
「ダイゴウジ・ガイ出るゼェ!」
まぁ,電力が無いので当然走って発進である。
アキトは器用に飛んで出たが・・・。

―ブリッジ―
「チューリップ起動と共に,護衛艦クロッカス,パンジーを吸い込み,現在反転中・・
目標は本艦だと思われます。」
「チィ!ナデシコは起動できんのか!」
「無理です,マスターキーも艦長も居ませんし」
「ちょっとピンチって感じですねぇ」
「でも,大丈夫じゃない?アキト君とヤマダ君,出てるんでしょ?」
「でも,チューリップに破壊は無理だと思いますよ?」
「んーじゃあ結局艦長待ちかなぁ」

―海上―
「ヤマダ!」
「俺はダイゴウジ・ガイだ!」
「それは俺にシュミレーションで勝ったら呼んでやるって言っただろ?」
「チイ!その内絶対に呼ばせてやるからな!で,何だ!?」
「ユリカ達を連れ戻しに行ってくれないか?どうせ,チューリップはエステじゃ破壊出来ないし二機ここに居る必要は無いだろうしな」

「だ,だがようぅ・・・」。
「それにお前牽制出来るような武器持ってきてないだろ・・・?それとついでに荷物,あの艦に届けてくれ」※荷物とはムネタケ達軍人です。
「ぬぅ!解った!落とされるんじゃねえぞ!」
「解った」

「さて,と,本当に破壊出来ないか試してみるか」
アキトはPDFナックル(PDFSystem仕様のワイヤードフィストの事)をチューリップに放つ!
が,DFを張らないで(張れない,のだろうが)ビックバリアを抜ける装甲である。
少し表面が削れただけで,破壊にはほど遠い。
(やっぱり通常の出力じゃ無理,か・・・)
その時

―ヒュッ

と,アキト機の真横を何かが過ぎる!
「チィ!触手か!?」
そう,チューリップから何本もの触手が生えていて,アキト機を牽制している。
「厄介だな!」
そう言い放つと触手をかわしながら,PDFナックルで一本ずつ処理していく。

―ブリッジ―
「やっぱ凄いわねぇアキト君,あんなの相手に出来るなんて」
「そうですね,何かエース!って感じですよね!」
と安心そうな二人とは対照的に
(アキトさん・・・・)
とルリは少し不安気であった。
アキトの腕を知っていてもやはり不安なものは不安なのだろう。

「お待たせです!V!」
とユリカがブリッジに入り,マスターキーを挿入する。
ユリカの後ろではプロスが荒い息を立てていた。
いくらネルガルシークレットサービス長でも歳には勝てない,と云うことなのだろう。
「ナデシコ,全機能戻ります」
『良くできました!』『はなまる!』『Perfect!』
「では,グラビティブラストチャージ!」
「りょうかーい」
「アキトさん!グラビティブラストを撃ちます。チューリップから離れてください」
【了解!ルリちゃん】
「グラビティブラスト!テエェェェェェェ!」
「グラビティブラスト発射!」
DFも張らないでナデシコのグラビティブラストを耐えられるわけが無くチューリップは破壊され,そこにはチューリップの残骸だけが漂っていた。

「ナデシコ全力前進!」
「了解♪」

―トビウメ―
「ユゥゥゥゥリカァァァァァァァァァ!!」
(ユリカ・・・どうして・・・・?)


―後書き―
ユリカのトビウメでの会話はカットしました。
あんまり意味のある場面でも無いと思いましたので・・・。
それと,ホウメイさんのフルネームはアレだと思ったのですが,間違っていたら指摘してください(汗
因みにPDFSystemはPortions Distortion Field of generation Systemの略です。
まぁ和訳,は作者の造語で部分的湾曲領域発生装置ってことで。少しおかしくても笑って許してください・・・。
あと感想の所にも書いてあるのですがユリカにはヤマダと共にギャグに回って貰おうと思います。(今回は有りませんでしたが)
uosさん指摘ありがとうございました。
では,また。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2006/01/04 04:21
―ナデシコ食堂―
蒼銀の少女と一緒に黒髪の青年は昼食を摂っている。
少女はチキンライス,青年はラーメンである。
美味しそうにラーメンを食べる青年,青年の名をテンカワ・アキトと云う。

「んー,やっぱ美味しいな。ホウメイさんの料理は」
「そうですね」
「その言葉がなりよりさ」
と,ホウメイがアキトとルリの言葉に返事をした瞬間
ナデシコ全体に振動が走る・・・。
「今は第四防衛ラインだっけ?」
「えぇ,地球軍もご苦労な事です」
「まぁ,気持ちはわかるけどね・・・」
2人は少し思いだし
「「はぁ・・・」」
とため息を吐く。
「なんだい?どうかしたのかい?」
「いえ,実はですね・・・」
アキトが事の次第をホウメイに説明する。

端折って説明すると,地球軍は現在,ユリカの挑発(本人は説得と言い張っているが)によって
ナデシコを落とすことに躍起になっている,と云うことである。
通信の内容は「ビックバリアを解除してください」,とユリカが地球軍総司令に申しでたが当然ながら総司令は却下し
「だったら勝手に通っちゃうもんね!」と宣言したのである。
まぁ,そんな巫山戯た事を云われれば軍人でなくとも,怒ると思うのだが
ユリカは心底不思議そうに首を捻っていた。

ユリカの後ろではミナト,メグミが苦笑いをし,フクベは茶を飲み
ゴートは頭が痛そうに,頭を抑えていた。
そして,プロスが胃を痛そうに抑えていたという・・・。

「そりゃあプロスの旦那も大変だねぇ」
「えぇ,でもまぁ,軍に統制が執れて無いですからね。
多分この調子なら第二防衛ラインまでは楽に行けると思いますよ」
「・・・・艦長は狙ってやったのでしょうか?」
とのルリの疑問に三人は一瞬考え,普段のミスマル・ユリカ嬢を思い浮かべる。
数秒考えた後,(いや,それはないな)と思い三人同時に首を横に何度か振る。
大体本人が解っているかどうか疑問な所である。
まぁ経緯はどう有れ,楽なことは良い事である。

それから数分雑談していると,振動の間隔が狭まってきた。
「アキトさん,もうそろそろ第三防衛ラインらしいです。
全クルーは各々の部署で待機,だそうです」
「了解,ありがとルリちゃん」
笑顔で礼を云うアキト。
「いえ,オモイカネが教えてくれたことですから」
ルリは微かに頬を赤く染めながら返す。
「そっか,ありがとなオモイカネ」
『いえいえ』『当然の事』『それより速く行った方が良い』
「わかったじゃあまたね,ルリちゃん。ホウメイさんご馳走様でした」
「はい,ホウメイさんご馳走様でした」
「おう,頑張って来な!」
とホウメイの励ましを貰い,2人は自分の部署に向かっていく。

―ブリッジ―

そこでは・・・・


「あ~あ,私もアキトと一緒にご飯食べたかったなぁ」
「しょうがないですよ,戦闘待機中に艦長は場を離れちゃいけないそうですし」
「そうよねぇ,大体今の状況を作った艦長が悪いんだし」
「えぇ~何で私が悪いんですかぁ~」
「だってそりゃあ,ねえ?」
「えぇ」

戦闘待機中にも関わらず楽しそうに雑談をしていた。

そこで,ふとミナトが何かに気づいたのか
「ねぇ,艦長にプロスさん・・・?」
「はい?」
「何でしょうか?」
と尋ねる。
「副長,アオイ・ジュン君だっけ?って何処に居るの?」
「「へっ?」」
と見事にハモるユリカにプロス。

「全然見かけてませんよね~」
「そう云えばそうだ。ミスター,艦長,彼は今何処に?」
と暇だったのかゴートも混じってきた。
ゴートの問いに
「ハハハハハハハハ・・・・」
「そ,それはですな・・・」
と乾いた笑いと,心底気まずそうな声で応えるユリカ,プロス。
その雰囲気に確信を得たのかミナトは
「はぁ・・やっぱりそうなのね・・・」
解ったのだろう,呆れたようにため息を吐いていた。

「え,副長どうかしたんですか?」
何がなんだか解らないメグミはミナトに問いかける。
「うん,副長,地球軍の戦艦。トビウメだっけ?に行ってから全然見かけないな?と,思ってたんだけど・・・・」
「ま,まさか・・・」
「・・・えぇ,どうやらそのまさからしいわね」
気まずいブリッジ・・・。

気まずさMAXのブリッジに
「すいません,遅れました」
とルリが入ってきた。
その時,メインモニターには9機のデルフィニュウムが映し出された。

―ハンガー―
艦内に戦闘開始の合図,アラームが鳴る。
そこにアキトが走りながら格納庫に入ってきた。
「遅いぞ!テンカワ!」
「すいません,でも,これでも全力疾走だったんですよ?」
「言い訳云してねえで,さっさとエステに乗れ!ヤマダはもう出てるぞ!!」
「え!?速すぎ無いですか?」

アキトが驚くのも無理はない。まだ,戦闘始まって2,3分しか経っていないのだから。

「あぁ,彼奴は戦闘待機中からずっと搭乗してたからな」
「な,なるほど・・・」
と,アキトが搭乗しながらウリバタケと話していると・・・。

【ウリバタケぇ!俺が合図したらスペースカンガーを投下してくれぇ!】
ダイゴウジ・ガイことヤマダ・ジロウから通信が入ってきた・・・。
「スペース・・・何?」
「B-1タイプの事じゃないですか?」
と,ウリバタケの問いに整備班Aが応える。

「ヤマダ,お前何する気なんだ?」
何をするのか薄々感づいている,と云うか解っているアキトは一応ヤマダに問い掛ける。
【だから,俺はダイゴウジ・ガイだと,何度も・・!
フッ!まぁ良い。説明してやろう!
いいかぁ!?まず,俺は武器を持たないでイカ野郎達(デルフィニュウムの事です)の前に出る!
そこで,奴らは俺に油断して近づいて来る!そこでぇ!
武器満載なスペースガンガーを投下!それに乗り換え一網打尽!!
名付けて[ガンガークロスオペレーション]だ!】
と,長々と穴のあり放題の作戦を説明してくれるヤマダ。

「まぁ,突っ込む所は多々あるが,これだけは聞くぞ?」
【ん?何だ】
「お前B-1タイプでどうやって飛ぶつもりだ?」
そう,B-1タイプは重装甲,重装備。こんな高々度で飛べるわけがない。
【そ,そりゃあ,熱血と根性でなんとでも・・】
「なるわけねえだろ!」
「・・・・畜生!!根性ーーー!」
と,話している間に近づいてきていたデルフィニュウム隊に突っ込むヤマダ。
まぁ,最初,1,2機は破壊戦闘不能に追い込めたが,多勢に無勢。
敵はあと7機も居る。案の定あっさり捕まるヤマダ。
瞬間,ウィンドウが開く,そこには・・・・。

―ブリッジ―
そこには・・・
【ユリカ!!ナデシコを地球に戻して!今ならまだ間に合う!
それに,地球を護るためにナデシコは有効的に使うべきだよ!】
ナデシコ副長,アオイ・ジュンが居た。
「・・・・・・・」
今まで忘れていたこともあり,少し言葉を考えるユリカ。
流石に「何でそこにいるの?ジュン君」とは云えない。

「ジュン君。私ここを動けない!」
【な!僕を,地球軍を敵にすると云うのかい?!】
「ごめん!」
【ユリカ!】
とジュンの悲痛の叫びが木霊する。
「でも,私が私らしく有る,地球軍東方司令,ミスマル・コウイチロウの娘じゃない。
私がミスマル・ユリカとして居られるのかここだけなの!」
【っ!】
そのセリフに,流石に言葉を詰まらせるジュン。
【だったら!戦艦ナデシコは地球の敵だ!
手始めにこいつを破壊する!】
と藍色のエステバリスをロックオンするジュン。
だが,何処からともなく現れた漆黒の機体に戦闘不能にされる二機のデルフィニュム。

―アキト機 エステバリス内―
「慣れないことは辞めておけ,どうせあんたに人を殺すなど出来はしない」
と,いつもとは違う口調で話すアキト。
【な?!その位僕にだって!】
アキトのセリフに馬鹿にされたと感じるジュンは云い返す。
「ヤマダを撃破しなかったな?人質にするより,ヤマダを撃破した方が有効だ。
残るは俺,一機だけだからな,普通なら数で押せば倒せる。
それに,ナデシコの武装は,ミサイルにグラビティブラストのみ。
これでは確実にデルフィニュウムのパイロットを殺してしまう。
よって,ナデシコは攻撃してこない。ナデシコは民間人の集まりだからな。
さっきの戦法を執らなかったと云う事は殺せない。
そう言うことだろう?
解らなかった・・・と云う訳でもないだろうしな」
完璧に言い負かされるジュン。
因みにこの会話はブリッジには,流れていない。

「さて残るはお前だけだ,大人しく投降しろ。
あんたには色々やって貰いたいことがあるんだ」
(主に・・・・ユリカの書類処理を)
心中とは裏腹に真面目な言葉を放つアキト。まぁ,切実な問題ではあるが・・・。
だが,その言葉の通り,残りはジュンだけであった。
ユリカとの会話中に戦闘不能にしたらしい。

【まだだ!僕は諦めるわけにはいかないんだ!】
「何故そこまで意地を張る必要があるだ?」
【僕は・・僕はユリカを”護る”んだ!
でも,このままじゃユリカは地球の敵になってしまう・・
だから止めるんだ・・・・!】

その言葉にアキトは過敏な反応を見せる。
「護る?護る・・だと?お前は何からユリカを護った?
愚かな権力からか?それとも,無差別な暴力からか?!」
アキトはそう云いながら,腰からイミディエットナイフを取り出し
デルフィニュウムの手足を奪っていく。
【クッ!そ,それは・・・・】
ジュンは言い返せない。
「違うな!」
と,言葉と共にデルフィニュウムの頭部を掴むアキト。
「お前は”護っている”と思っているだけだ!
だから,気軽に護ると云う言葉が使える!
それに,ユリカが地球の敵になる?地球のためにもナデシコは必要だ?
だからどうした?本当に護りたい存在であれば
他がどうなろうと護るべきだろう!」

自分は非力だった・・・。両親すら救うことすら叶わなかった。
だから,黒衣の男に着いていき大切な存在を護れる力を手に入れた。
それこそ,血が滲むような努力をして。
だから,いとも簡単に”護る”と云う言葉を使うジュンに苛立つ。
昔の自分,非力な自分を見せられているようで・・・。

【ぼ,僕は・・・】
ジュンが言葉を発しようとするが・・・

―ビー!ビー!

と音と共にコックピット内が赤く染まる。
コックピットの映像には異常な数のミサイルが映し出されていた。

「チッ!ヤマダ!!」
【何だ?】
「この馬鹿を連れてナデシコへ戻れ!俺はミサイルを出来るだけ撃破する」
と云って,もはや頭と胴体だけのデルフィニュウムをヤマダ機に投げつける。
【な!?正気か!?】
先程の会話を聞いているので「お前!また良いところ持って行くつもりかぁ!?」とは云えない。
「あぁ,それに,またお前牽制出来るような武器持ってきてないだろ
居ても邪魔なだけだ,速く行け」
【く!わぁった。でも,生きてかえって来いよ】
【テンカワ・・・僕は・・・】
「副長,還ったら聞く」
【・・・・済まない】
ジュンが言葉を発したあと,ヤマダ機はナデシコに戻っていった。

(さて・・・と)
ナデシコに通信をつなげる。
「ルリちゃん」
【はい】
「ミサイル,何基だい?」
【200基です,ナデシコが耐えられるとしたら100基ですね。
ビックバリアを抜けるのを考えるとかなり厳しいです・・・・】
「そっか・・・ありがとう」

「プロスさん,ウリバタケさん」
【何でしょう?】
【なんだ?】
「・・・申し訳ないですが両腕,勘弁してください」
【テンカワさんのは特注ですのでお値段が張るですが・・・仕方有りませんな】
【解った!だからゼッテェ還って来いよ!】
「了解です」

【ちょ,ちょっとアキト君本気!?】
【そ,そうですよ,アキトさん!危ないですよ!】
先程の会話を聞いて焦るミナト,メグミ。
「でも,他に手はないでしょう?」
【そ,それはそうだけど・・・】
と,アキトに云われ黙ってしまう。
戦術的知識など,彼女達は持っていないのだから・・・。

【・・アキト。大丈夫なんだよね?】
と,ユリカ。
「あぁ,心配するな。出来ない約束はしない」
【解った・・】
ユリカも戦略的知識はあるが,戦術的知識はない。
心配ながらも納得するしかなかった・・・。

【アキトさん,私とオモイカネでサポートします】
「ありがとう,ルリちゃん,オモイカネ」
【それより,ちゃんと還って来てくださいね。約束ですよ?】
『約束!』『それは』『守らなければならい物!』
「解ってる!」
その言葉と共に戦闘が開始された・・・。

(さて,久しぶりだな。こういう緊迫した雰囲気は・・・火星を離れて以来,か・・・?)
ルリとオモイカネから情報が流れてくる。数は250基。
どうやら先程より増えているようだ。
先程,ナデシコから射出されたラピッドライフルと
出撃する際持って来て,結局使わなかったラピッドライフルを
両腕に持ち遠距離にあるミサイルを破壊して行く。
一機撃破すると周りが誘爆する。
その爆風に巻き込まれないようにこまめに移動しながら,撃破していく。

何基か敢えて撃ち漏らすが,ナデシコのDFにすら当たらない。
ルリとオモイカネの情報は的確かつ正確だった。

残りが100基位になった時ラピッドライフルの弾が切れる・・・。
そして,その時にはミサイルはかなり近くまで接近していた。
(やっぱり,両腕はしょうがないか・・・)
と考え,集中し,両腕PDFを纏う。
(両腕を纏うのは初めてだが・・・行けるな)
ミサイルが近づいてくる。
アキトは左腕のPDFナックルをミサイルに向けて放つ。
ミサイルを先頭からどんどん破壊していくが,爆風に何度も巻き込まれ
ワイヤーから引きちぎれる左前腕部。

ウィンドウが開き
【アキトさん!数はあと40基です。これ以上無茶はしなくても・・】
ルリからの通信が入る。

「いや,ビックバリアを抜けるときには,DFは無傷の状態が良いだろう?」
不確定要素はない方が良い,そういう事だろう。
【確かにそうですけど・・・】
不安なルリ。まだ,情緒が不安定なのであろう。
この前(全話の食堂での話)の様な嫌な考えが脳裏を過ぎる。
「大丈夫,心配しないで」
と笑顔で返すアキト。
不安が多少消えて行く。だが,嫌なイメージはまだ脳裏を離れない。
だが,時間もないのも事実。
【解りました・・・・】
ルリは不承不承ながらも納得し,ウィンドウを閉じた。

(また心配掛けちゃってるな。速く還って安心させてあげないとな・・・)
と思いつつも,この世の不条理を思う。

(奪われないためには護らなければならい。
護るためには戦わなくてはならない。
たが,戦うためには力が必要である。
そして,力は新たなる争いを呼ぶ種となる・・・。
それはいつまでも続く,欲する心が無くなるまで。
それが人が人である由縁,定めであり,性。か・・・・)

と,昔云われた事を思い出していると,ミサイルがかなり近くまで
接近してきていた。
「これで,終わりだ!」
アキトの掛け声と共にPDFナックルがミサイルに向かって飛んでいく。
刹那,接触。
轟音と共に大きな爆発を起こし,周りのミサイルを巻き込んでいく。

そこには両腕を無くした漆黒のエステバリスと
ミサイル,デルフィニュウムの残骸だけが残っていた・・・。

―ハンガー―
「アオイ副長」
ジュンに話しかけるアキト。
「ユリカのナイト役は空いている。それに俺はユリカのナイト役になるつもりはない。だから・・・」
「ここでは成れるかもしれない,ということかい?」
「そうだ,少なくても可能性は上がる。どう転ぶかはあんた次第だが・・・」

―ブリッジ―
「メグミちゃん,艦内放送お願い。内容は
これよりビックバリアを突破します。なので,全クルーは
自分の持ち場に待機し,何かに掴まってください,です」
「解りました」

「ビックバリア接触まで,あと3秒」
ルリがカウントダウンをする。

「2」

―地球軍本部ビル―
「大変です!」
「どうした!?」
「何者かによってビックバリアがハッキングされています!」
「何ぃ!?止められないのか!」
「無理です!ビックバリア,バリア消滅します!」

「1」
「0」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・


「あれ?」
いつまで経っても来ない衝撃に待ちかね,ミナトが言葉を放つ。
「ルリちゃん,どうなってるの?」
「ぁ,はい・・どうやら,ビックバリアのバリアがナデシコとの
接触寸前に消滅したようです」
「軍人の人が通してくれたって事?」
「いえ,第二防衛ラインの事を考えると,そうだとは思えませんが・・・」
「だが,これは・・・・」
皆が悩んでる中
「ハッキングを受けてたりして?」
と,何気なく云うミナト。


地球とナデシコの中間点。
そこにはナデシコに酷似している一隻の戦艦が佇んでいた・・・・。


―後書き―
・・・・すいません,特にないです・・・・。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2006/01/03 04:00
―ナデシコ ハンガー―
現在ハンガーは嫌な空気に包まれている。
その原因は,茶髪の青年に抱きついている薄桃の髪の少女である。
少女に抱きつかれ,嫌な汗を流している青年。
青年の名をテンカワ・アキトと云う。

―時は遡り ナデシコ ブリッジ―
「・・・月,ですか?」
ユリカが先程プロスが云った言葉を繰り返す。
「はい,月です」
「確か,次の補給はサツキミドリ2号ではありませんでしたか?」
ユリカに続き,疑問を口にするジュン。
どうやら,補給云々の話をしているらしい。
メンバーはブリッジクルー全員にパイロット2人である。

「はい,当初はその予定だったのですが,出航日の予定外の木星蜥蜴の
襲撃により,十分な物資を積み込めなかった事。
出航日並びに第二防衛ライン上でエステバリスが損傷したので,元々少
なかった物資がもう無いのですよ」
まぁ,食料は有るのですがね,と一言加えるプロス。
「成る程」と納得する面々。確かに出航してから補給などはしてない。
「でも,もう木星蜥蜴さん達との戦闘は無いんじゃないですか?」
と,疑問を口にするメグミ。
そう,現在ナデシコが居る宙域は完全に地球制圧下である,
木星蜥蜴が来る確立は少ないだろう。

「まぁ,そうなのですが,備われば憂いなし,と云うではないですか。
それに,此方が主な目的なのですが,オペレーターとパイロットの方が
お一人ずつ来られるんですよ」
その言葉に,集まっている面々は,それぞれだが嬉しそうな顔をしてい
た。
唯一人,アキトは予定外のこの出来事に疑問を抱いていた。
(月への補給にオペレーターとパイロット?どういう事だ?
パイロットは良いとして,オペレーターは誰だ?地球には
ナデシコのオペレートを出来る人は居なかったと思うんだが・・・)

ナデシコのオペレーターはオモイカネとIFSリンクしなければならので
必然的にマシンチャイルド(以下MC)でなければ成らない。
パイロット用のIFSでは当然無理だし,大体,脳が情報を処理仕切れな
い。
一番可能性が有るのは,現在一般の家で育てられている
マキビ・ハリだが,年齢が幼すぎるので無理であろう。
「解りました!それじゃ,ナデシコ月に向かって発進!」
アキトの疑問をよそにナデシコは月へ向かう。

―バーチャルルーム―
「チッキショウ!また負けたぁ!!」
「・・・はぁ,いつも云ってるだろ?ライフル使えって」
「何云ってんだ!男は接近戦だ!」
「だから,俺に負けんだよ・・・」
「くっ!で,でもよぉ,当たんねえんだよなぁ。俺の射撃」
「練習してないのに当たるわけねえだろ!」
現在,対アキト戦で黒星増殖中のヤマダ。
未だに一回も勝てていない。

ヤマダは確かに腕は良いらしいがライフルなどを使わないので
動きが単調なので,至極避けやすい。
対バッタ戦でのシュミレーションでは高い撃墜スコアを残すのだが
やはり損傷率が激しく総合的には良い結果とは云えないのである。

「解った,今度やってやらぁ!」
「今度じゃなくて,今からしろ!今から!!」
「お,おう」
アキトの気迫に圧され,びびりながら返事をするヤマダ。
「そ,それよりよぉ」
「ん?」
「パイロットってどんな野郎だろうな?」
「野郎って・・・男って決まった訳じゃ無いだろうが・・」
アキトのこの予想は見事に当たることになる。
ただ,予想外な事もあったが・・・。

―数時間後―
ヤマダは射撃訓練,アキトはウリバタケと話している。
ヤマダは相変わらずだが,何とか様になってきている。
まぁ,様に成ってきているだけで命中率は散々たる物だが。
アキトとウリバタケは,アキト機の反応速度について話し合っている。
「どうも,反応が鈍く感じる」との事らしい。

「アキト,こんなモンはどうだと思う?」
と,いきなりウリバタケが話を逸らし,何かの設計図をアキトに見る。
「・・・フィールドランサー,ですか?」
少し読み,驚嘆な表情を浮かべながら名前を読みあげる。

「おうよ!お前のPDFSystemだっけか?での戦いかを見て思ったんだが
DFはお互いがぶつかり合うと,弾き合うか,消滅するんじゃねえかと思ってよ!」
さすがは違法改造屋,着目点が違う。
「・・・それで?」
「それでよ!このランサーにそれを応用したフィールド中和装置を付け
てDFを中和するって云うの何だが,どうだ!?」
「そうですね,こういう武器が有ればパイロットとしては大喜びでよ。
何せ,駆逐艦からはPDFSystemでも撃破に手間を取られますからね。
それに,火星宙域では木星からの攻撃は激しくなるだろうし,是非とも
欲しいですね」
との返事にウリバタケは歓喜の表情を浮かべる。
例えれば,少年時代からの夢が叶う! そんな感じである。
「やっぱりそうか!?俺も作ろうと思ったんだが,何せ資材が無くてよ・・・。
だが!聞くにはこれから補給に行くそうじゃねえか!
だから,プロスの旦那にそれの分も頼んどいたのよ!」
「・・手が早いですね,ウリバタケさん。じゃあ,何で俺に聞いたんで
す?」
「いや,一応パイロットの意見を聞くいとこうと思ってよ!
まぁ,ヤマダはあんな調子だから,お前に聞いたんだ。
やっと作れるゼェ・・・。クックック・・・」
そんな危ない表情に少し冷や汗をかくアキト。
そこに・・・

―ブゥン!

【アキトさん。月に到着したのでウリバタケさんとヤマダさんを連れて
ハンガーに来てください】
ウィンドウが開き,ルリが伝達事項を伝える。
「月に突いたのは良いけど,何でハンガーに集まるんだい?」
当然の疑問を口にするアキト。
補給物資の搬入なら,パイロットは必要ないはずである。
【新しく来る人達の歓迎会をするそうです】
「歓迎会?何かするの?」
【いえ,ただ,最初に顔見せをした方が良いだろう。
との事なのですが艦長が勝手に云っているだけです】
ユリカらしいことだが,確かに最初にパイロットの顔見せは
しておいた方が良いだろう。
「了解,今から行くよ」
【はい,では】
といってルリのウィンドウが消える。
「ほら,ヤマダにウリバタケさん行きますよ?」
アキトはそう言いながら,バーチャルルームを出る。

―数分後 ハンガー―
そこには
「お久しぶりです,アキトさん」
と笑みを浮かべる大和撫子風の女性,イツキ・ガザマが居た。
「カザマ・・・さん?」
「イツキで良いって云ってるじゃないですか」
と,アキトの言葉に少し怒った風に云うイツキ。
「あぁ,ごめんごめん。まさかイツキちゃんが来るとは思わなくてさ・・・」
「私では不満ですか・・・・?」
「い,いや,そう言う訳じゃないんだよ!」
イツキの沈んだ顔を見て必死に腕を振りながら弁解するアキト。
少し滑稽である。

「・・・アキトさん知り合いなんですか?」
ルリが話しかける。
「うん,そうなんだよ。ネルガルのテストパイロット,仲間,で,さ・・アハハハハハ・・・・」
最初の方は普通に話していたアキトだが,ルリにジト眼をされ
最後には乾いた笑いをする。
「そうなんですか。モテモテですね,アキトさん」
「いやぁ,アハハハハハ・・・・」
と,眼が笑っていない笑顔を見せるルリに
乾いた笑いをするしかないアキト。

「よろしくお願いしますね,イツキ・カザマさん。私はホシノ・ルリです。ルリで結構ですよ」
「私はイツキ・カザマ。私もイツキで良いですよ。よろしくねルリちゃ
ん」
と,笑顔を浮かべながら自己紹介し合う2人。
気のせいか,少し顔が引きつっている。
「ハハハハハ・・・・・」
そんな2人を見て,やっぱり笑うしかないアキト。

「アキトッ!」

と,薄桃の髪の少女,ラピス・ラズリがアキトに抱きついてきた。
ここで冒頭に戻る。

冷や汗を流しているアキト。
原後ろでジト眼をしているルリとイツキ。
そして,未だにアキトに抱きついているラピス。
因みにここで叫び出しそうなユリカは,ジュンと月でプロスに詳細な説
明を受けていた。

「アキトさんまたお知り合いですか?」
ルリの声が心なしか怒りに震えているのは気のせいでは無いだろう。
それに冷や汗を流すアキト。
「う,うん,火星で知り合ったんだよ・・・」
「そうですか。私が火星を離れた後・・・」
「そうだけど,ルリちゃんが今考えているのとは絶対に違うよ!?」
「本当ですか?」
「本当だって!そ,それより,ラピス!自己紹介した?」
必死の思いで話しを変えるアキト。
ルリとイツキ所か格納庫に居るクルー全員の視線が
アキトに突き刺さって,正直耐えかねる。

アキトの問いに
「まだ」
と簡潔に応えるラピス。
「んじゃ自己紹介しなきゃ」
「解った」
と応え
「ラピス・ラズリ。オペレーターです,よろしく」
ぺこり,と頭を下げるラピス。
「可愛い!」との声が格納庫に居るクルーの殆どから上がる。
その声に驚き少し怯えた眼でアキトの後ろに隠れるラピス。
その姿も結構クル物がある。

「ラピスさん。ホシノ・ルリです。よろしくお願いします」
と,近くに居たルリがラピスに自己紹介をする。
「イツキ・カザマです,よろしくねラピスちゃん」
イツキもルリに続き,自己紹介をする。
だが

―フルフル

と,頭を横に振るラピス。
「ぇ,何か悪いことした?」
その動作に少し不安になるイツキ。
「あぁ,ラピスは敬称を付けられることが嫌ならしいんだよ」
イツキの問いに応えるラピス。
「そうなんですか?」
「うん,何でかは解らないんだけどね。2人とも差し支えなかったら
ラピスって呼んでやって欲しいんだ」
「わかりました,よろしくお願いしますね,ラピス」
「了解です。よろしくね,ラピス」
「・・・うん,よろしく。ルリ,イツキ」

ラピスの言葉に苦笑いするアキト。
「・・・ラピス,さんは付けようね」
「・・・駄目なの?」
と潤んだ眼で問い掛けてくるラピス。
うっと成るアキト。自分が悪役になった気分である。
「構いませんよ,ラピス」
「私も構わないよ,ラピス」
笑顔で返す2人に安心した顔を浮かべるラピス。

こうして,ラピス・ラズリとイツキ・カザマと云うイレギュラーも加わりながらも
ナデシコは火星へ向かう。


―その後―
ラピスはブリッジクルーに改めて自己紹介をし
フクベとジュン,プロス,ゴート以外はそのまま名前で呼ぶことになった。
どうも,男性の名前を呼ぶのは戸惑われたらしい。
ラピスの呼び方はミナトがラピラピ,ルリがラピス。ユリカ,メグミがラピスちゃん。
その他はラピスくんだった。

―その後のその後―
ラピスはアキトと一緒の部屋に住むことに成った。(今回はヤマダとは
別の部屋)
それに異議を唱えるルリ,イツキ,ユリカだったが,プロスに会長の指示だ,と云われ
結局アキトとラピスは一緒に住むことになった。

―後書き―
ラピスとイツキ,出しました。
この2人は結構好きなキャラなので,出さないという選択権は有りませんでした。
イツキはアキトの云った通り,テストパイロット時の同僚。
ラピスはアキトが火星に居たときに,カイトがアキトと共に研究所から助けた,という設定です。
ここら辺は要望が有ったら書こうと思います。
アキトがナデシコに乗り込んだ辺りの時にカイトは
アカツキと会って居ます。(アキトとカイトの関係は一応ネルガルには云っていません)
イツキはアキトと同い年,ラピスはルリの2つした,つまり12歳です。
では,誤字や脱字の指摘,感想などが有ったらどうぞください。


それと,ウィルス付きメールは勘弁してください。いや,マジで。



[297] 機動戦艦ナデシコ~PROMISE~
Name: マドロック
Date: 2006/01/07 22:17
─ナデシコ アキト自室─
そこでは薄桃の髪の少女と茶髪の青年が居た。
青年は少女の話を聞いて居る。
少女の話を聞いて困惑の表情を浮かべている青年,青年の名をテンカワ・アキトと云う。

「それって,本当か?」
アキトの疑問にラピスは首を縦に振り
「態々見殺しにすることもないだろう,って」
と,答える。
「そうか・・・じゃあ今の状況もそれの?」
「そのはず」

ナデシコは現在,次の目的地サツキミドリ2号と連絡が取れないで居た。
何の前兆も無しに通信が途切れたのである。
まぁ,黒衣の男のせいなのだが,ナデシコクルーは当然の如く知らない。
なので現在,ナデシコはサツキミドリ2号に向けて全速力で向かっている。
もうそろそろ戦闘待機が云いわたされるだろう。

「じゃあラピス,食堂に行くか」
アキトの言葉にラピスは何度か首を横に振り
「・・・人が(一杯)居るところ,キライ」
と云う。

ラピスは人混みを好きではなかった。
自分が人と違う容姿をしているのを気にしているのだろう,人の視線を気にするようになった。
だから,人が混み合うところは好きになれないのだろう。

「・・今は昼食には遅い時間だから,昼時ほど人が居ないから大丈夫だと思うぞ?」
少し考えアキトが云う。
「・・・本当?」
「本当。それに今の時間帯ならルリちゃんも居るだろうし」
ルリもラピスほどでもないが,人混みがキライなので今のような時間に食事を摂っている。
まぁ,ブリッジの仕事の影響も有るのだろうが・・・・。
「・・・解った」
ラピスが不承不承ながらも頷いた。
ルリが居ると云うことで安心したのだろう。

同じ身の上と云う事もあり,ラピスとルリはすぐに仲が良くなった。
恐らくナデシコ内ではアキトを除けば一番ラピスと仲が良いのはルリだろう。

─食堂─
食堂にはアキトの予想以上に人が居なかった。
(これは,ルリちゃんも居ないかな?)と思い,焦りながら周りを見る。
ラピスが愚図ると機嫌を直すのが結構大変らしい。

(・・・・居た)
と,アキトの視線が止まる。
そこにはイツキとしゃべりながらチキンライスを食べている蒼銀の髪の少女,ルリが居た。
(二人って仲良かったかな?)と疑問を持つアキト。
まぁ,それはさて置きルリが居るのは事実である。

「良かったなラピス,ルリちゃん居たぞ」
「・・・ウン」
と云い二人はルリの元に向かう。

この後4人は戦闘待機が言い渡されるまで雑談を楽しんでいた。
会話中イツキとルリの間がぎこちなかったがそんなことは些細なことである。

─ブリッジ─
そこは丁度ミーティング
ルリが食堂で食事を摂っていたのはオモイカネが居れば,あまり支障がないので
ミナトとユリカに,今の内に食事を摂って来た方が良い,と云われたからである。
まぁ,アキトと一緒に食べられると解っていたらユリカも一緒に行っただろうが。(行けるかどうかはさておき)
因みにラピスはオペレーターと云っても見習いなので,正式にシフトには組み込まれていない。

「メグちゃん大丈夫?」
ミナトがメグミを気遣う。
「・・大丈夫です」
と云うが,言葉とは裏腹に顔色は良くない。
サツキミドリ2号の通信士と話していたのでその分ショックが大きかったのだろう。

少し間を置き
「・・・昨日まで話してたのに,元気に話していたのに・・」
と呟く。
「大丈夫よ,メグちゃん。通信機器が故障しただけなのかもしれないし・・元気出して!」
「そう・・ですよね。また呼びかけてみますね」
ミナトの言葉に少し元気が出るメグミ。
「うん♪」
メグミの顔色はまだ悪いが,先ほどより元気があるので安心するミナト。

─ハンガー─
そこでは,ルリ,ラピスと別れたアキト,イツキが話していた。
ヤマダはもうそろそろ来るだろう。
出撃は出来ないが・・(現在0G専フレームはイツキの分しかないので,ヤマダは出撃できない。因みにアキト機は換装なしで,宇宙,地球,どこでも行けます)

「そう云えばイツキちゃん」
ふと,アキトがイツキに話しかける。
「はい?」
「イツキちゃんとてルリちゃんって仲良かったんだね?」
と,先ほどの疑問を口にするアキト。

そう,ルリとイツキとの初対面は良い雰囲気,とはお世辞には云えなかった。
アキトの記憶では何か,牽制し合っていた節が有った。
まぁ,解っていないのはアキトとラピス位であるが・・・。

「そう・・ですね。仲は良いと思いますよ」
と,アキトの疑問に最高の笑顔で答えるイツキ。只,眼が笑っていなかった事を除けば・・・。
「そ,そうなんだ」
イツキの笑顔に得体の知れない物を感じ,少し引き気味のアキト。
すると

─ビー!ビー

と,音と共に

【現在,サツキミドリ2号は木星蜥蜴に襲撃されている模様。パイロット各員はエステバリスに登場して下さい!!】

放送が流れる。

「な!?」「!」

その報告に驚愕するイツキと少し驚いた風のアキト。

(やっぱり後の処理は俺達か・・・)
と,黒衣の男に対する不満を漏らしながら機体に搭乗するアキト。
イツキは少し呆然としていたが,すぐに機体に搭乗する。
するとウィンドウが開き

【エステバリス隊の皆さん,出撃して下さい!】

ユリカの命令が下る。

「テンカワ・アキト,出る!」
「イツキ・カザマ出ます!」
漆黒,純白のエステバリスが,カタパルトから飛び出す。
二機はコロニーの方角に機体を向け,バーニアを噴かしコロニーへ向かう。

─サツキミドリ2号付近 宙域─
そこには所々爆発しているコロニーとその周りを飛び回っているバッタ,ジョロの姿があった。幸いカトンボ級の姿はない。

(・・バッタやジョロだけでコロニーを落とす火力は無いはずだ・・・コロニーの動力源をやられたのか?)
と思いつつコロニーを見る。
所々破損しているのでよく分からないが,脱出ポットは全部無くなっている。
(どうやら,ラピスの話通り云ったようだ・・)

ラピスの話していた事とは,ハッキングし木星蜥蜴が襲撃する前にコロニーの人々を避難させよう,と云う物である。
もちろん,ハッキングしたのはラピスやアキトではない。

「イツキちゃん,どうやらコロニー人達は脱出したみたいだ!」
「本当ですか!?」
と信じられない,という風に聞き返すイツキ。
当然だ,普通なら全員死んで居てもおかしくはないのだから。

「あぁ!取りあえずバッタ達を撃破しよう。生存者が居たとしてもこれではどうしようもない!」
「了解しました!」

その声と共にアキトはPDFナックルを放ち,バッタ,ジョロを撃破していく。幾ら数が居てもこれは防げない。
イツキはライフルとナイフを巧く使いながら撃破していく。ナデシコにスカウトされただけ有って動きに無駄がない。
アキトとイツキは連携を取り,取り付かれないようにしながらバッタ,ジョロを撃破していく。

順調に撃破して来たがバッタ,ジョロの数は遠目から見るとそんなに変わりはない。
これじゃ,焼け石に水だな,とアキトは右前腕部にPDFを纏う。
いつもよりも長く集中する。
「イツキちゃん!離れろ!」
「!」
アキトの声に素直に反応しその場を離れるイツキ機。

「行け!」
と,アキトの掛け声と共にPDFナックルが敵に向かっていく。
接触の寸前PDFが拡張。刹那,爆発。
先ほどより広範囲且つ大量に撃破していく。

その後,ナデシコが到着し,バッタ,ジョロの掃討は完了した。

─ハンガー─
「どうも初めまして~!新人パイロットのアマノ・ヒカルでーす!」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
整備班が叫ぶ。

「あたいはスバル・リョーコ!同じくパイロットだよろしくな!」
「「「「「「来たあぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」
整備班が叫ぶ。

「マキ・イズミ。上に同じ,同上。思いやることそれは同情。ククク・・・」
「「「「「よっしゃあぁぁぁぁぁぁ?」」」」」」
整備班が叫・・・・ぶ?

「あっちは大盛り上がりですねぇ」
「そうだね」
(ちょっと下がった気もしたけど・・・)
アキトとイツキは着艦後,騒ぎを遠くから見ている。
「イツキちゃんは行かなくて良いのかい?」
「えぇ,あんまり人だかりって好きじゃないです」
まぁ,嫌いなわけでもないですけどねと,加えるイツキ。

その後話すことも無くぼーっとしている二人に,パイロットの三人が近づいてくる。

「よぉ,お前等パイロットだろ?さっき云った通りパイロットのスバル・リョーコだ。よろしくな」
「アノマ・ヒカルで~す。どうぞよろしく!」
「マキ・イズミ以下同文」

「ぁ,ああ。テンカワ・アキトです,よろしく」
「えぇっと,イツキ・カザマです。どうぞよろしくお願いします」
と,三人の勢いに飲まれながらも答える二人。
「所でよぉ「ちょおっと待ったぁ!」なんだぁ?」
リョーコが話を変えようとしたところで奴が現れた。

「お前,誰だ?」
「俺かぁ!?俺はダイゴウジ・ガイ!このナデシコのエースパ「おぉい!ヤマダァ!」ッチ!何だウリバタケ!?大体俺はダイゴウジ・ガイだといつもいつも!」
「んなことはどうでも良いんだよ!お前用にエステを調整しなきゃならねえんだから早くこっち来い!」
「チィ!そう言うことならしょうがない!良いか!?俺はダイゴウジ・ガイ覚えておけ!」
と,ヤマダは疾風の如く現れ,疾風の如く消えていった・・・。
(※ヤマダの0G専フレームはリョーコ達が持ってきました)

「何なの~?あの人」
「き,気にしないで頂けると有りがたいです」
「い,一応ナデシコのパイロットのヤマダ・ジロウって云うんだ」
「ん?ダイゴウジ何たらって云ってなかったか?」
「魂の名前,らしいです・・」
「なんだそりゃぁ?」
「魂の名前,魂の名前・・・。ダメ,思いつかないわ・・」
その言葉を最後に会話が無くなる五人。

「そ,そうだ!」
「「「?」」」
「どうしたの,リョーコちゃん?」
「あの,黒いエステ乗ってたのは誰だ!?あの,ヤマダって事は無いだろうし・・・」
「あぁ,一応俺だけど,どうかした?」
との答えに

「どうかした?じゃねえよ!あの戦い見てはい,そうですか。で済ませられるかよ!!それにPDFSystem使えるんだろ!?オレ使えなかったんだ!!だから試合しようぜ!試合!」
興奮した面持ちで云うリョーコ。
自分より強い者と戦いた云う者あまり居ないが,リョーコはそのカテゴリーには入らないらしい。
まぁ,ヤマダはヤマダで別である。

実際アキトの実力は,同僚のイツキ・カザマ達に云わせると「連合のエースパイロットなんて眼じゃないですよ!」との事らしい。
まぁ,贔屓目は有るだろうがそれを抜きにしても凄いらしい。

「あ,あぁ。まぁ,機会が有ったら・・ね」
「絶対だぞぉ!約束だかんな!」

リョーコはアキトの答えに満足したのか意気揚々と整備班の所に向かった。ヒカルとイズミもその後に付いて行く。

「おもてになりますね,アキトさん」
「勘弁してよ。イツキちゃん・・・」
アキトはこれからの事を思ったからか,イツキに嫌みを言われたからなのか,疲れた顔をしていた。

─ブリッジ─
アキトは戦闘報告をしにブリッジに来たが,そこにはルリとラピスしか居なかった。

「あれ?ルリちゃん他のみんなは?」
「ぁ,アキトさん。お疲れ様です」
「オツカレサマ。みんな,食堂に行った」
「参ったなぁ。ユリカに戦闘報告しなきゃならないのに」
「大丈夫だと思いますよ。艦長そう云うの気にして成さそうですし」
「コクコク」
「まぁそうなんだけどね」

「それにしても,アキトさん」
ルリが話を振る。

「うん?」
「イツキさんじゃないですけど。本当におもてに成りますね」
「ウン。アキトはスケコマシ」
「・・・」
ルリは素晴らしい笑顔で,ラピスは少し怒った風に,痛いところを突く。
アキトは固まっている。

「ち,違うよ。きっとアレは純粋にパイロットとしてだよ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
「ホントウ?」
「本当,本当!」

「まぁ,今回は信じましょうか。ね,ラピス」
「ウン」
「信じてもらえて嬉しいよ・・・」
と表情では顔が引きつっていながらも,ルリとラピスの仲の良さに心が温かくなる。
(・・・・絶対に護ってみせる)
この選択が間違っていなかった事への嬉しさを覚えると同時に,決意を新たにするアキト。

三人の雑談はブリッジクルーが来るまで続いた。


こうして歴史を変える小さな一つの戦いは終わりを告げる・・・。
だが戦いはまだ,始まったばかり・・・・。


─後書き─
前回の投稿で云うの忘れました,あけましておめでとうございます!
今後とも宜しくお願いします。
因みに,メグミイベントはないです。
サツキミドリ2号の人達は全員脱出しているので・・・。

PS,あつきさん指摘ありがとう御座いました。


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