「12年前の事件以来、里にはある掟が作られた」
ミズキはそう続けた。
「ある、掟…?」
金髪蒼目の少年、うずまきナルトが不安そうにミズキに尋ねる。
「―――それはナルト!お前にだけは決して知らされる事の無い掟だった」
「オレにだけ?何なんだ、その掟って!?」
12年前の事件。木の葉の里を襲った九尾のバケモノ。そいつが木の葉の里を滅茶苦茶にした。
あまり過去の出来事に興味を持たず、イタズラばかり考えているナルトでも、その位の事は知っていた。
だが、その事件で出来た掟と自分が何の関係があるのか?
言い様の無い不安感だけがナルトを襲っていた。
「やめろ!!!ミズキ!!!!!!」
―――イルカ先生。何をそんなに焦っているんだってばよ?
この話は、オレには聞かせてはいけない事なのか?
…なんでそんなに苦しい顔をしているんだってば?
「…ナルトの正体が化け狐だと口にしない掟だ!」
――――――――――――え?
…………オレが、化け狐?
どういうことだってばよ。何を言っているんだ、このヒトは。
オレが、九尾…?
そんな筈はない。ありえない。オレは、うずまきナルトだ。
………なにをいっているんだ、このひとは。
でも………
――――でも。
だとすれば、今までの里の大人達の態度にも納得がいく。
ナルトは、幼少期から、里の人達に暴行や暴言を与えられてきた。
幼ないナルトには、何故こんな酷いことをされなければならないのか、全く
見当がつかなかった。
里を歩けば周囲の人から、買い物に行けば店の人から。
(あいつが…例のガキか)
(あの子が…関わっちゃダメよ)
(里から出て行け)
(消えちまえ)
何故会ったことも話した事もない筈の人達から蔑まれ疎まれなければならないのか…
その原因が…こういう事だったのか。
追い打ちを掛けるかの如く、ミズキが続けた。
「つまりお前が!!イルカの両親を殺し里を壊滅させた九尾の妖狐なんだよ!
お前は里の皆にずっと騙されていたんだよ…可笑しいとは思わなかったか?
あんなに毛嫌いされて…」
ドス黒い感情が、ナルトを支配していく。
「オマエなんて誰も認めやしないない!!イルカだってお前が憎いんだ!!」
ナルトの中で何かが壊れた。
虚ろな表情のまま、その場を駆けていく。
「ナルトォ!!お前は化け狐じゃない!!!!俺の話を聞いてくれ!!
ナルト!!ナルトォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」
―――イルカの声は届かない。
「九尾の…ガキか。こいつは使い物になりそうだな」
全てを見ていた赤い眼が闇の中に浮かんでいた。
あとがき
SS初投稿してみます。書くのって難しいですね~。
補足ですが、ナルトはアカデミーの卒業試験には受かっている設定です。
ミズキにすごい術を教えてやる、と言われ封印の書を持ち出し、冒頭に至る訳ですね。
途中で何書いてるのかわからなくなりそうで怖いな…(笑)
ナルトは闇堕ちさせます。