地下街と呼ばれるダンジョン内にある一つの部屋。
陽光差し込むその部屋は静寂に包まれている。
その場に動くものはまだない。
経験豊富な凄腕サーチャーにはその場で何が起こるか想像できただろう。ダンジョンを経験したばかりの初心者ですらなんとなく嫌な空気を感じ取るだろう。
一辺が100メートルほどある正方形の部屋には濃密な死の空気が漂っていた。
数瞬の後、その部屋は何の前触れも無く大小様々な異形の怪物たちに埋め尽くされた。その数は千に達するのではないかと言うほどだ。
生まれたばかりの怪物たちはその環境に戸惑っているのか、それともその生に戸惑っているのか、みな一様に辺りを見回している。
そんな中、牛の頭を持つミノタウロスが一つ目のサイクロプスへとこん棒を振り下ろした。
響き渡る悲鳴。それを皮切りにその部屋は地獄へと姿を変える。
鳴り響く剣戟、打撃音、悲鳴、雄たけび。
ワーウルフを喰らうケルベロス、焔トカゲに踏みつぶされるリザードマン、ケンタウロスを捕える食人植物、次々と命が消えていく。
一体どれほどの時間が経過しただろう。
その部屋に一つだけ残った命は、勝ち鬨となる雄たけびをあげた。