――とある夜――暗い森の中を声を走る影がある。その影は手に持った刀で枝を切り倒しながらほぼ一直線に走っていく。風が吹いているのだろうか。木々のざわめきは影の足音を呑み込んでいた。だが、そんな音の本流の中に、かすかに聞き取れる別の音が存在した。「考えろ――考えるんだ。」それは呪いのように、あるいは祝詞のように空へと消えていった。森は、これから何かが起こることを予感しているようにざわめいている。