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No.12274の一覧
[0] 【習作】永遠なる姫騎士(ダイの大冒険・オリ主・チート)[若年寄](2009/10/09 11:52)
[1] 第壱話 姫騎士と竜騎将[若年寄](2009/09/28 00:39)
[2] 第弐話 姫騎士と勇者[若年寄](2009/09/28 14:37)
[3] 第参話 姫騎士と竜の騎士 その壱[若年寄](2009/10/01 21:36)
[4] 第肆話 姫騎士と竜の騎士 その弐【15禁?】[若年寄](2009/10/01 21:35)
[5] 第伍話 姫騎士と竜の騎士 その参(修正)[若年寄](2009/10/09 11:58)
[6] 第陸話 姫騎士と竜の騎士 その肆[若年寄](2009/10/14 00:07)
[7] 第漆話 姫騎士と竜の騎士 その伍[若年寄](2009/10/14 00:10)
[8] 第捌話 姫騎士と竜の騎士 その陸【15禁?】[若年寄](2009/10/19 22:27)
[9] 第玖話 姫騎士と竜の騎士 その漆[若年寄](2009/10/24 22:48)
[10] 第壱拾話 姫騎士と竜の騎士 その捌(TS要素あり)[若年寄](2009/11/03 23:21)
[11] 第壱拾壱話 姫騎士と魔王軍あれこれ[若年寄](2009/11/05 23:25)
[12] 第壱拾弐話 姫騎士を語るアバンの使徒[若年寄](2009/11/11 01:54)
[13] 第壱拾参話 姫騎士からの招待状 その壱[若年寄](2009/11/14 23:49)
[14] 第壱拾肆話 姫騎士からの招待状 その弐[若年寄](2009/11/23 01:26)
[15] 第壱拾伍話 姫騎士からの招待状 その参[若年寄](2009/11/26 00:05)
[16] 第壱拾陸話 姫騎士からの招待状 その肆[若年寄](2009/11/26 00:03)
[17] 第壱拾漆話 姫騎士からの招待状 その伍[若年寄](2009/12/08 01:17)
[18] 第壱拾捌話 姫騎士からの招待状 その陸[若年寄](2009/12/15 01:59)
[19] 第壱拾玖話 姫騎士からの招待状 その漆[若年寄](2009/12/23 00:55)
[20] 第弐拾話 姫騎士の宴の始末[若年寄](2010/01/15 12:48)
[21] 第弐拾壱話 姫騎士と常春の大陸 その壱(グロ有り?)[若年寄](2010/09/08 02:54)
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[12274] 第陸話 姫騎士と竜の騎士 その肆
Name: 若年寄◆decbc20d ID:a621b7d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/14 00:07
 ポップ視点

 ダイの記憶を消されて俺達は絶望の淵に立たされていた。
 戦力にならないというのは勿論だが、何よりツライのはダイが俺達やアバン先生の事まで忘れちまったことだ。
 直に攻めてくるだろうバランに備える為、姫さんの口利きでテランの王様に会った俺達はダイを匿ってくれるよう掛け合った。
 毅然とバランの行為を侵略と云い切り、戦う決意を見せた姫さんに何か感じるものがあったのかテランの王様も協力してくれることになった。
 
「ほう、お前は…確か名高い占い師の…」

「はい、ナバラでございます」

 ベンガーナで会ったメルル達に王様が声をかけた。
 いくら小国とはいえ、王様の覚えが良いなんて凄ェ占い師だったんだな…

「この国に帰っていたのか…するとその娘は…」

「孫娘のメルルです」

 婆さんに紹介されたメルルは王様に呼ばれて近くへと歩み寄る。
 しばらく王様はメルルの瞳を覗くようにみつめていたけど、ふいに婆さんへと視線を戻した。

「祖母を上回るかも知れぬ力を秘めておるな?」

「た、確かに…最近、私にも感知できないような事を捉えたりします」

 婆さんの言葉に王様は真摯な目をメルルに向ける。

「…お前はその力ゆえに、これから世にも恐ろしいもの、辛いものを見る事になるだろう」

「エッ!?」

「だが目を背けてはならん。自らの力を憎んではならんぞ。お前の力は必ずや人々を救うものになる」

 その日を信じて強く生きろという王様に、メルルは不安そうに返事をするだけだった。
 その瞬間、メルルの体がビクリと震えて、怯えた表情でわななき始めた。

「王様、大変です! ベンガーナから巨大な火の手が!!」

 城の兵士の報告に場は色めき立つ。

「来ます! 凄い憎悪のエネルギーが…この国目がけて!!」

 メルルの悲鳴に近い叫びに俺の脳裏にバランの顔が浮かんだ。

「バ…バランの野郎が来やがるのかっ!?」

「それだけじゃありません…同じようなエネルギーが…他に三つ!!」

 バランの野郎、助っ人か何かを頼みやがったかっ!?

「と、とにかくダイ君を安全な場所へ!!」

「はい、こちらへっ!!」

 シスター・クンビーナっていうグレーの前髪をウィンプル(修道女が頭に被る布)から覗かせた修道女に誘導されて辿り着いたのはなんと牢屋だった。
 いきなり閉じこめられて、人格が幼くなってるダイは当然のごとく泣き叫ぶ。

「い…いくらなんでも牢屋に入れなくても…!」

「しかし、ここがこの城で最も地下深く堅固な場所ですわ」

 メルルの苦言にクンビーナさんはそう返した。
 メルルはまだ渋ってるようだが、バランを迎撃するにもダイを心配せずに戦うにはここが一番なのかも知れない。
 クロコダインのおっさんも、動物の世界にある刷り込みを例に挙げてダイとバランを会わせない為だとメルルに説明する。
 記憶を失ったダイがバランと会ったら…同じ紋章という証拠もあって疑うことなくバランを受け入れちまうだろう…

「かわいそうだけど…ダイ君の為だわ!」

 姫さんもちょっと辛そうだ。

「では、僭越ながら私が勇者様の慰めに…」

 そう云ってクンビーナさんは腰に提げていたラッパを取り出して楽しげな音楽を奏でる。
 ダイには効果があったようで、まだ涙目ではあったものの少しだけ笑顔を見せてくれた。

「むうううううっ!!」

 突然婆さんが唸り声をあげたので、何事かと振り向けば婆さんの持つ水晶玉が光を放っていた。

「姿を捉えた! 南東の方角から真っ直ぐこのテランに向かってきている…!!」

 婆さんの水晶玉にはやっぱりバランの野郎の姿が映っていた。しかも他に三人の姿もあった。

「こ、これがバラン以外の三つのエネルギーの正体っ!?」

「もしや…こやつらが噂の竜騎衆!?」

 クロコダインのおっさんの説明によるとバラン直属の部下で、ドラゴンを操った時の戦闘力は魔王軍の軍団長に匹敵するらしい。

「ま、待って! 三人の内の一人…この女の人って…」

「間違いねぇ…魔軍顧問…エターナルだ!」

 今度はおっさんが疑問の声をあげ、俺はベンガーナで起きたエターナルとの戦闘の事を話した。

「ば、バーンの娘とは…まさかこれほどまでの軍勢だったとは!! どうやら魔王軍は是が非にもダイを手に入れたいらしい…」

 バランやエターナルが単体でいるだけでも強敵なのに、手を組まれたんじゃ勝ち目はねぇ…せめて一人ずつだったら…
 ん? 一人ずつだったら?

「駄目だ駄目だ! …こりゃもう打つ手無しだぜ!」

 大仰に笑って肩を竦める俺にみんなの疑念の目線が突き刺さる。
 けど俺は構わず、俺は一足先にトンズラするから後は適当にしてくれと云い放ってやった。
 正直、みんなに責められるのは堪えるが、ここは踏ん張って悪態をつき通さないと先には進めない…

「心配いらねーよ。どうせこいつあ人間じゃねえ…ヤツらの仲間なんだ」

 心の中で何度もダイに詫びながら、その頭をグリグリと撫でる。

「ヤツらに返してやったって良いんじゃねぇの!? 人間と一緒にいるより大事にしてもらえるぜ」

 次の瞬間、姫さんの平手が俺の頬をとらえて小気味の良い音を立てた。
 どこへでも消えろ…か、自業自得とはいえ辛ェな…だが、それでもなんとか平然とした顔を無理矢理作ってその場を後にした。
 メルルにまでも嫌われちまったが、仕方がない事なんだ…
 どうせ俺一人でいくと云っても止められるだけだし、みんなにはダイを守ってもらわなきゃならねぇんだ!!
 けど、ヤツらは差し違えてでも俺が食い止める!! たとえ勝てなくても一人でも二人でも人数減らしをしてやるさ!!
 最悪でもバランとエターナルだけは分断しねぇともう勝ち目は0になっちまう!!
 死んでもそれだけはやってやるから…後は頼んだぜ!!
 走り去る時、ふと城を振り返ると城門にシスター・クンビーナが立っていた。
 笑っていた…前歯を突き出すネズミみてぇな笑みを浮かべて…美人が台無しだぜ…








 俺は高台の上に立ってバラン達を待ち構える。

「来たっ! 来やがった!!」

 角を何本も生やしたやたらと強そうなドラゴンに跨ったバランを先頭に、ガメゴンロードやバランの程じゃないけど強そうなドラゴンに乗ったヤツらもいる。

「ヤツらが竜騎衆か…って、あれ? え、エターナルがいねぇ!? あの女はどこいったっ!?」

「は・あ・い♪ ここですよ♪」

 いきなり背後から首を掴まれ持ち上げられる。

「健気だな…たった一人で人数減らしに来たか? それともヒゲオヤジと俺を分断させようってェ作戦か?」

「え…エターナル…」

 この声、間違いねぇ…ベンガーナを襲ってきたエターナルだ。
 しかも俺の行動を読んでいやがった!?

「や…ヤベェ…バラン達が通り過ぎちまう!!」

 けど後ろから掴まれてる事が幸いし、呼吸は出来るし声も出せる!

「確かお前にさえ向けなければ魔法は発動するんだったよな? いくぜ、ベタン!!」

 マトリフ師匠直伝の超重力を生み出す大呪文だ!!
 潰れろっ!! 潰れちまってくれえっ!!

「させねーよ!」

 バラン達のドラゴンが目や鼻から血を出しているのは見えたが、トドメを刺す前にエターナルが俺を高台の下へ投げ落としやがった。
 見れば陥没した地面にピクリとも動かないドラゴンの尻尾が見えたが、果たして倒せたかどうか…
 すると地響きを立てて鎧を纏ったトドマンがガメゴンロードを持ち上げて立ちやがった。

「フン!! ひ弱なドラゴンどもめがっ!! だらしない!!」

 ガメゴンロードを投げ捨てたトドマンがそう吐き捨てた。
 …やっぱりバランも、もう一人の魔族みてえな男も無事だったか…ドラゴンだけも全滅できたのは上等だけどな。

「調子こいて周りを警戒しねーでグングン進軍するからだ馬鹿! なんの為に俺が斥候役をしてこの餓鬼を見つけたと思ってンだ!?」

 エターナルが跳び上がったと思ったら、トドマンの脳天に拳骨を落とした。

「いざ尋問しようとしたらオメーら、アホ面さげてどんどんこっちに来やがるンだもん…テメェらの首から上に乗っかってンのは西瓜か何かか!?」

 ヒデェ云われようだ…でも、呼吸を邪魔しない捕まえ方をしてたのは、俺に尋問する気だったのか…

「お前ら、あんま巫山戯ってっと…裸にひん剥いて商店街に晒すぞ、コラ!!」

 が、ガラ悪ィなあ…ある意味、処刑されるよりキツそうな罰だし…
 つーか、バランにもこんな口を叩けるほど偉いんだな、このエターナルって女…

「親の七光りだ…威張れたもんじゃねーよ!」

 エターナルは頭をガシガシ掻きながら俺に近づいてくる。

「まあ、なんにせよ…万事休すだな? たった一人で俺達の足止めに来るたァ見上げた根性だが、裏を返せば俺達を分断させにゃァ抵抗できないほど疲弊してるって事だよなァ?」

 チクショウ…見抜いてやがる…

「ならその策、乗ってやる…おい、ヒゲ! トド! ここは俺と槍男に任せてテメェらはルーラで先に行け!」

「わ、ワシもですか? それでしたらワシとラーハルトがこの場に残り、バラン様とエターナル様がテランへ向かった方が…」

「俺はもう何度もテランへ行ってっから、ルーラを使えば一瞬で追いつく…テメェらはどう見てもルーラを使えそうにねーし、どうやって素早く合流する気だ?」

 クソ…暗に分断させても無駄だって云ってやがる!!

「分かりました…行くぞ、ボラホーン!」

「ハハッ!!」

 バランとトドマンがルーラで飛ぶのを見て、俺も慌ててルーラで追おうするが声が出ねぇ?

「悪いな…魔法使いにマホトーンは基本だろ?」

「容赦ないですね…相手はまだ駆け出しのヒヨッコではありませぬか?」

「ヘッ! テメェはアバンの使徒の怖さを知らねーからそう云えンだ…死を覚悟した人間ってのは恐ろしい力を発揮するからな…ましてやこの餓鬼はな?」

 うん? ダイならともかく、何で俺にまでこんな事を云うんだ?

「“窮鼠、猫を噛む”でしたか? 追い詰められたネズミは何をするか分からない…」

「そんな生易しい諺じゃ表わせねーよ、この餓鬼は…コイツには知恵がある…ロモスでのマホカトール然り、ダイのライデインを補助したラナリオン然り…」

 この女、ベンガーナで俺達と戦う前からの情報まで!

「悪いがお前とダイを分断できてこちらとしても助かってンだよ…もしテメェがテランで待機してたら、きっとダイ奪還の最大の障害になってただろうよ」

 随分と買い被ってくれるな…怖いくらいだぜ。

「だから…ここできっちり始末させて貰うぜ? お前さんの真の怖さは魔法力じゃなく、頭脳にあるンだからな…」

 エターナルが剣を振りかぶる。

「駄目押しにルカニを二発かけさせてもらう…安心しろ…これで剣が骨に遮られて首が切断できませんでしたって状況にゃァならねー…つまり、痛みを感じる事ァねェ」

 チクショウ! ルカニで防御力を下げられたせいか、人前で素っ裸にされたような心細さを感じるぜ!

「微動だにするなよ? どこを斬っても即死させる自信はあるが、できる事なら綺麗な死体にしてランカークスへ届けたいからな?」

 コイツ、俺の故郷まで調べてやがった!
 やっぱり今までの力押しできてた軍団長やハドラーとは一線を画す敵だ…バランやハドラーよりもコイツの方が怖いと思うぜ!

「あばよ!」

 なんてこった! 一人も倒せずにここで死ぬのか!?

「っと! 危ねェな…怪我でもしたらどうすンだ?」

 最期の瞬間がいつまで経ってもこないので、恐る恐る目を開けると、エターナルに剣を向けるヒュンケルと素手でヒュンケルの剣を掴むエターナルが見えた。

「…ケッ! よりによって一番助けられたくねえ野郎に助けられちまったぜ!!」

「そいつは悪いことをしたな…」

 相変らず狙ったようなタイミングで来やがるぜ!

「へっ…一応、礼だけは云っとくぜ…ヒュンケル」

 ん? いつの間にかマホトーンが切れてやがる! これでまた戦える!

「ヒュンケル? んー…ヒュンケルヒュンケル…」

 エターナルのヤツ、ヒュンケルの剣を掴んだまま、残った手の人差し指を顎に当てて考え事をしてやがる。

「ああ、思い出した。自分の師匠を親の仇と思い込ンで、仕舞いにゃァ人間全体を憎ンだ挙句、復讐の為に魔王軍に入ったってェ極端な思考を持った男か」

 いや、合ってんだけどよ…ものには云いようってもんがあるだろ?

「あんだァ? 裏切り者の軍団長とか…こ、こいつが魔剣戦士ヒュンケルとやらか! って云やァ満足なのか?」

 本当に生きてんのかって不思議に思える濁った目で胡乱げに俺を見つめながら、葉巻に火を着けるエターナル。

「くだんねェ事云ってねーで、今度は二人がかりでかかってこい…ヒゲがダイを取り戻すまで遊んでやらァ…なあ、ポップ?」

 コイツ…俺のことをからかってやがる…

「それにしてもポップ…随分と実力に見合わぬ無茶をやったものだな。お前一人で敵を食い止めようとは…!!」

 悪かったな…俺だってやりたくて一人でやったんじゃねーや!

「ダイが…ダイが記憶を消されちまったんだ! 親父の…バランによ!!」

「やはりダイとバランには血の繋がりがあったのか! それでバランはどうした!?」

「先にダイんところへ…行かれちまった!」

 俺の言葉にヒュンケルは、そうかと頷く。

「ならば、こんな雑魚どもに構っている暇はないな!!」

「ばっ…馬鹿野郎! 少なくともあの女は雑魚じゃねぇ!! 魔軍顧問エターナルっていって、バーンの娘だ!!」

「ほう…二度三度、ミストバーンから聞いた事がある…この世のあらゆる剣術、格闘術、魔法、戦略を研究しそれらを統合して一つの戦闘術を生み出した天才がいるとな…
 卓越した頭脳を持ちながら、自分より優れた人物がいれば頭を下げて教えを請い、自分に持ち得ぬ技量を持つ者がいれば礼を尽くして協力を願う謙虚さも持つとも…
 傲慢でありながら繊細で、粗野でありながら礼節に通じ、残酷でありながら根は優しく、奸計を巡らせる裏で馬鹿正直で明け透けで、好色でありながら恋愛には臆病…
 珍しく口を開けば、賛辞と愚痴が延々と続く…ミストバーンをしてここまで語らせるエターナルという人物には興味があったが、ここで会うことになろうとはな…」

「み…ミストバーンの野郎…帰ったら野郎の暗黒闘気を五割ばかり浄化してやる…」

 エターナルは顔を真っ赤にして葉巻の煙をブカブカふかせた。まるで自分の顔を隠そうとするかのように。

「まあいいや…挨拶代わりに、これでもどうだ!?」

 エターナルの両手の間に巨大熱量の柱が!? こ、これってまさか!?

「ポップ、飛べ!!」

 云われなくたって!! 俺はすぐにトベルーラで空中に逃げる。

「ベギラゴン!!」

 挨拶にベギラゴンを使うなんて、なんちゅーヤツだ…しかもハドラーのものより遙かにデカくて威力が桁違いだ!!

「精霊とダチになるとな…無詠唱でしかもメラ程度の魔法力消費で威力も増大するンだよ…友達ってェのは大事にするもんだよな」

 ほとんど反則じゃねーか!! 世の魔法使いが聞いたら首を括りたくなること請け合いだぜ…俺は括んないけど…
 だが、これで決まったとは思ってねーだろうな…あのエターナルの事だ…ヒュンケルの鎧の魔剣の事も知ってるはずだ!

「残念だが俺には魔法の類は一切通用しない!」

 ベギラゴンの熱が収まりきってない中、やはり鎧を纏っていたヒュンケルが飛び出しながら左手を突き出し、弓を引くように剣を持った右手を引いた。

「あの構えは!? こっちもいきなり大技かよ!?」

「ブラッディースク…!?」

 ズボッという間抜けな音を立ててヒュンケルが消えた。
 いや、違う…ヒュンケルの下半身が地面にめり込んでいやがったんだ…

「お…落とし穴?」

 確かラーハルトだったか? あの魔族が目を点にしてヒュンケルとエターナルを交互に見つめる。

「あーははははははははははははははははははははははははははっ!! 引っかかった! 物の見事に引っかかってやんのっ!!」

 エターナルは腹を抱えてヒュンケルを指差しながら爆笑している。

「ポップよぉ…俺が百獣魔団を取り込んだってダイから聞いてねーか? だったら今回だって有効利用するのが自然だろう?」

 ニタニタ笑うエターナルの足下にはスコップを肩に担いだいたずらモグラの群れが整列していた。

「くっ…足が抜けん! おのれ、卑怯な手を!!」

「卑怯で結構…その気になれば穴の底に槍を仕込む事ができたんだ…むしろ慈悲深いと感謝して欲しいくらいだぜ?」

 エターナルはヒュンケルの右手を蹴って剣を飛ばしてしまう。

「それ以前に落とし穴があるかも知れないなァって警戒しなかったお前さんが悪い…否、未熟なだけだな」

 ヒュンケルの背後に回ったエターナルは兜を外すとそのまま頭の上に腰を下ろした。
 なんちゅー羨ましい…いやいや、プライドの高いヒュンケルには酷い仕打ちだぜ…

「ザリガニみてーだな? 甲冑が邪魔で後ろに手が回らねーってか?」

「おのれぇ…男子の頭に尻を…」

「ま、これもお前らアバンの使徒の姿から得た教訓だ…たとえ一つ一つの力は弱くとも、それを束ねればどんな強大な敵も倒せると…そんな良いお話でした」

「オハナシ、オハナシー♪」

「ターサンノオハナシ、タメニナルー♪」

「イエーイ♪」

 魔王軍の中でも最強レベルの大幹部がいたずらモグラと嬉々としてハイタッチをかわす姿はそうそう見られないだろうな…

「さて…」

 おもむろに立ち上がったエターナルの手には青い物体があった。とんがった頭、どんぐりまなこ、緊張感のない口元…
 紛れもないスライムだった。

「なァおい? スライムの食事って見た事あるか? 結構エゲツないぜェ? 全身で獲物を取り込んで、分泌される消化液でゆっくりと溶かすんだ…」

 エターナルは両足でヒュンケルの両手を踏むと、ゆっくりスライムをヒュンケルの顔に近づけていく。

「くたばりやがれ…魔剣戦士ヒュンケルはいたずらモグラとスライムによって倒されましたって、魔界で永遠に語り継がせてやるよ…」

「させるか!」

 俺は持ちうる魔法力を使い猛スピードでエターナルに体当たりをしかける。

「甘ェよ!」

 寸でのところでかわされちまったが、計算通りだ!
 俺は剣を拾うとヒュンケルに向かって投げた。

「覚えたての魔法…まさか味方に向かって撃つことになるなんてな! イオ!!」

 俺が放ったイオはヒュンケルの周囲に着弾し穴を広げる。

「でかしたぞ、ポップ!!」

 すかさずヒュンケルは穴から抜け出し剣を構える。

「随分と舐めた事しやがって…だがこれで正真正銘の二対二だぜ…っていねぇ!?」

 どこを見てもラーハルトの姿しかなく、エターナルは影も形もなかった。

「クソ! またどこかに隠れやがったのか?」

「いや…もうエターナル様はここにはいらっしゃらない…」

「なんだと?」

 ラーハルトは少しばかり疲れたような顔をして槍を構える。

「たった今、悪魔の目玉から連絡があってな…テランの様子がおかしいらしい…なので俺が後の始末を買って出て、エターナル様にはテランへお急ぎ願ったのだ」

「テランの様子が? どういう事だ!?」

「さぁな…詳しいことは知らされてはいないが、出世の為なら何でもすると悪評を取るザボエラとやらが血相を変えてバラン様の援護を要請するからには只事ではあるまい」

 ラーハルトは槍を頭上に掲げると、ヒュンケルと同じく『鎧化(アムド)』と叫んだ。

「なんてこった…ヤツの槍もヒュンケルのと同じ武具だったのか…」

「悪いが急を要するようだ…お前達二人をさっさと片付けて俺もバラン様の救援に向かわせてもらうぞ!!」

 ここに同じ作者の武具を使う剣士と槍使いの死闘が幕を上げた。
 だがな、急いでるのはこっちも同じだ。さっさと片付けたいってのはこちらの台詞だぜ!!
 待ってろよ、ダイ!! 何が起こってるのか分からねぇが、すぐに助けに戻ってやるからな!!








 あとがき

 バラン編、まだまだ続きます。予定ではあと二回…三回…四回ってことはないと思います(汗)
 今回の戦闘、ヒュンケルには悪いけどギャグに走りました。ずっとシリアス続きだったのでガス抜きを…
 まあ、ターさん自身、普段は巫山戯てるけど、決める時は決めるってコンセプトのキャラだったのに、ギャグが少なかったですからね(苦笑)
 バラン編もいよいよ佳境。次回は今まで以上にオリジナル展開が出てきますがなにとぞお付き合いを…

 それではまた、次回にて




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