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No.15280の一覧
[0] zeropon![ももんが](2010/12/08 10:17)
[1] 第壱話 神?出現[ももんが](2010/12/10 20:15)
[2] 第弐話 神との遭遇[ももんが](2010/12/07 19:44)
[3] 第参話 げっと あ ぶれいく ふぁあすと[ももんが](2010/12/07 19:46)
[4] 第四話 『ゼロ』の使い魔[ももんが](2010/12/03 20:03)
[5] 第五話 撃滅!青銅のギーシュ![ももんが](2010/12/10 20:08)
[6] 第六話 one day of the harukigenia[モモンガ](2010/12/10 20:10)
[7] 第七話 『土くれ』のフーケ[モモンガ](2010/12/10 20:13)
[8] 第八話 フーケ追撃 [モモンガ](2010/01/05 16:01)
[9] 第九話 『生命の芽』[モモンガ](2010/01/05 16:10)
[10] 第十話 真夜中の訪問者[ももんが](2010/03/14 20:54)
[11] 第十一話 『襲撃の夜』[ももんが](2010/01/08 14:42)
[12] 第十二話 です おあ だい[ももんが](2010/01/08 14:44)
[13] 第十三話 hero is dead[ももんが](2010/01/24 14:43)
[14] 第十四話 任務達成?[ももんが](2010/03/14 20:55)
[15] 第十五話 超絶望への裏切り[ももんが](2010/01/08 14:50)
[16] 第十六話 えいゆうのたまご[ももんが](2010/01/22 15:13)
[17] 第十七話 HERO NEVER DIES[ももんが](2010/03/14 20:56)
[18] 第十八話 トリとロボ[ももんが](2010/01/30 14:35)
[19] 第十九話 激突!『英雄』対『閃光』[ももんが](2010/03/14 15:58)
[20] 第二十話 超希望への脱出劇 前編 サブタイトル…用法用量を正しく守ってお使いください…[ももんが](2010/03/14 16:11)
[21] 第二十一話 超希望への脱出劇 中編 サブタイトル…夢は夜開く…[ももんが](2010/03/14 20:57)
[22] 第二十二話 超希望への脱出劇 後編 サブタイトル…老兵は死なず…[ももんが](2010/04/29 08:00)
[23] 第二十三話 ぷりんす みーつ ぷりんせす[ももんが](2010/07/11 16:57)
[24] 第二十四話 ギーシュ暁に死んでます[ももんが](2010/07/11 16:59)
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[15280] 第二十三話 ぷりんす みーつ ぷりんせす
Name: ももんが◆c7735edd ID:36ebde02 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/11 16:57
さて、問題です。
出港準備もままならない状態の空船を強奪した際に生じる弊害は?

答え。

風石が足りない。

王都守備にあたっていたマンティコア隊隊員達は今日もまったりと巡回していた。
本日は生憎の曇り空。毛が湿気ると、ぐずる愛マンティコア達をなだめつつの、昼の巡回。
それももうすぐ終わり、ああ、あとは夕方だけだと、今日の夕飯はなんだろうか、
皆で酒でも飲みに行こうか、と話していた最中、それは現れた。
東の空。今は動乱の真っ最中であろう、アルビオンがあるその空の雲を突き破り、一隻の空舟が現れたのだ。
その大きさはこのトリステインにある、あらゆる戦列艦より大きい。
そんなものがまっすぐ王都に向かっている。それを許せば当たり前に責任問題だ。
慌てた。全員が慌てた。特に隊長の慌て方は尋常じゃなかった。
面子、責任、そんなものの前に彼の頭に浮かんだのが、前マンティコア隊隊長の顔だったからだ。
殺される、いや消される。消滅させられる。

「あ、あれを止めろオオオオオオっ!!」

なによりも、だれよりも己自信に号令をかけ、全速力で船に向かう。
近寄るとその船の異様さがわかる。
その帆の先端にどこでも見たことのない一つ目を描いた旗をひらめかせ、
その甲板には乗員としてはあまりにも多くの人間、中にはメイドや使用人のような格好をした人間を乗せ、
そしてなにより速い。速すぎるのだ。どう考えても王都付近に着陸とか、
王都に乗り込むというよりは、このまま特攻するかの如き速度。
もちろんこんなものが王都に特攻をかければ莫大な被害がでることだろう。
ふと、船首を見れば一人の男が仁王立ちしているではないか。
トリスタニアを恐怖に陥れようというのに、なんというあつかましさ。
そんなトリステインを危機に陥れる悪漢の面を拝んでやろうと、
さらに近寄って、その男の顔を確認し、隊長は驚愕に目を見開いた。
その悪漢の顔を見たことがあったからだ。
最後に見たのはラグドリアンで行われた晩餐会。そしてその顔があったのは、
来賓席の最上。王族クラスのみが座ることが許されるその場所。
そして自分の主たる王女アンリエッタと仲むつまじく離すその姿は、いずれ我が君との婚礼を疑わないものだった。
隊長はマンティコアに鞭を入れ、その身を船の前へ。別にこの身をもって止めようというわけではない。
傍らを業っ!と音を立て船が通り過ぎる、その一瞬、ふわりとその身をマンティコアと一緒に躍らせ、
船首に立つ男を越え、その後ろの甲板へ降り立つ。
突如現れたマンティコアに驚きの声を上げる船員、乗員一同を尻目に、隊長は急いでマンティコアから降り、
男の背後で跪いた。

「ご無礼を!アルビオンが皇太子、ウェールズ・チューダー様でございましょうか!?」
「……」

無言。ウェールズは突如現れたマンティコアにも隊長にも一切動じない。

(振り向きもせぬ!この事態でもまったく動じていないということか!つまりこれはこのお方の考える事だと言うのか?!)

まさに王の風格。王の威厳。王の…

「ああ、その人気絶してますよ」
「へ?」

隊長が皇太子のおそろしさにぷるぷると震えていると、後ろから声がかかった。
振り向けば七色の羽をつけた目玉がいた。

「…気絶、されてるのか?」
「ええ」
「立ってらっしゃるが?」
「服に固定化かけてるんですよ」
「なんでそんなことを?」
「なんでも『愛しのアンリエッタに無様な姿はみせられん!』らしいです」
「なんだそりゃ」

跪いてまで挨拶した自分が馬鹿みたいじゃないかと、考えつつ目の前の目玉に質問を続ける。

「それで…」
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はヴァリエール侯爵令嬢ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様が
使い魔、パタポン族のメデン、と申します」
「侯爵令嬢?何故にそのような方がこの船に?」
「姫様からの秘密任務、これだけでご勘弁を」

(秘密任務…なるほど。それでウェールズ様がこのような場所におられるのも納得がいく…ん?)

「その肝心のルイズ様は…?」
「寝てます」

どういった神経を、と考えたところで、彼は思い出した。ヴァリエール侯爵に嫁いでるのはほかならぬ、前マンティコア隊隊長ではないかと。
そのご息女ということならばそういった神経をしてるんだろう。と、ここまで考えて現状がそんなことを考えてる場合ではないことをを思い出す。

「ってこんなのんびりやってる暇じゃあないんだよっ!!なんで、この船はこんなスピードで王都に向かってるんだ?!」
「はあ、それには深い理由がありまして…」

そういうとメデンはごうごう風が吹く中、語り始めた。

-----三時間前
ニューカッスルから100リーグ、トリステインまで220リーグ地点の空の上

『王子、じゃなかった王』
『なにかね?メデン君』
『風石がたりません』
『…積んでなかったのかね?』
『ええ』
『…確認しとかないといけないのではそこは?』
『時に王は風のスクウェアとお聞きしましたが?』
『ああ、それがどうか…』
『…』
『…』
『…』
『…私が風石の代わりをしよう』
『よろしくお願いします。他の風のメイジの方は既に行ってますので』

「まあ50リーグあたりで他の方は軒並みダウンしたんですが、王子だけは愛の力で頑張っていただきました」

あまりにも馬鹿げた移動方法に開いた口がふさがらない隊長。風石の代わりなど、コルベッドと呼ばれる軽装船か、
ほんとにヨットクラスのものを動かす程度の話しか聞いたことはない。
それなのに戦列艦を200リーグも飛ばすなぞ、完全に人間をやめてる。

「ん?ということは王子がお一人で支えていたのだよな?」
「そうですね」
「王子は?」
「気絶してますね」
「誰が動かしてるのだ?」
「アルビオン貴族の方は大体魔力がつきまして」
「それで?」
「実は同行者にグラモン伯爵のご子息がおられまして」
「ふむふむ」
「(重度の)怪我をされてましたが(叩き起こして)おきて頂き、
(無理やり)レビテーションで持たしてもらってたのですが」

その時、ぱたんっと、船室に入る扉が開き、鋼の腕のパタポンが何かをずるずると引きずりながら現れた。
パタポンが引きずっているのはぐったりとした金髪の少年。その右手をひっぱてメデンの元へ行き、
ごとん、っと落とす。その間、少年は微動だにしない。呼吸運動を示す胸の動きすらしない。
その死体のようなものはギーシュ・ド・グラモンという名前だった。

「メデンさまー。ギーシュの心臓とまったー」
「ダメだったようです」


ー同時刻、トリスタニア王宮ー

「ふう」

トリスタニアの王宮が一室。船が丸々一隻入ってしまいそうなほどに広大なその中庭を見渡せる部屋。
その窓際の机の上に憂鬱成分入りのため息が放出される。その視線を気付けばすっかり冷め切った紅茶のカップに注ぎながら。

「大丈夫かしら、ルイズ、私のお友達は」

ルイズ達に秘密任務を頼んだ張本人はこの美しい中庭、ではなく、その上に見える東の空を眺める。
空に見るは、今、危機の中に放り込んでしまった親友、そしてその中で戦う自分の想い人。よくよく思い出してみれば、
手紙一つ持たせないで行ってしまった彼女達。ちゃんと会えないで門前払いされた可能性のほうが、高い気がするのはきっと気のせいだろう。そこらへんはなんとかルイズがやってくれてるはずと、
スーパーアバウティな考えでポジティブにシンキングするが、最後の一つが彼女を陰鬱にさせる。

(ウェールズ様は、脱出してくれたでしょうか…)

アンリエッタは気高く、誇り高いあの人が、王の責務を果たさねばと、城に残り、
一人戦う姿を想像してしまう。
気付けばまた顔を下げてカップに視線を注いでいた。

「ふう」

と、もう一度ため息を吐き、また空を見上げ気付く。空にポツリ、と黒点がある。
と気付いた瞬間には、

ドンっ!!!

っと中庭の中央に砲弾の如く降ってきて激突。凄まじい爆砕をもたらしつつ、ワンバウンド。
そのまま、まっすぐとアンリエッタのほうに高速回転しながら飛んでくる。
あまりのことにあっけに取られたアンリエッタにはいまさら杖で防御できず。
このままこの砲弾に命を刈られるのかと、おぼろげながらに考えてしまったところで、
砲弾は、その表面から四本の棒を突き出す。そのうちの二本をアンリエッタに衝突する一歩手前の地面に
突き刺す。がりがりと白亜の床や、整備された芝生を削り取り、そのまま勢いを殺し、ぴたりと止まったのは
アンリエッタの目の前。
黒い砲弾と見間違えたのは黒い身体だった。
突き出た長い棒は手足だった。そこにいたのは、その黒い身体に細長い手足を生やし、
その顔?に仮面をつけた一体の生き物。

「あなたは…ルイズの使い魔さん?」

それはルイズが出立したときにみた仮面をつけたルイズの使い魔。
それが妙な、前にしかつばがない帽子をかぶって、窓の前にいた。
そしてよっこらせ、と窓の縁に上ってくるとアンリエッタに向かってこういった。

「おるかー?」
「へ?」
「あんりえったさんおるかー?」
「え、あ。私が、アンリエッタ、ですが?」
「おお、おったか」

そう言ってごそごそとどこからか一枚の紙とペンを出してアンリエッタに渡す。

「ここやで」

とんとん、と机の上におかれた紙の空欄を指すルイズの使い魔。
アンリエッタは俗に言う世間知らずではあるが、公務の過程で何度か見たことのある紙、書類だった。
すなわち伝票。伝票の一番上には受領伝票と書かれている。

「はよしてやー」
「あ、すいません、ここですね」

急かされてしまい、さらさらととりあえずサインをしてしまうアンリエッタ。

「これでいいかしら?」
「ん、ええでー、ちょっとまっててなー。今荷物来るから」
「はあ」
「王女様!ご無事ですか!!」

バアアアンっと部屋の扉が開け放たれ、おっとり刀で現れたのは王宮警備隊。
手に手に杖を持った彼らは、全員が歴戦の勇士らしいがアンリエッタは戦ってる彼らを見たことがない。

「な!何だ貴様!アンリエッタ様から離れろっ!」

ぞろぞろと現れた彼らが見つけたのはあやしい生き物。完全に警戒対象であるその生き物は、彼らを一瞥もすることなく、
窓枠からひらりと降り立った。

「逃がすな!追え、追うんだ!」

ばたばたとあわただしく扉から出て行く衛兵。そしてふたたび最初と同じ一人に戻ったアンリエッタはぽかん、としていたが、
ふと、机の上にある伝票。それを手に取りよく見る。
伝票に書かれた送り先はとりすていん
伝票に書かれた送り元はあるびおん
伝票が書かれた荷物の名前は…うぇーるず・ちゅーだー

…ごごごごごごごごごごごごごごご

音が聞こえる。窓の外から、東の空から。顔を上げ窓の外、東の空、ルイズの使い魔が降ってきた方角、

ごごごごごごごごごごごごごごごご!!

それを三度仰ぎ見る。
そこにはおおきなおおきな空船がいた。
世界に類を見ないほどその巨大な船体はそれゆえに限定される。
アンリエッタが即座に思い出す。最後に、あのラグドリアン湖で自慢げに話していた、
あの人の、ウェールズ様のお気に入りの戦艦の話をおもいだす。
嬉しそうに語った『ロイヤル・ソブリン』という名を思い出す。

「なんだあれは!」
「マンティコア隊は何をしているんだっ!?」

中庭にルイズの使い魔をおってきた警備隊の面々。
そしてやはり気付くのは空に浮かぶ巨大な船。
それがまっすぐやってくるのだ。騒がぬはずもなく、
そしてそれに向かい呑気に手を振る、奇怪な生き物は十二分に敵対勢力だった。

「貴、貴様があれをよびよせたのか!!」
「なんやー?あぶないでー」

警備隊…日替わりで魔法衛士隊が行っているそれの今日の責任者はグリフォン隊。
隊長がいないので本日は副隊長が取り仕切るその一団、十数名に上る、トライアングルとスクウェアの一団は
やっとこさ己が本分に従い、その生物に踊りかかった。

「おのれ!韻獣の類が!くたば…」
「西濃パンチ!」
「げぼら?!」
「ああ!副隊長!?」
「西濃キック!」
「あべし!?」
「西濃!ブラスタアアアアアアアアっ!!」
「「「ぎゃあああああああああ!」」」

踊りかかるグリフォン隊。
それを空を行くものは西濃パンチ。
地を走るものは西濃キック。
そして残りを西濃ブラスターで片付ける。
パタポン王国が滅びる前、栄華を誇っていた彼らの中に、伝説の運び屋集団がいた。
あらゆる場所にあらゆる荷物を届ける、受け取り拒否など許さない。
不法侵入、恐喝、脅迫、暴行、傷害。
荷物を届けるためならあらゆることを辞さない最強のその集団を誰もとめることなどできなかった。
前にしかつばのない奇妙な帽子をかぶった彼らをパタポン達は畏怖と尊敬と恐怖をこめてこう呼んだ。
…『SAY-NO』、と

「あほんだらは片付けたし、ほな…やろか」

死屍累々。グリフォン隊をわずか三十秒で片付けたヒ・ロポン。
もはや目前にせまりつつある『ロイヤル・ソブリン』に相対する。

「いっくでええ!変・態!やなかった変・身!!」

まばゆい閃光が中庭に走り、そのまぶしさにアンリエッタの目が一瞬くらむ。
しかしそれは一瞬。次にアンリエッタの目が捕らえたのは、先ほど、自分の腰ほどしかなかった使い魔が、
一瞬にして自分と同じほどの大きさの巨体に変わった姿だった。

「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」

そして今度は腰を落として力み始める使い魔。その側頭部から何かがにょきにょき生え始めた。
それはとても鋭利な、黒々とした角。
雄牛の如き、いや、雄牛の角そのものがにょきにょきと生えてきたのだ。
その巨体はデカポン、それは山を砕くといわれたほどの剛力の体。
その角は猛牛の体現『モギュギューン』、それは海を割るといわれたほどの強力の証。
それよりもなによりも、ヒ・ロポンはとっても強いのだ。なぜなら彼は…『ヒーロー』なのだから。

そして…一匹と一隻は衝突した。

ドゴ
んッ!!

すさまじい轟音。
しかし、それはそれ以外の音を出さずに一回こっきり。
アンリエッタはぽかんとしてしまった。そのあまりの現実感のなさに。
中庭に奇妙で、巨大なオブジェができていた。
斜め32度で固定された戦艦のオブジェ。その台座はどうも地中に没してしまっている。
が、そこから除くのは日本の黒い棒と、帽子。
そしてその黒い棒がゆっくりと地中に消えていくのにあわせて、オブジェは傾いていく。
ゆっくりと、ゆっくりと傾いていったそれは最後、

ずし…ん

と静かな地響きを立て、『入港』した。
あまりにも現実離れした光景。ただただ誰もが唖然として動けない中、
ふと、アンリエッタは気づく。
巨大な、見上げるような高さの船の船首に人影がある。
刹那、曇り空に切れ目が入り、そしてそれは、船首の人影を照らし出す。
きらり、きらり。まるで流れる黄金のごとき美しき金髪を照らし出す。
ぽつり、とアンリエッタは声を出す。

「ウェールズ…様?」

ぴくり、っと影が動いた。
数瞬の後、ひらりっと影が舞い降りる。
無駄に三回転のひねりと、前宙を決め、無駄にかっこいいポーズで降り立つ影。
それを見計らったかのようにどこからともなく白百合の花びら。
まあ、どこからというのはアンリエッタの大切に育てていた中庭のしらゆりが、衝撃で花壇ごと爆砕し、
吹き上げられた花の残骸なのだが、それすらも感動的な演出に、文字通りの花を添える。

「あ、あああ、ああ」

思わず立ち上がるほどの驚きは声にならない。ならない声には『愛』や『恋』が詰まっているのだろう。
しかし、声には出ない。
舞い降りた影はゆっくりと窓辺にやってくる。そしてその蒼い瞳でアンリエッタを見つめただ一言告げる。

「風吹く夜に」

それはあの日、あの時、あの場所で、二人で決めた、二人だけの合言葉。
アンリエッタは、もう何も言わず、ただ窓越しに愛しのウェールズ様を抱きしめた。


「あらあら感動的ですねえ」

旧『レキシントン』現『ロイヤル・ソブリン』船首、その欄干から下を見下ろすメデンは抱き合うラブラブオーラ満載の
アンリエッタ搭載型ウェールズを見ながら言う。というか、声を聞いただけで復活するウェールズの非常識な回復力にあきれる。
その後ろの甲板で泡を吹いているマンティコア隊長ド・ゼッサール。
流石にいかなマンティコア隊隊長でもこの入港は激しすぎたらしい。
ほとんどの乗員が目を回して気絶。かろうじて伸びなかったものは今の自分の状況を再確認。
生還を果たしたことに涙と歓声をあげていた。
例外を上げるとしたらギーシュだけだろう。なんせ死んでいる。
否、心臓が停止した状態だ。

「メデンさまー」
「どうしました?シ・ショウ」
「ギーシュどうするの?」
「うーん、まあ生ゴミにするには可哀想ですね」
「どうした?」

気付けばメデンの横にはヒ・ロポンが立っていた。
秘宝『作業帽』は既に被っていない。あれは強力ではあるが、
荷物の送付に関することでしか力が発揮されないのだ。

「ヒ・ロポン、それをパタポン砦に持ってかえってパタポン砦の治療室に放り込んでください」
「まにあうか?」
「とうっ!」

次の瞬間、メデンは掛け声と共に、錐揉み回転。ギーシュの上まで来ると、

「秘技!スカイ・ニー!」
「げぼら!」

掛け声のままギーシュの胸、心臓付近に落下の勢いで膝を突き刺す。
殺人心臓マッサージによるショックはギーシュの心臓を再起動させた。

「ふう、これでしばらくは持つでしょう」
「ひゅー…ひゅー…」

いろいろ駄目な気がする常識パタポンであるヒ・ロポンだが、パタポン自体がアバウトな存在なので、
その駄目な部分をスルーする。

RIDE OOOOOOONN![TORI-PON !]

ばっさばっさ……羽音が響く中庭の上。中庭には他の警備兵、衛士、もろもろの人間が現れ始めており、
中庭の船を見ては驚き、その下の抱き合う二人をみてまた驚く。

「さてさて、これから忙しくなりますねえ」

裏切りものに『奪われた』手紙、隠しようもない方法で『亡命してきた』アルビオン王子、『偶然』にもゲルマニアとの婚姻が危ぶまれる事態。
間違いなくこの国は大荒れになることだろう。

「まあ、とりあえず…」

クルリ、っとメデンは振り返り、『ロイヤル・ソブリン』の船室を目指す。
いま、何よりも大事なこと、そう。

ねぼすけさんな己が主を起こすために。



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