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No.15685の一覧
[0] フォンフォン一直線 (鋼殻のレギオス)【一応完結?】[武芸者](2021/02/18 21:57)
[1] プロローグ ツェルニ入学[武芸者](2010/02/20 17:00)
[2] 1話 小隊入隊[武芸者](2011/09/24 23:43)
[3] 2話 電子精霊[武芸者](2011/09/24 23:44)
[4] 3話 対抗試合[武芸者](2010/04/26 19:09)
[5] 4話 緊急事態[武芸者](2011/09/24 23:45)
[6] 5話 エピローグ 汚染された大地 (原作1巻分完結)[武芸者](2010/05/01 20:50)
[7] 6話 手紙 (原作2巻分プロローグ)[武芸者](2011/09/24 23:52)
[8] 7話 料理[武芸者](2010/05/10 18:36)
[9] 8話 日常[武芸者](2011/09/24 23:53)
[10] 9話 日常から非日常へと……[武芸者](2010/02/18 10:29)
[11] 10話 決戦前夜[武芸者](2010/02/22 13:01)
[12] 11話 決戦[武芸者](2011/09/24 23:54)
[13] 12話 レイフォン・アルセイフ[武芸者](2010/03/21 15:01)
[14] 13話 エピローグ 帰還 (原作2巻分完結)[武芸者](2010/03/09 13:02)
[15] 14話 外伝 短編・企画[武芸者](2011/09/24 23:59)
[16] 15話 外伝 アルバイト・イン・ザ・喫茶ミラ[武芸者](2010/04/08 19:00)
[17] 16話 異変の始まり (原作3巻分プロローグ)[武芸者](2010/04/15 16:14)
[18] 17話 初デート[武芸者](2010/05/20 16:33)
[19] 18話 廃都市にて[武芸者](2011/10/22 07:40)
[20] 19話 暴走[武芸者](2011/02/13 20:03)
[21] 20話 エピローグ 憎悪 (原作3巻分完結)[武芸者](2011/10/22 07:50)
[22] 21話 外伝 シスターコンプレックス[武芸者](2010/05/27 18:35)
[23] 22話 因縁 (原作4巻分プロローグ)[武芸者](2010/05/08 21:46)
[24] 23話 それぞれの夜[武芸者](2010/05/18 16:46)
[25] 24話 剣と刀[武芸者](2011/11/04 17:26)
[26] 25話 第十小隊[武芸者](2011/10/22 07:56)
[27] 26話 戸惑い[武芸者](2010/12/07 15:42)
[28] 番外編1[武芸者](2011/01/21 21:41)
[29] 27話 ひとつの結末[武芸者](2011/10/22 08:17)
[30] 28話 エピローグ 狂いし電子精霊 (4巻分完結)[武芸者](2010/06/24 16:43)
[32] 29話 バンアレン・デイ 前編[武芸者](2011/10/22 08:19)
[33] 30話 バンアレン・デイ 後編[武芸者](2011/10/22 08:20)
[34] 31話 グレンダンにて (原作5巻分プロローグ)[武芸者](2010/08/06 21:56)
[35] 32話 合宿[武芸者](2011/10/22 08:22)
[37] 33話 対峙[かい](2011/10/22 08:23)
[38] 34話 その後……[武芸者](2010/09/06 14:48)
[39] 35話 二つの戦場[武芸者](2011/08/24 23:58)
[40] 36話 開戦[武芸者](2010/10/18 20:25)
[41] 37話 エピローグ 廃貴族 (原作5巻分完結)[武芸者](2011/10/23 07:13)
[43] 38話 都市の暴走 (原作6巻分プロローグ)[武芸者](2010/09/22 10:08)
[44] 39話 学園都市マイアス[武芸者](2011/10/23 07:18)
[45] 40話 逃避[武芸者](2010/10/20 19:03)
[46] 41話 関われぬ戦い[武芸者](2011/08/29 00:26)
[47] 42話 天剣授受者VS元天剣授受者[武芸者](2011/10/23 07:21)
[48] 43話 電子精霊マイアス[武芸者](2011/08/30 07:19)
[49] 44話 イグナシスの夢想[武芸者](2010/11/16 19:09)
[50] 45話 狼面衆[武芸者](2010/11/23 10:31)
[51] 46話 帰る場所[武芸者](2011/04/14 23:25)
[52] 47話 クラウドセル・分離マザーⅣ・ハルペー[武芸者](2011/07/28 20:40)
[53] 48話 エピローグ 再会 (原作6巻分完結)[武芸者](2011/10/05 08:10)
[54] 番外編2[武芸者](2011/02/22 15:17)
[55] 49話 婚約 (原作7巻分プロローグ)[武芸者](2011/10/23 07:24)
[56] 番外編3[武芸者](2011/02/28 23:00)
[57] 50話 都市戦の前に[武芸者](2011/09/08 09:51)
[59] 51話 病的愛情(ヤンデレ)[武芸者](2011/03/23 01:21)
[60] 51話 病的愛情(ヤンデレ)【ネタ回】[武芸者](2011/03/09 22:34)
[61] 52話 激突[武芸者](2011/11/14 12:59)
[62] 52話 激突【ネタ回】[武芸者](2011/11/14 13:00)
[63] 53話 病的愛情(レイフォン)暴走[武芸者](2011/04/07 17:12)
[64] 54話 都市戦開幕[武芸者](2011/07/20 21:08)
[65] 55話 都市戦終幕[武芸者](2011/04/14 23:20)
[66] 56話 エピローグ 都市戦後の騒動 (原作7巻分完結)[武芸者](2011/04/28 22:34)
[67] 57話 戦いの後の夜[武芸者](2011/11/22 07:43)
[68] 58話 何気ない日常[武芸者](2011/06/14 19:34)
[70] 59話 ダンスパーティ[武芸者](2011/08/23 22:35)
[71] 60話 戦闘狂(サヴァリス)[武芸者](2011/08/05 23:52)
[72] 61話 目出度い日[武芸者](2011/07/27 23:36)
[73] 62話 門出 (第一部完結)[武芸者](2021/02/02 00:48)
[74] 『一時凍結』 迫る危機[武芸者](2012/01/11 14:45)
[75] 63話 ツェルニ[武芸者](2012/01/13 23:31)
[76] 64話 後始末[武芸者](2012/03/09 22:52)
[77] 65話 念威少女[武芸者](2012/03/10 07:21)
[78] 番外編 ハイア死亡ルート[武芸者](2012/07/06 11:48)
[79] 66話 第十四小隊[武芸者](2013/09/04 20:30)
[80] 67話 怪奇愛好会[武芸者](2012/10/05 22:30)
[81] 68話 隠されていたもの[武芸者](2013/01/04 23:24)
[82] 69話 終幕[武芸者](2013/02/18 22:15)
[83] 70話 変化[武芸者](2013/02/18 22:11)
[84] 71話 休日[武芸者](2013/02/26 20:42)
[85] 72話 両親[武芸者](2013/04/04 17:15)
[86] 73話 駆け落ち[武芸者](2013/03/15 10:03)
[87] 74話 二つの脅威[武芸者](2013/04/06 09:55)
[88] 75話 二つの脅威、終結[武芸者](2013/05/07 21:29)
[89] 76話 文化祭開始[武芸者](2013/09/04 20:36)
[90] 77話 ミス・ツェルニ[武芸者](2013/09/12 21:24)
[91] 78話 ユーリ[武芸者](2013/09/13 06:52)
[92] 79話 別れ[武芸者](2013/11/08 23:20)
[93] 80話 夏の始まり (第二部開始 原作9巻分プロローグ)[武芸者](2014/02/14 15:05)
[94] 81話 レイフォンとサイハーデン[武芸者](2014/02/14 15:07)
[95] 最終章その1[武芸者](2018/02/04 00:00)
[96] 最終章その2[武芸者](2018/02/06 05:50)
[97] 最終章その3[武芸者](2020/11/17 23:18)
[98] 最終章その4[武芸者](2021/02/02 00:43)
[99] 最終章その5 ひとまずの幕引き[武芸者](2021/02/18 21:57)
[100] あとがき的な戯言[武芸者](2021/02/18 21:55)
[101] 去る者 その1[武芸者](2021/08/15 16:07)
[102] 去る者 その2 了[武芸者](2022/09/08 21:29)
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[15685] 10話 決戦前夜
Name: 武芸者◆8a2ce1c4 ID:9a239b99 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/22 13:01
野外訓練はいつもどおりに終了した。
レイフォンが入隊したころに比べれば、現在の十七小隊の動きは良くなったように思える。
後方から火力支援を行うシャーニッドの視線を感じる事が出来るようになったし、フェリもやる気があるようには見えないが、それでも情報の伝達が遅れると言った事はなかった。
自動機械との模擬試合を三度行い、3戦全勝。終了までの時間も申し分なかった。
だけどニーナは、浮かない表情でどこか満足していないようだった。

「では、これで終了だ」

「ん、お疲れ~」

「お疲れ様です」

ロッカールームに戻っての反省会もそこそこに、ニーナが終了を告げる。
すぐにシャワールームに移動していくシャーニッドと、やる気がないためにたいした汗もかかず、荷物を持って出て行くフェリの姿はいつもどおり。
レイフォンもいつもどおりに、練武館に戻ろうとした。
それは、隊内でも緊密な動きを求められる前衛だからと言うことでニーナと始めた居残り訓練であり、それが終わった後に図書館や読書などで時間を潰していたフェリと一緒に帰るのが日課だったが……

「レイフォン」

そのいつもどおりの日課を行おうとしたレイフォンに、ニーナが声をかける。

「はい?」

「今日は、このままあがっていいぞ」

「え?」

「しばらく、2人での訓練は中止だ」

「どうしてです?」

「必要ないだろう」

あっさりとニーナは言い切る。その言葉に、レイフォンは絶句した。
いつものニーナからは考えられない言葉であり、さっきの模擬試合でも一応形にはなっていた連携だが、それはあまりにも無骨な形だったのだ。
お互いの咄嗟の動きが食い違わないだけで、コンビネーションや連携と言うには程遠い。
故に、ニーナの『必要ない』と言う言葉が信じられなかった。
彼女の求めているものは、そのコンビネーション、連携、チームワークだと思っていたからだ。

「とにかく、訓練は中止だ。あがっていいぞ」

そう言ってレイフォンに背を見せるニーナは、まるで拒絶しているかのようだった。

「ニーナ……」

そんなニーナを咎めるように声をかけるハーレイ。
だが、レイフォンは案外すんなりと、

「じゃあ、失礼します」

そう言って、ロッカールームを出た。
本当にあっさりして、たいして気にしてないような反応だった。





「何をしているんだろうな、私は?」

あっさりと、たいして気にした風もなく返事をし、レイフォンによって閉じられた扉の音はニーナにとって、まるで関係性そのものを閉じられたようで、乾いた音が胸を突いた。
その痛みを、ニーナは首を振って追い払う。
わかってはいる。わかってはいても、こんな言葉を吐かなくてはならない自分はどうなんだろうか?

「迷うな」

出口の見つかりそうにない思考の迷路に入り込みそうになり、ニーナは思考を止めた。
未来は推測する事が出来ても、予言する事は出来ない。絶対に、確実にわかっていることは、どんな人間でも死ぬと言う事実だけだ。
それだって何時、どうやって死ぬのかはわからないが……

(そして私の未来は、今だ推測すらも怪しい段階だ)

ならば、今は自分が正しいと思ったことをやる。
ただそれだけだった。

「さて、練武館に戻るか……」

あれだけ言ったのだから、レイフォンはいないだろう。
……いたのなら、場所を変えるしかない。
そう思って、ニーナは歩き出した。




































夜が訪れ、そして深まる。
レイフォンは再び、野戦グラウンドへと来ていた。
夜だと言うのに照明の点いていないグラウンドは暗く、植えられた木々に潜む虫の声が微細に夜の気配を教えていた。
レイフォンの手には、ハーレイによって持ってこられた練武館で使っていた大きな剣が握られている。
その不恰好な剣を握り締め、夜の幕に覆われて滲むようにしか見えない風景に目を慣れさせていく。

「ふっ」

呼気をひとつ。
内力系活剄を全身に走らせ、レイフォンは動いた。
まずは練武館でもやった基本の型。風のなかったグラウンドに、強風が巻き起こる。
剣の重さがレイフォンの重心を揺さぶり、それに合わせて重心の位置を修正していく。

剣の重さが起こす体の揺れを力任せに御すのではなく、その重さによる体の流れを制御する、利用する。
やがて、レイフォンはその場に止まるのではなく、グラウンドのあっちこっちに移動しながら剣を振った。
重さに引かれた方向に従って、グラウンドを無秩序に移動していく。やがて、その動きをコントロールしていく。
無秩序に、あっちこっちに移動していたレイフォンがグラウンドを、真っ直ぐと進んでいく。

そのころには、レイフォンの動きは最初のころとまったく違っていた。
剣を使う基本的な動作ではなく、剣を降ると同時に地面から足が離れ、体が浮く。
宙で体を回転させ、剣の重さを利用して一撃を放つ。
その一撃で起こる力の流れを、即座に次の一撃のための流れに変化させる。
それを繰り返しているうちに、レイフォンの足は殆ど地面には着いていなかった。

「………」

地面に剣を叩きつけ、レイフォンは動きを止めた。
今の一撃で砕かれた土砂を降らせる中、レイフォンは足に活剄を収束させる。


内力系活剄が変化、旋剄


脚力を強化し、真上に跳躍する。
宙に舞い上がったレイフォンは、更に剣を振る。
剣が起こす力の流れが、レイフォンをあっちこっちに移動させながら落下する。
着地、すぐさま跳躍。
何度もそれを繰り返していくうちに、滑空時間が少しずつ延びていく。
剣の重量により、力の流れを制御して空中で移動するのは、地面にいるよりも遥かに難しい。
だと言うのにレイフォンは、何度も繰り返す事でコツをつかんでいく。
それはまさに、飛んでいるかのような光景だった。

十数回目の着地で、レイフォンは跳ぶのをやめた。
長く息を吐き、剄を散らす。
終わりを察したのか、グラウンドに照明が点った。

「なんかもう……なんてコメントすればいいのかわからないね」

やって来たハーレイが、そうつぶやく。
その隣には、フェリとカリアンがいた。

「どうだい、感触は?」

ハーレイの言葉にレイフォンは、素直な感想を口にする。
それにハーレイが頷きながら、メモを取っていた。
その会話が一段落すると、カリアンが尋ねてきた。

「開発の方は、うまくいっているのかな?」

「そっちはまったく問題ないですよ。元々、基本の理論はあいつが入学した時から出来てたんだし、後は実際に作った上での不具合の有無。まぁ、微調整だけです。こんなものを使える人間がそうそういるなんてはずないから、作れる機会なんてあるとは思ってなかったんですけどね」

最初は研究者として嬉しそうに話していたハーレイだが、声が沈み、表情が曇る。
汚染獣の接近、正確にはツェルニが接近しているのだが、それは現在、今のところ秘密と言う事になっている。
だが、それは開発者達にまで秘密と言うわけにはいかないので、ハーレイ達開発陣には知らされていた。
その他に知っている人物といえば、生徒会幹部と、武芸長であるヴァンゼの所属する、ツェルニ最強と呼び声の高い第一小隊くらいだろう。
彼らには万が一の時のために、ツェルニの最終防衛ラインをやってもらう。
もっとも、それはレイフォンが敗北した場合の話であり、レイフォンが敗北した相手に彼等が勝てるとは思えないが……

なんにせよ、事が広がっては問題なので、知っているのはこれらの少数だ。
十七小隊の他の隊員、とは言ってもニーナとシャーニッドだけだが、彼らにもこれは打ち明けられていない。
レイフォンからもハーレイに、秘密にしてもらえるように頼んでいた。
ニーナなら絶対に付いて行くと言いそうな上、汚染獣戦においては足手まといにしかならないからだ。

「これも都市の運命だと、諦めてもらうしかないな」

「……そうですね、来て欲しくない運命ですけど」

ため息をひとつ吐き、ハーレイは無理やり表情の曇りを払った。

「そういえば、基本理論を作ったと言う彼は、見に来なくて良かったのかな?」

「あいつは変わり者なんで。鍛冶師としての腕と知識はすごいですけど、極度の人嫌いですからね」

「職人気質と言う奴なのかな?」

「そういうものなんですかね?変な奴で十分だと思いますけど」

「ははは、酷い言い方だ」

「会えば、きっとそう思いますよ」

カリアンとハーレイがそんな会話をしてグラウンドを出る途中、施錠をするためにカリアンと別れ、出口に着いたところでハーレイが先ほどの会話に出た『あいつ』が研究室にいるだろうからと、まだ名前も聞いていない開発者に会うために1人で錬金科にある研究室へと向った。
そんな訳で、街灯以外に光のないグラウンド前の通りで、レイフォンとフェリはカリアンを待っていた。

「フォンフォン……」

「なんですか?フェリ」

もうこの呼び名には、すっかり慣れてしまった。
フォンフォンと聞いたシャーニッドは爆笑し、ニーナは微妙そうな表情をしていたが、今ではもう殆ど気にならない。

「フォンフォン……」

「なんですか?」

またその呼び名で呼ばれ、レイフォンは疑問を浮かべる。
フェリは何を言えばいいのか、どんな言葉を出せばいいのかわからないような表情で、心配そうにレイフォンを見ていた。
とは言っても、彼女の表情の変化は小さく、とてもわかり辛いが……それをレイフォンはなんとなく理解する。

「怖く……ないんですか?」

そして、やっと繰り出されたフェリの言葉は、たったそれだけの事。
だけどそれで理解し、レイフォンは苦笑しながら応える。

「そりゃあ……怖いですよ。汚染獣戦では一歩間違えば、かすり傷ひとつ負うだけで死ぬかもしれないですから」

汚染獣に対する恐怖。
汚染獣の脅威は今更語るまでもなく、最弱と言う幼生体がツェルニを襲ってきただけで、ツェルニは滅びかけた。
幼生体の甲殻すら破れず、圧倒的な数に押され……敗北しようとした。
今でも思う。もし、レイフォンがいなければと……
その時は自分は、ツェルニ中の人間は全て汚染獣の餌食となっていただろう。

そのレイフォンすら厄介だと言う、今回の汚染獣。
彼が昔使っていた天剣と言う武器があるのなら問題はないらしいが、雄性体は他の武芸者なら間違いなく脅威だ。
雄性体1匹に、ツェルニのような未熟な武芸者ではなく、熟練した武芸者数人、数十人がかりで相手をしなければ勝てないだろう。それを、レイフォンは1人でやると言うのだ。
しかも、かすり傷ひとつ負えば、汚染物質遮断スーツが破ければ、汚染物質で果てるかもしれない都市外でだ。
そんな状況で、恐ろしくないはずがない。

「だけど僕は、そういうのをグレンダンで何度も経験してきましたし、倒す自身もあります」

だがレイフォンは、幼いころからそんな状況に身を置き、天剣授受者と言う最強の称号を与えられたほどの実力を持っている。
そんな彼だからこそ、いや、ツェルニと言う未熟者が集まるこの都市だから、彼以外には出来ない。

「大丈夫ですよ、絶対にツェルニは……フェリは僕が護りますから」

都市と同等に、またはそれ以上にフェリを見て、レイフォンは笑いかける。
武芸をやめたがっていたレイフォンだが、今では『剣』を振る事にはそれほどの迷いはない。
決めたのだ、絶対に、何が何でもフェリを護ると。そのためになら、剣を取ろうと。
そう……例え刺し違えてでも、汚染獣を倒すと。

「……フェリ?」

「……………」

そんな決意を込めて言ったレイフォンの服の袖を、フェリは無言でつかんだ。
変化の少ない表情だが、どこか哀しそうに、今にも泣いてしまいそうに……

「フェリ?」

「……そんな顔、しないでください」

もう一度尋ねたレイフォンの声に、痛烈な声でフェリは言う。
レイフォンは笑っていた。とても優しそうな視線をフェリに向けていた。
だけどそれはどこか儚く、目の前からいなくなってしまいそうな雰囲気があった。

「フェリ……」

「フォンフォン、約束です。絶対に帰って来てください」

「帰るも何も、グレンダンにいられなくなった僕はここ(ツェルニ)以外に帰る場所なんてないんですけどね」

おどけたように、冗談でも言うように苦笑して答えるレイフォン。

「そう言う事ではなく……」

それを否定するようにフェリはつぶやき、考え、次に出した言葉は……

「……そうですね、言い方を変えましょう。ちゃんと帰って来れたら、私と一緒に遊びに行きましょう」

「え……?」

その言葉に、レイフォンは少し意外そうな顔をする。
あのフェリが、まさか自分からレイフォンを誘うなんて思いもしなかったのだ。

「ちょうど、観たい映画があったんです。ですから約束です。ちゃんと帰って来て、私と一緒にそれを観に行きましょう」

これではまるで、デートみたいではないか。
女の子と2人っきりで出かけると言う経験はリーリンとならあるが、幼馴染や兄妹のような感じだったし、そもそも2人ともまだ幼く、そう言う異性を意識していなかった時の話だ。
それがフェリなら、レイフォンが好意を持っている人物となら、話は当たり前だが変わってくる。

「……それは大変ですね。絶対に帰ってこなけりゃいけなくなりました」

またも苦笑し、だけど嬉しそうにレイフォンは笑う。
その笑みを見て安心したのか、小さい表情の変化でフェリも笑っていた。
グレンダンにいた時からは考えられない、そしてこのツェルニに来て本当に良かったという日々を過ごしていくうちに、レイフォンは変わっていた。
自分でも自覚出来るほどに、だからこそこんな日常を護りたいと思えるほどに。



「……兄が来ました」

フェリの笑みが消え、フェリがこちらにやってくるカリアンへと視線を向ける。
レイフォンもそっちに視線をやると、相変わらず薄い笑みを浮かべたカリアンがいた。

「いや、待たせたね。と言うよりも待っているとは思わなかったよ」

「待たなくていいとも言われませんでしたけど?そもそも、あなたは弱いんですから夜道の1人歩きは危険です」

「そうですよ、ずいぶん恨みを買うような事をしているらしいですから、無理やり武芸科に転科させられた生徒が夜道を襲うかもしれませんよ」

「ははは、酷い言われ方だ……と言うか、レイフォン君?冗談……だよね?」

フェリの毒を含んだ言葉に苦笑するカリアンだが、便乗したレイフォンの言葉には流石に笑えない。
もしレイフォンがそれを実行したなら、このツェルニにおいて彼を止められる人物など存在しないのだ。
と言う事は、確実にカリアンは死ぬ。

「さあ?どうなんでしょ?」

冗談を言うように表情がニヤけるレイフォン。
その隣では、フェリも可笑しそうに小さく笑っていた。
少しだけ、いや、かなり変わってきたレイフォンとフェリを見て、カリアンは喜ばしい事か、または恐ろしい事かと本気で悩んでいた。

「その、だね……待っていてもらって悪いけど、実はまだ片付けなくてはいけない事があってね、これから生徒会の方に戻らなければいけないんだ。君達だけで帰ってくれ」

「そう言う事は先に言ってください」

冷や汗を流しながら言うカリアンに、フェリは不機嫌そうに答える。

「まったく、これは私の不注意だったな。すまない。そうだ、レイフォン君は運動して腹が減っているのではないかな?こんな時間までつき合わせたのはこっちの都合だ。フェリ、どこか美味い店に連れて行ってやってくれ」

そう言い、カリアンは数枚の紙幣を財布から取り出すとフェリに渡し、こちらが何かを言う暇もなく学校へと向って行った。

「儲けました」

フェリがレイフォンに向き直り、紙幣を両手で握ってつぶやく。

「では、せっかくですから雰囲気のあるバーにでも行きましょう。夜景を眺めながら2人でグラスを傾けます。ちゃんとホテルのキーを用意してくださいね」

「いや、それは魅力的な話ですが……まだ酒精解禁の学年じゃないですし」

フェリの言葉に、もっともな突っ込みを入れるレイフォン。
それに本当に魅力的な話ではあるが、レイフォンにしろフェリにしろ、そういう雰囲気が似合うようには思えない。
レイフォンはそんな場所が似合うようには思えないし、フェリの透明感のある美しさは、そういう大人の雰囲気とはまた違う。
しかし、では何処が似合うのかと言うと……

(家族向けのレストランかなぁ……)

子供連れの家族がやってくるようなレストラン……
美しさと言う点を考慮しなければ、フェリはませた子供の様にも見える。
文句を言いながら、会計の横にある玩具売り場を気にする……

(うわっ、似合いすぎてるかも)

思わずレイフォンは吹いた。
フェリは美人だし、かわいいと思うが、この光景が意外にも似合ってるように感じた。
いや、フェリだからこそ似合うのだろうか?
だが、どちらにしても、学園都市であるツェルニにそういう家族向けのレストランはない。
学生のうちに結婚し、生まれた子供も少数ながらこのツェルニにはいるらしいが、それでも小数故にない。
玩具屋がないわけでもないが。

「……何か失礼な事を考えていますね」

「とんでもない」

即答したが、レイフォンは吹いていたし、フェリの疑いの眼差しは消えていない。

「まぁ、いいです。家の近くに良く行くレストランがあるから、そこにしましょう。遅くまでやってますし」

不機嫌そうだが、取り合えずフェリは決定事項のように言う。

「はぁ、でもいいんですか?奢ってもらうのはなんだか、悪い気がしますけど」

「いいんですよ。私のじゃなくて兄のお金です。好きなだけ食べてください」

「はは……」

そんな会話を交わしながら、レイフォンとフェリはレストランへと向うのだった。









































重くなった鉄鞭をだらりと垂らし、ニーナは止まらない息に窒息してしまいそうだった。
場所は都市外縁部。夜遅くに暴れても咎められずに、誰も見ていない場所。
そこでニーナは荒い息をつきながら、それを落ち着かせていく。
呼吸は剄の大本だ。乱してはいけない。体にも急に休息を与えてはいけない。
ゆっくりと体を落ち着かせていく。

「……よしっ」

呼吸を整え、ニーナは再び鉄鞭を持ち上げた。
疲れ果て、本当は持っていることすら辛いが、内力系活剄を走らせればまだいける。そのために呼吸を整えたのだから。
汚染獣が攻め入り、それをニーナ達が迎え撃った場所、そして苦戦していた汚染獣の群れをレイフォンが瞬殺したこの場所で、ニーナは1人、鉄鞭を振り続けた。

どうすれば、自分はもっと強くなれるのか?
そう思いながら鉄鞭を振り続ける。
基本の型から、応用技の素振りへと持っていく。
何度も何度も繰り返し、反復練習を続ける。
少なくともこれだけで、多少なりとも身体能力は上昇するだろう。
身体能力が上がれば、それだけ動け、戦闘力が上がる。

「ふっ……はっ、はっ、はっ、はっ……」

またもや荒くなった息を整え、少しだけ休憩を取る。
そばに置いてあったかばんからタオルを取り出し、ニーナは汗を拭う。
入学式の前まではまだ寒く、訓練などで熱した体をすぐに冷やしてくれたのだが、今は夜でも過ごしやすい。徐々に暖かい土地にツェルニが移動しているのだろう。
それだけに、体から熱が逃げてくれない。

吹き出た汗を鬱陶しく思いながら、ニーナはエアフィルター越しに夜景を眺める。仰向けに地面に倒れ、見上げるように。
硬い地面が冷たく、とても心地よい。
夜空には半欠けの月が浮かんでおり、後は底なしの闇が広がっている。
その月に、手が届いてしまうのではないかと思ってしまう。
復元状態の鉄鞭がニーナの左右に転がり、手は空いている。だけど、その手を夜空に掲げるなんて事はしない。
そんなメルヘンチックな事をするには気恥ずかしさを感じるし、届くわけがないとわかっている。

「……遠いな」

だから、そうつぶやいた。
届きそうで、届かない。錯覚と現実の狭間に月がある。
思わず手が届くのではないかと思うが、実際には何億キルメルも離れているのだ。
手を伸ばした程度で、届くわけがない。だが、届かなければいけないとニーナは思う。
手を伸ばすだけで届かないなら、宙を駆け上がってでも……

「ふっ……」

自分の非現実的な考えが可笑しく、ニーナは思わず笑ってしまった。
宙を駆け上がるなんて出来るはずがないし、そんな妄想に意味はない。
意味があるのは、情けないと思うのは、そんな非現実的な手段でしか届かないと思っている自分の弱気だ。

「これでは……だめだ」

今やっていることや、日々の訓練は無駄だとは言わない。それに意味がないとは言わない。
確実に自分の成長に繋がっていると思う。
だが、こんな訓練は今までずっとしてきた。だから続けても、成長はするかもしれないが同じことだ。
足りない……強くなれない。
一足飛びに、劇的に強くなれる方法はないのか?
それこそ妄想、妄言、非現実的な考えだと言う事は理解している。それでも、そう思わずにはいられない。

「くそっ」

今のままでも、十分に強くなれると思う。
時間をかければ、いつかはレイフォンに追いつくことも可能だと信じている。
だが、それにはどれだけの時間がかかる?
1年?2年?まさか……
10年かかるか、20年かかるか、あるいはそれ以上。想像もつかないような膨大な時間が必要だろう。
だが、このツェルニには1年と言う時間すらないのだ。
武芸大会は今年、あと数ヶ月先と言う状況だ。

「間に合わない」

必要なのは未来の可能性などではなく、現在の、今そこにあるものなのだ。
余りにもアンバランスになってしまった十七小隊の均衡を取るために、ニーナは強くならなければならないのだ。
それを出来るのは自分しかいない。ツェルニを護ると決めた自分しか……

「間に合わないのか……」

片手が、ゆっくりと月に伸びる。
メルヘンチックだとか、気恥ずかしいなんて思ったが、あまりにも哀しくなり、思わず手が伸びてしまった。
大気をなでる指先が、視界の中で指に触れる。
空想の中での接触。
幻想の中だけの到達。
そんなものに意味はないとわかっているのに……

「悔しいな」

滲む月を見上げて、ニーナは腕を下ろした。
今にも挫けてしまいそうだ。
諦めてしまいそうだ。
自分には無理だと思い、終わってしまいそうだ。
だが、

「終われるか」

ニーナは挫けない。
ニーナは諦めない。
ニーナは無理だとは思わず、終わらない。

汗を拭い、勢いをつけて起き上がる。

「こんなところで、終わるわけには行かないんだ」

疲労も、想いも、全て振り払ってニーナは起き上がり、鉄鞭を拾い上げた。
夜はまだまだ長い。時間は有限だが、間に合わないわけではない。
そう信じて……

「はっ!」

ニーナは再び鉄鞭を振った。







































次の対抗試合が、今度の休日だと決まった。
だが、やる気のある者が少ない十七小隊はいつもどおり……いや、いつもならやる気と気合十分なニーナの元気がない。
そのことを多少気にしつつも、レイフォンは錬金鋼のレプリカのテストや、カリアンや他の錬金科の技術者を交えた打ち合わせをしていた。
その後にカリアンの奢りで夕飯を何回かご馳走になったが、金を出したのがカリアンというだけで、一度もそのカリアン本人と食事をした事がない。
つまりはフェリと2人っきりでの夕食だったのだ。
そのこと自体は正直嬉しいし、レイフォンも不満はない。
だが、やはり……ここ最近、様子の可笑しいニーナが心配ではある。

「レイフォン、今日は夕食の分も作ってくれ。金はちゃんと出す」

「また行くんですか?最近毎日ですね」

「まぁな」

だけどいつもどおりの生活をし、朝食の準備と弁当を用意していたレイフォンに、オリバーがそう要求をしてくる。
ここ最近、夜遅くまで放置された停留所に通っているオリバー。
そんな彼の分の弁当もついでに、有料で準備をしながら、レイフォンはいつもどおりの朝を迎えていた。

「商業科の知り合いから使わなくなったコンロをもらってな、現在それを取り付け中だ。これだと、放浪バスん中で生活が出来るぞ」

放浪バスというのは、長い間大勢の乗客が都市間の移動中の間を過ごし、ある程度の生活ができる空間がある。
当然1人辺りのスペースは小さいが、オリバーの改造では数十ある座席を取り外し、広いスペースを取る。
その中にガスコンロやら生活用品を詰め込み、設置していくのだ。
放浪バスにはその上シャワーやトイレまでついているので、まさにキャンピングカーとでも言うような代物。
放浪バスで都市間の旅を目指すオリバーにとって、まさにこれ以上ない改造だ。

「それは凄いですね」

「だろ?ところで……レイフォン」

世間話の様にそのことを話していたオリバーだが、何か決意をしたように、真剣にレイフォンを見つめていた。

「頼みがあるんだが」

「なんですか?」

その視線に何事かと思うレイフォンだが、その答えはすぐさま彼によって語られる。

「ミィフィさんの趣味とか好きなものとか、聞き出してくれないか?」

「断られたのに、諦めてないんですか?」

「もちろん!」

ミィフィに一目惚れ、即刻告白、プロポーズをしたオリバー。
自分の気持ちを馬鹿正直に伝えたために、ミィフィに殴られて断られたものの、オリバーは全然諦めていなかった。
むしろ更に燃え上がったかのように、その想いを更に強固なものへとしていた。

「恋はいつも突然!ああ、こんな気持ちはツェルニに会った時以来だ!ツェルニは電子精霊だから諦めてたけどさ、ミィフィさんは生身だよ、人間なんだよ!!あの未発達な体を、俺の思い通りに出来るって想像しただけで……たまらん!」

「……………」

なんだろう?
この危険人物は友人のためにも、ここで息の根を止めた方がいいのだろうか?
半ば本気で、そんなことを思うレイフォンだった。

「まぁ、冗談はさておき、そろそろ俺は行くか」

「ホントですか?」

思わず剣帯に伸びた手を引っ込め、レイフォンは問う。
オリバーはホントだと苦笑しながら答え、レイフォンの用意した弁当をかばんに詰める。

レイフォンも学校に行く準備をし、いつもどおりに学校へと向う。
ただ、この日ばかりはいつもどおりには行かなかった。
汚染獣への接近はもうすぐ。
そして今夜、あんな事が起こるのは予想外だったからだ。




































「またやっちまった……」

夜も遅い。と言うか、殆ど朝だった。
今はまだ暗いが、あと2,3時間もすれば日も昇るだろう。
だが、時間的には、個人の感覚的には夜。
そう思いながらオリバーは、いつもの様に放浪バスの修繕、改造を終えて帰路へとついていた。

「こりゃ、今日もサボるか?一眠りしてなんかつまんだ後、適当に授業受けて……」

独り言をつぶやくようにオリバーは思考し、歩く。
放浪バスの出来は中々で、いつ外を走っても大丈夫だろうと思う。
出来れば許可などを取って、テスト走行をしたかったのだが……まぁ、そこら辺は追々考えるとする。
しかし、今現在の問題と言えば……

「やっぱ、資金不足だよな……」

部品などは同じく放置された物を使っているとは言え、やはり改造にはそれなりの費用がかかる。
オリバーは週3,4日くらいバーでバイトはしているのだが、その給金は殆ど学費や生活費で消えてしまう。
だからたまに、自分の知識を生かして格安の機械メンテナンスのバイトをやったりもするが、格安故にその収入は多くはない。

「金の入りがいいし、機関掃除でもやるかな?だけどあれはきついし……だが、ツェルニに会えるんだったらいいかな?」

そんなことを考えながら、オリバーは歩く。
すると、それは偶然だった。

「ん……ありゃぁ……?」

暖かくなっているとは言え、夜は寒い。
だと言うのに何も羽織らず、武芸科の制服だけの姿をし、スポーツバックを持った彼女を見たのは。

「確か……エリプトン先輩とレイフォンとこの小隊の……隊長?」

確か、ニーナ・アントークとか言ったか。
こんな時間、彼女は一体何処に行くのだろうか?

「ま、俺には関係ねぇか。帰って寝よう」

そう思い、オリバーは気にせずに寮へと戻る。















はずだったのだが……

「何してんだ俺?これじゃストーカーじゃねぇか。ちっちゃくてかわいい子を追うならともかく、ホントに何してんだ俺?」

後半の場合も何をしているのか問い質したくはなるが、ニーナの後を何気なく追いかけるオリバー。
殺剄すら使わない粗末な尾行だが、それでも小隊隊長であるはずのニーナは気づかない。
それにも不審に思ったが、それよりもオリバーが不審に思ったのはニーナの疲労具合だ。
機関掃除のバイトの後と言うこともあるのだろうが、どうやらそれだけではないような気もする。
なんと言えば言いのか、すごく隙だらけだった。

「どこ行くんだ?」

ニーナはずっと、都市の外側へと歩いていた。
外縁部へ向い、一直線に歩いていく。
最初はそちらに住居があるのかと思ったが、だんだんと人気のない場所へと進んでいく。
怪しいと、オリバーが思っていると、ニーナは建物が一切ない、広場の様になっている外縁部へと辿り着く。
そこに着きニーナは、スポーツバックを地面に置いて錬金鋼を復元した。

「おいおい、こんな時間に自主トレかよ?小隊隊長ともなると真面目だねぇ……」

活剄を走らせ、素振りをするニーナを見て、オリバーはそうつぶやく。
どこか鬼気迫ったように、まるで芸術でも見ているかのように思えるニーナの動き。
型をやり、あらゆる攻め、あらゆる防御の動きをする。
これでもオリバーは武芸科である。だからこそわかる、彼女の動きの凄さが、美しさが。
流石は3年生で小隊隊長を勤める、美しき才女だ。
まぁ……美しいとは、美人とは思うが、オリバーの好みではないのだが……
しかし魅せられる。
なんで自分がここにいるのか、ニーナを尾行しようと思ったのかを忘れ、観ていた。
一流の舞い手が世界全てを観客にして踊っているような、狂ったような戦士が世界全てを敵にして戦っているような、そんな矛盾した感想を抱きながら。

「すげーな……」

だと言うのにオリバーは気づかない。
鬼気迫るその動きに魅せられ、その悲しさに。
がむしゃらなニーナの動き。だけど彼は気づかない……
オリバーは武芸者だが、ニーナが何を考えているかなんて知らない。考えもしない。
ニーナが何を考えていようがオリバーには関係ないし、彼女が悩んでいるという事すら知らない。
今日、偶然ニーナの姿を見て、ただ気になったから後を追いかけてきただけなのだ。

「あ……」

だから、気づけるわけがなかった。

「え、まじ?ちょ、大丈夫ですか!?」

ニーナの動きに魅せられ、舞い手の踊りが止まるまで……狂った戦士が戦いをやめるまで……ニーナが倒れるまで……
オリバーは気がつかなかった。







































あとがき
今回はフェリ成分、そしてニーナの心境を真面目に書いたつもり(汗
しかしニーナが倒れたところを目撃したのは、オリバーです。
いや、ですがオリバーにフラグは立ちませんよ。立つのはもちろんレイフォンです。
まぁ、レイフォン×フェリなこの作品ですので、簡単にバキボキと折れますがw

次回は主人公にニーナとのフラグを立ててもらって、汚染獣の討伐へGoですね。
レイフォン無双は見られるのか?
フェリのために生きて帰る気満々のレイフォン!その戦果は!?


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