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No.16004の一覧
[0] ― 閃光の後継者 ― 【ギアス一期再構成】[賽子 青](2012/08/30 12:44)
[1] Stage,01 『白い騎士』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[2] Stage,02 『はじまりの合図』[賽子 青](2012/08/29 01:46)
[3] Stage,03 『黒い仮面』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[4] Stage,04 『一対の炎』[賽子 青](2012/08/29 01:53)
[5] Stage,05 『空からトラブル』[賽子 青](2012/08/29 01:50)
[6] Stage,06 『嵐の前』[賽子 青](2012/08/29 01:51)
[19] Stage,07 『粛清』[賽子 青](2012/08/29 01:54)
[20] Stage,08 『皇女』[賽子 青](2012/08/29 20:43)
[21] Stage,09 『嘘と真実』[賽子 青](2012/09/06 21:31)
[22] Stage,10 『7年前』[賽子 青](2012/08/30 20:08)
[23] Stage,11 『リリーシャ』[賽子 青](2012/09/01 13:43)
[24] Stage,12 『新しい決意』[賽子 青](2012/09/06 21:30)
[25] Interval 『再会』[賽子 青](2012/09/06 21:27)
[26] Stage,13 『介入者』[賽子 青](2012/09/05 21:50)
[27] Stage,14 『サイタマゲットー』[賽子 青](2012/09/06 21:26)
[28] Stage,15 『不穏な影』[賽子 青](2012/09/11 22:26)
[29] Interval 『騒乱の種』[賽子 青](2012/09/12 00:31)
[30] Stage,16 『奪われた剣』[賽子 青](2012/09/13 22:41)
[31] Stage,17 『交錯する閃光』[賽子 青](2012/09/15 13:42)
[32] Stage,18 『ゼロを騙る者[賽子 青](2012/09/20 20:54)
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[16004] Stage,03 『黒い仮面』
Name: 賽子 青◆e46ef2e6 ID:3b0ac260 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/29 01:50
「く、枢木スザク!?」

「あは~、やっぱり驚いた?」

 翌日、勤務中に特派のトレーラーに呼ばれ、昨日捉えた捕虜の名前を聞いたリリーシャは驚きを露にした。
 思わず口をつけていたコーヒーをこぼしてしまったくらいだ。

「枢木スザクって、あの枢木スザクですよね?」

「そうだよ。日本最後の首相、枢木ゲンブのひとり息子で、日本解放戦線の少尉。
 いや~、お手柄だねぇ」

 ロイドはいつものように大げさなリアクションでリリーシャと話をしている。
 必要以上に身体をうねうねさせる仕草はふざけているのかとも思われるが、大事なのは慣れだと思う。
 だが隣に居たセシルが机に零れたコーヒーを拭く布を取るために部屋から出た時、彼は急に真剣な顔になってリリーシャに顔を近づけた。
 これだから、ロイドさんは油断できない。
 彼は母と兄を除けば、唯一、私の秘密を知っている。

「君にとっても浅くない縁がある人でしょお?
 どうする?
 彼、今日にも再逮捕されるよ。君のお兄さんに関係の無い罪を擦り付けられて」

「――――――どういうこと、ですか?」

「昨日クロヴィス殿下が殺されたのは知ってるよね? その犯人にされちゃったのさ」

「  っ!!」

 リリーシャは絶句した。
 彼が無実だということは自分が一番良く知っている。
 なにせクロヴィスが殺されたと思われる時間、彼は自分の乗るランスロットの手の上にいたのだ。

「お知らせ下さってありがとうございます」

 とにかく兄に掛け合ってみなければ。
 即座に携帯電話を取り出し、兄と連絡を取ろうとするが繋がらない。
 電話を取り次ぐオペレータからジェレミアは演習中であると告げられて、リリーシャは悔しげに唇をゆがめた。
 演習中に、個人的な連絡など取り合えるはずがない。

「あらリリーシャちゃん。どうしたの?」

「え? あ、いいえ、何でもないです。セシルさん」

 不意に、声のした方を見るといつの間にかセシルがキッチンペーパーと書類を持って立っていた。
 リリーシャは慌てて携帯電話を閉じると軍服のポケットにしまう。
 そんな彼女の行動にセシルは首を傾げながら、机を拭くと机の上に書類を並べた。

「さて、お~め~で~と~。君は来週から特派に移籍だよ」

「え? ええっ!?」

「正確には原隊から特派への出向扱いだけどね。
 これからランスロットはリリーシャちゃん専用のKMF(ナイトメアフレーム)になるわ」

 それを聞いて、リリーシャは思わずランスロットのほうを見る。
 専用KMFと技術チーム。それは全てのナイトメアパイロットの憧れだ。
 現在それを持っている者など、それこそナイトオブラウンズくらいのものだろう。

「ランスロットが、私の?」

 ランスロットに初めて乗った瞬間から、リリーシャは自分に割り当てられていたサザーランドに不満を感じていた。
 第七世代の圧倒的な反応の前には、自身のサザーランド(第五世代)がひどく鈍重に思えてしまう。
 もし自分だけの為に調整された機体があったら。常々そう思っていた。
 そしてまたとないチャンスが、目の前に転がって来た。

「よ、よろしくお願いします」

「ええ、これからよろしくね。リリーシャちゃん」









コードギアス
    閃光の後継者

Stage,03 『黒い仮面』









 結局、リリーシャの訴えは届かなかった。
 主を護れなかったことで、彼の部下であるバトレー将軍は失脚。
 クロヴィスの亡骸を押さえ、軍を掌握したジェレミアは即座に行動を起こす。
 彼女がロイドから話を聞いていた時には、すでに兄のジェレミアは枢木スザクをクロヴィス殺害の犯人だと発表する準備は整っていた。
 リリーシャは歯噛みしながらも、ただ見守るしかない。

「どうして、こんな事に」

 そうして彼女は何もできないまま、時間だけが過ぎてスザクが軍事法廷に護送される時が来てしまう。
 法廷までの護送は、ジェレミア自らが担当するそうだ。
 言うまでもなく、これはエリア11の軍部を掌握したというアピールである。

 兄の眼に彼女は狂気のようなものを感じたリリーシャは、ジェレミアに家督を譲った後も本国の領地でゴッドバルト家を守る母とともに忠告したが、聞き入れられはしなかった。

「でも――――」

 実はひとつだけ、リリーシャは切り札を持っている。
 この切り札を切れば、ジェレミアはおろか純血派全体を止めてスザクを救う事が出来るだろう。
 しかしその代償こそが問題であり、切り札を切った時に待っているのは魑魅魍魎が蠢く世界と、ジェレミアの失脚。そしてゴッドバルト家の没落だろう。
 だからこそ彼女は決断出来なかった。



 夕刻。リリーシャは自室で明かりもつけずに、スザクが護送されていくのをテレビで見ていた。無力感が瞼を震わせる。
 兄は忠誠という美酒に酔わされ、真実を捻じ曲げようとしている。
 これで私をようやく護れる立場になれる、とジェレミア兄さんは言っていたが、そんなもの私は望んでいない。
 かつての友人に無実の罪を着せて殺害し、その上に成り立つ権力などこっちから願い下げだった。
 
「お姉ちゃんなら、兄さんを止められたかな。
 ねぇ、教えてよ。私は、どうすればいいの?」

 つい、口からそんな言葉が零れる。
 太陽の様に微笑む、大切な“姉”の姿が脳裏に浮かび彼女は瞼を閉じた。
 所詮、自分は――――――――

「―――――――」

 リリーシャは抱えた膝に目を伏せ、悔し涙を堪えながら、じっとテレビの音を聞いていた。
 真実を知らない沿道の人々からは、容赦の無い罵声がスザクに浴びせられる。
 テレビから吐き出される声は、まるで自分を責めているようにリリーシャには聞こえる。

「え?」

 不意に、テレビの群集が大きくざわめいた。
 何事かと反射的にリリーシャが首を上げると、護送車の動きが止まっている。
 あんなところで止まるのは予定にないとアナウンサーたちがざわつく中、それは現れた。
 白い、あまりにも不敬な車。

『こ、これは、クロヴィス殿下専用の御料車です』

 アナウンサーの慌てた声が部屋に響く。
 一体何が起こっているのかと、リリーシャは食い入るようにテレビを見つめていた。

『出て来い。殿下の御料車を穢す不届き者が!』

 サザーランドから身を乗り出し、銃を構えたジェレミアが謎の御料車にのる人間を詰問する。
 その声に反応して、燃え上がった御料車のデッキから犯人が姿を見せた。




『私の名は、ゼロ』




 黒。そう比喩するのが最も相応しい男だった。
 どうしようもない怖気をもたらすのに、しかし惹きつけられるような雰囲気を醸し出すその男は、紺と金を基調にした服を身に着け、黒いマントを羽織っていた。
 顔の仮面はサングラスのように黒くのっぺりとした無機質なもので、見る者に強烈な印象を与える。
 彼は自分の価値を理解し、装飾するのに余念がない。
 まるでSFの中から抜け出してきたような、ひどく現実味の無い人物だった。

『もういいだろう、ゼロ。
 君のショウタイムはお仕舞いだ』

 絶妙のタイミングで、この場を取り仕切るジェレミアが声と共に銃を発射した。
 それを合図に輸送機から路上へ四騎のサザーランドが降り立ち、ゼロと名乗った人物の周囲を取り囲む。
 完璧な演出と布陣。これでまた兄への声望は高まるだろう。この時まで、リリーシャは確かにそう思っていた。
 同時に、恐らくこのまま兄は自分の声が届かない所に行ってしまうだろうと。

『さぁ、まずはその仮面から外して貰おうか』

 サザーランドに特大の銃口を向けられるゼロに、ジェレミアは見下した声で言い放つ。
 だがゼロは一瞬外すようなそぶりを見せると、そのまま腕を高く掲げ、指を弾いた。
 直後に彼の背中側で御料車が割れ、中からなにか不気味な形のカプセルが出現する。

 緑色のウニのようなそれは、非生物であるはずなのに有機的なナニかを連想させる不気味さを持っていた。
 何か、とてつもなく良くないものを封じたかのようなカプセルを見た瞬間、ジェレミアの顔に驚愕が奔る。
 同様に彼の部下であるヴィレッタも、慌てた様子で何事か彼に声をかけている。

『テレビの前の皆さん、見えますでしょうか? 何らかの機械と思われますが、目的は不明です。
 テロリストと思われる人物の声明を待ちますので、しばらくお待ち下さい』

 アナウンサーはそれでも必死で実況を続けるが、そんな事は見ればわかるのだ。
 兄も突きつけていた銃を下げて話を聞かざる終えない状況らしい。それほどの代物とは、一体何だろうか?

 いや、それよりも。
 問題はアレがどうやら兄の足を止めるような代物で、それを出す事で場の主導権をゼロという人物に奪われてしまった事だった。

「マズイ。ジェレミア兄さん」

 リリーシャはこの後のことを考えて真っ青になる。
 危機的な事態だった。彼女の予想に違わず、ゼロはそのカプセルとスザクの交換を持ちかけた。
 応じればテロリストに屈したとしてジェレミアとブリタニアの権威は地に堕ちるし、応じなければ何か良くないが起こるという確信がある。

『笑止。この男はクロヴィス殿下を殺めた大逆の徒。引き渡せる訳が無い』

『違うな。間違っているぞジェレミア。犯人はソイツじゃあない』

 カメラクルーが頑張ったのか急に映像が切り替わり、画像がゼロのアップに切り替わった。
 その瞬間を待っていたかのように、奴の口からとんでもない一言が発せられる。

『クロヴィスを殺したのは、この私だ!!』

「え―――――」

 テレビを掴んだ姿勢のまま、リリーシャは彫刻化した。
 アナウンサーもこの極度の混乱状態にありながら、しかしプロとしての矜持からこの状況を必死に分析する。
 そうだ、確かにあの仮面の人物が真犯人ならスザクさんは無実だという証明になる。
 けれどそれは同時に、ジェレミアが誤認逮捕をしたという失態を浮き彫りにしてしまう。
 実際、冤罪なのだから弁明の仕様も無い。

『イレブン一匹で、尊いブリタニア人の命が大勢救えるんだ。悪くない取引だと思うがな』

「く、やはりそんな代物ですか……」

 思わず口をついたのはそんな言葉。
 リリーシャもまた知らずにゼロのペースに巻き込まれながら、考えていた。
 毒か、病原菌か。
 あの男は何らかの兵器を以って、あの場にいる聴衆全てを盾とした。

 悪くない? ふざけるな。
 ブリタニアの騎士にとって、不当な脅迫に屈するなど赦されない事だ。
 この取引を受ければジェレミア兄さんは終わりである。
 代理執政官としてテロリストに屈したことに責任を問われ、さらに相手が本当に約束を守るかもわからない。

『こやつは狂っている。
 殿下の御料車を偽装し、愚弄した罪。あながうがいい!!』

 だから兄としては、ゼロを殺してこの茶番自体を破してしまわなければ。
 リリーシャとしても、それが正しい判断だと思った。
 ひとまず事態が収束しそうな様子を見せたことで、何とか心の安定が図られつつあったが―――――

『いいのか、公表するぞ? “オレンジ”を』

「オ、オレンジ?」

『私が死んだら公開される事になっている。
 そうされたくなければ……』

『何の事だ。何を言っている!?』

 全くもって同感だった。
 “オレンジ”がキーワードとなる、公開されて困るような秘密など……まさか!
 ハッとしてリリーシャは立ち尽くす。
 この男は、もしかして、私の秘密を!?

『私たちを全力で見逃せ、そっちの男もだ!』

 近づきながら、ゼロは確信を持った声でジェレミアに告げた。
 もし仮にオレンジがあの事を指していたとしても、彼は到底受け入れる訳がないというのに。
 だが事態は、リリーシャの思ったようには進まない。

『ふん、解った。その男をくれてやれ』

「ジェレミア兄さん!?」

 リリーシャが驚愕に眼を見開く。
 何かの間違いだと耳を澄ますが、テレビの中の兄は重ねて告げるどころか、問いただすキューエル卿に対して強権を発動して止めようとする。

 あまりの事態に唖然とした。
 もしあの場に居たならば、彼女は命令を無視してでも兄を止める。
 だが現場から遠く離れた場所にいる彼女にはそれも出来ない。
 リリーシャは兄の突然の乱心にも、指を咥えてみていることしか出来ないのだ。

 沿道の人々がざわめく中、解放されたスザクはゼロの元に歩み寄る。
 何か言葉を発したようだが、枷を嵌められて声にはならない。その時不意にカメラが動き、兄の後方に控えていたヴィレッタがサザーランドを動かそうとした。
 彼女はとにかく早く兄を止めてと祈るが、それよりもはやくあのカプセルが紫の煙を吹いた。

 リリーシャ同様に、あの禍々しい機械に漠然とした不安を感じていた人々から悲鳴が上がり、危険を感じた沿道の人々が一斉に避難する。
 パニック状態。その混乱に乗じて逃走を図ろうとするゼロたちを阻止しようとヴィレッタのサザーランドが動いたが、そこに思わぬ邪魔が入った。

「ジェレミア兄さん、何を!?」

 なんとジェレミアは、ヴィレッタのサザーランドを突き飛ばしたのだ。
 その隙にゼロはスザクもろとも道路から下に飛び降り、それにいち早く反応したサザーランドもやはり兄が止めたのだろう。
 一向にゼロ捕縛の一報は流れず、放送は混乱を残したまま終了する。
 後には唖然とする人々と、最後には武力でもってテロリストを逃がすという大失態を演じたジェレミアだけが残った。

「うそ、なんで……」

 一切蚊帳の外に置かれながら、信じられない兄の行動の一部始終を見せ付けられ、リリーシャはただ立ち尽くすしかなかった。


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