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No.18214の一覧
[0] 片腕のウンディーネと水の星の守人達【ARIA二次創作】[ヤオ](2012/02/28 02:05)
[2] Prologue 『アクシデント』[ヤオ](2012/02/24 01:44)
[3] Prologue 『守人達のデブリーフィング』[ヤオ](2012/02/24 01:39)
[4] 第一章 『スタートライン』 第一話[ヤオ](2012/02/24 01:41)
[5] 第一章 『スタートライン』 第二話[ヤオ](2012/02/28 00:56)
[6] 第一章 『スタートライン』 第三話[ヤオ](2012/02/24 01:41)
[7] 第一章 『スタートライン』 第四話[ヤオ](2012/02/24 01:42)
[8] 第一章 『スタートライン』 第五話[ヤオ](2012/02/24 01:42)
[10] 第一章 『スタートライン』 第六話[ヤオ](2012/02/24 01:42)
[11] 第一章 『スタートライン』 第七話[ヤオ](2012/02/24 01:42)
[12] 第一章 『スタートライン』 第八話[ヤオ](2012/02/24 01:43)
[13] 第一章 『スタートライン』 第九話[ヤオ](2012/02/28 00:57)
[14] 第一章 『スタートライン』 第十話[ヤオ](2012/02/28 00:58)
[15] 第一章 『スタートライン』 最終話[ヤオ](2012/03/10 22:21)
[16] Epilogue 『そして始まる、これから』[ヤオ](2012/03/02 00:09)
[17] Prologue 『One Day of Their』[ヤオ](2012/03/02 00:13)
[18] 第二章『ある一日の記録』 第一話『機械之戯妖~前編~』[ヤオ](2012/03/22 21:14)
[20] 第二章『ある一日の記録』 第一話『機械之戯妖~後編~』[ヤオ](2012/03/24 02:45)
[21] 第二章『ある一日の記録』 第二話『23世紀の海兵さん ~前編~』[ヤオ](2012/03/28 02:39)
[22] 第二章『ある一日の記録』 第二話『23世紀の海兵さん ~後編~』[ヤオ](2012/04/22 02:42)
[23] 第二章『ある一日の記録』 第三話『Luciferin‐Luciferase反応 ~前編~』[ヤオ](2012/09/20 19:45)
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[18214] 第一章 『スタートライン』 第六話
Name: ヤオ◆0e2ece07 ID:17930650 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/24 01:42
アッリ・カールステッド(Alli・Carlstedt)
『ネオ・ヴェネチア ミドルスクール』在校生
ネオアドリア海上空




ペラ、パラ、ペラ、パラ、、、、

「むぅ、おかしいのです。どうしてわたしはこの空を覚えているのでしょうか。」

わたしのその小さな呟きは、本を捲る音ともに風に流されて虚空へと消えていった。
わたしは『ウンディーネの寝所』なる場所へ向かっている三人乗りのサイドカー付きエアバイクに乗りながら、アイリーンより渡された『初心者ダイバーのススメ』なる本を読んでいるのです。
この本は、題名のとおりに、初心者がダイビングをするに当たって覚えなければいけないことが一通り網羅されているとのこと。
また、初心者ダイバーだけでなく、まったくの素人・・・・・・それこそ初めてダイビングする際にも読めと渡されるマニュアルブックなのだそうです。
そんな本がわたしに渡されたということは、きっと水の中に潜るのでしょう。
それはまず間違いないはずだと思うので、わたしは今こうして空中へ本を落としてしまわないようにしながら、体験ダイビングに必要な知識というものを覚えているのですが。
でも、なにか引っかかるようなことがあるのですよ。
『初心者ダイバーのススメ』に関してのことじゃないんですが・・・・・・『ウンディーネの寝所』とやらに向かう途中、いくつかの島を目にしてきたのですが、それらがどうにもわたしの記憶に残っているのです。
どこか懐かしい感じとともに。

「おかしいのですよ、なぜこの航路を覚えているのでしょうか?」

「ん、どうしたの、アッリ?」

「い、いえ、なんでもないのですよ。」

「ん? 分からない事があったら聞いてね? これでも私は一応資格(ライセンス)持ち・・・・・・アドヴァンスドウォーターダイバーっていう資格持ちだから頼ってね?」

・・・・・・アイリーンはいつ資格を取ったんでしょうね。
いつもは学校終わったら部活だったし、休日だってみんなで自主練をしていたり、集まってワイワイやってることが多かったはずだ。
座学などはちょっと空いた時間にテキストを使って勉強できるでしょうからいいとして、時間がどうしても必要な実習はいつの間にやったのでしょうか?
まぁ、疑問は置いといて。正直その申し出はありがたい。

「えっと、それじゃ分からなくなったら聞きます。」

「ん、了解。なんでもオッケーだからね。」

「アリカちゃんは初心者ですらなくて入門者だから、今日は安心して潜れるように私たちが全力でサポートする?」

「あ、ありがとうございます。」

ダイビングは安全なレジャーだけど、そのためにはたくさんの守らなくちゃいけない事があるからね、とアイリーンが言う。
確かにそのようなのですよ、この本を読んでいない状態で、わたしが潜りにいけばまず間違いなく・・・・・・。

ぷちっ!

という音とともにペッチャンコになったでしょうね。
水の力はとても偉大なのですよ、ほんの数メートル潜っただけでも、わたしの体に押しかかる圧力は陸上の数倍にもなるのですから。
ううむ、フラップ付きオールで水流を発生させることが不可能なのが分かる様な気がするのです。

≪チェックポイントC『ニューエスピリトゥサント』島を通過。目標地点まであと少しだぞ、マイマザー。≫

「リップル、彼女達はもう集まってる?」

≪肯定だ。おお、しかも珍しいことにのほほん中尉殿と軍曹殿も来ているようだ。いつもは忙しくてこれないということが多いが、今日はそうではないのだそうだ。≫

「へぇ! ちょっと楽しみ?」

楽しみ、か。なら、マイマザーたちが潜ってる間、私は浜辺で日光浴でもしていようか・・・・・・と、エアバイクの計器に取り付けられ、このエアバイクの航路管制を行っている―――汎用AIの名は伊達じゃなかった―――『リップル』が言う。
充電することを日光浴と表現するとは本当にすごいAIだと思うのですよ。
しかし、『ニューエスピリトゥサント』・・・・・・うむむ、やっぱりどこかで聞いたことがあるのです。
そして、これから向かう島もきっと知っている、覚えている。
エアバイクの高度がだんだん下がり、ネオアドリア海と所々に浮かぶ島々が見えてくると、よりそう感じた。
わたしは絶対にこの風景を、潮の香りを覚えていると思うのですよ。
アイリーンが言うには、わたし達が向かう先はネオアドリア海沿岸部でも有数のダイビングスポットが多数存在する諸島の一角。
にもかかわらず、テレビなどで紹介されたことのない知る人ぞ知る秘密の場所、というかエレットさんほか数人しか知らないらしい場所。
そこにはわたしのようなダイビング未経験のど素人でもダイビングが出来るぐらい、潮の流れがゆっくりの、かつ深度もそれほど深くないダイビングスポットがあるのだそうだ。
・・・・・・なんでしょうか、この既視感というのでしょうか、そこで潜ったような曖昧な記憶があるような無いような?
テレビで紹介されたのなら、この既視感やさっきから感じるオボロゲな記憶もその映像がたまたま脳裏に残っていると説明できそうなのですが。
それもないとなると・・・・・・やっぱり実際に行ったことがあって、そこで潜ったのでしょうか?

「でも、潜ったのならなぜわたしはこのことを忘れていたんでしょうか。忘れちゃいけない記憶のはずなのにって、あれ?」

なぜわたしは忘れちゃいけない記憶だって思ったんでしょうか。
むぅ、のどの奥に魚の骨が引っかかったような不快感を感じるのです。記憶を掘り起こそうにも、どうもわたしの記憶の坑道は途中で崩落しているようでそこまで到達できない。
うんうん考えているうちにエアバイクの高度は随分と下がっていた。
わたしがそれに気づいたときタイミングよく、アイリーンがエアバイクから身を乗り出すようにして目の前に浮かぶ島々の一つを指差した。
そして、彼女は声を張り上げていった。

「あ、アッリ! 見えてきたよ! あれが、今日の私達のダイビングスポットの、」

ふぅ、とそこで彼女は一呼吸置いて言った。

「ノースポイント島だよ!」















アッリ・カールステッド(Alli・Carlstedt)
『ネオ・ヴェネチア ミドルスクール』在校生
『ノースポイント島』


「それじゃあ、リップル。ユー・ハブ・コントロール?」

≪了解だ、マイマザー。アイ・ハブ・コントロール。エアバイクを着陸させる。総員対ショック防御、もとい着陸するときにゆれるため体をしっかりホールドするように。≫

「はいですよ。」

「了解ッ!」

・・・・・・ヒュウゥゥン、ヒュウ、ヒュウウウン、パスン。

「ひぃぃやっほっーう! とぉうちゃぁぁく!」

「アイリーン、声が大きいのですよ。鼓膜が危険です、鼓膜が。それにしても、ちょっとテンションがおかしいと思うのですよ?」

「ごめんごめん、つい! ここへ来るの、久しぶりでねッ!」

「だから声が大きいと。」

「ふふふ、リーン。ちょっと係留するの手伝う?」

「ほいほい。・・・・・・よっと。」

エレットさんはわたし達が乗ってきたエアバイクを小さな入江に作られた手作り感漂う駐機場に泊めた。そこには既に、ゲタ(水上に機体を浮かべるためのスキー板状の浮き。)をはいた6人乗りの大型エアバイク、通称エアカーが泊まっていた。
その胴体の側面には『ぽこてん33号Jr改くん』と書かれているのです・・・・・・ぽこてんというのはかわいい名前なのですが、33号って数字が大きいような・・・・・・しかも、改、それにJr? 不思議な名前だと思うのですよ。
エレットさんに私も手伝いましょうかと訊ねたけど、大丈夫と言われてしまい手持ち無沙汰になってしまったので少し周りを見渡す。

「ふむ・・・・・・やっぱりです。この島の雰囲気、どこか懐かしい感じがするのです。」

うーん、どうしてなのか分からないけど落ち着くのです。
子供のころに来たことがあるのでしょうか・・・・・・。

「これでよし? リーン、道を確認しておいて? ここは植物が成長するのが早いから、そのせいで、以前来たときの道がもし塞がっていたら通れるようにしておく?」

「了解だよ。ああでも先輩達が先に通ったんだから、それは無いと思うけどなぁ。」

「・・・・・・あ。」

「あははっ。でも、ま、アッリはここへくるのは初めてだからね、転ばないようにきれいにしておくことにするよ。じゃ、またあとでね、アッリ。」

エレットさんは既に道を知っている様子のアイリーンに先行してもらって、道を確認してくるように頼みました。
アイリーンはエアバイクの後部収納箱から鞘に入った鉈を手に持って藪をザカザカと進んでいってしまったのですよ。
手馴れた様子で鉈を使ってこれから進む道と思われる藪の切れ目を大きくしたアイリーン・・・・・・なかなかアウトドアな人だったのですね。

「よいしょっと? じゃアリカちゃん、はぐれないようにちゃんとついて来る?」

≪では、マイマザーが迷う心配は?≫

「無い、はず?」

「筈なのですね・・・・・・少し心配なのですよ。大丈夫なのでしょうか。」

エレットさんはエアバイクから外した『リップル』を吊るしたバッグを背負うと、わたしについてくるように促した。
わたしはおとなしくエレットさんの後についていくのですが、彼女が入っていくのはアイリーンがさっき少し広くしたとはいえ、人が一人通れるぐらいの獣道。
薄暗いし、なにかが飛び出てきそうな雰囲気なのです。
少し怖かったので、エレットさんの服のすそをつかんでしまいました。
すると彼女は優しく微笑んで歩みの速度を落として、わたしが転ばないようにしてくれました。
なんだか、恥ずかしいです。

ガサゴソ、ガサゴソ・・・・・・。

そのままエレットさんの服のすそをギュッと握り締めながら、細い獣道をたどって、うっすらと暗い鬱蒼と茂る藪を掻き分けていく。
この島はどうにも結構複雑な地形のようで。
・・・・・・坂道にトンネル、ところどころにある開けた草っ原を目にし。
・・・・・・だれが架けたかわからない丸太の一本橋、でこぼことした砂利の道を歩き。
くもの巣が私の顔にべチャッと張り付いたとき、まるであの有名なマンホームの古い童謡の世界に紛れ込んでしまったかのような錯覚をしてしまったのですよ。
遠くに見える、島の中央にある丘のてっぺんあたりにある巨木もその原因なのでしょう。もしかしたら、狸のお化けの一つも出てくるかもしれませんね・・・・・・。
そして、エレットさんは楽しそうにその古い童謡を歌っています。
その楽しそうに歌う彼女の姿を見ると、失礼ですけど、とてもじゃないですが年上には見えないのですよね。
うーん、エレットさんは27歳だとアイリーンが言っていたけど、本当にそうなんでしょうか。せいぜいが、わたし達と同い年ぐらいのように見えるのですよ。

「あの、エレットさん。失礼ながら質問があるのですよ。」

「うん?」

「えーと、エレットさんは本当に27歳なんですか?」

「ん、本当にそう? ちゃんと大学だって出てる? 飛び級したりはしてないよ?」

≪まぁ、マイマザーは少々実年齢より若く見られることが多い。君が間違えるのだって不思議ではない。≫

そもそも彼女が言っていた『学校』をわたしはエレットさんの見た目で判断してミドルスクールかハイスクールだと勝手に思っていましたが・・・・・・。
冷静に考えて見れば、『ベクタード』やら擬似人格AIの研究だとか、普通はミドルスクールやハイスクールじゃやってない、と言うか、やれないですね。

「じゃあ、なんでアイリーンはエレットさんのことを呼び捨てにしていたんだろう?」

アイリーンは自分よりも年上―――1歳2歳の範囲は誤差の範囲だけど―――の人にはほぼ必ずさん付けしていたはずだ。
仲のいい年上の人でも名前にさん付け程度で呼び捨てにはしていなかったはず。
いままでのエレットさんとアイリーンのやり取りを見るに、相当親しい仲なのでしょうけど親しき仲にも礼儀あり、です。年上は敬わなければ。
まぁ、さきほどエレットさんをその場のノリで弄ってしまったわたしが言うべきことじゃないんでしょうけど。
・・・・・・決して、決してエレットさんがアイリーンと仲良くしてるのを見て、嫉妬したとかそういうことじゃないですよ!
えーと、えーと。誰に言っているんでしょうかね、わたしは。

「もちろん、最初は貴女みたいに『エレットさん』だった? でも、私がお願いした?」

「アリソンって呼び捨てにするように、ですか?」

「うん。さん付けされるのは、少し恥ずかしい? それに・・・・・・秘密を共有する仲間だから?」

「秘密? 仲間?」

「ふふふ、秘密は秘密? もっとも・・・・・・アリカちゃんには、直に関係なくなるけど?」

「へ、あの、それってどういうことですか?」

「秘密?」

秘密ばっかりじゃないですか、とわたしがむくれると、昔から女は秘密が多いほうがいいと言って悪戯っぽく笑うエレットさん。
むぅ、エレットさんはとても不思議な人なのですよ。こういうときは、なんだか大人の女性のように見えるのです。
そして、また歌いだす彼女。
それを見ていると、わたしもこうムラムラとあの童謡を歌いたくなってくるのですよ。
少し恥ずかしいですが、それではコホンと。

「 ~ ♪ ~ 」

わたしが歌いだすと、エレットさんはわたしと調子を合わせて歌いだしました。
歌い出せば恥ずかしさもどこへやら、わたしは元気に歌を歌っていた。
一回通して二人で歌い終わると、エレットさんは微笑みながらわたしに言った。

「へぇ、綺麗な歌声?」

「あ、ありがとうございます。」

「流石はウンディーネを目指しているだけはある?」

「え、なんでそのことを?」

まさか歌声からウンディーネに話が飛ぶとは思わなかった。
ウンディーネの腕にはカンツォーネの巧さも関わってくるので歌も練習する必要があり、それで歌が巧い人も結構多い。だから、でしょうか。
あの事故の起きる前のわたしなら、胸を張って当然の一言も言ったのでしょうが。

「ウンディーネかぁ・・・・・・わたしには、もう目指す理由が無いのですよ? 理由が無いのに、喜んでくれるお母様もお父様も失ったのに、ウンディーネを目指してもいいのでしょうか?」

せっかくフラップ付きオールと『リップル』という希望を教えてもらったけど、わたしみたいに理由を失った人間が握ってもいいのでしょうか、もっとふさわしい人がいるんじゃないでしょうか。
それが、その希望が壊れてしまうんじゃないかという恐怖心以外で、あの希望を手にしなかったわけ。

「もしわたしがあの『希望』を握るんだとすれば、それは、ただ両親がを失った悲しみから逃れるためなのです。はたしてそれで、そんな理由で・・・・・・本当にゴンドラを漕いでいいのでしょうか?」

「・・・・・・いいと思う? だって、それだって立派な理由?」

「そんな。そんなこと、ないです。ただ逃げたいから、漕ぐだなんて・・・・・・それはなんだかウンディーネに、いやゴンドラに対しての・・・・・・冒涜のような、そのような風に感じてしまうのですよ。」

「大丈夫、ひとつ教える? 私の尊敬する大先生の受け売りだけど・・・・・・『理由は何だっていい、無くてもいい。とにかくまずは動くことだ、試すことだ。』・・・・・・すこし改変しちゃったけど、私はこの言葉のおかげで今がある?」

「理由はなんだっていい、ですか・・・・・・ッ。」

突然、視界がガラッと変わった。高く上っていた日は、あと少しで沈みそうな夕日に変わり、わたしの手を握っていたエレットさんの手は、大きくゴツゴツした男の手に変わった。
これは、なんでしょうか。
驚いて顔を上げて、その男性を見上げたけれども顔は影で隠れてよく見えなかった。

『・・・・・・いいか? 理由は何だっていいんだ。それこそ、無くてもいい。まずは動け、挑戦しろ。』

「実際、何かを始めるのに『抱負』とか『決意』とか『がんばる』とか、あってもなくてもいいんだ?」

『実際な、何かを始めるのには『抱負』や『決意』や『がんばる』は・・・・・・あってもいいが、なくてもいい。どんなささいなことでも、逆に人生を左右するほどのことでもソレは変わらない。』

これは『デジャヴ(既視感)』? エレットさんの声に重なるようにして男性のような声が脳に響く。
そういえば、デジャヴの発生はなにか忘れている記憶があるからだと、なにかで見たことがある。
ならば、わたしがこのデジャヴを感じていると言うことは以前にも似たようなことを、わたしはこの島でが体験したのでしょうか。

『やらなくちゃ、やってみなくちゃな・・・・・・なんにも出来やしないし、なにも変わらないんだ。あー、わかるか?』

「やらなくちゃ、やってみなくちゃ、なんにもできないし、なにも変わらない・・・・・・。」

「うん、そういうこと? 理由の良しあしを決めるのはすべてが終わってからで十分? やらない後悔よりは、やった後悔のほうが私はいい、と思う? 後悔はいつでも出来る、それこそ人生の終わる間際でも? でも動けるのは若いうちだけ? だからまずは動くことだ、貴女は今、その時? つらいだろうけど、私はそう思ってる?」

わたしの口から男の言葉をなぞって自然に言葉が出る。その言葉にエレットさんはそのように返すと、裾を握りしめていたわたしの手をつないで、再び歩き出した。私も結構年食ったのかなぁ、こんな説教じみたことを言うなんて、と頬を掻きつつ呟きながら。
つながれたその手はアイリーンの手と違って少し冷たかったけど、不思議に温かく感じられた。
その温かさにわたしは我を取り戻した。
あのデジャヴ・・・・・・昔、わたしはこのエレットさんのような小さな手じゃない大きくてゴツゴツした手と手をつないで、ここを歩いたことがあるのでしょうか?
ゴツゴツした手だったような気がするから、お父様かと思ったけど、お父様の手はコーストガードにいたという割には綺麗な手だった―――わたしが生まれたときには既に最前線から離れた指揮官になっていたからかな?―――からたぶん違う。すべて曖昧な記憶だけど、その手は少なくともお父様の手じゃなかったと思う。
そして、エレットさんの言うことと同じようなことを言っていたはずだ。
でも顔も思い出せない・・・・・・むむむ、あとちょっとで出そうなんですけどねぇ。
と、エレットさんが突然なにかを思い出したかのようにわたしの方へ振り向いた。

「あ、そうそうあの言葉にはまだ続きがある?」

「さっきの言葉に、ですか?」

「うん。『動けば、必ず何かに出逢える』っていう? だから動こう? いま見えないものも、感じれないものも、わかるだろうから? さぁて、この森を越えれば目的地?」




















≪なぁ、マイマザー。≫

「ん、なに?」

≪お姉さんぶっているところ悪いのだが・・・・・・残念ながら道を間違えているぞ? だいぶ最初からな。≫

「え゛っ!?」

≪そろそろまずいかと思って声をかけたわけだが、正解だったか。≫

「ああ、道理で道なき道、あるいは獣道を進んできたんですね・・・・・・。」


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