石造りの王宮にかつかつと靴の音が響く。
靴の音を奏でていたのは、カリーヌ・デジレ…ラ・ヴァリエール公爵夫人その人であった。
簡素ながら一つ一つが格式の高い素材で作られたドレスを纏い早足で目的地に向かっている。
夕暮れ時の日の光の差し込む窓辺を覗き見ると、
ひところとはまるで変わった城下が見て取れる。
そして、ふと物思いにふける。
マザリーニ枢機卿をもってしても変えることの出来なかった国を
誰もが考え付かなかったような斬新な政策をもって嵐のように塗り替えたが、
娘とそう年の変わらない皇女アンリエッタだと知ったときには、
どの系統魔法にも属さない魔法でも見せられたかのような衝撃を受けたものだ。
ドロドロとした宮廷争いの末に操られたか、はたまた何者かが暗躍しているのか
マリアンヌとも話合い調べに調べたが結局は白、何も出てこなかった。
愛し変えれなかった国を立て直した皇女には、尊敬のまなざしを禁じえない。
その皇女が、夫である公爵ではなく自分を私室に呼ぶ。
いったい何事だろうかっと少女時代を思い出し、期待に目を細めた。
私室前の兵が扉をあけ、促されるように中に入るとそこには末娘が控えていた…ルイズである。
宮廷つきの付き人になったとも聞いていないが?と驚くのもつかの間ルイズが口を開いた。
「お母様、アンリエッタ姫が奥でお待ちです」
戸惑うまもなく大鏡に迷いなく入り込んでいく。
少し感じた違和感も些細なことだ、娘のあれやこれやは話の後に聞けばいい。
いやもしかしたら今回のことも何かしら娘がかかわることかも知れない
親子に二代に渡って姫に仕える…かと優しい笑みを浮かべるもすぐに首を軽く振り、
カリーヌは姿勢をただし娘の後に続いていったのだった。
・・・そして目の前に広がる光景に唖然と立ち尽くした。
部屋の中央の天蓋つきのベッドに腰掛ける少年、部屋の奥に杖を突きつけられて立ち尽くすアンリエッタ皇女、
離れて反対側に同じように杖を突きつけられている愛娘のルイズ…
「なっ…」
何をしているとも、何の冗談かとも口にする前に首筋に杖の感触を感じた。
不意打ちっ!実践を離れて長いがこうもたやすく捕らえられてしまうとは己を恥じる以外ない。
しかし、まだすべてをあきらめたわけではない…この土壇場に来て神経が研ぎ澄まされていくのがわかる。
巡るめかしい展開だからこそ、冷静に窮地を乗り切る。
マンティコア隊を率いていた烈風の名に恥じないよう。
姫が捕らえられているのは利用価値があるからに違いない。多少無茶をしてでもすぐに殺されることはないはず…
どのような意図があるのか分からないが、殺されないことは自分にも当てはまる…とすればここで動かないのは悪手だ。
隠してある奥の手で少年を捉えれば交渉できるかもしれない、最悪刺し違えてもいい…自分がいなくなれば誰もが異変に気がつく。
ようやく変わり始めたトリステインを荒らされてなるものか。そう、今こそ殉ずる思いを勇気に変えて…
「何を考えているのか分からないけど、それ以上無意味なことは止めてもらおうか」
しかし、その決意に水を差すように
声変わりし始めるくらいの少年のそれでいて低く脳に響くような声が部屋に響いた。
カリーヌは言葉では答えず全体の気配、隙をうかがう。
「魔法はおしゃべり駄剣で無効化出来るし…それに」
鞘の中から、相棒ひでぇや…と愚痴が聞こえる。
それが嘘か真か分からないが真実だとしても試してみなければ分からないではないか
目の前の少年を睨み付けるが、不思議なことに王よりも王らしく威厳があり指先ひとつの所作さえも魅力的で目が離せない。
「太ももに隠された杖なしでは魔法も使えないだろうからね」
「えっ?」
(しまった!!)
年甲斐もなく杖を突きつけられているのも忘れ自分の太ももに触ってみる…が、ない。
少年はベッドに腰掛けながら薄暗がりの中、見覚えのある杖を弄んでいる。
まるで皇帝が家臣への悪戯を成功させてそれをばらす時のような笑顔を浮かべながら。
「残念ながら刺し違えて殺すのも無理なんだ」
そう笑顔のまま、杖を振るうと少年の左腕を切断するように鋭利なガラス面が現れた。
魔法で覆われて血の一滴も飛び散らない切断面を見せ付けてくる。
笑いながら腕を元に戻すと魔法がかかり何事もなかったかのようにくっついてしまった。
「水の精霊と契約してるから、毒も刃物も効かないって訳」
ぞるりと少年の影から水のような人を形作ったものが浮かび上がり自分と同じような顔を現した。
矢継ぎ早な展開に思考がついていかないが分かったことがある。
それは、こいつらが正気を疑うくらい常軌を逸していて手に負えないってことだけだ。
この場でなければ、立場がなければ、神の奇跡として平伏しているところだ。
「それで……いったい何が望みなのです」
搾り出すように震える声を隠して問いただす。
「何もかもさ」
値踏みするように目線を向けられても不思議なことに不快に感じない。
「姫を捕らえたのなら王宮は貴方の物でしょう、貴族だってこう事を荒げずとも従っています。
それだけの力をもってすれば、黄金の未来は容易く掴み取れるでしょうに…
私にいったい何を望んでいるというのですか」
サイトは知っていた。
未来なんていうものは蝶の羽ばたき一つであざ笑うかのように変わるものだし、
運命なんていうものは残酷で、よほどの事がない限り詰んでいる正史のトリステインの結末よりもひどいものだと。
結局未来は変わらなくとも、退屈を紛らわすにしても、たとえまた繰り返すことになろうとも
準備しすぎるということはないと、ぼそりと呟いた。
「鋼鉄の規律が…いや、烈風カリンが欲しい」
カリーヌは真っ直ぐな瞳で見つめられて、くらりとし顔面が紅潮するのを感じた。
生娘でもあるまいに、と勘違いしそうになる自分の心を嗜める。
烈風カリン…いったいどこで調べたのか、まったく思考を放棄したくなる。
「改めて言われずともそれほどの力の差を見せられて私は屈服しております。
貴族等ももはや私の名前なくとも今の王宮に逆らおうともしないでしょう。
それを烈風カリンの名を持って誓いましょう」
抗うにしろ受け入れるにしろ、時間が欲しい。
それに、今すぐこの場所から逃れるべきと部隊を率いていたころの感が告げるのだ。
「耳障りのいい言葉はいくらでも吐けるな……脱げ」
無礼とも、夫がいる身とも言えなかった。
ここまで用立てられて逆らうことの意味があるだろうか。
恥辱にまみれようとも耐え抜き、この悪魔のような少年をどうにかしなくてはいけない。
頬杖をつきながら見続ける娘と同い年頃の男を前に睨みつつもするするとドレスを脱いでいく。
静まり返った部屋に衣擦れの音だけが響き渡る。
蝋燭の炎の照りかえる中、下着姿になったカリーヌの姿があらわになる。
自身の髪の色よりも淡い染物のレースの下着が平均よりやや小さめの胸を隠している。
布の小さめな同じ色のショーツには意向を凝らした百合があしらわれている。
すらりとした長身からなる長い脚は、眩く光る白い絹のガーターストッキングが包み込み
それを抑えるガーターが全体を魅力的に纏め上げていた。
夫にしか娘にすら晒した事のない下着姿に羞恥を感じ少年から目をそらす。
子供を三人も生んだとは思えない、衰えるわけでもなく若さからくる硬さが取れた肌に
鍛えてるためかしなやかに磨き上げられた理想的な極上の身体がそこにあった。
目を細めたサイトが続けて言う。
「そんな所にいないでこっちに来い」
ベッドに足をかけると、まるで断罪へと向かうべくようにぎしりという音が無常にも響く。
まとわりつく周りの視線が気になって仕方がない。
「せめて…人払いを」
自分の思ったよりも弱弱しい声に、これが烈風と言われた女かと自嘲する。
「駄目だ」
当たり前のように受け入れられない意見に諦めたようにベッドに横たわる。
本当は薄布に包まり身体を隠してしまいたいがそれも適わない。
意を決し、どうぞとでもいうように目をつぶり今か今かと待つ。
布越しに足先に触れる肌が熱い。
「まったく…何を勘違いしているんだ、カリーヌ
何もせず、そのままで男が満足できるとでも?」
呆れられたように言われ、何度目か分からぬ羞恥に顔を染める。
だというのに普通であれば、三度殺しても飽き足らぬような殺意すら沸かない。
耳元で嘆かれただけで、脳が甘く揺れいつもの調子でいることが出来ないのだ。
しかし、勝手が分からないのだ。
生来の勝気さで素直に甘えることも出来なかった。
今までは下着姿で薄布から少し顔を出し夫の名前を呼べば、荒々しくも優しく甲斐甲斐しくしてくれていた。
娘に伝えてある殿方に任せておけばいい、それは別に比喩でもなくまったく自身にあてはまるからだ。
「そうだ、そうだったな」
全てを見透かした言葉に安心し、あとは身をまかし嵐が過ぎるのを我慢するだけ。
そう思った矢先に信じられない言葉を告げられる。
「手か、口か、下か…選ばせてやる。屈服したという言葉が真であれば出来るだろう?
そうだな、それだけじゃ面白くないな…そうだ、あの大き目の蝋燭、燃え尽きるまで二刻程か
あれが尽きる前に一度でも射精させたら認めて開放し、この国から手を引こうではないか」
聞きたくない…気が進まないが、聞かなくてはならない・・・
「・・・もし出来なかったら?」
「その時は、アンリエッタ姫を犯して孕ませる」
内外からの圧力で疲弊した国を支える唯一の皇女が出所の分からない子を孕む。
それだけで混乱し最悪崩壊もありえてしまう…
さらに言えば万が一子を産む場合、後継者問題に発展する。
こんな事をしている場合ではないのに、争いが発生すること間違いない嫌らしい手だ。
(そんな事、了承できるわけが…)
守らなくてはいけない、姫を、娘を、そして国を!
「それより、いつまで呆けているつもりだ!まずは服も脱がせろ、丁寧にな
まぁ、それも出来ずに火が燃え尽きるまでそうしていても構わないがな」
カッと憤怒で顔が熱くなる、平民のように召使のように娼婦のようにしろと
どこまでも尊厳を奪い平伏させようというのか!!
唇を痛いほどかみ締め血の味が口に広がる中、丁寧にボタンを外し服を脱がす。
だというのに少年が時折悪戯に胸や肌に触れるのを拒むことが出来ない…むしろ
「出来・・・ました」
年の割に鍛え上げられた胸板に下を覗えばそそり立つモノがちらりと見えた。
親ほども離れた年月の自分の身体に興奮しているなんて少年も業の深い、が
それも好都合だ、一度出してしまえばきっと…だから手で・・・
「うっ…くぅ・・・や、やめ」
緩慢な動きで剛直にふれる手を強制的に動かされる。
握る手のひらに伝わる温度が熱い、あつい、あつい
少年の指が触れるたび、胸やうなじや肌にまるで媚薬でも流されたかのように電流が走る。
(何一つ、何一つ、上手くいかない。どうしてこんなことに)
手を動かすと同時に息が漏れる。
抑えきれない熱がショーツを汚し脚にたれるのがわかる。
こんなはず、いやなのに、なんで・・・
「さわ…らないで…おねが・・・いやぁ…あっ・・・ぁっ」
教え込まれた手の動きを追従するようにますます熱がこもる。
「おいおい、手伝ってあげてるのに酷い言い草だな。
こんなんじゃいつまでたっても終わらないぞ
そうだショーツを脱いで巻きつかせてみたらどうだ?」
そんな酷い提案ではなくて命令してくれればいいのに、
そのまま何もせずにいられるなんていう都合のいい選択肢はない。
緩急をつけて手を動かしながら、自身のショーツをのろのろと片手で脱ぐ。
ぐっしょりと重みを増した布を膝立ちの脚から抜き去り熱の塊に巻きつける。
水気を吸った布のおかげでさっきよりも動かしやすい。
「はぁ…ぁ…はっ…んっ」
布の取り払われた秘所から水が滴って気持ち悪い。
拭っても拭ってもあふれて来るのだ。だから仕方がないのだ。
「ほら、お母さんの頑張りを姫も娘も見ているぞ」
悲しみの視線は感じていて気がつかない振りをしていたのに
やめて、それ以上見ないでくれ…声にならない悲鳴をあげる。
厳格な母親が烈風カリンの威光がぼろぼろと崩れ去っていく。
何よりも自分の心が否定し、そして拒否していないのだ。
そしてどうしようもなく甘美な心地よさに身を委ねて、触れるだけで何倍も幸せなのだ。
(そんな…あぁ…)
耳元で辱められた言葉に脳が揺れた。そして…
こんなことが・・・何倍も心地よいと、何倍も幸せだと
それは・・・誰と比べて??
(ああ…そんな・・・・・・ごめんなさい・・・あなた)
それに気がついた時、カリーヌは手を動かすのをやめ座り込んでしまった。
背徳だった、ぐずぐずに腐れきった甘い果実。
知って屈服したのだ、この王たる少年に・・・
「あーあ、仕方ないな、口をあけて」
言われた通りに口をあけるとぷっくりとした肉が口の中の薄い粘膜を引っかく
抵抗し舌を絡めるのも構わず蹂躙されえづくほど喉を衝かれても
身体が跳ね上がり脳裏に火花が散るほどの快感と、使われる幸福感が広がるだけ。
触れるのみで幸福になるだけではなく、快楽を伴う水の精霊の媚薬が流し込まれる。
進化したサイトの力は、人間にとって毒を超えた抗いようのない劇薬だった。
「はふ、ん……んむ」
カリーヌは涎を零さないように口いっぱいに頬張りながら賢明に頭を動かす。
ずずずじゅるじゅりゅると吸い込みながら喉を犯され、
離れるときは先端に舌を絡ませ巻きつかせる。
もう頭を押さえつけられなくても教えられたとおり出来るのだ。
「んぅ…ちゅっ…ん、あむ、じゅ、じゅる」
ちらりと蝋燭を見るともう半分まで溶けてしまっていた。
このまま口でするか、それとも…
それを私は選択することが出来る。
「っぷはっ…少年、寝転がってくれ」
国の為に少年には射精してもらわなくてはいけない。
片手で少年のモノに手を添えると膝立ちから腰をおろして行く。
白く泡立つ秘所の入り口は、まったくほぐされていないため進入を拒んでいる。
にも関わらず心が急かすように早鐘を打っている。
「んんんっ・・・あは♪」
ぎちぎちぎちみしりと無理やり腰を沈めてみれば、
まるで自分の心のように拒んでいたのは最初だけ、その後は容易に受け入れていた。
優しく導かれる手の動きに沿うように腰を前後にゆっくりと動かせば、
稲妻のような快感が潰れた小さくぷっくりと膨らんだクリトリスを通して与えられる。
入れただけで達してしまったため、ゆっくりと動いていたが
それも許されず直ぐに上下への激しい動きを強要される。
「あぁっ、は、はっ、……ぁぁっ!!っっ!!!!」
一突きされるたびに意識を飛ばすほど達し、息も出来ないくらい脳髄に甘い痺れを覚えさせられ
壊れるくらい無茶苦茶にされるほど身体を差し出しても、水の精霊がコントロールしているサイトの身体は射精には及ばなかった。
「おねがっ…いっ…、中に!!中にだしてくれ!!!もうっ…、イきすぎてっ」
死んでしまうっ…
快感に絶えるように頭を振りながら、涙を流し懇願しても少年をいかせられない。
ちらりと視線の先に目をそらし泣いている愛娘ルイズの顔が見えた。ああ、私は・・・
「ああ…ルイズ、愛しのルイズ・・・傍に」
・・・・・・
自分の希望で、水の精霊によって記憶を一時的に改変され穢れのない身体に戻ったルイズは、
悲痛な母親の声に首筋に添えられた杖を振り切り寄り添った。
「お母様・・・」
自分が召還した平民のサイトに尊敬する母の誇りも尊厳も踏みにじられたのだった。
虚ろな目をする母親を抱きしめることしか出来ない不甲斐ない自分に涙した。
戦い抜いた母親をいったい誰が責められよう、ただただ慈しむように抱きしめた。
カリーヌも求めるように愛娘であるルイズを抱き寄せて
そして、カリーヌはルイズをサイトの方へ押し倒した。
「えっ?」
力も絶え絶えに桃色のブロンドの髪を母親の手によってつかまれる。
弱弱しい動きにもまったく逆らうことが出来ない。
「うそ…え!?お母様???」
顔がどんどんサイトのモノへと近づいていく。
カリーヌの中に包まれ汚された剛直が頬に擦り付けられていく。
「やだ…いやっ…お母様!!やめて、おねがい!!んぶっ!!!うぐぐっ…」
記憶を変えられても一度口にしてしまえば
身体が覚えているのか、心とは裏腹に鈴口の奥まで穢れを吸い取っていく。
「じゅちゅ…ちゅるる・・・ぷはっ!!そんなっ・・・お母様」
非難に満ちた声も背徳も禁忌すらも、ぞくりとカリーヌの背筋に甘い響きを与えるだけだった。
抵抗の弱い娘のショーツを乱暴に剥ぎ取りベッドに転がすと両手を抑え込んだ。
「さあ、少年。ヴァリエール家の末娘、少々華奢だが王族にも引けをとらぬ美しさだ。
厳しくも自分の命よりも大切に育ててきた愛しいわが子を捧げる。どうか抱いてやってくれ」
国の…いや少年の為に全てを捧げるのだ。それがひいてや国のためになる。
カリーヌは、いまや正しく狂っていた。そして筋書きを書いた娘は鳶色の瞳を闇に沈ませていた。
「おかぁ…さま、いた…痛いのっ……裂けるぅ、やだ、やだ・・・どうしてっ」
みちみちと無理やり抉じ開けられた膣口は、二度目の破瓜に血塗れ歓喜していた。
どうしようもなく幸せを覚えさせている奥、子宮の奥の奥は記憶を塗り替えただけでは隠しようもなく。
快感と幸福感に覚えた腰の動きは、水の滑りと響く水音を巻き込みかき混ぜられていく。
「助けて!おかあさまっ!!どうしようっ…ぁっ、痛かったのにっ!!痛かったっ筈なのにっっ!!!
さいっこうに!あふっ…んっ、きっもちいいのっ!!!!」
蝋燭はとうに熔け、少女が偽りの記憶から目覚めるまであと一寸。