「言っとくけど、先の戦いと同じ威力の虚無はもう使えなから」
ルイズがあっさりと虚無であることをバラしたので俺は今後のために釘をさしておくことにした。
「どうゆうことですか?」
「頭使えバカ。ルイズのあの一発は16年分の一発だってこと。使った後は疲労で倒れた。つまり、もう一度あの時と同じ威力の魔法使うなら16年分の命を削るってことだ」
俺は古代のルーン文字は読めなかったので、ルイズから始祖の祈祷書に現れた古代のルーン文字の内容をすべて聞いていた。
虚無の使用には時として命を削る可能性がある。
そもそも、あんな強大な力がホイホイと使えてたまるか。
「なんてこと、ルイズ。もうあの力を使ってはいけませんわ」
「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」
そうきたか。こいつが原作の力か?
「ルイズ」
「あんたは黙ってて!」
「いえ……、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
「神は……、姫さまをお助けするために、わたしにこの力を授けたに違いありません!」
「神などいない。ルイズが力を持ったのは必然だよ」
ホントは公爵じゃなくてルイズが王女だったらどうなってたろうね。
女版無能王がオチか。
「必然とはどうゆうことかな?」
ウェールズが聞いてきた。
「爆発魔法が虚無ってわかっただけで、もともと強力な爆発魔法を使ってた。名前が伝説の虚無の使い手となっただけで、それがなきゃ、伝説の爆発魔法の使い手として歴史に名前を刻んでただけだね」
「つまり、結局彼女は伝説の使い手となっていたということか」
「なるんだよ。俺がそうする」
ウェールズは笑う。
アンリエッタは戸惑っている。
ルイズはなにやら顔を赤らめていた。
原作の力か、結局、『始祖の祈祷書』はルイズの物になり虚無の使い手は隠すようにとなった。
「これから、あなたはわたくし直属の女官ということに致します」
「え~」
「あんたにいってないわよ!」
俺をスルーして書類を渡していた。
「これをお持ちなさい。わたくしが発行する正式な許可証です。王宮を含む、国内外へのあらゆる場所への通行と、警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。自由がなければ、仕事もしにくいでしょうから」
「俺にもくれ。それを持って女性の居るあらゆる所に堂々と入るから!」
女王の権利を行使する許可はあったら欲しい。
俺が女王の名誉とかを地の底まで落としてやるから。
「だめです。あなたに渡すとなにか、とんでもないことをしそうなのであげません」
「当然ですわ、姫さま」
「くそっ、なんて奴らだ!」
しばし打ちひしがれている俺を置き再び、アンリエッタとウェールズはキャハハ、ウフフな空間を作り出してイチャついていた。
それを見て重要なことを思い出した。
レコンキスタによる女王誘拐事件。
今、ウェールズは生きて目の前にいる。
死体は操れない。
しかし、コピー人間を作れるマジックアイテムが存在したはず。
頭の弱い姫様は勘違いしてついていくだろう。
「やい、バカ女王。今後ウェールズが一人でここにくることは絶対にない。その足りない脳みそに叩き込んどけ。いいか、ウェールズは必ずここには来ない」
「なぜですの?」
「バッカじゃねーの? 噂を真実にするためにゲルマニアにお世話になるんだよ。しばらく、お別れだ。月一回はあわせてやるからそれで我慢しろ。我慢できなきゃオナニーしてな」
「んぁ、なぁんてこと言うのよ!」
ルイズのケリが俺の太ももに当たった。
「ぐふ、俺の足を止めるだと?」
「死ね、死んで償え!」
ローキックは続く。
「お、おおなにー?!」
アンリエッタは顔を真赤にしてしまった。
「ル、ルイズ、格闘技で世界を目指そう……」
「わははは、君たちは本当に愉快だな!」
SIDE:ウェールズ
こうして笑っていられるのも彼のおかげだ。
私は彼の言ったことを考える。
なるほど、私は現在消息不明、誰かが私になりかわりアンリエッタをアルビオンに引き入れればレコンキスタは返り咲く。
「アンリエッタ、彼の言うとおりだ。もし私の偽物が現れた場合それはレコンキスタの策だ。
しばらく会えなくなるが死んだわけじゃない。それに月に一度は会えるようだ。だから彼を信じてあげてくれ」
「ウェールズ様が仰るなら。しかし、彼を信頼していますのね。女性の私でも嫉妬してしまいますわ」
「なに、君とルイズのような関係だと思ってくれ」
そう言ってアンリエッタに口づけをした。嫉妬した女性にはこれがいいはずだ。
「そうやって誤魔化して。サイトさんとはただならぬ関係なのではないでしょうね?」
私をなんていう目で見るのだ。
変わったな。
彼の影響だろうか。
「ふふ、そんなハズはない。彼は共に戦場を駆け抜けた戦友であり、私の生涯の親友だよ」
「親友ですか……」
おや、サイトくんがやられたようだ。