『魅惑の妖精』に新しいお仲間が増えました。
「ルイズちゃんは、お父さんの博打の借金のかたにサーカスに売り飛ばされそうになったんだけど、間一髪お兄ちゃんと逃げてきたの。とってもかわいいけれど、とっても可哀想な子よ」
お兄ちゃんと呼ばせたかったから兄妹にしたわけじゃないぞ?
ほんとなんだからねっ!
ルイズの紹介が終わって、ひきつった笑顔を浮かべるとルイズは一礼した。
「ルルル、ルイズです。よよよ、よろしくお願いなのです」
「はい拍手!」
念願のルイズのセーラー服も見れた。
ルイズはセーラー服のことについては聞いてこなかった。
今は貴族としてのプライドと任務との葛藤でも起きてるんだろう。
「さあ! 開店よ!」
俺は、皿洗いの仕事を与えられた。
飲食店のバイト経験で皿洗いは慣れていたので黙々と皿を洗っていた。
「手馴れてるねぇ。新入りのお兄さん!」
テンションの高い子である。
「あったしー、ジェシカ。あんた、名前は?」
「サイト」
「ヘンな名前」
「ほっといてほしいね」
皿を洗う。ひたすら皿を洗う。
バイトが懐かしい。
「ねえねえ、ルイズと兄妹ってうそでしょ?」
「うん、嘘、でもお兄ちゃんと呼ばせたいからそうした」
「へぇ~、なに? なに? どんなワケあり? あたしにだけ、こっそり教えて? ほんとはどういう関係なの? どっから逃げてきたの?」
ジェシカは興味深々に聞いてきた。
「仕事しなよ。店長に怒られるぞ」
「いいのよあたしは」
「なんでだよ?」
「スカロンの娘だもん」
知っていたが遺伝子を疑いたくなる。
「ほ~、あの人から君みたいなカワイイ子がねぇ」
じゃ、仕事行ってくると俺をおいて出ていってしまった。俺の言葉に照れもしなかった。
ルイズは当然のごとく失敗しまくっていたがここは兄らしく妹を見守ることにした。
「えー、では、お疲れさま!」
慣れない仕事で、ルイズはグダグダになっていた。
「はい、ルイズちゃん。サイトくん」
俺には日払いの給料、ルイズには紙切れ一枚が渡された。
「なんですかこれ?」
俺がたずねるとスカロンの顔から笑みが消えた。
「ルイズちゃん、何人のお客さんを怒らせたの?」
ルイズ、ため息をついた。
「いいのよ。初めは誰でも失敗するわ。これから一生懸命働いて返してね!」
ルイズと俺に与えられた部屋は、二階の客室だった。屋根裏部屋じゃないのね。
うーん、俺に気を使ったのかな。
「なによこれ!」
「普通の部屋だろ、妹」
「なによそれ!」
「兄妹だろ」
ルイズが怒っていたが俺は結構疲れてたので眠かった。
「なんであんたは順応してんのよ!」
「ほら、こっちこいよ」
ベッドに入ってルイズを誘うと怒り嬉しの混ざった表情だった。
難しい顔できるな~と関心したところで俺は寝た。
SIDE:ジェシカ
変わった男だ。私の色香に乗ってくるが、隙は見せない。
女の子が大好きなのはわかるが、どこか一線引いている感じがする。
もしや、あの偽妹のことが好きなのだろうか。
ルイズと呼ばれているこいつの妹は店の隅で立たされている。
どこで拾われたかわからないが、明らかに貴族だ。
お皿の運び方も知らない、おまけに妙にプライドも高い。そしてあの物腰はよく見る貴族だ。
「ねえねえ、あったしー、わかっちゃった」
「なにが?」
「ルイズ。あの子、貴族でしょ」
「それで?」
否定しない。やっぱり貴族なのだろう。
好奇心が高まる。
没落貴族?
駆け落ち?
「なんか事情があるんでしょ?」
私の話に耳を傾けながら皿洗いをしている。
手を止めないあたりサイトはこの作業が慣れているのだとわかった。
「乳首見えてる」
「へ?」
嘘だ、そんな薄着してない。この水兵服はそもそもそこまできわどい格好はできない。
しかし、女の子である私は胸を確かめた。
やっぱり、隠れている。
サイトを睨もうとしたら目の前にいたはずのサイトはいなかった。
「わははは、さらばだ。ジェシカ」
振り向くとサイトは厨房から出ていくところだった。
逃げられた。
「ぜ~ったい、聞き出してやるわよ!」
SIDE:サイト・ヒラガ
ふぅ。
ジェシカの押し付ける胸攻撃を思い出して抜いた。
おとなしくチップレースで稼いでろ。