2000年・1月16日「…大丈夫ですか、ナスターシャさん?」「だ、大丈夫だ…」心配してナスターシャに声をかける祷子無論、他の者達も心配そうにナスターシャを見るが、『大丈夫だ』とやせ我慢を言う。 (祷子は相変わらず優しいな…疲れが癒えていく気分だ…)祷子の優しさに感謝の気持ちで一杯のナスターシャ『今はその優しさが薬です』と言わんばかりに癒やされてた。 「ホラお前達サッサと席に着かないかっ!!」そんな時に教官であるまりもが教室に入って来る。まりもの言葉と同時に蜘蛛の子が散るように自分達の席に着く 「起立--敬礼!!--着席!!」クラス代表として祷子が号令を放つ。教官であるまりもに対し、キチッとした指示を出す祷子に対し、まりもも感心していた。 「今日は初めての授業になるが、初日から厳しく行くから覚悟しろよ。」鬼軍曹としての表情になるまりもゴクリと息を呑む訓練兵達だが--- 「今日は午前中は実技昼からは座学と兵科をする。今日はタップリと扱いてヤルから楽しみにしとけよ?」何故か不機嫌なまりもその八つ当たりを訓練兵に当てるかの如く、初日からバードな内容だった。 (うっ…何故だろう…軍曹の視線が私に向けているのは…?)バリバリとまりもから『覚悟は良いかしら(殺)』と言わんばかりに視線を送られるナスターシャその理由は--- (貴女のおかげでタケルとの貴重な時間が…!!昨日は私の番だったんだからねっ!!)……なんとも情けない理由であるとどのつまり、嫉妬と恨みでナスターシャを射殺さんばかりに睨んでいたのである (昨日は…私とタケルが愛を育む日だったのにっ!!)これが訓練兵達の前でなければ血涙を流していただろう…机の端を掴んでいた右手が『バギリッ!!』と粉砕する程の握力で握り締めるのを見て、祷子以下訓練兵達が恐怖する。 「それでは実技を始めるから、各自着替えてグランドに集合だ。」「「「りょ、了解!?」」」恐怖で口元を引きつりながらも敬礼しながら返答を返す祷子達 そして、それから30分後--- 「今日は始めにグランド10周を行うそれが終わり、休憩した後はケージに用意した装備を担いで10キロ行軍を行う。いいな?」「「「了解」」」まりもの指示通り祷子達訓練兵はグランドを10周を行う 先頭はやはりナスターシャ現役の衛士なのだから当たり前だが、だからといってブチ抜いで走る訳にもいかない為、二位の巽との距離を見計らって走っていた。 巽の次に雪乃・美凪が続く……ちなみに祷子はビリから三番目だったりする 「ヨシ、全員完走したな。五分間休憩した後、ケージの装備を担いで10キロ行軍だ。」「「「りょ、了解…」」」みんな体力的にバテ気味の訓練兵達唯一ナスターシャだけは息を切らすのは小さいが、それを隠す為なるべく頭を下に向けて隠す。 そして休憩を終わらすとケージに向かい、置かれてる装備を装着する 「ナスターシャ、ちょっと待て」「ハイ…何でしょうか…?」装着する前にまりもに止められるナスターシャすると--- 「貴様は完全装備で行け。どうやら体力を持て余してるようだからな。」「は?」突然の完全装備装着の命令是にはナスターシャは勿論、祷子達も驚いていた。 「ぐ、軍曹…実はナスターシャ訓練兵は体調が…」「わかってる風間。一応昨日香月博士から話には聞いている訳あって公開出来ないが、ナスターシャは『ちょっとした任務』に付いていたのだ。…とはいえ、それ程大した任務ではないが、まあ…遅くまで時間がかかってたみたいだがな。」きゅぴーん!!と赤く光るまりもの眼光にビビる祷子達 「しかし、止めようと思えば早くに止めれたそうだ。つまり、今日の体調不良はナスターシャのせいでもある」更に怒りゲージが上昇中のまりもナスターシャに対し訓練兵全員が『南無…』と手を合わせる。 「それに体調不良の割には先程は一位を取ったし、どうやら体力を温存するように走ってたように見えたのでな…特別にナスターシャには完全装備で10キロ行軍に逝かせてやる。」「い、逝く!?」「あと私からの特別にコレを貴様にやろうではないか。」「…………ナンデスカコレ…?」ナスターシャの前に出されたのは、よく薪とかを積んで運ぶのに見られる背負子(しょいこ)だったしかし通常の背負子に比べて、かなりデカかった。 「うんしょ…うんしょ…此処で良いですか、まりも軍曹?」「ありがとうございます、純夏少尉大変助かります」すると純夏が自分の身長と同じぐらいのタイヤを転がして来る…「ナスターシャ、純夏少尉からタイヤを貰って、背負子に載せて走るんだ。」「無理ですっ!!」即答だったまぁ…あのサイズのタイヤなら、30キロはくだらない「そんなデカいタイヤを背負いながら完全装備で走るなんて無理ですっ!!」ナスターシャの意見に訓練兵全員が同意する「そうか?現に此処に居られる純夏少尉は走ったぞ?」「「「はっ?」」」「最終的には完全装備した状態で、このタイヤを2つ背負って走ったぞ?しかもそれでも1・2を争う順位でだ。」「「「へっ?」」」「100mダッシュの時だって、このタイヤ2つ引きずりながら走ってたし…腕立て伏せの時ですら、完全装備状態でやってたぞ?」「「「ええぇぇぇっ!!?」」」純夏の驚くべき能力に驚愕するナスターシャ達外見から見られない程の体力の持ち主にだという事が判明し、注目の的になる。 (ナスターシャさん)(な、なんだ純夏?)タイヤを渡す際に小さな声をかける純夏 (実はね…昨日タケルちゃんが帰りが遅かったから、まりも軍曹怒ってるんだ…)(な、なんだと!?)(夫婦の育みを結果的に邪魔しちゃったから……ご愁傷様。)(な、なにぃぃぃっ!?)何故自分が目を付けられたかを知り、驚愕するナスターシャふと後ろを振り向くと『今日は容赦しないわよ、フフフッ…!!』と赤き眼で語るまりも。「嫌なら良いんだぞ?その代わり、後に行う格闘訓練の相手は純夏少尉だぞ?」「へっ?」「ちなみに純夏少尉のパンチ力は日本一でな…どれぐらい凄いかを説明するのは難しいが…」少しうーん…と考えこむまりも逆にその唸りが不安を呼ぶ事になったりする。 「そうだな…戦術機に搭乗する際に着用する強化装備が有るのだが…通常、大の大人が鉄パイプで思い切り殴りつけても強化装備を着用している部分ならばダメージはほぼゼロなのだが…拳銃…そうだな、デザートイーグルのような威力の高いものならせいぜい悪くても骨折程度のダメージで済む程の防御力を持っているのだが---純夏少尉のパンチ力はな…通常のパンチ力でも強化装備を着用してる屈強な衛士すら一撃で大ダメージを与える程だ。」「「「ええぇぇぇっ!!」」」「更に言うならば…純夏少尉の必殺技の『どりるみるきぃシリーズ』なら…………………………戦術機破壊…出来る…かな?」「「「はあぁぁぁぁっ!?」」」(ううっ…恥ずかしいよぅ~…)まりもの言葉に驚愕するナスターシャ達流石に恥ずかしくて縮こまってしまう純夏しかし、まりもの言ってる事は大袈裟ではないので、仕方無い事だ。 「さて、ナスターシャどちらを選ぶかはお前次第だ」ある意味究極の選択を迫られるナスターシャだが---「…………純夏少尉と格闘訓練をする方を選びます」「へっ?」「…………………………………………………本気か?」予想外にも純夏と格闘訓練をする方を選ぶナスターシャ純夏は勿論、言った本人であるまりもですら驚き、戸惑う「ハイ、本気です。」「…………………………そうか…」ナスターシャの言葉を確認するまりもだが、何も知らないナスターシャは真剣な顔で純夏との格闘訓練を望む。すると、懐から紙と封筒を取り出し、胸ポケットからボールペンと一緒にナスターシャに渡す。 「………ナスターシャ貴様に……コレをやろう…」「……………なんですか、コレ…?」暗い表情のまりもを見て、バリバリと嫌な予感がするナスターシャそばに居た祷子達や純夏は、その意味を理解してる為、なんとも言えない程の雰囲気が重くなる。「『遺書』だ…私が責任持って届けてやるそして…貴様の事は忘れはしない。」「な゛っ!!?」「訓練初日から殉職とは……自分で言ってなんだが………………短い人生だったな…。」「死亡決定されてるっ!!?」「…残念だよ、ナスターシャさんせっかく友達になれたのに…」「す、純夏少尉…?」「本気…………出さないと駄目なんだよね…?」本気で告げるまりもを見て、流石に不安になるナスターシャそして何故か悲しそうな顔しながら、ギュッと革の手袋を装着する純夏……ぶっちゃけ、殺ル気満々である。 「ナスターシャ…最期のチャンスだ…純夏少尉と…………格闘訓練をするか?」瞳から光が失ったような目で最期のチャンスを通告するまりもまるで、死刑宣告のような言葉に恐怖度がアップする。 そして---- 「………キャンセル…良いですか?」「良く決断したっ!!」流石にビビるナスターシャキャンセルを口にすると全員から歓声と拍手が響き、涙を滲ませたまりもが喜びながら誉める。 「最良の選択をしたナスターシャには…ホラ」「………結局はコレですか…」結局は背負子と完全装備を渡される結果になるナスターシャしかし、今回の最良の選択をした事により、重りのタイヤが乗用車タイプの大きさになり、少しだけ軽くなる結果になる。 そして、後日タケルが純夏に『どりるみるきぃぱんち』を喰らう場面を見て、『あの時…キャンセルして良かった…』と心の底から思う事となる。 一方、同時刻--- 「とまぁ…こんな所ね。」「そうですね」「流石はシロガネ大尉だ…。今あるXM3も凄いのに、よくもまぁコレ程のアイデアを出せますね。」「それには私も同意だ。我々では想像出来ない事を簡単に出すのだからな…」ハンガーにあるとある一室で、タケル・香月博士の他にエルヴィンや巌谷中佐と揃い、XM3の改良版の話をしていた。 「しかし、この案『解放状態』は、あくまでも短時間限定になりますね。機体もそうですが、搭乗する衛士にもかなりの負担がかかりますからね。」「戦術機の『リミッター』を一時的に解除する事で、本来の力を発揮する……確かにこれならば、光線級のレーザーや突撃級等の奇襲に回避出来る可能性が向上する。そして攻撃時に、ほんの一瞬だけでも使えば、間違い無く奇襲にもなるし、勝率も上がる。だが、やはり欠点はリミッターを解除する事による機体への負担増加と衛士の負担増加…一応緊急時以外は回数制限も付けた方が良いだろうな。」今回出た案---『解放状態』について様々な長所と短所を口にするエルヴィンと巌谷中佐 『解放状態』--- 戦術機に付いてるリミッターを外す事で、本来の性能を発揮出来る案 例えると、リミッターを外した吹雪だと通常状態の不知火と同等の性能が発揮出来るしかし、リミッターを外すと、戦術機にかかる負担が増加し、下手をすれば戦闘中に機体がもげたり、搭乗している衛士に走馬灯が流れたり…と結構ヤバい欠点がある為短時間限定の機能となった。 すると、巌谷中佐の表情が少し険しい表情に変わり、口にする「しかし…ひとつ解せない事があります。」「解せない…とは?」「確かにこれが実現化すれば素晴らしい力になる。また、衛士の命も大勢救われる事になる…しかし、些か余りにも急ピッチ過ぎるような気がするのだが…」巌谷中佐の言葉にピクリと眉間が反応するタケルと香月博士 時間が無い事を知らない巌谷中佐やエルヴィンにとって、現段階の開発速度は『異常』と言っても過言ではない程だった為、疑問視されていた。 何故其処まで急ピッチで---?まあ…『歴史』を知らない者だから仕方無い事である。 「また、戦術機の開発についてもそうだ。勿論、タケル君のデータを見てるから、改良型を創る理由も解る。しかし、この2・3年の内に2つの戦術機の改良型を創るスピードは尋常ではない…何か…理由があるのでしょうか?」「そうですね…勿論理由はあります。ただ、これは『第四計画』に関わる事ですから、詳しい話は出来ませんが…それでも宜しいですか?」香月博士の言葉に首を縦に振る巌谷中佐とエルヴィン 「そうですか…ですが、この事は極秘故に他言無用です」「わかりました」「実は第四計画は来年が山場でして…これを失敗すれば…『第五計画』が発動してしまうのです」「第五計画…それは一体…?」エルヴィンが第五計画の事を質問すると--- 「---世界中から10万人を選出し、地球圏脱出する計画そして、残った人類とG弾で全てのハイヴに撃ち込む大反撃作戦簡単に言ってしまえば、人類10万人だけ宇宙に逃げて、ハイヴのある全てにG弾で爆撃してしまおうという計画なの」「莫迦なッ!!」ダンッ!!と机を強く叩く巌谷中佐エルヴィンも香月博士の言葉に唖然としていた。 「故郷である地球を捨て、逃げるだと…!?G弾での殲滅作戦なんてしたら、この星は死んでしまうではないかっ!?」「香月博士…その計画を出したのは…」「米国よ、エルヴィン」「我が祖国が…なんて愚かな…」巌谷中佐は怒りで身震いし、エルヴィンは自分の祖国が提出した案と知り、頭を抱えながら嘆く。 「勿論米国全てが第五計画に賛成してる訳ではないわ。現にエルヴィンが以前居たノースロック社も反第五計画派でね、そんな理由もあってエルヴィンをスカウト出来たのよ。」「そう…でしたか…」「兎に角、開発を急ぐ理由は其処にある為、失敗は出来ないのその為、開発速度を上げてるの幸いに、去年米軍でG弾を『暴発』させた為、第五計画派は息を小さくなったわ。そのチャンスを逃す訳にはいかない故に、来年は第四計画の成果を見せなければならないのです。」「成果を見せるとは…主に何を…?」冷静さを少し取り戻した巌谷中佐が質問すると…「そうね…今は余り語る事は出来ないけど…来年、時期はまだ決定してませんが、『佐渡島ハイヴ』を攻略する予定に入ってますその時こそが、第四計画の成果を見せる時です。」「「!!!!?」」「そして、これが成功し、様々な要因が揃える事が出来たならば---人類の念願の目標である『オリジナルハイヴ攻略』に繋がる時でもあるのです」「「なっ!!?」」『佐渡島ハイヴ攻略』や『オリジナルハイヴ攻略』の言葉が出て来て絶句するエルヴィンと巌谷中佐 「オリジナル…ハイヴ攻略…ですか…!?」「ええ、そうよ。つい最近、攻略に成功した『横浜ハイヴ』だけど、今までの常識を覆す情報を得る事に成功したの」「常識を覆す情報…?」「そうです。反応炉を調べた結果、反応炉の役割は司令塔と同時に通信機の役割がある事が判明しました。そして、今まで考えられていたオリジナルハイヴに存在する『あ号標的』を頂点とした『ピラミッド型』ではなく、『箒型』と判明したのです。…つまり、BETAと戦闘をすればする程、生き残ったBETAが戦闘の情報を反応炉に伝え、反応炉からあ号標的に伝達され、その対処案をあ号標的から他の反応炉へ伝達し、対処案が効果があると判明した場合、あ号標的は全ての反応炉に伝達し、対処していくのです…つまり、早々にオリジナルハイヴを攻略しなければ、人類の戦術などが全て対処され、人類が滅亡の道を辿ってしまうのです。」「な…なんだとッ!!?」「勿論これら全てが極秘の情報です…二人を信頼して公開したので、どうか御内密にお願いします。」「………わかりました。どうか頭を上げて下さい、香月博士」覚悟を見せ、頭を下げる香月博士を見て、その意志の強さを知る是ほどの極秘情報を口にした以上、自分達の立場や香月博士の背負う重責を知り、答えが一つに決まる。 「微力ではありますが、私の全てを賭けて全力を尽くす事を約束します」「我が祖国である日本を救う為--そして人類の故郷である地球を救う為、私も力の限り、力を貸します。」「エルヴィン…巌谷中佐…有り難う御座います。」決意を決めた二人に感謝の言葉を出す香月博士 「おやおや、丁度良いタイミングに着いたと見えますな、香月博士」「鎧衣課長…っていうか、何…………その簀巻きは?」すると鎧衣課長が現れるが、同時に鎧衣課長が担いでる『布団の簀巻き』に注目する。 「香月博士の探し人である『結城直之』を見つけたので、布団で簀巻きにして連れ来たのです。」「…………相変わらず寝坊助ね…」布団の端っこから鼻提灯をしながら気持ち良さそうに寝ている『結城直之』を見て、頭を抱えながら溜め息を漏らす香月博士だった…