2000年・5月9日京都・帝都城第一滑走路---- 「此処が日本か…」輸送機から降りる女性…ジャール大隊大隊長・ラトロワ中佐が一番最初に日本の大地を踏む。そして、その後を次々とジャール大隊の隊員達が輸送機から降り、ラトロワ中佐の後に続く。 「ジャール大隊に…敬礼ッ!!」そして出迎えに来ていたタケルを始めとして、純夏・霞・正樹・唯依・そしてナスターシャがジャール大隊を歓迎する。 本来ならば、純夏はヴァルキリーズと共に横浜に帰る予定だったが、今回は霞からCPの訓練やナスターシャの面倒で滞在期間を伸ばしていた。 「出迎え、御苦労。そして…」視線をナスターシャへ向け--- 「元気そうだな、ターシャ。通信では顔を合わせていたが、こうして実際に会うのは久し振りだな。」「ハイ、ラトロワ中佐やみんなと久し振りに会えて嬉しいです。」この時だけ、ナスターシャはジャール大隊の一員として接する。表情も久し振りの再会に笑顔が溢れていた。 「ターシャ!!元気だったか?」「うわっ♪久し振りだね、ターシャ」「コラ、キーラ、トーニャ。みんなまで…痛っ!?」仲間達から手厚い歓迎を受けるナスターシャ多少痛い目に合うが、ナスターシャの笑顔に変化は無い。 「部下が失礼した。なんせ、久し振りの再会だから許して欲しい。」「別に構いませんよ。ウチらも部隊内ならば砕けた態度で接してますから。」「タケルちゃんの場合は別だけどね。タケルちゃんは上官でも馴れ馴れしいし…痛たぁっ!?」「一言多いぞ、純夏」一言余計に喋った純夏に『対純夏用決戦兵器・ビニールスリッパ』でお仕置きするタケルそんな様子を見て、ラトロワを含んだジャール大隊から爆笑の声が響く。「今は任務中だぞ、純夏『タケルちゃん』は厳禁って言っただろうに…」「う~…そっちだって『純夏』って言ったぢゃん…」「上官だからその程度は許されるんだ、覚えておけ。」「う~…りょうかい…」涙目になりながら『建て前では』了解する純夏…まあ、内心は『卑怯だよ…タケルちゃん…』と呟いていた。「そちらも随分楽しい事をするのだな。」「この程度は一週間前の朝飯前です。普段はっちゃける時は、みんなして暴走してるから、困ってます…。」「そ、そうか…」「まあ、自分も偶に暴走するから人の事は言えませんけどね。」先程のやりとりが序の口程度と知り、『軍隊として、どうよ?』とジャール大隊の皆さんから内心思われる事になる。 「遅れましたが、俺は帝国斯衛軍第17大隊所属、第四中隊長の白銀武大尉です。今回のXM3の教官を担当してますので、宜しくお願いします。」「私はこのジャール大隊を指揮するフィカーツィア・ラトロワ中佐だ。貴官がシロガネ・タケルか。ターシャから色々と聞いているよ。」「色々…なんか嫌な予感がするんですが…」「フフッ、勿論そっちの意味も聞いているよ。ハーレムを築くとは、中々やるではないか。」「ぐはっ!?」早速ラトロワ中佐から先制攻撃を受けるタケルジャール大隊の隊員達からも『ハーレムやるなんて、やるぢゃん♪』『すげー。女殺しだよ…』『リアルでやってる奴、初めて見たよ…』等々、激しい追い討ちを喰らう事になる。「勿論、戦術機の腕も聞いているよ。『白銀の守護者』と呼ばれ、ターシャですらコテンパンにする程らしいな?」「その呼び名は大袈裟ですよ…守護者って意味なら、日本にはチートをブチ抜いてる人が『三人』居ますからね…。」「チート?それはどういう意味だ?」「チートって意味は…簡単に言えば『ズル・反則的』って意味ですけど…この三人に関しては、存在そのものが反則的なんですよ…」タケルの脳裏には紅蓮大将や神野大将が浮かび上がるそして最近、雷電も加わりタケルの悩み事が増えてしまう。「…例えると?」「戦術機で例えれば…36mmを薙刀で全部弾き落とすとか…一機で一個師団撃破出来るとか…短刀一本で120mmの狙撃弾くとか…本人達に何故出来るんだと聞けば…『気合い』とか『根性』とか『努力』とかで済ます人達です。」「……………………………………勿論…冗談…だよな?」「勿論………………実話です。今度対戦してみればよ~~~~くわかりますよ?」「あははは……ラトロワ中佐…そのお話………本当に実話です…。」「………なんだと?」信じたくない話だったが、ナスターシャの言葉も加わり、事実と知るラトロワその際のタケルやナスターシャの暗い表情を見て、『…………ええぇっ…?』とジャール大隊の皆さんに不安感を与える。その後、帝都城内を案内し、ジャール大隊の寄宿する部屋を案内した後、とある部屋に案内する 「ここで今後の説明等をしますので、しばらくお待ち下さい。」「わかった。」タケルからの説明を受けてから五分後に、部屋の扉からノックが響き、入室して来る。 「タケル、待たせたな。」「いえ、先程来たばかりですよ、神野大将……って!?」部屋に入って来たのは神野大将タケルもジャール大隊には神野大将が説明等をすると聞いていたが---予想外にも、他にも『来客』が来ていた事に驚いていた。 「失礼致します。ジャール大隊の皆様、初めまして。私はこの国の政威大将軍の煌武院悠陽と申します。」「----ッ!!総員、煌武院悠陽殿下に対して敬礼ッ!!」突然の悠陽の登場に驚愕しながらも敬礼の命を放つラトロワジャール大隊の隊員達も戸惑いながらも敬礼する。 勿論、タケル達もジャール大隊の前なので敬礼する。「突然の来訪で申し訳ありません。しかし、遥々海を越えてソビエトから来たジャール大隊の皆様に挨拶をと思い、来た所存です。」「いえ、殿下直々に来て頂き光栄であります。」「ありがとうございます。では、神野…ジャール大隊の皆様方に御説明を…。」「ハッ、殿下」悠陽からの命を受け、神野大将が一歩前に出て、ジャール大隊に説明等をする。 説明の内容は極簡単な物で、侵入禁止領域(謁見の間等)の説明やこれからの任務等の説明、その他の作業やプライベート等の説明を受ける。 説明を受けてる最中、ラトロワの思考の中は別の事を考えていた。 (まさか国のトップが出て来るとは…予想外だったな。しかし…中々の人物だな…まだターシャと変わらない歳でありながら、強かで肝も据わってる。…これは見た目で判断すれば、痛い目に遭うぞ。)冷静に悠陽を分析するラトロワ見た目とは違い、相当なやり手と判断する。 (こうして我々の前に現れるという事は『襲われても絶対無事でいられる』という自信の現れなのか…?という事は、この大将の二人やシロガネ大尉の実力を信頼しているという事か…)堂々と現れる悠陽のに対して、護衛として現れた紅蓮大将や神野大将、そしてそばに居るタケルの実力を相当な物と判断する。しかし、実際はタケルの武人としての腕前はまだまだなので、タケルに関しては過大評価だったりする。 そしてラトロワは知らないが、部屋の外には真那と真耶がそして天井裏では静と暗部数名が悠陽を護衛していた。「…と、以上を守って貰えれば、この帝都城の外に出ても構わないので、街に出る際は、必ず事前に連絡を入れる事。以上で説明を終わらせて貰う。」説明を終えて、一歩下がり悠陽の護衛に戻る神野大将そして再び悠陽が口を開き、軽い説明をする。 「今日は長旅の疲れを癒やして貰い、明日からの任務に励んで下さい。あと、何か御質問等ありますか?」「では一つ良いでしょうか、殿下?」「なんでしょうか?」するとラトロワが挙手し、悠陽に質問をする。 「質問というより、お願いなのですが、日本の戦術機の訓練等を見てみたいのですが…宜しいでしょうか?」「勿論構いません。紅蓮、今戦術機の訓練をしている部隊は何処ですか?」戦術機の訓練の見学を許可する悠陽紅蓮大将に何処の部隊が訓練をしているか質問をすると、些か表情を苦くして思考する。「フム、勿論様々な部隊が行ってますが…となると…。」やはり精鋭の部隊…と考える紅蓮大将今回のXM3の件を鑑みれば、下手な部隊を見せる訳にはいかない。 「そうだ。そういえばタケルよ、そなたの部隊がこの後訓練だったな?」「あ、ハイ。第17大隊は午後イチからシミュレーター訓練が予定に入ってますけど…。」「ならばその時が良かろ。時にタケルよ、今日は教官職は?」「入ってないですけど、まりもちゃんは今教官職に入ってますよ?」「うむぅ…そうか…まりも殿が…。済まないがタケル、まりも殿を午後から呼んでくれないか?」「それは良いですけど…訓練兵達の授業はどうするんですか?」「むぅ…」第17大隊を選ぶ紅蓮だが、今まりもが教官に入ってる為、外れてる事を告げるタケル今時期半日自習にするのはマズいと考え、唸る紅蓮だが---- 「ならば午後からの授業を今回は特別に『シミュレーター訓練の見学』という名目を作りましょう。勿論突然変わった理由も素直に言って説明すれば、訓練兵達やまりも大尉も納得いくでしょう。」悠陽の提案に『おおっ!?』と声が響く。紅蓮達は納得の意味での声で、ジャール大隊の隊員達は予想外の展開に驚く声が出る。 「ラトロワ中佐、済みませんが見学に訓練兵も加えて宜しいでしょうか?」「勿論構いません。此方こそ自分の用件を叶えて貰い、感謝しております。」「いえ、これぐらいは構いませんわ。」笑顔に笑う悠陽とラトロワしかし、その笑みの裏側には、お互いに軍事的な戦いがあった。 sideラトロワ---(やはり見た目とは違い、中々のクセ者だな。XM3の有効性をアピールする為とはいえ、此処までするとは…敵には回したくはないタイプだ。)悠陽の取った行動に再評価するラトロワ(ターシャの情報だと、殿下は民はおろか、軍人であれ、その命を大事とする人物であり、自分との命と民一人の命を選択肢されれば、間違い無く民の命を選ぶ人物と聞く。)通常ならば指導者として、あるまじき選択だが、その姿を見る民や軍人達からすれば、正に煌々しく写るだろう。 民の為に命を賭け、救おうとする姿。このような事を実行出来る国のトップが他に居るのだろうか?(『本土防衛戦』の時も民を先に退避させ、自分はこの京都で最後まで残り、退避した時も、防衛戦に参加していた衛士達と一緒に退避したと聞く。……まだ成人にも届かない少女でありながら、その覚悟…我が祖国の上の連中にも見習ってほしいものだ。)悠陽殿下の評価を再び上げる自分の祖国の上の連中と比べ、『見習ってほしいものだ』と内心で呟く。(今だってそうだ。万が一我が隊が『煌武院悠陽暗殺』の命を受けていれば、シミュレーター訓練なんぞ、暗殺には持って来いなシチュエーションだ。モニターに集中している隙に部隊全員で狙撃すれば、殿下とてタダでは済まない。無論、話通りの人物ならば、訓練兵を『壁』にする事も無いだろう…。)見学に悠陽殿下も来ると予測する。その堂々とした悠陽の態度に流石に圧巻する。(まあ、殿下の事は今はいい。今は任務内容であるXM3を見せて貰おう。)任務内容であるXM3に思考を変える。(そういえば…このシロガネ・タケル大尉と言ったな…。ターシャが絶賛する腕前…楽しみにしよう。)チラリとシロガネ・タケルに視線を向け、笑みを浮かべる。 さて---極東の英雄殿の実力を拝見しよう---。 sideend (なる程…話通りの人ですね…。)ラトロワと同じく、悠陽もラトロワを観察していた。 (時々感じる鋭い視線…向こうも私を観察しているのでしょうね。)時折感じるラトロワの視線に『観察されていた』事に気づく。 (まあ…私が堂々と出て来た事は予想外でしょうけど、此処は堂々と接する姿を見せつけてやらねばなりませんね。)今回悠陽がジャール大隊の前に現れたのは理由があった。 今回悠陽が登場した理由は、悠陽自身が『お飾りではない』とソビエトに知らしめる為だった。 近年まで、政威大将軍という職が『お飾り』として見られて、日本は『弱小国』と見られていた。しかし、悠陽の代で『お飾り』という不名誉を撤回し、復権した事を世界に知らせたとはいえ、その中身をまだ舐めて見ている者達も、まだ多い事も事実だ。 『名ばかりの小娘』というイメージを撤回する為にも、まず悠陽が取った行動は、今回のジャール大隊との接近だった。 ジャール大隊と接すれば、必ずソビエトの上の連中に自分の事を伝える筈。他人の噂話より自分の身内(軍の人間)の話の方が、まだ信憑性が高くなる。 無論、自分の身に危険は出て来るが、その覚悟を持てねば政威大将軍という職には着く事は出来ない。 つまり、悠陽は自分の身を危険に晒しつつ、自分が『お飾りではない』という事を伝える『メッセージ』であった。 (向こうも私の情報を得てるでしょう…。ならば----その情報を『利用』させて貰いましょう。)悠陽もラトロワをチラリと見てから、笑みを浮かべる悠陽そして---悠陽の側には霞が居た。(ナスターシャさんの言うような人物であれば、私の暗殺…などという事はまず無いでしょう。まぁ、霞さんのリーディングを頼んでおりますから、其方の考えを読む事が出来ます。)そして万が一の事を考え、悠陽は霞にリーディングを依頼していた。 もし、悪影響を与える事態が起きる可能性があれば伝えて欲しいと霞に依頼したのだった。 (さて、とりあえずは第一段階は成功という事で…タケル様の勇姿を楽しみにしましょう☆)思考を変え、ちょっといつもの悠陽に戻る。やはり、愛しの旦那様の活躍は見たい様子。その辺は歳相応の『女の子』だった。 その際、ラトロワ中佐と視線が合い、お互いに笑みを浮かべる。 だが---- 「ナスターシャ…これは一体どういう事だ!?」「コッチが聞きたいぐらいですっ!!」『コワイヨ…コワイヨ…』悠陽とラトロワの側から離れた(逃げ出した)タケル達二人の静かなバトルにガクガクブルブルと震えていた二人が視線を合わせて笑みを浮かべる際、激しい火花が散り、その間に居たジャール大隊の一部のメンバーや紅蓮が犠牲となり、プスプス…と灰になっていた…。 「初めてみたよ…視線の火花って、人をも焦がすんだね…」「莫迦野郎…俺はいつもお前達の火花で焦がされてるわっ!!」タケルの背後に隠れる純夏が、初めて視線の火花で焦がされてるシーンを目撃する。だが、タケルにしてみればいつものお約束みたいなイベント(お仕置き?)な為、その恐ろしさを充分に知っていた。 「ターシャ…助け…ガクッ!!」「キーラ!!しっかりしてっ!?」キーラがナスターシャに助けを求めるが、セリフを言い切る前に力尽きる。この日を境に、二人がバトルをしている時は、その間には入らないと心に誓うタケル達だった…。あとがき--- また日曜日に更新出来なかった…orzしばらくぶりです、騎士王です。 今回は遂にジャール大隊の登場を話です。本当はシミュレーター訓練まで書きたかったんですが、無理だった…orz 本当は日曜日に更新出来そうだったんですが、一部変更した為、更新が遅れました。 さて、hobby Japanの最新号を見ましたが…ヘタレ王…活躍してましたね。 けど、ショックな事に色々修正部分が出来てしまい、ちょっとヘコんでます 今回の修正ですが、訓練兵じの時の『○○○衛士訓練~』を『207衛士訓練~』に修正します。 孝之の居た部隊の『デリング中隊』の件ですが、今回は碓氷の部隊に入れた為、変更は無しにします。(碓氷はデリング中隊では無かった筈…)けど、孝之と慎二のポジションが強襲前衛で良かった…(^_^;) 七十四話の誤字等の修正と一緒に後で修正しますので、お待ち下さいm(_ _)m