「よっこいしょ…」ベッドに腰を降ろすタケル。香月博士から今後の日程を聞いた事を思い出す。白陵基地での日程は2日間、明後日の午後には帝都に帰る予定になってるので、それまでにはXM3をある程度進め、今後タケルの所属する中隊での開発を進める為に、現在香月博士と霞が急ピッチでバグの撤去や修正を急いでる。「オヤジ達は隊に戻ったし…ハンガーにでも寄ってみるか…?」やる事を決めて立ち上がるタケル。真耶の居る部屋に訪ねに向かう。「月詠中尉、居ますか?」「ああ、入って構わんぞ。」「失礼します。」ノックをしてから声をかけ、確認をするタケル。真耶の許可を貰い、中に入る。 「どうした?」「いや…ちょっとハンガーに寄ってみようかと思って。」「例の…エルヴィン・ロックウェル…とやらか?」「ハイ。」コクリと頷くタケル。真耶も『フム…そうだな…』と興味を示す。 「わかった、一緒に行こう。椿様達にも伝えた方が良いだろう。」「ありがとうございます。」予定が決まり、部屋を出て椿達の部屋に行き、一緒にハンガーへと向かう。 「エルヴィン・ロックウェルか…どの様な者なのだろうな…」「先生みたいなマッドな人だったりして…」「…止めてくれ、白銀…足が止まってしまうではないか…。」沙耶がエルヴィン・ロックウェルの人物像を想像してると、タケルの一言で足が止まり、拒否反応を見せる真耶 ハンガーに着き、近くにいた整備兵に、エルヴィン・ロックウェルの居場所を聞きだす。 「其処の整備兵の兄さん、作業中済まないけど、エルヴィン・ロックウェルさんが何処に居るか知らないかな?」「あ…ハッ、ハイ中尉殿。エルヴィンさんは奥の設計室で唸ってます。」「唸ってる?」「なんでも、不知火の改良型を製作するとかで…色々考え込んでるみたいですよ?」「そっか、作業中ありがとう」タケル達に敬礼して見送る整備兵。「…なんか、ああも『下から目線』でかしこまれると、ムズムズするな…。」「何、直ぐに慣れるさ。白銀とて、いずれは昇進して自分の部下を持つようになるんだ。その時は貴様が指示を出さねばならんのだ。」「『形だけ』の小隊長しかやった事が無いから緊張するなぁ~…。」いずれ上に立つ身になる自分が想像出来ない為か、戸惑うタケル。真耶や椿達がタケルに色々とアドバイスを教えると、設計室に辿り着く。「失礼します、エルヴィンさん居ますか?」「………(ブツブツ)」設計室に入ると、金髪の中年男性が、ブツブツと椅子に座りながら、考え込んでる。「…エルヴィンさん…?」「…うん?誰だね、君は?何の用かは知らないが、今私は忙しいのだ。」「お忙しい所スミマセンでした。俺は、帝国斯衛軍第17大隊第1中隊の白銀武中尉です。香月博士からエルヴィンさんの事を聞き、訪ねて来ました。」「シロガネ…タケル…おお…オオォォォッ!!君がっ!!君がシロガネ・タケルかっ!!」ガバッと立ち上がり、タケルの手を握り締め、握手するエルヴィン 「君がミスター・シロガネか…。思った以上に若いね。」「み、みすたぁ~!?そ、そんな…『白銀』で良いですよ、エルヴィンさん」「ハッハッハッ!!謙虚とは、なかなかの好青年ですな、シロガネ中尉」タケルに出逢い、一気にテンションが上がるエルヴィン。その後、真耶や椿達の自己紹介をすると、先程の態度を詫びるエルヴィンに驚く真耶達 「いやぁ~、スミマセンでした。考え事が行き詰まっていて、少し機嫌が悪くなってました。先程の暴挙をお許し下さい。」「い、いえ…構いませんわ。私達がタイミングの悪い時に来ただけですから。」少し戸惑う椿先程の機嫌の悪いエルヴィンが一気に良くなっていた。「それでエルヴィンさん、何に行き詰まっていたのですか…?」「フム…丁度良いかも知れないですね…。実は、機体の機動スピードの事で色々悩んでたのですが…シロガネ中尉に質問ですが…時速800キロを超えるスピードでの、あの機動は可能でしょうか…?」エルヴィンの問いに対し、タケルは少し考えて答える 「可能…ですね。但し、勿論訓練しないと駄目ですし、関節部の強化もしないといけないですね。勿論関節部に蓄積ダメージを溜めないように、俺自身の実力を上げないと駄目ですし、一番の問題として、やはりXM3を完成しない事には駄目ですね。」「フム…問題は山積みか…」溜め息をしながら、考え込むエルヴィン。「今現在、タイプ94には『肩部スラスターユニット』と『ジネラルエレトロニクス・YFE120-GE-100』を装備する予定なのだが…私としては、君の機動を生かす為にもう一工夫が欲しいのだ。」「背中に…ダメか。背中にスラスターユニットを付けたら担架等が装備出来なくなる。」『一工夫』が出て来なくて悩むエルヴィンすると、タケルが---「…脚部に付けたらマズいッスかね~?」「「「はっ?」」」「脚…部…?」タケルの一言に全員が注目し、唖然とする「脚部の外側の方に小さな噴射口を付けたら…ダメ?」「無理だろ…それこそ脚部にダメージが…」「可能だ…」「「「はっ?」」」今度はエルヴィンの一言に唖然とする椿達 「別に今ある脚部を改造して、取り付けなくてもいい…。付属パーツとして、取り外し可能にすれば、強度の問題の心配は無い…。小型の噴射口を付ければ推進剤も少なくて済むし、無くなれば軽量化の為、取り外して捨ててもいい…。」再びブツブツと考えこむエルヴィン。「そうだ…どうせ付けるのならば、プロテクターの役割としても作ればいい。軽量に作れば、多少の防御力アップにも繋がるし…膝まで作れば…推進剤の燃料タンクも…フフフ…」突然嗤いだすエルヴィンにビクッと怖がるタケル達…そして…。 「『脚部スラスターユニット』を創ってみよう。まずは実験して試してから実用出来るかを判断すれば良い。フフフ…流石はシロガネ中尉だ…予想だにしない発想をするとは、流石は『天才衛士』だ!!」『ハッハッハッ!!』と絶頂に気分が良いエルヴィンタケルとしても、『元の世界』のロボットゲームを思い出して発言しただけであって、少し複雑な気分になる そして、エルヴィンは『これから脚部スラスターユニットの設計図を作るので…』と言い、作業に取りかかった為、退室するタケル達…「…違う意味で、先生と同じだったよ…」「そうか…」先程の予想とは違う意味で当たった事を思い出すタケルと真耶だった…ハンガーから出て、部屋へ戻る最中、廊下の窓ガラスから夕陽の光が照らされる「むっ…もうこんな時間か…」真耶がチラッと腕時計を見ると、既に午後4時を過ぎていた 「おや、まだ訓練してる部隊が居ますね…」「どうやら訓練兵のようですね。」「えっ---」すると、椿と沙耶がグランドで訓練で、ランニングしている訓練部隊がいたのを見つける。それを聞いた途端、タケルの身体が自然と走りだし、グランドが良く見える窓から覗きだす。 「どうしたのだ、白銀…突然走り…白銀…?」真耶が見たモノは---タケルの目尻から『涙』が流れていた。 「どうしたの…白銀中尉…?」「へへっ…情けねぇや…このぐらいで…泣くようじゃ…まだまだ若造だな。」タケルの見つめる先には---恩師である『神宮司まりも軍曹』尊敬する先任の『速瀬水月』と『涼宮遙』の訓練兵時代の頃の姿だった…。 「あれは…確か『記憶』にあった…。」「ハイ…俺をここまで育てて下さった恩師の神宮司まりも軍曹と『伊隅ヴァルキリーズ』の先任だった速瀬中尉と涼宮中尉です…。そっかぁ…この時代の頃は訓練兵だったのか…。」涙を拭い、再び尊敬すべし人達を見つめるタケル。 「今度こそ--必ず守らなきゃなっ!!」決意を改めて決めるタケル。オリジナルハイヴの攻略は当たり前。それ以上にすべき事は『大切な人達を守る事』それこそが三度目のループの目標なのだ。 「……スミマセンでした…部屋に戻りましょう。」「…良いの…?会って話ぐらいは構わないのよ…?」一方的ではあるが、再び再会した事に感涙するタケルを気を使い、『会ってみないか?』と声をかける椿 「…大丈夫です、九條少佐。今は…我慢しますでないと…今逢ったら、大泣きしますから。」「…そうか…では行こう。」再会を我慢するタケル。そんな姿を見た真耶は、タケルを気使い、部屋に戻る事にした…。 「あれ、斯衛の人達帰って行くわ…」「ハァ…ハァ…本当だねぇ…」ランニングを終えた速瀬と涼宮休憩しながら、タケルの去る姿を目撃する 「なんかあの男の人、泣いてたような…」「うん…なんかあったのかな…?」ちゃっかりと、タケルが涙を流した所を目撃していた二人 「小隊集合っ!!」「やばっ!!神宮司軍曹が呼んでる!!」「急ごう、水月」召集をかける神宮司軍曹の下に、集まる速瀬達…その頃にはタケルの姿はもう消えていた…。「ん…何だ?」部屋に戻る為、エレベーターに乗る際、周囲に騒ぎが有った 「あら白銀、今まで何処に居たのよ?」「いや、ハンガーに行って、エルヴィンさんに会ってました。」「エルヴィンに?そう、まあ手間が省けたわ。」「それよりどうしたんですか、この騒ぎ?」「ついさっきね、この基地内に侵入してた『スパイ』を捕まえた所なのよ。社達にリーディングして貰った結果、米国のスパイだった事が判明したわ。」「ええっ!?」基地内に米軍のスパイが侵入してた事に驚くタケル達 「侵入した人数は捕まえた奴一人のみただ、今回は九條少佐達が来観してるだけあって、重要な場所は警備を強めてるの。」「なる程…そうでしたか…」事の事態を察し、理解する椿。すると、香月博士の表情が『でびるふぇいす』に変わっていた…。 「…先生…この期に及んで、何を企んでます?」「べっつに~☆ただ、今回の件もあって、白銀や九條少佐達には『安全』を持って、部屋を『移動』して貰っただけよ~?」「…ま…ま さ か …」嫌な予感がバリバリしているタケル香月博士の話を冷静に、推理した結果----- 「も…もしかして…『大部屋』に移動…したんですか…?」「「「はっ!?」」」「大正解~♪流石は白銀、良く解ったわね~。」香月博士の呑気な言葉と同時に、石化になるタケル達 『大部屋』に引っ越されてしまう。 「ああああ…アンタはアホか----!!こんな時にこんなイタズラしよって!!」「あのねぇ…表向きはアンタは、九條家の護衛として来てるのよ?護衛が護衛対象と同じ部屋で何が都合悪いのよ?お互いに同じ部屋で、寝泊まりしながら護衛すれば、一石二鳥じゃない?」「いや、だからって…」香月博士の暴走を止めようと、懸命に対抗するタケルしかし、タケルの奮闘も虚しく、撃墜されるタケルだった。 「「「「…………」」」」仕方無しに大部屋に入るタケル達…。其処には、セミダブルのベッドが『3つ』横に重なるようにくっつけ、番線でぐるぐるに結束し、ベッドのそばにある棚の上にテッシュの箱を設置していた…。その光景を見たタケルは、口から魂が抜け。真耶は『またか……』と床にⅢorz…と落ち込み。椿と沙耶は顔を真っ赤にしてアワアワしていた…。そして、その夜--- 「す~…す~…」「ウン……」「………(眠れね--!!)」結局は四人共、ベッドに寝る事になった。最初はタケルは『床に寝てます』とか『護衛しながら起きてます』とか言ってたが、『お前も護衛対象だから駄目だ』と却下される。現在、ベッドの上には真耶・タケル・沙耶・椿の順に寝ている 椿を壁側に寝かせ、タケルを真耶・沙耶の間に寝かせていた 勿論タケルは反論して、『俺が端っこに寝ます』と言うが、椿が『沙耶の隣に寝る時は気をつけてね、たまに沙耶はそばにあるモノを抱いて寝るから』と発言してしまい、真耶が『私の隣に寝るがいい』と発言する。勿論沙耶も対抗して『私の隣は…嫌か…?』と発言。結果、タケルには逃げ場が無くなり、真耶と沙耶の間に寝る事になった。(フフフ…面白い事になったわ…)悶えてるタケルを見て、こっそりと笑う椿。案の定、沙耶はタケルを抱きながら熟睡。真耶もタケルの頭を抱えながら眠りについていた…(まさか真耶さんも白銀中尉の事を気になっていたとは…フフフ…同棲してた効果かしら?)三人の寝てる姿を見て、笑いながら眠りにつく椿… そして夜が明け、朝を迎えると---- 「……………えっ?」一番早くに目を覚ます椿。三人の寝相を見て硬直する。真耶と沙耶の間に寝ているタケルに異常事態が発生していたのだ。真耶のシャツが少し脱げ、豊満な胸に顔半分が埋まってる状態になり、そして、沙耶を抱えながら胸を鷲掴み状態のポーズになっていた… 「こ…これは…放置するしかないわねっ!!」タケルを見捨てる選択をする椿。今助けては、自分のイタズラと思われてもおかしくはない。最良の案として、タケル一人が犠牲になるしかないと判断する椿。 「ご、ゴメンね…白銀中尉…」助けない事に一応謝罪する椿。勿論後に二人に怒られるタケルは、正座させられながら説教を喰らっていた…