2000年・5月16日「巌谷中佐の家に行くのは初めてだなぁ…。」「以前来たおば様の家とそう変わりませんよ。」唯依の案内で巌谷中佐の家に向かうタケル今回はジャール大隊の件で巌谷中佐を訪ねる事になった。今日は巌谷中佐が休みな為、タケル自身が訪ねる形になった。「済まない、タカムラ中尉。忙しい中道案内をさせてしまって。」「いえ、構いませんラトロワ中佐。私も今日はそれほど忙しくは無いので、遅れは取り戻せます。」そして今回はラトロワも同行していた。やはり自分の部隊の問題な為、隊長である自分も出るべきだと考え、休日を潰して同行したのだ。「此処です。」「へぇ~…良い家だなぁ…。」「ほぅ…これが日本式のマイホームか…。」武家屋敷風な家に到着するタケル達。ラトロワも日本の武家屋敷を初めて見て感心する。「只今帰りました。」「むっ?随分と早いな唯依ちゃん……と白銀大尉じゃないか!?」「お休みな所スミマセン。」「いやいや、構わないよ。ところで…そちらの女性は…?」「初めまして、イワヤ中佐ジャール大隊大隊長・フィカーツィア・ラトロワ中佐です。」「ジャール大隊……確かXM3の件で、ソビエト軍から訪れた隊の名前がそれだと記憶してたが…。」「はい、そうです。実は巌谷中佐に相談したい事がありまして、今日尋ねたんです。」「……成る程。まあ、こんな所で話もなんだ、遠慮無く上がるが良い。」「失礼します。」巌谷中佐に上がるように言われ、家に入るタケル達。ちなみにラトロワは家に入る際、靴を脱いで上がる姿を見てちょっと驚く。「まあ、何も無いが入りなさい。」「失礼しま………あれ?」「おや、白銀君じゃないか」「あ、彩峰准将!?」今に入室すると、大きなテーブルで茶を飲んでいた彩峰准将が居た。「な、何故彩峰准将が!?」流石の唯依もまさか彩峰准将が居るとは知らず、慌て巌谷中佐に訪ねる。「いや、彩峰准将も今日は休みでな、たまには私の家に遊びに来ないかと誘ったのだよ。」「家に居ても暇だからね。そんな時に巌谷中佐からお誘いが来たから来たのだよ。」ワッハッハッ…と豪快に笑う巌谷中佐と彩峰准将呆気に取られてるタケルや唯依を見て笑い声が溢れてた。「さて白銀君、用件を聞こうか。」「はい、あと彩峰准将もこの話に参加して頂いてくれませんか?」「ウム、わかった。」タケルは二人に詳しい話を説明する。その話を聞くにつれ、表情がやや険しく変わっていく。唯依に至っては怒りの表情を浮かべるが、そこは感情を抑え、話を聞いていた。「そうでしたか…ラトロワ中佐もこのような事になり、お怒りを察します。」「全く…ソビエト軍の上層部は一体何を考えてるのだ…。民や下の者達の支えがあってこそ、国や軍があるというのに…愚かな…。」「そんな事があり、お二方にお力を借りようと相談したのです。」ゴクリと息を呑みながら説得をするタケルすると二人から笑みが浮かび、答えを述べる。「成る程。勿論私に出来る限りならば力を貸すよ。」「私もだよ、白銀君困ってる者がいれば、助けるのは当たり前だ。それが例え他所の国の者であろうと関係無い事だ。」「あ…ありがとうございます。」深々と頭を下げるタケルとラトロワタケルに関しては、何度も頭を下げていると、『ゴンッ!!』とテーブルの角に頭を強打し、もがく姿を見られ、周りから笑い声が響く。「話は変わるが、タケル君。」「なんでしょうか…?」いつの間にかプライベートの呼び方になる巌谷中佐少し嫌な予感をするタケルだが、一応落ち着いて質問すると…。「唯依ちゃんとは何処まで進んだかね?私としては、孫の顔が見たくてウズウズしてるのだが…。」やりやがった。先程までのシリアスモードは何処かへ行き、はっちゃけモードに突入する巌谷中佐タケルは再び豪快にテーブルに頭を強打し、唯依は豪快にずっこける。ちなみにラトロワは唖然とし、彩峰准将は興味津々に『ほぅ…』と呟いてたりする。「おおおお…叔父様ッッ!!」「ハッハッハッ☆唯依ちゃん、恥ずかしがる事は無いんだよ。今巷の噂話では、唯依ちゃんがタケル君と仲が良く、近い将来の嫁候補と噂されてるのだよ?」「「へっ?」」「勿論情報源は香月博士や殿下・雨宮少尉ではないぞ?情報源は色んな人達の噂話だぞ。」「嘘…」跪づく唯依。自分の知らぬ所で、とんでもない噂話が広がっていた事を知り、へこむ。ぶっちゃけ、後戻り不可能……なのかもしれない。「それに唯依ちゃん、最近タケル君のそばに居る事が多いだろう?勿論中尉としての作業を覚える為等という事は知ってはいるが……。第三者の視点から見ると『恋人みたいな雰囲気』に見えるのだが…。」「それは叔父様の勘違いですっ!!」「だか、噂になるという事は、私以外の者達にも、そう見える…という事だぞ?」「うっ!?」今回は分が悪い為、旗色が悪い唯依反論するが、巌谷中佐の言葉を聞き、言い返せないでいた。「そういえば白銀君ウチの慧と仲が良いようだか…何処まで進んだかね?」しかも、今回は彩峰准将も参戦。タケルの精神的ライフポイントはゴリゴリと削られている。「ほぅ、彩峰准将の娘さんもですか…」「ハイ、最近は白銀君や榊さんの所の娘さんと仲が良いみたいで、榊さんの娘さんとは、なにやらライバル関係みたいで、競い合ってるみたいです。」「ほぅ、榊首相の娘さんと…。」なにやら、いつの間にか娘の話になり、ヤバい雰囲気に突入する。「ハッハッハッ☆これは榊首相が来た時に聞かねばなりませんな。」「「「ハイ?」」」この瞬間、タケル・唯依・ラトロワの時間が停止する。「お、叔父様…?榊首相が来たら…とは…?」最初に復活した唯依が巌谷中佐に質問するとーーー 「唯依ちゃんには言ってないが、もうそろそろしたら榊首相も家に来る予定なのだよ。」「「ええっ!?」」「元々今日はウチで『娘の話』とかをする予定でな、ちょっとした自慢話や、結婚する際は花嫁衣装は何が良いとか…孫は何人欲しいとか色々話す予定なのだよ。」「そんな事の為に総理呼んだのっ!?」親バカ集合に唖然とするタケル達特にタケルは嫌な予感がバリバリしてる為、立ち上がり、立ち去ろうとする。「巌谷中佐、今日はそろそろ帰りますっ!!」「待ちたまえ、白銀君」「帰るにはまだ早い。榊首相も来るのだ…ゆっくりするが良い。」「離して下さいっ!!今帰らないと、良くない未来が訪れるんですっ!!」立ち去ろうとするタケルを拘束する巌谷中佐と彩峰准将こんな時だけ、歴戦の戦士としての力を発揮させる辺り、かなりの親バカだと分かる。「それにタケル君。榊首相が来れば、先程の話を説明して力を借りる事も出来るだろう?」「う゛っ!!」「榊首相の力があれば、かなり有利になると思うのだが…。」「痛い所を…」ジャール大隊の件の説得を言質にされ、痛い所を突かれるタケルちろっとラトロワを覗くとーーー (……………スマナイ。ジャール大隊の為に耐えてくれ。)「グハァッ!!」申し訳なさそうにアイコンタクトで『ゴメン、耐えて。』と送るラトロワその瞬間にタケルが陥落する。「御免下さい、巌谷榮二殿は居ますか?」「おおっ!!来たな。」玄関から是親の声が聞こえ、迎えに向かう巌谷中佐「遅くなりました、彩峰准将………おや?白銀君ではないか。」「…………コンニチワ。」燃え尽きたタケルもはや逃げる事叶わないと知り、諦める。 「いやぁ~丁度良かった。実は白銀君に会わせたい人が居るんだよ。」「へっ?」予想外の言葉に反応するタケルそしてーーーどうやら神様は今日はイタズラをしたい気分だったらしい。「『珠瀬』殿、この若者が先程話に出た白銀武大尉です。」「ほほぅ、中々の好青年ですな。」(タ…タマパパ来たぁぁぁぁぁっ!!)あろう事か、是親は最強の親バカである『珠瀬玄丞斎』を連れて来ていた。「この人は、国連事務次官の珠瀬玄丞斎殿だ。」「おおっ!!あの珠瀬殿ですか。お噂は耳にしております。」「ワッハッハッ!!私など巌谷中佐や彩峰准将には叶いませんよ。」(な、何…このメンバーは…!?)(日本の総理大臣に国連事務次官だと…!?)流石にこの豪華メンバーに戸惑う唯依とラトロワしかし、タケルはこのメンバーを見て『……終わった。』と項垂れる 「フム…」「…………」ジロジロとタケルを観察する玄丞斎嫌な予感をバリバリ感じながら、硬直するとーーー 「フム、確かに…彼ならば…」「た、珠瀬事務次官殿…?」何かを決断した玄丞斎そしてタケルの肩に手を乗せてーーー 「白銀君……ウチのタマをお嫁さんに貰ってくれないかね?」予感的中。突然とんでもない爆弾発言をすると、タケルの・唯依・ラトロワの時間が停止する。「タマは可愛い子でな~☆私のマイ・プリティエンジェルなんだよ~☆ホラ、これが私の愛娘の『珠瀬壬姫』といってな、もう~愛らしくて愛らしくて…私の自慢な娘なのだよっ!!」ケタが違う。親バカのレベルが先程の三人(是親・榮二・萩閣)とは桁違いだった。愛娘の壬姫を見せる為にノートパソコンを取りだし、開くと壁画がタマのアップ画像から始まり、ファイルだけでも1GB分も画像が納められていた。正にキング・オブ・親バカに相応しかった。「ハッハッハッ☆この可愛いらしい笑顔を見ると、疲れなど感じる事が無いのだ。タマの幸せそうな笑顔があれば、あと30年は戦えるよ。」「流石ですな、珠瀬殿…。私も見習わねば…。」親バカっぷりを関心する是親『自分もやってみようかなぁ~』と思い、後日真似をするが、偶々千鶴に見つかり、速攻で釘バットで破壊される事になる。「……あの…真面目な話をして…宜しいでしょうか?」「うん、何かね?」力を振り絞り、説明するタケル最初は何かと頭を傾げていたが、その重大さに気付き表情を変える。「フム…成る程…。確かにこれは難しい問題ですね…」「確かに。我々に力を借りようとする理由はわかります。」フム……と顎髭を弄りながら色々と考える玄丞斎そして結論はーーー 「何処まで出来るかわからないが、やってみよう白銀君」「私も色々と策を考えましょう。一応帝国にも知人は居ます。そのツテを使い、説得してみるよ白銀君」「あ…ありがとうございますっ!!」是親と玄丞斎の答えを聞き、喜ぶタケル達その後、みっちり親バカっぷりな話題に戻り、3時間親バカトークに付き合わされたタケル達巌谷中佐の家から出た時は既に真っ白な灰状態になっていた。「…………オレ……あんな親にはなりたくないな…。」「……それが良い。」「………スミマセンでした。」げっそりと精神的に疲れ果てた三人。ちょっとフラフラとしながら基地ヘと戻っていく…。『おやぁ~?相変わらずモテるね~外人さんに大和撫子っぽい女性二人を連れて歩いてるなんて…流石だね。』そしてタケル達から少し離れた場所から笑みを浮かべる一人の女性。 『白銀みーっけ☆珠瀬さんに報告しなきゃ。』『柏木晴子』予想外の彼女の登場にまだタケル達は気づいていない…。