『CPからツェルベルス及び帝国斯衛軍へ――現在南方3000から謎の振動を探知した。ツェルベルス大隊・帝国斯衛軍はこの謎の振動の接近に気をつけよ。』「ツェルベルス1了解。……謎の振動だと?」CPの通信を受け、マップを調べてみるアイヒベルガー少佐すると確かに遅いスピードで接近する謎の振動があった。「なんだこりゃ……?いままでにこんな事なかったぞ…?」「我輩もだ。このような振動…今回が初めてだ。」「大尉ですら…。一体…なんなのだ、これは…?」通信の内容を聞いて確認するブラウアー・ララーシュタイン・ブリギッテの三人初めての展開に驚きを隠せないでいた。しかし――――帝国側の衛士達の殆どがその『正体』が何なのかに気づいていた。「イグニス1からCPへ。謎の振動が姿を現れた際、艦砲射撃を要請したい。あと、S‐11の使用許可も頂きたい。」「「「!!!?」」」『はっ…?S‐11の使用許可だと…?』椿の発言に驚愕するツェルベルス大隊のメンバー達あまりの突然の事にCPも唖然とする。『イグニス1どういう事だ?あれの正体が何なのか知ってるのか?』「ああ…知ってる。『本土防衛戦』の時に一度遭遇したからな…。」『なんだとっ!!あれの正体は何なのだっ!!』椿の一言に驚愕し、質問してくるCP 「あれは超大型種BETA…母艦級推定値で全高・全幅170m強・全長に至っては1800mにも至る新型種だ。」「「「――――ッ!!」」」『新型種だと…そんな報告は聞いてないぞっ!?』「当たり前だ。この情報はとある筋から得た情報の機密さ故に公には出来なかったのだ。しかも『本土防衛戦』の際は、土煙の中、地面スレスレに出てきた為、姿を捉える事は出来なかった。つまり、新型種の公開をしたくても、『映像という証拠』がなければ信じて貰えない為、非公開だったという事なのだ。」『そんな…。いや、それでその新型種の特徴は?』遂に公開された母艦級の情報に戸惑いの色を隠せないでいたCPだが、強引に冷静さを取り戻し、更なる情報を聞き出す。「母艦級は攻撃的ではない為か、攻撃手段は現時点では無い。せいぜいその巨体を利用して押し潰すぐらいだろう。しかし、母艦級の恐ろしい点は、その名の通り『母艦』としての役割だ。その胎内には旅団規模のBETAがウジャウジャ溜め込んで移動する。…勿論、大型種の要塞級や重光線級も存在している事を確認している。」『――――ッ!!』「つまり、この母艦の目的は、BETAの援軍をこの戦場に運ぶ事。そうなれば戦況は一瞬で逆転し、全滅だって考えられるっ!!」椿の報告に顔を青ざめるCPその後ろや周辺にいる乗組員達や艦長も同じように青ざめる。「下手をすれば、その巨体故に艦砲射撃も効かないかもしれない。しかし、S‐11であれば、撃破する事も可能だ!!」『なっ――!?』「早く使用許可を取ってくれっ!!早くしないと………全滅は愚か…貴様達の安住の地にも奪われるかもしれないんだぞっ!!」『―――――ッ!!わかった、すぐに連絡する。しばらく待ってくれ。』「すまない、感謝する。」椿の迫力のある説得に反応し、それに応えるCPそして、しばらくして――――『CPからイグニス1。たった今、S‐11の使用許可が降りた。』「イグニス1了解、感謝します。」S‐11の使用許可が降り、安堵する椿感謝の言葉をCPに告げると『御武運を。』と一言だけ告げられる。「イグニス1から第17斯衛大隊・ツェルベルス大隊・ジェネラル小隊へ。たった今S‐11の使用許可が降りた。従って早急にジェネラル小隊と合流し、母艦級を撃破及び退却させる。雷電様・アイヒベルガー少佐宜しいですか?」「委細了解した。」「了解、異論は無い。」母艦級対策として、殲滅作戦を止め、合流を優勢する椿達そして―――「今回のS‐11を母艦級まで届ける役は…白銀大尉…出来るな?」「勿論っすよ。っていうか自分から立候補してましたよ。」「そう……ごめんなさい。」S‐11を運ぶ役としてタケルを選ぶ椿苦痛そうな表情を浮かべるが、タケルの言葉を聞き、謝罪の言葉を告げる。「そして随伴機として冥夜中尉とまりも大尉貴殿等が白銀大尉を守る随伴機とする。これは、白銀大尉の機体の全力に着いていける機体と衛士の腕を考えての選択だ。」「了解、望む所です。」「こちらも天狼の性能をフル活動してでも守り抜いてみせるわ。」随伴機として冥夜・まりもが選ばれる愛する人を守れる役に当たった為か、二人の表情に笑みが現れる。「他のメンバーは可能な限り、この三人を守ってくれ。」「「「「了解ッ!!」」」」椿の言葉に笑みを浮かべて返答を返す。そして、雷電達との合流を目指し、全速力で跳躍する。そして―――――「ガッハッハッハッハッ!!皆無事かっ!!」「紅蓮大将!!」BETAの群れから不知火改・烈火が現れ、タケル達に笑みが浮かぶ。あれだけ暴走していた人達だか、やっぱりその存在感は大きく、タケル達に安心感を与える。紅蓮のすぐ後ろには、雷電・神野が姿を見せ、合流を果たす。「九條少佐よ、母艦級の到着時間はあと何分だ?」 「あと……6分です。」「ウム、ならば我等三人は周辺のBETAを掃討する事に集中しよう。母艦級はそちらに任せるぞ。」「ありがとうございます、雷電様」雷電・紅蓮・神野の三人が三方に別れ、タケル達を護衛する。すると、雷電達の元に数名の衛士達が着く。「我々もご同行致します。」「そなたは…」「ツェルベルス大隊大隊長・ヴィルフリート=アイヒベルガー少佐です。」「ジークリンデ・ファーレンホルスト中尉です。」「一人より数人ならば護衛もしやすいでしょう。微力ながら、我々も一緒に戦います。」「ウム、恩に着る。」雷電の元にアイヒベルガーとジークリンデ率いる第1中隊が防衛にまわる。紅蓮・神野の元にも、ツェルベルス大隊第二中隊と第17斯衛大隊第三中隊が防衛にまわる。「一人で戦うより、大勢で戦った方が良いですよ。」「我々もお供致します。」「ガッハッハッ!!なかなかどうして、心強いオナゴ達だのぅ。」紅蓮の隣にはイルフリーデ・ヘルガローゼ・ルナテレジアが武器を構え、BETAと対峙する。その勇ましい姿を見てか、紅蓮は関心しながら大声で笑いだす。「これより、この場は死地と化す。誰一人たりとも脱落は決して許さん……わかったな?」『『『了解ッ!!』』』神野の背後には、頼もしき第17斯衛大隊第三中隊が武器を掲げ上げる。その勇ましい姿を見ることはないが、笑みを浮かべ、カッカッカッと笑い声を出す。(今の若者達も頼もしくなったものじゃ…。本当に我等老兵がやる事が無くなってきたのぅ…。)今まで、未だ鼻垂れ小僧達しか殆ど居ないと思っていた神野しかし、タケルと出会ってからか、その見方が変わり、考えを改める。(どうやら儂の眼は些か曇っていたらしい…。これ程にも……勇敢な若者達が居るではないか。)最早自分達の時代は終わった。これより先は、この若者達の時代普段頑固者で時々暴走っぷりを見せる神野だが、この時、考えを決める。(生涯現役を貫く考えは未だ変わらんが…そろそろ、後々先の事を考えねばならんのぅ…。)そんな事を頭の中で考えながら――――薙刀を天に突き立て、号令を出す。「行くぞ、皆の衆!!我等の姿を、この欧州の地に刻み付けよっ!!全機着剣、突貫せよっ!!」神野の号令と共に着剣し、突撃する。それと同時に雷電・紅蓮達も突撃を開始する。「私達は母艦級が現れるまでこの場で待機しつつ防戦を行う。母艦級が姿を現したその時こそ勝負の時だっ!!」「「「「了解ッ!!」」」」第17斯衛大隊の第一・第二・第四中隊がその場に残り、母艦級の出現を待ち続けながら防戦する。残り距離1500―――1200――1000―――徐々に近寄る振動に緊張し、握る操縦桿を更に強く握る。そして―――― 「振動が大きくなる!?まだ500も有るぞ!?」振動のマーカーは500の地点で振動が大きくなり、上昇している事を理解するタケル達。すると――――遂にその姿を現す。「…………………これが母艦級……。」誰が呟いたかは知らない―――だが、初めて生で見る母艦級の姿を見て、全ての衛士達の心に『恐怖』を刻み付ける。その巨大さに―――その未知なる生物に―――先程までの緊張が恐怖へ変わり、全身が震えだす。「母艦級を撃破する、全機突貫せよっ!!」「「「了解ッ!!」」」しかし、彼等は違った――――その恐怖に打ち勝ち、全速力で跳躍する。―――――――――――――――――――――――――――――――――『ぜ、全艦砲撃準備せよっ!!狙いはあの超大型種・母艦だっ!!』『戦術機部隊には当てるなよっ!!光線級が現れるまで殲滅せよっ!!』茫然自失していた艦長達が冷静さを取り戻し、砲撃支援の号令をだす。『砲撃―――放てェェェェッ!!』イギリス海峡に浮かぶ艦隊から大音量の轟音と幾多の炎が放たれる。―――――――――――――――――――――――――――――――――「うおぉぉぉぉぉっ!!」砲撃の嵐の中、白銀の戦術機が先頭になり、BETA群を突き抜ける。最低限の攻撃以外は全て己の機動特性に賭けて低空飛行をする。「タケルの……邪魔をするなァァァァァッ!!」その側で白銀の戦術機を守るのは、紫色の戦術機。タケルの武御雷のやや後ろでピタリと息を合わせ、近寄る怨敵を切り裂く。そして、タケルと冥夜のそばには、蒼い戦術機が同行する。「どけっ!!」今回はタケル達について行くため、いつもの地表面滑走や主脚走行はせずに水平噴射跳躍や匍匐飛行で可能な限り回避をし、最小限の攻撃でBETAからタケル達を守る。未だ光線級の姿は見せないが、いつ出てくるか緊張が高まる中、三機は果敢にも突貫する。そして、その三機を守るように、その背後では仲間達が猛攻を仕掛ける。すると―――――「母艦級が口を開いたよっ!!」「全機光線級の攻撃に注意しつつ突貫せよっ!!」「「「了解ッ!!」」」母艦級の口が開き、ワラワラとBETAが現れる。その影響もあってか、次々と護衛する仲間達と離ればなれとなる。「イグニス10からイグニス1へ。そろそろ退避してください、一発とはいえ、その破壊力と衝撃波を考えるならば、戦術機に影響は高い。」「イグニス1了解。全機イグニス10を残し、撤退する。」苦渋な表情を浮かべながらも通信を入れる椿他の仲間達も歯をくいしばりながらも退却する。「タケル…。」「大丈夫だ。ちょっとそこまで行って、タイマーセットしたS‐11を口の中にブン投げるだけだ。後は解放状態を使ってトンズラするから心配するな。」心配そうな表情でタケルを見つめる冥夜とまりも退避命令が出ていても、やはり心配で未だ護衛を続けていた。「必ず……生きて帰ってきてよ…。」「勿論、必ず帰ってくるさ。まだこんな所ではくたばる訳にはいかないんでね。」「………わかったわ、信じてるわ。」タケルの答えを信じて退避を開始する冥夜とまりも。「………久し振りだなぁ…単機突撃するなんて『あの戦い』以来だな…。」二人の退避を見届けた後、同時にタケルも母艦級に向かって突撃する。(佐渡島以来…とはいえ、あの時よりは難易度は跳ね上がってる事は間違いないな。)思い出す記憶―――――『二度目の世界』で『佐渡島ハイヴ』での戦いを―――― あの時は囮と仲間の突破口を開く為に単機で要塞級を相手にしていた。危うく要塞級の触角に貫かれる寸前だったが、伊隅みちる大尉に救われた。しかし、今回は正真正銘の単機。一応艦隊の支援砲撃はあるものの安堵は出来ない。「………これを乗り越えなきゃ、男じゃねぇっ!!」緊張と恐怖を気合いで吹き飛ばし、文字通り『地獄』に突入するタケルだった…。