1998年・2月6日---京都・帝都城---- 「こっ…これは…!?」「これが新しく開発された、新OS・XM3だ。」帝都城のとある一室にて、先日帰還して来た巌谷榮二中佐と、五摂家・斉御司家当主・斉御司兼嗣大佐が、部屋を暗くして、モニターを見る。モニターの内容は、タケル達が開発した新OS・XM3搭載機の瑞鶴の映像。瑞鶴のテストパイロットをした巌谷中佐には良くわかる。この瑞鶴は最早別格のモノの動きだと--- 考えもした事の無い機動。鋭く・的確なアクロバットや、予想外な肉弾戦。戦術機でプロレス技を出すシーンを見た時は、流石に呆然とするしかなかった。そして、次に見た映像は紅蓮大将と神野大将の搭乗する戦術機・『瑞鶴改・烈火』と『瑞鶴改・疾風』との模擬対戦の映像だった。 紅蓮・神野大将の二人と戦うのは、XM3搭載機の不知火。そして、それに乗る衛士は、『白銀武』という斯衛中尉だった。白銀武中尉----彼がこのXM3の発案者であり、XM3のテストパイロットと聞いて驚く。そして、このXM3のモデルが、この白銀中尉の機動特性だった。 愛娘より少し上程の年齢でありながら、この卓越した動きには脱帽するしかなかった。現にこの映像では、紅蓮・神野大将の二人に押されてるとはいえ、二人に中破判定を与え、尚諦めずに戦う。 『喰らえぃっ!!我等が必殺の合体技!!』『ハァアァァ…!!極殺----』『するなアホォォーーーー!!』『『ガハッ!!』』紅蓮・神野大将の合体技をドロップキックで阻止する白銀中尉両大将に放つ暴言に対しては『いつもの事だから気にするでない』…と斉御司大佐の苦笑しながらいう一言を聞いて、驚く。『ヌゥ…また足技を使いよって…駄目ではないか…』『そりゃコッチのセリフだっ!!アンタらのその技は封印すれって言われてるだろうがっ!!以前放ったせいで、演習場が大惨事になったの忘れたのかっ!?』『ヌゥ…格好いい技なのじゃが…』本気で悔しがる紅蓮・神野大将を見て、不知火ごと跪いて落ち込む白銀中尉…まぁ…気持ちは分からんでもないが…結果、白銀中尉は負けたものの、紅蓮・神野大将の二人に善戦し、もう少しで大破判定までいきそうだった事には感服するしかなかった。 その後、現在改良中の不知火の映像を見て絶句するしかなかった。国連軍・帝国軍の共同開発という事だけでも、驚愕する事なのに、改良機である不知火の機動を見て絶句する。 先程のXM3搭載機の瑞鶴すら、子供騙しに見えてしまう程壮絶で、魅了されてしまうアクロバット。あの流れるような動きを見て、つい思ってしまうもし---これがもっと早く開発されていたら---大陸で散った英霊達の命も救えたのでは---悔やむ気持ちを抑えながら、映像を見る「…どうだったかね、巌谷中佐?」パチンと電気を着けて、部屋に光を灯す斉御司大佐。モニターの映像を消して、質問してくる。 「…絶句するしかないですね…。悔やむとすれば…もっと早くに開発されてればと…そんな気持ちです。」「…彼等の死は無駄ではない。彼等の命がけで戦ったからこそ、安心して開発をする事が出来たのだ。」「そうですね…」巌谷中佐の気持ちをわかり、英霊達の戦いが無駄ではない事を改めて悟る斉御司大佐。 「…此処で本題に入りたいのだが…」「何でしょうか、大佐」鋭い眼光で斉御司大佐を見る巌谷中佐そして---- 「君には、白銀武中尉と共に開発計画に参加して欲しい。主に今回の不知火改良機を開発して欲しいのだ。これがもし大成功となれば…改良機は撃震に代わる次期主力戦術機に選ばれる可能性があるのだこれが完成すれば…救われる命も増える事と…私は信じる」「-----ッ!!」次期主力戦術機と聞いて、驚愕以上に心が震え上がるこの機体ならば---日本はBETAと戦えると確信する。 「巌谷中佐---この任務…着いて貰えるかね?」「ハッ、我が命を賭してでも、必ず成功させてみせます!!」やる事は決まった---この不知火の改良機を必ず完成してみせる---瑞鶴のテストパイロット時より、心が躍り、震え上がる気持ちそして、白銀武中尉に興味を持ち、会う事が楽しみにする巌谷中佐。それを察してか、斉御司大佐は--- 「フッ…白銀武中尉に会いたいのならば、斯衛軍第17大隊の下に向かうがいい。今日は九條椿少佐の下でシミュレーター訓練を行ってる予定だ」「ハッ、ありがとうございます。」斉御司大佐に敬礼して、退室する巌谷中佐 「彼ならば…白銀中尉の力になる筈だ…時間は…刻々と迫っているのだから…」 巌谷中佐が退室した扉を見つめながら、7月に起きる『BETA本土上陸』に不安を感じる斉御司大佐だった。数時間後・ハンガーでは--- 「ぷはぁ~…なんて強さだよ…旧OSであの強さって…反則じゃね?」シミュレーター訓練を終え、フラフラしながら椅子に座るタケル すると、タケルの隣に今日初めて会う巌谷中佐が座る 「見事だ、白銀中尉。まさか負けるとは思わなかったぞ。」「それはOSの差ですよ。もし同じ条件ならば、確実に負けてましたよ」今回は巌谷中佐がXM3に乗った事が無い為、巌谷中佐のみ旧OS搭載機の瑞鶴で戦っていた。 XM3に乗り慣れて無い巌谷中佐が乗っても、不利になる為、今回は旧OS搭載機で挑んだが、それでもタケル以上の衛士の腕前を披露し、タケルを苦しめていた。 「そういえば、白銀中尉は今回は肉弾戦をしなかったのは何故かね?奇襲として出せば、私とて引っかかってたかもしれぬぞ?」今回の戦いはタケルは純粋の戦いしかしなかった事に疑問を感じる巌谷中佐。 「いや、今回は純粋に戦ってみたいと思って…それに、そういった事は『奇襲』じゃなければ効果は有りませんし、出しても回避されてましたよ。」「純粋に…とはどういう事かね?」「簡単に言えば、『男』としての意地…かな…?真剣勝負に戦ってみたい相手が現れたから…自分の持ってる力を出してみたい…そんな気持ちになったんですそれにあまり奇襲攻撃に頼りたくないですからね。」『フム…』とタケルの返答に納得する巌谷中佐。すると、タケルの肩を強く叩き、笑みで返答を返す。 「それは貴様が『男』として少し成長した証拠だ。確かに奇襲攻撃も重要な攻撃手段だが、『男』ならば、真っ向勝負で戦う事を忘れてはならん。その気持ちは大切な事だ」「成長…だと嬉しいな…」疲れ果てた顔をしながら喜ぶタケルそんなタケルを見て巌谷中佐は笑みを浮かべる。 (このような柔軟な考えを持つ者が、斯衛軍に居たとは…頼もしい事だ。)元斯衛軍の出身の巌谷中佐にとって、タケルのような人物は『必要な人物』と考えていた 元々斯衛軍は規律が厳しく、上下関係などがハッキリしていた為か、考え方が『堅物』ばかりがいた事に対し、『柔軟』な者はあまり居なかった。唯一、崇宰家の御子息である孝志ぐらいが柔軟な考えを持っていたが、『五摂家』という『壁』が有ったため、周りはそれに一部を除いて着いて来れなかったしかし--- 白銀武中尉の存在がそれを打ち砕いたのだ。 孝志以上の柔軟な考えを持ち、五摂家の斑鳩家以外の御子息達と親しく接し、紅蓮・神野大将に暴言まで言う事を許される程の『馴れ馴れしさ』正に帝国・斯衛軍始まって以来の『問題児』である 接してみてわかった事だが---彼には『忠誠心』が無い--上官に対しても--五摂家に対しても--恐らくは、殿下に対しても、彼は『忠誠心』が無いのだ。 ただし、代わりに彼には『仲間意識』が非常に高く、上官だろうと、部下であろうと、『家族』のように大切にする傾向がある。それは、彼の持ち味であり、『魅力』なのかもしれない。 平等に、身分など関係無しに彼は周りの者と接していた。そのせいもあってか、部隊内の結束力は高く、非常に連携が繋がっていた。まるで、周りの者達を『巻き込んで』皆が持っていた身分の『壁』を壊していたのだ。「フフフッ…君は本当に面白い男だな…」「そっすか?…じゃなかった、そうですか?」慌てて言葉を直すタケルを見て、可笑しく笑う巌谷中佐。 「構わん、君が喋りやすい喋り方で良い。それに、既に紅蓮大将や神野大将に普段の喋り方をしてるのだろう?」「…いや、あの人達の場合は特別で…こっちがしっかりしないと…暴走されるから…つい」「ハッハッハッ!!だが、そういった接し方をするという事は、紅蓮大将も神野大将も、君に心を許してる証拠だよ…多分、『我が子』のように感じてるのだろう。」「うわぁ…あんなオヤジいらねぇ…」タケルの本音を聞いて爆笑する巌谷中佐彼もタケルに少し認めてきてた証拠だった。 「ヨシ、今日の仕事が終わったら、家に来なさい。妹の家だが、何…食事に誘う事ぐらいは問題ない。」「えっ、悪いですよ…せっかくの大陸から帰って来たばかりの休日に、俺なんかが行ったら…」「大丈夫だ、心配する事ではない…それに、今日来たら、愛娘の唯依ちゃんの手作り料理が食べれるぞ?今日は私に合わせて休日を取ったから、妹の家に居るのだ。私が言うのもアレだが…唯依ちゃんの手作り料理は絶品でな…」すっかり途中から『親バカモード』になってしまった巌谷中佐。そしてタケルは『アレ…何かのフラグ立てちゃった…?』と嫌な予感がバリバリとしていたすると、タケル達の前に、ドリンクを飲み歩く椿達が居た所に巌谷中佐がタケルを連れて(拘束とも言う)質問する 「椿様、白銀中尉のこの後の予定はなんですかな?」「えっ…?今日は訓練は午前中までですので、午後からは書類整理などの作業のみですが…?」「書類整理…という事は、午後から抜けても支障は無いのですね?」「ハイ…1日程度ならば…」「それは良かった!!」タケルの肩を再びバンバンと強く叩き、『良かったなぁ~白銀中尉』と喜ぶ巌谷中佐『アラ…なんか悪い事したかしら…』とタケルに申し訳ない気持ちになる椿 「では、着替えて行こうではないかっ!!」「ちょ…ちょっと待ったぁぁぁぁぁ…」そのまま強引に連行されてしまうタケル椿がタケルに合掌して見捨てた姿を中隊のみんなは、連携プレーを発揮して、見て見ぬフリをしていた。「…せっかくのチャンスが…」午後からの書類整理で、タケルとラブラブな空間を企んでた沙耶は、巌谷中佐のせいで潰れてしまい、Ⅲorzと落ち込んでいた…