1998年・5月9日 京都・崇宰家--- 「孝志さん、起きて下さい」「うーん…椿ぃ…あと五分…」布団の中で良い感じに眠っている孝志を起こすタケルだが、椿と勘違いされフリーズし、タケルの隣に居た政弘は『怠け者が…喝ッ!!』と孝志の顔面に正拳をプレゼントする。 「…随分な目覚ましだな、政弘…」「待ち合わせ場所に遅刻するならまだしも、遅刻どころか気持ち良く布団の中とは…良い身分だな…!!」「…………………今何時?」「もう昼過ぎてるッス。」「嘘ぉぉぉっ!?」「事実上、二時間の遅刻だぞ。」呆れた表情で孝志を見るタケルと、怒り心頭の政弘を見て『スミマセンデシタ…』と土下座して謝る孝志。 「昨日椿さんと何か良い事したんですか?」「なななな…何故椿の名前が出て来るッ!?」「寝ぼけながら、椿の名を呟きまくれば、誰だって気づくに決まっておろう。」「ぐはっ!?」墓穴を掘る孝志に突っ込む気力すら失せた二人。そのまま孝志を連行して、城下町付近に向かう。 「全く、せっかく合わせた休日が二時間も無駄になったではないか。」「すまねぇ、お詫びに今日はオレのオゴリだからさ。」「まったく…」苦笑いをしながら、孝志を許す二人。城下町付近の店を散策しながら、買い物をする。「タケル…珍しい物買うな…」「ほう…裁縫道具と生地とは…何を作る気だ?」「いやぁ~…オレ不器用だから、プレゼントとか選ぶの苦手で…だから、不器用ながらでも、『人形』でも作ろうかと思って…」「タケルが裁縫!?似合わねぇ…!!」珍しい事をするタケルに関心する政弘と、驚愕する孝志。孝志に『似合わねぇ…!!』と言われ『わかっとるわっ!!』と反論するしかなかった。 「良いではないか、お金で買ってプレゼントするより、手間暇かけて作る方が愛情籠もったプレゼントになるのは間違いない。貰う方も嬉しいと思うぞ?」「…思い出した。確か以前、月詠真耶『大尉』に人形プレゼントしただろ。あれ…もしかすると、手作りか?」 「なんで知ってるんだ、アンタ!?」驚愕するタケル以前、真耶が『大尉昇進』のプレゼントとして、『メイド長・真耶人形』をプレゼントした事があった 昇進する一週間程前に、悠陽殿下から話を聞いて、日頃からの恩返しと思い、休日丸々1日を使い、プレゼントする物を探したが、結果は『見つからなかった』のだタケルには、プレゼントを選ぶ才能がまっっったく皆無で、選ぼうにしても、ロクな物ではなかった。唯一、マトモなモノがあったが、値札の金額が所持金よりゼロが一つ多かった為、断念するしか無かった。 万策尽き、最早これまでかと思ってたが---頑張る者には神は救いの手を差し出した---閉まっていく店の中で唯一開いていた店『ハローモンキー』24時間営業の衣料専門店である。『…何故衣料専門店が24時間営業…?』びみょー過ぎるツッコミを入れるが、藁を縋る思いで中に入る。 しかし、中にある衣服は一般人向けの服ばかり。勿論中には真耶に似合う物もあったが、タケルには、そんな見る眼は無かった。 『駄目かぁ…』と諦めかけたその瞬間、目の前には店員が手作りで作ったテディベア人形があった。そして、人形のある店は、生地・裁縫道具・ボタンなどの様々なアイテムが販売していた衣料店。そしてその瞬間、タケルに閃きが浮かんで来る!!『欲しいプレゼントがなければ、作ればいいじゃないか?』以前、二度目の世界で、純夏にプレゼントした木彫りのサンタウサギを思いだし、『これだぁぁぁぁぁっ!!』と思いつき、大量に衣料と本を買っていくタケル。その日から、裁縫との戦闘で、全ての指に絆創膏を巻き付ける事になる 作る物は、元の世界のメイド長・月詠真耶をイメージして、『メイド長・真耶人形』を作る事にした。 そして、昇進した日帝都城のとある部屋で真耶に人形をプレゼントをすると、効果は覿面(てきめん)。人形とタケルの指の絆創膏の数を見て、好感度がぶっちぎりに上がり、今までに無いぐらいの笑顔で真耶に感謝される事になる。それ以来、ちょっと学習したタケルは、プレゼントをする際に『手作り人形』というカードを得たのだった。「…それで、今回は誰にプレゼントするんだ?」「ん~?世話になった『幼なじみ』だよ。今まで、ずっと一緒だっただけに、今回は離れてるからな…寝坊助なオレを毎日起こしに来て、母さんの居ない日は飯も作ってくれた。…まあ、今回のは、今までの感謝の意味で…かな?」照れながら説明するタケルを更に関心する政弘と、『良い奴ぢゃん…』とタケルの評価を上げる孝志。 「そういう孝志さんは、椿さんにどんなプレゼントを渡すんですか?」「ぐっ…。それがよ…椿の奴、そういうの無関心って言うか…欲しい物無いかと聞いても『有りませんわ貴方と一緒に居られるのが、一番のプレゼントですわ』…て言うんだよ…。…嬉しいけど、何かこう…プレゼントして喜んでる笑顔がみたいって言うか…」「大変ッスね~…」孝志の気持ちを理解し、同情するタケルだが…タケルの興味の視線は、そのまま政弘に向く。 「な、なんだ…タケル…」「そういえば、政弘さんって、そういう話有るんですか?」「無い。政弘はそういう関連はゼロでな…。モテるんだけど、タケル以上にウブな奴だから、まだ彼女が居ないんだよ…」「た、孝志!?」真っ赤になりながら孝志を叱る政弘だが、タケルに『仲間だ…!!』と認識される。 「政弘さんって、どんな女性が好みッスか?」「好みか…むぅ…難しいな…」唸る政弘、うーんうーん…と悩むと… 「強いて言うならば…『静中佐』だな…」「ああ~…良いね。」「静中佐って…誰ですか?」政弘の言葉に納得する孝志だが、タケルに『誰…?』と首を捻られると、孝志が説明する。 「『紅蓮静中佐』、あの紅蓮大将の一人娘であり、無現鬼道流の後継者である人。べらぼうに美人で、剣の腕も超一流軍人としても凄腕で知られ、衛士としても紅蓮大将や神野大将の二人に迫る程の超実力者だけどプライベートになると、家庭的な人物らしく、『大和撫子』や『良妻賢母』の言葉が当てはまる程の人らしい…ぶっちゃけ、外見上は100%母親似、中身の超人度は父親似…だな」「なんつー…チートっ振りな人だ…」『人間として、この完璧度、どうよ?』と意見を出すタケルだが、孝志と政弘は『紅蓮大将の娘さんだし…』の一言で、全て解決されてしまう。 そんな風にガヤガヤ賑わっていると---- 「うしっしっ♪タケルちゃん、み~っけ☆」建物の物影からタケル達を覗く、純夏・クリスカ・イーニァの三人組が居た…