1998年・6月30日帝都・月詠邸--- いつもとは違い、騒がしい月詠邸。すると、玄関先にてタケル達が居た。 「やちる、後は頼む。仙台の月詠家の屋敷にて避難していてくれ」「ハイ、真耶様・タケルさん、ご無事で…」「やちるさんも気をつけて、オレの車好きに使って良いから、『例の件』頼む」「ハイ…必ずお渡し致します。」やちるはタケルの車に乗り、仙台に向けて出発する。この頃、以前からマークしていた、重慶ハイヴから動きが有り、日本にも警戒態勢が引かれてた。 勿論、この事はタケルや香月博士の話で知っていた為、事前に九州・四国地方を重点的に防衛態勢をし、万が一を考えて、本州にも防衛態勢を引いていた。そして、京都が陥落する事を知っているタケル達は、やちるや屋敷の使用人達を仙台にある月詠家の別邸に避難する事が決まった。 「さて…屋敷には私達しか残ってないか…」「一応、食料は確保してますから、当分は大丈夫ですね。」タケル達は、帝都城を守る為、残る事になった。 その為、BETAが日本上陸するまでは自宅で生活する事が許されていた。「どうやら、皆避難したようだな。」「真那…」「真那中尉!?」すると、タケル達の前に、真那が近寄って来た。 「白銀、此度は緊急の処置として、私も貴様と同じ、第17大隊に所属が決まった。そして、真耶は聞いてるとは思うが、斑鳩家当主の所属する第16大隊に所属が決まった。」「真那中尉がオレの隊に!?」突然の話に驚くタケルそしてまだ真那の話は続く。 「白銀、私の此度のポジションは突撃前衛長だ…つまり、貴様と同じ第1中隊のB小隊だ。」「ま、マジっすか…?」「マジ…?また白銀語か…本当だ、第1中隊の突撃前衛は、貴様ともう一人の少尉だけしか居ないからな。本当ならば、戦術機の操縦が上の貴様が突撃前衛長になるという話があったが、『白銀中尉には、まだ早い』という声が有ったのだ。」「そうですね…オレはまだ指揮を取るにはまだ勉強不足ですね。」「そういう事だ、それ故に私が選ばれたのだ」納得するタケルだが、真耶は『…私も同じ部隊が良かった…』と小さな声で呟く。 「そうだ…白銀。」「なんですか?」真那に呼ばれ、振り向こうとすると、首に腕で締めるように背後に回り込み、小太刀をタケルの首筋に突き付ける。「冥夜様の貴様への気持ちは、知っている…もし、冥夜様を泣かせる事が有ったなら---わかるな?」「ハハハハ…ハイッ!!」きゅぴーん!!と赤い眼光を放ちながら、死の宣告をする真那。涙を流しながら、肝に銘じるタケルと、『ヤレヤレ…真那の悪い癖が出たか…』と呆れる真耶。中に入り、茶を飲む三人、するとチャイムが鳴り響く。 「誰だ?こんな時に?」「オレが行って来ます。」バタバタと玄関先まで行くと… 「タケル君、あっそぼ☆」近所の子供のようなセリフを吐く孝志に、タケルは素晴らしいヘッドスライディングで、ズッコける!!「あ…あんた…っていうか、椿さん達や冥夜までっ!?」「済まない…孝志が言う事を聴かなくてな…」「あの手この手使われて…いつの間にか私達まで、此処に『泊まり込み』になってしまったの…」「お、お邪魔します…」「タケル…済まない…。」政弘・椿・沙耶・冥夜まで、孝志に巻き込まれてしまった様子。「あ…アンタ等、自分の家はどうした…?」「ここと同じように、使用人達は避難させたよ。今居るのは、自分達と同じように防衛戦に出る連中だけだ。オレんちの当主の兄貴は、斑鳩家の当主と一緒に基地で寝泊まりするし、椿の家や政弘の家は、当主二人して、帝都城であれこれ忙しい為、帰れない。冥夜ちゃんの家の御剣家は、現在民を避難させてる為、冥夜ちゃんが余った形になって、オレんちに来て預けられたって訳。そこで、それならばみんなで月詠さんの家で寝泊まりして、タケルをいぢくろうとした訳だ。」「アンタだけ帰れ。この元凶が」非常識な行動をする孝志に、タケルは厳しい突っ込みを入れる。そして、仕方無く中に入れて、居間に居る二人に説明すると、呆気に取られる真那・真耶そして、孝志に『お仕置きという名の拷問』を入れる真耶夜、タケルと同じ部屋で二人っきりで、いやんいやんする計画が潰れ、少しキレ気味になる。((危なかった…))ホッとする冥夜と沙耶。孝志には、心の中で少し感謝をする二人だった。 「しっかし、初めてじゃないかい?このメンバーが一緒で休暇を取るなんて?」「仕方無い事だ、我々は家の事を任されて休暇を取る事になったのだ。使用人達の避難や、大事な家財道具や色々と仙台に運んだのだ。」「今、家に有るのは、少しばかりの食料と布団のみ。後はスッカラカ~ンに無くなってるよ。」タケルの質問に政弘と孝志が答える最早やる事は無くなり、今日だけ暇人になったようだ。 「そういえば、ギリギリで不知火・改が完成したな!!今、斯衛や帝国軍じゃ、大人気みたいだぜ?」「流石に全てには渡らなかったが、我々第17大隊のみ、配置が決まったようだ。」不知火・改が完成し、早速生産にかかったのが、つい今月の始め。急ピッチで生産したものの、それでも40機には満たなかった。 しかし幸運な事に、元々第17大隊は不知火・改を開発していた部隊だった為、すぐに部隊分だけ完成した。最大の理由は、不知火・改のテストパイロットはタケルだけではなく、他にもテストパイロットのメンバーも居た為、その時の機体だけでも12機は有ったのだ。 この提案は、やはり香月博士の案で、万が一の安全策の一つとして、12機は確保していたのだ。 「明日は第17大隊全員で不知火・改でのシミュレーター訓練よ。機体を出来る限り使いこなすわよ」「「「「了解」」」」椿の指示に返答するタケル・真那・孝志・政弘。(むぅ…その不知火・改、乗ってみたいものだ…。)ウズウズする冥夜、衛士として不知火・改に興味が湧いていた。 以前、ループの事を公にした後、冥夜の衛士としての実力を知る為、極秘で一度シミュレーター訓練で、久々にタケルとエレメントを組んだ。最初はなまっていたものの、すぐに本来の実力を発揮出来るようになり、その後に仮想敵として、紅蓮大将と神野大将が相手にした。 勿論結果は敗北だったが、タケルとエレメントを組んだおかげで、冥夜も神野大将に少破判定を与える事が出来た。それ以来、戦術機に乗りたくてウズウズしてたのだ。後々の話だが、冥夜が身代わりの件で解決した後、香月博士の悪戯的な提案で仮想敵役を与えられ、第17大隊のメンバーと対戦させられる事になる。(みんなには勿論内緒で)タケルはすぐ気付くが、他のメンバーは…『なんだあのNPC!?めっちゃ強えぇよ!?』だの『まるで月詠中尉と戦ってるみたいだ…』とか、謎の仮想敵に困惑し、戸惑う姿をコッソリ楽しんでいる香月博士の姿をタケルは目撃する事になる…