1998年・7月1日--- シミュレータールーム--- 「ふぅ…」タオルで汗を拭きながら、降りてくるタケル。その横で、タケルとエレメントを組んでいた同じ突撃前衛がフラフラと歩いてくる。 「あうぅ~…タケルさん、激し過ぎるよぉ…」「お疲れ様。あいよ、ドリンク」「ありがとうございます~…。」ペタリと座り込みながらドリンクをゴクゴク飲むタケルとエレメントを組んでいた、同じ突撃前衛の一人、『五十嵐駿少尉』は、タケルが入隊した時から一緒にエレメントを組んでいた人物だが、最初は着いて行けず、しばらく落ち込んでいたりする程、気の弱い性格だが、隊一番の頑張り屋で、良く居残りをしながら訓練をし、結果3ヶ月後にやっとタケルの機動に着いて来れるようになった。 今現在、第1中隊の中で一番タケルの動きに着いて来れる人物だが、それ以上に着いて行ける孝志にはまだまだ適わないでいた。 「タケルさん、凄いや~…。あんな機動、ボクには思いつかないや…」「駿も頑張って着いて来てるじゃないか…?孝志さん以外には、なかなか着いて来れないんだぞ?」少し落ち込む駿を励ますタケル。事実、着いて来れる駿の腕前にはタケルも認めていた。「そうだぞ、五十嵐少尉。白銀中尉の変態機動に着いて来れるだけでも、凄い事だ。それだけ、そなたの実力が上がった証拠だと思うぞ?」「つ、月詠中尉!?」「真那中尉?」タケル達のそばに真那が寄って、駿を誉める。 「五十嵐少尉の事は以前から知っていた。『斯衛一の頑張り者』と呼ばれる程有名だからな。あの紅蓮大将や神野大将ですら、絶賛する程認められてるのだぞ?」「アワワワッ…そんなぁ…!?」アワアワする駿を見て、タケルは『築地やたまみたいな奴だな…』と苦笑いしながら思う。「さて、椿隊長の所に行くぞ」「ハ、ハイ!!」休憩をした後、椿の下に集まり、反省会をする。様々な問題点や指摘を言い、次に繋げるように言葉を語る「…さて、汗を流して着替えた後は、昼食にする。昼休み後は会議室で隊の陣形の変更などの話をした後、雑務作業を行う事。以上、解散!!」椿の解散の号令と共に、各自自由に行動する。その際、タケルと駿の下に孝志と政弘が寄って来る。 「お二人お疲れさん。」「孝志さんと政弘さん」「此度のシミュレーター訓練は、良い結果だった。五回中三回が全員生還したのだからな。」今回のシミュレーター訓練は、野戦でのBETA戦の訓練を行っていたその結果、五回中三回も全員生還という結果が出たのだ。 「油断は禁物ですよ、政弘さん。実戦はそんなに甘くは無いんですから…」「うむ…そうだな…流石はタケルだな、実戦が近づいてるというのに、冷静に…そして現実的に視野を見てる。」タケルの一言で、己の油断に反省をしながら、タケルの評価を上げる政弘。 『ウム、噂に名高い戦いっ振りであった。白銀中尉よ、見事だったぞ。』「えっ…貴方は…」「いっ、『斑鳩少佐』!?」「あ、兄貴まで!?」すると、タケルの前に、『青』の強化服姿の男性二人がやってくる。「先程のシミュレーター訓練…素晴らしい結果だった。特に白銀中尉…貴殿の機動技術には、驚愕する事ばかりだった。」「君が白銀中尉か、弟の孝志からは話を聞いてるよ。」「は、はあ…」突然の訪問に驚くタケル。興味津々にタケルを観察する二人 「自己紹介がまだだったな私は帝国斯衛軍第16大隊所属の斑鳩伊織少佐である。」「同じく帝国斯衛軍第16大隊所属の崇宰隼人だ白銀中尉の発案したXM3…そして、今回開発した改良機不知火・改…誠に素晴らしい物ばかりだ、貴殿には感謝する。」「い、いえ、そんな事はありません」「タケルは知らないかもしれないが、斑鳩少佐は第16大隊の大隊長であり、崇宰少佐は副隊長のお方だ。良く覚えておいた方がいい」斑鳩少佐と崇宰少佐の自己紹介をされた後、政弘から二人の立場を教わる。「此度の不知火・改…今日我等の大隊にも8機程配置され、慣熟訓練を行ったが…素晴らしいの一言しか、言葉が出て来ない。…よくぞ、この不知火・改を開発してくれた…感謝する。」「俺も乗って訓練したが、瑞鶴とは桁違いの性能だよ、コレには流石に驚いたよ。」「其処まで誉めて下さるとは…みんなで開発した甲斐が有りました。」二人の不知火・改の評価を絶賛され、タケルは敬礼しながら感謝する。「…ところで白銀中尉…君に質問が有るのだが…」「なんでしょうか?」突然の斑鳩少佐の質問に少し緊張するが… 「…白銀中尉、君と月詠真耶大尉の『祝言』はいつやるのかな…?私としては、部下に月詠真耶大尉を持っている故に、お祝いの品の準備をしたいのだが…?」「……………ハイ?」突然の発言。あまりにも突然な発言にフリーズするタケル。その話を聞いていた駿が顔を真っ赤にしながらアワアワする。 「…斑鳩少佐…?その話は一体…?」「うん?知らないのか、斉御司大尉?今帝都では結構有名な噂なのだか…?」タケルの代わりに質問する政弘。政弘の質問に対し、正直に答える「俺も聞いたぞ、その噂。出所は女性衛士達らしいが、白銀中尉と月詠真耶大尉は『同棲』していて、毎日お互いの事を理解しあうように接していて、最早『婚約』まで決めて、夜の契りを頻繁にしている…という話だ。」「…中身は同じだけど、話自体がややこしくなってるな…」兄・隼人の話を聞いて、二人に説明する孝志孝志の説明を聞いて納得しながら、爆笑する二人。「クククッ…済まなかった、白銀中尉。どうやら誤解してたようだ…」「けど、『婚約』って意味では本当みたいだから、結果は同じか。」二人のトドメの一言でKOされるタケル。そして、そんなタケル達から離れた場所から、隠れるように、2つのお団子ヘヤーの頭がフルフルと動いていた(す、既に遅かったか…)タケル達に知られる前に誤解を解こうとしていたのだが、既に遅し噂話を話されて、出るに出られないでいる真耶が居た。「そうだ、お祝いの品は、花嫁衣装にしよう。和風が良いか?それとも洋風のが良いのか?」「いやいや、伊織よ、二人の記念の結婚式の花嫁衣装は、二人が納得出来るように選ばせてあげねば、失礼という物だ。贈るならば、『新婚旅行』の旅先を我々で用意してあげようではないか」「なる程…その後は、二人の『愛の結晶』たる赤子の玩具やオムツも用意せねば…」伊織と隼人の猛攻にタケルは追い込まれ、真耶は影でいやんいやんと様々な妄想で悶えていた。勿論、伊織と隼人の二人はクスクスと笑いを堪えながら、いぢくっていた。 その後、伊織と隼人の二人は立ち去るが、タケルと真耶の復活には時間がかかった…