1999年・1月16日「ハッ…ハッ…ハッ…」グランドでランニングをする純夏達皆が息を荒くして走る中、純夏一人だけは息を落ち着かせながら、ランニングをする。 「なん…だと…!?」「そん…な…莫迦な…!?」「ふむ…」自分達より年下の純夏がまだ余裕を残して走る姿を見て、唖然とする美冴と唯依。そんな純夏の姿を見て、冷静に分析するまりも。 (タケルちゃん…本当にありがとうねっ♪)タケルと一緒にランニングをする約束をしてから、純夏はタケルの特別訓練を行っていた 最初の二週間は普通にランニングをしていた。しかし、走る距離は10キロ『疲れたら歩いても良いけど、止まったらダメだ。』最初はキツかったが、徐々に慣れはじめ、二週間後には、疲れた際、小走りにはなるものの、歩く姿は見えなくなるその距離を毎日走り、二週間を過ぎてから、重さ20キロのバックを背負いながらのランニングに変更これは『完全装備での10キロ行軍対策』として、タケルが考えた案。なんだかんだ言っても、やはり純夏の事を気にしてたのだ。 コレを2ヶ月間、入隊まで行い、少なくとも、体力や持続力・脚力・走力の向上を飛躍的に高めていた。おかげで、純夏はランニング程度に関しては、簡単にはへばらなくなったのだ。「神宮司教官、グランド20周終了しました。」「うむ、みんなが終わるまで休憩を取る事を許可する。」「了解しました。」みんなが終わるまで、少しでも体力回復に専念する純夏。脚の腿を良く揉み、次に備えておく。 タケルの助言を着実に守る純夏。『ランニングの際、出来れば一番か二番辺りを確保する事。そうすれば、その分休憩時間が長くなり、体力回復がし易くなる』『ランニング終了後、10キロ行軍があるから、必ずマッサージを少しでもしておく事。』『オレと一緒にランニングしてた事は内緒にしとく事でなければ、更にキツい訓練が待っていると思え』この三つをタケルに強く言われ、実行する純夏。深呼吸をして息を整え、次に備えておく。 全員が終えると、次はケージにある装備を担いで10キロ行軍になる 「鑑、貴様は特別に『完全装備』で行けみんなと同じ装備では、再び貴様の独走になるだけだからな。」「りょ、了解しましたッ!!」純夏だけ完全装備での行軍となる事に驚く美冴達純夏も驚いたが、『タケルちゃんの予想通りだ…ありがとう…タケルちゃん…♪』と内心喜ぶ。 だが---神宮司軍曹はそんなには甘くはなかった。 「----ふえっ?」「喜ぶがいい、鑑貴様には、完全装備の他に『対物体狙撃銃』アンチ・マテリアル・ライフルも追加してやる。」「ふえぇぇぇっ!!!?」予想外の事に驚く純夏。神宮司軍曹の表情がステキな笑みを浮かべていたのを見て、ブルブルと震える美冴達。「どうせ白銀中尉に体力をつけて貰ったのだろう?なら、この程度など楽勝だろう?」「バッ、バレてる-----ッ!!」タケルと一緒に特訓してた事がバレてしまい、驚愕する純夏。ふっふっふっ…と笑いながら『分隊支援火器のダミーも持っていきたそうだな?』…と、ジワジワと寄ってくるまりもから逃げるように、グランドへと逃げ去る純夏。結局は、完全装備+対物体狙撃銃で10キロ行軍をする事になってしまった… 「おっ、やってるな?」書類整理をしていたタケルが、偶々廊下の窓から純夏達の訓練が見えていた。 「ん…純夏の奴…完全装備で走らされてやんの……って、あの担いでる銃は…?」廊下からでは、グランドまで300m程離れていた為、見づらく何なのかはハッキリとわからないが、担いでる銃の形を見て、嫌な予感を膨らませる「駿…お前、確か目が良いよな…?」「ハイ、一応両方とも2・0です」「済まないけど、あの完全装備で走ってる奴が担いでる銃…何かわかる?」その時、一緒に書類整理をしていた駿に頼み、純夏の担いでる銃を見て貰う。 「あれって…アンチ・マテリアル・ライフルじゃないかな…?正確にはわからないけど、それぐらいの大きさのライフルを持ってますね…」「やばっ!?駿、済まないが、この書類持って先に戻ってくれっ!!」「あっ!?た、タケルさん!?」書類を駿に持たせてから、全速力で走るタケル凄い勢いで廊下を走り去る。 「ヨ~シ、全員行軍を終了したな?」「はうぅ…」全員が10キロ行軍を終了する純夏も流石にフラフラと疲れ果て、目をぐるぐると回すすると、タケルが全速力で走って来る姿を見て、全員が驚く。 「し、白銀中尉!?どうなされました…?」「じ、神宮司軍曹…何故…純夏にアンチ・マテリアル・ライフルを持たせたのですかっ!?」「えっ?いや…鑑訓練兵は白銀中尉に鍛えられていたみたいなので、鑑訓練兵だけハードルを上げたのですが…」「駄目ですっ!!純夏にそんな重量物を持たせて鍛えたらっ!!」凄い勢いで迫るタケルに驚くまりも純夏も『タケルちゃ~ん…』とウルウルと目を滲ませるすると--- 「そんな重量物を担がせて鍛えたら、純夏の『パンチ力』が上がるじゃないですかっ!!そんな事したら、オレや他の訓練兵達が『撲殺』されるじゃないですかっ!!」「「「ハア!?」」」「ほえっ…?」タケルの一言に唖然とする訓練兵達純夏やまりもすら『へっ…?』と茫然自失となる「忘れましたか…神宮司軍曹…純夏の『どりるみるきぃぱんち』や『ふぁんとむ』の破壊力を…」「へっ……………あ゛あ゛っ!!!」やっと気づくまりも『しまったぁぁぁぁ……』と後悔していた。 「純夏はね…パンチ力に関しては、紅蓮大将をも凌駕する程の破壊力を持っています…以前、純夏がオレにレバーブローを入れた時ですら、オレは100mも吹っ飛ばされ、川で土左衛門になっていた事がありました…つまり、今のパンチ力を更に向上化してしまったら……格闘訓練等の時に純夏のパンチを喰らった者は…全て天に召されるかと思われます。」「…………確かに」「「「ええぇっ!?」」」タケルの一言で驚愕し、純夏のパンチ力に恐怖する美冴達『タケルちゃん…幾らなんでも酷いよ~…』と呟く純夏だが、訓練中に『タケルちゃん』と呟いた為、純夏の頭にビニールスリッパが炸裂する。「痛あぁっ!?」「鑑訓練兵、今は訓練中だぞ?プライベートや休憩時間等の時以外は『白銀中尉』か『教官』と呼ぶように言った筈だが?」「も、申し訳ありませんでした…」タケルに怒られてしまい、ウルウルと謝る純夏、タケルの方もまりもとの話を戻す。「…そういう事で、腕力を上げる事は控えて欲しいですね腕立ては…仕方ないにしても、他は却下もし、ハードルをあげたいのであれば、輸送車のタイヤ(ホイール無し)でも背中に担がせておいて下さい。担がせるタイヤの数は、軍曹に任せます。」「あっ、なる程了解しました、明日以降はそうさせて頂きます。」「そ、そんなぁ…」明日からの訓練がハードになった事に悲しむ純夏その事に訓練兵達が純夏に同情をするしかなかった…「はうぅ…疲れたよぅ~…」「お疲れ様、鑑さん。」訓練を終えてシャワーで汗や土等の汚れを落とし、着替える訓練兵達初日から特別メニューを与えられて、疲れ果ててる純夏の肩や首筋を揉んであげていた唯依。「篁さん…ありがとうございます~…」「それにしても、まさか鑑に独走されるとは思わなかったな。」「タケルちゃんには、『間違い無く足を引っ張る事になるから、体力だけでも上げておけ』って言われて、2ヶ月間タケルちゃんとランニングしてたんです。まあ…途中で20キロのバッグ背負わされてたけど…」「厳しいわね、それ…」「厳しい中にも、思いやりが隠れてるけどね」純夏のトレーニング方法を聞いて、少しげんなりとするまりかそんな厳しいトレーニングの中に隠れているタケルなりの『優しさ』を見抜いた佳織 「さて、さっさと教室に向かうとするか、神宮司軍曹にどやされてはたまらないからな…」「そだね…」美冴の進言に従い、さっさと着替えて教室へと向かう女性陣達… 「あれ、あの人誰だろう?」教室に到着すると、教室の入り口付近でまりもと見知らぬ女性が話ししていた。 「むっ、丁度良い時に来た篁訓練兵、貴様の机の中に『筆箱』が入ってなかったか?」「あ、ハイ、一応持ち主が現れるまで、そのまま机の中に入れてました。」「ホント!?助かったわ~…ついウッカリ机の中に入れっぱなしだったみたいで、部屋の中探した探した…」「速瀬少尉…笑い事では有りませんよ…ハァ…」「スミマセン、軍曹」笑って誤魔化す水月だが、少し呆れた風に溜め息を吐くまりも。 そして、唯依が筆箱を取りに行き、水月に筆箱を渡す。唯依に感謝する水月に敬礼をする唯依だが、『敬礼は要らないわ』と断る。 「それにしても…本当に卒業したんだなぁ…昨日まで使ってた、この教室を見ると、そう感じますね…」「そんなモノですよ、少尉殿」「ううっ…軍曹に『少尉殿』だなんて呼ばれるのは慣れませんね…いつも『速瀬ッ!!』って怒られてたから、違和感バリバリですよ。」「それは私もですよ、『少尉殿』?」悪戯っぽく言うまりもに『はうぅ…』と困惑する水月。昨日『訓練兵』として、別れを告げたこの教室を見て、ひどく懐かしく感じてしまう感覚を持ってしまう。 「それにしても、まさか解隊式終わって、速攻で白銀中尉に出逢うとは思いませんでしたよ…しかも、伊隅大尉に『是非とも厳しく鍛えて下さい』…だなんて言うもんだから、早速伊隅大尉に目を付けられましたよ…」「伊隅大尉…という事は、速瀬少尉は『教導隊』に入ったのですか?」「えっ!?お姉ちゃんの部隊に!?」「えっ、『お姉ちゃん』?」『伊隅大尉』という言葉に反応するまりか『お姉ちゃん』という言葉に少し驚きながら、まりかを見る水月。 「伊隅…みちる大尉ですよね…?」「え、ええ…そうよ。」「ヤッパリ!!その人、私のお姉ちゃんです。」「へ、へぇ~…そうなんだ…」まりかが自分の隊長の妹だという事に驚く水月。表向きではA-01の隊員達の家族には『教導隊』という事になってる為、話を合わせる水月まりもも、香月博士からA-01が香月博士直属の『特殊任務部隊』とだけ聞いて、『教導隊』と偽りの部隊の名を明かし、まりか達を誤魔化す。「ホラホラお前達、早く教室に入って準備をせんか。それとも…まだ訓練が足りなかったのか?」「し、失礼致しましたっ!!」純夏達は逃げるように教室に入って行くその姿を見て苦笑いをする水月と『ふぅ…』と軽い溜め息を吐くまりもだけが廊下に残った。 (神宮司軍曹…スミマセン、話を合わせて貰っちゃって。)(構いません、少尉殿それに一応香月博士からは多少の話は聞いてますので…)(そうでしたか…助かりました)小さな声で会話をするまりもと水月。そんな水月の姿を見て『相変わらずね…』心の中で呟き、苦笑いをするまりも「ホラ、早く行った方が良いですよ。涼宮少尉達が待ってますよ?」「あ、ハイ。軍曹…お身体に気をつけて下さい。」「貴女もね、『速瀬』」最後に訓練兵の時と同じように『速瀬』と呼んで貰い、嬉しく反応する水月「神宮司軍曹、私は『神宮司軍曹の子供』として誇りに思います。これからも神宮司軍曹や白銀中尉に教わった事を忘れずに、誇らしく生きていく事を誓います。」「----そう。貴女の活躍を此処から応援してるわ。」お互いに敬礼しあい、別れる二人(もう…嬉しい事言ってくれるじゃない…)教室に入る前に涙を拭い、気持ちを切り替えて、新しい『子供達』の下に向かうまりもだった…