1999年・4月7日仙台・月詠家別邸---- 「……………真耶さん…今、なんと言いました?」全ての始まりは、この一言から始まった。この日の晩、月詠家別邸では、珍しく香月博士と霞が来訪し、一晩泊まりに来ていた。 00ユニットの改良の件も順調良く進み、『今日ぐらいは泊まってゆっくりしたいわ』と、一晩限りの羽目を外す事になった。 以前京都で月詠家で食べた食事を思い出し、やちるの料理を目的に泊まる事にしたらしい。 そして、影行夫妻や霞と共に月詠家別邸にやってきた。勿論手ぶらな筈が無く、片手には『大吟醸・吹雪』が握られていた。 そして、晩御飯前に一杯…という事で、タケル・影行・楓・霞の四人で晩酌していた。(霞は合成オレンジジュース)そして休日だった真耶が帰って来て、タケルの隣に座り、戸惑いながらもタケルに呟く。 「タケル…実は、赤ちゃんが出来ました…」この時から10秒程、時が止まる。後ろから、おつまみを持ってきたやちるも硬直し、時が止まる。「……………真耶さん…今、なんと言いました?」一番最初に立ち直ったのはタケル確認の為、もう一度聞き出す。 「赤ちゃんが出来ました。」お腹をさすりながら、再び答える真耶静かにおちょこを置いて、爆発する。 「なんだってぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」「ほっ、本当に!?」タケルの叫びと共に動きだす一同一気に真耶の周りに集まり、質問責めにする 「ハイ……今日…産婦人科に行き、調べて貰った所…2カ月だそうです。」「えっ…あっ…うん…そっか…」戸惑い言葉が出て来ないタケルと報告した真耶の顔は、真っ赤に染まっていた。 「香月博士…済みませんが、此度の作戦…私は外れる事になりますが…」「いいわ、いいわ♪妊娠しちゃったんだから、仕方ないわ。もし責める事ならば、白銀の方を責めるから、安心して休養しなさい。」「はぁ…ありがとうございます。」香月博士の意外な対応に驚く真耶。「一応再検討するけど、第16大隊の真耶大尉の抜けた場所には、紅蓮大将を入れて対処する方法でも良いわ。ただ、一人欠けたからには一人補充する必要はあるわね…」「補充要員なんて、居るんですか?」「一応まりもを考えているわ。元々教官職の都合を考えて、当初の参加は外したけど、今回ばかりは仕方ないわ。」「けど、純夏達訓練兵の教官は誰が…?」タケルの質問に対して、香月博士の答えは---- 「A-01の人員を使うわ。今、衛士として参加出来ない隊員が二人居るの、まりもが戦場で戦ってる間は、その二人に任せるわ。」「そうですか…わかりました。」真耶が抜けた戦力補充要員として、まりもが参加する事が決まった。そして、大吟醸・吹雪をおちょこにつぎ、お祝いの乾杯を仕切る香月博士「さて、急遽な事だけど、白銀の赤ちゃんが出来た事に乾杯よ♪」 「「「乾杯~!!」」」おちょこやコップにお酒をつぎ、乾杯をする一同それからしばらくして、沙耶が椿を連れて帰宅。一応真耶からは聞いていた為、話は通っていた。因みに沙耶はまだ身ごもってはいない事を聴くと、みんなの知らない所で『チッ…流石に二人同時はいかなかったか…』と舌打ちをする香月博士の姿があった。乾杯をしたのち、お祝いも込めて、晩御飯にする。すると----「タケルゥゥッ!!赤ちゃんが出来たってぇぇぇっ!?」「広がるの早ッ!!つーか、まだそれ早いッ!!」居間の縁側から、孝志が凄まじいスピードで来訪する。その手には、ガラガラや人形などの玩具や、山程のオムツを抱えて持って来た事に突っ込むタケル。「タケル…これを使うと良い。」「政弘さん…アンタまで…」孝志の後に政弘もやって来たが、その手には孝志程では無いが、赤ちゃん用の服が沢山入った紙袋を寄越してくる。「白銀、赤子が出来たそうだな?」「紅蓮大将まで…」次は紅蓮大将まで来訪するしかし、今度は日本酒以外は手ぶらで安心するタケルだが… 「短時間ではあるが…名前を考えてきてやったぞ?参考にするが良い。」「多ッ!?」懐からノート一冊を取り出して、タケルに渡す。ノートの中身は全てページにビッシリと名前がかかれていた「タ~ケ~ル~ちゅぁぁん~♪」「ハッ!!!」背後から聞こえる馴染みのある声。明るい声とは裏腹に、何故か『ゴゴゴ…ッ!!!』と殺気を感じる。そして、ギギギ…と後ろに振り向くと…純夏を筆頭に、冥夜・まりも・クリスカが暗黒のオーラを纏っていた。 『『『『ちょっと……O・HA・NA・SHI・しようか…?』』』』「ちょっとま----」『ちょっと待て』と言う前に、タケルを道場まで拉致る四人。そして、何やら凄まじく暴れている音と共に道場が揺れまくる。 乙女達の嫉妬は怖いとばかりに男性陣達が震える… 「…………あ~…生きてるか、タケル…?」「…………………かろうじて…」純夏達が居間で楓に説教をされてる間に、タケルの下には影行と紅蓮大将がやって来る。「なぁ…親父…」「なんだ?」「……オレ、『父親』として、今何をすれば良いのかな?」初めての『父親』としての質問に対し、影行はあっさりと答える。 「んなモン今まで通りで良いに決まってるだろ?」「ハイ?」意外な返答に唖然とするタケル「まだ2カ月だぞ?まだ身重にすら成ってない状況の今に、タケルは何をする気なんだ?」「いや…それがわからないから聞いてるんだけど…」「なら、真耶ちゃんがお腹を大きくして、身重になる時にしてやれば良い。今は早産でない限り、父親としてやる事は無い。真耶ちゃんの体調だけ気にかけてやればいい。」父親としての助言を貰い、少し落ち着くタケル。「作戦中に関しては安心するが良い。常にお産の準備が出来るように手を打っておいてやる。」「ありがとうございます…紅蓮大将」「良い、気にするな。」紅蓮大将に礼を言うタケルだが、『礼は要らん』とばかりに、笑い飛ばす。 「さて…あちらの方は大丈夫ね…」タケルの様子が心配だったが、影行や紅蓮大将のサポートにより、一安心する。 「おばさ~ん…ごめんなさ~い~…」「純夏ちゃん、気持ちは分からんでもないけど…やり過ぎはいけないわよ(怒)」『流石にやり過ぎ』と判断し、母・楓のお仕置きを受ける純夏・冥夜・クリスカ・まりも細い角材二本の上に正座させ、膝の上に10キロ程の重りを乗せる 角材の存在で地味~~に痛い為、プルプルと痛みに堪えている四人。 (お義母様…流石に冥夜様は拙いのでは…?)(あら?いずれ『義母』になるのでしょ?ならば問題はないわよ。)強引に問題を解決する楓に唖然とする真耶『真那が居なくて良かった…』と心の中で呟く。 「真耶さん、少し香月博士に話がありますので、席を外します純夏ちゃん達を見張って下さいね」「は…ハイ!!」紅い眼光を放ち、『ちゃんと見張ってないと、ダメよ~♪じゃないと…フフフッ…』と威圧をしながらアイコンタクトで語り、去っていく楓救出不可能と理解し、『…皆さん…済みません』と呟き、『救出は諦めて下さい』と宣告する真耶真耶の一言にる~る~…と泣く純夏達…「香月博士…」「なにかしら?」「少し…お話が…」楓の一言を悟り、『わかったわ』と語り、居間から席を外す香月博士 タケルの部屋に入り、二人だけの『話し合い』をする 「これで…良かったの?」「ええ、良いわ。流石に今回は予想外だったけど、都合は良かったわ。少なくとも、あと『四~五人程』身ごもって欲しいわ。」「ハァ…『白銀ハーレム計画』ね…なんか…複雑な気持ちね…」「仕方ないわよ、『白銀の為』なんだから…まっ、『他の奴の為』でもあるんだけどね…」「………」無言でいる楓…彼女も『白銀ハーレム計画』の内容を知る者故に、協力をしていた。最初は香月博士お得意のイタズラだと思っていたが、内容はかなり重く、イタズラではないと理解する。 「ねぇ…そういえば気になってたんだけど…タケルや冥夜ちゃんに香月博士はループした存在よね…?博士や冥夜ちゃんはループした際、その時代の年齢まで若返ったのに、何故タケルは『18歳時の姿』なのかしら?」一つの謎---タケルの姿が『18歳時の姿』でループした件冥夜・香月博士はループした際、継承はしたものの、その時代の年齢にまで若返ったのに対し、タケルのみ『18歳時の姿』での登場に疑問視する楓その疑問について、香月博士は--- 「一応その問題は大体解決してるわ。私や御剣の場合は通常の状態だけど、白銀の場合は、ちょっと『特殊な状態』なの」「特殊な状態?」「そうね…今現在居る世界をAとして『前の世界』をBとするわ…Bから来た私達は『情報』としてAにループして、Aの白銀・御剣・私と同化したわ。その際、Bで得た経験や記憶などを継承するの良い例として、Aの白銀のお腹はプニプニした一般人のお腹だけど、Bの白銀は、まりもに鍛え上げられたおかげで、お腹は筋肉モリモリの6パックになったわ。で、AにループしたBの白銀の『情報』は、Aの白銀と同化し、Bの白銀の『情報』を継承し、本来プニプニだった、Aの白銀のお腹は、筋肉モリモリ6パックに変化するのけど、本来の力関係で言えば、Aの方が強く、Bからループしても、本来その時代の姿から劇的に変わる事は無いの簡単に言えば、子供から大人へ姿を変える事は本来無いの。そして、私や御剣は正にその例えに入るの」「…タケルは?」不安そうに話の続きを聞くと--- 「白銀が『18歳時の姿』で現れた問題の件に関しては…推測だけど良い?」「…良いわ」「わかったわ…白銀の今回のケースに関しては、『複数の『白銀』が流れて来て、同化した』と私は考えてるのAの白銀にB・C・D・E…と複数の白銀武の情報がループして同化したものと考えられるのだからAとの力関係に勝り、本来14歳だった白銀が18歳時の姿になったと考えられるの現にアイツは『最初の元の世界』『一度目の世界』『二度目の世界』『現在の元の世界』の記憶を『全て覚えてる』と言ってるわ。それは記憶の流出ではなく、『ループした複数の白銀が、Aの白銀と同化した』と考えた方が可能性としてはあり得るわ。記憶の流出だと、記憶の所々が虫食い状態になるけど、ループして来たんなら、記憶を鮮明に覚えていてもおかしくはないわ。現に私や御剣も、『前の世界の記憶』は鮮明に覚えてるわ」「なる程…大体の事はわかったわ…」香月博士の説明を聞いて一応納得する楓「けど、タケルの身体には悪影響は無いの?」「そればかりは私にもわからないわ。けど、今現時点ではその心配は無いみたいね。あるんなら、既に起きてるわよ。」「……なら良いけど…」少し不安を抱えながらも、香月博士を信用するしかない楓。 「さて、そろそろ部屋に戻るわよ?あまり席外してたら怪しまれるしね~」「ハイハイ…」話し合いを終えて、居間に戻る楓と香月博士… 「おばさ~ん…お願いだから…許してぇぇっ!!」「はっ?」足をピクピクと震わせながら、悶えてる純夏達…すっかり純夏達にお仕置きをしていた事を忘れていた楓そして純夏達の足は既に限界まで到達していた…