「………今の…何…?」遠く離れた場所にいる、香月博士とタケル達が、純夏の放った『ふぁんとむ』の閃光を見て呆然とする。 「ああ~…とうとう『ふぁんとむ』使ったか…」「ふぁんとむ?ああ~…鑑の必殺技の事ね~」『純夏の仕業』と解ると、みんなが納得してしまう。「…という事は…犠牲者は…速瀬あたりか?」「ちょっとまって……半分あたりよ、白銀速瀬と伊隅まりかのマーキングがロストしたわ…」『ふぁんとむ』の犠牲者は水月と予想するタケルだが、香月博士が調べてみると、まりかもロストしてた事がわかり、合掌する。 すると、通信機のそばにある警報ランプがグルグルと回り、ブザーが鳴り響く「あら、どうやら誰かが脱出ポイントに近づいたようね…」突然ブザーが鳴り響いた事で、誰かが脱出ポイントから5キロ以内に近づいた事を知る。そして、無線機を取り通信する香月博士。 「まりも~?聞こえるかしら~?」『聞こえるわよ、夕呼』「今そっちに訓練兵が5キロ以内に近づいたわよ。」『そう…わかったわ…』用件を済ませると、香月博士の方から無線を切り、ニヤリと笑みを作るまりも 「さて…やっと出番が来たわね…」通信機をテントの中に入れ、出撃準備をするまりも訓練兵や追跡者達とは違い、服装は迷彩服に革のブーツ腰に模擬用のナイフとペイント弾入りの拳銃を装備するそして、まりもの手には、演習には全く関係の無いモノが握られていた。しかし--これこそが訓練兵達を恐怖に陥れるアイテムだった。 「ング…ング…ング…プハァ~…ういぃ…ヒクッ♪」『カランカラン…』と、地面に転がる三本のガラス瓶のラベルには『大吟醸・武御雷』と書かれていた… 「ウフフフッ♪さぁ~て、狩りにいくかぁ~♪」『きゅぴーんッ!!!』と紅く光る眼…今…恐怖の『狂犬』が野に離された瞬間だった…。 一方---「…前方に敵影無し…ビャーチェノワの方は…?」「此方も異常無し…随分と走ったな…みんなとも、はぐれたようだし…」「…みんなを信じよう…」建物で仲間とはぐれてしまった、唯依とクリスカの二人。全力疾走をして逃走した為、一番脱出ポイントに近い位置に居た。 途中までは、まりかも一緒に居たが、純夏を護衛する為、まりかとは別れた。 「…現在地からすると、恐らくは私達が脱出ポイントに一番近い位置に居るだろう…そして、先程脱出ポイントから5キロ以内に入った為、神宮司軍曹が動いたと考えた方が良い。」コクリと唯依の意見に賛同するクリスカ勿論周囲の警戒を怠らないように周りを常に監視しながら話を聞く。「私達のするべき事は二通り。1つは、神宮司軍曹に遭遇しないで脱出ポイントに向かう事。もう1つは、神宮司軍曹に遭遇した場合、もしくは発見した場合は、戦闘をする事。1つ目は、熟練の神宮司軍曹相手故に低い可能性だが、遭遇しない事にはこした事は無い。そのまま脱出ポイントに向かい、合格するまでだ。2つ目は、後々鑑さんが戦う際に、少しでも優位に立てるようにする事。なるべく神宮司軍曹の弾数を減らし、出来ればダメージを与えて戦闘に影響が出るようにしておきたい。」「…出来るのか…私達二人だけで…?もし『狂犬』になってたら……私達は全滅必至だぞ?」「『狂犬』?」クリスカは唯依に、ファミリーレストランの件を話す…すると、唯依の顔がピクピクとひきつりだす「…あの状態になられたら…我等に勝ち目は無い…」「ちなみに聞くが…その時神宮司軍曹の相手していた方は誰だ…?」「確か…タカツカサ・タカシという斯衛の大尉だった筈…」「た、崇宰様だとっ!?…なんて恐れ多い…イヤイヤ…なんて強さだ…孝志様は確か武に長けた御方と聞く…その方を倒すとは…」『むう…』と対策を考える唯依…しかし、幾ら考えても、答えは出てこない。 『フフフフフッ…♪』「な、何ッ!?」「何処からだッ!?」突如聞こえてくる嗤い声恐怖心を煽りそうな嗤い声で唯依とクリスカの平常心を乱す。 周囲を見渡しても誰も居ない。しかし、確かに嗤い声は聞こえたのだ そして---『篁とビャーチェノワ……みぃぃつけたぁ☆』「「ひ、ひぃぃぃぃっ!!?」」上を見ると---まりもがハ○ター宜しくのように逆さまの状態で、木の枝にぶら下がっていた。紅く目を光らせ、獲物を狩るような不気味な笑みを浮かべながら、唯依とクリスカを狙っていた。 「撃て----」「何処を狙ってるのかしら~………ヒクッ♪」「なっ---!?」銃を抜き出し、狙いを定める瞬間---既に木の枝から降り、唯依とクリスカのすぐ後ろに着地するまりも振り返り、まりもに狙いを定める前に、まりもの後ろ回し蹴りで唯依の拳銃が弾かれ、そのまま唯依を拘束し、『盾』にしてクリスカに突撃する。 「クッ…狙いが定めれない…!!」「何処を見てるの~?」「な、何ッ!?」唯依を盾にされていた為、狙撃出来ない状態になるクリスカすぐ近くまで接近されると、すかさず唯依を離し、クリスカの後ろに廻る。 「フンッ!!」「ガァッ!?」拳銃を持つ右腕を強引に後ろに回し、関節技を入れ、拳銃を奪い、遠くへと投げ捨てる。 「まだまだ甘いなぁ~…あそこまで接近されて、銃を使うなど…お前等…まだまだなっとらんわっ!!…ヒクッ♪」酔っ払いながらも唯依とクリスカに喝を入れるまりも酔拳ヨロシクなほど千鳥足でふらついてるにも関わらず、その動きは獣以上の鋭い動きを見せていた。これが『狂犬』と恐れられている神宮司軍曹の実力---いろんな意味でも、複雑な気持ちであるが、その強さに絶句する唯依とクリスカ「それじゃあ~…いくぞっ!!」獣のようなスピードで二人に迫るまりもそして、唯依の両肩を掴み、腹に膝蹴りを入れる。しかし、強化装備を着ている為、ダメージはゼロだが、少し前屈み状態になる。 『カチッ』「えっ!?」 その時、唯依は『音』が聞こえ、驚く。するとまりもは、すぐさま唯依から離れて反転し、クリスカの下に走って行く。「なんて速さだ…!!」「狙いが甘いわよ~、ビャーチェノワ☆」左右に動きまわるまりもに、腰からもう一丁の拳銃を取り出し、反撃をするが、獣じみた動きで、ペイント弾を回避される。 すると、クリスカの目の前で、手のひらを突き出してくるまりもクリスカの視界を一瞬遮って、しゃがんで足払いを入れる!! 「うわぁっ!?」「隙アリッ!!」倒れたクリスカの左肩にまりもの右手で押さえつけ、そのまま左拳を振り下ろす 『カチッ』「えっ!?」すると、先程と同じ『音』が聞こえ、唖然とするクリスカその後直ぐに唯依が援護でまりもに蹴りを放つが、それすらニャン♪と前屈み状態にして回避したのち、二人から離れる。 「フフフ~♪これでお前等の強化装備の防御力は『下がった』ぞ…♪」「えっ…?……………まさかっ!?」嫌な予感がし、唯依は自分のジャケットのチャックを開けると----『レスキューパッチ』が押されてて、保護皮膜が『分解液』で弱々しくなっていた!! 「しまったッ!!保護皮膜が分解液で…!!」「フフフフフッ…!!これで肉弾戦が有効になったな…」『ゴゴゴ…!!』と黒いオーラを放ちながら、ニヤニヤとするまりも口を三日月のようにして笑ってるものだから、恐怖度はメチャクチャに高い。「フフフフフッ…♪お前等二人を倒して…ヒクッ♪ご褒美の『白銀と一緒に二泊三日の温泉旅行』ゲットなのら~♪そして…鑑も倒せば…フフフフフッ…!!」「「ちょっと待てぇぇぇっ!!」」『私達が衛士になれるかを賭けた試験に、何してるの?』とツッコむ唯依だが、いやんいやん♪とクネクネして萌えてるまりもクリスカは違う意味でツッコみ、『タケルと一緒に温泉旅行に行かせてたまるものか…!!』と闘志を燃やす。 「そ~ゆ~事で…ワタシの為に、失 格 に な れ ♪」「「却下するッ!!」」まりもの暴言に対し、即答で拒否する唯依とクリスカすると…『きゅぴーん…!!』と黒いオーラが更に増量する。 「良い覚悟だ…ヒクッ♪ワタシの幸せを邪魔するヤツは…逝ってしまえ---!!」本音を暴露しながら猛突撃をするまりもそして、それに対して、反撃の体制を構える唯依・クリスカ 結果は---- 「フフッ…!!愛は勝つなのら~♪」強化装備の防御力を失った今、やっぱり瞬殺になってしまい、勝利を得るまりも唯依は目をグルグルと回し、クリスカは阻止出来ず、悔し涙を流していた…「ゆ~こ~♪篁とビャーチェノワを倒したわよ~…アハハ♪」『…………………………………アンタ、もしかして……酔ってる?』「ちょび~~~ッとね♪」『……篁とクリスカ…お気の毒に…』まりもから通信機が入り、唯依・クリスカの二人を失格にした事を聞く香月博士だが、まりもの軽い口調を聞き、『狂犬モード発動中』と知り、唯依・クリスカに対して深く同情する。 『お願いだから、『仲間を倒す』のは止めてよ…』「わかってるわよ~…ヒクッ♪」『……不安だわ。』未だに健在するみちるの身を心配する香月博士 そのまま通信機を切り、みちるへと通信を繋げる。 「伊隅、そっちの様子はどうかしら?」『ハッ、現在前方200m地点にシェスチナ訓練兵を博士の命令通り『常時監視』しています。』「上出来よ、伊隅引き続きイーニァを監視し、『作戦』を続行しなさい。但し、イーニァが弱音を吐いて気持ちが諦めてるようだったら…遠慮なく狙撃して構わないわ。」『了解しました』「あっ…但し、E-5地点には絶対に近寄らせない事。今現在まりもが『狂犬』になってるから、アンタごと倒される危険が有るから、威嚇射撃しても構わないから、絶対にまりもとは遭遇は避ける事。」『りょ…了解しました…絶対に近づきません…』ガタガタブルブルと震えるみちる昔、訓練兵だった頃に、『狂犬モード』のまりもにフルボッコされたトラウマを思い出し、涙を流しながらも、『今日は絶対に近寄らない』と強く決意する。 そして、一方純夏は---- 「脱出ポイントまで、あと5キロを切ったか…もう少しで合格だよ…」1人寂しくも頑張って前進する純夏脱出ポイントまで5キロを切った為、ワザとに目立つように罠に気をつけながら走る。当初の作戦通り、自分にまりもとぶつけ、他の者達が脱出ポイントに到着するまで『時間稼ぎ』をし、まりもを抑えておく作戦だった。 勿論、他の追跡者に見つかっては元も子も無いが、純夏の考えでは『少なくとも、私が三人撃破したから、見つかり難い筈』と考え、走る選択肢を選んだ。 現に純夏の選択は良い方向に向かっていた。追跡者の生き残りであるみちるは、香月博士の命で、イーニァを監視している為、警戒はしてるものの、純夏には眼中は無い。むしろ、万が一純夏に撃破されては、せっかくのご褒美がパーになる為、避けていた。 他の追跡者は既に撃破されてる為、事実上まりも以外は純夏を狙っている奴は居なかった。 そして、しばらく走り続け、木々が無い広場に出ると----「鑑…待っていたわよ~…ヒクッ♪」「……神宮司軍曹…もしかして…酔ってる?」「ちょび~~~~ッとね♪」『絶対ちょびッとじゃない!!』と心の中で呟く純夏その際、失格になった唯依とクリスカを発見する。 「篁さんに…クリスカまで…」「スミカ…頼む…軍曹を倒してくれ…じゃないと…タケルが…タケルが『軍曹と二人っきりで二泊三日の温泉旅行』に連れてかれる…」「……………………………………えっ?」クリスカのセリフを聞き、ピクリと動きを止める。その際まりもは『ウフフ…♪楽しみだわぁぁ…♪』と萌えていた。 「タケルちゃんと二人っきりで……温泉旅行?」『ゴゴゴ…』と嫉妬で暗黒のオーラを放出する純夏違う意味で殺る気満々になり、ギラリッとまりもを睨みつける!! 「絶~~~~対ッ!!!阻止してやるんだからッ!!そして、みんなと一緒に合格して、衛士になって…誕生日を迎えたら…先にクリスカと一緒にタケルちゃんと『結婚』してやるんだからッ!!」「………………………………………………なんだと?」今度はまりもが純夏のセリフを聞き、嫉妬で暗黒のオーラを放つ。その際、そばにいた唯依は恐怖でビクビクしていたが、クリスカは『タケルと結婚…タケルと結婚…』と萌えていた。 すると、純夏は纏っていたジャケットを脱ぎ捨て、あろうことか、レスキューパッチを押して分解液を放出し、防御力をダウンさせる。 「…どういうつもりだ、鑑?」流石に是には驚くまりも。その行為について質問すると--- 「篁さんやクリスカのレスキューパッチが押されてる跡がある…二人がそんな事するわけ無いから、神宮司軍曹が押したって事だよね…?」スゥ…と右手の人差し指で唯依達のレスキューパッチを指差す 「なら最初っから自分で押せば、焦る事もないし----覚悟が決めれるもん」「ほう…」覚悟を決めた純夏の表情を見て感心するまりも強化装備に慢心しない姿を見て、少しだけ嬉しい気持ちになる。 「良い心構えだ、鑑…だが---勝つのは私だ。ング…ング…ング…ぷは~…ういぃ…♪」突然、胸元から『大吟醸・武御雷』を取り出し、グイグイと一気飲みをして、エネルギーを補充する。良いカンジに酔いがまわり、更に凶悪度をアップするまりも 「では---行くぞ、鑑ッ!!」「返り討ちにしてやるっ!!」お互いに両拳を前に構え、突撃する!!