「ふあぁぁ…慣れてるとはいえ、眠たいモノは眠いわね~…」現在、日付が6月22日に変わり、深夜零時を回った所だった。 脱出ポイントに全員集まり、重い瞼(まぶた)をこすりながらも、睡魔と戦う。 しかし、当の演習場にいた純夏達やまりも、そして脱出ポイントに到着したイーニァはそれどころではなかった。 「イーニァ…大丈夫か…?傷は痛くないか…?」「だいじょうぶだよ、クリスカこんなキズへっちゃらだよ。」顔にかすり傷を沢山付いてるイーニァを、オロオロと心配するクリスカ傷の数だけ、イーニァも頑張った事を物語っていた。 すると、タケルが純夏達訓練兵の前に立つと、演習の結果を発表する。 「みんな、お疲れ様。これで今回の総戦技演習は終了したが、今回の結果を発表する。」ゴクリと息を呑む一同…タケルの言葉を静かに聞くと、今回の結果が発表される。 「今回の演習は、イーニァの脱出ポイントの到達で、ミッションは成功だ。生存者も、イーニァ・純夏の二名が残っていた事から、まあまあの結果だ。---だが、勿論色々な指摘するポイントも多々あった。」タケルの言葉に、緊張が走る純夏達様々な失敗を思い浮かべ、ギリリッ…と歯を食いしばる。 「まずは、前島他二名。先程も言ったが、お前達は周囲への警戒心が足りなかった為に、早期に失格者となった事そして、前島の失格の件に関しても、篁・クリスカの失態でもある。幾ら、相手が伊隅大尉だからと言っても、早期からこの結果では、実戦では部隊全滅の危険性も有った事を忘れるなっ!!!」「「「ハッ!!」」」悔やむ表情をする唯依達。特に唯依とクリスカは、自分達の周囲への警戒を足りなかった為、正樹を失った事に繋がった事に悔やんでいた。「次に宗像と…此処には居ないが、伊隅まりかの二名途中に有った建物内に仕掛けてあった罠に掛かり、部隊を危険な目に合わせた件。単に自分だけが罠に掛かるならばまだいい。しかし、今回は宗像の油断と伊隅まりかの警戒心の欠如の為に部隊全体が罠にかかった事は誉められる事ではない。」目を閉じながら、己の失敗に後悔する美冴だが、『今更後悔をしても遅い』と気持ちを切り替えて、反省しつつも今回の失敗を心に刻みつけ、教訓にする。 「あとは…純夏…」「わ、私!?」予想外にも純夏の名が告げられ、驚く唯依達。 「今回純夏は、鳴海・平・速瀬の三名を撃破する活躍をした事は、合格点は愚か、勲章モノだ。それは誉めてやるが…」純夏を誉めるタケルだが、ピクピクと額に怒りマークを出しながら、ビニールスリッパを力強く握り締め--- 「仲間である伊隅まりかを巻き込んで『ふぁんとむ』を撃つとは何事かァァァッ!!」「あいたぁぁっ!!」強烈なビニールスリッパの一撃が、純夏の頭部にヒットする。そして、『ふぁんとむ』の犠牲となったまりかに対して合掌する美冴達「しかも…今回の演習中…『接近戦のみ』とは何を考えてるッ!!銃も使わんかいッ!!」「うわぁぁぁぁっ!?」そして怒りのビニールスリッパ乱舞で純夏をKOするタケルビニールスリッパを操るタケルを見て、『なる程…』と観察するまりも「……そういう事で、伊隅まりかは、速瀬少尉と共に『どりるみるきぃふぁんとむ』の犠牲となり、現在は仙台の俺んちの庭に落下したと報告があった。」「仙台っ!?」「…飛んだな……」妹のまりかが仙台まで飛ばされたと知り、驚愕するみちる『ぱんち』を喰らった身である孝之は、『ぱんち』以上である『ふぁんとむ』を喰らった水月に深く同情する。 「………まあ、このように、問題点はあったが、結果は結果。今回の第1優先順位は『脱出ポイントへの到着』だ。故に今回の総戦技演習は『合格』とする。」「「「----ッ!!」」」訓練兵全員の表情が一気に笑みが浮かび、喜びの歓声が出てくる。 その嬉しさに、美冴やクリスカですら、涙を流しながら歓喜する。 「とはいえ、今回の結果を見ても、お前達はまだまだ未熟だ。基地に帰ったら、神宮司軍曹と共にみっちりと扱いてやるから覚悟しろッ!!」「「「「ハッ!!宜しくお願いしますッ!!」」」」「では、今回の総戦技演習を終了とする、解散!!」「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」全員が涙しながら、タケルやまりも達に敬礼する。その後、解散となった後に、タケル・まりも・みちるの三人は、香月博士の下に集まる。「お疲れ様~♪やっと次に進めるわね。」「ハァ…何が『次に進めるわね』ですか…今回の演習…最初っから『合格させる気』だったクセに…。」「へっ!?どういう事、白銀?」タケルの一言に驚きの表情を見せるまりもその様子を見てニヤニヤと笑みを作る香月博士 「軍曹…実は私は途中から、香月博士から『任務』を与えられていて…」「任務…?」「私も理由は知りませんが…『イーニァ・シェスチナの100m後方から監視し、脱出ポイントまで監視・誘導する事』という任務内容でした。」「それって…最初っから演習失格させる気が無かったって事!?」予想外な事態に驚くまりも。そんな事を企んだ香月博士に理由を問うタケル達「博士…理由を教えて下さい。」「わかったから、そんな顔をしないでよ、まりも」まりもの怒りマークのついた笑みで迫られた香月博士流石にヤバいと悟り、理由を話す。 「今回の件は白銀から『演習内容の変更』の意見が出る前から考えてた事なの。今回の演習で失格にする事が出来ない理由があった為、ちょっと仕組んだのよ。」「失格に出来ない理由…?」「白銀はわかると思うけど、今回の訓練兵のメンバーである鑑・クリスカ・イーニァは『特別な存在』なの。特に鑑に関しては、『計画』に深く関係してる為、今回の演習を落とす訳にはいかないのよ。ここで演習を落とす事は『計画』の遅れにも繋がるから、どうしても合格させる必要があったの。」『計画』という言葉にピクリと反応する、まりもとみちる。「そこで白銀の『演習内容の変更』は色々と都合が良かったの。従来の演習内容にすると、場合によっては『簡単に演習に合格する』可能性があったの。その最大の理由は『人数』従来の倍の人数で挑んだ場合、あっさりと合格する可能性があったの。」香月博士の言葉に驚きと同時に、気づく反応を見せるタケル達。「例えば…従来の演習は、演習場内にある施設三ヶ所にある道具を使い、施設を爆破して様々な道程や罠を乗り越えて、脱出ポイントに到着する事が目的だけど今回の演習で鑑達がそれを行うと、脱出ポイントまでの道程の調査・進行の準備をする『先遣隊』と、施設の爆破及び道具の回収する『別働隊』に別れられて、従来の演習内容が容易に覆される可能性が出て来たの。」「そっか…先遣隊で脱出ポイントまでのルート上にある罠の解除や、安全な進行ルートの確保をされたら、最短の時間でクリアされる可能性も有るし、今回みたいに『追跡者』が居る訳じゃないから、従来の演習の難易度が下がるのか…」「そういう事。しかも今回はいつもの孤島を使う訳じゃないから、更に難易度は下がるわ。だから今回、白銀の意見を採用したの。そして『追跡者』を入れる事で、難易度を上げる設定にしたのよ。」香月博士の説明を聞いて、一応納得するタケル達。 するとまりもが、とある質問をする。「博士…一つ思ったんだけど…人数を多いんなら、2つや3つに部隊を分割にして、別な任務内容を与えながら脱出ポイントに向かった方が良かったのでは?」まりもの『最もらしい疑問』に対して、『はぁ~…』と深い溜め息を吐く香月博士。「まりも~…アンタも知ってるでしょ~?今回の演習は別に鑑達『だけ』が受けてるんじゃ無いのよ?今回の演習は、先の『本土侵攻』や、この後の『明星作戦』後の戦力補充為に、一人でも多くの衛士を出そうと、多くの訓練兵達が参加してるのよ?鑑達の他にも、様々な訓練兵達が、この千歳基地や三沢基地・帝国軍の仙台を含む東関東・東北・北海道の基地全てで、この総戦技演習をやっている最中なのよ?そんな大規模的な演習期間に『部隊を分けながら脱出ポイントに到着する』なんて事出来る訳ないでしょ~?今この千歳基地だって十近くの訓練兵部隊が総戦技演習をしてるのよ?そんな状況で、何処にそんな演習場や時間や経費が余ってるのよ~…」香月博士に反論され、尚且つ追求されてKOされるまりも。返答する余地が無くなり、沈黙するしか無かった。「という事で、質問タイムは終わりよ。ああ~…そうそう…まりもと伊隅には『特殊任務』が有ったんだ。ハイ、コレ見て今日の10:00に出発する事白銀はまりもに同伴して頂戴。伊隅は…そうねぇ…前島辺りと同伴して頂戴。任務する場所は、その紙に書いてるから、道に迷わない事任務内容は…行けはわかるわ。」怪しさ120%の笑みを見せる香月博士を見て、凄く不安になるタケル達だが、紙に書いてる場所を見てみると、ピクリと反応するまりもとみちる。「ん…登別の温泉街…?なんでまた…」『温泉街に行け』という任務内容に『二度目の世界の箱根の温泉街』を思い出すタケルその際、『誰かと密会でもするのか…?』と考えるが、まりもとみちるはキラキラと目を輝かせていた。 「任務の期日は3日間よ、任務が終わったら、各自苫小牧の港から船に乗って仙台に帰って来なさい。」「「了解しましたっ!!」」ビシッと笑顔で敬礼するまりもとみちる。その姿を見て、更に不安が膨れるタケルだった…6月22日・12時頃--- 「香月先生~…タケルちゃんは何処に居るんですか~?」「前島殿も姿を見ないのですが…?」夜中までの演習の疲れを取る為、今日は休日になった純夏達純夏やクリスカ・イーニァはタケルと時間を過ごそうと捜索し、唯依は正樹に演習中の失格の件で謝罪しようと探していたが、何処にも見当たらずに香月博士に聞く。「二人なら、2時間前にまりもと伊隅と四人で出かけたわよ。」「四人で…なんかの用事ですか…?」唯依が香月博士に質問すると---- 「まりもと伊隅の追跡者としての『ご褒美』よ。白銀と前島二人は知らないけど、『二泊三日の温泉旅行』に行ってるのよ。」「「「「え゛え゛ぇぇぇぇっ!!」」」」ニヤニヤしながら告白する香月博士そして『忘れてた…!!』とか『…まさか、今日とは…!!』と悔やむ純夏・クリスカタケル達を追いかけようとする純夏とクリスカだが、『何処の温泉に居るのか知ってるの?北海道は温泉が一杯あるから捜索は無駄よ~♪』と絶望的な言葉を放ちながら喜ぶ香月博士 一方、タケル達は---「白銀…今日から三日間…宜しくね…(ポッ)」「……こう来たか…。」温泉街に到着し、とある旅館で香月博士の計らいで、二部屋を予約されていたそして、最初は男女に別れて泊まると思ってたタケルと正樹だったが、みちるに『正樹は私と一緒よ』と言われ、時が止まる二人その隙にまりもはタケルを拉致り、部屋に入って頬を赤らめながら『宜しくね』と呟く。 そして、この瞬間に香月博士の仕業と悟り、『また先生の仕業かよ…』と落ち込むタケルだった… その夜--- 「………………(コー…ホー…)」「し、白銀…優しくしてくれると…嬉しいかな~…」その日の夜、まりもがアタックを仕掛け、えっちぃ事をしていた最中、それは起きた--- 当初、まりもの猛攻により、主導権を取られ、結果タケルが先に気を失ってしまう結果になった。---しかし、異変は其処から起きた。突如起き上がったタケルは、『獣』のように目を赤く光らせ、無言でまりもに近寄って来る。「し、白銀…どうしたの…?」「……………(コー…ホー…)」まりもの問いに無言で近づくタケルまりもは知らない---以前、真耶・冥夜・悠陽殿下の三人がタケルに迫った時、『獣状態のタケル』にKOされた事を。あの時も三人の猛攻に敗北寸前だったタケルだったが、その後直ぐに『獣』と化し、形勢逆転し三人をKOし、翌朝タケルはツルツルピチピチしていた事を---!! 無言で近づくタケル何故かは知らんが両手がわきゃわきゃと揉むような動きを見せ、更に恐怖するまりも「----ッ!!」「し、白銀…アアァァーーーッ!!!」『獣化』としたタケルの逆襲が始まる--そして、翌朝--- 「こ…これは…!!」朝ご飯のお誘いの為、部屋を訪れたみちると正樹。一応、万が一を考えて、正樹には外で待って貰い、部屋に入ると--- あられもない格好で目を回してるまりもとやはりツルツルピチピチとしたタケルの寝顔を見て『何があったのッ!!?』と驚愕するみちるだった…