1999年・7月1日仙台・衛士訓練学校内--- 「あうあうあ~…やっぱり恥ずかしいよ~…タケルちゃ~ん…」「慣れろ…としか言えん。」総戦技演習が終わってから一週間今日は戦術機の基本動作の訓練をする予定だった。 2日前---恐怖の『戦術機適性検査』で地獄を見る事になった純夏達タケルの『全力変態機動』で全員撃沈、みんな仲良くポリバケツで、酸っぱいモノを吐いていた。唯一、クリスカ・イーニァ・美冴は今回はパスとなり、もの凄く安堵する。美冴に関しては、涙を流す程喜んでいた。「あの~…白銀中尉、何故三人は戦術機適性検査をパスしたんですか?」佳織が三人がパスした理由をタケルに問うと、『えっ?』と疑問系な表情になる。 「もしかして…神宮司軍曹から聞いてない?」「ハァ…なんの事かサッパリ…。」「そっか…わかった。」理由を知りたい純夏達に説明をするタケル「宗像に関しては、以前のお仕置きの時に先生が適性値をちゃっかり取ってたんだよ。だから今回はパスあと、クリスカやイーニァは…元々戦術機には乗れる…つーか乗ってるから、受ける必要は無い。」「「「はっ!?」」」クリスカ・イーニァが戦術機に乗れる事を知り、唖然とする純夏達イーニァはのほほんと笑っていたが、クリスカはなんとなく気まずそうな表情になっていた。「以前、クリスカやイーニァ、あと純夏は、とある理由で『特別』な存在だと説明したな?クリスカやイーニァは、日本の国連軍に属する前は、ソビエトの軍で戦術機の技術を学んでたんだ。だが、他の訓練に関しては、学ぶ前に先生に引き抜かれた為に、戦術機以外は未熟だったんだ。」 「先に戦術機の技術を学ばせたんですか…?」「そうみたいだな、まあ…その国の軍によっては、色々順序とか違うからな…」唯依の疑問を誤魔化すタケル他の者達もクリスカやイーニァに追求はしなかった。 「この事は先生から許可されてるから、てっきり神宮司軍曹が話してると思ってたんだけど…」「軍曹も白銀中尉が教えてると思ってたのでは?」「かもしれないな…」まりかの予想に同意するタケルそして、それは半分正確だったりする。 「まあ、戦術機に関しては、クリスカやイーニァはお前達の『先輩』だ。わからない事があったら、聞いてみるといい。」「「「ハッ!!」」」『先輩』という言葉に、少し照れるクリスカ。イーニァは『わからないことがあったら、おしえてあげるね♪』と先輩気分を楽しんでいる。 そして、戦術機訓練で教習過程Cをクリアし、休憩に入る純夏達その間にタケルは全員のデータを見て、何処のポジションが向いているか思考する。「うーむ…どうするかな…」「あら白銀、どうしたの?」データを見てウンウン唸っていたら、まりもが入室する。 「まりもちゃん?もう書類整理終わったんですか!?」「ええ、あと白銀に頼まれてた書類も終わらせたわ」「ありがとうございます。…どうも、アノ手の作業は苦手で…」「ハァ…一応中尉なんだから、書類整理もこなさないと駄目よ。」少し呆れ気味に答えるまりもけど、やっぱり『好きな男性に尽くしちゃうタイプ』なのか、断れきれずに、頼みをこなしてしまう。 『例の温泉旅行』以来、お互いに親睦を深め、まりもに至っては、大いなる前進した結果だったりする(恋愛的に)予想外なイベント(タケル獣化)以外は至ってフツーに温泉街をデートし、時折みちる・正樹ペアと食事を共にしたりと、日頃の疲れやストレスを発散する事が出来た。 夜は…まあ、いやんいやん的な事をしていたが、結果として、二人の仲がグ~ンと発展した結果になった。 それ以降、お互いの事を『白銀』や『まりもちゃん』と呼ぶ事に抵抗が無くなっていた。(あくまでも二人っきりやプライベート時のみ)「それで、結果はどうだったの?」「ほぼポジションは決まりですね。」まりもにデータを見せ、先程の教習過程Cの映像を見せる。 「やっぱり篁は突撃前衛向きね。あとは迎撃後衛にも当てても大丈夫ね。」「雨宮も突撃前衛と迎撃後衛で大丈夫ですね。後の二人は制圧支援と砲撃支援で決まりですね。」斯衛班である唯依・佳織は突撃前衛か迎撃後衛他の二人が制圧支援と砲撃支援にポジションが決まる。 「正樹は制圧支援で決まり。カメラマンを目指してただけあって、広い視野と判断力が高い結果を出せた。」「…このような時代でなければ、名のあるカメラマンになれただろうな」正樹に対して同情するまりも。自分も昔は『教師』になりたいと憧れていたが、このような時代故に、その夢を叶える事が出来なかった。そんな自分と正樹が重なるように見えて、少し同情してしまう。 「伊隅は…何処のポジションに付かせても大丈夫かと。良い意味でポジションを何処に決めるのが悩む程ですよ。」「流石は伊隅の妹だな。才能で言うならば、姉以上か…」まりかの成績が抜群に良く、良い意味でポジション決定に悩んでいたタケルとまりもそして、他二名も強襲掃討に決定する。 「宗像は突撃前衛・制圧支援・迎撃後衛ですねけど、最初は突撃前衛で良いかと。」「そうねぇ…けど、宗像は育てば良い隊長になれると思うわ。」「同意見ですね。」美冴を絶賛するまりも。まりもの指摘するように、美冴は後々ヴァルキリーズの隊長に継いでいた事を香月博士から聞いているタケルは、まりもの人を見抜く力に驚く。 「クリスカやイーニァは…言うまででもない。突撃前衛か強襲前衛のどちらかだな。」「ハイ、高い狙撃力を持つイーニァ高機動戦を得意とするクリスカ二人が複座式で戦えば、並大抵の衛士では勝つ事は無理かと。」「博士は凄いのを引き抜いたわね…」クリスカ・イーニァの衛士としての能力に圧巻する二人。そして… 「一番の悩みの種の純夏ですが…」「難しいわね…タイプ的には突撃前衛なんだけど…」「長刀を使うのが『苦手』で、短刀が得意とは…なんて中途半端な…ハァ…」そう---問題の純夏のポジションタイプ的には問答無用に突撃前衛なのだが、欠点として、『長刀を扱うのが苦手』ときたもんだから、タケルもまりもも頭を抱えながら悩んでいた。「純夏の立場を考えると…有力なポジションは『打撃支援』ラッシュ・ガードかと…。」「そうね…けど、ホイホイとオーバーラップして、突撃しそうで怖いわ…」「あ゛あ゛~…純夏なら有り得る…。」「……何二人して溜め息してるの…?」ハァ…と溜め息を一緒に吐く二人すると、部屋に香月博士が入って来る。 そして、香月博士に理由を話すと、『なる程ね…それは悩むわ』と理解してくれる。 「それより、白銀・まりも『例のモノ』が届いたわよ。」「『例のモノ』って…随分早いですね…」「そりゃあお隣さんだもの。早いに決まってるわ。全機新品で寄越してくれたわ。」「ど~せ、ビニールを破きたいから、新品にしたんでしょ?」「当たり前じゃない♪」瞳をキラキラしながら、わしゃわしゃと手を動かす、香月博士。 今か今かとビニールを破く事を楽しみにしていた。 「あと鑑のポジションの件は解決してるから安心なさい。」「「はっ?」」突然爆弾発言する香月博士に唖然とする二人。「そういう事だから、鑑達をハンガーに集めておいてね、じゃあね~♪」言うだけ言って、清々しい笑顔で部屋を出る香月博士。笑顔の理由は一つ…ビニールを思いっ切り破くからだ。 そんな香月博士を見て脱力感が襲い、うなだれる二人だった…30分後・ハンガーでは----「見て見てっ!!あれ、吹雪だよねッ!!」「あれが私達の機体…」ハンガーに集まる純夏達訓練兵ズラリと並ぶ吹雪を見て胸が躍り、瞳を輝かせる。 「……ん?1…2…3………全部で『8機』しか無いぞ?」「「「はっ?」」」美冴の一言で正気に戻る純夏達数えてみると、確かに『8機』しかない 「多分、私やイーニァは別な機体だから数が合わないのだろう。」「因みに、何の機体に乗ってるの?」「………タイプ98・シラヌイ・カスタムの複座式だ…。」まりかの質問で自分達の機体を教えると、みんなから『い~な~…』と羨ましそうな眼差しで見られてしまい、オロオロするクリスカちなみにイーニァは逆に自慢していた。 「けど、それでも二機分足りないね~…」「そういえば…」佳織の一言で、二機分足りない事に気づくすると、背後から満足そうに、大きめなビニール袋を持った香月博士が現れる。 勿論中身は破ったビニールだ。「どうしたの、アンタ達?」「あの…博士あそこにある機体は、我々の機体ですよね…?」「そうよ?」「クリスカとイーニァの機体が、不知火・改で複座式と聞きました…では、あと二機分は何処に…?」「ああ~…なる程。」唯依の質問に納得する香月博士 「ほら、今搬入して来た機体あるでしょう?あれが『宗像と鑑』の機体よ。」「ほえっ?だって、一機分しか搬入してませんよ?」「当たり前よ、だって、あの機体…『複座式』だもの。」「「「「ハア!?」」」」シートでまだ機体の姿が見えない搬入車に注目する純夏達そして、シートが剥がされて、姿を見せると--- 「なっ…!?」「ウソ…」機体の姿を見て、クリスカとイーニァが驚愕する。「特殊偵察任務専用の複座型戦術機強襲偵察機F-14 AN3『マインドシーカー』よ。あれに宗像と鑑に搭乗して貰うわ。」かつて『第3計画』時にESP発現体が衛士と共に搭乗し、BETAの思考リーディングを目的とし、ハイヴ内に突入した機体クリスカやイーニァ・沙耶『第3計画出身』にとって、『因縁』のある機体だった。 「まあ、このマインドシーカーは、『改良型』でね、少しばかりいぢくってるの。」「いぢくってる…とは…?」「複座式を利用して、戦場内でも『CP(コマンドポスト)の役割も出来る衛士を導入』しようと考えてるの。これは、ハイヴ内突入時、最深部に突入した際、通信が途絶えて、全滅するパターンがよく有る事なのそれを無くす為に、今回この機体を二機買い取って、通信関係を強化し、他にも色々と改良型にしたの。一応吹雪と同じ程度の機体性能には上げてるから安心なさい。このマインドシーカー改は、操縦士兼攻撃が宗像が担当し、CPの役割を鑑にして貰うわ。」「「「はっ?」」」「鑑さんが…CP…?」純夏が予想外なポジションに配置された事に唖然とする唯依達「一応言っておくけど、鑑はCPの教育を受けてるわよ。去年から教育して来てね、今現在は『まあまあ』の腕前になってるわよ。」「ま、まあまあ?」「鑑はね、キーボードを打ち込むスピードはピカイチなんだけど…ミスもそれなりにあるのよ…他の能力は普通程度。だから『まあまあ』なの。」「…大丈夫なのですか?」不安感が隠せないでいる美冴香月博士も『大丈夫よ………………………………多分』と、間を思いっ切り空けて、一層不安感を上げる。(まっ…とりあえず鑑には、このマインドシーカー改で訓練して貰わないと…いずれは、鑑に『凄乃皇』に搭乗して貰わないと困るしね…。それに---)鑑を見ながら、沈黙しながらニヤリと笑う香月博士。 (『アレ』が完成すれば、ある意味凄乃皇より活躍するかもね…。)「こ、香月博士…私見ながら笑ってるよぉ~…」「鑑…ご愁傷様だ…」「純夏さん…可哀想に…」香月博士の沈黙の笑みが、純夏に対して『良からぬ事』と判断し、純夏に合掌する唯依達。それを見て、純夏は『助けてよぉ~!!』と泣きながら援護を求めるが、無駄だった。あとがき最近更新が遅くなって、スミマセン。仕事が今時期忙しいので、なかなか更新出来ませんでした。