出撃準備を完了し、今か今かと待っていたタケル達その様子を管制室で見守っていた香月博士の下に、ピアティフ少尉が駆け込んで来る「香月博士、博士宛てに連絡が来てます。」「…何かしら?」「『花火』の打ち上げ失敗…そう伝えてくれとの事です。…あと、米国の国連軍バンクーバー基地からの報告ですが…米国のとある場所で大規模な爆発があったとの事です。恐らく、先程米軍からのG弾と関係があるかと…」「そっ…ありがとう、ピアティフあと戦況はどうかしら?」「ハッ、現在横浜ハイヴ周辺では地上部隊が徐々に制圧を完了しています。重金属雲も規定の数値まで届いています。」「そう…なら今しか無いわね。ピアティフ、基地司令の下に向かうわよ。」「ハッ!!」急ぎ足で基地司令の下に向かう香月博士そして、その五分後--- 『白銀、聞こえる?』「先生?」突然秘匿回線でタケルと通信を行う香月博士『鎧衣課長からの報告よ。『花火の打ち上げに失敗した』との事よ。…後は、アンタ達の番よ、白銀』「任せて下さいっ!!」香月博士の要件が終わると、秘匿回線が切れて、打ち上げのカウントが始まる。 『さ~て、やっと出撃出来るわ。遙、頼むわよ。』『うん、任せて水月。初めての実戦だけど、水月と『複座』するから大丈夫だよ。』『香月博士から、わざわざ私達の為に不知火・改の複座型を貰ったからには大活躍するわよ。』『うん!!』通信で水月と遙が会話を始める。その様子を見て、緊張を和らごうとしてる事が分かる。 『けど、大丈夫なのかぁ~?遙は心配ないけど、水月はなぁ…』『たしかに、暴走しそうで、見てるこちらがソワソワするよ。』『孝之ッ!!慎二ッ!!アンタ達後ろに気をつけなさいよっ!!!』緊張する二人に孝之と慎二も参加する。やはり二人も初めての実戦で強い緊張をしていた。 『やれやれ…随分と情けないな、速瀬・鳴海・平。強がって緊張を誤魔化そうとしてるのがモロバレだぞ。』「ハァ…大丈夫かしら…頼むから、初戦で撃墜なんて真似は止めてよ…まあ、そんな事したら、神宮司教官にトドメ刺されるだろうけど…?」『『『遠慮しますっ!!』』』緊張する速瀬達にみちる・碓氷の両隊長からの一言で笑い声が響く。 その際まりもが『もし、横浜ハイヴに到着して八分以内に撃墜したら、『すぺしゃる』させるわよ。』と呟くと、A-01メンバー全員が反応し、ガタガタブルブルと震える事になる。 「駿、緊張してるのか?」『タケルさん…ハイ、初めてのハイヴ戦なので…』緊張する駿に話しかけるタケル緊張を解こうと、少し会話をする。 『タケルさんは緊張してないんですか?』「そりゃ、するさ~。けど、ハイヴ戦とはいえ、まだくたばるには早いからな…必ずみんな一緒で生き残るぞ。」『タケルさん…』タケルの強い決意の言葉に緊張が解ける駿その会話を聞いていた水月達も、先程までの緊張が殆ど無くなる。『お喋りはそこまでよ。発射まで残り15秒切ったわ。』椿の一言で第17大隊全員が沈黙する。そして--- 『日本を解放する前に死ぬ事は、絶対に許さん。全員生還するわよ!!』『『『『了解ッ!!』』』』気合いを入れた声を轟かせる第17大隊の衛士達。その表情に、最早一片の曇りは無かった。 そして---運命の時間がやって来た---!! 『全員…敬礼ッ!!』出撃する突入部隊に対して、国連・帝国・斯衛の軍人達が敬礼しながら見送る。訓練部隊の純夏達や、まだ一般人の慧も敬礼してタケル達の無事を祈る (白銀…御剣…無事に帰って来て…)(白銀中尉…ご無事に…)(タケル…)慧・唯依・クリスカの三人が心の中でタケルの無事を祈る。(タケルちゃん…無事に…無事に帰って来てね…)「純夏さん…」「鑑…大丈夫だ。白銀中尉は必ず帰って来る…。」「伊隅さん…宗像さん…ありがとう…。」そんな三人とは少し違い、不安ながらもタケルの無事を切実に祈る純夏を見て、そばに居たまりかや美冴が励ます。 高度500km・地球周回低軌道---「………やっぱり綺麗だな…。」『うむ…。この美しき故郷(ほし)を必ず守り抜かねば…。』『二度目』の地球の姿を見て、再び感動するタケルと冥夜。 『綺麗…』『そうだね…』『この美しい星に…オレ達居るんだな…』『ああ…。……変な話だけど、衛士やってて、良かった…って、今思ったよ…。』地球を見て、感動の余り、見とれてしまう水月・遙・孝之・慎二の四人『椿…政弘…沙耶…この美しい地球を蝕むBETAを…必ず殲滅するぞ。』『ええ…勿論よ。』『孝志…お前の後ろは俺が必ず守ってやる。』『微力ながら、お力になります。』そして、地球を見て強い決意を改めて誓う孝志・椿・政弘・沙耶の四人他にも各自で莫迦みたいな会話で盛り上がる衛士達だが--其処に『恐怖』に怯えるものは誰一人居なかった。「イグニス10から、ヴァルキリー5(水月)・ヴァルキリー・マム(遙)・オーディン5(孝之)・オーディン7(慎二)へ。今回がお前達の初戦だ。先任の指示に従い、生き残る事を優先せよ。…勿論、ハイヴ攻略をしながらだぞ?間違っても、再突入中に光線級にやられて『空飛ぶ棺桶』フライングコフィンになるなよ。そんな事をしたら、ヴァルキリー0(まりも)の顔に泥を塗る行為だと思えッ!!」『『『『了解ッ!!』』』』(もう…白銀ったら…フフッ…速瀬達も立派な衛士の仲間入りしたわね…。)教え子達の成長を見て、心の底から喜ぶまりも。血と汗を流し、巣立つ雛鳥を影で見送る親鳥のように、嬉しさと寂しさの両方の感情が湧き上がって来る。この子達は、私が守らねば---この子達は、私の大切な『子供達』なんだから---!! A-01の母親にして、師であるまりもの強い気持ちと決意が現れ、操縦桿を強く握り締める。--その様子を、『子供達』であるタケルやみちる・碓氷が見逃す訳が無い。みちるや碓氷は、『子供達の姉』としてタケルは『母親自慢の秘蔵っ子』として、まりもを良く観察していた。(『母親』の期待に応えねば『子供』として親不孝というモノ…)(必ず…みんなを…神宮司軍曹を守ってみせる!!)みちると碓氷の強い決意誰一人と失わないと心に誓う。 (まりもちゃん…みんなやまりもちゃんを必ず守ってみせます。)『自慢の秘蔵っ子』として、覚悟と強い決意を見せるタケル---もう、あんな悲劇を繰り返してたまるものかッ!! 大切な人達の最期の映像が、タケルの脳裏に蘇る。歯をギリリッと食いしばり、己の無力を呪い、恨む。 だが--今は違う-- あの頃とは違い、覚悟も力もある---衛士としての実力も上げてきた。肉体も精神力も以前と比べ物にならない程鍛えた。 そして--自分は一人ではない--大切な--頼りになる仲間達が居る--そして…自分の帰りを待つ者達も居るのだ--!!そう簡単に死ぬ訳にはいかない!!『諸君、只今よりヨコハマハイヴにめがけて再突入に備えよ。』国連軌道艦隊司令からの通信が入り、誰もが無言になる。『第五軌道降下兵団、全機所定通りの再突入を開始せよ!!』そして--戦いの火蓋は切って落とされた!!『再突入許可確認、本艦軌道離脱噴射まで300。姿勢制御開始、アンビカル・コネクタ開放に備えて、戦術機各員は全系統切替状況を確認せよ。』「イグニス10、全系統切替確認、再突入カーゴの操縦受領準備良し!!」『接続パージ完了了解、カーゴ制御切替完了。イグニス10、カーゴ操縦渡します。』タケル達を背負う駆逐艦との通信をし、カーゴ操縦の権利をタケルが受け継ぐ。 『本艦軌道離脱噴射まで120。イグニス10…御武運を…!!』「了解!!軌道離脱噴射スタンバイ。何時でも構わない!!」『軌道離脱噴射スタンバイ。此方も何時でもOKです!!』タケルと駿の軌道離脱噴射スタンバイを確認すると、高度120km地点で、駆逐艦との最後のロックボルトを解除する。 「再突入殻分離を確認、カーゴ姿勢安定。」宇宙を飛行するタケル達。強い圧力を全身に感じながらも、地球めがけて突入する。「強化装備対G機能確認、カーゴロケット点火準備宜し。全系統異常無し…ウオォォォッ!!」 再突入カーゴのロケットが点火され、大気減速を相殺し、横浜ハイヴめがけて大気圏突入する!! 地球めがけて全力噴射する映像を見て、恐怖する衛士達気を失っても、電気ショックで叩き起こされ、再び恐怖へと戻される「フン…ッ!!こんなの…純夏の『どりるみるきぃぱんち』で慣れてるッ!!」強がりながらも、地球へと全力噴射する恐怖に打ち勝つタケル。苦笑しながらも、今だけは純夏の『どりるみるきぃぱんち』に感謝する。 「高度四万!!装甲カプセル開放に備えろッ!!」『了解ッ!!』分離したカーゴは、そのまま横浜ハイヴへと全力噴射を続け、カプセルは大減速をしながら地球へと突入する!! そして---カプセルが分離し、規定高度2000の所で、タケル達の乗る不知火・改が姿を現す!! 「イグニス10からイグニス25へ。近くにちゃんといるか?」「イグニス25よりイグニス10、其方の左後方260の場所にいます!!」「ヨシ、イグニス10了解ッ!!エアブレーキ展開開始。絶対に離れるなよ!!」「了解、任せて下さい!!」いつも弱気な駿だが、今は違う。一人前の衛士として、強気な姿勢でタケルのそばを喰らいついていた。 「重金属雲濃度低下…抜けるぞ、駿ッ!!」重金属雲を突き抜ける先には---醜い姿を現すモニュメントと--人類の敵・BETA達が姿を現す。 『第17大隊、コールイン!!』『イグニス2(沙耶)、スタンバイ。』『イグニス3(孝志)、此処にいるぜ!!』『イグニス4(政弘)、突入準備良し!!』『イグニス5(真那)、突入準備完了です。』次々とコールが告げられる第17大隊のメンバー全員無事を確認すると、笑みが浮かび上がる。 「イグニス10、暴れる準備は何時でもOKですよ。」タケルの告げる言葉に笑みを浮かべ、次々とコールが告げられる。『イグニス25(駿)、突入準備出来てます。』『イグニス26(冥夜)、何時でも構わぬ。』冥夜のコールも告げられ、安心するタケル二度目の突入故に、さほど緊張した様子は無い。 『イグニス1からHQへ。第五軌道降下兵団第17大隊は全34名が軌道降下を完了。これよりハイヴに突撃する!!』そして、第17大隊全34名のコールを確認すると、椿がHQに通信を入れ、突撃開始の報を入れる。そして、第16大隊・ヴァルキリーズ・オーディンと合流し、目的地であるゲートに向かう!!