横浜ハイヴ・中階層--- 「やっと中階層を超えた所か…」慎重かつ可能な限りスピードを出しながら前進するタケル達。訓練の成果もあり、誰一人撃墜者はまだ居なかった。ハイヴ内に突入してから、数度BETA群と遭遇はしたが、極力戦闘は控えてたのと… 「まったく…最近のBETAは根性が足りんのぅ…」紅蓮大将によるチート気味な強さにより、BETA群から逃れていた。 紅蓮大将の戦闘方法…長刀や短刀による攻撃ならまだしも、『拳』により、予想外な事にBETAを撃破していた。 『我が拳を受けてみろぉぉっ!!』と叫びながら放つと、要撃級の頭部は肉片と化し、突撃級・戦車級等は吹っ飛びまくり、戦車級に至っては、壁に激突し、潰れたトマト的な光景を見せつけられ、タケル達は『何…あのチートな強さ……?』とか『なんで戦術機で肉弾戦して…壊れないの…』などと…遠い眼をしながら見ていた… 本人曰わく『気合いで戦うのぢゃ!!』…だそうだ…みんなの心はひとつにし、『アンタしか出来ないから…』と心の中で呟く緊迫した空気はかなり飛んでしまったが、おかげで全機無事に中階層に辿り着いたのだ。 「ヴァルキリー1からヴァルキリー・マム現在周辺にBETAの反応は無いか?」「此方ヴァルキリー・マム。現在周辺にはBETAの反応は無し。しかし、離れた場所では旅団規模の反応が複数確認してます。…その内最低ふたつ程は接触は避けれないかと…」「…そうか」苦い表情をしながら報告する遙を見て、苦々しくも返答を返すみちる。 ハイヴ内では光線級達は何故かレーザーを放たない傾向がある。勿論『仲間撃ちをしない為』という理由はあるが、真実は未だに謎だった。 しかしハイヴ内では、光線級に代わり、脅威となる存在が居た。 それは---突撃級だった。 この逃げ場の無い空間に突撃級の大量の突進攻撃は、恐るべき存在。狭い空間内では絶対に遭遇したくない存在だった。 「しっかし…さっきの突撃級は焦ったな…良く撃墜者が居なかったのが不思議なぐらいだ。」「確かに…まさかハイヴ内での突撃級が、あそこまで脅威になるとは…」先程の戦闘の会話をする孝之と慎二狭い空間内で突撃級に遭遇していた。数少ない隙間に着地しながら、飛行して回避するが、時折天井から突撃級や要撃級が降り注いで、タケル達の進行を邪魔していた。 「まだまだね、鳴海・平。別に『ハイヴ内だから』突撃級が脅威って訳じゃないわ。元々突撃級はどの戦場でも脅威なのよ単体ならば恐れる事は無いけど、群れをなしてる時や要撃級・戦車級と一緒に居るだけでも難易度は増してくるわ突撃級だけの群れだって、何層もの群れが突撃してくれば、回避した際の着地するスペースすらないわ。光線級を恐れて大空を飛行出来ない今、突撃級の突進こそが、注意すべき点でもあり、脅威となる要素でもあるのよ。」「学習不足だぞ、二人共。」「うっ…スミマセン」部隊長である碓氷から注意を受ける孝之と慎二その後にみちるにも注意され、謝罪する。「さて、地上の制圧部隊が少しづつハイヴ内を制圧してきておる頃じゃ。我々も一刻も早く反応炉に向かおう。」「「「了解!!」」」紅蓮大将の言葉を聞き、一層気を引き締めるタケル達。進行スピードを少し上げながら、下へと進む… 一方・地上では--- 「こちらシルバー1からHQへハイヴ周辺の制圧を完了する。」『HQ了解。しかし、未だにBETAの出現は現在な為、警戒を怠るな。』「シルバー1了解。これから、ハイヴ内の制圧を開始する。」HQとの通信を終える影行ハイヴ周辺や数ヶ所のゲート近辺では国連軍・帝国軍・斯衛軍・大東亜連合軍が制圧を完了していた。そして、少しづつハイヴ内を制圧を進め、下へと向かっていた。 「タケル…!!」「楓…タケルなら大丈夫だ。」逸る気持ちを見せる楓を落ち着かせる影行。しかし、影行自身もタケルを助けたい気持ちを押し殺すように、操縦桿を強く握り締める。『隊長、前方からBETA群の反応アリ。数は…二千!!』「ヨシ、前方から来るBETA群を殲滅し、制圧範囲を広げるぞっ!!」「「「了解ッ!!」」」影行率いる『銀の戦車』シルバーチャリオッツ隊がBETA群に突撃する。 「邪魔するなァァァァッ!!」その先頭に楓が突撃し、次々とBETAを殲滅する。縦横無尽に舞い、BETAの肉片が飛び散り、楓の不知火・改が赤く染まる。 愛する息子を助ける為に、母親である楓は障害となるBETAを一体でも多く駆逐し、前進する。 そして、別のゲートでは--- 「これより我々もハイヴ内の制圧に参加する。皆よ、覚悟して突入するのだっ!!」「「「了解ッ!!」」」彩峰准将が率いる帝都防衛軍がハイヴ内に突入を開始する。「………」「駒木少尉、そんなに固まる事は無い。リラックスするのだ…とは言わんが、其処まで緊張すると身動きが出来なくなるぞ?」「スッ、スミマセン」「ハッハッハッ♪仕方ない事だ、初めてのハイヴ戦だからな。…かく言う私も初めてだがね。」緊張で固まる駒木少尉を彩峰准将が砕けた口調で緊張を少し解す。最後のセリフを聞いた駒木少尉は、思わず『……もう…彩峰准将ったら…』と小さな声で呟く。 「恥ずかしがる事は無いぞ、駒木少尉よホレ、沙霧中尉とて緊張しまくってるからな。」「あ、彩峰准将ッ!!今は任務中ですよっ!!」「ハッハッハッ、済まなかった。しかし、緊張のあまり撃墜されては、慧や駒木少尉が心配をかけてしまうぞ?」「あ、彩峰准将ッ!?」沙霧中尉と駒木少尉をからかう彩峰准将特に顔を真っ赤に染めている駒木少尉を見て楽しんでいた。 実は駒木少尉が沙霧中尉に好意を抱いている事は部隊の誰もが知っていた事実。唯一当の本人である沙霧中尉だけ、駒木少尉の好意は気づいていなかった。つまり沙霧中尉は、密かに少し鈍感スキルも持っていた。(タケル程ではないが…)(まあ…尚哉は、私にとって『息子当然』の存在…慧か駒木少尉どちらかと結ばれて、幸せになって欲しいものだ…。) 少し親バカの顔をしながら、沙霧中尉の未来を楽しみにしていた彩峰准将すると、部隊の隊員の一人が『ある会話』をしてくる。 『そういえば『白銀の守護者』も、この戦場に来てるんだよな…』『ああ、空から再突入して来る中に白銀の不知火・改の姿を見たぜ。』「…………!!」沙霧中尉の表情にピクリと動きを見せるその姿を彩峰准将と駒木少尉は見逃さなかった。「白銀武中尉か…フム、一度会ってみるか、尚哉?」「あ、彩峰准将!?」作戦中でありながらも、沙霧中尉の事を『尚哉』とプライベートの呼び方で呼ぶ彩峰准将に対して驚く沙霧中尉そしてそれは、駒木少尉を始め、他の隊員達にとっても同じ事だった。 彩峰准将は普段は俗に言う『優しいお父さん』で、子供には甘く、時に厳しく接する普通に見かける父親の姿。そして、それは部下にも同じように接し、何かと面倒見が良い人で、生活費に困れば食事に誘い、悩み事があれは『父親』として接しながら聞き、アドバイスを出す。 しかし--軍人としての『彩峰萩閣准将』は、規律に厳しく、絶対的に『国と将軍』に忠誠を誓う人であり、何より『民』の為に、日々自身の身を削りながらも『良き日本』を目指し、自身も戦術機の操縦桿を握り続けるそんな軍人の顔を持つ彩峰准将だからこそ、作戦中に沙霧中尉の事を『尚哉』と呼ぶ事に皆驚いていたのだ。 「ん…どうした?白銀武中尉に会いたくはないのかね?」「え…あ、はい…一度は面識をしてみたいと思ってましたが…」「なら、会えるように私から手配しておこう。…確か紅蓮大将の下で剣を習ってると聞いてるから大丈夫だろう。--だが、その前にこの戦いに生き残る事が前提だがな。」「-----ッ!!」その時沙霧中尉は気づく。この会話は自分の為に---!! 先程の沙霧中尉は、白銀中尉の話題ひとつに動揺し、その事を考えたせいで同時に周囲に対して散漫していた。それを見抜いた彩峰准将は『ワザと』この会話を持ち出し、先程自分に対して『尚哉』と呼んだのだ。『尚哉』と呼ぶ事で、一旦白銀中尉から意識を離し、その後に『面会する約束』を取る事で周囲の警戒を散漫しないようにするそして、恐らくは自分にその事を知らせる事で釘を打つ予防策までしたのだ… (……やはり彩峰准将には頭が上がらないな…。)自分の事を思い、即座にこのような対処までする彩峰准将に対して、改めて尊敬し、同時に謝罪する沙霧中尉。苦笑いをしながら気を引き締める。 「さあ、制圧作業を進めるぞっ!!」「「「了解ッ!!」」」彩峰准将率いる帝都防衛軍はハイヴ内を進めていく… タケル達突入部隊がハイヴ内に突入して一時間が過ぎた頃--- 深度が三分の二程下に進めていたタケル達は『ある部屋』に侵入していた。 「ふぅ…やっとここまで侵入したわね…」「だが、やはり犠牲者は出てしまった…」現在の場所までに第16大隊のメンバーが二人が撃墜し、一人が死亡した。原因は装置を運ぶ部隊が奇襲を受けた際に護衛していた第16大隊のメンバーが庇い、撃墜した 不幸中の幸い、撃墜した二名はケガだけで済み、死亡は免れた。 しかし、一人は戦車級に喰われてしまい、助ける事が出来なかった。 そして現在---とある広い部屋にタケル達突入部隊が侵入する。 「先程とは違い、大きな部屋でBETAが一匹たりとも居ないとは…」「この静けさが、かえって不気味ですね…」ゆっくりと警戒しながら進軍するタケル達…大きな広間でありながらBETAが一匹も居ない事に不安が広がるそして--- ----ケ---ん--- 「………えっ?」突如タケルは進行を止めて、周囲を捜索するが、異常は無い 「どうしました、タケルさん?」「いや…今声が聞こえたような…」タ--ち--!! -ケ--や-!! 「…やっぱり何か聞こえる。」再び周囲を捜索すると--- タケ--ゃん--!!-ケルち----!! 「………えっ?」再び聞こえた声にドクンと鼓動する!! 「そんな……だってアイツは--」タケル---!!--ルちゃん!! 「そ…そんなバカな…ッ!!」「どうしたの、タケル!?」タケルを心配して声をかける沙耶突然の事態に戸惑い、全軍が止まる。 ---タケルちゃんッ!!返答してッ、タケルちゃんッ!! 「そんな…だってアイツは先生の所に---!?」間違える筈がない---馴染みのある声、自分にとって『半身』ともいえる存在--- そして、偶々マップを目にすると--「……この場所は…まさか…」プルプルと操縦桿を握る腕が震えるタケルそして現在居る場所が何処なのか悟る そして、ゆっくりと上を見上げると--- 「そんなバカな…そんな事ある訳ないだろ…!?」其処には無数の『蒼く光る脳髄の柱』が存在していた---!! 同時刻・三沢基地--- 「か、鑑さんッ!?」「しっかりしろ、鑑!!」三沢基地に居た純夏達訓練兵突如純夏が倒れた事に驚き、声をかける佳織と美冴「こっちです!!」「鑑ッ!!……どういう事なの!?詳しく説明しなさいっ!!」香月博士を連れて来る唯依倒れた純夏の状況を詳しく説明を求める。 「詳しくも何も…突然純夏さんが倒れて…」「さっきまであれほど元気良かったのに…。」「…どういう事よ、一体…?」まりか・クリスカが説明するが、原因が解らず、混乱する香月博士するとピアティフ少尉が慌てて走って来る 「香月博士!!突入部隊の白銀中尉から秘匿回線を求める通信が入って来ました!!」「白銀から…?」「あと伝言ですが…『蒼く光る柱の間に到着した』との事です。」「----ッ!!…なんてタイミングよ…。」タケルの伝言に驚愕し、純夏の倒れた事に関連する可能性を頭に思い浮かべる。 「まさか………詳しく白銀に聞く必要があるわね。篁、鑑を医療室に運びなさいッ!!」「り、了解ッ!!」唯依達訓練兵全員で純夏を医療室まで運び出す。同時に香月博士も愚痴をこぼしながらも、管制室に走って戻る…