1998年・1月13日帝都・シミュレータールーム椿side「何だコレは…!?」目の前に映る光景に驚愕する私私の自慢の中隊のみんなが、悉く撃墜されていく光景にただ唖然とするしかなかった相手は一機しかも今日から配属になったばかりの新人一人にだ 「天才衛士…」その言葉の意味を示すように、見た事の無い機動を操り、我々の予想を覆す行動ばかりをする事に言葉を失う私 白銀武中尉ーーーー急遽我が大隊の一員になる事になり、少し驚きはしたものの、正直有り難い事だった 時折部隊の中から帝国軍に転属や一時的に所属し、大陸の戦いで散って帰らずの身となり、私の指揮する大隊の第一中隊は人手がやや不足していた他の中隊も減ってはいたが、まだ一中隊に一人程度しかし、私の指揮する第一中隊は三人も失い、正直困っていた 補充要員を頼んでも今の時期は居る筈もなく、補充要員は諦めていた すると、一昨日突然帝国斯衛軍大将・紅蓮大将直々の報告で補充要員一人が増えるとの事だった ポジションは突撃前衛、一番欲しいポジションが来た事もあり、正直嬉しかった 噂を聞けば、あの月詠真耶中尉をも撃墜させる程の腕前と聞き、期待してたと同時に、その月詠真耶中尉の『彼氏』とも『婚約者』という噂も聞き、少し驚く そして昨日、休日で街に出て買い物を楽しんでいると、噂の月詠真耶中尉が男性と一緒に買い物をしていた 男性の方は誰かは直ぐに気づいた一昨日に書類上の写真で見た男性・白銀武中尉声をかけて話してみると、斯衛軍には居ないタイプの人物だった 悪く言えば、馴れ馴れしい良く言えば、周りの人達を惹きつけ易い雰囲気を持つ人物だった 噂の『婚約者』の話をすると、二人して固まり、否定するどうやらこの噂は違ったらしい そして今日、白銀武中尉の入隊を歓迎し、同時に『婚約者』ネタでいじくり、楽しい一時になったあの規律に厳しい義妹の沙耶もその時は楽しそうに笑ってた程だウン、彼は入隊して正解だった そして、歓迎の意味を込めて、『シミュレーター訓練での歓迎』をしようとの提案があり、採用白銀武中尉は話を聞き、驚いて落ち込んでいた 内容は簡単…というか、可哀想な内容 『1対9』の対戦だった流石に可哀想なので、私と沙耶は後方で見学それでも7名もの相手が居るのだ…イジメみたいなものだと私は思っていた… だがーーーー現実は違う目の前の光景は、こちらの部隊が次々と撃破されるシーン ある者は見た事の無いアクロバットで背後に廻られて、短刀の一突きで機関部を破壊ある者は予想外な機動に翻弄されて、踏み台にされた後に突撃砲にて撃破される そしてある者は、イキナリ『踵落とし』を喰らい、頭部を大破され、視界を封じられた所を長刀により撃破される そして、気づいた時には、9機も居た此方の部隊は、私と沙耶の2機のみとなった「油断したッ…!!」そうだ、相手はあの月詠真耶中尉を撃破したと噂されてるのだ噂が本当ならば、油断ならぬ相手に決まってる「椿様…」「沙耶…迎え討つわよ」残りは我等二人のみ相手は一機だけだが、我等精鋭の中隊の衛士7人がいとも簡単に撃破する程の兵(つわもの)気を引き締めて、『敵』を討つ為に武器を構える 「ハァ…椿様…」「何かしら、沙耶」すると義妹の沙耶が声をかける 「また悪い『癖』が出ましたよ顔が笑ってますよ」「あら…」悪い『癖』ーーーー強者を見ると、挑みたくなる癖が出てたようだ しかし…仕方無い事だ、目の前に未知の強さを持つ者が居るのだ…血が騒ぐなと言う方が無理だ 「済まない、血は抑る事は出来ない」「わかってますよ」やれやれ…と苦笑する沙耶さあーー挑もうではないか 二人して長刀を装備して白銀中尉を迎え討つ 「アルファ2、行くぞっ!!」「アルファ2、了解!!」水平噴射跳躍をしながら突撃する私達 さあ…白銀中尉よーー私を楽しませてくれーーーー!!!sideend「ふむぅ…なかなか面白い訓練ですな…紅蓮大将」「ウム、確かに『天才衛士』に恥じない腕ですな、神野大将」シミュレータールームのモニターを観戦する帝国斯衛軍の偉大なる武人『三強』とまで呼ばれる二人がタケル達のシミュレーター訓練を見て関心する 「あの若者…なかなか筋が良いまだ荒削りだが、独特の機動で九條少佐達を翻弄してるぞ」「だが、椿様も沙耶殿も我が『無現鬼道流』を教えた愛弟子達このまま終わる二人ではない」「カカカッ!!そうか…それではどちらが勝つか見守ろうぞっ!!」「ウム」三人の対戦に期待しながら観戦する紅蓮大将と神野大将だった…「いくぜっ!!アアァァァッ!!」水平噴射跳躍を全力噴射しながら、建物の間を飛び回るタケル特攻隊のような突撃に戸惑いながらも、椿機と沙耶機で白銀機を迎え討つ。「このような全力噴射では、我等の剣はかわす事など出来るかっ!!」「我等が剣…無現鬼道流の剣を受けるがいいっ!!」お互いの息を合わせながら、放つ長刀しかも、ワザとに沙耶機の剣閃が僅かに遅れるようにタイミングをズラす。「「ハアァアァァッ!!」」2つの剣閃が×字に放たれ、白銀機を捉えるが---- 「喰らうかよっ!!!」機体を捻るように動かし、椿機の剣閃の上に回避し沙耶機の剣閃を白銀機の長刀で防ぎ、沙耶機を蹴り飛ばす!! 「キャアァァァァッ!!」「沙耶!?」蹴り飛ばされた沙耶機に『一瞬』視線を向いてしまう椿しかし…その『一瞬』が『油断』と判断した時には遅かった。「オオォォォォッ!!」「しま…ッ!!」沙耶機を蹴り飛ばした白銀機は、其処から椿機に向かって噴射跳躍し、椿機の頭部を白銀機の左腕で鷲掴みにし、そばに有る建物に叩きつける。 「ヨシ、今---」「させるかァァァァッ!!」椿機に長刀でトドメを刺そうとすると、体勢を立て直した沙耶機が、突撃砲で阻止する。「危なっ!?ふぅ…体制立て直すの早いよ…」沙耶機による突撃砲の攻撃を、寸前で回避に成功するタケルいつもとは、ちょっと違う戦い方で、相手の意表を突く事に成功する。1対9と聞かされた当初は『入隊早々イジメ喰らってる?もしかして?』と嘆いたタケルだが、冷静に考えてみると、『チャンス』だという事に気付く。1対9という設定に油断している向こうの部隊現に、隊長機と副隊長機は様子見という『油断』しまくっていると判断したタケルは、最初っから全力で戦闘をする事にした。結果は大成功他の機体はタケルの機動について行けず、翻弄され続け、結果『7機撃破』に繋がった。 残るは隊長機達二機のみ、しかし、そう簡単には撃破は出来ないと考えていたタケルは『奇襲』をかける事にした。 まずは挑発気味な全力噴射での水平噴射跳躍をし、長刀を装備する白銀機すると、タケルの予想通りに隊長機達は長刀装備をしながら、突撃してきた。ここまでは想定通り、あとは自分が二人の攻撃を回避する事に専念するだけ。 ドキドキと緊張感を高め、その時を待つタケル最初の攻撃をギリギリで回避するが、あとから来る沙耶機の回避は不可能と判断し、長刀で沙耶機の攻撃を防ぎ、蹴り飛ばす。そして、沙耶機を蹴り飛ばしたお蔭で、全力噴射した勢いをある程度殺す事が出来、再び噴射跳躍をして椿機に突撃する。 椿機の頭部を鷲掴みにして、そのまま建物に叩きつけるタケルそのままトドメを刺そうとしたが、予想以上に早い沙耶機の反撃に戸惑いながらも、回避するタケル。 (けど---これで、隊長達は困惑しながら戦う事になる)タケルの考えでは、普通の衛士達ではしない攻撃をする事で、本来するであろう行動を、ある程度『封じる』事に成功するタケル。椿機と沙耶機の二機は、迂闊に行動をする訳にはいかず、消極的な戦い方になると踏まえたタケルは一気に勝負を決めに行く!! ---だが…ここで、タケルの計画に『想定外』なる出来事が起きる 「フフッ…やるな…白銀中尉。だが…このままで終わる私ではないぞっ!!!」「え゛っ?」なんと、あれだけの事をされたにも関わらず、積極的に突撃して来る椿機。流石のタケルも、その行動に驚く。 (予想外だ……もしかして、椿隊長って、速瀬中尉や冥夜達みたいなタイプなのかっ!?)『しまったぁぁ…』と少し後悔するタケルもし、予想通りに、速瀬中尉・彩峰・冥夜みたいなタイプの人物ならば、逆に火が付き、動きが良くなる為、作戦が半分失敗になってしまった事に嘆くタケル。(けど…どうやら、沙耶大尉には効いたようだな。)そして、先程とは少し動きが悪くなった沙耶機には効いた事を悟るタケル。事実、多少のフェイントを入れると、回避行動をとる沙耶機を見て、少し安心するタケル。(良かったぁ…沙耶大尉も速瀬中尉みたいなタイプだったらヒヤヒヤしたぜ…)(クッ…白銀中尉の策にかかったか…不覚!!)タケルの作戦に気付く沙耶大尉だが、少しでもタケルの行動に不安感を植え付けられた為、未だに本来の戦いが出来ないでいた沙耶大尉。 自分の未熟さに反省しながら、椿機をサポートするそして、椿機や沙耶機と鍔迫り合いを繰り返す際、タケルは『ある事』に気付く。 (あれ…?もしかして冥夜と同じ剣術か…?)多少の違いはあるものの、二人の長刀の扱いに冥夜の剣と被りだす。(試してみるか…)そう思ったタケルは、二人を『冥夜が二人いる』と思いながら、長刀で戦い続ける。(…ヤッパリそうだ…癖とかは違うけど、殆ど同じだ……という事は同じ流派なのか?)冥夜と同じ無現鬼道流と悟るタケルそして、冥夜との模擬戦を思い出しながら、椿機や沙耶機を相手に戦う。 (何故だ!?最早我等の剣を見切ったとでも言うのかっ!?)自分達の剣が悉く防がれ、回避される事に驚く沙耶だが…「フフフッ…凄いわ…まさか此処まで凄いとは…嬉しいわよ、白銀中尉ッ!!」戦いに酔いしれてる椿沙耶大尉とは真逆に士気が高まり、益々バトルジャンキーになってしまう。そして--- 「「ハアァアァァッ!!」」白銀機と椿機がお互いに長刀での必殺の一撃を入れ、擦れ違う『ブラヴォー1(白銀機)、左腕大破…戦闘続行アルファ1(椿機)、機関部大破…機能停止』「クッ…何だと…!?」勝負は白銀機に軍配が上がる。椿機の一撃は白銀機の左腕を両断するものの、白銀機は椿機の機関部を両断する。普通ならば、剣の腕では椿少佐には適わないだからこそ、タケルは再び『作戦』を考える。まずは、お互いに必殺の一撃を入れる際、タケルは突撃するスピードを『抑え』ながら、椿機に突撃する お互いの斬撃が、振り切り、相手の機体を切り裂く直前に、スピードを全開にするタケル。タイミングが狂った椿機の一撃は、白銀機の左腕を斬り、胴体を切り裂く前に、自分の機体が切り裂かれてしまう結果になったのだ。 「椿様っ!?」「あと一機のみ---」椿機がやられた事に戸惑いながらも、白銀機を迎え討つ沙耶機 そして、白銀機も体制を直して突撃しようとしたその時---- 「なっ!?」突然白銀機がバランスを崩すガクリと左脚部の膝が曲がってしまう 「なっ、何!?左脚部の関節部が壊れたっ!?」突然左脚部の関節部が壊れた為、動きが止まってしまう白銀機 「隙アリッ!!」「あ゛っ…」その隙に白銀機に横薙の一閃を入れて、白銀機を撃破する沙耶大尉 そして大破判定を貰ったタケルは、機能停止になり、シミュレーター訓練は終了したのだった…