「ただいま~」「お帰りなさいませ、タケルさん、沙耶さん」謁見の間での密談を終えて、月詠邸に帰ってくると、やちるがタケルと沙耶の帰りを玄関で迎えてた。「良くご無事で…」「みんなのおかげだよ。それより、真耶さんは?」「真耶様なら…」「此処に居る。おかえり、タケル・沙耶無事に帰って来て何よりだ。」すると、居間の方から真耶がタケルと沙耶を迎えに来る「真耶、無理はするな。今が一番大変な時期なのだぞ?」「そういうな、沙耶二人の無事を祈りつつ、ただ黙って待つのもなかなか落ち着かないモノなのだぞ?コレならば、一緒に戦場で戦っていた方が数倍気が楽だぞ。」苦々しく語る真耶二人の帰りを待つ時間が苦痛に感じていた「ホラ真耶さん、身重なんですから、無理して動いたら駄目ですよ。」「むぅ…」心配して真耶の手を取り、ゆっくりと居間まで連れて行くタケルそして居間で一息つき、茶を啜る。 「あ゛あ゛ぁ~…茶が格別に旨く感じる…。」「だらしないぞ、タケルまぁ…ハイヴでの激戦を生き抜いたのだ…気持ちだけは解る。」茶を飲み、タレるタケルに真耶から一言言われる。しかし、真耶の表情は、無事に帰って来たタケルの姿を見て、つい笑みが出て来る。 そして、真耶には2001年・横浜基地でのタケルの身分を説明する。 「やれやれ…また訓練兵として入るというのに、そんな笑顔でいるとは…よほどの部隊とみえるな、その『207訓練小隊』とは…」「あの部隊は特別ですよ。俺が入った時は、半分の『207B分隊』しか居なかったけど、それでもかけがえのない部隊なんですあの部隊があったから、オレは強くなれたし、みんなにオレは支えられていたんですよ。」思い出す記憶あのハチャメチャした日常--厳しい訓練や試練に立ち向かった仲間達そして最期には、自分を守る為、命を散らせた-- だからこそ、次は守りたい--だからこそ、彼女達と共に歩みたいのだ…。 「「………」」そんなタケルを見て、真耶と沙耶は心の中で誓う。 愛する人が命を賭して前に進むというのならば、我々もこの命を賭して支えようと--- 視線を合わせ、無言で誓う二人コクリと頷く姿を見て、確認すると--- やちるがパタパタと足音を立てながら、居間にいるタケルの下にやってくる。「タケルさん、お客様が来ましたが…」「客?誰かわかりますか?」「はい、確か『彩峰萩閣准将』と名乗ってましたが…」「ハア!?彩峰准将がッ!?」彩峰准将の名前を聞くと、慌てて玄関へと向かうタケル其処には--まさしく彩峰准将が居た。 「突然の来訪に失礼する。私は帝国陸軍帝都防衛軍第一大隊隊長の彩峰萩閣准将だ。今日は君に話と…部下の沙霧中尉と駒木少尉を救出してくれた御礼に参ったのだ。」「彩峰准将自ら御礼だなんて…恐れ入ります。ささっ、上がって下さい。」 「うむ、失礼する。」居間に案内するタケル突然の彩峰准将の来訪に少し戸惑いを隠せないでいた。 「お茶です、どうぞ召し上がって下さい。」「ありがとうございます。では…」ズズズッ…と熱い茶を飲む彩峰准将湯呑みから口を離すと『ウム…やはり熱いお茶は美味い。』と笑顔で答える。 「白銀君、つまらない物だが、お土産を受け取ってくれ」「あ、ありがとうございます…」「ハッハッハッ、そう緊張する事ないぞ、白銀君。今日はプライベートで訪問したのだ、紅蓮大将や神野大将達と同じく接しても良いのだよ?」「いや…あのオッサン達は別です…」「ハッハッハッ!!あの御二方を『オッサン』呼ばわりとは…やはり噂通りの男だ。なかなか肝が据わってると見る」会話の中でタケルの中身を見抜く彩峰准将笑みの中にも鋭い観察眼が光る。 「斯衛軍が始まって以来の問題児。殿下や五摂家の方々にも馴れ馴れしい態度で接する姿は、斯衛上層部も頭を痛めてるとか。」「んがっ!?」「だがしかし、その類い希に見る戦術機の腕前は、五摂家の方々をも超え、紅蓮大将や神野大将にも迫る程の天才衛士とも聞く。その証拠に、XM3を発案し、白銀の不知火・改を操り、縦横無尽に舞う姿は他の衛士達の士気を上げる程だ。現に尚哉…沙霧中尉も君の存在を気にしていたぞ?」「沙霧中尉が?」「ウム、君の戦術機を見つけるたんびに、かなり意識していたよ。」沙霧中尉がタケルを意識していたと聞き、驚くタケル 「本来ならば、此処に尚哉も連れてくる予定だったが、今日は帝都病院で1日入院をしているのだ。」「あれ…?確か沙霧中尉の怪我は軽いモノだったと…」「怪我自体はな。どうやら君の機動にやられて、少し重めの酔いで寝込んでるのだ。」 「うぐっ!?ス…スミマセンデシタ…」沙霧中尉を乗せたまま全力機動をした事で、1日入院を余儀無くされた事を知り、『やり過ぎたか…やっべー…』と心で呟くタケルの横で、ヤレヤレ…と少し呆れる沙耶と真耶「君に聞きたいのだが…君はあの戦い方は、何処で学んだのかな?」「何処で学んだ…と言っても、オレの場合は我流というか癖というか…」「ほぅ、我流とは面白いな。それで、どうやってあんな常識外れの戦いが出来るのかね?」「まずは、基本的な事はちゃんと普通に学びました。其処からいろんな人の動きや戦術など見て真似したり、自分で考えて『コレはどうだ?』と試してモノにしたりとかですね。」「フム…成る程…」関心してタケルの話を聞く彩峰准将当のタケルは、内心…というか、背中では冷や汗ダラダラと流しながら『嘘はついてないぞ…嘘は…』と心の中で呟きながら会話を続ける。 「XM3の『コンポ』と『キャンセル』ってあるじゃないですか。」「ウム、あれは正に革命的とも言える機能だ。あれが有るおかげで、今までの戦術機では出来ない動きや戦術面が大幅に上がり、戦場での生存率が倍に上がったと言われる。」「ありがとうございます。実はあれは、戦術機を操作してる際、『こんな事が出来ればいいなぁ~』とか『ここはキャンセル出来れば助かったのに…』とか考えた際、色々あって知り合った国連軍の香月博士と相談した結果出来たのがXM3なんです。そこから帝国・斯衛・国連の共同開発が始まったんです。」「なんと!?フム…そういうきっかけのおかげで、XM3や不知火・改が誕生したとは…」タケルの話を聞いて驚きながら関心する彩峰准将そんな時に真耶が話に入って来る「彩峰准将、実は不知火・改誕生に関しては…半分程は、タケルが原因でもあったのですよ。」「なんとッ!?」「当時瑞鶴に搭乗していたタケルでしたが、その類い希な機動特性故に、機体が耐えられなかったのです。その頃唯一乗っても大丈夫だったのが、不知火でしたが、斯衛に所属している故に訓練以外は搭乗して出撃出来なかったのです。そんな時、香月博士が色々裏で手を出して…『アンタの専用機作ってあげる』と言い出し、米国の戦術機開発メーカー『ノースロック社』の技術開発者であるエルヴィン殿をスカウトして来たのです。」 「はっ?」「しかも決め手がタケルの機動特性を見て、エルヴィン殿の『開発者魂』に火を着けてしまって…結果、エルヴィン殿は日本に帰化し、国連軍に所属し、不知火・改が誕生したのです」 真耶の話を聞いてポカンと唖然とする彩峰准将それから数秒後、身体をプルプルと震わせながら大爆笑する。 「クックックッ…アーハッハッハッハッ!!なんとッ!!そんな珍妙な秘話が有ったとは…流石は『白銀の守護者』と呼ばれるだけは有るッ!!しかも米国の開発者まで虜にしてしまうとは…やはり君は面白い男だ。」目尻から溢れ出る涙を拭いながら、笑いを必死で堪えようとする彩峰准将だが、やはり堪えるのは無理なようで、再び爆笑する。勿論タケルは恥ずかしくて真っ赤っかになる 「結果として、不知火・改は『タケルの専用機』ではなく、『日本の主力機』となったのです。」「クックックッ…成る程、だから不知火・改は機動力に優れてるのか…ウム、納得した。感謝するよ、白銀君君のおかげで我々にも素晴らしい機体が当たったのだからね。」「…なんか、すっっごい恥ずかしい…」ピクピクと悶えるタケルを見て、全員で爆笑する。そして、話の内容を変えると同時に、彩峰准将の顔が真面目な表情になる。 「白銀君…出撃前日に娘の慧に会ったそうだね?その際、私達が危機だった際、守って貰えるよう約束したとか…」「あ、ハイ突然の事で驚きましたが、娘さんの約束を守る事が出来、安心しました。」「本当にありがとう。娘の事もそうだが、あの時、尚哉や駒木少尉の危機を救ってくれた事に関しては、何度感謝の言葉を贈っても足りない程だ。」タケルの手を握り締め、頭を深々と下げながら感謝の言葉を言う彩峰准将に驚くタケル同時にその姿を見て、彩峰准将が何故慕われてるかを理解する階級など関係無い--こうやって暖かく接するからこそ、『彩峰萩閣』という人物は人望に厚い人なのだと。 その後、たわいもない談話をした後、夕陽が射してきたのを見て、彩峰准将が帰ろうとする。 「では、そろそろ帰らせて貰う。今日は娘の手料理が待ってるのでね。」「そうですか…あっ、そうだ!!彩峰准将、すみませんが、しばらくお帰りになるのをお待ち下さい。」「ん、どうしたのかね?」「ちょっとした『お土産』ですよ。娘さんに渡したら喜びますよ。」そう言うと、タケルはやちるの居る台所に行き、『あるモノ』を頼む。そして、それから20分後--- 「お待たせ致しました、コレをどうぞお持ち帰って下さい。」「これは…パンに『ヤキソバ』が挟まってるとは…なんとも珍しい。」「会った時に、『今度…ヤキソバご馳走期待してる…』って冗談で言われましたからね。ちょっと工夫してみました。」「これは慧も喜ぶに違いない。娘はヤキソバが大好きで大好きで…」笑顔で『ありがとう』とお礼を言い、ヤキソバパンを持って帰る彩峰准将ちなみに、ヤキソバパンを慧に渡した所、凄まじいスピードで父・萩閣に迫り、もきゅもきゅと食べ、感想に『今…世界が変わった…!!』と絶賛し、涙を流していた。「ハアァ~…緊張しまくったぁ~…」「仕方あるまい、あの殿下でさえ師と呼ぶ御仁だ。彩峰准将の存在は、帝国にとって、それだけ大きいのだ。」「すげぇ人だよな~…あの沙霧中尉が慕う理由がわかったよ。」彩峰准将の偉大さを少しだけわかったタケルそして沙霧中尉や他の帝国軍の者達が慕う理由を理解する 「オレ…まだまだちっちゃいな……うしっ!!」「どうしたの、タケル?」「ちょっと…道場で身体動かして来る晩飯の頃には上がるよ。」「フフフッ…わかった。」彩峰准将の存在に刺激して、道場に向かって身体を動かして来るタケルその姿を見て、笑みを浮かべる真耶と沙耶こうして、平穏な1日を過ごすタケル達だった…