1999年・10月20日「本当に…呆れたわね…」モニターを見ながらポツリと呟く香月博士現在、シミュレータールームで、美琴の戦術機適性検査を行っていた。 その際、タケルと複座型でプレイし、仮想敵として、クリスカ・イーニァの複座型の不知火・改を当てたのだ。 タケル達も機体は不知火・改結果はタケル・美琴ペアの勝利で終わったのだが、問題は『そこ』ではなかったのだ。 「いやぁ~…本当にバルジャーノンそっくりだね~♪タケルの機動も随分変わったような気がするけど、随分と腕を上げたね~。」これである。タケルの『変態全力機動』を体験したのにも関わらず、ケロッとしている美琴に唖然としていたのだ。 「そなた…気分は大丈夫なのか…?」「ほえっ?確かに『少し』酔ったカンジはするけど…遊園地のジェットコースターやバルジャーノンとかで慣れてるから全然大丈夫だよ。G(重力)に関しても、前に父さんに拉致られた際、一瞬の隙をついて逃げて、その際、良く見かける空母に逃げこんで甲板にあった戦闘機が丁度日本に飛ぶ予定だったから乗せて貰って逃げた事も…」「………相変わらずだな、お前…」少し酔った程度で済んだ美琴に驚く冥夜様々な鎧衣家の出来事を語る美琴だが、タケルが呆れながら止める「タケル…どういう事なの…?」「タケルみたいなうごきつかってたよ?」対戦相手のクリスカ・イーニァも流石に驚いていた。タケルに負けるのはわかるだが、途中で代わった美琴の機動を見て、驚愕する。タケル程では無いものの、美琴もタケル同様な機動を操り、クリスカ・イーニァを戸惑わせていた。 当初対戦が始まる前、少しタケルから戦術機の操縦を教わり、以前のタケル同様、戦術機の操縦はすぐに覚え、タケルのようなアクロバットを試し、成功する。 その際美琴がタケルに対戦時の作戦を立てる最初はタケルが相手を圧倒し、相手を追い込む事で焦りを誘う。 そしてその際、美琴に代わり、相手に操縦兼が変わった事を知らせるそして美琴の操縦を相手に覚えてもらい、再びタケルに変更そして相手に『操縦者が変わった時が勝機』と思わせる事で、相手に油断を持たせる。 そして再び美琴に代わった際、相手に油断させたまま、障害物が密集する場所に隠れ、タケルに変更し、撃墜するという至って普通の戦術そして、この作戦はタケルと美琴がバルジャーノンで組む際に良く使った戦術だったりする。 そして、いざクリスカ達との対戦時、美琴に操縦兼が移った時クリスカは高機動戦闘で美琴に接近し、長刀で横薙一閃を入れるしかし、美琴も負けじと限界ギリギリまでしゃがみ、噴射地表面滑走をして回避したのち、そのまま180度反転しながら突撃砲で反撃する。勿論クリスカも美琴の反撃を回避するが、反撃をしようとイーニァが突撃砲を構え、振り向くと、美琴は突撃砲で攻撃しながらジグザグと左右に蛇行しながら、噴射地表面滑走で後退し、途中ある障害物を利用しながらイーニァの突撃砲を回避する。 勿論クリスカが追撃しようと追うが、近づいた際にいつの間にかタケルに操縦権を変えられ、結果、撃墜されるクリスカ達。 結果的にはタケルの攻撃で勝利したが、中身は美琴の作戦勝ちだった 「いやぁ~…バルジャーノンで使ってた作戦が通用して良かったよ~♪」「久しぶりに使ったな、あのコンビプレイ。」「ウン♪けど、さっきの攻撃…危なかった~…もう一度やれって言われても無理かも…なんとかギリギリまで腰を下げて、しゃがみダッシュで回避出来たよ…あのタイミングで急に止まったり後ろとかに回避したら、追撃されてやられてたよ…」(…本当にリーディング禁止にして良かったよ…されてたらあっさり負けてた訳だしな…)今回は美琴の戦術機適性検査を調べる為、今回の対戦はクリスカ・イーニァには『リーディング禁止令』が出ていた勿論、そんな事されていたら、作戦は失敗するし、美琴に代わった瞬間、タケル達の負けは決定していたも当然なのだ。 幾ら美琴がバルジャーノンで鍛えた腕とはいえ、戦術機の実力はクリスカ・イーニァの二人の方が上今回はタケルという要因が有った為、勝てたのだ美琴個人では、二人にはまだ勝てないのだ。「それにしても鎧衣、凄いじゃない。白銀の変態機動にそこまで耐えられたのって、アンタだけよ?他の奴らなんて、地獄を見てるわよ?」「そんな事ないですよ、香月先生~……まあ、確かにタケルの機動には驚いたし、少し酔ったけど…やっぱりタケルがボクの事気を使ってくれたから耐えられたんだと思う。」「それでも、そこまで耐えられれば大したモノよ。」美琴の戦術機適性を誉める香月博士少しニヤリと笑みを浮かべながら美琴を見るその視線の先では、美琴の下にクリスカ・イーニァ・冥夜が集まり、タケルに関する談話をしていると、香月博士がタケルに小さな声で呟く「そうそう、言うの忘れてたけど、今月の末に『解隊式』を予定してるから、用意を頼むわね。」「……『入隊式』はいつですか?…まさか、また解隊式と同じですか…?」「そうしたいのは山々だけど、今回はちょっと忙しいから来年の1月頃にするわ。」残念そうに口を尖らせる香月博士『せ~っかく、まりもとの関係を作るチャンスだったのに…』とか呟きながら舌打ちをする。 因みに前回の速瀬達は『本土侵攻戦』が有った為、一年かかったが、今回は本来から見れば少し遅めだが、通常の時期に解隊式をする事が出来た。「忙しい…とは?」「アンタとまりもには『テストパイロット』をしてもらわないといけないからね。その為、教官職は一時ストップよ。」「テストパイロット…?今度は何を…?」「…以前、アンタの『専用機』の話をしたでしょ?今回は残念だけど『専用機』ではないものの、それまでの繋ぎとして『改良機』を造るつもりよ。」「改良機ですか」「そ、元々アンタが率いる部隊の機体として考えてるの…ちょっとアンタ達、こっちに来なさい。」ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら離れていた冥夜・美琴・クリスカ・イーニァを呼ぶ。 「何でしょうか?」「アンタ達にも『良いモノ』見せてあげる。こっちに来なさい♪」笑みを浮かべながら、招く香月博士を見た冥夜達は、一抹の不安を持ちながら『…次は何を企んでる…?』と諦めにも似た呟きを心の中で語りながら、恐る恐るとついて行く… 第二帝都城・地下施設第40番ハンガー「たはぁ~…凄く広いや~…。」地下施設を見て美琴が素直な感想を言うと、他の者達も頷く。 「当たり前じゃない、此処は帝都城なのよ?京都の帝都城程では無いものの、此処だって日本有数な重要な拠点よ。それを守護する戦術機や戦車等を収納する場所が狭い訳ないでしょ?」「そうですけど…これだけ広いとね~…ねぇ、タケルはこれだけ広い場所見た事ある?」「一応はな、『横浜基地』の『90番ハンガー』がこれぐらい広がったな…」「そういえば、そうだったな…」ハンガーを見て思い出すタケルと冥夜横浜基地の90番ハンガーでの死闘を---決死の覚悟を持って、最期まで作業を行っていた涼宮中尉---そして、自分にヴァルキリーズを託し、みんなを守る為散った速瀬中尉--- 「---本当に…色々あったな…」「…ああ…そうだな…。」90番ハンガーでの悲劇を思い出し、僅かに表情を暗くするタケルと冥夜その様子を見て、美琴やクリスカ・イーニァが気づく「……ゴメン…なんかツライ事思い出させちゃったみたいだね…。」「気にすんな。別に美琴が悪い訳じゃね~から。」「ウム、その通りだぞ鎧衣そなたが責める必要は無い。」謝る美琴にフォローを入れるタケルと冥夜すると香月博士が『パンパンッ!!』と手を叩き、その場を納める。「ホラホラ、辛気臭い雰囲気はもうやめて、先に進むわよ。」「スミマセン、先生」小さく溜め息を吐く香月博士に頭を下げて謝るタケルその後、香月博士に連れられて先に進むと、シートに包まれた戦術機が納められていた。 「…なんですか、この機体…?」「フフフッ…アンタ達が驚く機体よ。…班長、シートをめくって頂戴。」香月博士が整備班長に指示を出すと、整備士を集めて一斉にシートを外すと--- 「………えっ?」「これは…『武御雷』!?」「フフッ…驚いた?まだ試作機だけど、殿下にお願いして、試作機を二機貰ったのよ。」シートから現れたのは、本来ならば、まだ表に姿を見せる事の無い機体『type00・武御雷』だった。 まだカラーリングは黒だったが、その存在感は他の機体とは比べ物にならない程だった。「コレが戦術機…ホントに『リアルバルジャーノン』だよ…」「タケミカヅチ…今まで見て来た機体とは違う雰囲気を持っているカンジがする…」「ねぇ、ユーコタケミカヅチって、どれぐらいスゴイの?」初めて戦術機を生で見て、プルプルと震えながら感動する美琴その隣でクリスカが威風堂々とする武御雷を見て感想を述べる。そして、イーニァが香月博士に質問すると--- 「良い質問よ、イーニァそうねぇ…性能だけで言えば、世界屈指の性能を持ち、接近戦に関しては『最強の機体』と言われる程よ。固定兵装として、前腕外側部に00式近接戦闘用短刀を手首側1、肘側2、左右合計6振装備し、前頭部大型センサーマスト・肩部装甲ブロック両端外縁部・前腕外側部外縁・前腰部稼働装甲外縁などの他、マニュピレータ指部先端、足部先端、踵部先端といった全身をスーパーカーボン製ブレードエッジ装甲により鎧ってて、これらにより近接密集戦において圧倒的な攻撃力を誇り、究極の近接戦戦術機とも言える性能を獲得したわ。けど、生産性や整備性が犠牲となり、整備するのも、高位な技術士を必要とするし、年間三十機しか生産が限界なのよ。」香月博士が武御雷の説明をすると、その性能の凄さやリスクの大きさに驚くクリスカとイーニァ美琴関しては、まだ全然理解出来なかったが、『かなり凄い事』とだけはわかったようだ。「しっかし…知ってたとはいえ、武御雷ってホント斯衛の為に作られた機体だな…。接近戦バリバリな装備だもんな…。」「しかし…コレを改良するとなると…不知火以上に容易では無いのでは?」「それについては、大丈夫よ。性能的には、さほど変わらないけど、そのかわりに度外視されてた生産性や整備性を上げる事が出来るわ。武御雷自体、機動力では負けるけど、他に関しては不知火・改以上だからね、改良型にした際は、生産性や整備性の他に機動力は上げる事は決定ずみ。他の改良点はこれから考えるわ。」冥夜の疑問に詳しく説明する香月博士その説明を聞いて納得すると、タケルが再び質問をする。「生産性や整備性を上げるなんて…出来るんですか?」「今、エルヴィンが富嶽重工と遠田技術と共同作業をして、技術力上昇の為、色々と試行錯誤をしてるわ。実際、そのおかげで試作段階で10%程だけど、上がったみたいよ。」「すげー…流石はエルヴィンさんだ…」「エルヴィンも武御雷に絶賛してるから、改良機には不知火・改以上に力を入れるみたいよ。」エルヴィンの影からの活躍を知り、尊敬の眼差しをするタケルすると、美琴が『あるモノ』を見つける 「香月先生~。あの機体は何ですか~?」「ああ…アレ?アレは別の事に使う予定なのよ。」「あれは…もしや…」「ラプター…いや、少し違う…」「あれはね、『高価な鉄屑』なんて呼ばれてる『YF-23・ブラックウィドゥ』って機体よ。性能で言えば、ラプターをも上回る機体よ。」ブラックウィドゥの登場に驚くタケル達その表情を見て妖しく笑みを浮かべる香月博士の姿があった…あとがき---出ました、YF-23・ブラックウィドゥ。騎士王的にたけみーと同じぐらい好きな機体です。…さて、この機体…誰が乗るんだろ…(ニヤッ)あと、多分美琴の件で『何故一般人が戦闘機に乗れるの?』というツッコミは止めて下さい。解答としては『鎧衣親子だから…』と答えておきます現に彼女…タンカーに乗って日本に帰った方ですから… ちなみに戦闘機に乗った設定は、以前、二回程その空母に拾って貰い、日本に帰った事がある為、顔見知り。勿論船員も理由を知ってる為、『また父親から逃げたのか…』と苦笑いし、日本に飛び立つ戦闘機についでに乗せて貰った…という設定です。うむ、苦しい設定のような気はするが(えっ?)美琴なら出来そうだからコワイ…(汗)