1999年・10月31日-- 「さてと…用意も出来たし…行きましょう、まりもちゃん。」「ええ。」お互いに正装に着替えて向かう先は、『前回』と同じ体育館。今日は--今まで育ててきた純夏達訓練兵が卒業する日。 「…あれだけ騒がしかった日々が嘘みたい…。もう…解隊式を迎える日が来るのが早く感じるわ…。」「そうですね…色々ハチャメチャな出来事がありましたしね~……その分、静かになると、寂しくも感じますしね…」「そりゃそうよ。私の教官職の中でも騒がしかった訓練兵達だもの…騒がしい分だけ、居なくなると寂しくなるものよ。」「そっか…」しんみりとするタケルとまりもこの10ヶ月間の様々な出来事をつい昨日のような感覚で思い出す。 訓練初日から目立っていた純夏こと有る事にその拳で天高く相手を飛ばし、教官であるタケルやまりもですら、その拳に恐怖していた日々-- 気に入った相手をからかう事に全力を注いだ美冴タケルの『変態全力機動~お仕置き編』を喰らい、痛い思いをしたにも関わらず、懲りずに周囲を巻き込む日々--総戦技演習の時、『ご褒美』という餌をバラまかれ、教官であるまりもすら参加し、危うく全員失格になりそうだった、あの日--「アレ--?あんまりマトモな記憶が思い出せないのは何故…?」「………私もよ…。」今までの記憶を思い返して見ると、マトモな日が少なく、思い出せない事にビミョーな気持ちになるタケルとまりも 「そ、そういえば、今日は誰が解隊式で演説をするんだろ。」「…私も知らないわ…前回は夕呼だったけど、今回は誰かしら…?」今回の演説をする人物を知らないタケルとまりも一抹の不安を持ちながら体育館へと向かうと--- 「タケル様、神宮司殿、今日は宜しくお願い致しますわ。」途端に力が抜けて跪くタケルとまりも体育館の入り口の前には、悠陽と護衛の神野大将が居た事で『先生の仕業だな…』と全てを悟るタケルまりもに関しては、悠陽の予想外の登場に頭を抱えて『夕呼…此処までしなくても…』と小さな声で呟く。 「で、殿下自ら来て頂きありがとうございます。」「いえ、今日は解隊式を迎える日。特に『友達』である純夏さんの部隊となれば、尚更の事。御祝いの言葉を直接贈りたいと思ってた所に香月博士からのお願いでしたので、丁度良かったですわ。」「最後の最後までハチャメチャだな…」香月博士のイタズラに頭を抱えるタケルそんな様子を見た神野大将は『…大変じゃのぅ…』と同情する。 「ハア…ハア…ちょっと待って貰えないかね、タケル君」「巌谷中佐!?」すると、巌谷中佐が息を切らせながら走って来る。 「何時お戻りに!?」「昨日だよ、タケル君…いやはや、なんとか間に合って良かった。」「どうしたのですか、巌谷中佐…?」『明星作戦』後、本土奪還作戦に参加していた巌谷中佐の登場に驚くタケル達 息を整えて、本題に入る。 「すまないが、タケル君…今回の解隊式…立会人として、私も参加させてくれないかね?」「えっ?」「唯依ちゃんの解隊式…この目でその凛とした姿を見届けたいのだが…駄目かね?」親バカっ振り炸裂にズッコけるタケルとまりも真面目な顔で語るから尚更タチが悪い。視線を悠陽に合わせ、アイコンタクトで『どうする、これ?』と聞くと--「私は構いませんわ、タケル様。」「……なら、帝国軍代表として、立会人になって下さい…。」「おおっ!有り難い。感謝するよ、タケル君」少し呆れながら許可を出すタケル『…オレもこんな親バカになるのかなぁ…』などと、自分の未来の姿に不安を感じていた。 「殿下、中に入りますので、お足元にお気をつけて下さい。」「ハイ、わかりましたわ。」「では……全員、整列ッ!!政威大将軍・煌武院悠陽殿下の入場である!!」「「「「えっ!?」」」」「ぜ、全員敬礼ッ!!」ガララッ…と体育館の扉を開くと、まりもが大声で訓練兵を整列させ、悠陽殿下の入場を口にする。 勿論、純夏達訓練兵は、まさか自分達の解隊式に悠陽殿下が来るとは思わず、戸惑いながらも整列し、唯依の敬礼の一言で全員敬礼する。「皆さん、楽にして下さい」体育館に入る悠陽が踊場に上がり、中央に設置している机に到着すると、敬礼している純夏達に敬礼を解くように命じる。純夏達は敬礼を解き、悠陽に視線を向けると演説が始まる。 「此度の解隊式…誠におめでとう御座います。日頃の学業や訓練に力を入れ、衛士になる事を目指し、この日本や民を守る事を目標として頑張る皆様の努力…それが、今回解隊式に導いた要因だと思います。」悠陽の演説を聞き、嬉しさの余り身を震わせる唯依や佳織日頃の努力を悠陽に誉めて貰い、嬉しさで涙を滲ませるまりかそして、今までの努力で念願の解隊式を迎え、嬉しさを表情に出さないように噛み締めながらも、僅かに目尻に涙を溜める美冴皆、様々な想いが出て来て、涙を滲ませる者達が数名居た中、離れてその様子を見ていたタケルやまりもが心配そうに見守っていた。 (みんな…嬉しさで涙滲ませてらぁ…)(今回は許してあげましょう…今日はみんなにとって喜ばしい日だもの…。)小さな声で語るタケルとまりも…表情には出さないが、やはり二人も純夏達の門出に喜んでいた。 そして、演説は終わり、衛士徽章授与を行う為、まりもが純夏達に敬礼を命じる「気をつけぇっ!!煌武院悠陽殿下に…敬礼ッ!!」ザッ…!!と敬礼をキメる純夏達まりもの訓練兵最後の命令を完璧にこなす。「…引き続き、衛士徽章授与を行う。」そして敬礼を解いた後、次に衛士徽章授与を行う為、タケルはマイクの前に立ち、進行を進める。「宗像美冴訓練兵」「ハッ!!」 「これにより、そなたは国連軍衛士になりましたおめでとうごさいます。」「有り難う御座いますッ!!」「宗像さん…タケル様をからかうのは程々にしてくださいよ?」「殿下の命令とはいえ、それだけは無理です。」「まあ…宗像さんったら…♪」悠陽から徽章を胸に付けて貰った際、悠陽から一言を言われるが、『白銀中尉をからかうのは、最早生き甲斐ですから』と言わんばかりに、笑みを浮かべながら拒否をする。そんな美冴を見て笑う悠陽だが、当のタケルは豪快にズッコけ、後頭部を強打する。 「鑑純夏訓練兵」「ハイッ!!」「これにより、そなたは国連軍衛士になりましたおめでとうごさいます。」「有り難う御座いますッ!!」純夏の胸に徽章を付ける悠陽そして御祝いの言葉を贈ると、新任衛士らしく敬礼しながら感謝の言葉を口にする純夏「純夏さん…私にとって、そなたが初めての『友』です…プライベートでは、『政威大将軍・煌武院悠陽』としてではなく、『1人の女性・悠陽』として接してくれた事や、クリスカさん・イーニァさん・社さんを『親友』として紹介してくれた事…私にとって、どれもが初めてであり、嬉しい事でした…。」「い、いえ…そんな事無いですよ~。」「純夏さん…私にとって、そなたが一番の『親友』です…心より感謝を…。」『親友』として接してくれた純夏に心から感謝する悠陽当の純夏はアワアワしながら戸惑っていた。「クリスカ・ビャーチェノワ訓練兵」「ハッ!!」「これより、そなたは国連軍衛士となりましたおめでとうごさいます。」「有り難う御座います。」クリスカも悠陽から徽章を胸に付けて貰うと、一言声をかけられる。 「クリスカさん…恐れてはなりませんよ。」「は?」「篁さんと仲良くなりたいのでしょ?」「「な゛ぁっ!?」」悠陽に見抜かれてしまい、驚くクリスカ同時に離れていた唯依も聞こえ、驚愕する。 「そなたと篁さんの現在の関係…私から見れば一目で分かりましたわ。」「な…何故ですか…?」「お互いに強く信頼し、意識しあってるにも関わらず、お互いに素直になれずにいる為、『友達になりましょう』と名乗れないでいる…そんな感じが伝わって来ましたよ?」「はうっ!?」唯依との関係を見破られてしまい、戸惑うクリスカ唯依もアワアワと慌てる様子を見せているが、ぶっちゃけ、みんな知っていた…つーかバレバレだった…。「篁さんとの仲の進展…陰ながら、私も応援致しますわ♪」「あ、ありがとうございます…」スッゴく恥ずかしくて顔を真っ赤っかにするクリスカ勿論唯依も真っ赤っかだが、離れていた義父・巌谷中佐は『唯依ちゃん…頑張れ…☆』と萌え的なカンジで親バカっぷりを発揮していた…。 「イーニァ・シェスチナ訓練兵」「ハイ!!」「これより、そなたは国連軍衛士となりましたおめでとうごさいます。」「ありがとうございます♪」悠陽から徽章を付けて貰うと、自分は何を言われるのかをウキウキしているイーニァ 「イーニァさん、クリスカさんと篁さんの友達の件…頼みますよ。純夏さんや社さんと一緒に支援してくださいね♪」「「な゛っ!?」」「ウン、モチロンだよ♪クリスカとユイのことはまかせて♪」「頼もしいですわ☆」クリスカと唯依の事を託され、ぺたんこな胸にドンッと拳を叩いて任されるイーニァ勿論クリスカ・唯依の顔はトマトと同じぐらい真っ赤っかになる。 国連軍組が終わり、次は正樹達帝国軍組の番になると--- 「前島正樹訓練兵と伊隅まりか訓練兵」「「ハイ!!」」「…スミマセンが、そなた達の徽章は暫しお待ち下さい。『とある理由』がある為、順番を変えます故に、待って貰えないでしょうか?」「え…あっ、ハイ…大丈夫です。」「り、了解しました。」突然の事に驚き、戸惑う二人残った二人に徽章を贈り、一言声をかけると、次は斯衛組に変わる。 「篁唯依訓練兵」「ハッ!!」「これより、そなたは斯衛軍衛士となりましたおめでとうごさいます。」「有り難き御言葉です!!」唯依も悠陽から徽章を頂くと、一言声をかけられる。 「そなたの話はタケル様や神宮司軍曹から良く聞きます。成績優秀、剣技にも長け、人望も厚いと三拍子揃ってるとか…」「そっ、そのような事はっ!?」「裁縫・掃除洗濯・料理も得意、大和撫子のような存在とも聞きます。」「め…滅相も……無いです…」悠陽からメッチャ誉められまくり、逆に胃が痛み出す唯依。ちなみに『大和撫子』の情報源は親バカ・巌谷中佐と斉御司兼嗣大佐だったりする。 「篁さん」「ハッ、ハイ!!」「----そなたもタケル様の下に娶りませんか?」「ハイ…………………………………………………………ハァァァッ!!?」「「「な゛ぁっ!!?」」」悠陽の突然の爆弾発言に驚愕する一行タケルは再びズッコけ、そのコケたタケルの肩にポンと手を乗せて『唯依ちゃんを頼むよ、タケル君☆』と笑顔で娘を託す巌谷中佐そして、その近くでゴゴゴ…と嫉妬のオーラを放つまりもが『篁…貴様もか…ッ!!』と少し狂犬になりかかってたりする。 「ででで…殿下、突然何を…?」「いえ、篁さんもタケル様を想う一人と聞き、それならば…と思ったのですが?」「情報源は一体誰でしょうか!?」「巌谷中佐と宗像さん・雨宮さん・香月博士…」「あ~ま~み~や~!!む~な~か~た~!!叔~父~様~<◎><◎>」グリンッと目を光らせて威嚇する唯依その眼(まなこ)を見て、『ヒッ、ヒイッ!?』と悲鳴をあげて怖がる美冴・佳織・巌谷中佐 そんな唯依をスルーして、次の佳織の前に移動する。 「雨宮佳織訓練兵」「ハ、ハイッ!!」「これより、そなたは斯衛軍衛士となりますおめでとうごさいます。」「有り難う御座います。」怯えていた佳織だが、悠陽から徽章された為、即座に冷静に戻る。 「雨宮さん」「ハイ」「篁さんとタケル様の件…頼みますよ。」「ハイ♪…あっ、しまっ…!!」悠陽の一言で本音がつい出てしまい、再び唯依に睨まれる羽目になる佳織勿論そんな事スルーする悠陽は残りの二人の徽章を済ませ、一言言葉を交わし、斯衛組は終了する。 そして先程順番を変えられた正樹とまりかの前に立つ悠陽先程までのはっちゃけは無くなり、真摯な表情で言葉をかける。 「お待たせ致しました、前島正樹訓練兵そして、伊隅まりか訓練兵」「「ハッ!!」」「順番をずらしたのは、深い理由があります。詳しい話は部隊配属の際、タケル様が伝えます。」「「了解しました。」」二人に徽章を胸に付ける悠陽そして---「前島正樹訓練兵及び、伊隅まりか訓練兵そなた達はこれより『斯衛軍衛士』になりました。おめでとうごさいます。」「有り難う御座い…………ハイ?」「斯…衛軍…?」突然斯衛軍に所属する事になり、言葉を失う正樹とまりか 「突然の事で驚くでしょうが、この件に関しては、香月博士との話の結果、決まった事です。そして、その理由のひとつとして、そなた達には『重大な任務』を命じる為、今回斯衛軍に所属する事が決まったのです。」「重大な任務…!!」悠陽の一言にゴクリと息を呑む正樹とまりか他の者達も驚きを隠せないでいた。 「突然の所属変更に戸惑うでしょうが、どうか御理解頂けないでしょうか?」「ハッ、任務となれば致し方ありません。」「任務お受け致します!!」ビシッと敬礼を決める正樹とまりか遠くから少しホッとするタケルがマイクを持ち、解隊式の終了を告げる。 「これで解隊式を終了する。全員、政威大将軍・煌武院悠陽殿下に…敬礼ッ!!」「「「「有り難う御座いましたッ!!」」」」純夏達全員が敬礼をし、退室する悠陽を見送る。 こうして、解隊式は終了する。 そして、この後タケルの口から重大な事を告げられ、再び驚愕するのだった…