ここは月の都、ある屋敷の一室。
月の頭脳と呼ばれている齢の女性、美しい銀髪を持つ者が居た。
現在彼女は暇を持て余している。日々変化の無い月では、時たまする事がなくなる時がある。
そんな時は、次に何をするか考えながら過ごすのが常だ。何も焦る必要は無い。なぜなら、彼女達には穢れがないのだから。
穢れがなければ、生死とは無縁。ずっと変わらず、変化無く存在することが出来る。
やることが無くて焦るのは、現代日本人の悪い所である。
彼女が寛いでいると、部屋に訪ねてくる者がいた。身なりを整え、部屋に招き入れる。
訪ねてきた者は彼女の部下の男。実は彼女、かなり偉いのである。
どうやら大急ぎで来たようで、部下は若干息切れをしているようだ。彼女は彼を落ち着けた後、何を急いでいるのかと理由を聞く。
そして、驚愕。一瞬の間を置いて落ち着いた彼女は、冷静に思考する。
彼が言った内容は『月に侵入者/侵略者が現れた』。こういうことである。
彼女達にとって、月に侵入して来る者など始めてだ。妖怪も、人間すらも存在していないほど大昔に月へと移り住み、暮らしてきた。
かつて一度だけ月に来た者たちも居たが、それはかつて地上に残った仲間達である。
彼らは地上に興味を持ったのか、ごく少数だけ残り、結界を張り擬似的に一つの世界を作った。
そんな彼らも地上に見切りをつけ、この月へとやってきたのだった。
そう、それ以来、月に来た者はいない。地上には、月まで来る手段など無いはずだった。
『はず』だった。
彼女は聞き返す。その情報に、誤りはないかと。
男は返す。一切の誤りなし。この月の都を目指して、『妖怪』が攻めてきていると、そう、言った。
彼ら妖怪は都へと進む。所謂『表の月』と呼ばれる位置に転移した彼らは、気配を頼りに移動を開始した。
彼らが月に着いた手段は、簡単だ。ハジが、その道のりを創ったからである。万を優に超える年月をかけて。
彼の能力は始まりと終わりの地点を操作する能力。彼命名で『端を操る程度の能力』である。
彼の能力は、『起点』となりえる場所さえあれば、能力を行使することが出来る。
概念的、物理的、何でも構わない。ただできる、と。『そう』彼が信じ、思えば、できる。
逆に言えば、疑ってしまえば出来ないのだが……。
異能とは、古来からそういうものだ。あらゆる法則を無視し、自分だけの法則で世界を塗り替える。
他人には理解のできない、侵すことのできない『自分だけの世界』があるのだ。異能持ちには。
異能を持っているから出来るのではない。その者にとってただ『出来るから』、異能を持っているのだ。
彼は出来ると思った。月まで届くことが出来れば、後は簡単に繋げることが出来ると。
彼は伸ばし続けた。手を、力を、己の意思を、いつも見上げる月まで。とどけ、とどけと。そして、繋がった。
糸のように伸ばした妖力を起点に、転移をする。それだけで、彼は仲間を引き連れ月へと来ることができた。
月に居る者を排除し、月を手に入れるために。
彼らが最初に感じたのは、高揚感だ。妖怪としての本能が、月の力に歓喜している。
次は、浮遊感。地上では味わえぬ、謎の感覚。飛べるものは飛び、飛べぬ者は妖力を纏い、地に縫い付けた。
ハジは気配を探り、『何者か』が集まっている場所へと進む。数多の妖怪達を引き連れて。
そして、やっと見えてきた。彼らが今まで見たことのない、訳のわからぬ建物達が。
彼らは直感する。ここが、月の民の住処だ、と。
ハジは挨拶代わりに巨大妖力弾をぶちこみ、多くの建物を崩す。そうして、妖怪と月の民は出会う。
ここに、月の民と妖怪達の短い戦争が始まった。
返しの挨拶は、月の民の悲鳴だった。
月の頭脳は思考する。
彼女は強大な力の持ち主であるが、その真価は頭脳にこそある。
天才。そんな言葉すら、生ぬるい。
人知を超えた頭脳を持つ彼女は、思考する。現在の問題を、妖怪の襲撃を。その無力化の方法を。
部下からの報告を聞き、現状の確認をしようと部屋を出ようとした時、轟音が聞こえた。
何事かと思い外へと出てみれば、都の外れで建物が倒壊している。
それを見た彼女はすぐさま部下に指示を出し、対策を取るために移動を開始。
他の部下達にも声をかけ、戦える者の現場派遣、戦えぬ者の非難をさせるよう指示を出す。
ついでに弟子達に勝手な行動を取られても困るので、声をかけに向かう。
彼女は『妖怪』について知っていた。
都の外れ部分ではあるが、そこには惨事が広がっていた。建物は崩れ、下敷きになって死んだ者達も居る。
足の速かった月の兵士は既に『妖怪』と交戦を開始。右を見れば破壊行動に勤しむ妖怪、左を見れば月の兵士と戦う妖怪。
そして、この惨事の中心に、幼いという表現が似合う容姿を持った妖怪がいた。
その顔は、笑顔だった。とてもとても、嬉しそうに、楽しそうに笑っていた。
二人の少女は、都の襲撃を見ていた。
彼女達の名は綿月 豊姫、綿月 依姫。
名前から分かる通り、彼女達は姉妹である。二人は月の頭脳の弟子であり、まだ若くとも非常に優秀で、将来的にもかなりの期待をされていた。
彼女達の下にも報告は届いており、襲撃者が『妖怪』、つまり『下賤な地上の民』であることも知っていた。
彼女達は思う。許せない。下賤な地上の民が、我ら月の民に手をかけるなど、と。
そして、彼女達は出撃を決意し、彼女達の師匠、八意の下へと許可を求めに向かった。
しばらくして彼女達は接触し、八意に『協力』を求められ、出撃はお流れとなるのであった。
ツキは率先して月の兵士達と戦っている。
彼女の他にも、兵士達と戦う者は増えてきていた。
最初は都の破壊から始めていた妖怪達だが、徐々に抵抗する者が増えると戦闘に移行していった。
月の頭脳の指示で出向いた者、他者を守ろうと出向いた者、地上に住む者を早く排除しようと出向いた者、理由は様々だが、
戦える者が集まってきた。
ツキは歓喜する。向かって来る敵は、強い者ばかりだ。
直接的な戦闘では、妖怪トップクラスの彼女である。並の神ですら、打倒するほどだ。
戦いを愉しみとする彼女にとって、今の状況は愉悦以外の何物でもない。
次々と襲いかかってくる敵。倒しても倒しても、集まってくる。この数では、彼女一人では倒しきれない。だが、彼女は愉しむ。
なぜなら、彼女にも仲間が居るから。心強い、仲間が。
「ツキ!前へ出過ぎだぞ!」
「悪い悪い。つい、楽しくなっちゃってさあ」
奥理がやってきた。アマツも近づいていたが、もはや風よりも速い速度で辺りの敵を切り裂いていたので、姿は見えなかった。
「いやぁ、愉しいねえ。いつこの身が果てるかとゾクゾクしちまうよ」
「だが、勝つ。そうだろう?」
「勿論さ。……おーい! アマツだってそうだろう?」
「そうだね。こいつら、僕達よりは弱い」
アマツに声をかけると彼は急停止し、返事をする。
超速度から急停止をしたら体が持たなそうな物だが、アマツはそれを気にした風でも無く会話に参加していた。
「それにしても、向こうじゃハジも派手にやってるねえ。久しぶりに戦ってる姿を見たけど、いつ見てもあの強さには惚れ惚れするよ」
「そうだね。でもハジ、なんで急に月を攻めようだなんて言ったんだろう。いつもなら一人でやってそうだけど」
「それを気にしても仕方がないのではないか? この程度の奴らになら、私たちが死ぬ事もないだろうしな」
「死ななきゃいいって感じだからねえ。まあ、強い奴と戦えるのは大歓迎さ。案外、ハジもお祭り騒ぎしたかったのかもね」
「そうかもな」
妖怪の攻撃はまだまだ続く。各地で、あらゆる妖怪達が都を攻めている。
ある者は焼き払い、またある者は全てを凍らせ、またある者は大地を割っていた。
ハジは事前に指示を出していた。全て、自分たちの物にしようと。
訳の分からない物など要らない。全て、壊してしまえと。
少年は戦況を眺める。
戦場のド真ん中、最も目立つ場所で空中に腕を組み浮いていた。
彼の予想で、この侵攻スピードならば四日、敵の抵抗を考えれば八日で都を完全に制圧できると思っている。
ただ、疑問に思っていることがいくつかある。
一つは『敵が天上の神々』ではないこと。彼ら、また彼女らからは感じた気配は昔の気配と比べれば大分薄い。
しかし、だからと言って人間ではない。妖怪でも無ければ、地上の神でもない。
やはり、一番近い気配で言えば天上の神々なのだが……。正確な正体までは彼には分からなかった。
もう一つは、敵は強いといっても、圧倒的な強さを持っている者が居ない。
かつて戦った神は、ハジに致命傷を与えるほどに強かった。
現在戦えば勝つのはハジだ。それも、無傷での勝利も可能である。だが、それを考慮しても、相手が弱い。
彼は予感している。強い者は、まだ出てきていない。これからが、本番だ、と。
ハジは向かって来る敵を次々と殺して行く。
頭を掴み、地面に叩きつけ、潰す。次の敵は首を爪で切り裂き、その次敵には心臓を抉り取り、目の前で潰すといったことをしていた。
彼はイラついていた。
相手が人間だったならば、恐怖を食べ、満足していただろう。相手が妖怪だったならば、彼は無条件で好く。
相手がただの神であったならば、イラつく事も無く、作業的に殺していた。
彼がイラついている、その理由。
それは、相手に『終わり』が見えないからだ。
彼は始まりも、終わりも何となくわかる。自分自身の事になれば、秒単位で生きた時間すらわかるし、残りの寿命の時間ですら分かる。
だが、月の民達にはそれが見えなかった。分からなかった。故に、彼はイラつく。強制的に終わらせたくなるほどに。
様々な理由から、彼はこの戦いを素早く終わらせたかった。
嫌いな物は近くに置いておきたくないし、諏訪子たちにも感づかれるのは不味い。
なにより……。
妖怪達が都を襲っている中、彼女、八意は弟子たちを連れて彼女の研究室へと向かっていた。
既に兵士たちへの指示は出した。第二陣からは、新兵器『銃』の使用が成されるだろう。
この前開発された兵器であるが、兵士たちは訓練は十分に積んであるので問題は無い。
月の科学に妖怪は敗れる。それが、彼女の出した結論だった。
「八意様。私たちは一体何をお手伝いすれば?」
「貴女達にはちょっと調べ物を手伝って欲しいのよ」
「調べ物……ですか。一体どのような」
豊姫達は八意から協力の内容を聞かされていない。
本音を言えば、彼女達は妖怪を退治したいのだ。自らの手で、奴らを排除したかった。
だが、それは彼女達の師匠である八意に止められている。
『貴女達が参加するほどでもない』、そう言われてしまっては言い返すことは出来ない。
八意にとっても、貴重な弟子を、こんな戦いで傷つけたくは無いのだ。
それよりも、彼女の記憶が正しければ戦うまでもない状態まで持ちこめ、戦況は簡単に覆すことができる。
『対妖怪用結界術』。それが、彼女の中で一番有効な策であった。
かつて、彼女は地上からやってきた仲間から聞いたことがあった。
その昔同胞を妖怪に殺されてしまったらしい。殺された者は、仲間内でも上位の力の持ち主であり、それはそれは衝撃的だったようだ。
それを受け、何人かの仲間に抹殺の命を出したらしいが、その者たちも、妖怪に殺されてしまった。
もしもの事があったらと、対妖怪用の結界を作っておいた、と。そう聞いていた。
そして、その結界は今、術式として残っている。既に不要な物と思っていたが、彼女はそれを保管しており、それを探し出す協力をして欲しいのだ。弟子たちにも。
その事を彼女が伝えると、彼女達も快く承知。そして、見つかる。
結界の内容は、妖怪の力を低下させる物。それも、小、中位の妖怪ならば瞬時に消滅してしまうような。
肉体そのものよりも精神に重きを置く妖怪は、たとえ手足が千切れたとしても、粉々にでもならなければ、くっ付く。
とは言っても、個体差もあり、妖力の大きさも関わってくるので絶対とは言えないのだが、
大妖怪と呼ばれる存在のほとんどは、腕がもげたところで問題は無い。傷の回復も早い。
この結界は、地力を下げる効果のほかに、その回復の阻害も行う。
つまり……。妖怪達の大きな武器である頑丈性が失われるのだ。無茶が、効かなくなる。
戦いの終わりは近づいてきた。
戦場では新たな展開が生まれていた。
広域破壊が得意な者が建物を破壊し、白兵戦が得意な者が、それを守り、敵を撃破していく。
それを繰り返し、拡大を行っていると敵に援軍が訪れた。
妖怪達は今までと変わらずに対処をしようとするが、敵は今までとは違う武器を持っていた。
彼らには見たこともない武器であったが、見たことも無い物など今さらである。神力も何も纏っていない武器など恐れるまでもない。
一人の妖怪が攻撃を加えようと大きく手を掲げた。
彼女は氷塊から生まれた妖怪、スノウ。彼女は海に氷の陸地を創りだしたほどの実力者だ。
そんな彼女が氷のつぶてをまき散らそうと、そして敵を纏めて凍らせようとした時だった。
その彼女の腕が、地に落ちた。
戦場に響く銃声。
音速に迫るほどの高速攻撃。
小さく、見切ることが出来ぬほどに速く、そして威力のある攻撃に形勢は逆転した。
妖怪が押される側へと、変わっていってしまったのだ。
だが、その程度でやられる妖怪たちではない。伊達に彼らは大妖怪とは呼ばれていないのだ。
彼らは何発もその身に銃弾を受けていたが、まだまだ問題なく動ける。
だが、問題は威力よりも速度。いくら動けるからといって、そう何十発も食らっていい物ではない。
しばらく回避に躍起になっていると、相手の攻撃の軌道が直線的な事に気がついたハジとアマツは指示を出す。
直線でしか攻撃は飛んで来ない。それさえ分かれば攻撃は見えなくとも、読める。
妖怪達は徐々に慣れ始め、避けられるようになっていた。
妖怪の力と、月の科学。『一進一退』の攻防であった。そう、この時点で『五分と五分』であった。
それを意味することは、つまり。
少しずつ、少しずつ銃弾にも慣れ、妖怪達が優勢を取り戻していた時。
戦場を巨大な結界が覆った。
妖怪達の動きは、確実に鈍った。
月の頭脳は戦場を進む。その中心へと。弟子達は置いてきた。今彼女が気にしているのは戦いの勝敗『ではない』。
どこまで被害が広がっているかである。なにより、『姫様』にもしもの事があったら目も当てられない。
万が一のことを考え、弟子達に彼女の守りを固めてもらったのだ。
周りを見れば、妖怪達は鈍い動きで必死に銃弾を避けようとしている。様子を見ると、結界の効果はきちんと起動しているようだ。
しかし、一人。結界の中でも妖力を漲らせている者が居る。ハジだ。
彼と彼女はお互い睨み合っていた。
お互いは直感していた。目の前の存在が、リーダー格だと。
周りは、戦火が広がっていた。彼はすぐにでも仲間の治療を行いたいが、しかし、眼を逸らすことは出来ない。
少年は忌々しく、女性は無表情で見つめあっていた。
先に口を開いたのは……女性。
「何が、目的なのかしら?」
「聞きたいか?」
少年は答える。その顔に、確かな嫌悪感を浮かべて。
だが、少年が答える前に彼女が答えを言っていた。
「どうせ、月を手に入れるとかでしょう?」
「……ふん、その通りさ」
さらに不機嫌になる少年。彼にとって、月侵略とは地上制服の前座に過ぎなかったのだ。勝てて当然の戦いだった。
天上の神は『強くならない』。それを彼は知っていた。だからこそ、勝てると踏んで此処に来たのだ。
かつて戦った天上の神程度ならば、彼にとって片腕だけでも倒せるレベル。仲間たちも、多少の苦戦で済む。
昔とは、技の練度が違う。年季が違う。
力の使い方は、さらに巧くなり、戦略の幅が広くなっている。
だが、結果はこの有様。彼の行動が、仲間を危険に晒している。
ただ、彼は最後くらいは皆と一緒に戦いたかった。それだけだったはずなのに。
「これ以上の抵抗は諦めなさい。すぐに帰るというのならば、見逃してあげる」
「ぐぅ……」
彼にとって、それはかなりの侮辱。
弱いと思っていた奴らに良いようにされ、加えて見逃すといわれる。
力に自信を持っている彼だからこそ、その屈辱はさらに大きな物だった。
彼は怒りを力に変え、腕に妖力を込める。そして、巨大な光弾が彼の手から放たれる。
破壊の塊が、彼女と兵士たちを襲った。
大きな攻撃だ。確かに威力は高い。だが、遅い。
目の前の妖怪の力は膨大だ。だが、傲慢で感情的で、怒りやすい性格。ならば御しやすい相手だ。こんな者がリーダーか。大した物ではない。
何の問題も無く避けきり、光弾を打ち出したままの姿勢でいる奴に攻撃を仕掛ける。弓を構え、すぐさま放つ。
周りの兵士たちも分散し、問題なく光弾を避け、私と同じように奴へと銃撃を加え始めた。だが、ゾクリとするほどの笑みを向けられた。
……まずい、奴の狙いは、後ろかっ!
次の瞬間、轟音が聞こえてくる。建物が崩れる音。一瞬、都への被害の懸念により、意識がそちらに向いてしまった。
建物の破片が大量に飛び散る。爆風と破片により動きが止まる。仲間たちも怯んでいるようだ。
その隙を突かれ、私の背に強い衝撃が襲いかかった。何かにぶつかり、それが地面だと認識した頃には奴の姿は見えなくなっていた。
脳震盪を起こしている。思考がぼやけなかったのは奇跡的だが、体が動かない。頭を強く打ってしまった。
光弾によって壊された建物は見るも無残な姿になっている。それをいえば、妖怪達が通った場所もそうなのだが。
すぐさま駆けつけて来た仲間の手を借り立ちあがる。そのまま彼らに指示を出し、逃げた奴を捕捉する。
どうやら奴は戦況が思わしくない者の援護へと向かったようだ。部下たちには編成を組ませ、一人で妖怪達の相手をしないよう指示を出す。
奴ら一人一人の力は本物だ。素の能力が高い。だが、攻撃が効かないわけでもなく、今は結界の中だ。何も問題ない。
もうすぐ第三陣の援軍も来るらしい。数人に伝令を頼み、未だ実験段階の兵器、仮名『電撃波』の使用に許可を求める。
実験段階であるが、発射と威力には問題ない。チャージ時間を如何に短くするか、射程をどの程度伸ばせるかが問題であるため、今はあまり関係がない。
一発撃てさえすればそれで良い。射程もこの場ならば十分だ。それだけで、あの妖怪は無力化出来る。
電撃波は回避不能、絶対命中の攻撃。音速を遥かに凌ぐ、雷を撃ち出す兵器。
援軍の下へと遣いを出し、帽子をかぶり直し、体に着いた汚れを叩き落とす。
さて。被害は大きいが、元より負けるような戦いではない。現に此方の攻撃を、相手は防ぐすべは無いのだから。
だが、地上の者もなかなかに侮れないようだ。今度からは、ちゃんと観察をしてみよう。
しかし、妖怪達は月の科学に敗北する。それが、この戦いの結末だ。
待っていてください、姫様。このような戦いは直ぐに終わらせて差し上げましょう。
ですから、何のご心配も無く。
決意を新たに、私はそのままあのリーダー格の妖怪を追うことにする。奴さえ止めれば、他の妖怪など大した脅威にはならないだろう。
これ以上被害を出すわけにはいかない。これ以上、都の中心部へと進ませるわけにはいかない。
なぜなら、そこには『彼女』が居るのだから。彼女には、指一本触れさせはしない。
「皆の者!これ以上の妖怪の侵略を許すな!全力を持って排除なさい!」
『ハッ!!!』
声を張り上げる。
仲間たちの大きな返事を聞き、奴の下へ。彼は、私が相手をする。他の者には荷が重いだろう。
奴の後ろ姿が見えてきたので、矢に力を込め攻撃を加える。
矢は私の下を離れ奴の背中へ。当たる寸前で弾かれたが、奴は私の存在に気がついた。
苦々しい顔で舌うちをしながら、後ろに居た妖怪を下がらせる。どうやら、負傷した者たちを下がらせているようだ。妖怪の数が多少減っている。
このペースならば、終わりも近いだろう。
さあ、戦いを始めましょうか。これ以上好き勝手はさせない。
月のどこか。空間に亀裂が走り、『スキマ』ができた。
その『スキマ』はだんだんと開いていき、大人一人が通れるほどの大きさとなる。
『スキマ』の中は、黒く、それでいて紫のような色合いをしており、その中は何一つ見えなかった。
だが、中から何者かが現れる。その者の名を、紫。
彼女は出会う。傷ついた妖怪達と。
彼女は聞く。月の都で、ハジが残った妖怪達で戦っていると。
彼女は急ぐ。ハジの力となるために。
彼女は、胸騒ぎを感じつつも大急ぎで移動を開始した。
「ハジ……突然、なんだってのよ」
「急に月を手に入れるだなんて……相談くらいしてくれてもいいじゃない」
「私じゃ頼りないって言うのかしら? 一人前って認めたくせに」
「……嫌な感じね。早く、急がないと」
「無事……よね? ハジは、強いし。奥理さんたちも、ハジ達と一緒に居るみたいだし」
「見え……? アレって……結界……? うそ、なによ、アレ。いくらなんでも、強大すぎるわよ……」
「は、早くしないと……」
あとがき
最近自分で感想数増やすのもどうかと思ったので後書きにて感想返し。
いろいろ試してみる。それが処女作の醍醐味ってやつですね。わかりませんが。
いつかこの作品潰してリメイク出来たらいいなあ。伏線とか、華麗に張って華麗に回収してみたい。ま、夢ですね。
場面転換ってどうやるんだ。
[83]やま助さまへ
まだです。あと2,3話でこの話終わるので、その後閑話として書きます。
ほかの今まで出てきたキャラとも絡むのでゆうかりんだけではありませんが。
[84]青天さまへ
はっはーん。
分かりましたぞ。つまり、胸を張ってロリコンと宣言するんですね。わかります。
[85]Iesuさまへ
書いたキャラが可愛いと言われるのは感謝の極み。
Pixivの作品でしょうか。ググったらっぽいのがあったので。4コマ面白かったです。
しかし……ネタ被ってしまったのか。
[86],[88]マッカさまへ
許しが出た!これでかつる!
依姫さん全然知らないっす。すっごく強いとしか……。シューティング派なんで。
でもげっしょー読んでみたいです。
結局穢れってなんなんだ……。
[87]マイマイY@さまへ
月への行進ってなんか楽しそう。
月へ侵略します。ちゃんと話しが進みそうです。
というか無事終わりそうです。これで閑話書ける。
[89]kamoさまへ
どこらへんが変だったのか(もしかして全部?)とっても気になっています。よろしかったら教えてください。
作者的には一か所いつもと違うように、としたんですが。『自分と一緒に戦え』あたりの部分。
それ以外は、ハジはこんなもんだろって書いたんで。もし変だったら教えて欲しいです。
ブレない主人公って難しい。