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No.2605の一覧
[0] 運命の使い魔と大人達(「ゼロの使い魔」×「リリカルなのは」ほぼオリキャラ化) 完結[らっちぇぶむ](2008/12/21 12:58)
[1] 運命の使い魔と大人達 第一話[らっちぇぶむ](2008/02/08 00:32)
[2] 運命の使い魔と大人達 第二話前編[らっちぇぶむ](2008/02/08 00:27)
[3] 運命の使い魔と大人達 第二話後編[らっちぇぶむ](2008/02/10 00:31)
[4] 運命の使い魔と大人達 第三話前編[らっちぇぶむ](2008/02/13 23:07)
[5] 運命の使い魔と大人達 第三話後編[らっちぇぶむ](2008/02/17 17:14)
[6] 運命の使い魔と大人達 幕間その1[らっちぇぶむ](2008/02/20 02:31)
[7] 運命の使い魔と大人達 第四話前編[らっちぇぶむ](2008/02/24 14:21)
[8] 運命の使い魔と大人達 第四話後編[らっちぇぶむ](2008/02/27 22:29)
[9] 運命の使い魔と大人達 第五話[らっちぇぶむ](2008/03/02 20:58)
[10] 運命の使い魔と大人達 第六話[らっちぇぶむ](2008/03/05 20:10)
[11] 運命の使い魔と大人達 第七話前編[らっちぇぶむ](2008/03/12 23:57)
[12] 運命の使い魔と大人達 第七話中篇その一[らっちぇぶむ](2008/03/16 22:03)
[13] 運命の使い魔と大人達 第七話中篇その二[らっちぇぶむ](2008/03/19 23:20)
[14] 運命の使い魔と大人達 第七話中篇その三[らっちぇぶむ](2008/03/23 21:17)
[15] 運命の使い魔と大人達 第七話中篇その四[らっちぇぶむ](2008/03/27 19:28)
[16] 運命の使い魔と大人達 第七話後編[らっちぇぶむ](2008/03/30 20:14)
[17] 運命の使い魔と大人達 第八話[らっちぇぶむ](2008/04/02 23:24)
[18] 運命の使い魔と大人達 第九話前編[らっちぇぶむ](2008/04/05 22:29)
[19] 運命の使い魔と大人達 第九話中篇[らっちぇぶむ](2008/04/09 15:33)
[20] 運命の使い魔と大人達 第九話後編[らっちぇぶむ](2008/04/15 00:00)
[21] 運命の使い魔と大人達 最終話[らっちぇぶむ](2008/04/15 09:18)
[22] 運命の使い魔と大人達 後書き[らっちぇぶむ](2008/04/15 20:34)
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[2605] 運命の使い魔と大人達 第七話中篇その四
Name: らっちぇぶむ◆c857d2f4 ID:49f6089b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/03/27 19:28
 ダーダネルスは、王立空軍の二大軍港のうち北部を担当する本国艦隊の根拠地であると同時に、ゲルマニアからの商船が寄航する商業港でもある。飛行専門の船を係留する係留塔が何本も立ち並び、また広大な湖が空海両用の船舶を停泊させることもできた。各種船舶を建造可能な船台がいくつも並び、そこには何隻もの戦列艦やフリゲート艦が急ピッチで修理を受けている。
 サー・ホレイショ・ホーンブロワー提督は、そのまるまると太った身体を揺らして、愉快そうにエッジヒルの総司令部から送られてきた手紙を読んでいた。元は王党派空軍本国艦隊司令長官であるウェールズ皇太子の旗艦「インビンシンブル」号の艦長兼幕僚長であったのであるが、ウェールズの戦死とともに本国艦隊司令長官に昇進したのであった。
 元々が陽気な性格でユーモアのある提督であるだけに、勇将であったウェールズとの組み合わせは抜群であって、戦列艦の数と質で負けている現状であっても王立空軍の士気を維持し、積極的に出撃を繰り返しては、貴族派空軍の封鎖艦隊に度々痛打を与えてきたのである。

「ねえ、ミスター・ブッシュ。王立空軍の使命とは、元々アルビオン商船を空賊や海賊から守るのが仕事だったのにね」

 そのウェールズ王子から引き継いだ王立空軍本国艦隊と七十二門戦列艦「インビンシブル」号の上甲板で、ホーンブロワーは、後継の艦長のブッシュ艦長に向けた筒状に丸めた手紙を望遠鏡の様にのぞき込んでいる。

「そうですな。小官の初陣はゲルマニアの私略船との戦いでした。乗っていたのは二十四門搭載のフリゲート艦でしたが、艦長が雲を使って敵の艦首上方を取り、二斉射で決着をつけてしまいましたが」
「うん、それこそが王立空軍のあるべき姿だね! やはり僕達は牧羊犬であって、こうして犬小屋で寝そべっているのは似合わないことおびたただしい。たとえ護るべき相手がゲルマニアの商船であってもね!」

 楽しそうに腹をゆすると、ホーンブロワー提督は、手紙をブッシュ艦長に渡した。

「それじゃあ、ちょっと散歩に出かけようじゃないか」


 ゲルマニアの、萌黄色の地に黄色い鷲が描かれた盾が中央に染めてある商船旗を掲げた両用船が数隻、ダーダネルス港に接舷して多くの荷物を降ろしている。それは次々と馬車に乗せられ、南部へと街道を移動してゆく。上空を何騎もの龍騎士が警戒し、貴族派の龍騎士の襲撃に備えていた。
 キュルケは、先ほどの空戦でぼろぼろになった戦列艦が何隻も船台に着地するのを見て難しい顔をしていた。ホーンブロワー提督の艦隊は、数で勝る貴族派空軍の封鎖艦隊に積極的に同航戦を挑み、見事にキュルケの商船隊を護りきったのであった。双方とも二隻の戦列艦が失われ、その倍を超える艦艇が撃破されていた。

「やあやあ、君がミス・ツェルプトーだね! 僕はサー・ホレイショ・ホーンブロワー、この艦隊を国王陛下よろお預かりしているんだよ。ようこそアルビオンへ! ちょっとごたごたしていて大したおもてなしもできないが、少しでも楽しい滞在になると嬉しいかな」

 ゆっさゆっさと太鼓腹をゆすりながら、穴だらけの「インビンシンブル」号から降りてきたホーンブロワー提督が、にこにこと笑いながら近づいてきた。
 キュルケは、その人懐こい笑顔につられたように笑顔を浮かべ、軽くスカートを持ち上げる淑女の礼をした。

「アルビオン王立空軍の精強さを十分に拝見させていただけましたこと、心より御礼を申し上げます。ミスタ・ホーンブロワー」
「うん。君のような美少女を無事に迎え入れられて、どうやら僕らの名誉も護られたようだよ」
「名誉の戦死を遂げられた将兵の皆様に、心からの感謝と、ご冥福を申し上げます」
「あっはっは。それは嬉しいねえ」

 それからホーンブロワーは、続々と荷揚げされいく荷物を眺めてもう一度嬉しそうに笑った。

「これだけの武器弾薬があれば、もしかしたら僕らは、もう一度ロンディニウムに戻れるかもしれないね。そうなったら、観閲式には是非ともご招待申し上げさせてもらおうかな」


「確かにゲベール銃五千丁、ゲベール砲三十門、そしてその弾薬、受領した」

 アドウォルンの街の市庁舎の一室で、王党派政府の財務卿が書類にサインをし、そしてロマリアの金融商会名義の一千万エキューの手形にサインをした。

「確かに代金のほう受領いたしました」
「それで、早速お願いなのだが、前金で三百万エキュー用意する。これで火薬を購入してきてはもらえないだろうか? 可能な限り火急速やかに、だ」
「はい?」

 さすがにキュルケも唖然とした。いくら即金前払いとはいえ、三百万エキュー分の火薬なんてそう簡単に集められるものではない。

「実は、前線から弾薬の補給の要請がとてつもない量でね。今回運んでもらった弾薬も、多分三日で使い切ってしまうと思う」
「はあ?」

 小銃一丁あたり二百発、大砲一門あたり百発の弾薬である。通常ならば戦役一杯もたせられるはずの量だ。一回の会戦で小銃が五十発も百発も撃つことは稀であるし、大砲だって五十発も撃つなんてそうそうあることではない。
 そんなキュルケの疑問を受けて、財務卿は大きく溜め息をついた。

「先日、エル・ドラドの峡谷で会戦があった。小銃一丁あたり百四十発、大砲一門あたり八十発を使ったそうだ」
「……双方の死傷者は?」
「反乱軍は約六千人、我が軍は約七百人らしい」

 桁一個違っていない? 本気でキュルケはそう思った。いくら万単位の兵士が激突する会戦だからって、千人単位で死傷者が出るというのは、想像の埒外である。しかも味方の損害は桁一個少ないという。
 もっともキュルケが知っているのは、貴族同士の領地の境界線をめぐっての小競り合いとか、ちょっとした反乱の討伐とか、その程度の戦闘でしかなかったし、実際に戦場に参陣したことがあったわけではなかったのだが。

「今我が軍はアーサー・ヒルで陣地を構築中だ。行ってみれば判ってもらえると思う」


 アーサー・ヒルは、エッジヒルからアドウォルンの街へと伸びる街道の途中、アドウォルンの南十五リーグほどにある東西に伸びる丘陵地帯であり、広大な森が丘陵の上から東西へと伸びている地域であった。
 普段はもっぱら羊飼いが羊の群れを追っている田舎であり、これだけの数の人間が集まるなんてまずあったことがない場所である。
 そのアーサー・ヒルの丘陵に約四千の兵士と、周辺の街や村からかき集められてきた平民達が、ひたすら陣地構築の土木工事を行っていた。

「ミス・ツェルプトー、無事武器弾薬を届けてくれて、心から感謝している」

 先日、エッジヒルの街で会ったときは、アルビオン軍の白い軍服に身を包んでいたはずのアストレイ将軍は、何故かフェイトが着ていたのとそっくりの、腹の辺りまでしかない厚手の木綿のジャケットとゆったりしたパンツを身につけ、そして、革底で革のつま先とかかとにキャンパス地の足首の上までしかない靴にさらに藁製のサンダルを固定した代物を履いていた。全体の色は土茶色の地にあちこちに黒や緑の染料で染みがつけてあり、ジャケットとパンツの境に土茶色のキャンバス地のベルトをしめていた。帽子は濃い緑色のベレー帽であり、とてもではないがこの壮年の白髪の男が、王党派陸軍の総司令官には見えない。
 よく見れば、兵士の大半が似たような格好をしており、帽子もつば広のキャンバス帽やらベレー帽やら鉄兜に布をかぶせたものと、とにかくみすぼらしいことおびただしい。

「おや、この格好に驚いている様だね?」
「……え、ええ。非常に前衛的なお召し物で、いささか驚いております」

 アストレイ将軍は、にやりと口ひげをひねると、楽しげに説明した。

「なに、ミス・フェイトと同じ格好をしているのだよ。なにしろこの格好で塹壕にこもっていると、敵も中々に見分けがつかないようでね。先日のエル・ドラド峡谷の戦闘では、随分と重宝したものだ」

 なんでも、長さ四リーグにも及ぶ峡谷の底を通る街道の曲がり角ごとに障害物付の陣地を構築し、さらに峡谷の上にも複層の陣地を構築したのだとか。そして、一度に一個連隊千数百から二千人しか投入できないのを、ひたすら街道沿いの陣地と峡谷の上の陣地から撃ちまくり、文字通り峡谷を貴族派軍の兵士の死体で埋め尽くしたのだという。
 貴族派軍は、虎の子の龍騎士まで峡谷内の陣地攻撃に投入するほどに追い詰められたのであるが、峡谷上部の隠蔽された陣地から不意急射を何度も受け、すでに三十数騎もの龍騎士を失ったという。しかもそのうち十一騎の龍騎士を撃墜したのは、フェイトの「バルディッシュ」だとか。彼女の狙撃銃は、いとも簡単に魔法防御のかかった甲冑を、龍の鱗を貫通し、敵に甚大な被害を与えたという。ちなみに敵の旅団長二人と三人の連隊長を含めた、十数人の貴族士官の狙撃にも成功したのだとか。

「時間があれば、ミス・フェイトが使っているのと同じ銃を使いこなせる部隊を編成したいのだがね。さすがにそれだけの余裕は今の我々にはないのだよ。それでも、これで我が軍は全兵士にゲベール銃を持たせることができる。このアーサー・ヒルの戦いで、敵がどれだけの死者を出すか、非常に興味深い」
「はあ」

 なんというか、キュルケの知っている戦争とは全く異次元の戦いが繰り広げられている様で、はっきりいってドン引きに引きまくってしまっていた。そんな彼女の表情を無視して、アストレイ将軍は真面目な顔で依頼する。

「とにかく弾薬が足りない。今、兵士一人あたり小銃弾二百四十発、砲一門あたり百七発しか確保できていない。できれば小銃弾を一人当たり二千発、砲弾を五百発用意したいのだ。お願いできないだろうか?」
「努力はいたします。けれども、なにしろ硫黄と硝石の値段が高騰していまして、お預かりした三百万エキューでどれだけ用意できますか」
「出来ないのであれば、せめて火薬だけでもなんとかならないだろうか? 銃弾と砲弾そのものは、こちらで自製できないものでもないし」
「とにかく努力はいたします」


 さて、場所は変わってギーシュは、一度トリステインに戻った時に、アンリエッタ王女やラグドリアン商会に出して貰った支度金で、約三百の傭兵を率いて戦場に参陣していた。他にも、王政打倒を唱える貴族派軍と戦おう、という義勇兵の貴族軍人が、自弁で多数参加してもいた。その数は兵士も含めて約千名。

「てゆーか、なんであんたわざわざ戻ってきたわけよ?」

 心底あきれ返った表情で、ルイズがギーシュの事を上から下まで眺める。

「姫殿下にお願いされたんだよ。ルイズを無事連れ帰ってきてください、って。僕の名前を呼んで手を取ってくださってまで。しかも涙ながらにだぜ? これで参陣しなかったら、それこそグラモン家から勘当されてしまうじゃないか」

 喜んでもらえるどころか、いかにも邪魔扱いされて、ギーシュはかなり不機嫌になっていた。
 そんな彼の格好を見ていたフェイトが、きっぱりと言い切った。

「とにかく、その格好では半日と生きてはいられません。兵站担当士官のところにいって、私の名前で部隊全員に新しい被服を貰ってきてください」

 相変わらず胸元の開いたレース付のシャツに、羅紗地のマントという姿のギーシュである。それに対してフェイトもルイズも、土茶色の上下にぼろ布が無数にぶら下がった迷彩スーツを身に着けていて、上半身部を腰の辺りで結んでいた。靴も土茶色の麻の靴袋で隠れている。

「それじゃあ、僕の活躍が目立たないじゃないか!」
「目立ったら死ぬわよ。多分ゲベール銃か大砲で狙われて。人の忠告を聞かないあんたが死ぬのは、あんたの勝手だけれど、それで陣地の位置がばれたら、ただでさえ数の少ない味方が死ぬわ」

 殺気さえこもった視線でルイズににらみつけられて、ギーシュはしゅんとしてしまった。

「安心なさい。活躍する機会なんて、便壷に溢れるくらいやってくるから」


 ギーシュは、ルイズとフェイトの忠告に従い、その足で兵站担当士官の元に向かった。

「なるほど! 「告死天使」殿と「猟犬」殿のお知り合いですか! 判りました。三百着ですな。サイズが合うかどうかは判りませんが、すぐに用意いたしましょう」

 ルイズとフェイトの名前は、なんというかまるで魔法の言葉のようであった。とにかく二人の名前さえ出せば、なんでもかんでもあっという間に揃うのだ。

「いやあ、隊長殿。大したお知り合いをお持ちでいらっしゃいますなあ」

 感心したように、部隊の先任下士官のニコラがなんども繰り返しうなずいた。

「兵站士官に被服をすぱっと出させるなんて、こりゃとんでもない魔法ですぜ」
「そういうものなのかい?」
「あいつらは、そりゃあケチでしてね。どんなに必要だって口すっぱくしても、絶対に出しやしませんし、出してもほんのちょびっとを渋々と、でさ」

 額の傷に日焼けした顔のはしっこそうな中年男である。とにかく傭兵という傭兵が、貴族派軍の高給を提示した募兵に応じてしまっているため、なんとかかき集められたのが、このニコラという火縄銃の扱いに慣れた傭兵下士官と、その仲間達であった。
 ギーシュが「なんで負けている王党派軍に参加する僕の募兵に応じたんだい?」と聞けば、「貴族派軍の募兵の条件がよすぎるんでさ。相場の五割り増しの給与っていうのは、ちと嫌な予感がしましてね」と答えたものである。ちなみに、ギーシュの提示した給与は、相場としては妥当な日当で四エキューである。一応一月分という事で、前払いで百二十エキューづつ支払ったわけであるが、これがまた非常に珍しく、事前の脱走者が一人も出なかったのであった。ここらへん、この歴戦の傭兵下士官のニコラの統率力が生半可なものではない事がギーシュにも判った。

「しかし、あのお嬢さん方をはじめとして、この軍の着ている服装は大したものですなあ。なるほど、どういう戦い方をさせるつもりなのか、よく判りまさあ」
「そうなんだ。どういう戦い方なんだい?」

 着ている服だけで判るものなのか、と、ギーシュは驚いていた。そんな彼にニコラは、にかっと笑って説明した。とにかくギーシュはニコラに気に入られていて、何かと兵士としての心得を教えてもらっている。

「そりゃあ、ひたすら穴を掘ってそこにもぐって銃を撃たせまくるつもりでしょう。だから、土と同じ色の服を着せて、草木と似た染みをそこらじゅうに付けさせているんでさ」
「なるほどね。確かにあの服の色なら、地面に穴を掘って入ってしまえば、そうそう見つけられないね」

 ギーシュは、自分は多分大した戦功を挙げられはしないだろうな、と、覚悟した。地面にこもっての射撃戦では、自分の得意とする青銅のゴーレムを使った戦い方は必要ないだろうからだ。多分、一番活躍するのは、使い魔であるジャイアント・モールであるヴェルダンデであろう。何しろ穴掘りにはこれ以上はない使い魔であるし。そう思うと、少しは気が楽になった。それに、陣地の中にこもっていられるならば、そう簡単には死なずに済むであろうし。
 それが完全に間違っている事を知るのは、さほど時間はかからなかったが。


 フェアファックス将軍率いる三万の軍勢が、アーサー・ヒルの手前三リーグの地点に展開したのは、ギーシュらが陣地に到着してから三日後であった。
 まずはマスケット銃や長槍を持った軽歩兵が、草地の中を出来る限り目立たないように前進し、各種の罠をはじめとする障害物の発見に努める。それを、東西にじぐざぐに掘られた隠蔽された塹壕や銃座の中から、王党派軍のゲベール銃を装備した兵士がひたすら狙い撃ち、斥候活動を妨害する。
 基本的に撃たれて損害を出すことで、王党派軍の陣地の位置を探るために送り出された斥候達は、到着したばかりの傭兵らであった。戦場の詳細を知らされないまま、斥候任務に送り出され、瞬く間に数十人単位で倒れていく。
 フェアファックス将軍は、王党派軍の東西五リーグに伸びる前方陣地の位置を大体把握すると、続いて「火」や「土」の魔法を使う傭兵メイジを、同様に傭兵のマスケット銃兵を護衛につけて送り出す。とにかくこの草地を焼き払い、主力となる歩兵を前進させられる様にしなくてはならない。
 当然王党派軍もわきまえたもので、不注意な傭兵メイジが杖を振ったところに射撃を集中させ、これを制圧していく。だが、すでにエッジヒルやエル・ドラド峡谷での戦闘を生き延びてきた「火」の傭兵メイジが、銃兵と協力してまずは自分達が隠れる穴を掘り、そこに隠れつつ呪文を唱えて前方の草むらを焼き払っていく。
 予想通り、地面深くに打ち込まれた杭とその間に張り渡してある針金で構成された障害物が見つかり、「土」の傭兵メイジがこれを「錬金」で排除していく。当然のごとく王党派軍の射撃が集中してくるが、応射する銃兵の発砲煙が絶好の煙幕となって、メイジらの作業を援護する。
 こうして障害物を排除して突撃路を何本も開くと、第二派の傭兵銃兵と長槍兵がその穴から王党派軍の陣地へと向けて突撃を始める。それに突撃路を開いている最中に布陣した砲兵隊も、支援のための射撃を開始する。繰り返し射撃をしたことで暴露してしまった王党派軍の陣地が、砲兵隊によって制圧され、ところどころに射撃の穴が出来始める。
 そして、損害を無視した突撃によって王党派軍の陣地内になだれ込んだ貴族派軍の歩兵が、塹壕内で王党派軍の歩兵と接近戦に入る。王党派軍の歩兵は、ゲベール銃に銃剣をつけ、腰に斧や鉈を差しており、狭い陣地内では多数の傭兵達が倒されていく。
 だが、一度開いてしまい、そこから次々と流し込まれる貴族派軍の歩兵の数によって、陣地内は少しづつ貴族派軍によって制圧されてゆき、とうとう王党派軍の銃兵達は陣地を放棄して丘陵に向けて後退を始めた。同時に、後退を支援するためか、いくつもの丘の上からゲベール砲の発砲煙が立ち上り、多数の石弾や鉄弾が、塹壕いっぱいに詰め込まれている貴族派軍傭兵らの上に降り注ぐ。瞬く間に塹壕の中はひしゃげた肉塊と血溜りで埋め尽くされてゆくが、それでも塹壕内に突入し、陣地を占領していく傭兵らの数が減ることはない。

 そして、王党派軍の銃兵が完全に撤退し、貴族派軍が陣地を完全に占領したときであった。
 前方陣地後方に隠蔽されていた陣地から、王党派貴族士官らによって「火」の魔法が塹壕内に向かって飛び、次々と貴族派軍の傭兵達を焼き殺してゆく。少なくない数の傭兵が、手に手に武器をもって塹壕から飛び出し、次の陣地へと向けて突撃しようとするが、後退したゲベール銃兵らの斉射を受けて次々と倒れていく。運良く少数の傭兵が次の陣地に接触するが、そこは「錬金」の魔法で作られた石壁の上から土をかぶせて覆った、重防御の特火点であった。瞬く間に銃弾の雨が降り注ぎ、ろくに射撃横隊を作ることも出来ない傭兵たちは、そのまま次々と屍をさらしてゆく。
 だが、次々と占領された陣地に流し込まれる傭兵達によって、徐々にマスケット銃兵の横隊も密度を増し、ついで戦列に参加する傭兵メイジらによって、いくつもの特火点が制圧されてゆく。特火点の周囲には多数の貴族派傭兵の死体の山が積み上げられてゆくが、数で圧倒する貴族派軍は、次々と占領した塹壕から飛び出し、横隊を作って射撃を繰り返しつつ少しづつ前進してゆく。
 午後遅くには、幅五リーグにも及んだ王党派軍の前方陣地は、貴族派軍によって占領され、王党派軍は約四百人の損害を出して丘陵の主陣地内に撤収していた。
 貴族派軍の損害は約三千にも及んだが、あくまで許容範囲内とフェアファックス将軍は判断していた。なにしろ傭兵らは、次々と高給につられてやってくるのである。ダーダネルスを封鎖され、補給もままならない王党派軍と消耗戦になれば、勝つのはあきらかであるという自信があった。


 翌日貴族派軍は、王党派軍の砲兵隊から夜通し砲撃を受けつつも、死傷者を占領した陣地から後送し、陣地を修理し、そして丘陵に接敵するための接近路の掘削を始めた。前方陣地から丘陵まで、それこそ無数の障害物が埋設されており、それを排除しようとするとたちどころに銃撃や砲撃が行われて、また少なくない数の兵士らが死傷する羽目となったが、なんとか占領陣地から丘陵の下まで接近路の掘削に成功したのであった。
 この間、何度も風龍に搭乗した龍騎士が飛来して、王党派軍の陣地構成を偵察していったが、フェアファックス将軍の元には、この丘陵地帯そのものが事実上の要塞化されていることしか判らない、という報告しか入ってこなかったのであった。
 将軍は、結局は丘陵地帯とその左右に広がる森林地帯を踏破できる歩兵を有してはいなかったため、さらに遠方から遠回りさせるために、手元の三万人の軍団に後方に拘置しておいた一万人のヴェテラン部隊を五千づつの旅団に分割させ、王党派軍の要塞地帯の後方に回り込ませようと出撃させた。


「ここまでは予定通りですな」

 この丘陵地帯で最も高い丘に掘られた坑道陣地の銃眼から、望遠鏡で貴族派軍が王党派軍の前方陣地を占領するのを見ていたアストレイ将軍が、幕僚や、各丘に掘られた堡塁の防御指揮官達、そしてルイズとフェイトに向けて淡々と口にした。

「各陣地は、それぞれの堡塁の野砲の射程内です。丘を占領するために接近する敵を斜め方向から集中射撃すれば、各堡塁からもの小銃による斜め射撃とともに、絶大な威力を発揮できるでしょう」

 そしてフェイトは続けた。

「あとは、敵のそれぞれの堡塁への接敵の時間をいかにずらすか、ですね。それは各堡塁指揮官の皆様にお任せするべきでしょう」

 各堡塁指揮官が一斉に全員うなずいた。


 丘陵の頂上へ向かう草地よりも、丘陵間の踏み固められた路面の方が歩きやすい。だが、そこを行けばそれぞれの丘に作られているであろう陣地から猛射を受け、左右逃げ場もなくやすやすと壊滅させられることを、先日のエル・ドラドでの戦闘でいやというほど思い知らされたフェアファックス将軍は、「土」のメイジに錬金させた多数の鋼鉄製の盾を槍の代わりに長槍兵に持たせ、丘の頂上へ向けた接近路を掘削し始めさせた。ここしばらくで、長槍兵はそれこそ穴掘りから障害物排除、装甲鈑の運び屋と、戦闘以外のあらゆる仕事に借り出されることになっていた。そして、死傷率も銃兵の二倍にも上っている。
 今も一つの丘あたり二千人からの兵士がとりつき、うち七百人以上の長槍兵がひたすら敵の射撃を受けつつ接近路を掘削している。前進させた野砲でひたすら支援射撃を行い、それぞれの連隊の貴族士官が煙幕を張って視界をさえぎろうとするが、兵士達は次々と砲弾に五体を四散させられ、銃弾に打ち抜かれて掘削した壕の中で息絶える。
 ただし貴族派軍も、ただ射撃を受け続けるだけではなく、丘のふもとに隠蔽壕を掘り、王党派軍の野砲弾の直撃にも耐えられる屋根をつけた防御陣地を構築しつつあった。銃兵らもマスケット銃を置いて、自分たちを守ってくれる安全な陣地の構築に一生懸命であったのだ。
 丘のふもとからジグザグに延びる接近壕が、各堡塁の手前百メートまでたどり着いたのは、その日の夕暮れ時であった。夕闇が忍び寄る中、長槍兵らは、野砲やマスケット銃兵の支援を受けつつ、今度は接近壕の前に横方向に突撃待機壕を掘り始める。丘の下から次々と盾が持ち込まれ、掘られた突撃待機壕に並べられていく。
 これらの作業が終了したのは、もう月が天頂に達してからであった。兵士達は、明日の突撃に備えて、突撃待機壕に並べられた装甲鈑の陰や、丘のふもとの防御陣地の中で仮眠をとっていた。
 その日の貴族派軍の死傷者は、約三千人にも上った。

 ギーシュは、率いてきた三百人の傭兵らを指揮して、ある丘の中腹から頂上にかけて中を掘りぬいて作られた堡塁の防御指揮を任されていた。
 なにしろ王党派軍も連日の戦闘で貴族士官の数が絶望的に不足しており、せめて中隊長だけでも、と、士官候補生が指揮をとっている中隊も少なくは無かったのである。ギーシュが防御を任された堡塁のある丘は、他の丘に比較して少し下がった位置にあり、しかも標高も一番高く二百三メートはあった。つまり総司令部は、到着したばかりの義勇兵大隊、それもアンリエッタ王女の命令で派遣された部隊に、簡単には全滅してもらいたくは無かったのであった。

「しかし、すごい光景じゃないか!」

 この二日間の、貴族派軍の無茶を通り越して無謀としか言いようのない強襲を見て、ギーシュはニコラにそう嘆息してみせた。それこそ銃眼越しに見ても地面が死体で埋め尽くされているようにしか見えない。時間は黎明であり、あと一時間もすれば敵の攻撃が開始される。

「つまるところは城攻めですからなあ。戦列艦から三十二ポンド砲でも下ろしてこないことには、とてもこの堡塁は撃ちぬけませんわ」
「そうだね。で、ニコラ、あと補修が必要そうな箇所は見つかったかい?」
「それは大丈夫でさ。隊長どのは上で敵がどう攻めてくるか見張っておって下さい。それにどう合わせるかは、自分の仲間達がこなしますんで」
「わかった。それじゃあ皆のところを一回りしようじゃないか」

 この歴戦の古参下士官に絶大な信頼を抱いているギーシュは、かつてニコラに教えられた通り「何をやるか」だけに考えを集中させることにした。この中年男が言うには、士官の仕事は「何をやるか」を命じることであって、「いかにやるか」は下士官が決める事なのだそうだ。軍隊の事をろくに知らないギーシュが、「いかにやるか」なんてこれっぽっちも判っているわけがない。
 それぞれ七十人からなる中隊が堡塁の射撃陣地の三方に陣取っており、予備として百人からなる中隊がギーシュの手元にいる。さらに丘の頂上には六門もの野砲が配置されており、左右の丘々の頂上を完全にその射程内におさめていた。
 何気に素直に部下のいう事を聞き、お調子もののギーシュは大隊の皆から好かれていた。というか、がんばって支えてやらにゃあ、と、思われていた。ちなみにギーシュといえば、士官と下士官なんてそんなものなんだろう、と、思っている。そもそも自分はまだ一介の書生で、部下は皆古参の傭兵達なのだ。素直に話を聞くのが当然とも思っていた。

「やあ、どうだい、ジョルジュ? 中隊の様子は?」
「これは隊長どの! 中隊集合!」
「いやいいよ、全員配置に戻ってくれ。敬礼もなしでいいから。いつ敵が攻めてくるか判らないし」
「はい! それではお言葉に甘えまして。全員配置に戻れ!」

 一旦は集合しかけた兵達が、また元の配置に戻っていく。

「では、皆その場で聞いて欲しい。敵は、あの百メート先の塹壕から飛び出してくる。知っての通り、この陣地の直前五十メートには、山ほど足止めの罠をしかけてある。落ち着いて射撃すれば命中するから。運悪く銃眼から飛び込んできた弾に当たったら、先にあの世で待っていてくれ。僕がいく頃には将軍くらいにはなっているから、あの世で周りの連中に自慢していいぞ。このお偉い将軍閣下は、まだまだハナタレ小僧だった頃に一緒に戦った戦友だって」

 それを聞いていた全員が一斉に腹を抱えて笑いだした。こういうところがギーシュの憎めないところというか、愛嬌である。何しろ本人が、自分が戦死するなんてこれっぽっちも思っていないのだ。
 こんな感じで薄暗い壕の中をぐるっと周り、丘の反斜面の壕内に待機している予備中隊にも挨拶すると、今度は丘の一番上にある砲兵隊のところへと行く。そこにはこの戦役のごく初期から戦い続けてきたベテランの将兵達が、思い思いの格好でだべっていた。
 ギーシュが現れても、その場で適当な敬礼を返すばかりで、むしろギーシュの方がかちんこちんに固まって敬礼を返しているくらいである。何しろギーシュはこれが初陣であって、そういう意味でもなかなか上官らしく振舞うのがやりづらいのである。

「そのままで聞いてくれ。この野砲隊の任務は、この堡塁へ向けて上ってくる敵の歩兵を、あの接近路の中にいる間にやっつけること。他の丘の頂上に登った敵兵が現れたら、それを吹き飛ばすこと。この二つだ。丘のふもとの屋根付陣地は別命ない限り撃たなくていい。いいね?」

 散発的に返事が戻ってくる。今ギーシュが言ったようなことは、すでに彼らは百も承知であったのだ。

「隊長どの、そろそろ朝であります」

 ニコラの報告にギーシュはうなずくと、本人としては精一杯の威厳を込めた声で命令を下した。

「全員、配置につけ!」


 フェアファックス将軍は、夜の間に前進陣地のあたりまで前進させた野砲で、丘の中に掘られた王党派軍の陣地に向けて射撃を命令した。六ポンドや十二ポンド、十七ポンドといった各種の口径の砲が、いっせいに射撃を開始し、その発砲煙であたりは真っ白になる。
 各砲あたり二十発も射撃したあたりで、一旦砲撃を中止させると、フェアファックス将軍は歩兵の前進を命令した。それぞれの堡塁のふもとに集結していた各連隊が一斉に接近路の中を、腰をかがめて突撃壕に向けて駆け上る。そこに堡塁から一斉に砲撃が開始され、土嚢や装甲鈑を打ち抜いて、中の歩兵をひき肉へと変えていく。
 だが、命令を受けた銃兵達は、肉塊と化した兵士のことを無視してひたすら突撃壕へと前進した。ここで足を止めては、逆に敵の砲の餌食になるだけなのだ。
 なんとか三々五々突撃壕にたどりつき、その装甲鈑の陰に隠れた銃兵らが一息つく。そして次の瞬間には、生き残った将校の命令で装甲鈑の隙間から敵の堡塁の銃眼にむけて射撃を開始した。互いの間の距離はせいぜい百メートでしかないが、上から撃ち下ろすゲベール銃と、下から撃ち上げるマスケット銃では、どうしても後者の方が分が悪い。盾の隙間から次々と銃弾が飛び込み、射撃をしている銃兵が死傷し壕内に転がってゆく。
 だが、敵の砲撃でその数を減らしながらも、次々と到着する銃兵らが死体を壕から放り出し、配置について戦列を作ってゆく。そして、中隊横列を十分構成できる数が揃ったと判断した将校が、盾の隙間から杖を突き出して魔法を放ち、霧の魔法で敵の視界をさえぎった。

「目標、敵堡塁、躍進距離百メート、後方中隊の射撃と同時に躍進開始。先鋒中隊は別命あるまで射撃禁止。射撃後銃剣を装着し、接近戦に備えること。後方中隊は、先鋒中隊の射撃後、躍進開始。以後の判断は各中隊長に任せるものとする。盾下ろせ、後方中隊撃ち方始め! 先鋒中隊、突撃、始め!」
 
 将校の命令が突撃壕の中に響き、第一列目の中隊が盾を下ろすと同時に、第二列目の中隊が横隊斉射を行う。それと同時に第一列目の中隊が一斉に突撃壕から飛び出し、敵の堡塁へと向けて走り始める。
 だが、二十メートも進まないうちに、堡塁上部の野砲が六門揃って散弾射撃を行う。無数の鉄球が先鋒中隊に浴びせかけられ、中隊の兵士達は文字通りひき肉となってその過半数が消え去った。それに続いて銃眼から一斉射撃が中隊の生き残りに浴びせかけられる。
 突撃壕内でそれを見ていた将校が、即座に命令を下した。

「後方中隊、撃ち方始め! 突撃、始め!」

 一撃で士気崩壊し、その場に伏せた先鋒中隊に代わって、第二陣の中隊が堡塁へ向けて突撃する。いかなゲベール野砲といえど、一分間に二発も三発も射撃を行いえるものではないのだ。わずか百メートを駆け抜ける間に二回ゲベール銃からの射撃を受けるが、生き残った銃兵らはマスケット銃の銃口に槍の穂先を差し込んで即席の銃剣とすると、そのまま壕内に突入しようとした。
 ところが、敵の陣地の手前、わずか三十メートから五十メートの間に、足の片方が納まる程度の穴が無数に開けられており、そこに足をとられて中隊の前進が止まる。慌てて足を引き抜くが、その間に装填を終わらせた敵の銃兵が三度目の一斉射撃を行ってきた。なにしろ射撃距離は五十メートを切っている。一斉射で文字通り中隊は全滅し、死体が折り重なるように山積みとなった。
 続いて貴族派軍の攻撃隊は、突撃壕から死体の山のあたりまで装甲盾をかかげて前進し、そこを突撃発起線としようとしたが、文字通りゲベール野砲の散弾射撃を繰り返し受けることで盾も死体も吹き飛ばされ、突撃壕にまで押し戻されることとなった。

 ギーシュは、次々を発射される野砲の発砲音に半分耳がバカになりつつも、それでも自分の担当している陣地の三方に目をくばり、敵の密集地点を見つけては、野砲隊の指揮官に砲撃を命じていた。下の射撃陣地で銃兵の指揮をとっているニコラから、頻繁に伝令が駆けつけ、各銃兵中隊の状況を報告しくる。
 と、ギーシュは突撃壕の中で杖を振って指揮をとっている敵の貴族士官の姿を見つけた。盾の後ろに隠れるようにして指揮をとってはいるが、時々頭を出しては接近路から進入してくる歩兵らに的確に指示を出しては、この堡塁を攻撃している。ギーシュは、彼の姿を確認しようとして腰を伸ばし、つい立ち上がってしまった。
 と、ひゅんひゅん、ぴしっぴしっと多数の銃弾がギーシュの周りをかすめ、恐怖で全身が硬直する。恐怖のあまり小便を洩らしそうになるが、背後に砲兵隊の兵士全員の視線が集まっているのを背中で感じ、下半身に必死に力を込めてズボンを濡らすのだけは我慢する。
 本当はすぐにでもうずくまって泣き出したいところだが、足がこわばってそれすらできない。ギーシュは何度か深呼吸をすると、ゆっくりと三歩後ずさり、それから回れ右をした。そして、自分の事を見つめている兵士達に向かって、なんとか笑みらしいものを浮かべようとしてできず、結局唇をめくって歯をむき出しにしてみせた。

「やあ、死ぬかと思ったよ」

 その言い草があまりに飄げていて、兵士達は一斉に爆笑した。そのまま緊張の糸が切れたのか、大きく溜め息をつく。あまりのことに、腰を抜かす兵まで出る有様であった。
 ギーシュは、震える膝をなんとか押さえ込むと、腹に精一杯の力をこめて叫んだ。

「敵突撃壕、右十メートに敵指揮官を確認! 全砲門一斉射撃!」

 ギーシュの声にあわせてぱっと動き始めた砲兵達が、砲口をギーシュの指示通りに向ける。敵の貴族士官は、まだそこで指揮をとっていた。丁度、下から上ってきた銃兵中隊が、突撃発起しようとしているところである。
 ギーシュは、視線のあった砲兵隊指揮官にむかって、うなずいて許可を出した。

「撃ち方始め!」

 轟音とともに、半数の三門が丸弾を、半数の三門が散弾を発射する。
 目標となった敵の貴族士官は、文字通り五体をばらばらに引きちぎられて戦死した。
 そして、その士官が実質一人で攻撃隊を支えていたのであろう、敵の歩兵は指揮官の戦死にとうとう士気を失い、一斉に突撃壕を放棄し、丘のふもとへと逃げ始めた。そのタイミングにあわせて、ニコラが銃兵達に連続斉射を行わせ、さらにニコラ自身が指揮をとって予備中隊を率いて敵の突撃壕を占領する。
 後方からのゲベール砲とゲベール銃の猛射を受け、丘を駆け下りてゆく貴族派軍兵士のうち、半数が生きて戻ってはこれなかった。

 その日の貴族派軍の攻撃による死傷者は、王党派軍が約四百人、貴族派軍が四千二百人にも及んだ。


 夜、月が雲に隠れている中、アーサー・ヒル後方を、敵に見えないように風龍が二人を乗せて飛んでいる。王党派軍の龍騎士であった。乗っているのはルイズ。
 ルイズは、ある堡塁の後ろで降りると、その場に龍騎士を待たせて、陣地内に、腰をかがめ背を低くして駆け込んだ。

「お待ちしておりました、ミス・ラ・ヴァリエール」
「で、敵がいるのはどこ?」

 待ち構えていた堡塁の防御指揮官が、満面の笑みを浮かべてルイズを迎え入れた。それにルイズは目礼だけして答えると、愛用の杖を抜いた。

「あの横に伸びている塹壕の中に、敵の一個中隊百四、五十名ががんばっております」
「了解、幅は精々百メート弱ね」

 そしてルイズは、銃眼から杖を突き出し、小声で呪文を唱え始める。四小節ほどの「土」系統の呪文ではあるが、その呪文が完成した瞬間、塹壕の中心で白熱する光が膨らんだ。そして、轟音とともに塹壕は爆発し、多数の兵士が肉塊となって空中高く放り上げられる。塹壕内は爆風が吹き荒れ、土嚢も盾も関係なくそこら中に巻き散らかされる。
 突撃壕のあったあたりには、直径十五メートほどのクレーターと、幅百メートほどのくぼみが出来ているだけであった。そして、あたりにまき散らかされた土砂から多数の肉塊が生えている。

「お見事です! ミス・ラ・ヴァリエール!」

 それこそ全員が万歳を唱えようとするのを、ルイズは片手を振って抑えると、堡塁指揮官に「ではまた明日の夜」とだけ挨拶して、控えている龍騎士の元へと走っていった。

 その日の夜の間に、各堡塁に接近して構築されていた貴族派軍の突撃壕は、すべてルイズによって爆破され単なる穴と化してしまっていた。


 結局、この三日間で約一万二千人の損害を出した貴族派軍は、死体処理のための休戦を王党派軍に申し出ることとなった。何しろ丘陵の傾斜部一面は魔法と砲撃によって地肌が露出し、そこここに死体が山積みとなっているのである。このまま死体が腐敗し疫病が発生したら、それこそ貴族派軍は目も当てられないことになる。
 三日後にはさらに五千の傭兵が補充として到着する旨、エッジヒルの総司令部から連絡があったフェアファックス将軍は、それまでの時間を休戦に当てるため、三日間の休戦を申し込んだのである。そして、アストレイ将軍も、各堡塁の修理や、敵の掘った塹壕の埋め戻しなどに時間が欲しかったこともあって、その休戦を受け入れたのであった。


 ところ変わってトリステイン王国。その王宮内でアンリエッタ王女は、宰相であるマザリーニ枢機卿に詰め寄っていた。

「義勇兵の参加すら禁止するとは、どういうことです!?」

 アンリエッタの怒り狂いようは、王宮に詰めている衛士や宮廷貴族らも初めて見るほどに激しいものであった。しかしマザリーニ枢機卿は、その怒りを正面から受け止めて、相変わらずの冷たい色の瞳でアンリエッタを見つめ返すだけである。

「確かに王軍を動かすのは、アルビオンの貴族派との全面戦争になり、戦争準備が全く整っていない今の我が国では不可である。これは判ります。ですが、チューダー王家の危機に馳せ参じようという貴族の参加まで禁止するとは、わたくしには全く理解できません!!」
「王軍であろうと、義勇兵であろうと、トリステインの貴族が戦争に参加すること、それ自体が問題なのです。殿下」
「だから、それが何故か、と聞いているのです!」

 激昂するアンリエッタをいかになだめるか、それを考えてマザリーニ枢機卿は暗澹たる気分になった。今のアンリエッタには、そもそも理屈というものが通用しない。恋人であったウェールズ皇太子を殺され、信頼していたワルド子爵に裏切られ、しかも親友のルイズは勝手に戦争に参加して大活躍しているのである。
 アンリエッタの頭の中では、すでにアルビオン貴族派は、明確に敵として認定されているのであろう。

「トリステインがアルビオンの内戦に積極的に関与する、それが問題なのです。殿下」
「チューダー王家は我がトリステイン王家とも縁続き。ワルド子爵が暗殺したウェールズ様は、私の従兄なのですよ! 大義名分は十分にあるではないですか!」
「そして、アルビオンと戦争になって勝てますかな?」
「今、王党派は貴族派に対して有利に戦争を進めているではないですか」

 アンリエッタが手にしていた新聞をつきつける。そこには、王党派軍がエッジヒルの戦いから、エル・ドラド峡谷の戦いで、貴族派軍に対して大損害を与えたことが詳細に記事になっていた。しかも、トリステインから参加したルイズが、大活躍の末にジェームズ国王から感状と戦功十字章を授与されたことまで載っている。

「王党派軍は、しかし街の一つも奪い返してはおりませぬな。貴族派軍に対して大きな損害を与えつつも、しかしじりじりと土地を奪われ、北のダーダネルスに向けて後退しております。これをして普通は、負けている、と申すのです。殿下」
「敵に常に十倍以上の損害を与えているのに、負けている、と!?」
「戦場での勝利と、戦争での勝利はまた別なのです」

 それについてアンリエッタに理解させることが不可能であり、それ故に負けている側に加担して、後々アルビオンの貴族派のいらぬ恨みを買うわけにはゆかない、という簡単なことが理解させられない。マザリーニ枢機卿は、大きくため息をつきたいのを我慢して、政務がございますので、と、断りを入れて退出した。
 アンリエッタは、今の自分がただの傀儡でしかないという事実に、ただただ歯がみするしかできなかった。


 ガリア王国、首都リュティス。その旧市街にある北花壇騎士団の秘密の本部で、イザベラ王女は、ウォルシンガム卿の報告を受けていた。

「なるほどね。これだけの消耗戦ともなれば、そりゃあ傭兵の賃金も、火薬の値段も、鉄や鉛の値段も跳ね上がるわけだ」

 非常に気分がよろしい、という表情でにやりと野卑な微笑みを浮かべているイザベラに対して、ウォルシンガム卿は淡々と報告を続ける。

「買い占めました硫黄と硝石は、すでに全て売却先が決まっております。利益率はあえて低めに四割に抑えました。各商会に対して、次の取引では便宜をはかることを約束させております」
「それで、「救貧会」の設立はどうなっている?」
「順調です。モリエール夫人が音頭を取って下さったおかげもありまして、特に大貴族の奥様方やご令嬢方から義捐金が集まってきております」
「そりゃあいいねえ。その手のお花畑なご婦人方は、集まった金が実際にはどう使われているのかなんて気にしないからねえ」

 くっくっくと楽しそうに笑いをもらすイザベラ。が、その瞳には、こらえ様もない屈辱感が煮えたぎっていた。

「で、アルビオンから毛織職人の引き抜きと、エスコリアル種の羊の買占めの状況は?」
「順調に進んでおります。特に毛織職人は「レコン・キスタ」による度重なる拠出金要請に財政的にも限界に達しており、ギルドを抜けたがっている者が少なくありませんでした。また、多数の難民も「救貧会」での引受けが進んでおります」
「で、フランドル高原の王領の管理権はどうなった?」
「国王陛下のお許しがありましたこともあって、順調に北花壇騎士団への移管が進んでおります」
「結構なこった」

 元来は、アルビオン王国は毛織物を最大の輸出品目としていた国であった。それと、飛行船による高速輸送船団による三角貿易が、この国を支えていたのである。
 ハルケギニアの外洋の上空三千メートを浮遊するアルビオン大陸は、それ故に潮気交じりの風が吹き込みやすく、その草原地帯は高いミネラル分を含んだ草が数多く生育していた。さらに気温も低目であることもあって、羊の毛足が細く長く、上質の羊毛がとれることで有名であったのである。そして、その上質の羊毛を羅紗生地に織る職人の腕も長年の技術の蓄積もあって高く、アルビオン産の羅紗生地は市場では非常に高価な値段で取引されていたのであった。
 イザベラは、内戦で国内経済がガタガタになりつつあるアルビオンの現状をフェイトに指摘され、特に高級羊毛用羊、テューダー王家が自ら用にわざわざ魔法を使って品種改良した羊、エスコリアル種の羊を大量に入手し、その羊毛で羅紗生地を織れる最高級の腕をもった職人らを引き抜いてきたのである。
 しかもその引き抜きは、名目として「内戦で国を追われたアルビオン人の難民を保護し、職と教育を与えるため」という、いかにも貴族のご婦人方が飛びつきそうなお題目で立ち上げた慈善団体が主体となって行っている。事実、膨大な数のアルビオン人難民が、父親のジョゼフ王の愛人であるモリエール夫人を発起人とした「救貧会」に救済され、南部の火山龍山脈北部海岸沿いにあるフランドル高原に収容されていた。ちなみにイザベラは、この「救貧会」の事務長として、実務の実際全てを握っている立場にいる。
 イザベラにとっては全てが上手くいっている様に見えて、どうしても二つの懸念が内心ひっかかっていた。
 ひとつは、あっさりと王領であるフランドル高原の管理権を移管してくれた父親ジョゼフ王の思惑。もう一つは、この「救貧会」の立ち上げとアルビオンからの毛織物職人の引き抜きを示唆し、かつ硫黄や硝石、その他戦争で必要とされる物品を信用買いで買占め、貴族派と王党派とにつながりがある各商会への高値で転売することで利ザヤを稼ぐことを示唆したフェイトの思惑であった。
 二人とも、何か別の大きな構想があってあえてイザベラを使おうとしているのは判る。だが、それがどういう絵なのか、それが判らないのが気になって仕方がなかったのだ。
 突然、自らの思考に没頭し始めたイザベラを前に、ウォルシンガム卿は右手で軽く眼鏡をなおすと、黙ったままイザベラの次の言葉を待った。
 と、そこに事務官が現れ、ウォルシンガム卿に何か耳打ちする。

「イザベラ様、国王陛下がお呼びでいらっしゃいます」
「……父上が?」

 たった今の今まで、父親のジョゼフ王の思惑について考えていたところである。虚を突かれたのか、歳相応の子供みたいな表情になって答える。

「はい。火急の用件ですので、すぐグラン・トロワに来るように、と」
「判った。すぐに御伺いする、と、伝えときな」

 イザベラは、珍しいこともあるもんだ、と、呟きながら立ち上がった。


 イザベラが通されたのは、いつも通りのジョゼフの私室であった。その中央には、相変わらず巨大なハルケギニアの地図模型が鎮座ましまし、その上には無数の鉛人形が並んでいる。
 イザベラは、その人形の配置が、現在のハルケギニア各国の主要な軍団の配置であることに気がついた。特にアルビオン上の鉛人形の数と配置が、恐ろしく正確である。それは、ジョゼフがアルビオンに深く太い情報のパイプを持っている事を示していた。

「ふむ、お前もこのゲームに興味を持つようになったのか?」

 地図模型に集中していたはずのジョゼフが、視線だけイザベラに向けてそう問いかけてくる。
 もう四十五歳になろうかという中年男のはずが、見た目にはまだ三十かそこらにしか見えない。全身の筋肉も無駄なく鍛え上げられ、腹に脂肪が溜まっているということもない。
 イザベラは、改めて自らの父親が自分自身の肉体も含めて、何かしらの目的のための道具として手入れを欠かしていないことに気がつかされた。

「ようやく最近になって、何故お父様がこのゲームにはまり込んでしまったか判るような気がいたしますの」
「それは嬉しいな。そのうちお前と一局指してみたいものだ」
「いえ、まだまだ小娘でございますゆえ、父上に御満足いただけはしないかと」
「何、本当はフェイトというロマリア女と一局指してみたいのだがな。お前もどうやら腕をあげてきているようだ。本当に楽しみだ」

 つまり、自分の動きは全部筒抜けってことか。
 イザベラは、表情に感情が出ないよう必死になってこらえつつ、にっこりと微笑んでみせた。
 少なくとも、自分の「師」であるフェイトが、そう簡単にジョゼフにしっぽをつかませるとは思えない。

「それで、今日はいかなる御用があってお召し下さったのでしょうか? 父上」
「うむ、お前も今年で十七であったな?」
「はい」
「どうだ、トリステインのアンリエッタ王女も、ゲルマニアのアルブレヒトの元へ嫁ぐという。お前も結婚など考えてみたことはないかな?」

 さすがに虚をつかれた。
 イザベラは、一瞬呆然として、ぽかんと口をあけて、たった今ジョゼフが口にしたことの内容を反芻する。

「結婚、で、ございますか?」
「うむ、考えてみれば、余も色々と忙しくて、お前の嫁ぎ先について何も考えてはいなかったことに気がついたのだよ。それではあまりにもお前が不憫でな。というわけで誰か意中の者がいれば、と思ってな」

 イザベラは表情には見せないものの、必死になって考えた。
 王族の結婚ということは、何らかの政治的な意図があって行われるものである。特にガリアの様な大国の後継者である自分の結婚ならば、そうだ。とすると、嫁ぎ先はどこかの王室か、国内の有力な大貴族ということになる。つまり、ガリア王国の味方を作るなり、ガリア王室の直轄領を増やすなり、するためなのだから。
 と、イザベラは、ここでフェイトなら誰を選ぶだろうかと考えた。あの徹底的に利害のみで動くはずの彼女が、トリステイン王家と縁続きのアルビオン王家の断絶に手を出さなかったのはなぜか。そういえば、アンリエッタ王女は、アルビオン王室とは祖父の代で縁続きであったはず。つまり、今アルビオン王家が断絶すれば、さほど無理もなくアルビオン王国の王権を継承することを主張できる立場にいる。そして、嫁ぎ先はゲルマニア皇帝。
 このままでいくならば、アンリエッタは、自らを祖とする巨大な帝国を建設することが可能な立場にいる。
 その帝国は、文字どおりガリア王国を国力でしのぎ、圧倒的な脅威となって北から圧迫してくる事は確実である。
 イザベラは、もう一度地図模型を見つめなおした。
 そして、愕然とする。この「帝国」は、容易にガリアの北部を制圧し、王都リュティスの北方にあるライン河のあたりまで進出が可能となる。

「そうですわね、アンジュー侯爵のご長男などいかがでしょう?」

 イザベラは、火山龍山脈の南側ほぼ全域を領土とする、今ではガリア王国最大の大貴族の名前をあげた。
 アンジュー侯爵家は、かつて国境を接しているロマリアに出た英雄のジュリオ・チェーザレ王によって奪われたガリア王国南部の奪還に大功があって、火山龍山脈の南側をガリア王室から任されている大貴族である。火山龍山脈によってガリア王国の中部と北部から断絶されているその地域は、むしろ気風としてはロマリアや南部半島都市国家群に近いものがある。そして、ハルケギニア最大の綿花の栽培で有名な地域。

「アンジュー侯爵家か! うむ、さすがは余の娘だ、良い相手が意中にいたものだ! これは目出度い。さっそくアンジュー候に話をせねばな!!」

 大喜びで手を叩くジョゼフ。
 どうやらジョゼフと同じ結論に至れた様である。確か、アンジュー候の長男は十三歳だか十二歳だかの子供である。よほど素質があるのでなければ、十分操ることは可能であろう。
 そして、始祖ブリミルの教えを宗教として管理しているロマリアの宗教庁。ちなみに魔法がほとんど使えないことで散々宮廷雀に馬鹿にされ続けてきたイザベラは、魔法と、それをもたらしたブリミルが大嫌いであった。いや、憎んでいるといってもよい。
 だからこそイザベラは、あえてジョゼフに危険をおかして尋ねてみることにした。

「それで父上は、ロマリアとの友好関係について、いかがお考えですの?」

 大喜びしているジョゼフの表情はそのままに、その眼だけが鋭くイザベラを射抜く。

「うん? 余はロマリアの坊主どもとの関係をおろそかにするつもりはないぞ?」

 あえて友好という言葉は入れなかった。つまりは、そういうことか。
 イザベラは、今度こそにっこりと心からの微笑みを浮かべてスカートの裾を持ち上げ、父親に一礼した。

「それではお手数をおかけいたしますが、婚儀の件、よろしくお願いいたします」


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