皆さんこんにちわ。
私はナデシコ専属オペレーター【ホシノ=ルリ】です。
突然ですが、今私たちって大ピンチだったりします。
機動戦艦ナデシコ~紫銀の剣士~ 第一話後編
ナデシコは、今まさに大ピンチだった。
奇襲を仕掛けてきた木星蜥蜴を殲滅する為に囮を出す所までは良かったのだが、その後が拙かった。
パイロットが素人だったのに加え、無人兵器の数があまりにも多かったのだ。
――結果。エステバリス臨時パイロット【テンカワ=アキト】は無数の
無人兵器に取り囲まれる羽目に。
…合掌。
――一方、ブリッジでは。
「ちょっと、どうすんのよ!こんな所でお陀仏なんて、アタシは御免よッ!!」
喚くキノコ【ムネタケ=サダアキ】
「不味いわねぇ…」
冷や汗を浮かべる美女【ハルカ=ミナト】
「………」
顔を青くし涙を浮かべるソバカスの女性【メグミ=レイナード】
「……(ズズ~)」
非常時にも拘わらずお茶を飲み続ける老人(気が動転している?)【フクベ=ジン】
「……ムゥ」
モアイの如き無表情な顔に大きな汗を浮かべる男【ゴート=ホーリー】
「いやはや、こまりましたなあ~」
全然困っているように見えない眼鏡にチョビ髭の中年【プロスペクター】
「みんな落ち着いて!こんな時こそ冷静に……」
影薄きナデシコ副長【アオイ=ジュン】
「アキト~(泣)」
想い人の危機に涙を浮かべる天然or天才艦長【ミスマル=ユリカ】
――ブリッジも大パニックに陥っていた。
ちなみにルリは黙々と自分の仕事に集中していたりする(この子が一番大人や)。
――と、その時、
「――レーダーに変化あり。テンカワ機周辺の木星蜥蜴の反応、次々に消失」
「「「「え?」」」」
ルリの報告に、ブリッジにいる全員が驚きの声を上げた。
ルリも内心かなり驚いている。
「ホシノさん、映像出せる?」
数拍置いて、頭を艦長モードに切り替え、指示を出すユリカ。
「はい。映像出ます」
中空に現れた映像を見て、その場にいた全員が言葉を失った。
「オラオラオラオラオラオラァッ!!」
俺は某背後に立つ者風な叫びを上げつつ、23体目のバッタを斬り捨てた。
バッタの爆発に他のヤツが巻き込まれ更に誘爆。
今の爆発で大体50はいっただろう。
ようやくエステの傍まで辿り着けたのだが、隙を逃さず二体のバッタが俺に飛掛ってきた。
左右からの挟み撃ちか……甘い!
「天無剋神流『舞双連撃』」
舞の如き高速の連撃を食らい、二体のバッタは後ろの大群に突っ込み、大爆発した。
俺はそれを見届けると、傍に呆然と突っ立てるエステを怒鳴りつけた。
「てめぇ、何ぼさっとしてるんだ!とっとと逃げやがれッ!!」
『え、えッ!?』
エステから若い男――おそらくアキト――の戸惑った声が聞こえる。
…まったく、呑気な。
「え、じゃねーよ。お前多分囮かなんかなんだろ?だったらとっとと自分の役目を果たしやがれッ!!」
『わ、わかったッ!!』
慌ててエステを走らせるアキト。…おっと、乗り遅れちゃ不味いな。
『えッ!?』
突然飛び乗ってきた俺に驚いたのか、アキトが小さく叫んだ。
「わりい。このままじゃ俺も巻き込まれそうなんでな、安全なとこまで乗せてってくれ」
……数分後。
今俺は、海上に浮かぶ白亜の戦艦【ナデシコ】の甲板の上にいる。
何とか俺たちは合流地点まで辿り着き、海に飛び込んで浮き上がってきたナデシコに乗っかり事なきを得たのだ。
…しかし、凄い威力だなグラビティ・ブラスト。
巻き込まれてたら100%死んでたな(汗)。
ま、生きてるからいっか。
俺はエステの頭部に背中を預け、アキトの方に意識を向ける。
先程からアキトは誰かと――ミスマル=ユリカあたりだな――と何やら痴話喧嘩?をしている。
ま、とにかくナデシコに近付く事は出来たな。
後はプロスペクターと契約して乗り込むだけだ。
しかし、……何か、やな予感がする。
――ブリッジ
此方は大騒ぎだった。
キノコは金切り声を上げ、艦長は目を耀かせてアキトと話し込み、副長は報われぬ想いに涙し、女性二人は突然現れた謎の青年剣士の話題で話し込み、老人は再びお茶を入れ始めた。
「…ゴートくん、決めましたよ」
「ミスター、まさか…」
「ええ。彼をスカウトします」
「しかしミスター。ヤツの戦闘力は確かに高いが、危険も大きい。…此方の味方とは限らない」
「いえ、これでも私、人を見る目は確かなつもりですよ。それに、もし敵だとしてもそれ相応の対策はしておきますから」
「……なら、いいが」
眼鏡を怪しく光らせるプロスに、少し腰が引けるゴート。
そんなブリッジクルーたちを見てルリから一言。
「バカばっか」
だそーです。
第二話に続く。
あとがき
かなり遅れました、すいません。
次からはもう少し早く行きたいと思います。
つたない文章ですが、これからも頑張ります。