「では、一年一組のクラス代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
嬉々と山田先生が話す。クラスメイトもきゃいきゃいと盛り上がっているそんな中唯一人、一夏は真っ白に燃え尽きていた。
「どうしてこうなった……」
教室の朝一番、一夏は打ちひしがれている。アスキー的に表記するならOrzといった具合だ。
「それは――――――」
「当然だろう織斑」
千冬先生が割って説明に入る。
「聞いてなかったのか? 織斑。私は言った筈だぞ、露崎が勝てば、代表は織斑だと」
その一言を思い出したのかピシリと固まる。あー、そういえばそうだったなこの代表決定戦。
私が勝てば織斑一夏、セシリアが勝てばそのままセシリアが。
結果は私の勝ち。イコール代表は織斑一夏。うん、方程式が成り立ったぞ。
「じゃ、じゃあ俺とセシリアの試合って」
「はっきり言えばレクリエーションだ。といってもお前がどこまでやれるかの基準を測るのも一環だったがな」
真剣勝負をレクと一緒て……。絶対、この人には敵わない。私の勘がそう告げている。
「しかし気落ちする必要はなくてよ。初めての戦闘で代表候補生のわたくしに引き分けたのですからむしろ一夏さんは誇りに思ってもいいぐらいですわ」
出てきたよ、セシリア・オルコット。出しゃばりというかどこにかしこにもしゃしゃり出るというか……マテ、一夏さん、だと?
「それにそのようなことにならなくてもわたくしは辞退するつもりでしたけど」
「……なんでだよ」
恨めしそうなのと意外そうなのの双方の入り混じった目で一夏は尋ねる。その声に不機嫌がいくらか籠っているが今の絶好調なセシリアにはスルーされるだろうに。
「IS操縦は実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」
あーそれに関しては同意。下手な知識よりも実戦の経験の方が何倍も本人のためになる。
ISは理屈だけで動かす訳ではない。ISは身体に装着するパワードスーツである以上、その動きを身に染み込ませる方が絶対に効率はいい。実際、私もそうしてきたし。
「流石セシリア、分かってる!」
「そうだよねー。折角世界で唯一の男子がいるんだから同じクラスになった以上持ちあげないとねー」
「私たちは貴重な体験が詰める。他のクラスには情報が売れる。一度で二度美味しいね、織斑くんは」
最後、教師の目の前で営利目的で一夏を使わない。
「そ、それでですわね……」
こほん、と咳払いした後、顎を手に当てる。お、これは今までに見られなかった行動だ。
「そちらがよろしければわたくしのような優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がISの操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ―――――――」
あ、確信した。こいつ一夏にフラグ立てられやがった。それもベタ惚れだ。
「生憎だが、一夏の教官は私で足りている。私が、直接頼まれたのだからな」
がたんと立ちあがり、反論する箒。私が、のところに力を入れているのは第三者の私から聞いても間違いではない。
それに、昨日のこともあるから箒の心中穏やかじゃないっていうのも頷けるのだが、教室で殺気を振り撒くのはどうかと思うのだが箒さんや。
しかし今日のセシリアは違った。絶好調女セシ……っとこのネタは天丼だから自重自重っと。
「あらISランクCの篠ノ之箒さん。Aのわたくしに何の用かしら?」
「ら、ランクは関係ない! い、一夏がどうしてもと懇願するからだな」
してねーなんて目をするんじゃないです一夏。面倒くさいことになるじゃないですか。
「座れ、馬鹿ども」
すたしたと二人の元に歩いていき、出席簿で一掃。恐るべし。
「お前らのISランクなんてゴミ同然だ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も敗れていない段階で優劣をつけようとするな」
なんて千冬先生らしく分かりやすい表現だ。世界最強の言葉は違う。
「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、生憎私の管轄時間だ。自重しろ」
そう言い放つと何も言い返せずに二人ともすごすごと席に戻っていく。
「とにかく、クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
クラスに元気のいい返事がかえる。
いちか、がんばれー、ふぁいとー。
一夏がクラス代表に選ばれて早いものでもう四月の末、桜も花びらが全て散り葉桜に変わった頃。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、露崎、オルコット。試しに飛んで見せろ」
まあ、実践の例は私たち専用機持ちがするのですが、不出来な一夏にとってこれはかなり酷だろう。
なにせ、何かをやらかす度にこうして衆目に恥ずかしいところを晒すわけだから。
先日もあんな凡ミスを……、ああ情けない。
余計な思考をしながらでもゼロコンマ秒数でオルテンシアを展開する。まさしく片手間。
「よし、では飛べ」
そう千冬先生に指示された通りに飛ぶ。
「何をやっている織斑。スペック上のデータでは白式はブルー・ティアーズやオルテンシアよりも上なんだぞ」
早速叱責の言葉を頂く一夏。ちなみに出力的なデータでは白式>ブルー・ティアーズ≧オルテンシアとなっている。しかし技術ではこれが面白いように逆になるんだが。
「自分の前方に角錐を展開させるイメージってなんだよ」
「イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方がよっぽど建設的でしてよ」
「そう言われてもなあ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだこれ?」
「そういうことを詮索するのは野暮ってものですよ。ISだから飛べる、それでいいじゃないですか」
まさしく魔法の言葉だ。ISの摩訶不思議万能説は伊達じゃない。
「じゃあ、仕種は飛ぶ時どういうふうにイメージしてるだ?」
「私は飛ぶときは飛ぶとしか考えてないですね」
ちなみに箒に聞くと『ぎゅん、という具合だな』とお言葉を頂いた。うん、分からん。だがなんとなく言いたいことは分かる。それとしか言いようがない。
クラス代表の勝負以降、セシリアとも放課後に訓練している。もっとも毎回、セシリアと箒が一夏の指導のことで衝突して最後に一夏がフルボッコされてるのが定例のパターンとなりつつある。
私? 傍観者ですが何か?
「一夏さん、一夏さんがよろしければまた放課後にご指導して差し上げますわ。その時はその、ふたりっきりで――――――」
「一夏! いつまでそんなところにいる! 早く降りて来い!」
……箒、千冬先生の指示が出てないのに無理言いなさんな。
「織斑、露崎、オルコット。急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」
「了解です。では一夏さん、仕種。お先に」
そう言うとセシリアが先行して急降下していく。
みるみる地表に近づいていき、千冬先生が指定した十センチで完全停止した。流石は代表候補生。
「じゃ、私も行きますか」
そう呟くと地表に向けて背中のスラスターを吹かす。
ぐんぐんと大地に近づいていく。そして、おおよその感覚で急停止。
結果は地表五センチ。ん、こんなものか。
「よし、ラスト織斑!」
千冬先生に促されると一夏も地上へ向けて急降下していく。が、ロケットブースターを背中に点火させたように白式が加速する。機体スペックの高さがよく表れている。
あ。あのペースだと地面とキスする。
そう思い描いたと同時、手にレールガン、ストレリチアを展開し落ちてくる目標地点の射線上に放った。
「ぶふぉおおおおおおっ!?」
放たれた弾は落ちてくる白式に見事クリーンヒット。横からの力学エネルギーによって地面に激突することなくぶっ飛ばされる。ふう、撃墜マークがまた一つ増えちまったぜ。
「へ? え、ええええええ!?」
一拍遅れて大いに驚いた悲鳴を上げる山田先生。周りの生徒もやってることのぶっ飛び度に軽くドン引きだ。箒やセシリアですらぽかーんと口を開けている。千冬先生だけ例外的にこめかみを押さえている。
「露崎、発砲許可は出してないぞ」
「いえ、あのままだと地表にクレーターを作りかねなかったのでこちらの判断で発砲しました」
「いっっっってえな仕種! 死ぬかと思ったじゃねえか!?」
「ISの絶対防御があるので死ぬことはありません。ですので撃ちました」
「俺は死ぬかと思ったけどな!!」
ていうかそんだけ怒鳴れるんなら元気じゃないですか。
「では聞きますが、地面にぶつかってクレーターを作るのとレールガンでぶっとばされるの、貴方はどっちが良かったですか?」
「ぶっとばしてから聞くなよ!! どっちも嫌だよ!」
あーいえばこういう。ホントにガキですね一夏は。
「情けないぞ、一夏。昨日、私が教えてやったじゃないか」
箒からもお叱りの言葉が届く。と、いっても教えていたのはあの擬音のことを言っているのだろう。うん、だから無理。あんなの分かるの某プロのミスターしか分かんないし。
「大体だな、お前というやつは昔から――――――」
「一夏さん、お怪我はなくて?」
箒のお小言を遮るようにずいとセシリアが一夏ににじり寄る。
「あ、ああ。別に問題ないけど……」
「そう。それは何よりですわ」
ほう、これは怒っている箒に対してセシリアは優しくしてポイントを稼ごうという魂胆なのか。
しかしそれだけでは一夏は落とせないんだな、これが。一夏は好意を厚意として受け取りますからね。それで何人の女が泣いてきたことか。
「ISの装備をしていて怪我をするわけないだろう……」
「あら篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していてもですわ。常識でしてよ?」
「お前が言うか。猫かぶりめ」
「鬼の皮を被っているよりはマシですわ」
「おい、馬鹿ども。邪魔だ。端の方でやってろ」
ぐぬぬと、睨み合っていたところを千冬先生が二人の頭を押しのけ一蹴。やはりこの人に敵う人は世界に片手で数えられる数しか存在しないのか。
「なあ、仕種。どうして、セシリアと箒は喧嘩してるんだ?」
「分からないんですか?」
「ああ、さっぱりだ」
「……一夏、乙女の純情が理解できないというのなら―――――――女の嫉妬に溺れて溺死しろ」
「で、でき……!?」
「というわけで、織斑くんクラス代表おめでとー!」
「「「おめでとー!!」」」
パンパンパーン、と一斉にクラッカーが鳴り響く。
今は夕食後の自由時間、寮の食堂で一組の生徒はみんな揃っていた。ただ二組や三組の生徒が混じってるような気がするのは気のせいかなあ……。
それに、というわけでってなんですか。主語をつけなさい、主語を。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるね」
「ほんとほんと」
「ラッキーだったよね。同じクラスになれるなんて」
「ほんとほんと」
……ちなみにさっきから相槌を打っているのは二組の子だ。
「人気者だな、一夏」
「本当にそう思うか……?」
「客寄せパンダであることは間違いないですけどね」
「……否定できねえ」
箒は機嫌が悪い。こういうところが好きじゃないというのもあるけど、一夏が女子にちやほやされてるのが気にくわないらしい。
「はいはーい、新聞部でーす。話題の新人、織斑一夏くんに特別インタビューに来ましたー!」
おおっ! とクラスのみんなが盛り上がる。はいはい、勝手に盛り上がってくださいな。
「あ、私は二年生の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。これ名刺ね」
そう言って名刺を一夏に手渡す。きっと一夏は画数が多そうな名前だなとかつまらないことを考えているに違いない。
「ではではズバリ織斑くん! クラス代表になった感想をどうぞ!」
「あー、ええと。まあ、なんというか頑張ります」
「えー、もっといいコメント頂戴よ。俺に触れると火傷するぜ! とか」
「自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的!」
そういう貴女の言葉も随分、前時代的ですけどね。
「ま、適当に捏造しておくからいいとして」
ジャーナリストが捏造するなよ! なんて突っ込みもスルーされるに違いないのでそっと横に置き去りにしていこう。
「ああ、セシリアちゃんもコメントちょうだい」
「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ありませんわね」
とかいいつつも満更でもなさそうな感じ。
「コホン。ではそもそもわたくしが何故、クラス代表を辞退したかというとそれはつまり――――――」
「長そうだからいいや。適当に捏造しておくから。織斑くんに惚れたからにしとこっと」
「なっ、なっ、ななっ……!」
あー、図星だ。みるみる内に顔がリンゴのように真っ赤になっていく。
「何を馬鹿な」
「一夏さん、何をもって馬鹿とおっしゃるのかしら!?」
「はいはい痴話喧嘩はそれくらいにしてー。じゃ最後に露崎さんにもインタビューしとこかな! 一組の専用機持ちだし、何せあの沙種様の妹だし!」
沙種様、ねえ……。千冬様、千冬様とここに来て散々聞いたけどまさか実の姉を様づけで呼ばれるとは思ってもみなかった。
ま、仕方のない話といえば仕方のない話かもしれない。なにせ、私の姉さんは――――――――。
「まったくよくもこんなに騒げるものだ。実習が本格的でないからといって体力があり余ってるようだな」
千冬先生がゆらりと立ち現れる。相変わらず、黄色い声援が鬱陶しいそうだ。
「ち、千冬姉どうしてここに?」
「織斑先生だ。お前らが織斑を祝うと聞いて顔を見せに来ただけだ。なに心配するな、すぐ帰る」
「せ、先生! 露崎さんってあの沙種さんの妹なんですか!?」
クラスの一人が興奮気味に尋ねる。……ああ、とうとう来たよ。
「ああ、そうだ。露崎は正真正銘、露崎沙種の妹だ」
露崎沙種。
私の姉で元日本代表候補生。第一回大会は最終選考で千冬先生と決勝で戦い、敗れた。
そのため日本代表に選ばれなかった。
そして姉さんに勝利した千冬先生は世界大会でも全勝し格闘と総合部門で優勝した。
その三年後の第二回モンド・グロッソ大会では射撃部門、及び総合優勝者を果たした。しかし、総合優勝については事件があったため姉さんはたまたま勝ちを拾っただけに過ぎない。
一般、総合優勝者には「ブリュンヒルデ」という呼び名が栄誉として与えられるのだが、
「えええっ!? 露崎さんってあのジャンヌダルクの妹!?」
私の姉はその強さ故に自由国籍権を持ち、その第二回大会はフランスの代表として優勝したことからその国の英雄になぞらえて「ジャンヌダルク」と呼ばれている。
それに「ブリュンヒルデ」の呼び名があまりにも千冬先生に定着してしまったため、代わりに姉さんに別の名が送られたのだが。
「ブリュンヒルデ」――――織斑千冬。
「ジャンヌダルク」――――露崎沙種。
「天才」 ――――篠ノ之束。
三人の世界的有名人の弟妹が同じ学び舎、同じクラスにいるなんてなんとも奇妙な縁だ。
「なんだお前ら、気づいてなかったのか? こんなに分かりやすい苗字なのに」
「で、でも織斑くんに篠ノ之さんと二人も有名人が続いたんだから……」
「これ以上はまさか、ねえ……?」
にしても今の今までよくバレなかったよホント。
「とにかく、露崎は沙種の妹だ。篠ノ之同様、こいつもそういう部分でデリケートだからあまり気にしてやらないように」
確かにデリケートといえばデリケートですけど、姉さんとの二者間ではそれほど問題ないんですけどね。姉妹仲は悪いわけじゃないですし。
「では私はもう行くが羽目を外し過ぎるなよ小娘ども。今日のことが原因で明日のSHRに出席できなかったらどうなるか分かってるだろうな」
そう公開処刑を宣告するとなにごともなかったように去っていく。うわ、かっこいい。
「じゃ、じゃあとりあえず何か一言だけでも頂けないかな!?」
「べつに」
「みじかっ! どこの女優さん? でも捏造のし甲斐があるわ! 沙種様の妹だしそれくらい過激な発言があってもいいわよね!」
よくねーです。大体いつも過激なのは千冬先生ともう一人の天才の方で、姉さんはどっちかというと常識人なんですけど。
「じゃ、写真取るわねー。三人いるから織斑くんが真ん中でいいよわね?」
「はあ……」
一夏は状況は掴めてないらしくなんとも覇気のない返事をする。
「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃもちろん」
「でしたら、いますぐ着替えて――――――」
「いってらっしゃい、その間に撮影は終わってると思いますけど」
「そんな冷たくあしらわないでくださいません!? このままでいいんでしょう!?」
そうそう。何もたかが写真一枚くらい制服で構わないじゃないですか。
「それじゃあ、撮るよー。35×51÷51÷35×2はー?」
「えっと……2?」
「ぴんぽーんっ!」
パシャ。っておおい。
「なんで全員入ってるんだ?」
シャッターが切られる瞬間の僅かな時間ににクラスメイト全員がフレームに映る位置に移動していた。恐るべし、女子の行動力。箒もちゃっかり映り込んでいた。
「あ、貴女たちねえっ!」
「まーまー」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」
「クラスの思い出になっていいじゃん」
「う、ぐ……」
結局はクラスメイトに丸めこまれてしまったとさ。
部屋に戻り、部屋の電気を点けると一直線にベッドに身体を投げ出す。
脇を見ると、時計は十時を回っていた。
「あー、しんど……」
こうやって馬鹿騒ぎするのは苦手だ。
一緒になって馬鹿騒ぎするんじゃなくて遠巻きにみて、事の成り行きを見守るのが私の性に合っている。
でも、たまにはこういうのも悪くはない。箒の機嫌は結局パーティーが終わるまで治らなかったけど。
「ふう……」
天井を見上げたまま、今日のアリーナでの訓練を思い出す。
一夏の動きはまだまだ荒い。箒との剣道での訓練でいくらか勘は取り戻しつつあるがそれでも剣筋はまだまだ甘い。
でも負けながら確実に成長している。敗北は成長の糧になる。負けの中で何かを掴めばいいのだ。
実を言うと何度負けても這い上がる一夏が羨ましくあったと思う。
昔から私に敗北の二文字は許されない。
常勝無敗、負けない強さ。
しかしその裏は誰よりも負けを嫌い、負けられない宿命を背負っている。
だが、一度だけ負けたことがある。それが原因で大騒ぎになり、周りに大いに迷惑をかけた。
特に私に勝ったあの子。たかがあれだけの勝負で大事になったのだ。その子にかけた心配は計り知れない。
あの子は悪くないのに。悪いのは自分の体質なのに。
病室に謝罪に来たその子は泣きながら謝った。ごめんね、ごめんねと。何度も泣きじゃくりながら謝った。
あれから三年。元気にしてるかな。確か名を、
「凰鈴音……」
* * *
あとがき
東湖です。
鈴が出てない時点で既にボッコボコに言われてますが、これから進むともっと叩かれそうな勢い……。
書いている以上ありがたいコメントをいただくだけでなく、厳しい批評も言葉を受けるのは当然だと思ってます。ましてや自分の文才のないのであれば尚更のことです。
それを承知でこうして続けるのは厚顔かもしれませんがとにかくへこたれずに書いていきたいです。
2011/07/19
ご指摘により、あとがきの一部を変更させていただきました。