とある企業の大きな一室。
高い天井、広い間取りの部屋は会議室とは似つかないほど大きくどちらかといえば工場の整備室のようだと言った方が正確だろう。実質はその通りなのだが。
中央には紫陽花が鎮座している。その花こそ私の愛機、オルテンシアにほかない。
ここは深桜重工の開発室。
深桜重工は日本国内でも指折りの企業で国内のIS産業でも倉持技研に次ぐシェアを持つ大企業である。
昔は一端の中小企業でしかなかった深桜の名はモンドグロッソ第二回大会で姉さんの沙種がこの企業の開発された武器を使ったことで注目を浴びるようになった。
それ以降ISの武器を中心にシェアを展開、ラファール・リヴァイヴや打鉄の一部の武装の取り扱っている。また最近では新しいスタッフを加えたことにより機能特化のパッケージにも企業の手を広げていて倉持技研に次ぐとは言え引けを劣らない業績を残している。
私はここにオルテンシアの整備や装備全般を任せている。姉さんがここを重用するというのも一因だが、一番の理由は昔からお世話になっている人がここで働いているからである。
その人はオルテンシアの横で厳しい表情をしながら空中に投影されたディスプレイ上のデータを見比べている。
年齢は二十代後半で日本人の黒髪とは趣の異なる括ったブロンドのポニーテールが揺れる。
そのプロポーションもモデルであってもおかしくない位に抜群で、特に豊満な胸をアピールするかのようにワイシャツの谷間がざっくりと空いている。
流石は外国人、オープンというか自己主張が激しいというかそんな着こなしは数少ない男性スタッフたちにとってはさぞかし眼福なことだろう。
そのパソコンを眺める濃褐色の瞳は彼女に流れる日系人の血の数少ない特徴である。
「……の稼働データは取れたみたいね。壊して帰って来たのがいただけないけど」
ブロンド美女、シンリ・シュヴァリエはデータを確認し終えると席を立ちこちらにジト目を投げかけて来る。最後にちくりと述べた不満が反論を返す余地がないため胸に刺さる。
昔は別の企業で開発スタッフの最前線に立っていたが、そこがとある事件によって潰れてしまい今の深桜の社長にその技量の高さを買われ引き抜かれたのだ。
そんなシンリさんは生え抜きの他のスタッフを差し置いて深桜重工の開発主任で開発・整備において全権を与えられている。
かといって他のスタッフたちとギクシャクしてるというわけでもなく、むしろ切磋琢磨、和気藹々と仲良くやっているらしい。
「まあ、いいわ。ブルーティアーズと白式に勝てる出力が出せるとデータは証明してくれた訳だし。篠ノ之博士のご息女を守ったということで今回は不問にしましょう」
不満そうではあるがデータ収集の期待以上の成果により、今回は目を瞑ってくれるようだ。
「で、次に試すのがこれですか」
そう言って新たに装着されたデータを確認する。
一見すると大差ないように見えるがしかし、その細部は異なっていた。
肩パーツと背部のスラスターは前とそれほど変化がないが、肩パーツに特殊な細工が施されている。
足パーツはスラスターはそのままに地面にアンカーを撃ち込めるようにパーツが追加、改良されている。
腕は以前は必要ないと廃止していたシールドを右腕に取り付けられている。まるで、何か兵器を隠すかのように。
そして何よりも、格納されている武器の種類がまるで違っていた。
現行の武器は全て取り外され一新されているが、どれもこれも中々に無茶苦茶な武装ばかりだ。
「ええ。どう気に入ってくれた?」
シンリさんが嬉々とした表情で尋ねてくる。
この人がISを組むとどうしてか決まって重厚なデザインになる。武器を作る時はそうでもないのだが、ISの装甲を作らせるとこういうゴツイ仕様に必ずなる。ついでに言っておくが好きなタイプはゴツイ人とは言う訳ではない。
「え、ええ……。また今回もゴツイのを組みましたね」
正直に言ってしまえばISの装甲が分厚くある必要はない。何故ならほとんどがエネルギーシールドで防御を行うため装甲は必要最低限で構わないのだ。
だというのにシンリさんはその意に反して事あるごとに重厚なフレームを組むのだ。スラスターの拡大化に伴うことも一つの要因だがもう少しどうにかならないのですかね……?
「まあね。仕種クンの回避性能の反応も悪い訳じゃないし、多少装甲が肥大化したところで問題にはならないでしょう?」
私のことを知り尽くしているかのような妖艶な笑みを投げかけてくる。いや……。ような、ではなく実際に私とオルテンシアのことを彼女は知り尽くしているのだ。
「それにしても、随分と懐かしいものを引っ張り出してきましたね」
私はこのフレーム自体に見覚えがある。なにせ、このフレームのテストパイロットを務めていたんだから。
シンリさんの勤めていた企業というのはオルテンシアの今の原型となるフレームを組み立てた会社でオルテンシアの製造以来、私はシンリさんと共にオルテンシアを育てて来た。
「とは言うものの、あの頃と違って出来ることが増えたからほとんど一から組み直したようなものだしね。私はまだこれでも足りないくらいよ」
まだ足りないという言葉を聞いてもはや頬がヒクついた苦笑いしか出来ない。
この人に任せていたらそのうちに全身装甲のISに乗せられたりするんじゃないだろうか。
「とりあえず、インストールは終了したから試運転して頂戴。相手はいつものでいいかしら?」
「いいえ。いつもの二倍でお願いします」
シンリさんはそれを聞いて目を見開いて驚いた。
「張りきるわねえ。いつも通りローペース運行だと思ってたのに、何かあったの?」
いつもと違う私のテンションにシンリさんは興味を示す。
「ちょっと、自分の限界を知りたくて」
自分が守れる、自分自身の限界を。
数十分後。
深桜重工の地下特別アリーナに私はいた。
足元には大量の薬莢をばら撒き、前面にはもうもうと弾幕煙が立ち込め、両腕にはガトリングガンが構えて肩で息をしていた。
煙の奥には二人。先程まで展開していたISはシールドエネルギーが切れたため装着を解除されている。
『試合終了。勝者、露崎仕種』
「うあ……」
無機質な音声が私の勝利を告げると、代わりに私の口からはなんとも言い難いような声が漏れた。
全ての敵を沈黙させ試運転が終了するとISの装甲を解除し粒子状になって消えると膝から崩れ落ち地面に寝転がる。
『お疲れ様。初期起動にしては上々よ。どう? 初めてやった二倍盛りの感想は』
モニタールームからのプライベート・チャネルが飛んでくる。シンリさんだ。
「初期起動で二倍は、もう、やらないです……」
ぜえ、ぜえと息も整わずに荒い呼吸をしながら息も絶え絶えに答える。
正直、初めての機体で二対一は死にかけた。武装の特性を開始前に一応把握したつもりでいたが、武装は想定の範囲を逸脱した代物ばかりだった。
特にガトリングガンと最後に使ったとっておき。あれはISの兵器の中でも異常な破壊力。今回の型にもっとも当て嵌まった最強の矛。そしてそれ以上の暴れ馬。使いこなすには骨が折れそうだ。
しかも相手は元代表候補生。現役を離れて何年かのブランクがあるとはいえこうして毎回、私をギリギリのところまで追い詰める。それが今回は二倍なのだ、正直普通なら軽く死ねる。一夏なんて翻弄されて瞬殺だろう。
武器の性能と装甲に救われるとはこのことか。無駄に厚くしたという訳ではなさそうです。
『その割にはあっさりこなしちゃうんだもの。よほどコアとの相性がいいのね』
私はこのコアとしかシンクロ出来ない。オルテンシアが事故により破損中の間、訓練機を使うことになっていたのだが起動出来てもどうもこちらのイメージ通りにならない。
これでも大分、マシになった方だ。昔はISが起きるだけで装着して動かすことも叶わなかったのだ。
……そのせいで、あんなことになったのだが。
つまるところ、私はオルテンシア以外のISに乗ることが出来ない。乗れてたとしても訓練機では今の実力の十分の一も発揮することが出来ないのだ。
『妬けちゃうなあ。ISが恋人だなんて。人間の方にも恋人とか出来ないの?』
シンリさんの何気なくからかったその一言に先月の保健室での出来事を思い出してしまう。
あの時、交わした鈴とのキスの感触。そして、あの言葉。
『仕種、あたしはそういうの全然気にしない。女の子みたいになっても仕種を好きな気持ちに変わりはないから』
忘れる筈もない。忘れられる筈がない。思い出すだけで顔が紅潮する。
鈴からの告白。それは振り向かせて見せると同時、いつまでも待ってるという一途な思い。
鈴のことは好きか嫌いかで言えば好きだ。ライクかラブかの線引きは別にして。
しかし、
「私の体質を知っているでしょう? それで恋人なんて……」
どれだけ、勿体ない話か。
鈴の思いを知っている以上、その思いに応えたい心と壊れることを恐れる心も同時に秘めている。
脆く剥き出しの死への恐怖。負け=死の連立式を持つ私にとって身近過ぎる人物は逆に怖い。
私がいなくなった時、鈴はどうなってしまうのか。そのサイアクを想像するのが怖い。身近過ぎるが故の悲惨な結末を。
だから距離を置きたい。本当に大切なものだから、遠ざけて置かなければならない。
『仕種クンの体質が大変なのはよく知ってるからあんまり口出ししないけどね。あんまりそのことに憶病になって逃しちゃっても知らないわよ? でないと、私みたいになるから』
シンリさんは、おどけた調子で笑いながら話す。けれど、その裏側には暗い影を落としているのを知っている私は安易に笑うことが出来なかった。
『ま、こんな話も終り。もう少しだけ調整して上がりましょうか』
「はい」
そういうと頭を切り替えて作業に入る。
私という存在はもう誰にも、何にも負ける訳にはいかないのだから。
午前中で起動実験は終わって、昼食は外で取ることになった。
あそこの社内食堂でも良かったが、久々の外ということで鈴の実家の中華料理店に足を向けていたのだが。
「あー、そういえば……」
鈴の親は離婚してしまったため店を止めてしまったのだ。それが鈴が中国に帰ることになった原因なのだが生憎とそのことを私はこの地にいなかったから後から口伝で聞いたくらいにしか知らない。
かといってもう思い出すのが遅すぎた。既に店の周辺まで来てしまっている。会社に戻るにしても面倒なこと変わりない。
とりあえずでも店のあった場所に行ってみるか。
しばらく歩くと懐かしい町並みが出てくる。三年振りなこの町はあの頃と雰囲気は何も変わっていなかった。
店の様変わりはあるが、この土地にしっかりと調和している。まるで、昔からあったかのように。
その中に見慣れた暖簾が店にかけられている。
「へいらっしゃい!」
恐る恐る暖簾をくぐると威勢よく出迎えてくれたのは―――――鈴の父親だった。
「おう、なんだ仕種じゃねえか。久しぶりだな」
気前よく、気さくな笑顔で対応する鈴の父。その屈託のない笑みはあの時と何も変わっていなかった。
「ええ。お久しぶりですね」
「おうおう、こんな美人さんになっちまってよ。ま、適当な場所にかけな。注文だが酢豚でいいよな?」
促される通り、適当な場所に座る。私はここに来るとよく酢豚を食べていた。だからって人の注文を勝手に酢豚にするのはどういうものなのか。別に構いませんけど。
「ええ。少し、トイレに行ってきます」
そう言って席を立ち、トイレに向かう。
ドアを閉めて、鍵もかけると携帯電話をかける。発信相手は、鈴だ。
プルル、プルル、プルルと長めのコールの後にブツと繋がる音が入る。
「もしもし、鈴ですか?」
『何よ、仕種……。せっかくの休みだから寝てたのに……』
鈴からの返事は眠たそうな声だった。さては今日が休みだからって昨日夜更かしをしていたな、ぐうたらな奴め。
「鈴、すぐに鈴の前の家のところまで来なさい。説明は後でするので」
『は? ちょ、どういうことよ。今更、そんな場所に行っても……』
「いいから来なさい。後悔したくなかったら来なさい。分かりましたね? 絶対に来なさいよ」
そう最後に念を入れて伝えると、電話を切る。そして何もなかったかのようにトイレを出る。
店を見渡すとタイムリーな時間が外れてるからか客もほとんどいない。一通り終わって私が来たという感じだ。
「ほらよ、酢豚お待ちどう」
酢豚をおじさん直々に手渡される。相変わらずここの酢豚は美味しそうだ。
「ったくよ中学に入ると同時にパッタリだったからな。ちょうど三年振りか、お前さんもお姉さんに着いて行ってたのかい?」
「まあ、そうですね……」
「てことは三年間フランス暮らしかよ。どうだったんだ? 向こうの暮らしは」
「土が合わないっていうか。やっぱりこっちの方が落ち着きます」
答えながらも酢豚を口に運ぶ。
「そうか。やっぱ自分の国が一番だよなあ」
そうしみじみと呟くとおじさんはうんうんと一人で頷く。
その後もおじさんとやり取りをしながらも箸を進める。味わうのも忘れずに。
そして皿も空になり、食事の時間は終わりを迎える。
「ごちそうさまです。確かお代は……」
「ああいいよ。帰国祝いと入学祝いだ。タダにしといてやるよ。その代わり、」
「鈴を頼む、でしょう?」
「ま、その通りだ。これからもアイツとよろしくやってくれ」
「勿論ですよ。末永く付き合っていきますよ」
席を立ち、店を後にする。外は梅雨に入る前の夏日が眩しく輝いている。
さて、鈴と顔を合わせると何を言われるか分からないので別ルートで帰りますか。
side:凰鈴音
「あー、もうなんなのよ仕種の奴……」
眠りを邪魔された私は私服に着替えて早足で指定された場所に向かっていた。こう言う時にISが使えたらどんなにいいかと思うのだが、そうするとIS条約に抵触してしまうためしない。
それに代表候補生という立場でそんなことで問題を起こせば代表候補生から外されてしまうかもしれない。下手をすれば国際問題だ。
とにかくこんな太陽の照り付ける真昼間にあんな場所に呼び出すとはいい根性をしてる。出会い頭に文句の一つでも言いつけてやらなければ気が済まない。
あの告白以降、最初の頃こそ意識してしまいうまく喋れなかったが一月という時間は元通りに直すのに十分な時間だった。
今は以前と同じように仕種と会話出来るようになった。一夏のコーチングも一緒に出来る程にだ。
しかし、仕種は振り向く気配はない。一夏のように鈍チン過ぎて気付かないのと違って、仕種の場合知っていて断っているから辛い。それが仕種も私のことを嫌いだから断っているのではないから尚更だ。
しかし問題はない。最低、三年は一緒の学校にいれるのだから長期戦を予定してそのうちに……、
「え」
目の前のものに目を奪われ思考が飛ぶ。
一瞬、目を疑った。けれど、私の視覚情報に間違いはなくあれはそこにある。
「……なんで」
その言葉が口に出た瞬間、早足がダッシュへと自然に変わる。
なんで、なんで、なんで……!
「おう、いらっしゃ……って鈴!?」
「なんで店やってるのよ! あの時、店畳むって言ってたじゃない!」
息も切れ切れに出会い頭に大声で怒鳴り付けた。父さんに。
一瞬、面食らってぱちくりしていたがすぐに自分のしている前掛けを外す。
「文句は後だ。ほら」
そういうと前掛けを投げて寄越す。
「ちょ、これってどういう……」
「仕込みの手伝いだ。早くしねえと夜の分が終わらねえから頼んだぞ」
「あ、あたしは学園に帰んないと拙いんだって!!」
「じゃあ尚更だ。ちゃっちゃとやってさっさと帰れ」
そういうと奥に厨房の奥に引っ込んでいった。
嵌めやがったわね。仕種の奴……。
けれど、心は不思議とムカつくけど穏やかなものだった。
「こうやって二人で厨房に入るもの久しぶりだな。まるまる一年振りか」
久しぶりの親子の会話のためか、どこかぎくしゃくしている。
「ねえ、どうしてまた店やろうって思ったのよ」
「まあ、な。あの時はあいつとお前とでやってこそ意味があると思ってたから、それが出来なくなった以上やる意味はないって思ってたんだけどよお……」
そういう父さんの言葉はどうも歯切れが悪い。
「あの後考えたけどよ。やっぱ駄目だな、動いてなきゃ嫌な方へ嫌な方へって頭ん中が勝手にいっちまう。だから考えてる暇を与えないためにバイト数人雇ってまたここに店を構えたって訳よ。つっても店の手伝いしてた鈴に比べればあいつらもまだまだひよっこだけどよ」
そういうとニカリと笑みを浮かべる。
母さんは離婚して少し変わってしまったけど、父さんは離婚しても父さんのままだった。
なにより父さんがまた店をやってることが嬉しかった。
けれど、ここにもう一人足りない。
「どうして、母さんと別れちゃったの?」
「俺としてはお前にこのまま店の暖簾を継いで欲しかったさ。その内に俺の認めるような男に出会って店継いで……。そんな平凡な幸せでも俺はアリだと思ってたな」
それは分かる。ISの代表候補生になってない時のあたしならそんな考えも持っていた。もっとも、一緒に仕種も中華料理やらせるなんて発想は今、父さんに聞くまでなかったけど。
「けどあいつもISに乗れた方がお前の将来のためだって譲らなくてな。確かに代表候補生って肩書きはつくだけで将来にやれることの幅はかなり広くなるからな」
それも分かる。ISの代表候補生になって初めて分かる数々の優遇。女尊男卑の世の中、その象徴たるISの代表候補生となれば受ける恩恵も大きい。
母さんはその恩恵を娘が受けられるのであれば、受けさせるべきだと考えたのだろう。
平凡で有り触れた幸せとエリートで約束された幸せ。
「そこで意見が衝突して女房がそこで癇癪起こして、じゃああんたとは離婚だって。情けない話だが俺とあいつの終わりはそんなもんよ」
父さんはそう簡潔に締めるが、そこに至るまでにはあたしの知らないようないざこざがあったのだろう。両親とも私を思って考えていてくれたのにどうしてこんな結末になってしまったのだろう。
そんな乾いた自虐的な笑みを浮かべる父の背中がいつもより小さく見えた。
「ねえ、父さん」
「なんだ鈴?」
「家族って、難しいね」
「……ああ、そうだな」
そういうと静寂が訪れる。
一夏の家も、仕種の家も。聞く話によると箒の家も、セシリアの家も。どの家も問題を抱えている。
「なあ、鈴。あいつの電話番号分かるか?」
「分かるけど。どうするつもりなのよ」
「もう一度、話し合おうと思ってな。お前はどうしたいよ」
「あ、あたしは……また、三人で暮らしたい。三人でお店をしたい」
「そうか。じゃあ、ISの代表を引退したらそうするか」
それは未来の約束。十年先か、二十年先か、はたまた三十年先か。
「うん!」
だけどその日まで父さんはここで待っててくれる。
その日がいつになるかは分からないけど。
いつか、三人でまた……。
「にしてもお前も成長しねえなあ。あいつは人並みにはあるのに。ホントにあいつの娘か?」
「ど、どこ見てそんなこと言ってんのよ!? これから成長するからいいでしょ!! 変態オヤジ!!」
* * *
東湖です。
第二巻分に突入しました。一夏が弾の家に遊びに行ってるそんな裏側の話です。
鈴の家族問題ってちょっとくらい進展させてもいいと思うんですよね。というわけでそんな捏造日常回でした。
ちょっとでも心温まってくれれば幸いです。
この後に及んで新キャラを突っ込むとかどんだけ首絞めてるんだ自分。
まあ、書いてるうちに元ネタとは性格が大きくかけ離れてしまいましたけど。