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No.31710の一覧
[0] 【短編ネタ】なのはとシュテル[この小説はPCから投稿されています](2012/02/25 12:47)
[1] フェイトとレヴィ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/06 22:47)
[2] はやてとディアーチェ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/11 09:35)
[3] 三人娘とマテリアルズ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/20 10:28)
[4] なのはとシュテル2[この小説はPCから投稿されています](2012/10/20 16:34)
[5] フェイトとレヴィ2[この小説はPCから投稿されています](2012/12/15 09:01)
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[31710] はやてとディアーチェ
Name: この小説はPCから投稿されています◆955184bb ID:c440fc23 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/11 09:35
「今日も疲れたな~」

 ベッドに横になり九歳とは思えないようなセリフをぼやく少女。言っておくがまだ時間は昼前で決して一日の終わりなどではない。彼女の名は八神はやて。夜天の魔導書の主にしてこの家の主人である。今日も通院している病院での歩行訓練―――所謂リハビリを終えて自宅へと戻ってきたのだ。
 担当医である石田先生が驚く程の頑張りを見せるぐらいはやては早く歩けるようになる事を熱望していた。だが、九年以上も動かされた事のなかった彼女の足はかなりの強者。いかにはやてがシャマルの回復魔法で癒され、子供とは思えない程の意志力でリハビリに励もうとも早々簡単に歩けるようにはなれない。

 そんな状況でも一切めげる事なくリハビリを頑張っているはやて。そんな彼女の声だが、実は先程から少し振動している。その理由は彼女の足元にあった。

「まだ今日は始まったばかりではないか。それに我にこのような事をさせておいていい気なものだ」

 はやての足をマッサージする同じ背丈で同じ顔の少女―――ディアーチェがいたのだ。あの戦いではやてとリインに敗れ行き場を無くしたディアーチェ。そんな彼女をはやては家族として迎え入れようとした。
 当然ディアーチェはそれを拒否した。王である我に情けは無用と。だが、はやてはその性格をおぼろげにだが掴んでいたのだろう。ディアーチェへこう言って八神家で住むように仕向けたのだ。

―――そうか。ならこうしよか。これは挑戦や。わたしはシグナム達から主言われて慕われてる。そっちが王様や言うんなら、シグナム達やわたしがそう思うように出来るか?

―――……そういう事か。よかろう。ならば我自ら貴様ら塵芥共を心服させてくれる。ついでに子烏。貴様の住み家も奪ってやるわ。

―――なら決まりやな。あ、それとわたしの名前は八神はやてって言うたやろ。さっきわたし達に負けたんやから子烏って呼ぶ権利は消滅な。それが嫌なら王様は子烏に負けた言う事になるけど?

―――ぐっ……意外と言うではないか。まぁよい。我は王だ。器も大きい。それぐらい認めてやろう。……これでもう今回の勝負結果については二度と口にするでない。

 そんなやり取りを経て、ディアーチェは八神家へとやってきた。はやて達を自分へ平伏させるために。しかし半年以上経過した現状を見れば分かるように、その目的は達成されるどころかむしろディアーチェの方が八神家に染まりつつある。
 未だにシグナム達の事は下郎などと呼ぶ事もあるが、態度の方は来た当初に比べれば少し柔らかくはなったし家の手伝いなどもしているのだ。それもあってシグナム達もディアーチェの言動を気にする事はなく過ごしている。はやてにもそうしてくれと言われている事もあり、ヴィータ以外はディアーチェをどこか微笑ましく見ているぐらいだ。

 そんなディアーチェとはやての関係は今や完全に姉妹と言える。そのキッカケとなったのはリインが旅立った日の事だ。はやてはシグナム達へは普段通りに振舞いながらもディアーチェだけにはつい本音を漏らした。もうリインには会えなくなってしまったと。
 それを聞いてディアーチェがはやてへ掛けた言葉から始まった会話。それが二人の距離を大きく変える事となったのだから。

―――まったくもって愚かな主よ。こんな者を主と仰いでいたとはな。管制人格も報われぬわ。

―――どういう意味や。わたしを怒らせたいんか。

―――ふん、ならば教えてやる。はやて、貴様は何か勘違いしておらぬか? あの者は消えたのではない。旅立ったのだ。ならばそれを何故悲しむ必要がある? いつかは貴様も行く旅だ。つまり時が来れば再会出来る。

―――……そう、やろか。リインはほんまにそないな事考えてくれとったかな?

―――貴様、それでも八神はやてか? 我と初めて相対した際、貴様はあの者達を馬鹿にした我へ何と言った? 自分はどれだけ馬鹿にされようとも構わぬ。だが家族を馬鹿にする事だけは許せんと、そう確かに言い放ったはずだ。ならば家族を信じよ。あの者は貴様と必ず再会出来ると思って旅立ったのだと。

 その言葉にはやてはしばらく呆然となるも、ディアーチェの気持ちを理解し嬉しそうに頷いた。この日を境に、はやてはディアーチェの事を心の底から家族と思えるようになる。それ以来、はやてはディアーチェの事をディアという愛称で呼ぶようになった。そして今のようなやり取りをするまでにディアーチェと打ち解けたのだ。

 ディアーチェははやての足を解すようにマッサージを続ける。それがやけに様になっているのには訳があった。はやてがリハビリを始めた頃から、彼女は担当医である石田先生に頼んで足のマッサージ法を学んでいたのだ。それをはやてを心服させるための手段として使おうと考えて。
 しかし、それが表向きの理由であると石田先生は考えていた。ディアーチェが少しでもはやての助けになってやろうとしていると思っていたのだろう。まぁ、結局習得し終えたその日に、こうしてはやてを癒すため行う事になっているのだからその想像は正しかった事になるのだが。

「あー、そこ気持ちええなぁ。それに、させるも何もディアが帰りの勝負に負けたからや。わたしは何も悪びれる事はない」

「黙れ! あのような姑息なやり方があるか! 全部返す言葉返す言葉を”す”で終わるものばかりにしよって……」

「姑息やない。立派な戦法の一つや」

 リハビリの付き添いには、リインが旅立った今は基本ディアーチェだけが行く事になっている。そしてその帰り道で必ず二人は決まってある対決をする。それはしりとり。いつも尊大な態度を取り相手を見下すようなディアーチェだが、勝負を挑まれれば受けない事はなくむしろ望むところとばかりに応じてくれるのだ。
 そこに彼女がはやてを基にしている影響が出ている。孤独に九年間を過ごしていたはやてはそれを受け入れながらもどこかで他者の温もりを求めていた。そんな頃の心境がディアーチェにも残っているのだろう。故に他者を見下しながらも求められると嬉しいのだ。まぁ、それを素直には出さないのが彼女らしさであり、また愛すべき部分でもある。

 はやての返答にディアーチェは悔しげに唸るものの、これ以上反論するのは無意味と判断して黙り込んだ。

(迂闊であったわ。珍しく敗者には罰を与えようなどと言い出した時点で気付くべきであった。最初からはやては我を罠に嵌めるつもりだったとは)

 いつもは何も罰など設けず、ただしりとりをするだけ。それがディアーチェがマッサージを習得したと告げた瞬間、はやてがこう告げたのだ。しりとりで勝負をし、自分が負けたらディアーチェを王様として従う。ただし、ディアーチェが負けたら自分をマッサージしてくれと。

「何や幸せな気持ちになってきたわ。ディア、もうちょう強くお願い」

「命令するな! これはあくまでも罰故仕方なくしている事を忘れるでないわ。…………ふん、これでよいか?」

「おー、さすがやなぁ。ディアは何でも上手やから凄いわ」

「それでおだてているつもりか。だとしたらもっと世辞を学ぶのだな。今のままでは鉄槌とて騙せんぞ」

「ヴィータって呼んだって。それとお世辞の勉強は必要ないわ。騙す事なんてせんもん」

 そんな他愛もない雑談をしながら二人は過ごす。その間もディアーチェははやての足をマッサージし続ける。途中ではやてがもう止めてくれていいと言ったにも関わらず、ディアーチェはマッサージを止めようとはしなかった。その理由は「確かに負けたらマッサージをするとの条件を我は呑んだ。だがそれはするだけであり、貴様の言いなりになると言う事ではない。ならばマッサージを止めるも続けるも我の勝手であろう。貴様の指図は受けん」とのものだった。

 その頑固さというか妙な自分勝手にはやては苦笑しつつも嬉しそうに笑みを見せ、そういう事ならと好きにさせる事にした。やがてマッサージも終わり、やや疲れたような顔をディアーチェがする。なんだかんだで教えられた通りの事を全て施したからだ。
 それを目ざとく見つけたはやては起き上がると小さく手招きをしてディアーチェを自身の前へ呼び寄せた。それを不思議に思いつつもはやての前へ座るディアーチェだったが、どうもはやてはその体勢が不満のようで……

「あ、向かい合わせやなくて背中向けてくれへん?」

「背中をだと? 何をするつもりだ?」

「ええからええから」

 言われるままはやてへ背を向けるディアーチェ。すると、その肩が優しく揉まれる。何をと思うディアーチェへはやてが楽しそうに告げる。これはお礼だと。それにディアーチェは大きくため息を吐いた。これでは自分のした事は罰ではなく純粋な厚意になってしまうと思ったからだ。
 故にはやてへその事を指摘しようとしたディアーチェへ、その事を読んだようにはやてが先んじて口を開いた。

「わたしがディアへ与えた罰はマッサージしてくれる事。でも、そのわたしがもうええって言ったのにディアは続けてくれた。これはそれに対してのお礼や」

「あれは我が自らの意思で勝手にやった事だ」

「せや。やからこれもわたしが勝手にやりたいお礼なんよ。これならええやろ?」

「…………好きにせよ。もう一々相手をするのも疲れるわ」

「おー、それをまさかディアに言われる思わへんかった」

「ふん、どうせ我の相手の方が疲れるとでも言うのだろう?」

「あはは。ん、でもな、わたしはその疲れならいつでも大歓迎や。その疲れがなくなる方が…………わたしは嫌や」

 途中でふとリインの事を思い出して言葉に詰まるはやて。そこから繋いだ最後の言葉と共に少しだけ、ほんの少しだけ両手に力がこもる。それを感じ取り、ディアーチェは微かに視線を後ろのはやてへ動かした。しかし何かを言う事もなくすぐに視線を戻すと、手を止めているはやてへこう告げる。

「そんな事はどうでもよいが、貴様の礼とやらはこれで終わりか? ならば手を放せ」

 その言葉ではやても我に返ったのか、慌てて再度手を動かし始める。ディアーチェの声はどこか不機嫌だったからだ。その事が影響したのだろう。その後は会話もなく、ただ時計が時を刻む音のみが室内に響いていた。
 気まずささえ感じる沈黙の中、はやてはどうすればディアーチェの機嫌を良くできるかを考える。自分が何で機嫌を損ねてしまったのか。そう思い返した時、浮かんだのは自分と違ってディアーチェは二人での会話をそこまで好ましく思っていないのではとの考えだった。

 確かに仲良くはなった。親しくなり愛称での呼び方も許され、既に家族と呼んでもおかしくない関係にもなった。しかし、そう思っていたのは自分だけだったのではないのか。そんな考えがはやての中に生まれる。それが不安となるのにそう時間はかからなかった。やがてはやての手は止まり、力なくディアーチェの肩から離れた。

「……もう終わりか?」

 ディアーチェの確認にはやては無言で頷くしか出来ない。背中を向けているディアーチェへそんな返事をしても分かってもらえないはずなのにだ。だが、ディアーチェはその返事に対して文句を言うでも、ましてや再度問いかけるもせず、はやてへこう言い放ったのだ。

―――何を勘違いしておるかしらんが、我がここへ来た目的を忘れるな。我は貴様ら塵芥共を心服させるためにここにおる。それが叶うまで解放されるなどと思うでないわ!

 その言葉に思わず顔を上げるはやて。そこにはディアーチェの怒った顔があった。その感情の意味を考え、はやては言葉を失った。ディアーチェの機嫌を損ねた理由。それは自分がリインの事を思い出してディアーチェもそうなるのではと考えた事だと。
 そして、それを理解すると同時にはやては分かったのだ。ディアーチェは自分へ決していなくなる事はないと告げてくれたのだと。家族を信じよ。あの時ディアーチェが自分へ言い放った言葉を思い出して、はやては静かに言葉を紡いだ。ごめんなさい、と。それにディアーチェは何か言うでもなく、分かればいいとばかりに踵を返して部屋を後にした。

 一人残されるはやて。だが、その心は寂しくなかった。想いはもう繋がっていた。そう彼女は思えたからだ。自分が抱いている感覚を相手も抱いてくれている。なら、もう何も怖くない。旅立ったリインにはいつか必ず会えるし、残っている家族達はずっと傍にいてくれるのだから。
 そう考えた瞬間、はやては知らず微笑んでいた。この気持ちをもし自分だけでなくシグナム達も抱いているのなら、ディアーチェは既に目的を果たしているのだから。八神家全員を心服させてみせるとの挑戦。それはもう達成されている可能性が高い。そう思ったはやては苦笑しながら呟いた。

―――もうわたしは完全にディアに参っとるなぁ。シグナム達はどうか知らんけど何や同じな気ぃするし…………ディアには絶対言わんで黙っとこか。

 そう呟いてはやては時計へ目をやった。そろそろ昼時。末っ子のヴィータがお腹を空かせて帰ってくる頃だ。そう思ってはやては笑みを浮かべながら慣れた動きで車椅子へと乗った。そして部屋を出てキッチンを目指す。きっと自分が来るのを待っているだろう優しい王様と昼食を作るために……




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はやてとディアーチェでした。ゲームだと確かリインは半年ぐらいはやてと生活出来るみたいな描写か設定があったので、ここでもそれを使わせてもらいました。

何とか三人分書けました。これも皆さんが感想をくれたおかげです。本当にありがとうございます。ご期待に添えたかどうか分かりませんが、楽しんでもらえれば幸いです。


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