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No.31710の一覧
[0] 【短編ネタ】なのはとシュテル[この小説はPCから投稿されています](2012/02/25 12:47)
[1] フェイトとレヴィ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/06 22:47)
[2] はやてとディアーチェ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/11 09:35)
[3] 三人娘とマテリアルズ[この小説はPCから投稿されています](2012/03/20 10:28)
[4] なのはとシュテル2[この小説はPCから投稿されています](2012/10/20 16:34)
[5] フェイトとレヴィ2[この小説はPCから投稿されています](2012/12/15 09:01)
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[31710] なのはとシュテル2
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Date: 2012/10/20 16:34
「ごめんねシュテルちゃん! このお詫びはちゃんとするからっ!」
「そんな事を言っていないで早く行きなさい」

 玄関で慌ただしく靴を履きながら申し訳なさそうな声を出すなのは。そんな彼女にややため息を吐きつつシュテルは下を向いた。場所はミッドにある高町家。機動六課解散後になのはが住居とした一軒家だ。住人はなのはと親友であるフェイト、そしてもう一人いる。それはシュテルの横でなのはを見送っている人物。

「なのはママ行ってらっしゃ~い」

 それはなのはの義理の娘となったヴィヴィオ。今日、シュテルはなのはの招待を受けてここを訪れていた。フェイトは次元航行艦付きの執務官のため長期に渡りいない事が多い。そのため、なのはがシュテルにもヴィヴィオと親しくなってほしいと思った。加えて久しぶりに二人で話をしたいとも考えて招待したのだ。休みの日はヴィヴィオは昼寝をするため、積もる話はその時にと考えて。
 だが、なのはとシュテルがヴィヴィオへ出会いや昔の思い出をいくつか話し終え、一先ず三人で昼食を取った際なのはへ付近の陸士隊から応援要請が入ったのだ。詳しい事をシュテルは知らない。いや知ろうとしなかった。彼女にとって重要なのは、そうなった時になのはがどういう選択をするかだけだったのだから。そして結果は予想通り。彼女はそれに応じたという訳だった。

「行ってきます。あ、ヴィヴィオ? ちゃんとシュテルちゃんの言う事聞くんだよ?」
「はーい」
「よろしい。シュテルちゃん、留守番お願いね」
「不満はありますが仕方ありません。何を以って詫びとさせるか考えながら貴方の帰りを待つとします」

 ドアを開けて走り出すなのはの背へそう言い放つシュテル。その言葉に苦笑を返してなのはは最後に一度だけ手を振ると玄関から見えなくなった。静まり返る玄関でシュテルはちらりと視線を横へと向ける。するとヴィヴィオと視線がかち合ったのかその顔が微かに驚きを見せた。
 しばらく見つめ合う二人。と、そこでシュテルが何かに気付いてその場から動いた。そして彼女は開いていたドアを閉めるとリビングへと向かって歩き出す。ヴィヴィオはその後ろを雛鳥のようについていく。

「ね、シュテルさん」
「何ですか?」
「シュテルさんはなのはママのお友達なの?」
「友人……ではないでしょうね。なのははそう思っているかもしれませんが、私はそう思っていないので」

 シュテルの言い方にヴィヴィオは小首を傾げた。彼女から見たなのはとシュテルの先程のやり取りの雰囲気は間違いなくフェイトなどと近いものがあったからだ。それになのは自身がシュテルをそう言っていた事も関係している。家族のようなものなのだとさえヴィヴィオへ言って聞かせた事もあるのだから。
 二人はそのままリビングのソファへと腰掛ける。隣り合うように座るシュテルとヴィヴィオ。会う事自体は初めてではない。あの六課襲撃の際に少しではあるが話もしている。何よりもシュテルは幼い頃のなのはとそっくり。ヴィヴィオにしてみれば不思議な存在なのだ。仲良くなりたい。そう彼女が思うのもしょうがない程に。

「じゃ、シュテルさんにとってなのはママはどういう相手?」
「どういう相手とはまた難しい事を。そうですね。強いて言うならば……似て非なる存在、でしょうか」
「にてひなるそんざい?」
「似ているけれど違う。動物などが分かり易いでしょう。見た目は同じ犬や猫でもその行動パターンは異なります。それと同じようなものと考えてくれて結構です」
「う~ん…………なのはママとシュテルさんは見た目はそっくりさんだけど、好きな事とかや嫌いな事とかが違うって事?」
「それで構いません。どうやら貴方はレヴィよりも賢いようです。おかげで幾分私の肩の荷も軽くなりました」

 ヴィヴィオの言葉に若干感心するような声を返してシュテルは薄く笑う。それが自分を褒めているものだと察してヴィヴィオも微笑んだ。その笑みがシュテルにはなのはと重なる。血の繋がらない母娘。まだ共に生活を始めて一年と経っていないにも関わらず、既になのはに似てきている事を悟ってシュテルは内心で呆れると同時に感心する。

(なのはの影響力は相変わらずのようです。こう言ってはなんですが、ペットは飼い主に似るという事なのでしょうか?)

 笑顔のヴィヴィオを眺めながらシュテルは苦笑。きっと目の前の少女は今自分が何を考えたかを予想出来ない。もしそれを知ればどんな顔をするのだろうと、そう考えてシュテルは微かに微笑む。ある事を思い付いたのだ。それはヴィヴィオが憧れているであろうなのはに関する事。彼女が知らない頃の話をしようと考えたのだ。

「ヴィヴィオ、なのはの昔話を聞きたくないですか?」
「聞きたいっ!」

 その問いかけにヴィヴィオが頷かぬはずはなかった。こうしてシュテルは笑みを浮かべる。それはそれはとてもいい笑顔を。なのはの親としての立場を危うくさせるかもしれない話もしてやろう。そんな事さえ思いながら彼女は話を始めた。まずはあの出会いから。互いの力をぶつけ合い、倒すべき敵が気が付けば共に歩む存在へとなる最初のキッカケを。
 シュテルは気付かない。その話をしている間、自分がどんな顔をしていたかを。シュテルは気付けない。その話を聞いている間、ヴィヴィオがどのような顔をしていたかを。ただ彼女は思い返しながら前だけを見て話し続けたのだ。まるで遠い日々を懐かしむようにただ前だけを見つめて。

 そんな話の終わりは唐突にやってくる事となる。その目撃者となるように玄関のドアが開きなのはが帰ってきた。その手には何かの箱らしき物が握られている。おやつ兼詫びの品としてケーキを買ってきたのだ。彼女は思ったよりも時間がかかったためか手元の時計を見て小さく息を吐く。と、そこで聞こえてくる話し声に気付いてリビングへと向かう。その顔にどこか嬉しそうな笑みを浮かべながらなのはは静かに息をひそめてリビングへと近付いていく。そして気付かれぬようリビングの中を覗き込んだ。

 そこで彼女が見たものは、ソファに座って淡々と話し続けるシュテルと舟を漕いでいるヴィヴィオの姿。シュテルの声が子守唄になったのかヴィヴィオは穏やかな表情をしており、今にもそのまま横にいるシュテルへ倒れてしまいそうだった。

(あー、これはさすがにそろそろシュテルちゃんも気付くなぁ)

 一人小さく苦笑しつつなのははリビングの様子を眺めてそっとその場を離れた。その直後、彼女の予想通り、ヴィヴィオは遂にシュテルの体へもたれるように倒れた。その重さでシュテルもやっとヴィヴィオが眠った事に気付き話を止めて視線を動かす。天使のような寝顔で安らかな寝息を立てるヴィヴィオをしばし眺めた彼女は優しい笑みを浮かべる。いつか見たなのはの寝顔に似ていたのだ。

 そして何か上にかけてやろうと動こうとして―――シュテルはため息を吐いた。

「これでは動けませんね」

 下手に動けばヴィヴィオが目を覚ましてしまう。そう判断しシュテルはどうしたものかとヴィヴィオの寝顔を見つめながら思案しようとしたところで背後から声を掛けられた。

―――お留守番ありがとう、シュテルちゃん。

 なのはの声にシュテルは首だけ動かして彼女を見る。なのはの手には小さなタオルケットがあった。ヴィヴィオの部屋から取ってきたのだ。なのははそれを静かにヴィヴィオへと掛けようとして、何かに思い当ったのかタオルケットをシュテルへ渡した。そして彼女はヴィヴィオをそっと抱き上げると、それを見たシュテルの顔が一瞬だけ何故か曇る。
 なのははそれに気付くも何か言う事なくソファへヴィヴィオをゆっくりと寝かせた。するとその動きを待っていたかのようにシュテルが持っていたタオルケットをヴィヴィオへと掛けた。起きる気配がない事を確認した二人はそっとソファから離れるとテーブルへと移動する。テーブルの上にはなのはが持っていた紙箱が置いてあった。

「これは?」
「うん、とりあえずのお詫び……かな? ちゃんとしたのはシュテルちゃんの希望を聞いてからにしようと思ってね」
「成程。で、これはさしずめヴィヴィオへの詫びとおやつを兼ねた物ですか。たしかにこれならばあの子は喜んで許すでしょう」
「あ、やっぱりお菓子だって分かる?」
「ええ、それもケーキの類です。もしやとは思いますが、貴方は私が普段どこで過ごしているかをお忘れですか?」
「あー、そうだったね。嗅ぎ慣れてるか、この匂いは」

 シュテルのさらっとした言葉になのはは苦笑いを浮かべると紅茶を準備し始める。それを受けてシュテルが皿を出してケーキを箱から移し、ティータイムの支度を整えた二人は静かに向かい合う形でテーブルへと着いた。
 なのははベイクドチーズケーキでシュテルはガトーショコラの乗った皿が置いてある。それを見てなのはが嬉しそうに微笑む。彼女が何も言わずとも食べようと思って買ったケーキが用意されていたからだ。

「私の好み覚えててくれたんだ」
「いえ、私はショコラが食べたかっただけです。残りはショートケーキとチーズケーキなら、ヴィヴィオは前者を選ぶでしょうから残った物を貴方へ出しただけにすぎません」
「またそうやって誤魔化す~」
「貴方こそ忘れていませんか? 私はチーズケーキも好物なのですよ」
「でもベイクドよりもレアチーズ派だよね」
「……そうです」
「だからガトーショコラを買ったんだよ。シュテルちゃんがそれを食べると思って、ね」

 なのはのしたり顔に恥ずかしくなったのかシュテルは若干照れながらフォークを手に取った。これ以上話してはなのはの思うつぼだと思ったのだろう。そんなシュテルの反応に笑みを隠す事が出来ず、なのはは微笑みを浮かべつつフォークを手にした。互いにケーキを一口だけ口へ運ぶと目を閉じてその味を確かめるように咀嚼する。

「……どうです?」
「……一般的には及第点、かな」
「それが妥当なところでしょう。母さんのケーキを基準にすると大抵は落第となりますから。まあ強いて言うならもう少し甘みを抑えてくれると好みです」
「こっちはちょっとチーズの癖が強いなぁ。それがいい人にはいいかもしれないから一概に駄目とは言えないんだけど」

 共に一流パティシェだった桃子の味をよく知っているためか無意識に洋菓子を批評してしまう二人。それでも表情は共に笑みを浮かべている。そう、ちょっとした懐かしさを感じる会話だったのだ。まだなのはがミッドへ引っ越す前。二人は桃子から新作ケーキの試食を頼まれる事があり、その際も今のような事を言い合っていたのだから。
 互いに思い出し笑いを浮かべ会話しつつケーキを口へ運ぶ二人。その声も心なしか弾んでいる。あの頃に戻ったかのように互いの近況を話し、他愛もない事で笑い、呆れ、同意する。と、互いにケーキを食べ終えたところでなのはがこんな事を切り出した。

―――次のお休みに二人で菜の花畑に行かない?

 その突然の申し出にシュテルは不思議そうな表情を返す。一体何故急にそんな話をとの気持ちがそこには出ていた。なのはもそれを分かったのだろう。首を傾げる彼女へその理由を話した。実家を出る時に言った約束を果たしたいのだと。

「実はいい場所をユーノ君に教えてもらったんだ。お弁当作ってさ、そこへ一緒に行こうよ」
「そうですか。ならば私ではなく彼と行った方がよいのではないですか?」
「もうユーノ君とは一緒に行った事があるもん。一月くらい前かな? ヴィヴィオと三人で」
「そうですか」
「うん」
「……ヴィヴィオはどうするのです? 一人で置いて行くのもどうかと」
「大丈夫。平日ならアイナさんに来てもらえるし、そもそもヴィヴィオには学校があるから夕方までに帰ってくれば平気だよ」

 シュテルの反論を封殺するかのように言い切るなのは。それにシュテルも断る事は出来ないと思って小さく息を吐く。それが了承の証と受け取りなのはは笑う。だがある事を狙って彼女はシュテルへ確認を取った。

「ね、シュテルちゃん。一緒に行こうよ、菜の花を見に」
「……分かりました。行きましょう、菜の花見物へ」

 その瞬間、なのはが一際嬉しそうに笑みを見せる。シュテルが口にしたある単語。その響きがその顔を綻ばせたのだ。すると、そんな彼女へシュテルがこれ見よがしに大きなため息を吐いた。それに疑問符を浮かべるなのはへシュテルは呆れ気味にこう告げる。これで満足か、と。その問いかけを誘いに応じてくれた事かと思ったなのはがやや不思議そうに頷くのを見て、シュテルはどこかしたり顔で笑みを浮かべた。

―――まったく、そこまでして私に名前を言わせたいのですか。貴方も中々幼いところが消えませんね。

 そう、シュテルは気付いていた。なのはが何を思って先程の提案をしてきたのかを。とはいえ、それに気付いたのはなのはが再度の確認をしてきた時。これまでの付き合いでもう自分が応じたのをなのはも理解しているにも関わらず敢えて確認した事に不自然さを感じたのだ。
 なのでシュテルはなのはの狙いに気付き敢えて乗ってやった。ケーキの時の借りを返すために。なのははシュテルの言葉で呆気に取られた顔を見せていたが、それがゆっくりと嬉しそうな笑みに代わる。今度こそシュテルはその意味に気付けなかった。自分が分かっていて乗った事が嬉しいと言う事での反応ではないと分かっているからだ。何かそれ以外の理由があってなのはが喜んでいる。それがシュテルには分からない。それ自体が既に答えだと知らずに。

「どうしたのですか? 何故笑っているのです?」
「うん、やっぱりシュテルちゃんは素直じゃないなって思ったから」
「……些か気になる言葉ですが今はいいでしょう。それでどうして喜ぶのです」
「だって、シュテルちゃんは私がなのはって言わせたいって分かって言ってくれたんでしょ? それって私をぬか喜びさせてやろうって事なんだと思うけど、出会った頃のシュテルちゃんならそんな事しないで絶対言わずにいようってするはずだから」

 その言葉にシュテルは完全に息を呑む。なのははそんな彼女をしっかりと見つめて微笑んだ。目の前の相手は自分の事をよく分かってくれている。しかも、普段は別にどうとも思っていないと言っているのにその内心ではちゃんと大切に思ってくれていた。それが今のやり取りだけでなのはにははっきりと伝わったのだ。
 それはシュテルも同様だった。いつの間にか自分は目の前の相手をよく理解するようになっていた。それだけではなく既に友人との枠さえ超えた扱いをしつつある。いつかなのは達高町家の者達から言われた家族同然との言葉を思い出し、シュテルは微かに目を伏せる。

―――知らぬ間に私はここまで貴方達に侵食されていたのですね。

 その声に込められたのは感心と寂寥の気持ち。もう自分は闇の欠片ではなくなっているという自覚の呟きだった。それを聞いてなのはは少しだけ、ほんの少しだけ悲しみを顔に滲ませる。本来あるべき姿や在り方ではなくなってしまった。それをシュテルがどこか悲しんでいる事を感じ取って。

「シュテルちゃん……」

 何て声を掛けよう。そう思ってなのはの言葉が途切れる。すると、その声を聞いてシュテルが伏せていた目を上げた。

「と、私が言うとでも?」
「え……?」
「成程、貴方は本当に騙されやすいようですね。先程の事は今の間抜けた顔を見れたので無かった事にしてあげましょう」

 そう言うとシュテルは残った紅茶を静かに飲み干してテーブルを立った。そして呆然となるなのはを置いて玄関へと向かうべくリビングを後にしようとして―――立ち止まって一言告げる。次の予定の日時指定を考えておくようにと。それに気の抜けた返事をなのはが返すとシュテルはそのまま玄関へと向かった。
 やがてドアが開く音が聞こえ、ヴィヴィオを気遣ったのかあまり音を立てずにドアが閉まる。その消えるような音がなのはの耳に届き、そこで彼女はゆっくりと笑い出した。勿論ヴィヴィオを起こさぬよう声を殺して。シュテルの最後の言葉。それがミッドへ旅立つ際の自分とかぶって聞こえたために。

―――……あー、もう。シュテルちゃんは本当に素直じゃないんだから。

 そう一人呟くなのはの目には、笑ったためなのか微かに光るものが浮かんでいるのだった。



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以前から読んでくれていた方、お久しぶりです。今回初めて読んだ方、はじめまして。今回からとらハ板へ移転させました。とは言っても本格的に書く訳ではないのでご了承ください(汗

映画の二作目が公開され、イノセントという新作もあり未だに終わる事のないなのはワールドにはただただ感心するばかりです。その影響も受け、久々に書いてみました。

……今回はほのぼのオンリーに出来たはず。


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