<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.34189の一覧
[0] 星の在り処(英雄伝説 空の軌跡【TS】)[けびん](2015/07/20 18:27)
[1] 01-00:ブライト家の兄妹(FirstChapter開始)[けびん](2015/04/01 00:03)
[2] 02-01:パーゼル農園の魔獣退治(前編)[けびん](2015/04/01 00:04)
[60] 02-02:パーゼル農園の魔獣退治(後編)[けびん](2015/04/01 00:05)
[61] 03-01:二つの冒険(Ⅰ)[けびん](2015/04/02 00:01)
[62] 03-02:二つの冒険(Ⅱ)[けびん](2015/04/02 00:02)
[63] 03-03:二つの冒険(Ⅲ)[けびん](2015/04/02 00:02)
[64] 03-04:二つの冒険(Ⅳ)[けびん](2015/04/02 00:03)
[65] 03-05:二つの冒険(Ⅴ)[けびん](2015/04/02 00:04)
[66] 04-01:終わらぬクエスト(前編)[けびん](2015/04/03 00:01)
[67] 04-02:終わらぬクエスト(中編)[けびん](2015/04/03 00:02)
[68] 04-03:終わらぬクエスト(後編)[けびん](2015/04/03 00:03)
[69] 05-00:兄妹、旅立つ(ロレント編エピローグ)[けびん](2015/04/03 00:04)
[70] 06-01:消えた飛行船の謎(Ⅰ)[けびん](2015/04/04 00:01)
[71] 06-02:消えた飛行船の謎(Ⅱ)[けびん](2015/04/04 00:02)
[72] 06-03:消えた飛行船の謎(Ⅲ)[けびん](2015/04/04 00:03)
[73] 06-04:消えた飛行船の謎(Ⅳ)[けびん](2015/04/04 00:03)
[74] 06-05:消えた飛行船の謎(Ⅴ)[けびん](2015/04/04 00:05)
[75] 06-06:消えた飛行船の謎(Ⅵ)[けびん](2015/04/04 01:15)
[76] 06-07:消えた飛行船の謎(Ⅶ)[けびん](2015/04/04 00:06)
[77] 06-08:消えた飛行船の謎(Ⅷ)[けびん](2015/04/04 00:07)
[78] 07-01:進撃、ブレイサーズ(前編)[けびん](2015/07/10 20:12)
[79] 07-02:進撃、ブレイサーズ(後編)[けびん](2015/04/05 00:02)
[80] 08-00:祭のあと(ボース編エピローグ)[けびん](2015/04/05 00:03)
[81] 09-01:導かれし者たち(Ⅰ)[けびん](2015/04/06 00:01)
[82] 09-02:導かれし者たち(Ⅱ)[けびん](2015/04/06 00:01)
[83] 09-03:導かれし者たち(Ⅲ)[けびん](2015/04/06 00:02)
[84] 09-04:導かれし者たち(Ⅳ)[けびん](2015/04/06 00:02)
[85] 09-05:導かれし者たち(Ⅴ)[けびん](2015/04/06 00:03)
[86] 09-06:導かれし者たち(Ⅵ)[けびん](2015/04/06 00:04)
[87] 10-01:マーシア孤児院放火事件(前編)[けびん](2015/04/07 00:01)
[88] 10-02:マーシア孤児院放火事件(中編)[けびん](2015/04/07 00:01)
[89] 10-03:マーシア孤児院放火事件(後編)[けびん](2015/04/07 00:02)
[90] 11-01:ジェニス学園の黒い花(Ⅰ)[けびん](2015/04/08 00:01)
[91] 11-02:ジェニス学園の黒い花(Ⅱ)[けびん](2015/04/08 00:01)
[92] 11-03:ジェニス学園の黒い花(Ⅲ)[けびん](2015/04/08 00:02)
[93] 11-04:ジェニス学園の黒い花(Ⅳ)[けびん](2015/04/08 00:03)
[94] 11-05:ジェニス学園の黒い花(Ⅴ)[けびん](2015/04/09 00:01)
[95] 11-06:ジェニス学園の黒い花(Ⅵ)[けびん](2015/04/09 00:01)
[96] 11-07:ジェニス学園の黒い花(Ⅶ)[けびん](2015/04/09 00:02)
[97] 12-01:ヨシュアとクローゼの大冒険(前編)[けびん](2015/04/10 00:01)
[98] 12-02:ヨシュアとクローゼの大冒険(中編)[けびん](2015/04/10 00:01)
[99] 12-03:ヨシュアとクローゼの大冒険(後編)[けびん](2015/04/10 00:02)
[100] 12-04:ヨシュアとクローゼの大冒険(おまけ)[けびん](2015/04/10 00:03)
[101] 13-01:学園祭のマドモアゼル(Ⅰ)[けびん](2015/04/11 00:01)
[102] 13-02:学園祭のマドモアゼル(Ⅱ)[けびん](2015/04/11 00:01)
[103] 13-03:学園祭のマドモアゼル(Ⅲ)[けびん](2015/04/11 00:02)
[104] 13-04:学園祭のマドモアゼル(Ⅳ)[けびん](2015/04/11 00:03)
[105] 13-05:学園祭のマドモアゼル(Ⅴ)[けびん](2015/04/12 00:01)
[106] 13-06:学園祭のマドモアゼル(Ⅵ)[けびん](2015/04/12 00:01)
[107] 13-07:学園祭のマドモアゼル(Ⅶ)[けびん](2015/04/12 00:02)
[108] 13-08:学園祭のマドモアゼル(Ⅷ)[けびん](2015/04/13 00:01)
[109] 13-09:学園祭のマドモアゼル(Ⅸ)[けびん](2015/04/13 00:01)
[110] 13-10:学園祭のマドモアゼル(Ⅹ)[けびん](2015/04/13 00:02)
[111] 13-11:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅠ)[けびん](2015/04/13 00:03)
[112] 13-12:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅡ)[けびん](2015/04/14 00:01)
[113] 13-13:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅢ)[けびん](2015/04/14 00:01)
[114] 13-14:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅣ)[けびん](2015/04/14 00:02)
[115] 13-15:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅤ)[けびん](2015/04/15 00:01)
[116] 13-16:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅥ)[けびん](2015/04/15 00:01)
[117] 13-17:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅦ)[けびん](2015/04/15 00:02)
[118] 13-18:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅧ)[けびん](2015/04/15 00:03)
[119] 13-19:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅨ)[けびん](2015/04/16 00:01)
[120] 13-20:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅩ)[けびん](2015/04/16 00:01)
[121] 13-21:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅩⅠ)[けびん](2015/04/16 00:02)
[122] 13-22:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅩⅡ)[けびん](2015/04/17 00:01)
[123] 13-23:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅩⅢ)[けびん](2015/04/17 00:01)
[124] 14-01:ルーアン最終攻防戦(前編)[けびん](2015/04/18 00:01)
[125] 14-02:ルーアン最終攻防戦(中編)[けびん](2015/04/18 00:01)
[126] 14-03:ルーアン最終攻防戦(後編)[けびん](2015/04/19 00:01)
[127] 15-00:海都夢譚(ルーアン編エピローグ)[けびん](2015/04/19 00:01)
[128] 16-01:漆黒の福音(Ⅰ)[けびん](2015/04/20 00:01)
[129] 16-02:漆黒の福音(Ⅱ)[けびん](2015/04/20 00:01)
[130] 16-03:漆黒の福音(Ⅲ)[けびん](2015/04/20 00:02)
[131] 16-04:漆黒の福音(Ⅳ)[けびん](2015/04/21 00:01)
[132] 16-05:漆黒の福音(Ⅴ)[けびん](2015/04/21 00:01)
[133] 16-06:漆黒の福音(Ⅵ)[けびん](2015/04/21 00:02)
[134] 16-07:漆黒の福音(Ⅶ)[けびん](2015/04/22 00:01)
[135] 16-08:漆黒の福音(Ⅷ)[けびん](2015/04/22 00:01)
[136] 16-09:漆黒の福音(Ⅸ)[けびん](2015/04/22 00:02)
[137] 16-10:漆黒の福音(Ⅹ)[けびん](2015/04/23 00:01)
[138] 16-11:漆黒の福音(ⅩⅠ)[けびん](2015/04/23 00:01)
[139] 16-12:漆黒の福音(ⅩⅡ)[けびん](2015/04/24 00:01)
[140] 16-13:漆黒の福音(ⅩⅢ)[けびん](2015/04/24 00:01)
[141] 16-14:漆黒の福音(ⅩⅣ)[けびん](2015/04/25 00:02)
[142] 16-15:漆黒の福音(ⅩⅤ)[けびん](2015/04/25 00:03)
[143] 17-01:ラッセル博士救出作戦(前編)[けびん](2015/04/26 01:10)
[144] 17-02:ラッセル博士救出作戦(中編)[けびん](2015/04/27 03:41)
[145] 17-03:ラッセル博士救出作戦(後編)[けびん](2015/04/28 06:55)
[146] 18-00:要塞始末記(ツァイス編エピローグ)[けびん](2015/04/29 06:22)
[147] 19-01:魁・武闘トーナメント(Ⅰ)[けびん](2015/04/30 00:01)
[148] 19-02:魁・武闘トーナメント(Ⅱ)[けびん](2015/05/01 09:11)
[149] 19-03:魁・武闘トーナメント(Ⅲ)[けびん](2015/05/02 07:35)
[150] 19-04:魁・武闘トーナメント(Ⅳ)[けびん](2015/05/03 05:37)
[151] 19-05:魁・武闘トーナメント(Ⅴ)[けびん](2015/05/04 00:01)
[152] 19-06:魁・武闘トーナメント(Ⅵ)[けびん](2015/05/27 01:26)
[153] 19-07:魁・武闘トーナメント(Ⅶ)[けびん](2015/05/06 02:29)
[154] 19-08:魁・武闘トーナメント(Ⅷ)[けびん](2015/05/07 09:40)
[155] 19-09:魁・武闘トーナメント(Ⅸ)[けびん](2015/05/08 01:11)
[156] 19-10:魁・武闘トーナメント(Ⅹ)[けびん](2015/05/09 06:10)
[157] 19-11:魁・武闘トーナメント(ⅩⅠ)[けびん](2015/05/10 04:47)
[158] 19-12:魁・武闘トーナメント(ⅩⅡ)[けびん](2015/05/26 15:41)
[159] 19-13:魁・武闘トーナメント(ⅩⅢ)[けびん](2015/05/12 00:01)
[160] 19-14:魁・武闘トーナメント(ⅩⅣ)[けびん](2015/05/13 00:01)
[161] 19-15:魁・武闘トーナメント(ⅩⅤ)[けびん](2015/05/15 03:09)
[162] 19-16:魁・武闘トーナメント(ⅩⅥ)[けびん](2015/05/16 02:58)
[163] 19-17:魁・武闘トーナメント(ⅩⅦ)[けびん](2015/05/19 00:04)
[164] 19-18:魁・武闘トーナメント(ⅩⅧ)[けびん](2015/05/18 02:22)
[165] 19-19:魁・武闘トーナメント(ⅩⅨ)[けびん](2015/05/19 00:01)
[166] 19-20:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩ)[けびん](2015/05/20 00:01)
[167] 19-21:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅠ)[けびん](2015/05/26 15:48)
[168] 19-22:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅡ)[けびん](2015/05/22 00:01)
[169] 19-23:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅢ)[けびん](2015/05/23 00:21)
[170] 19-24:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅣ)[けびん](2015/05/24 00:01)
[171] 19-25:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅤ)[けびん](2015/05/25 00:01)
[172] 19-26:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅥ)[けびん](2015/05/26 00:01)
[173] 19-27:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅦ)[けびん](2015/05/27 00:01)
[174] 19-28:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅧ)[けびん](2015/05/28 00:05)
[175] 19-29:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅨ)[けびん](2015/05/29 00:01)
[176] 19-30:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅩ)[けびん](2015/05/30 00:01)
[177] 19-31:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅩⅠ)[けびん](2015/05/31 00:01)
[178] 19-32:魁・武闘トーナメント(ⅩⅩⅩⅡ)[けびん](2015/06/01 00:01)
[179] 20-01:女王面談(前編)[けびん](2015/06/02 00:01)
[180] 20-02:女王面談(中編)[けびん](2015/06/03 00:01)
[181] 20-03:女王面談(後編)[けびん](2015/06/04 00:01)
[182] 21―01:攪乱するグランセル(Ⅰ)[けびん](2015/06/05 00:01)
[183] 21―02:攪乱するグランセル(Ⅱ)[けびん](2015/06/06 00:22)
[184] 21―03:攪乱するグランセル(Ⅲ)[けびん](2015/06/07 00:01)
[185] 21―04:攪乱するグランセル(Ⅳ)[けびん](2015/06/08 00:16)
[186] 21―05:攪乱するグランセル(Ⅴ)[けびん](2015/06/23 02:22)
[187] 21―06:攪乱するグランセル(Ⅵ)[けびん](2015/07/03 08:52)
[188] 21―07:攪乱するグランセル(Ⅶ)[けびん](2015/07/04 21:31)
[189] 21―08:攪乱するグランセル(Ⅷ)[けびん](2015/07/11 20:52)
[190] 21―09:攪乱するグランセル(Ⅸ)[けびん](2015/07/18 17:13)
[191] 21―10:攪乱するグランセル(Ⅹ)[けびん](2015/07/25 00:02)
[192] 21―11:攪乱するグランセル(ⅩⅠ)[けびん](2015/08/08 00:01)
[193] 21―12:攪乱するグランセル(ⅩⅡ)[けびん](2015/08/22 00:01)
[194] 21―13:攪乱するグランセル(ⅩⅢ)[けびん](2015/08/22 00:02)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[34189] 13-16:学園祭のマドモアゼル(ⅩⅥ)
Name: けびん◆6e0becf3 ID:13917592 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/04/15 00:01
 釣公師団の刺客を遇った二人は、運動場に辿り着いた。この周辺は満場の群衆に埋めつくされ視界を遮られており、落ち着いて騎馬戦を鑑賞できない。仕方なく比較的空いている見晴らしの良い場所を探そうとトラックの外周を時計回りに周回すると、次々に見知った顔に出くわした。
「ああっ、もう、そうじゃないでしょ。そこは囮を使って誘きよせて、鶴翼の陣で包囲網を敷くべきでなくて? 赤組白組どちらも各騎馬が好き勝手に動き回っているだけで、団体戦というものを理解されていませんわ」
「お嬢様、子供みたいにフェンスに身を乗り出さないで下さい」
 メイベル市長とリラ。彼女たちはロープ柵手前の最前列に陣取っている。興奮したメイベルがスカート姿にも関わらずはしたなく左足を杭の上に乗せたので、メイドさんが大慌てで身体を張ってガード。幸い皆の視線は目の前の騎馬戦に集中しており、一人にしか見られてない。
「メイベル市長は白か。まっ、性格を考慮すれば予想通りだな」
「何が白なのかは敢えて聞きませんが、先輩、えらくはしゃいでいますね。ただ、かつての騎馬戦体験者として、双方の戦い方に不満があるみたいですけど」
「両軍の大将騎はどちらも知恵者だし、自由にやらしているのは態とだろ? 勝った所で賞金が出る訳じゃない単なるお祭企画だからな」
「確かに。けど先輩、さっきから自分も参加したくてウズウズしている様に見受けますね」
「ブルマを履いてか? まあ、市長さんの年齢ならギリギリセーフかな?」
 二人は笑いを押し殺すと、ボースコンビに声を掛けることなく、更に移動を開始する。

「あら、クローゼさんにエステルさん。こちらでお昼と騎馬戦の拝観を一緒になされては、いかがでしょうか?」
 窮屈な立ち見ゾーンから、茣蓙やブルーシートを敷いて家族単位で観戦のゆったりゾーンに辿り着くと、ゴザの上に腰を下ろした院長先生からお招きを受けた。
 ここにいる人たちは、ほとんどリベール籍。例の寿司の模擬店に参加しなかったので、花見のように早い時間から場所取りに専念し、広々とした着座スペースを確保した。
 その上で気配りの達人のヨシュアが、子供たちに御弁当を差し入れたらしい。茣蓙の上にはワサビ抜きの鮨の詰め合わせが五箱も置かれて、赤身や玉子を中心に半分が食べ散らかされている。
 食欲旺盛な子供らの所在を尋ねると、テレサ院長は微笑ましそうに後方を指差した。
「ほら、クラム。しゃんとしなさい。男の子でしょ?」
「重いんだよ、マリィ。お前、食べ放題の菓子をバクバク齧って、太っただろ?」
「まあ、レディに向かって肥えたとか失礼ね。私の分のフリーバスは物欲しそうなおばさんにプレゼントしたから、あまり食べていませんよーだ」
「いてて、両手が塞がっているのを良いことに、ポカポカ、頭を叩くんじゃねえ」
 眼前のバトルに影響を受けた四人は、少し離れた場所でマリィを騎手に騎馬を組んでいるが、後脚二人(ダニエルとポーリィ)はほとんど機能しておらず、実質クラム一人でマリィをおぶっているようなもの。馬と騎手の間で諍いが絶えないが、まさしく子供の喧嘩なのでとても和んでしまう。
 二人はテレサからご相伴に預かるが、茣蓙の広さには限りがあり、クラム達が騎馬戦ごっこに飽きて戻ったら、手狭になりそうだ。幾つか残り物をつまみ食いして場を離れると、別の観戦ポイントを探すことにした。

 その後も寿司に時間を取られてスペースを確保できずに立ち見にまわったダルモア市長とギルハート秘書のルーアンコンビとか、同じ出遅れ組ながらも恐らくは大枚叩いて譲り受けた最前線のブルーシートに両足を伸ばして寛ぐデュナン公爵に背後から守護霊のように彼を見守る執事の凸凹ペアなどとエンカウントしながら、ようやく人壁が途切れた寂れた場所を発見。腰を落ち着けて見物することができた。
 試合が開始されて既に五分が経過。双方の騎馬は半分近くに減っているが、戦闘は未だ加熱の一途を辿っている。
「負けられないのよ、私は。私の双肩には弱小セパタクロー部の未来と仲間全員の運命を背負っているのだから」
「はんっ、所詮はミラに尻尾を振った俗物が笑わせるんじゃないわよ! クローゼ君への愛の為に戦う私たちに勝てると思っているの?」
 アマゾネス共は鬼気せまる表情で両掌を合わせて力比べする。互いの髪の毛や鉢巻きを引っ張り合い、時に爪で引っ掻いたり噛みついたりと尋常でない迫力でキャットファイトを演じて、観客のボルテージを最高潮に引き上げる。
「ふっ、無垢なブルマ少女達の煌めく汗と他者を思いやるピュアな想いは百万ミラの宝石の輝きすら色褪せる程に美しいね」
「あのー、本当にそうなのでしょうか、オリビエさん? さっきから愛とか友情とか奇麗事が聴こえてきますけど、私の目は我欲に塗れた野獣の群同士が醜く争っているようにしか映らないのですが」
 女子プロレスさながらのセメントバトルに観衆は大層喜んでいるが、戦い方が乙女にしては品がなさすぎる。
 アナウンサー役の女子生徒が鋭い女の勘で真実の一端を見抜いたが、節穴のオリビエは感動でハラハラと涙を零しており、「駄目だ、こいつ」と彼を解説役に抜擢した人選ミスを悔やむ。
 ほとんどの戦闘は片方の鉢巻きロストで決着がつくが、中には騎馬が崩れて落馬する女子生徒もいる。
「きゃあああー!」
「危ない、ニキータ! ぐえええっ!」
「ちょっと、ジノキオ、今、物凄く鈍い音がしたけど大丈夫なの? それよりも、あんた、私のことを庇って……」
「へへっ、幼馴染みだろ、俺たちは。お前の身体に傷一つでもつけたら、エーフェ姉さんに責任取らされちまうからな」
「ジノキオ……」
 幼馴染みの少女に肩を借りながら、保健室を目指し二人三脚で退場していく、名誉の負傷を負ったヒーローの少年に満場から拍手喝采が巻き起こり、ジルは馬上から眩しそうに二人の初々しい姿を見下ろす。
「おーおー、あの二人、これで少しは進展するかしらね? 見ていて本当に焦れったかったし、籤に細工した甲斐があったわ」
「ジル、細工って、まさか他にも?」
「うん、脈がありそうな男女を片っ端からくっつけてみたけど、こうして見渡してみると意外と上手くいっているみたいね」
 戦場に咲く一輪の花という訳でもないが、落馬に絡んで彼方此方でラブロマンスが発生中。目出たい仕儀ではあるが、馬役落選に絡んだエステルの不正疑惑は正しかったようだ。こうなるとハンスは自身の身の上が気になった。
「それじゃ、俺がジルの騎馬を担当したのも、もしかして?」
「そ、そんな訳無いでしょ。あんたみたいなブルマキチガイを、他の娘には任せられなかっただけよ!」
 この発言が、眼鏡っ娘の本心を隠す照れ隠しか否かは誰にも判らない。
 このような具合に、殺伐とした戦場に芽生える恋の花々は一服の清涼剤となる。家族連れの観客は「ひゅー、ひゅー」と口笛を吹いて揶揄気味に祝福するが、逆に独り身の若い男性客は大いに苛立っている。
「ちきしょー、あのガキめら。上手いことフラグ立てやがって」
「何が『私のことを、庇って』だよ。あの程度の代償で彼女をゲットできるのなら、俺だって肋骨の二、三十本ぐらい折らせてやるぜ」
「肋骨は二十四本しかないから、三十本も骨折させるのは無理だけどな……とかいう虚しい揚げ足取りは置いておいて、何で俺らが現役学生の時はこういう甘酸っぱいイベントがなかったんだろうな」
「けっ、『危険な状況下で出会った男女は、長続きしない』というし、どうせすぐに別れるに決まっているぜ。というか別れろ、死ね!」
「いやー、なんかラブラブすぎて、観ているこっちの方が気恥ずかしくなってきましたね。けど、一部の観客から大人気ない反応が見られますが、いい年こいた成人男性が子供を相手に本気で嫉妬するとか情けなくないのですかね、オリビエさ……」
「むきっー、悔しい。僕も現役女子高生とイチャイチャしたい」
 オリビエは女々しくもハンカチを噛み締めて、血涙を流して心底口惜しがっている。アナウンサーの女子生徒は「駄目だ、この大人。早くなんとかしないと」と諦観から絶望の境地に突入した。

 萌えと燃えが交差し、色んな意味で盛り上がっている目の前の熱いバトルを尻目に、この学園祭のマドモアゼルはぽつんと後方で待機しながら、うつらうつらと馬上で船を漕いでいる。
 観衆は無防備に孤立している勝利アイテムを所持する大将騎に白組の騎馬は誰も近づかないのか不思議に思ったが、ジルの薫陶がしっかりと行き届いてデスリスク・ハイリターンの危険物を据え置く方向性で話が纏まっている。
 不精娘もそのぞんざいな扱いになんら不服はない。このままタイムアップまで骨休みめするつもりだが、とある集団の出現がこの騎馬戦の行方を大きく左右した。
「「「「「「「嬢ちゃん、頑張れー!」」」」」」」
 グランド全体に響いた突然の大音量の合唱に、ヨシュアはぱちりと目を開けて、周囲を見渡す。立ち見の観衆を押し退けるようにして、長老をはじめとした築地漁業組合の漁師の一団が陣取っており、豊漁の時にのみ掲げられるという重さ三百キロにも及ぶ『大漁』と刺繍された大旗『大漁旗』が数人がかりで振られている。
「みんな、長老まで。還暦を過ぎたお爺ちゃんに無理して御足労させた以上は少しは良い所を見せないとね」
 ヨシュアは苦笑すると、ちょっとばかりやる気を漲らせて馬役の三人に前進を指示。今まで怠けていた赤組の大将騎がはじめて戦場に顔出しした参戦動機は、今日までお世話になった築地の漁師たちに活躍を見せるという常日頃と変わらぬ単なる点数稼ぎ。前回のいかにも思わせぶりな引きには、何の大意も意外性もなかった。
「あちゃー、まずいわね。最終兵器彼女が動き出したみたいよ。皆、とにかく距離を取って、うかつに交戦しないように……って、ちょっと?」
 ジルと違ってヨシュアの実力に懐疑的な一部の女子の騎馬が、指示を無視して大将騎との距離を詰めていく。
「ブレイサーだか知らないけど、ジル一人背負えないモヤシ娘じゃない。どうせ戦闘中はエステル君の影に隠れてブルブル震えていたに違いないわ。鉢巻きもそこそこ集まったし、そろそろ終わりにしましょう」
「賛成、あの女、クローゼ君に粉かけて前からむかついていたし。長い黒髪を引っ張って泣かしてやるか、それとも落馬させて、その綺麗な顔を土塗れにしてやろうかしら」
「常日頃からブルマ姿でうろついて、男を誘惑してんじゃないわよ、この淫乱!」
 三人を乗せた騎馬は、思い思いの悪口をかましながら大将騎に襲いかかる。ヨシュアの琥珀色の瞳がすーっと細まったのを、驚異的な動体視力で視認したエステルは遠くから天を仰いだ。
 素人相手にも一切手加減しない義妹のエゲツなさを承知しているからで、ヨシュアはティアラに手を伸ばそうとした三人の間を擦り抜けるようにして電光石火の早業で何を掏り取った。
「あらっ、髪の毛が解けた?」
「ああっ、鉢巻きがない?」
「そ、そんな、何時の間に?」
 三人の頭部から鉢巻きが消失。ボニーテールに束ねていた少女の髪がファサリとロングに零れ、ヨシュアの左手には三人分の白い鉢巻きが束ねられている。
「嘘でしょ? まさかあの一瞬で私たちが気づかない内に三人纏めて盗まれたというの?」
「それより、あいつ、右手の方に鉢巻き以外の何かを持っていない?」
「えっとー、ブラジャーにブルマに、クマさんバンツってアレはあたしの? ……きゃああああ!」
 状況を悟った三人の少女は、頬を真っ赤に染め、甲高い悲鳴を上げる。
 女子の一人は汗でぽっちが浮いた白シャツの胸部分を強く抱き締める。どうやって脱がされたのやら、ブルマを失ってバンツ一丁にされた少女が水玉模様の下着を手で覆い隠す。何故かブルマの下がスースーする最後の女子がモジモジしながら股間を手で抑える。事情を把握した馬役の男子が「の、のーぱん」と呟きながら鼻血を吹き出して騎馬を崩壊させる。
 もはや、手先が器用とかそういう次元の話じゃない。ヨシュアは馬同士が交差した一瞬に鉢巻きだけでなく、少女たちから一点ずつ下着類を掠め取った。女子高生のポロリという予想外のアクシデントに男性客は大いに沸騰する。
「おほほほほっ、ごめんなさいね。手が滑って何か余計なモノまで抜き取ってしまったみたい」
 ヨシュアは軽く舌を出すと、客席の餓えた獣に下着類を投げ込んでやろうか迷ったが、武士の情けで彼女達の目の前に放り捨てる。九人の馬役の男子にバリケートを築かせた三人は、その内部で必死に装着する。
「やっぱり、ヨシュアっておっかないわね」
「うんうん、うかつに敵にまわさないで正解だったみたいね」
 味方の白組の女子生徒は、黒髪少女のエネミーに対する非情さに肝を冷す。一歩間違えれば自分らの末路かもしれかったので、衆人環視の前で羞恥プレイを受けた三人に同情すると同時に、闇討ちという軽挙に走らなかったかつての己が選択の正しさに安堵する。

「はあー、だから忠告したのに。スズメバチの巣に指先を突き入れた挙げ句、よりにもよって女王蜂を素手で掴む命知らずがあるかい」
 あまりに的確な比喩で、自業自得の顛末を迎えた三者にジルは嘆息する。その彼女に、アーチェリー部の三人の女子生徒が馬上から声をかける。
「ねえ、ジル。敵の大将が積極的に動き出した以上、放置作戦は無意味だし、今ならティアラの価値が鉢巻きと等価とか謳う気はないわよね?」
「そりゃ、ヨシュアを止められるなら鉢巻き十個分の査定にしてもいいけど、アレを見てもまだ勝てると思うわけ?」
 目の前の惨状を目撃しながら、未だに闘志が衰えていないアーチェリー部員のエステル並の能天気さにジルは呆れたが、彼女たちには秘策がある。
「良く『将を射んと欲すれば、先ずは馬を射抜よ』というでしょう? とにかく、あたし達に任せて頂戴」
「鉢巻き十個分の件、忘れないでよ」
「アーチェリー部のトリプルスターと呼ばれた私たちのフォーメーションを見せてあげましょう。ただし、悪口は無しの方向でね」
 個人競技の弓道と集団戦術のフォーメーションがどう絡むのかは謎だが、微妙に発言に保険をかけながらも、頼もしそうに勝利を確約する。ジルの護衛役を解かれた三騎は、任務の大将騎の側を離れてヨシュアの方角へと向かった。

 まるで病原菌の発生源のように、必死にヨシュア騎から距離を置く白組の騎馬とは逆に立ち塞がる三つの騎影あり。
 まだ歯向かおうとする敵手がいた現実にヨシュアは些か虚を衝かれたものの、今度は鉢巻きだけで済ませてやろうと軽く左手をプラプラさせる。三騎は縦一列に重なって並びながら、怯むことなく真っ正面から特攻してくる。
「その選択はエステルと同じく、勇気というよりは只の無謀ね」
 気迫だけで絶望的な力量差を埋められる筈もなく、先頭の少女の手を余裕で避けながらあっさり鉢巻きを奪い取ったが、最初から彼女は捨駒。
 当初の打ち合わせ通りに、馬役の三人は鉢巻きをロストする僅かなタイムラグを見計らって捨て身の突撃を大将馬にぶちかます。虚弱体質の三人の男子生徒は大きくぐらついた。
「なっ? まさか最初から目当ては私じゃなく」
「今更気がついても、もう遅い。吹っ飛べ!」
 バランスを崩した赤組大将騎に、間髪入れずに第二陣の騎馬が正面衝突する。馬役の三人はバラバラになり、ヨシュアは空中に放りだされる。
 いかに騎手が万夫不当の英傑だとしても、それを乗せているのは単なる駄馬。『将を射んと欲すれば、先ずは馬を射抜よ』の諺通りに難攻不落の将を無視して土台の馬から潰しにかかった見事な作戦であるが。
「よっしゅあ、勝ったあ! これで予算大幅ゲット…………なっ?」
 少女は目の前の光景を疑った。ヨシュアは中空でクルリと一回転すると、彼女の頭に着地。ついでの返す刀で鉢巻きを頂戴しながら、更に前方に大きくジャンプする。
「あたしを踏み台にした?」
「そんな馬鹿な」
 二陣目で仕留め切れなかった時に備えて、つめていた第三陣の少女は、空高くから襲撃してきたヨシュアに為す術もなく鉢巻きを強奪される。トリプルスターは壊滅したが、彼我の実力差を省みれば彼女たちの健闘は称賛に値する。

 ただし、そこから先は完全なヨシュアの独壇場。ピョンピョンと空中を飛び跳ねながら、手近な白組の騎馬に着地して鉢巻きを掠めると、また別の騎馬へとジャンプする。
 まるで、海上のワニの上を走破する因幡の黒兎もとい白兎。襷掛けのように肩口に結わかれた戦利品の鉢巻きの数は二桁に達した。
「あのー、オリビエさん。もはや騎馬戦の体すら成していないのですが、アレは有りなのでしょうか?」
「ふっ、ルールでは、『騎手の身体の一部でも地面に触れたら失格』とあるから、問題ない筈だよ。それにしても、流石は僕のヨシュア君だね。先程のポロリといい、きちんと観衆の嗜好を弁えて、色々と飽きさせない趣向を凝らしてくれる」
 オリビエは自称・未来の花嫁を絶賛したが、先のラッキーイベントは単なる意趣返し。今の単騎無双も予想外に追い詰められた末での苦肉の策だろうから、クローゼ同様に欲目で見すぎだ。
「皆、とにかく、ヨシュアのいる位置から可能な限り距離を取って!」
 大将単体によるその名の通りの無双劇に萎縮し硬直していた白組の面々に、ジルが最善の解決策を大声で伝達。その声に我に返った各騎馬は潮が引くようにヨシュアの餌食となった騎馬から離れる。
「あらっ、ちょっとまずいかしら? しばらく、ここで休憩するしかないわね」
 まさしく大海に浮かぶ陸の孤島という風情。周囲を見渡して次の着地場所を喪失したヨシュアは軽く両肩を竦めながら、この場に待機する決意を固めるが。
「さっきから、人の頭の上で、何ふざけた寝言抜かしているのよ。ほら、あなた達。早く私を地面に下ろしてちょうだい」
 その独り善がりの決定に現在の足場から苦情が殺到。例によってヨシュアの重みはまるで感じられないが、直立不動の姿勢で頭部に直に素足で乗っかられて、気分がよい筈はない。鉢巻きを損失した女子生徒は馬役の男子生徒に失格した騎馬の解体を指示。三人は騎手を怪我させないようにゆっくりと膝をつく。
 あと数秒もすればこの孤島も水没。ヨシュアの落水が確定するが、少女の跳躍射程内に敵騎馬は存在せずに万事休すか。
(なら、足場をこちらから誘きよせるしかないわね。ちょっとばかりハズいけど)
 羞恥で軽く頬を染めると、徐にブルマの裾に手をやる。
「あらやだ。ショーツがはみ出しちゃってる」
 意識と無意識の双方で恥ずかしそうにモジモジし、ブルマのお尻の部分をもぞもぞと弄り、食い込みを直す。
「うおおおおおっー!」
 今のヨシュアは衆目の注目を一身に集めた完全なお立ち台状態で、目立つことこの上ない。黒髪美少女によるブルマ嗜好者最高のフェティシズムに観衆はロープ杭から身を乗り出すように大興奮する。
「まずい!」
 他の騎馬の女子が首を傾げる中、聡いジルはヨシュアの狙いを真っ先に悟ったが、もう手遅れ。
 彼女の真下にいる究極のブルマニストが、「ブルマの、食い込み直しー!」と目を血走らせて後脚の二人を引きずる様にして突進を開始した。
「ちょ、ちょっと止まりなさい、ハンス!」
 勝手に暴走を始めたロデオを鎮静化させようとハンスの首をきつく締めあげたが、まるで効果がない。手綱が制御不能になり両目を隠して視界を封じてみたが、彼の心の目はブルマ少女の居場所を検知可能なようで竹を割った様に真っ直ぐに突撃する。
「いよいよ、決着の時ね、ジル」
 騎馬が完全解体される数瞬前に、ギリギリ射程距離に突っ込んできた白組大将騎に向かってラストジャンプ。ヨシュアは両腕を大きく見開いた『荒ぶる鷹のポース』で獲物を狙う白隼の如く空襲する。
 ティアラを持つ大将同士の一騎討ちだが、こうなってしまってはもはやジルに勝ち目はあるまい。猛禽類に追い詰められた小羊のように覚悟を定めた彼女の眼鏡に走馬灯のように映し出された最後の光景は。
「あっ、エステル君とクローゼ君がボーイズラブしてる」
 あっち向いてホイのように右後方を指差すも、中空のヨシュアは鼻で笑う。
「ふっ、騙るに落ちたわね、ジル。単純馬鹿のエステルじゃあるまし、そんな安っぽい手に引っ掛かると…………」
 「アブねえ、大丈夫か、クローゼ?」
「ええっ、何とか……」
「きゃああー! エステル君がクローゼ君を押し倒してる?」
「ねえねえ、やっぱりエステル君が攻めでクローゼ君が受けかしら?」
「嘘、マジなの?」
 聞き間違えようがない二人の殿方の声色と女子生徒の黄色い歓声にヨシュアが振り返る。確かにクローゼにエステルが覆い被さっており、軽い動揺が走る。
 ぶっちゃけると、先に倣って性懲りもなく出没した釣公師団の次なる暇人のルアーからエステルがクローゼを庇った顛末に過ぎないが、事情を知らない『とある趣味』の者の穿ったレンズには白昼堂々と男同士でいちゃラブしているようにしか映らない。
「隙ありー!」
 茫然自失の一瞬の虚をついて、ジルがティアラに手を伸ばす。ヨシュアは反射的に首を捻ってジルの攻撃をいなす。しかし、反撃もそこまで。加速装置を装備している訳でなし空中で自在に姿勢を変えられる筈もなく、ヨシュアは馬上のジルと正面から激突。その衝撃で大将騎は全員バラバラに崩れ落ち、派手に砂埃を巻き上げた。
「何だ、一体どうなった? どっちが勝ったんだ?」
 一堂は砂埃が晴れるのを待ちながら、固唾を飲んで審判の時を待つ。やがて視界か明瞭になると馬役の三人はそれぞれ離れた位置に転がっている。更には共に相手のティアラを奪い合ったジルとヨシュアが折り重なるように斃れている。
「重い。早く降りてよ、ジルぅー」
 いつぞやの体育時のように、ジルの下敷きになったヨシュアが苦しそうに呻いた。
「ヨシュア、あんた、私のことを庇って……、好き好き、愛しているー!」
「ちょ、ちょっとジル、私が下になったのは単なる偶然だし、私はエステル達と違ってそんな趣味……というか、早く退いてよ、本当に苦しいー」
 感極まってヨシュアにスリスリと抱きつくジルにヨシュアは色んな意味で悲鳴をあげる。
「あのー、それって、本来俺がやる役割だと思うのだけど、もしかして俺、重大なフラグを自らへし折っちまったのか?」
 ようやく正気に返ったハンスが、目の前をゴロゴロと転がる二人の少女を物欲しそうに見下ろして自問自答したが誰からも返事がない。いずれにしても、自らの嗜好に溺れた結果、今回の騎馬戦で一部の男子生徒が賜った恩恵を授かることが叶わなかったのは確か。
「俺は釣行者ナンバーⅡ『釣帝』レオパレス。エステル・ブライト。モンブランをあしらったそうだが譬え魚の使徒や特級釣師といえど、真っ当な釣り勝負で俺の右に出る者はそうはいない。貴様に爆釣百番勝負を………………って人の話を聞け!」
 象牙色の渋いコートを纏い、『理外の竿』を構えた銀髪の青年は大声を張り上げたが、エステル達や観客はトラックの中央で繰り広げられているブルマ少女の百合劇に刮目し、誰も彼の存在を気に留めていない。
変態仮面に比べればいくらか場の空気が読める釣帝とやらは、仕方なしに出直すことにしてバツが悪そうに退場した。

 かくして海外旅行者を持て成す騎馬戦イベントは、大将騎の同時失格により赤組白組共に引き分けの波風が立たない結末を迎える。
 妙な注目を浴びて大層気恥ずかしい思いをしたヨシュアは、これで『白き花のマドリガル』の上演劇までお役御免と軽く胸を撫で下ろしたのも束の間。
 まさか、この後直ぐに主賓をそっくり入れ換えての第二ラウンドが催されることになるとは彼女の合理的な思考フレームを以てしてもその可能性すら考慮していなかったが、所詮は他人事なので成り行きとアドリブに全てを丸投げすることにした。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.03820013999939