「何だか心臓がドキドキしてきたな」
カーテンの隙間から客席の込み具合を確認したエステルは、柄にもなく緊張しゴクリと生唾を飲み込んだ。基本、目立ちたがり屋の利かん坊なので、騎馬戦で大暴れして衆目を集めていた時は何も感じなかったが、運動と異なり苦手分野の演劇では土壇場でミスをして皆の足を引っ張ったりしないかプレッシャーにさい悩まされる。
帝国客のお御目当てイベントは既に満了したが、寿司と騎馬戦で獅子奮迅の働きを示した学園祭のマドモアゼルが主演女優を務めると聞き、興味を惹かれたらしい。
多目に見積もって三桁用意したパイプ椅子は全て満席で埋まっており、座りきれない来客が後方立ち見部分はおろか二階の渡り廊下にまで溢れている。
「エステル君の気持ちは良く判りますよ。大勢の人間に値踏みされるお立ち台というのは、どうにも馴れないものです」
社交場を大の苦手として、公共の場に出没しなくなった引き籠もりの王子様は心底同意する。
今のクローゼは日焼けした小麦色の肌に髪を金髪に染めて青のカラコンを嵌めている。デュナン公爵の目を欺く変装で、ヨシュアがカリンに化けた時の小道具を再利用し彼女から直接メイクアップを施してもらった。
逆にユリウス役のエステルはオスカーと肌色が被ると面倒なので、白粉を塗りたくって貴族らしい真っ白な素肌を演出。
「まっ、緊張しているのは、別に俺たちだけって訳じゃないみたいだけどな」
周囲を見回すと、どこはかとなく雰囲気は重苦しい。皆一様に口数が少なく、既に暗記した筈の台本を読み直したりする者もおり、心細さが手に取るように伺える。例外は連戦の疲れで舞台衣装を着たまま肘掛け椅子に座って、ウツラウツラと舟を漕いでいる白の姫セシリアぐらい。
「やっぱり、昨日一日通し稽古が出来なかったのが、不安に拍車をかけているんじゃないか? 海釣りに出張ったスケジュールの都合上、選択の余地はなかったけどな」
武術の世界でも、一日稽古をサボると勘を取り戻すのに三日はかかると言われるので、エステルは毎日の鍛練を欠かしたことはない。
もっとも、未だに影を踏むことすら叶わない我が義妹が真面目に修行している姿を一度も見たことがないので、凡夫にのみ適用されるジンクスっぽいのだが。
「申し訳ありません、クローゼ君、エステル君。私が不甲斐無いばかりに、あなた達お二人には色々と心配をおかけしたみたいで」
テレサ院長が四人の子供たちを引き連れて楽屋裏に顔を出し、心底心苦しそうな表情で頭を下げる。
「テレサ先生?」
「それって、どういう…………」
「お弁当を差し入れて頂いた時にヨシュアさんからお伺いしました。孤児院を建て直す費用を捻出する為に寄付金集めに奮闘なさってくれたとか」
相変わらず仕事が早いというか。再建の目処が立つ資金を掻き集めるのに成功した地点で次のステップへと話を強引に進めた次第。
「本当にありがとうございます。ここまで想っていただけで、私もこの子達も果報者です」
目に浮かんだ涙を拭き取りながら、子供達と一緒にマーシア孤児院一堂で頭を下げる。二人は首をブルブル横に振って謙遜しながらも、戸惑いを隠せない。
あの慎み深い院長が二人の好意を素直に受け入れてくれたのに軽い違和感を覚えたからだが、そういう社交辞令的な通過儀式はヨシュアが既に済ませてくれていた。
「そんな、お気持ちは大変有り難いのですが、ここまでして頂くわけには…………」
「なら、その旨をテレサ院長の口から、エステルとクローゼにハッキリと伝えて下さい。少しでも再建の足しになればとクラーケンに襲われながら必死に黒鮪を釣ってきた二人の命懸けの冒険は単なる徒労に過ぎなかったのだと」
歯に衣を着ないヨシュアのキツイ言い回しに、テレサは言葉を詰まらせる。
「今回の義援金の送り先は学園側が勝手に推し進めていることですから、当然あなたには善意の押し売りを拒む権利があります。ただし、その場合にはきちんと筋を通してあげて下さい」
でないと、思い入れのある孤児院やハーブ畑を再生できると我が事のように喜んでいたお人好しの二人が浮かばれないと嘆願する。尚、殿方二人分の労力を合わせてもまだ足りないぐらい知恵を振り絞り身体を張ったヨシュア当人の貢献度については欠片も触れなかった。
「そうですか、そのような遣り取りが……」
事態をスムーズに進行させるように、敢えて憎まれ役を買ってでた腹黒完璧超人の不器用さにクローゼはしみじみと感極まる。エステルの方は「ヨシュアの奴、相変わらず同性相手には容赦がないな」と真逆の感想を抱いたが、どちらが少女の真実の姿かは恐らく本人にも判らない。
面白いのはその時の子供たちの反応。ヨシュアの表層的な冷たさを額面通りに受け取ったクラムは「テレサ先生をいじめるなー!」とクラフト『ストーンフィーバー』(パチンコから複数の石ころを、雨あられのように投石する)で襲いかかったが、空気が読めるマリィは「ヨシュアお姉様。素敵……」と瞳を輝かせていたことだ。男の子から煙たがられ女の子から憧れられるという普段のヨシュアの生態からは180°反転した怪異現象が発生していた。
「お二人の他にも多くの方々の友愛に支えら感謝の言葉もありませんが、こんな無力な私たちにも役立てることはあるそうなので、これで失礼させてもらいます」
生徒会から便宜を図られ、見晴らしの良い最前列の指定席を譲ってもらったので、「お芝居を楽しみにしています」と院長は挨拶すると子供たちを連れて楽屋を後にする。
最大の懸念事項が取り除かれると同時に二人が感じていた緊張感も一緒にどこかに飛んだ。気分がスーっと楽になったが、こうなるとテレサの最後の置き土産が気になった。
「院長やクラム達にも出来ることって。ヨシュアの奴、何をやらせる気だ? 叩き起こして、真意を…………」
「止めなさい、エステル君。今回の学園祭で僕らとは比肩できない程に骨を折ってくれたヨシュアさんが、マリィちゃんら幼い子供たちに無理難題を吹っ掛ける訳ないでしょう?」
椅子に座ったままコクリコクリと寝息を立てているヨシュアに近づこうとしたエステルを、クローゼが身体を張って阻止する。
元々華奢なヨシュアの体力を気遣っていたのはエステルの方なのに、クローゼに諭されるようでは本末転倒。エステルは反省するも、突如何かを思い立ったようにぶるっと身体を震わせると裏口に直行する。
「今度はどこへ行かれるのですか、エステル君? まさかテレサ先生から直接……」
「トイレだよ、トイレ……」
勘繰るクローゼにエステルはダイレクトに緊急事態を訴えって、蒼の騎士オスカーは臨時の青い瞳に呆れた色を浮かべる。
「しっかりして下さいよ、エステル君。もう開演までほとんど時間がありませんよ」
「小だからすぐ戻るよ!」
例によってデリカシーに欠けるエステルは大声で尿意を主張。楽屋小屋に何ともいえない空気を残していったが、その行為は意図せず場の緊迫感を和ませる効果があり、先とは打って変わって俳優たちはリラックスしたムードに包まれる。
例によってブライト兄妹を過大評価する傾向があるクローゼは、「これもまたエステル君の世界を広げる可能性か」と偶然の産物を過剰に持ち上げて一人勝手に得心した。
◇
「舞台上で漏らしでもしたら洒落になれないからな。急げ、急げ…………って、おわっ?」
紅騎士ユリウスの舞台衣装を着込んだエステルは、『廊下走るな』の貼り紙を無視して全力疾走したが、曲がり角で誰かと正面衝突して思わず尻餅をついた。
「あたた…」
「あら、ごめんなさい。大丈夫ですか……って、あなたは?」
ぶつかった相手は、黒の瞳孔を開いてエステルを見下ろした。
赤毛セミロングの比較的長身の女性。踝近くまで達する茶色のロングスカートと、ダボダボの灰色のカジュアルセーターという地味目の恰好ながら、清楚な顔つきと摩天楼の如く隆起する二つの胸の大きな膨らみがアンバランスさを醸しだし、当人の意図に反して女の色香を一段と強調している。
「あれっ、あんた。もしかして、俺のこと知っている? けど、どこで会ったっけ?」
座り込んだまま小首を傾げる。オリビエのような有象無象の野郎ならまだしも、これだけ特徴的な美人と面識があったら助平道を極めたエステルが忘れる筈はないが、女性の方が軽く頬を染めながら勘違いである旨を訴える。
「な、何でもありません。先程の騎馬戦の活躍を拝見したから、あなたのお顔を覚えていただけです。ぶしつけながら、急いでいるのでこれで失礼します」
若い赤毛の女は礼儀正しくお辞儀すると、エステルとは反対の方へと駆け足で消えていく。トロそうな外見によらずかなりの快速だが、エステルに次いで廊下ダッシュを試みるあたり、大人しそうな見掛けに反して学舎のルールを守るつもりはなさそうだ。
「もしかして、あの女性も俺と同じで用足しに焦っているのか? それよりも油断していたとはいえ、女相手に俺の方が当たり負けするなんて現実に有り得るのか? って、いけねえ。こんな悠長なことしている場合じゃねえ!」
ささやかながら重大な物理的問題点は、もっと緊急の用件に打ち消され、エステルは慌ててトイレに直行する。さしあたり今回の学園祭においては、この女性との邂逅がエステルに与える影響は微塵もない。
◇
「ご来場の皆様に申しあげます。まもなくより、『白き花のマドリガル』を上演させていただきますが、その前にお知らせがあります」
講堂の照明が一斉に落とされて、堂内が暗くなると同時に、オーブメント仕掛けの緞帳が開かれて舞台の様子が露わになる。スポットライトを浴びた司会役の女子生徒が、マイク片手にアナウンスする。
「ルーアン在住者はもちろん、リベール通信にも速報が掲載されたのでご存じの方も多いと思われますが、先日マーシア孤児院が焼け落ちる痛ましい火災事故が発生しました。ですが、やはりエイドスは善良に生きる子供たちを見捨てません。惨状を見兼ねたこの御方が百万ミラという多額の再建資金を寄進して下さったです。皆さん、リベール一の伊達男デュナン公爵に盛大な拍手をお願いします」
スポットライトが中央最前列のアリーナ席にふんぞり返っていたデュナン公爵にも当てられ、恰幅の良い中年男性の姿が闇に浮かび上がる。
彼方此方の席に紛れていたクイーンオブハートの息のかかった桜の生徒が、まずは火付け役として派手に柏手を打つ。満場の観衆はその行為に釣られるように手拍子が増えていき、やがては溢れんばかりの拍手の洪水に埋めつくされる。
クローゼと異なり社交馴れした公爵は、さも当然のように横長の背中で拍手喝采を受け止めると、軽く左手を掲げて群衆の声援に応えながらステージに登っていく。
今度は舞台全体の明りが灯される。いつの間にか壇上で待機していたテレサ院長と四人の子供たちが公爵を出迎えた。
「じきこくおくおーのおじさま。たくさんのおかねをだしてくれてありがとう。ぼくもいっぱいべんきょうして、しょうらいおじさまみたいな、ひとのやくにたてるりっぱなにんげんになりたいです」
「公爵のおじさん、オイラも心から感謝しているぜ」
まずはダニエルとクラムの男の子二人が自分の背丈ほどもある巨大な花束を贈呈し、公爵は満開の薔薇を両腕一杯に抱え込む。
「公爵様、この度は何とお礼を申しあげて良いのやら。何時も王家には良くして頂いているのにこんなことまでしていただいて、温情にどう報いれば良いのか私には判りません」
テレサ院長が演技でなく、素の感情を露出して本当に恐縮した態で涙ぐむ。デュナンは花束を壇下の執事に預けると、旧校舎の寄付会場でも披露した渋目が入ったダンディな横顔でそっとテレサの肩に手を置いた。
「ふっ、そう畏まる必要はない、貴婦人。次期国王の私にとって、リベールの臣民は皆我が子も同じ。愛する寵児を扶ける為に粉骨砕身力するのは親たる者の務めであろう? そなたがキチンとあの子達を成人させれば、それが私にとっての最大の功労である」
「はい、必ずや公爵様のお眼鏡に恥じない、立派な人間に育てることを、お約束します」
思わずカンペの存在を疑いたくなる素敵な台詞でデュナンがテレサ院長を慰めて、満場の観客からも感嘆の溜息が漏れる。
「公爵さま、私たちの目線まで少し膝を掲げていただけますか?」
最後にマリィとポーリィが両隣に立って何やら催促する。デュナンは言われるがままに腰を低くすると、二人は彼の左右の頬に軽くキスをした。
「えへへ、これはあたしたちからのおれいなのー」
「公爵さま、お慕いしています」
これこそが本物の両手に花というべきか。無邪気な天使たちから接吻を受けた公爵に会場内がどよめく。再び照明が落とされて院長や子供らの姿は闇の中に溶け消え、狐に摘まれたようなキョトンとした表情の公爵独りがスポットライト下に取り残された。
「あー、ばっちい、ばっちい。うー、あんなむさ苦しいおじさんに私のファーストキスを…………って、お口同士じゃないからノーカンだよね、クローゼお兄ちゃん」
くちづけの意味を理解せずに唇に人指し指を当てて惚けているポーリィと違って、マリィの方は闇に紛れてぺっぺっと唾を吐き出した。
このちっちゃなレディの将来の夢は、クローゼお兄ちゃんのお嫁さんとヨシュアお姉様のような華麗な嬢王(誤字にあらず)になること。エステルのように腕白でも逞しくスクスクと育ちそうなクラムとは異な少女を真人間に育成するというデュナン公爵との公約を果すのは、マザーテレサと尊ばれる院長先生でも骨が折れそうだ。
「ふーん、ギルドではデュナン公爵については呆れた噂話しか聞かなかったけど、意外と良い所があるみたいじゃない。そういえば、エステル達が寄付金集めに尽力していたそうだけど、まさか背後にあの娘が関わっているんじゃないでしょうね………………って、オリビエあんた……」
「むきー、悔しい。あの公爵が日和見していれば最高寄付額はヨシュア君のミラを預かった僕ということになり、壇上のスポットライトと小さなレディ達のベーゼは僕のものだったのにいー」
隣の席でハンカチを噛んで地団駄踏んで悔しがっているロリコンに、「いくら何でも守備範囲広すぎだろう」と恐らくは男もいける口の雑食の享楽主義者に引き気味になる。
脚光はともかく、アレを道化でなく羨ましがるなど人として駄目駄目すぎ。まさかとは思うが、この男は十歳以下の女児の裸にも性的興奮を覚えるのだろうかと薄ら寒く思い、鋭い女の勘で折角辿り着いた真相の一端を自ら有耶無耶にする。
そんなシェラザードの様々な疑惑はともかく、デュナンの善行は多くの人間が周知する所となり、オリビエと違ってトラブルメーカーの認識を一部改め直した市民から惜しみない拍手と賞賛が送られる。
「よっ、活かしているね、リベール一の伊達男」
「ミラを叩いて、子供から遊戯王のレアカードを巻きあげた光景を拝まされた時には幻滅したけど、正直見直したぜ」
「リベールの次期国王を本気で期待しているぜ。アリシア女王の御世に匹敵する良い国を造り上げてくれよ」
今さら桜役の生徒が煽動するまでもなく、嘘偽りのない喝采がデュナン公爵に浴びせられて、冷静沈着なフィリップも今回ばかりは主君の晴れ姿に目頭を熱くする。
自らは壇上に登らずに公爵をそっと見守るあたり、彼の価値観もメイドのリラ嬢に近いのだろうが、腕に覚えがある剣狐はデュナンが断頭台に処される時は命を賭して主を救出するだろう。
「なるほど。これが、ヨシュアがクラム達に頼んだ仕込みの内容か」
小用を済まして講堂に舞い戻ってきたエステルは、感心したように呟く。
どこぞの財閥貴族の祝賀パーティーのように幼子に花束を贈呈させるなど多少あざとい気もするが、別段、この過剰な演出で誰かが傷つくという訳でもない。
何よりも孤児一堂に御役目が割り振られたのが大きい。自分たちが祈ることしか出来ずに庇護されるだけの無力な存在でなく、誰かに役立てたという事実はテレサ院長の心理的な負担を幾らかでも軽減してくれるだろう。
「市民の自発的な生きざまを手助けするのが、ブレイサーの本懐ってか? 何だよ、ヨシュアの奴、意外と上手くやれているじゃないか」
これで企図せず百万ミラも献金させられる羽目になったデュナン公爵が気分良く王都にお帰りしてくれるのなら、八方美人のヨシュアが常々拘っていたように全ての人間にとって益のあるハッピーエンドと呼べるだろう。
「ところがどっこい、中には幸せを享受できない哀れな人間も居たりするのよね。例えば孤児院を焼き払った人物とかね」
いつの間にか目を覚まして人知れず二階の渡り廊下部分に移動していたヨシュアは、猫の夜目のように瞳を真っ赤に輝かせる。全ての人間が壇上のデュナン公爵に注目してい中で、唯一人だけ暗視の魔眼の能力を駆使し暗闇のルーアン市長の一挙一動に目を光らせる。
案の定、ダルモア市長は苦虫を噛み潰した険しい表情で、親の仇のような憤怒の視線を公爵に注いでいる。更には小声で何かを伝えると、隣に座っていたギルハートは大慌てで講堂から飛び出した。
外部から何らの連絡も受けていないのに、公演目前にしての秘書の退出は不自然極まる。単なる当て論法で灰色(50%)止まりだった市長黒幕説が俄然信憑性を帯びる形になり、この一連の行動だけで状況証拠が出揃って、ヨシュアの中では漆黒のフラッグの端っこに微かな白染みを残すだけの99%の既成事実として確定される。
旗が完全に黒一色(100%)に塗り潰されないのは、もはや単に物的な証拠が存在しないからに過ぎない。
ヨシュアが大々的に寄付金の使い途を喧伝したのは、公爵への接待と同時に真犯人を燻りだす一石二鳥を狙った策略。テレサ院長個人が狙われるリスクは増大したものの、デュナンとの会話から予想される敵側の目的を鑑みれば、孤児院を再建する以上は遅かれ早かれ衝突は避けては通れない道なので、敢えてこの場で膿を出し切ることにした。
「とはいえ、ここまで事が公になったら、以前のような力業で捻り潰すのは難しいでしょうね。大方ルーアン市長の立場を職権濫用しての搦手でくるでしょうけど、秘書さんにどんな悪巧みを吹き込んだのやら」
殿方二人と違って想いを大々的にひけらかすことはないが、『飛ぶ鳥跡を濁さず』の精神で推薦状を手にルーアンを旅立つ前に、彼女なりの遣り方で孤児院を取り巻く数々の陰謀に決着をつけるつもりだ。
「ご来場の皆様、本当に長らくお待たせしました。これより『白き花のマドリガル』を開演します」