「本当に現れてくれたみたいね」
深夜の十時過ぎ。街道から出現した学生服の少年と、スーツにタイトスカートのキャリアウーマンぽい妙齢の女性。キールとジョゼットが一般人に身を窶した姿だ。確かにこの格好なら軍の検問に引っ掛かっても、比較的怪しまれずに突破可能。
「さてと、空賊艇を探しに行くわよ、エステル、アネラスさん」
ヴァレリア湖畔に面した外れの桟橋に空賊姉弟が消えたのを、川蝉亭二階のテラスから確認すると、ヨシュアは宿の受付係から電話を借り受けて、どこかへ連絡する。
「スパイの顔を確かめなくてもいいのかよ、ヨシュア?」
「ばれたら元も子もないし、あの女の側に迂闊に近づくのは危険よ。どのみちカプア一家が逮捕されれば、芋蔓式で捕らえられるから、後回しで構わないわ」
キールの勘の鋭さを周到に警戒するヨシュアは、指定した服装に着替えるよう二人に指示すると、受話器を置き川蝉亭から飛び出した。
◇
先行したヨシュアが空賊姉弟の足跡のトレース作業を行い、琥珀の塔の目前で停泊していた空賊艇・山猫号(ワイルドキャット)を発見する。
やがて着替えを済ませたエステルとアネラスの二人も追いつく。ヨシュアが地面に設置した特殊な目印を頼りに、無事に合流を果たす。
三人は岩陰に姿を隠しながら、空賊達の様子を伺う。山猫号の手前で五人ほどの手下が、頭領の帰参を待ちながら見張っている。
「なあ、ヨシュア。いくらあいつらが間抜けでも、流石に身内の顔を見間違うことはないんじゃないか?」
「私もそう思うよ。よっぽど場が混乱すれば、上手くいくかもしれないけど」
エステルとアネラスの二人は何時もの普段着ではない。緑を基調とした白い襟巻きつきのジャケットにゴーグル。カプア一家のレプリカ服を着用している。
ヨシュアがボースマーケットで購入した古着をアレンジして仕立てた偽物。王国軍から無条件に逮捕される程には精巧に似せてあるが、顔馴染を欺けるかというと甚だ疑問。
尚、隠密の達人のヨシュアは問題なく忍び込める為、一人だけ変装していない。
「真っ当な状態で紛れ込むのは無理でしょうね。でも、もうしばらくすればハプニングが発生するから、その瞬間を静かに待ちましょう」
「おい、何だアレは?」
甲高い排気音と一緒に二つのヘッドライトの光がどんどん接近し、盗賊たちは肝を冷やす。
帝国製のオープンタイプのジープ。四輪駆動の四つのタイヤが唸りをあげながら、塔までのデコボコ道を走破し、暗がりで分かり辛いが、四人の男女が乗り込んでいる。
「やれやれ、こんな夜更けに、琥珀の塔でクエストとは最悪でやんの」
「ねえ、あれって報告にあった、リンデ号を攫った空賊艇じゃないの?」
「マジかよ? こりゃ、ツイてるなんて次元じゃないぜ。エイドスに感謝だな」
「奴らは極悪非道のハイジャック犯だ。一人二人、ぶっ殺しても、構わん。空賊艇を抑えるぞ、お前たち」
妙に棒っぽい説明台詞で、遊撃士とは思えない物騒な会話を交わされる。そして、本当に何の警告も無しに、いきなに導力銃をぶっ放してきた。
「ブレイサーだ!」
長剣、槍、弓、銃器と異なるカラフルな得物を手に切り込んでくるブレイサーズに、カプア一家はパニックに陥る。
姉弟の到着がまだなので、十八番のトンズラをかます訳にはいかず、必死に応戦するが力の差は顕著。劣勢に追い込まれる。
「おい、ずらかるぞ、さっさと飛行艇を発進させろ」
長身の空賊の一人が空賊艇に乗り込むと、出入り口で仲間に離脱を呼びかける。
「何言ってるんだ。姐さんと坊ちゃんが、まだ」
「一端、ヴァレリア湖まで飛んで行って、拾えばいいじゃない。このまま戦い続けたら、私達……いや、俺達全滅しちゃうよ」
今度は妙にカマっぽい口調の空賊が、艇に乗り込んで撤退を煽る。
確かに彼らの実力で遊撃士のパーティーに勝てる筈もない。頂上からの導力砲で撤収を援護しながら、外の仲間が一人残らず艇内に逃げ込んだのを確認すると、大慌てで山猫号を離陸させた。
◇
「アレはワイルドキャット? こんなの予定にないわよ」
素性の知れない黒装束姿の仮面の内通者から情報を仕入れたカプア姉弟は、琥珀の塔へ向かおうと街道を歩いていた最中、上空に出現した山猫号に仰天する。
「姐さん、ブレイサーの襲来です。急いで下さい」
飛行艇から地上に縄梯子を垂らしながら、手下のライルが大声で緊急事態を訴える。
「はあ、ブレイサーって、またあの脳筋坊やとジョゼットがお熱の娘?」
「ちょっと、キー姐、何言っているだよ、僕は別に」
ジョゼットは真っ赤になって否定しようしたが、突然、足元に矢が突き刺さり、反射的に飛び跳ねる。地上から二つのヘッドライトの光が接近し、車上の四人の遊撃士の姿が露わになる。
「どうやら違うみたいね。逃げるわよ、ジョゼット」
「遊撃士協会規約に基づき……云々」の口上抜きで、問答無用でいきなり弓矢を打ち込むあたり、どうやら話し合う気はゼロ。
やたらと好戦的なブレイサーズに肝を冷やしながら、キールは縄梯子を掴み、ジョゼットもそれに倣う。今度は矢と弾丸がセットで飛んできて、あやうくキールの頬を掠める。
「えーい、これでも喰らいなさい」
綱登り中にも、容赦なく飛び道具を乱射する鉄火場に辟易としたキールは、得意の発煙筒を投げ込んでジープの視界を奪う。斉射が止んだ僅かな隙を逃さずに、船内に駆け込む。
「ブレイサーの奴ら、えらく殺気だっていたわね。確かにあたしらはそれだけの悪行を、この国で犯してきたんだけどね」
二人の収納を確認した山猫号は、2300セルジュの最高速度を披露するまでもなく、一気に遊撃士のジープを置き去りにし、空の彼方に消えた。
◇
「ふーん、運悪くクエストで琥珀の塔の調査に来たブレイサーの集団とかち合ったと? そのまま抗戦せずに直ぐさま離脱したのは、あなた達にしては冴えていたわね」
一家のユニフォームに着替えたキールは、部下の機転を褒め称えたが、その功労者が一向に名乗りをあげず訝しむ。
「まあ、いいわ。これでやっと人質の子守や洗濯からも解放されるのね。ジョゼット、私は少し仮眠を取るから、後を宜しく」
一家の紅一点なので作戦の立案以外にも、色々とストレスの溜まる案件を抱えていた模様。
アジトへの帰還作業を弟に丸投げすると、キールは指令席に座り込んでそのまま熟睡する。山猫号はジョゼットの指揮の元、無事に彼等のアジトへと辿り着いた。
◇
アジトの発着所に停泊した山猫号から、カプア一家の面々が次々と降り立って、扉の奥へと消えていく。
見張り役に残されたライルとロイルの二人は、艇からさらに出現した二人の空賊の姿に小首を傾げる。
「あれっ? 俺たち以外にもまだ残っていたか? というか、出発前の人数と計算が合わないような。って、お前は?」
ライルが何かに気づくと同時に、彼らの意識は刈り取られる。仲間割れが発生し、二人はそれぞれ棍と長剣の得物で、一撃の元に叩きのめされた。
「ご苦労さま」
空賊艇の中から今度はヨシュアが現れる。スタスタとタラップを下って、裏切り者二名に声をかける。
「どうやら、上手くいったみたいだな、ヨシュア」
「途中で見つからないか、ドキドキしちゃったね」
偽空賊の正体は、エステルとアネラスが変装した姿。全てヨシュアの策略だ。
川蝉亭での電話を合図に、ボース市からジープを急発進された正遊撃士の一団は、ヨシュアが仕掛けた目印を頼りに、空賊艇の停泊場所に特攻を仕掛ける。遊撃士と空賊の無秩序な乱戦と暗がりに便乗し、エステル達三人は艇内に忍び込んだ。
さらにはドサクサに紛れて撤収を誘導し、キール自身を戦場の渦中に巻き込み、ひたすら場をカオスにして直感を鈍らせることで、最後まで密航を隠し通すのに成功する。
一見荒唐無稽に思えた潜入作戦は怖いほど的中したが、一つ懸念材料がある。万全を期す為、エジルには正遊撃士全員での陽動を頼んだが、琥珀の塔に現れた遊撃士は四人だけ。
今更ながらに無報酬の助手の立場に嫌気がさし、多くの遊撃士がクエストを放棄しても不思議はないが、人一倍責任感が強そうなエジルが残留していなかったのが、少し引っ掛かる。
(それでも陽動には成功したんだし、必要以上に気にしてもしょうがないわね)
ギルドでの一連の流れに柄にもなく感銘を受けたので、正遊撃士の心変わりを残念に思ったが、それはこのクエストの栄華を独占する者の傲慢だろうと割り切る。空賊服から元の普段着に衣替えしたエステルとアネラスに号令をかける。
いよいよ、クエスト『定期船失踪事件』の最終曲想の始まりだ。
◇
「我が剣は無敵なり、なぁーんちゃってぇー」
ルグランが推挙するだけあって、アネラスの剣の冴えはエステルにも引けを取らない。最初の部屋を守っていた四人の空賊は、あっさりとエステルとアネラスの二人に蹴散らされた。
味方が頼もしい程、怠け癖を発揮するヨシュアは、戦闘を前衛の二人に丸投げすると、早速奥の部屋を解放。人質の安否を確かめたが、目算でも数は四十人に届いていない。
「私はリンデ号の船長を努めるグラントという。助けにきてくれて感謝するが、見ての通り、ここにいるのは人質全員ではない」
この場の有力者のクラント船長の説明では、カプア一家は人質を大きく三つのグループに分け、別々の部屋に監禁している。
よく見ると、このグループの人選は、男女と年齢の比率がバランス良く整えられていて、各グループには、船員と保護対象の女、子供、年寄りが必ずセットになっている。
「なるほど、良く考えられているわね。こうして、各々のグループに弱点を抱えさせておけば、反乱の防止にもなるしね」
人質の多さに比べて、監視側の絶対数が足りないカプア一家としては、リスクヘッジには細心の注意を払っている。
ただし、人質のケアは丁重に行っている。近親者同士を引き離したり、体調を崩した者を放置することはない。特に空賊の女性は、癇癪を起こした赤ん坊の鎮火に色々と尽力し、本人が胃痛薬を常備していたとのこと。犯罪者としては色んな意味で温い集団だ。
三人は今後の指針について相談する。上階に停泊している空賊艇を動かせたとしても、どのみち百人を越す乗客は一度には運べない。当初の目論見通りにアジトを武力制圧し、空賊たちを無効化して人質の安全確保を図るという武断的な方針で纏まった。
「みんな、必ずもう一度助けに来るから、ここで大人しく待っていてね。アネラスお姉さんとの約束だよ」
四人の気絶した空賊を縛り上げると、緊張感を切らした一部の乗客からの不平をクラント船長らの船員達に宥めてもらい、次の人質部屋の解放を目指す。
◇
「へへっ、チョロイ、チョロイ」
今度は六人の空賊を、またもや前衛ペアのみでぶちのめした。二度目の解放ミッションも割合簡単に成し遂げられる。人質部屋はあと一つを残すのみ。
「この調子なら最後も楽勝だな。どうした、ヨシュア?」
「空賊の一人が戦闘不能になる前に、壁に設置されたレバーみたいのを押したでしょ? あの場でトラップが発動した形跡はなかったから、その行為の意図が気になってね」
もし、階下への侵入警報の合図だとすれば、自分達の潜入が露見した可能性がある。そう、ヨシュアは警戒するが、エステルの方は危機感を覚えた様子はない。
「仮にそうだとしても、単に万全の態勢で待ち構えられて、今までみたいな奇襲が通じないだけの話だろ? その分、お前がキッチリと働けば済むことだ」
さり気なくサボり癖に釘を刺されるが、ヨシュアの不安は戦闘とは全く別な所にある。それが単なる杞憂でないのが、次の階層で直ぐさま証明される。
◇
「う、動くな、ブレイサーども。人質の生命が惜しければ、武器を捨てて投降しろ」
最後の部屋手前の廊下。縛られた船員四人の首筋に『毒の刃』を当て込んだ空賊は、人質以上にテンパった表情で武装解除を要求。ヨシュアは軽く肩を竦めた。
「やっぱり、追い詰められて手段を選んでいられなくなったわけね。けど、ブラフよ、エステル。彼らはまだ一線を超えるのを躊躇っている」
その覚悟が本当にあるなら、抵抗の危険がある屈強な船員でなく、扱い易い上に人質としてもより効果的な女か子供をこの場に用意している筈。
「無視して一気に乱戦に持ち込めば、99%の高確率で人質は全員助けられるわ」
エステルの性格を慮れば、その後の展開は見え透いてはいたが、一応、強硬案を主張してみる。
「ヨシュア、この場合は100%でなければ、それはゼロと同じだろ? 人の生命に換えられる代物なんて、この世界のどこにも存在しないんだからよ」
「私も同感だよ、ヨシュアちゃん」
まずエステルが物干し竿を放り投げ、アネラスも続いて得物の長剣を手放した。
「そうね、エステル。ブレイサーとして、あなたが正しいわ」
かつてエステルはメイベル市長の前で、自分の身体が担保なら無茶をすると明言したが、裏を返せば他人の生命をチップにルーレットは廻さないという意志表示。
「おい、小娘、お前もだ。姐さんから、お前が一番危険だと聞いているぞ」
油断なくヨシュアの武装解除を催促するが、人質の首筋に充てた刃を緊張で震えさせている。この態勢のまま強引に突入すれば、彼らにその気がなくても事故が起きかねない。
一瞬、『漆黒の牙』で状況を逆転できないか計算したが、彼女の全体Sクラフトは戦場全体を無差別に蹂躙する技。ああまで空賊と密着されては、人質にまで類が及んでしまう。万策尽きたヨシュアは、エステル達に倣い、双剣を二つとも放り捨てる。
遊撃士全員が徒手空拳となり、ほんの少し空賊たちが気を緩ませる。突如、後方の壁が爆発物か何かで崩され、激しい土煙に紛れて何者かが乱入してきた。
「なんだ?」
泡を食った盗賊たちの人質の拘束が緩んだ刹那を見逃さずにヨシュアは動こうとしたが、両手に双剣を所持していない現実に気づき、強く舌打ちする。
「はぁぁぁぁ。はぁーい、独楽舞踊!」
アネラスは無手のまま、独楽のようにその場でクルクル回転する。彼女を中心点として突風が巻き起こり、ヨシュアは肘で顔をガードしたまま目を細める。次の瞬間には四人の人質は空賊たちの手元を離れ、アネラスの足元に吸い寄せられていた。
「何が起こった?」
なぜ人質と分断されたのか理解が追いつかないまま、後ろから襲いかかってきた侵入者の一団によって空賊達は制圧される。
「ヨシュア君、今は一体どういう状況なのかな?」
「エジルさん?」
突然の闖入者の正体は、エジルと仲間の遊撃士。彼ら破壊した壁跡から、霧と冷気が吹き込んでくる。ここは噂に聞く霜降り峡谷のようだ。
図らずも合流した正遊撃士と見習いのパーティーは、互いの情報交換を行う。
エジル達は、ヨシュアがギルドに置き忘れた『定期船失踪事件』の資料ファイルを再度全員で検証した結果、空賊のアジトは、大型船は侵入できない高低差の入り組んだ地形に存在する可能性が高いことに気がついた。
ボースでその条件を満たすのは、クローネ峠と霜降り峡谷の二カ所。ヨシュアの依頼の陽動班の他、独断で別動隊のチームを二つ作成し付近で待機していた。
「ここは古代の隠し砦のようだが、製法の都合上、必ず人でも踏破できる箇所と面しているポイントがあると睨んだが、案の定だったな」
爆弾魔(ボマー)の悪名を持つ正遊撃士ブラッキーが、手持ちの手投げ爆弾で壁に穴を空け、ギミック遣いとして名高いもう一人の女遊撃士ハーマイオニーのかけた即席の橋を渡って、三人はアジトへの侵入を果たす。
「お話は判りました。けど、エジルさん達はどうやって、この場所を特定したのですか?」
霜降り峡谷はその名の通り霧が深くて視界が不明瞭な上、ジョゼット達は用心深く一端雲の上空に出てから垂直着陸に近い角度で発着所に降り立ったので、空賊艇を視認出来たとは思えず、ピンポイントでアジトを探り当てたのが不思議で仕方がない。
「企業秘密と言いたい所だか、回収の必要性があるからな」
そう告げるとエジルは、一瞬だけエステルの首筋に触れた後、肌に張り付いていた米粒大のミクロな物体を引き剥がし、ポケットに納めた。
「もしかすると、発信機か何かですか? けど、そこまで超小型で高性能な代物はツァイス工房でも発明されてないし。まさか、古代遺産(アーティファクト)の一種?」
ヨシュアの叫びにエステルとアネラスも驚く。「やっぱり気づかれたか」という諦観した表情で、エジルは腕時計に模したレーダーのようなアーティファクトを披露する。発信機の方は、ギルドでエステルの肩を叩いた時に仕込まれていた。
「外国でのとあるクエストで手にいれた逸品で、仕事で重宝している。取り上げられたら大いに困るので、七耀教会には黙っていてもらえると有り難い」
悪戯っぽい笑顔で、軽くウインクする。クエスト初期では醜態も晒したが、最後には収支をきっちりと合わせる当り、やはり正規の遊撃士は一筋縄でいく連中ではない。
「少しでも力になれればと思って独断で動いてみたが、我々の横やりで、何か君たちの計画に支障をきたさなかったかね?」
「いえ、本当に嬉しいサプライズで、とても助かりました」
直接人質を救ったのはアネラスの妙なクラフトだが、その隙を作ったのはエジル達の想定外の介入なので、社交辞令ではなく心から謝辞を述べる。
特にヨシュアは、彼女の別人格のカリンが彼らを手玉に取ったことから、正規の遊撃士を少し甘く見ていた所があったが、今回は見事に一本取られた形だ。
ましてや、遊撃士に大した思い入れがなかった自分如きが、長年この世界で飯を食ってきたエジル達の性根を見損なうなど、増長甚だしく赤面する思い。
(でも、ギルドでの一連の遣り取りが無ければ、ここまで献身してはくれなかった。だとすると、あの時エステルに感じた英雄の資質は満更錯覚でもないのかも)
その感想がエステルに特別な思い入れを抱く自分の欲目であることは承知している。それでもヨシュアは自分にはない「世界を広げる可能性」をエステルの中に見出した。
それから六人で再度協議した結果、乗客が再び人質に取られる愚を防げるよう三人の正遊撃士が各々、人質部屋をガードするという線で纏まる。早速、ブラッキーとハーマイオニーは持ち場に着く為、上階へと消えていく。
「人質はブレイサーの誇りにかけて、我々が生命に代えても必ず守る。だから、後の事は心配せずに、空賊の頭目達と決着をつけてこい」
エジルの頼もしい檄を背中に受け、リベールの明日を担う三人の若い準遊撃士は、飛び出して行く。
いよいよカプア一家首領との、最後の大一番が始まる。